(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インクによるデジタル印刷のための方法であって、単相で材料を噴射することによって作像部材の表面上に湿し液パターンを形成することを備え、前記材料は、湿し液およびキャリアを備え、
前記湿し液および前記キャリアは、噴射温度で、混和性であって単一流体相であり、
前記湿し液および前記キャリアは、前記作像部材の表面上で不混和性である、方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
インクによるデジタル印刷のための高解像度湿し液パターン形成を可能にするシステムおよび方法を提供する。本システムおよび方法は、インクジェットプリントヘッドなどの、多成分単相作像液を作像部材上に排出もしくは堆積して、可変イメージデータにしたがってパターンもしくはイメージを形成する装置を備えることができる。作像液は、噴射温度で混和性であり、さらに同じ液相である湿し液成分およびキャリア成分を備える。成分は、比較的低い温度、例えば、作像部材もしくは液受け面と接するときの作像液成分の温度で、相分離する。キャリアは、作像液受け面上で凝固し、湿し液は、キャリア成分の表面に流動し、インク塗布されるか、代替実施形態では、インク塗布するために転写部材に転写される湿し液パターンまたはイメージを形成する。
【0004】
本システムおよび方法は転写部材を備え、転写部材は、湿し液パターンもしくはイメージが後続のインク塗布のために転写部材に転写される湿し液パターンローディングニップを画定するよう構成される。作像部材の表面上に堆積したインクジェット液滴のサイズは、作像部材の表面上で、噴射液が所望の厚さに広がるように、余分な直径を有することが可能であることが判明した。例えば、1ピコリットルの液滴は、厚さ1マイクロメートルで、直径36マイクロメートルに広がる可能性がある。10ピコリットルの液滴は、厚さ1マイクロメートルで、直径113マイクロメートルに広がることが判明した。
【0005】
湿し液パターンもしくはイメージ形成のためのワックスなどのキャリア成分と関連した湿し液を使用するシステムおよび方法を提供する。湿し液およびキャリアは、例えば、インクジェット型装置から噴射することができる。噴射温度で、湿し液および固体キャリアは混和性であり、単一の、実質的な液相を形成し、それにより、噴射を均一にする。噴射した湿し液/キャリアが、作像部材の低温(例えば、周囲温度)面と接すると、噴射液滴相が分離し、それにより、キャリアが基材上で凝固し、十分な量の湿し液が、固体キャリアの表面に透過し、そこから分離する。噴射湿し液/キャリア液滴が、好ましい大体積率の固体キャリアを含有する場合、所望の、例えば、「スポット」もしくは「ドット」サイズを作像部材面上で維持するために、噴射液滴は、不要に広がる前に基材表面上で凝固する。
【0006】
生成したスポットもしくは複数のドットは、湿し液が固体キャリアから相分離するように湿し液で湿らせた固体パターンもしくはイメージを形成することができる。イメージをインク塗布することができ、生成したインクイメージは、実施形態によるシステム構成を使用して転写することができる。
【0007】
インク印刷に対して有用なインクによるデジタル印刷システムは、作像部材と、湿し液およびキャリアを備える作像液をイメージデータにしたがって作像部材の表面上に噴射するよう構成された湿し液パターン形成システムとを備えることができ、湿し液およびキャリアは、噴射温度で混和性であり、さらに単一流体相である。湿し液パターン形成システムは、作像液を作像部材の表面上に噴射するよう構成されたインクジェット装置を備えることができる。噴射湿し液は、高解像度イメージを作像部材の表面に形成することができ、湿し液は、作像部材の表面上の固体キャリアから相分離する。
【0008】
一実施形態において、システムは転写部材を備えることができ、転写部材は、湿し液パターンを作像部材の表面から受け取るよう構成され、転写部材および作像部材は、接触転写のために湿し液イメージローディングニップを画定するよう配置され、湿し液は、作像部材表面上で固体キャリアから分離され、固体キャリアと不混和性になる。
【0009】
一実施形態において、システムは、湿し水を含有する湿し液を備えることができる。一実施形態において、システムは、シリコーン液を含有する湿し液を備えることができる。一実施形態において、システムは、パラフィンを含有するキャリアを備えることができる。一実施形態において、システムは、作像部材清掃システムを備えることができ、作像部材清掃システムは、加熱システムおよびドクターブレードを備える。システムは、パターン形成システムから噴射されたときの湿し液ならびにキャリアの温度で混和性であり、さらに同じ位相である湿し液ならびにキャリアを備えることができる。
【0010】
一実施形態において、本方法は、インクによるデジタル印刷のための方法を備えることができ、単相で材料を噴射することによって作像部材の表面上に湿し液パターンを形成することを備え、材料は、湿し液およびキャリアを備える。本方法は、作像部材表面にインク塗布して、形成した湿し液パターンにしたがって、インク塗布イメージを生成することを備えることができる。あるいは、本方法は、転写部材と作像部材とによって画定した湿し液パターンローディングニップで湿し液パターンを転写部材に転写することを備えることができる。本方法は、湿し液パターンを有する転写部材の表面にインク塗布して、湿し液パターンにしたがってインクパターンを生成することを備えることができる。本方法は、転写部材と基材搬送システムとによって形成したインクパターン転写ニップで、インクパターンを基材に転写することを備えることができる。本方法は、作像部材と基材搬送システムとによって形成したインクパターン転写ニップで、インクパターンを基材に転写することを備えることができる。本方法では、湿し液および固体キャリアは、湿し液およびキャリアが噴射温度で混和性であり、単相で噴射されるよう構成され、湿し液およびキャリアは、作像部材と接すると相分離し、キャリアは、イメージデータによるパターンで堆積し、湿し液は、キャリアの表面に透過し、キャリアを湿らせ、湿し液パターンを形成する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
イメージ再形成可能面を、作像部材上に設けることができ、作像部材は、ドラム、プレート、ベルトなどとすることができる。イメージ再形成可能面は、例えば、とりわけポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む、一般にシリコーンと称される一群の材料から構成することができる。イメージ再形成可能面は、搭載層上にわたって比較的薄い層で形成することができ、比較的薄い層の厚さは、印刷もしくは刻印性能、耐久性、および製造性のバランスをとるよう選択される。
【0013】
そのような可変データ平版印刷システムで使用するイメージャは、高価であり、相当な技術的課題を課す。高出力レーザイメージャの必要性をなくすために、湿し液イメージを作り出すために構成したインクジェットシステムが考案された。しかしながら、基材上に噴射する湿し液のインクジェット滴のサイズは、そのインクジェット滴が所望の厚さに広がるにつれ、極めて大きくなることが判明した。例えば、基材表面上に堆積した湿し水の1ピコリットル滴は、厚さ1マイクロメートルで直径36マイクロメートルのスポットまたはドットサイズに広がる可能性がある。湿し水の1ピコリットル堆積液滴の湿し液スポットまたはドットサイズは、厚さ0.50マイクロメートルで、直径51マイクロメートルに広がる可能性がある。例えば、10ピコリットル滴は、ドット厚1マイクロメートルに広がった後、直径113マイクロメートルを有するドットになる可能性がある。作像部材表面上に噴射した湿し液の、所望より厚い層は、インクローラが、他の有害な影響の中でも、インク塗布ニップで流体の不安定な流体力学的流動を引き起こす原因となる可能性がある。このことは、インクローラによるさまざまなイメージ欠陥および過剰な湿し水の汲み上げの原因となる。
【0014】
可変データ平版印刷で高解像度湿し液イメージを生成するために、受け面に接すると凝固するキャリア成分と関連した湿し液を使用する、インクによるデジタル印刷システムおよび方法を提供する。上昇した噴射温度では、湿し液およびキャリアは、ワックスなどの典型的な固体インク材料を備えることができる、単一の、実質的な液相であり、それにより、均一な噴射を可能とする。作像液の噴射滴が、作像部材などの低温(例えば、周囲温度)面と接すると、噴射滴湿し液成分およびキャリア成分は、相分離する。大体積率の固体キャリアがもたらされると,噴射滴は、不要に広がる前に凝固して、作像部材表面上で所望の「スポット」または「ドット」サイズを維持する。
【0015】
生成したドットもしくは複数のドットは、固体キャリアから相分離した湿し液で湿らせた固体キャリアパターンもしくはイメージを形成することができる。インク塗布したイメージは、実施形態によるシステム構成を使用して、生成および転写することができる。
【0016】
湿し液および固体キャリアが構成され、その結果、固体キャリア成分と関連した湿し液成分を備える噴射液滴の噴射温度で、湿し液は、固体キャリアとともに、単一で、実質的な液相を形成する。湿し液および関連凝固キャリアが構成され、その結果、噴射液滴が、作像部材もしくは記録媒体などの比較的低温の基材と接すると、噴射液滴は相分離し、固体キャリア成分は、液体湿し液成分から分離して、湿し液パターンを形成する。湿し液および固体キャリア成分の組合せは、好ましくは、大部分の固体キャリア、または小ドットサイズを維持する間に噴射液滴が基材上で凝固することを可能とする部分を備えるよう構成される。液滴が作像部材表面上で冷えるにつれ、湿し液は透過し、湿し液で湿った隆起固体パターンまたはイメージをもたらす。湿し液イメージは、噴射湿し液/キャリア液滴により形成された1つまたは複数のドットを備えることができる。湿し液イメージは、さまざまな記録媒体にデジタルのインクによる印刷を行うのに有用な実施形態の方法およびシステムにより、インク塗布および/または転写することができる。
【0017】
図1は、実施形態による、作像液滴および噴射湿し液、キャリアを示す。特に、
図1は、キャリアと関連した湿し液が、インクジェットもしくはインクジェット型装置により堆積した基材101を備えるシステム100を示す。湿し液/キャリア液滴は、2つ以上の材料成分を備え、インクによるデジタル印刷のための湿し液イメージを作り出すよう噴射することができる。少なくとも第1の2つ以上の成分は湿し液であり、例えば、湿し水、水、水系溶液、有機溶媒、D4、D5、D6、OS10、OS20、Novec流体などのシリコーンオイル、および現在公知の、または今後開発される他の適切な流体である。湿し液は、室温、および/または基材上の流体の温度で液体であるよう選択される。
【0018】
少なくとも第2の2つ以上の成分は、キャリア成分であり、室温で、および/または基材上のキャリアの温度で、および/または作像液の噴射温度より低い温度で、実質的に固体である。固体成分は、パラフィン、D3などのワックスとすることができる。
【0019】
噴射温度、すなわちインクジェットもしくはインクジェット型装置からの排出の前および/またはその間の作像液の温度で、成分は混和性であり、均一に噴射するために適切である実質的な単相を形成する。2つの成分は、噴射後に作像部材と接すると相分離するように選択される。したがって、相当な湿し液が、関連技術によるシステムの場合のように広がることを抑える。例えば、基材表面上に噴射した材料が急速に凝固すると、D4およびワックスキャリアが50/50混合で使用された場合、25ピコリットルの液滴が、50マイクロメートル未満のスポットサイズに広がり保たれる。湿し液は、液滴が基材と接触すると凝固成分から相分離し、表面に透過し、非常に薄い湿し液層を形成することが可能となる。湿し液および/または固体成分の割合は、基材表面上で、所望の湿し液層厚を実現するよう調整することができる。関連技術のシステムによっては、インクによるデジタル印刷の材料セット、例えば、作像部材もしくはプレート、湿し液、および/またはインクは、典型的には、約0.1マイクロメートルから1.0マイクロメートル厚になる湿し液層を必要とする。
【0020】
図1は、湿し液およびキャリアを備える噴射液滴105を示す。液滴105は、第1の温度で、インクジェットまたはインクジェット型装置から噴射される。湿し液およびキャリアは、第1の温度で混和性であり、湿し液/キャリアは、成分がどちらも実質的に液相である温度で噴射される。
図1は、受け取り部材、すなわち基材101の表面上に堆積した、堆積液滴107を示す。堆積湿し液/固体キャリア液滴107は、相分離した固体成分115および液体湿し液成分121を備えるスポットを形成する。湿し液は、固体から分離し、固体成分115の表面に流動し、基材と接触する。堆積液滴107またはスポットの受け取り部材101の表面からの高さは、湿し液および固体成分の割合を調整することによって調整することができる。
【0021】
図2に示すシステムは、液滴が湿し液イメージを形成するためのデジタルイメージデータにしたがって堆積する受け取り部材表面の温度で相分離する、多成分で単一相の作像液滴を噴射するよう構成される。
【0022】
図2に示すように、例示的なシステム200は、作像部材210を備えることができる。
図2に示す実施形態での作像部材210はドラムであるが、この例示的説明は、作像部材210が、プレートもしくはベルト、または他の現在公知の、または今後開発される構成を備える実施形態を除外すると解釈されるべきではない。作像部材210を使用して、転写ニップ212で、インクイメージをイメージ受け取り媒体基材214に適用する。転写ニップ212は、イメージ転写機構260の一部として、作像部材210の方向に圧力を加える印刷ローラ218によって形成される。イメージ受け取り媒体基材214は、特定の組成物、例えば、紙、プラスチック、または複合シート膜などに限定されると考えるべきではない。例示的なシステム200は、多種多様なイメージ受け取り媒体基材上でイメージを生成するために使用することができる。本開示は、広範な印刷もしくは刻印材料に関してインクという用語を使用し、インク、顔料、ならびに例示的なシステム200によって塗布され、イメージ受け取り媒体基材214上に出力イメージを生成することができる他の材料であると通常理解される材料を含む。
【0023】
本出願は、作像部材が、例えば、円筒状のコアである構造搭載層、または円筒状のコア上の1つ以上の構造層上に形成されたイメージ再形成可能面層を備えることを含む、作像部材の詳細について描写および記述する。湿し液イメージを形成するための湿し液パターン形成システムを使用するシステムは、そのような処置への依存度を下げる。
【0024】
例えば、湿し液パターン形成システムは、インクジェットまたはインクジェット型装置を使用し、湿し液を、可変イメージデータにしたがって、作像部材上に噴射する。生成した湿し液イメージは、いくつかの実施形態において見られるように、他の部材に転写される可能性があり、もしくは、作像部材上にインク塗布される可能性があり、さらに、後続のインク塗布イメージが、
図2に示す実施形態において見られるように、記録媒体に転写される可能性がある。液体の湿し液のみを噴射するのではなく、実施形態によるシステムは、少なくとも湿し液成分と、2つ以上の成分が混和性である温度で、単相で噴射されるキャリア成分とを使用する。本実施形態は、湿し液/固体キャリア液滴を作像部材上に噴射して、続いて同じ表面上にインク塗布するインクジェットパターン形成システムを使用し、湿し液イメージは、噴射液滴が作像部材表面に接すると相分離によって形成され、湿し液の一部が固体キャリアの表面から分離、および固体キャリアの表面に流動する。インクは、生成した相分離した湿し液イメージに塗布することができ、それに応じて、作像部材表面の一部に選択的に付着する。
【0025】
例示的なシステム200は、接続されたデータソースから入力された可変データにより、多成分単相作像液を作像部材表面上に噴射するために構成されたインクジェットまたはインクジェット型装置を一般に備える湿し液サブシステム220を備える。上記のように、湿し水などの湿し液は、表面張力を減らすために加える少量のイソプロピルアルコールまたはエタノールを任意選択的に有する水を主に備えることが可能であることが知られている。少量のある種の界面活性剤を、湿し水にも加えることができる。あるいは、他の適切な湿し液を使用して、インクによるデジタル平版印刷システムの性能を向上することができる。
【0026】
湿し液が作像部材210の表面上にパターン形成されると、噴射湿し液/キャリアの単相液滴の固体キャリア成分から相分離し、湿し液のドットもしくは複数の液滴により形成される噴射材料の層の厚さを、フィードバックをもたらして制御することができるセンサ225を使用して測定することができる。インクジェットは、湿し液を所望の厚さにする方法で、湿し液/キャリアを噴射するよう制御することができる。インクジェットを備える湿し液パターン形成システムまたはサブシステム220は、イメージ状噴射液滴により、均一な湿し液層で潜像を作像部材表面上に形成するために構成される。
【0027】
作像部材表面上に堆積し、湿し液で湿らされた固体キャリアを備える湿し液イメージは、インクローラサブシステム240にもたらされる。インクローラサブシステム240を使用して、均一なインクの層を湿し液の層および作像部材210の表面層上に塗布する。インクローラサブシステム240は、アニロックスローラを使用して、オフセット平版インクを、作像部材210の表面層と接する1つ以上のインク形成ローラ上に計量供給することができる。他にも、インクローラサブシステム240は、他の従来の要素、例えば、精密な供給率のインクを作像部材表面に提供するための一連のメータリングローラを備えることができる。
【0028】
作像部材210の表面層上にあるインクの凝集性および粘性は、いくつかの機構によって変更することができる。そのような機構の一例は、レオロジー(複素粘弾性)制御サブシステム250を使用する可能性がある。レオロジー制御システム250は、表面上にインクの部分架橋コアを形成し、例えば、表面層に対してインクの凝集力を高めることができる。硬化機構は、光学もしくは光硬化、熱硬化、乾燥、またはさまざまな形式の化学硬化を備えることができる。冷却法を使用して、複数の物理的冷却機構を介して、さらに、化学冷却法を介して、レオロジーも変更することができる。
【0029】
次いで、インクが、作像部材210の表面から、転写サブシステム260を使用して、イメージ受け取り媒体214の基材に転写される。転写は、作像部材210と印刷ローラ218との間のニップ212を基材214が通ると行われ、作像部材210の表面上のインクが、基材214との物理的接点にもたらされる。インクの接着性がレオロジー制御システム250によって変更された場合、インクの接着性の変更は、インクを、基材214に付着させ、さらに、作像部材210の表面から分離させる。転写ニップ212での温度および圧力状態の慎重な制御により、作像部材210の表面から、基材214へのインクに対する転写効率を、95%超にすることができる。一部の湿し液もまた基材214を濡らすことが可能であるが、そのような湿し液の容量は少量であり、急速に蒸発し、もしくは基材214によって吸収されるであろう。
【0030】
ある種のオフセット平版印刷システムにおいて、
図2に示していないオフセットローラが、インクイメージパターンをまず受け取り、次いで、インクイメージパターンを、公知の間接転写法にしたがって、基材に転写することができることを認識されたい。
【0031】
大部分のインクが基材214に転写されることに続いて、残ったインクおよび/または残った湿し液および固体キャリアは、好ましくはその表面をこすったり摩耗したりすることなく、作像部材210の表面から除去されなければならない。エアナイフ275を使用して、残った湿し液を除去することができる。しかしながら、ある程度の量のインク残留物と、かなりの量の固体キャリアとが残る可能性があることが予想される。そのような残ったインク残留物の除去は、何らかの形式の清掃サブシステム270を使用して実現することができる。本出願は、作像部材210の表面と物理的に接触する粘着部材もしくは接着部材などの少なくとも第1の清掃部材を備えるそのような清掃サブシステム270の詳細について説明し、粘着部材もしくは接着部材は、作像部材210のイメージ再形成可能面の湿し液から、残留インクと、残っている少量のいかなる界面活性剤化合物とを除去する。次いで、粘着部材もしくは接着部材は、残留インクを粘着部材もしくは接着部材から転写することができる平滑ローラと接触することができ、その後、インクは、例えば、ドクターブレードによって、平滑ローラからはがされる。
【0032】
キャリア成分の熱溶解性のため、清掃の間、固体キャリア残留物に熱を加え、液体状態である間に、固体キャリアを除去するのに有利である。従来の液体除去方法および装置は、スキージーロール、ブロッタ、ブレードなどを使用することができる。除去した固体キャリアは、精製して、再利用することが可能である。
【0033】
本出願は、作像部材210の表面の清掃を容易にすることができる他の機構について詳述する。しかしながら、清掃機構にかかわらず、作像部材210の表面からの残留インク、湿し液、および固体キャリアの清掃は、本システムでの色むらを防ぐために重要である。清掃すると、作像部材210の表面は、湿し液の未使用層を、作像部材210のイメージ再形成可能面に供給する湿し液パターン形成システムまたはサブシステム220に再び提供され、処理が繰り返される。
【0034】
単に湿し液を作像部材上に噴射するインクジェットシステムを実現することは、インク塗布システムで湿し液を過剰にする結果となる可能性があり、高解像度イメージを実現することを困難にすることが判明した。例えば、典型的な作像プレートの表面上に堆積されるインクジェット湿し液滴のサイズは、所望の厚さである約1マイクロメートルに広がった後、望まない大きさになる。より高いイメージ忠実度を実現するために、0.1から0.5マイクロメートルの範囲の、さらに薄い湿し液の層の使用が望まれる。例えば、1ピコリットル滴は、厚さ1マイクロメートルで、直径36マイクロメートルのスポットサイズに広がるであろう。1ピコリットル滴は、作像部材などの受け面と接すると、厚さ0.5マイクロメートルで、51マイクロメートルのスポットサイズに広がるであろう。10ピコリットル滴は、厚さ1マイクロメートルで、113マイクロメートルのスポットサイズに、厚さ0.5マイクロメートルで、160マイクロメートルのスポットサイズに広がる可能性がある。さらに、湿し液滴は、所望の期間内で、所望の厚さ、例えば、約1マイクロメートルかそれよりも薄く広がることができない可能性がある。したがって、湿し液の厚い層は、インクローラが、インク塗布ニップで湿し液の不安定な流体力学的流動を引き起こす原因となる可能性がある。このことは、インクローラによるさまざまなイメージ欠陥および過剰な湿し液の汲み上げの原因となる可能性がある。
【0035】
図2に図示したような好適な実施形態では、凝固するが、上昇した噴射温度で湿し液と混和性であり、同じ液相であるキャリアの相当な割合と湿し液とを備える作像液材料を噴射することによって、上記課題に対処した。しかしながら、例えば、適合可能な作像部材(例えば、シリコーンゴム、)から固体キャリアを清掃することは、困難である。さらに、除去した固体キャリアを再利用するために精製することは、収集した固体キャリアがインク残留物で汚染されるので、必要である。
【0036】
湿し液吸収作像部材を組み込むことによって、上記課題に対処する他の構成を提供した。
【0037】
実施形態のそのようなシステムおよび方法は、2つの別個の物理部材、すなわち、湿し液を受け取る作像部材と、隣接するインク塗布システムからインクなどの刻印材料を受け取る転写部材との間で作像プレートの機能を分割する。作像部材および転写部材は、ロールまたはシリンダとすることができる。作像部材は、その表面上で湿し液を吸収するよう構成してもよく、湿し液は、高解像度イメージを形成するために噴射される。作像部材は、例えば、ほとんどの湿し液を均一に広げ、高品質の湿し液イメージを形成するよう構成することができる。
【0038】
次いで、作像部材は、湿し液イメージを受け取る転写部材と接することができる。作像部材および転写部材は、湿し液パターンまたはイメージを、作像部材から転写部材に接触転写するために、湿し液イメージ(または、パターン)ローディングニップを画定することができる。ローディングニップでは、湿し液に浸した作像部材の表面領域を湿らすことができ、転写部材と接すると、転写部材の表面に転写するために、少量(50%未満)の湿し液を放出する。湿し液イメージが転写部材の表面に転写された後、インクは転写部材上に堆積し、湿し液イメージまたはパターンにしたがって、選択的に表面に付着する。
【0039】
上手く構成された湿し液吸収作像部材は高価であるため、この制約を除去することが望まれる。湿し液および相当な割合のキャリア固体から成る材料を噴射すると、良好な湿し液イメージ解像度を、吸収作像部材を使用することなく実現することができる。2つの別個の物理部材、すなわち、作像部材と転写部材との間の機能を分割することによって、固体キャリアの清掃および再利用についての課題を著しく減らすことができる。
【0040】
図3は、湿し液イメージのインク塗布前に形成および転写を容易にする、一実施形態による、インクによるデジタル印刷システムを示し、湿し液を含有する第1の成分と、ワックスなどの凝固キャリアを含有する第2の成分とを含む材料を噴射するよう構成された、湿し液パターン形成システム301を備える。単に液体の湿し液を噴射するのではなく、実施形態によるシステムは、インクジェットまたはインクジェット型装置を使用して、少なくとも湿し液成分と、2つ以上の成分が混和性である温度で単相で噴射されるキャリア成分とを含有するイメージ形成液体材料を噴射する。本実施形態では、湿し液滴を作像部材上に噴射して、続いて、生成した流体イメージをインク塗布前に転写する、インクジェットパターン形成システムを使用する。流体イメージは、噴射滴が作像部材表面と接触すると相分離することによって形成される。流体イメージが流体イメージローディングニップを通過すると、湿し液イメージの湿し液は、作像部材から分離し、流体イメージローディングニップで転写部材の表面上で転写流体イメージを形成する。インクは、生成した相分離した湿し液イメージに塗布することができ、それに応じて、作像部材表面の一部に選択的に付着する。
【0041】
特に、
図3は、作像部材305を示す。キャリア成分を凝固して、相当な割合の湿し液成分から分離する、単相で多成分の作像液を噴射することによって、良好な湿し液イメージ解像度を、吸収作像部材を使用しなくても実現することができる。固体キャリアの耐久性および確実な清掃のために、固く平滑な表面307を有することが望ましい。例えば、セラミック、ステンレス鋼、または陽極処理アルミニウムを、作像部材表面として使用することができる。
【0042】
湿し液が作像部材210の表面307上にパターン形成されると、噴射湿し液/固体キャリアの単相液滴の固体キャリア成分から相分離し、複数の液滴により形成される噴射材料の湿し液ドットまたは層の厚さを、測定することができる。インクジェットは、湿し液を所望の厚さにする方法で、湿し液/固体キャリアを噴射するよう制御することができる。インクジェットを備える湿し液パターン形成システムまたはサブシステム303は、イメージ状噴射液滴により、均一な湿し液層で潜像を作像部材表面上に形成するために構成される。
【0043】
システムは、湿し液/固体キャリア清掃システム309を備えることができる。システムは、湿し液イメージを形成するために噴射した湿し液/固体キャリア材料の固体成分を除去するために、接触ローラまたはブレード型清掃システムを備えることができる。加熱することで、固体キャリアを軟化/溶解し、湿し液を固体キャリアと再混合することができる。湿し液および固体キャリアは、インクまたは紙基材と接触しないので、異物混入を最小とし、除去した湿し液およびキャリアを容易に再使用することができる。
【0044】
システムは、インクローラ319を備え、転写部材335の表面331にインクを塗布することができる。システムは、転写部材清掃システム339を備え、インクイメージの媒体への転写後に、転写部材からインクを除去することができる。
【0045】
転写部材335は、作像部材305を用いて湿し液パターンまたはイメージローディングニップを形成するよう構成することができ、作像部材表面307の領域上に堆積した湿し液イメージを、ニップでの圧力下で、転写部材表面331に転写する。表面307上に形成されたイメージは、相分離した液体湿し液で湿らされた固体キャリアを備え、転写部材表面331に転写され、転写部材表面331上に形成されたイメージは、インク塗布前に、液体湿し液を備える。特に、光圧を、転写部材表面331と作像部材表面307との間に印加して、湿し液イメージの転写を容易にすることができる。転写される湿し液の量は、接触圧力調整によって調整することができる。
【0046】
湿し液イメージが転写部材335に転写された後、インクローラ319からのインクは、転写部材表面331に塗布され、インクパターンまたはイメージを形成することができる。インクパターンまたはイメージは、湿し液パターンのネガとなることができるか、または湿し液パターンに対応することができる。インクイメージは、基材搬送ロール340と転写部材335とによって画定されるインクイメージ転写ニップで媒体に転写することができる。基材搬送ロール340は、例えば、転写部材表面331に対して給紙装置341に働きかけ、転写部材335から、給紙装置341によって運ばれる媒体へのインクイメージの接触転写を容易にする。
【0047】
システムは、レオロジー調整システム345を備え、インクイメージ転写ニップでインクイメージを転写する前に、インクイメージのインクの粘性を高めることができる。例えば、システムは、硬化システム347を備え、転写部材335から、給紙装置341によって運ばれた媒体へインクイメージを転写した後に、媒体上のインクイメージを硬化することができる。レオロジー調整システム345は、転写部材335の前に、媒体処理方向に対して、位置決めすることができる。硬化システム347は、転写部材335の後に、媒体処理方向に対して、位置決めすることができる。転写部材335から媒体にインクイメージを転写した後、残留インクは、転写部材清掃システム339を用いて除去することができる。
【0048】
作像部材表面307から湿し液パターンを転写した後、作像部材305を、新しいサイクルに備えて清掃することができる。作像部材表面307を清掃するために、さまざまな方法を使用することができ、そのような方法には、高圧力、スキージー型装置、熱、対流、吸い取り、および真空システムなどがある。これらの方法は組み合わせて実行することができ、そうすることが好ましい。高圧清掃方法は、転写部材335とその表面331とによって、および作像部材305とその表面307とによって画定される湿し液パターンローディングニップで使用される圧力よりも著しく高い圧力を用いることができる。
【0049】
図4は、一実施形態によるデジタル平版印刷のために構成された可変データ平版印刷システムを使用する、インクによるデジタル印刷のための方法400を示す。本方法は、S401で、作像液搬送温度で混和性であり、同位相である湿し液成分と、相変化しているか、もしくは凝固しているキャリア成分とを有し、比較的低い温度、例えば、作像部材表面に接するときの湿し液およびキャリアの温度で相分離している多成分作像液を提供することを備えることができる。
【0050】
本方法は、作像液材料をイメージデータにしたがって作像部材表面上に噴射することを含むことができ、その結果、S405で、作像液の第1の湿し液成分が、作像部材表面と接すると凝固するキャリア成分から相分離すると、パターン形成された湿し液イメージが形成される。作像材料は、湿し液、および成分が混和性で、単一の、実質的に液相である温度で噴射されるキャリアである。噴射材料が作像部材表面と接して冷やされると、固体キャリアが凝固し、固体キャリアを含有する噴射液滴が不要に広がることを防ぎ、湿し液が固体キャリアの表面に流動し、キャリアが湿り、湿し液イメージを形成する。
【0051】
本方法は、S410で、固体キャリアに上塗りする湿し液イメージを有する作像部材の表面にインク塗布することを備えることができる。例えば、インクは、作像部材の一部に付着し、湿し液イメージに対応するネガまたはポジイメージを形成することができる。
【0052】
本方法は、S410でインク塗布することによって形成したインクパターンまたはイメージを、S411で基材に転写することを備えることができる。基材は、インクパターンを記録するのに適切な、現在公知の、または後に開発されるあらゆる基材とすることができる。インクは、基材搬送路を用いて運ばれる紙などの基材に転写することができる。基材搬送路は、作像部材と基材搬送ロールとによって形成された転写ニップを介して基材を運ぶよう構成することができる。インクイメージを調整して、作像部材と基材搬送ロールとによって形成された圧力ニップでインクイメージを効果的に転写することに備えて、インクの粘性を高めることができる。特に、本方法は、インクイメージをあらかじめ硬化すること、または、インクイメージを、紙や包装などの基材に転写する前に、インクイメージを形成するインクのレオロジー特性を調整することを含むことができる。
【0053】
本方法は、S421で、作像部材を清掃して、インクパターン形成またはイメージ転写後に残っているインクを除去することを備えることができる。本方法は、S421で、作像部材を清掃することを備えることができる。特に、作像部材は、作像部材表面上に残っている湿し液および/または固体キャリアを除去するよう構成された清掃システムを用いて清掃することができる。
【0054】
図5は、例えば、
図3に示すようなシステムで有用となる一実施形態によるデジタル平版印刷のために構成された可変データ平版印刷システムを使用する、インクによるデジタル印刷のための方法400を示す。本方法は、S501で、作像液搬送温度で混和性であり、同位相である湿し液成分と、相変化しているか、もしくは凝固しているキャリア成分とを有し、比較的低い温度、例えば、作像部材表面に接するときの湿し液およびキャリアの温度で相分離している多成分作像液を提供することを備えることができる。
【0055】
本方法は、作像液材料をイメージデータにしたがって作像部材表面上に噴射することを含むことができ、その結果、S505で、作像液の第1の湿し液成分が、作像部材表面と接すると凝固するキャリア成分から相分離すると、パターン形成された湿し液イメージが形成される。作像材料は、湿し液、および成分が混和性で、単一の、実質的に液相である温度で噴射されるキャリアである。噴射材料が作像部材表面と接して冷やされると、固体キャリアが凝固し、固体キャリアを含有する噴射液滴が不要に広がることを防ぎ、湿し液が固体キャリアの表面に流動し、キャリアが湿り、湿し液イメージを形成する。
【0056】
本方法は、S507で、湿し液パターンまたはイメージを転写部材に転写することを備えることができる。特に、湿し液イメージは、作像部材と転写部材とによって形成された湿し液パターン(または、イメージ)ローディングニップでの接触圧力下で転写することができる。湿し液イメージは、S507で、ローディングニップで作像部材から転写部材に分割、刻印、または接触転写することができ、作像部材表面上に、固体キャリア成分が残る。
【0057】
S509で、本方法は、転写部材表面上に堆積した転写湿し液イメージを有する転写部材の表面にインク塗布することを備えることができる。例えば、インクは、転写部材表面の一部に付着し、湿し液イメージのポジまたはネガイメージを形成することができる。
【0058】
本方法は、S509でのインク塗布によって形成したインクパターンを、S511で基材に転写することを備えることができる。基材は、インクパターンを記録するのに適切な、現在公知の、または後に開発されるあらゆる基材とすることができる。インクは、基材搬送路を用いて運ばれる紙などの基材に転写することができる。基材搬送路は、転写部材と基材搬送ロールとによって形成された転写ニップを介して基材を運ぶよう構成することができる。インクイメージを調整して、転写部材と基材搬送ロールとによって形成された圧力ニップでインクイメージを効果的に転写することに備えて、インクの粘性を高めることができる。特に、本方法は、インクイメージをあらかじめ硬化すること、または、インクイメージを紙や包装などの基材に転写する前に、インクイメージを形成するインクのレオロジー特性を調整することを含むことができる。
【0059】
本方法は、S515で、転写部材を清掃して、インクパターン形成、または転写ロールから基材へのイメージ転写後に残っているインクを除去することを備えることができる。本方法は、S521で、作像部材を清掃することを備えることができる。特に、作像部材は、S507で湿し液イメージを作像部材から転写部材に転写した後、作像部材表面上に残っている湿し液および/または固体キャリアを除去するよう構成された清掃システムを用いて清掃することができる。