(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
船舶用の二元燃料エンジンの一例として、
図3に示すものがある。この二元燃料エンジン1は、燃料ガス噴射弁2から噴射される燃料ガス3を主な燃料として駆動するガスモードと、燃料油噴射弁4から噴射される燃料油のみを燃料として駆動するディーゼルモードの2つの動作モードを切り換えて運転することができるものである。
【0003】
図3は、エンジン1をガスモードで運転するときにおいて、重油等のパイロット燃料5を燃料油噴射弁4から噴射して種火を準備した状態で、燃料ガス3を噴射して当該燃料ガス3を燃焼させている状態を示している。なお、
図3に示す7は、燃料油噴射装置であり、8は、燃料油タンクである。
【0004】
ところで、ガスエンジン又は
図3に示す二元燃料エンジン1をガスモードで運転する際に、パイロット燃料としての燃料油の使用料を削減することには、様々なメリットがある。
【0005】
例えば燃料油の価格が高騰し、燃料ガスの価格よりも高価となった場合、できるだけパイロット燃料として消費する燃料油の量を減らすことで、船の運航に必要な燃料コストを削減することができる。
【0006】
また、パイロット燃料として、主に利用される重油には硫黄分が含まれているため、パイロット燃料を削減することにより、排気ガス中に含まれる硫黄酸化物の量を減らすことができ、大気汚染の防止に貢献することができる。
【0007】
加えて、海域によっては、船舶の排気ガスに含まれている硫黄酸化物の量が厳しく制限されており、硫黄分を多く含む燃料油をパイロット燃料として用いて運航すると、この制限を超過してしまう場合が有り得るが、パイロット燃料としての燃料油の消費量を削減することによって、この制限をクリアすることが可能になる。
【0008】
また、ガスモードとディーゼルモードの2つの動作モードを切り換えて運転することができる二元燃料エンジンの他の例として、特開2008−202550号公報に記載されているものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、パイロット燃料5の最低噴射量は、例えばエンジン1のディーゼルモードでの定格出力時の燃料油消費量の約3〜5%程度(液体状態の体積換算)が必要であり、これ以下にすると、パイロット燃料5の噴射特性が悪化してエンジン1を適切に運転することができなくなることがある。
【0011】
従って、上記従来のそれぞれの二元燃料エンジンでは、ガスモードで運転するときのパイロット燃料5として使用する重油等の燃料油の消費油量を削減するにも、或る一定の限界がある。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、燃料ガスを燃料としてエンジンを駆動するときに、パイロット燃料として使用される燃料油の消費量を削減することができるパイロット燃料を使用する船舶機関システム及び船舶を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るパイロット燃料を使用する船舶機関システムは、ディーゼルエンジンに設けられ、燃料ガスを噴射するための燃料ガス噴射弁と、前記ディーゼルエンジンに設けられ、燃料油を噴射するための燃料油噴射弁とを備え、前記エンジンが稼働する際に、前記燃料油噴射弁からパイロット燃料が噴射され火種となり、前記燃料ガス噴射弁から噴射される燃料ガスに着火するパイロット燃料を使用する船舶機関システムであって、前記パイロット燃料として、水と燃料油の混合物である水エマルジョン燃料、又は燃料油の層と水の層とが多層状になった多層状燃料が使用されることを特徴とするものである。
【0014】
この発明に係るパイロット燃料を使用する船舶機関システムによると、燃料油噴射弁から噴射されたパイロット燃料によって火種が準備された状態で、燃料ガス噴射弁から燃料ガスを噴射して燃焼させることで、エンジンを駆動させることができる。
【0015】
ところで、燃料ガスに着火できるようにするためのパイロット燃料の体積換算(液体の状態)の最低噴射量は、燃料油噴射弁の噴射ノズル及び噴射ポンプの特性、並びに、燃料油の着火特性等に基づいて定められている。このパイロット燃料の最低噴射量は、例えばエンジンの定格出力時の総消費熱量の約3〜5%程度であり、これ以下にすると、パイロット燃料の噴射特性が悪化してエンジンを適切に運転することができなくなることがある。
【0016】
そこで、パイロット燃料として使用する燃料油の消費油量を削減することを目的の1つとして、パイロット燃料として、重油等の燃料油に代えて水エマルジョン燃料又は多層状燃料を使用する。これによって、噴射するパイロット燃料の最低噴射量(液体状態の最低体積)を確保して燃料ガスが着火することができると共に、水エマルジョン燃料又は多層状燃料に含まれる燃料油の消費油量、即ち、パイロット燃料として使用する燃料油の消費油量を削減することができる。
【0017】
この発明に係るパイロット燃料を使用する船舶機関システムにおいて、前記燃料油噴射弁は、前記パイロット燃料と前記燃料油の一方を選択的に噴射できるように構成されており、前記エンジンは、前記燃料ガス噴射弁から噴射される燃料ガスを燃料として稼働するガスモードと、前記燃料油噴射弁から噴射される燃料油を燃料として稼働するディーゼルモードの2つの動作モードを切り換えて運転することができる二元燃料エンジンであるものとするとよい。
【0018】
この船舶機関システムによると、エンジンをガスモードで運転する時に、パイロット燃料として水エマルジョン燃料又は多層状燃料を使用することによって、燃料油噴射弁の噴射特性上最低限必要なパイロット燃料の噴射量よりも、燃料油の噴射量を減らすことができる。特に、パイロット燃料の噴射と、ディーゼルモードで燃料油を噴射する際に用いる燃料油噴射弁が供用されているため、大型の燃料油噴射弁を用いる必要があり、パイロット燃料として噴射する場合の最低必要噴射量が大きいため、パイロット燃料の消費量の低減効果が大きい。
【0019】
この発明に係るパイロット燃料を使用する船舶機関システムにおいて、前記燃料油噴射弁から噴射されるパイロット燃料としての水エマルジョン燃料又は多層状燃料に含まれる燃料油の第1消費油量が、前記燃料油噴射弁から噴射されるパイロット燃料として燃料油を使用し、前記第1消費油量での運転と同一の出力で前記エンジンを運転した場合の第2消費油量よりも少なくなるように、前記燃料油噴射弁から噴射される水エマルジョン燃料又は多層状燃料の噴射量が設定されるものとするとよい。
【0020】
このようにすると、パイロット燃料としての水エマルジョン燃料又は多層状燃料に含まれる燃料油の第1消費油量を、パイロット燃料として燃料油を使用した場合の第2消費油量よりも少なくすることができる。よって、パイロット燃料として使用する燃料油の消費油量を削減することができる。
【0021】
この発明に係るパイロット燃料を使用する船舶機関システムにおいて、前記燃料油噴射弁からパイロット燃料として水エマルジョン燃料又は多層状燃料が噴射されるときに、前記燃料ガス噴射弁から噴射される燃料ガスの第1消費燃料ガス量が、前記燃料油噴射弁からパイロット燃料として燃料油が噴射され、かつ、前記第1消費燃料ガス量での運転と同一の出力で前記エンジンを運転した場合における、前記燃料ガス噴射弁から噴射される燃料ガスの第2消費燃料ガス量よりも多くなるように、前記燃料ガス噴射弁から噴射される燃料ガスの噴射量が設定されるものとするとよい。
【0022】
このようにすると、燃料油噴射弁からパイロット燃料として水エマルジョン燃料又は多層状燃料が噴射されるときに、燃料ガス噴射弁から噴射される燃料ガスの第1消費燃料ガス量を、燃料油噴射弁からパイロット燃料として燃料油が噴射される場合に、燃料ガス噴射弁から噴射される燃料ガスの第2消費燃料ガス量よりも多くすることができる。これによって、エンジンは、パイロット燃料として水エマルジョン燃料又は多層状燃料を使用するときも、パイロット燃料として燃料油を使用するときと同程度の大きさの動力を発生することができる。
【0023】
本発明に係る船舶は、本発明に係るパイロット燃料を使用する船舶機関システムを主推進装置又は原動機として搭載したことを特徴とするものである。
【0024】
この発明に係る船舶によると、本発明に係るパイロット燃料を使用する船舶機関システムを主推進装置又は原動機として搭載することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明に係るパイロット燃料を使用する船舶機関システム及びこれを搭載する船舶によると、エンジンを燃料ガスを燃料として駆動するときに、パイロット燃料として水エマルジョン燃料又は多層状燃料を使用することによって、燃料油の消費量を削減することができる。これによって、パイロット燃料として例えば硫黄分を含む重油を使用する場合には、エンジンに供給される硫黄分を削減することができ、排気ガスに含まれる硫黄酸化物の排出量を削減することができる。
【0026】
また、燃料ガス、及び水エマルジョン燃料又は多層状燃料の燃焼中に、水エマルジョン燃料又は多層状燃料に含まれる水分が蒸発することによって、その潜熱によって燃焼の最高温度を低下させることができる。これによって、排気ガスに含まれる窒素酸化物の排出量を削減することができ、環境保護に貢献することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るパイロット燃料を使用する船舶機関システムの第1実施形態を、
図1を参照して説明する。この
図1に示す船舶機関システム11は、燃料ガス噴射弁12から噴射される燃料ガス13を燃料として駆動するガスモードと、燃料油噴射弁14から噴射される燃料油を燃料として駆動するディーゼルモードの2つの動作モードを切り換えて運転することができるものである。燃料ガス13は、例えば天然ガスであり、燃料油は、例えば重油である。
【0029】
そして、この燃料油噴射弁14は、パイロット燃料と燃料油の一方を選択的に噴射できるように構成されている。
【0030】
図1は、船舶機関システム11が備えている二元燃料ディーゼルエンジン15をガスモードで運転するときにおいて、燃料ガス噴射弁12から噴射された燃料ガス13に着火するために、この噴射された燃料ガス13に対して、パイロット燃料としての水と燃料油の混合物である水エマルジョン燃料16を燃料油噴射弁14から噴射している状態を示している。
【0031】
このように、燃焼室17に噴射された燃料ガス13に着火するために、パイロット燃料(水エマルジョン燃料16)をこの燃焼室17に噴射するようにしているのは、燃料ガス13(天然ガス等)は、圧縮自己着火性が悪く、パイロット燃料(重油等の燃料油)は、圧縮自己着火性が良いからである。
【0032】
また、パイロット燃料として水エマルジョン燃料16を使用すると、パイロット燃料として重油等の燃料油を使用する場合と比較して、パイロット燃料として使用される燃料油の消費量を削減することができる。
【0033】
図1に示す二元燃料ディーゼルエンジン15は、シリンダカバー19に燃料ガス噴射弁12及び燃料油噴射弁14が設けられている。また、このシリンダカバー19には、排気口20が設けられ、この排気口20には、排気ライン21が接続している。そして、排気口20は、排気弁22によって開閉される。そして、燃焼室17内の燃焼済みガスは、これら排気口20及び排気ライン21を通って排気ガスとして大気中に排出される。また、シリンダ23には、掃気24を燃焼室17内に流入させるための掃気口25が設けられている。
【0034】
更に、
図1に示すピストン26は、シリンダ23内に設けられているシリンダボア27内を往復運動するように設けられ、このピストン26には、連接棒28を介してクランクシャフト29が連結している。
【0035】
次に、
図1を参照して、水エマルジョン燃料16の製造ラインを説明する。
図1に示すように、燃料油噴射弁14には、燃料油供給ライン30が接続している。この燃料油供給ライン30には、燃料油噴射弁14に近い下流側から順に、燃料噴射装置31、ミキサ32、燃料油供給ポンプ(図示せず)、及び燃料油タンク33が設けられている。また、ミキサ32には、水供給ライン34が接続し、この水供給ライン34には、ミキサ32に近い下流側から順に、水供給ポンプ(図示せず)及び水タンク35が設けられている。
【0036】
更に、
図1に示す燃料ガス噴射弁12には、燃料ガス供給ライン36が接続している。この燃料ガス供給ライン36には、図示しない燃料ガスタンクや燃料ガスを加圧供給する装置が設けられる。更に、液化天然ガスや圧縮天然ガス運搬船の場合は、カーゴタンクが燃料ガスタンクを兼ねている場合もある。
【0037】
次に、
図1に示す船舶機関システム11のガスモード運転及びディーゼルモード運転における作用について説明する。
【0038】
まず、エンジン15をガスモードで運転するときは、燃料油噴射弁14からパイロット燃料(水エマルジョン燃料16)が燃焼室17内に噴射され、自己着火によって種火となり、この種火に対して燃料ガス噴射弁12から燃料ガス13が燃焼室17内に噴射される。
【0039】
この燃料油噴射弁14から噴射されるパイロット燃料(水エマルジョン燃料16)は、以下のようにして製造されて燃料油噴射弁14に供給することができる。つまり、燃料油タンク33に貯留されている重油等の燃料油と、水タンク35に貯留されている水とをミキサ32で混ぜることによって水エマルジョン燃料16を製造することができ、この製造された水エマルジョン燃料16は、燃料噴射装置31(燃料噴射ポンプを含む)によって燃料油噴射弁14に供給される。
【0040】
そして、エンジン15をディーゼルモードで運転するときは、燃料油噴射弁14から重油等の燃料油が燃焼室17内に噴射される。つまり、燃料油タンク33に貯留されている重油等の燃料油を燃料噴射装置31によって燃料油噴射弁14に供給することができる。このとき、燃料ガス噴射弁12からは、燃料ガス13が燃焼室17内に噴射されないように構成されている。
【0041】
次に、上記のように構成されたパイロット燃料を使用する船舶機関システム11の作用を説明する。
図1に示す船舶機関システム11によると、ディーゼルエンジン15の燃料ガス噴射弁12から噴射された燃料ガス13に対して、燃料油噴射弁14からパイロット燃料を噴射することによって、その噴射された燃料ガス13に着火することができ、エンジン15を駆動させることができる。
【0042】
ところで、燃料ガス13に着火できるようにするためのパイロット燃料の体積換算(液体の状態)の最低噴射量は、燃料油噴射弁14の噴射ノズル及び噴射ポンプ(燃料噴射装置31)の特性、並びに、燃料油の着火特性等に基づいて定められている。このパイロット燃料の最低噴射量は、例えばエンジン15のディーゼルモードでの定格出力時の燃料油消費量の約3〜5%程度(液体状態の体積換算)であり、これ以下にすると、パイロット燃料の噴射特性が悪化して適切な火種となることができず、燃料ガスに着火することができなくなり、エンジン15を適切に運転することができなくなることがある。
【0043】
そこで、パイロット燃料として使用する燃料油の消費油量を削減することを目的の1つとして、パイロット燃料として、重油等の燃料油に代えて水エマルジョン燃料16を使用する。これによって、噴射するパイロット燃料の最低噴射量(液体状態の最低体積)を確保して燃料ガス13が着火することができると共に、水エマルジョン燃料16に含まれる燃料油の消費油量、即ち、パイロット燃料として使用する燃料油の消費油量を削減することができる。
【0044】
また、このように、パイロット燃料として使用する燃料油の消費油量を削減することができるので、パイロット燃料として例えば硫黄分を含む重油を使用する場合には、エンジン15に供給される硫黄分を削減することができ、排気ガス18に含まれる硫黄酸化物の排出量を削減することができる。これによって、大気汚染の防止に貢献することができる。
【0045】
更に、パイロット燃料としての燃料油の消費量を削減することには、以下のような様々なメリットがある。
【0046】
例えば燃料油の価格が高騰し、燃料ガスの価格よりも高価となった場合、できるだけパイロット燃料として消費する燃料油の量を減らすことで、船の運航に必要な燃料コストを削減することができる。
【0047】
また、海域によっては、船舶の排気ガスに含まれている硫黄酸化物の量が厳しく制限されており、硫黄分を多く含む燃料油をパイロット燃料として用いて運航すると、この制限を超過してしまう場合が有り得るが、パイロット燃料としての燃料油消費量を削減することによって、この制限をクリアすることが可能になる。
【0048】
また、燃料ガス13及び水エマルジョン燃料16の燃焼中に、水エマルジョン燃料16に含まれる水分が蒸発することによって、その潜熱によって燃焼の最高温度を低下させることができる。これによって、排気ガス18に含まれる窒素酸化物の排出量を削減することができ、環境保護に貢献することができる。
【0049】
そして、上記のように、エンジン15をガスモードで運転するときは、パイロット燃料として水エマルジョン燃料16を使用することによって、燃料油の消費量を削減することができる。
【0050】
そして、
図1に示す船舶機関システム11は、エンジン15をガスモードで運転するときにおいて、燃料油噴射弁14から噴射されるパイロット燃料としての水エマルジョン燃料16に含まれる燃料油の第1消費油量が、燃料油噴射弁14から噴射されるパイロット燃料として燃料油を使用した場合の第2消費油量よりも少なくなるように、燃料油噴射弁14から噴射される水エマルジョン燃料16の噴射量が設定されている。ここで、これら第1及び第2消費油量は、エンジン15の単位出力あたりの消費油量、又は同一のエンジン出力での比較である。
【0051】
このように燃料油噴射弁14から噴射される水エマルジョン燃料16の噴射量を設定すると、パイロット燃料としての水エマルジョン燃料16に含まれる燃料油の第1消費油量を、パイロット燃料として燃料油のみを使用した場合の第2消費油量よりも少なくすることができる。よって、パイロット燃料として使用する燃料油の消費油量を削減することができる。
【0052】
また、
図1に示す船舶機関システム11は、エンジン15をガスモードで運転するときにおいて、燃料油噴射弁14からパイロット燃料として水エマルジョン燃料16が噴射されるときに、燃料ガス噴射弁12から噴射される燃料ガス13の第1消費燃料ガス量が、燃料油噴射弁14からパイロット燃料として燃料油が噴射される場合に、燃料ガス噴射弁12から噴射される燃料ガス13の第2消費燃料ガス量よりも多くなるように、燃料ガス噴射弁12から噴射される燃料ガス13の噴射量が設定されている。ここで、これら第1及び第2消費燃料ガス量は、エンジン15の単位出力あたりの消費燃料ガス量、又は同一のエンジン出力での比較である。
【0053】
このように燃料ガス噴射弁12から噴射される燃料ガス13の噴射量を設定すると、燃料油噴射弁14からパイロット燃料として水エマルジョン燃料16が噴射されるときに、燃料ガス噴射弁12から噴射される燃料ガス13の第1消費燃料ガス量を、燃料油噴射弁14からパイロット燃料として燃料油が噴射される場合に、燃料ガス噴射弁12から噴射される燃料ガス13の第2消費燃料ガス量よりも多くすることができる。これによって、エンジン15は、パイロット燃料として水エマルジョン燃料16を使用するときも、パイロット燃料として燃料油を使用するときと同程度の大きさの出力を発生することができる。
【0054】
次に、本発明に係るパイロット燃料を使用する船舶機関システムの第2実施形態を、
図2を参照して説明する。この
図2に示す第2実施形態の船舶機関システム38と、
図1に示す船舶機関システム11とが相違するところは、エンジン15をガスモードで運転するときにおいて、
図1に示す第1実施形態では、燃料油噴射弁14からパイロット燃料として水エマルジョン燃料16を噴射するのに対して、
図2に示す第2実施形態では、燃料油噴射弁14からパイロット燃料として多層状燃料39を噴射するところである。この多層状燃料39は、
図2に示すように、燃料油の層と水の層とが交互に配置されて多層状になった燃料である。
【0055】
図2は、船舶機関システム38が備えている二元燃料ディーゼルエンジン15をガスモードで運転するときにおいて、燃料ガス噴射弁12から噴射された燃料ガス13に着火するために、この噴射された燃料ガス13に対して、パイロット燃料としての多層状燃料39を燃料油噴射弁14から噴射している状態を示している。
【0056】
次に、
図2を参照して、多層状燃料39の製造ラインを説明する。
図2に示すように、燃料油噴射弁14には、燃料油供給ライン30が接続している。この燃料油供給ライン30には、燃料油噴射弁14に近い下流側から順に、燃料噴射装置40(燃料噴射ポンプを含む)、燃料油供給ポンプ(図示せず)、及び燃料油タンク33が設けられている。また、燃料噴射装置40には、水供給ライン41が接続し、この水供給ライン41には、燃料噴射装置40に近い下流側から順に、水供給ポンプ(図示せず)及び水タンク35が設けられている。
【0057】
図2に示すエンジン15をガスモードで運転するときは、燃料ガス噴射弁12から燃料ガス13が燃焼室17内に噴射されると共に、この噴射された燃料ガス13に対して、燃料油噴射弁14からパイロット燃料(多層状燃料39)が燃焼室17内に噴射される。
【0058】
この燃料油噴射弁14から噴射されるパイロット燃料(多層状燃料39)は、以下のようにして製造されて燃料油噴射弁14に供給することができる。つまり、燃料油タンク33に貯留されている重油等の燃料油と、水タンク35に貯留されている水とを交互に配置して多層状となるように燃料噴射装置40に供給することによって、多層状燃料39を製造することができ、この製造された多層状燃料39は、この燃料噴射装置40によって燃料油噴射弁14に供給される。
【0059】
なお、
図2に示す燃料ガス噴射弁12には、
図1に示す第1実施形態と同様に、燃料ガス供給ライン36が接続している。この燃料ガス供給ライン36には、図示しない燃料ガスタンクや燃料ガスを加圧供給する装置が設けられる。更に、液化天然ガスや圧縮天然ガス運搬船の場合は、カーゴタンクが燃料ガスタンクを兼ねている場合もある。
【0060】
この
図2に示す船舶機関システム38によると、ディーゼルエンジン15の燃料ガス噴射弁12から噴射された燃料ガス13に対して、所定のタイミングで燃料油噴射弁14からパイロット燃料の多層状燃料39を噴射することによって、その噴射された燃料ガス13に着火することができ、エンジン15を駆動させることができる。
【0061】
そして、
図2に示すように、エンジン15をガスモードで運転するときにおいて、パイロット燃料として多層状燃料39を使用するときは、上記第1実施形態において、パイロット燃料として水エマルジョン燃料16を使用するときと同様に作用するので、その説明を省略する。また、上記以外は、
図1に示す第1実施形態と同等の構成であり同様に作用するので、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの説明を省略する。
【0062】
ただし、上記実施形態では、本発明の船舶機関システムを、ガスモードとディーゼルモードの2つの動作モードを切り換えて運転することができる二元燃料ディーゼルエンジン15に適用した例を挙げて説明したが、これに代えて、ディーゼルモードを有しないガスモードのみで運転することができるエンジンに適用することができる。
【0063】
そして、上記実施形態のパイロット燃料を使用する船舶機関システムは、船舶に搭載された例えば主推進装置又は原動機に適用することができる。