特許第6285710号(P6285710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285710
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】フィルム固定型キャリア
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20180215BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20180215BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   C09J7/00
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-266763(P2013-266763)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-122461(P2015-122461A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222749
【氏名又は名称】東洋樹脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100063842
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118119
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 大典
(72)【発明者】
【氏名】風間 均
(72)【発明者】
【氏名】塚田 俊雄
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−146946(JP,U)
【文献】 国際公開第2009/075153(WO,A1)
【文献】 特開平08−181194(JP,A)
【文献】 特開平05−343505(JP,A)
【文献】 特開2010−147343(JP,A)
【文献】 特開2012−114265(JP,A)
【文献】 米国特許第04644639(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C09J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外枠と内枠間に粘着フィルムを挟んで保持するフィルム固定型キャリアであって、前記外枠に形成された開口部に前記内枠が嵌め込み自在に構成され、前記内枠の外側部にばね部を備えて構成され、前記ばね部は、前記内枠の下面に、前記内枠の周囲に亘って形成した縦溝と、前記内枠の外側面及び下面から前記縦溝に達する複数の横溝により、前記内枠の外側部に複数形成されていることを特徴とするフィルム固定型キャリア。
【請求項2】
外枠と内枠間に粘着フィルムを挟んで保持するフィルム固定型キャリアであって、前記外枠に形成された開口部に前記内枠が嵌め込み自在に構成され、前記内枠の外側部にばね部を備えて構成され、前記ばね部は、前記内枠の上面に、前記内枠の周囲に亘って形成した縦溝と、前記内枠の外側面及び上面から前記縦溝に達する複数の横溝により、前記内枠の外側部に複数形成されていることを特徴とするフィルム固定型キャリア。
【請求項3】
外枠と内枠間に粘着フィルムを挟んで保持するフィルム固定型キャリアであって、前記外枠に形成された開口部に前記内枠が嵌め込み自在に構成され、前記内枠の外側部にばね部を備えて構成され、前記ばね部は、前記内枠の上面から下面方向に、又は、下面から上面方向に、前記内枠の周囲に亘って形成した縦溝により形成されていることを特徴とするフィルム固定型キャリア。
【請求項4】
外枠と内枠間に粘着フィルムを挟んで保持するフィルム固定型キャリアであって、前記外枠に形成された開口部に前記内枠が嵌め込み自在に構成され、前記内枠の外側部又は/及び前記外枠の内側周面部にばね部を備えて構成され、前記外枠の内側周面には凹部が形成され、前記内枠の外側面には、外方向に突出する凸部が形成され、前記外枠と前記内枠の嵌合時に、前記外枠の凹部と前記内枠の凸部は嵌り合わず、保持される粘着フィルムを前記凸部と前記凹部の上端及び下端との縦断面視で2点で保持し、前記凸部は前記ばね部に形成されていることを特徴とするフィルム固定型キャリア。
【請求項5】
前記横溝は、前記内枠の直径方向に形成された構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム固定型キャリア。
【請求項6】
前記横溝は、前記内枠の直径方向と交差する方向に形成された構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム固定型キャリア。
【請求項7】
前記横溝は前記内枠の円周方向に均等の間隔で形成されていることを特徴とする請求項1、2、5又は6に記載のフィルム固定型キャリア。
【請求項8】
前記ばね部は、少なくとも前記外枠と前記内枠間に粘着フィルムを挟んで設置する時に圧縮されていることを特徴とする請求項1から7のうちいずれか1項に記載のフィルム固定型キャリア。
【請求項9】
前記ばね部が、粘着フィルムを設置しないで前記外枠に前記内枠を嵌め込んだ平時には、前記ばね部と対向する前記外枠又は/及び前記内枠と接触するように、或いは、前記ばね部と対向する前記外枠又は/及び前記内枠と、粘着フィルムの厚さ未満の間隔をもって位置するように形成されていることを特徴とする請求項1から8のうちいずれか1項にのフィルム固定型キャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外枠と内枠を備えたキャリアであって、外枠と内枠が嵌り合い、外枠と内枠間に粘着フィルムを挟みこんで、粘着フィルムを固定し、粘着フィルム上に接着したシリコンウエハ、ICチップその他の物を保持するためのキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリコンウエハやICチップの運搬、保管や製造工程において、シリコンウエハやICチップを保持するために、粘着フィルムとグリップリングが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。この粘着フィルムは、エラストマーや合成樹脂製の伸縮性を有するフィルムで、片面に粘着層を有し、粘着層上にシリコンウエハやICチップを貼着し、保持することが出来るものである。
【0003】
又、グリップリングはアウターリング及びインナーリングで構成される二重リング構造であり、アウターリング及びインナーリングは夫々縦断面形状が四角形のリング状の部材であり、アウターリングの内径とインナーリングの外径は略等しく形成されている。そして、インナーリングの外側面をアウターリングの内側面に対向させて、インナーリングをアウターリングに嵌合させ、インナーリングとアウターリング間に伸縮性のあるフィルムを挟み込むことにより、フィルムを張った状態で保持することが出来るものである。
【0004】
そして、グリップリングで粘着フィルムを張った状態で保持させ、粘着フィルム上にシリコンウエハやICチップを貼着し、シリコンウエハやICチップを保持させていた。又、グリップリングでシリコンウエハを保持したままICチップの製造工程に使用する為、グリップリングが保持枠に嵌め込まれて用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−34435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の合成樹脂製のグリップリングは、他の部材を用いずに、インナーリングとアウターリング間に伸縮性のあるフィルムを挟み込み、フィルムを張った状態に保持するために、インナーリングとアウターリングは嵌り合う形状に形成され、インナーリングとアウターリング間には隙間が形成されていない。又、グリップリングとグリップリングを保持する平板状の保持枠も、他の部材を用いずに、相互に嵌めあって固定する構造であり、グリップリングのアウターリングと保持枠間には隙間が形成されていない。
【0007】
そして、このように嵌り合う箇所に遊びがない形状や構造のため、アウターリング及びインナーリング、グリップリング及びグリップリングの保持枠は、相互の着脱、粘着フィルムの着脱が容易ではなかった。又、相互への着脱時、粘着フィルムの着脱時に破損し易いという問題点があった。
【0008】
又、同様の理由から、挟み込んで保持する粘着フィルムの厚さの変化に対応することが出来ず、粘着フィルムの厚さが薄く変化した場合には粘着フィルムの保持及び張りが確実に行えず、粘着フィルムの厚さが厚く変化した場合には粘着フィルムの設置が困難であり、又、アウターリング及びインナーリングが破損しやすいという問題点があった。
【0009】
更に、シリコンウエハやICチップを保持したグリップリングは、ICチップの製造工程、例えば電極のハンダ付け工程において、高温にさらされ、インナーリングが加熱により膨張してアウターリングに引張力がかかり、アウターリングが破損してしまうことがあった。そして、このようにアウターリングが破損することにより、シリコンウエハやICチップ等の被保持物を保持することが出来なくなっていた。
【0010】
そこで、本発明は、外枠と内枠で挟んで粘着フィルムを張った状態で保持するキャリアにおいて、外枠と内枠の相互の着脱、粘着フィルムの着脱を容易とすることを目的とする。
【0011】
又、外枠と内枠との相互への着脱時、粘着フィルムの着脱時、その他の使用時に破損し難くすることを目的とする。
【0012】
更に、挟み込んで保持する粘着フィルムの厚さの変化に対応が出来、粘着フィルムの厚さが変化した場合であっても粘着フィルムの設置が容易で、且つ粘着フィルムの保持及び張りを確実に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための手段としての本発明は、外枠と内枠間に粘着フィルムを挟んで保持するフィルム固定型キャリアであって、前記外枠に形成された開口部に前記内枠が嵌め込み自在に構成され、前記内枠の外側部又は/及び前記外枠の内側周面部にばね部を備えて構成されていることを特徴とするフィルム固定型キャリアである。
【0014】
又、上記フィルム固定型キャリアにおいて、前記ばね部は、少なくとも前記外枠と前記内枠間に粘着フィルムを挟んで設置する時に圧縮されていることを特徴とするフィルム固定型キャリアである。
【0015】
又、上記フィルム固定型キャリアにおいて、前記ばね部が、粘着フィルムを設置しないで前記外枠に前記内枠を嵌め込んだ平時には、前記ばね部と対向する前記外枠又は/及び前記内枠と接触するように、或いは、前記ばね部と対向する前記外枠又は/及び前記内枠と、粘着フィルムの厚さ未満の間隔をもって位置するように形成されていることを特徴とするフィルム固定型キャリアである。
【0016】
又、上記フィルム固定型キャリアにおいて、前記ばね部は、前記内枠の下面に、前記内枠の周囲に亘って形成した縦溝と、前記内枠の外側面及び下面から前記縦溝に達する複数の横溝により、前記内枠の外側部に複数形成されていることを特徴とするフィルム固定型キャリアである。
【0017】
又、上記フィルム固定型キャリアにおいて、前記ばね部は、前記内枠の上面に、前記内枠の周囲に亘って形成した縦溝と、前記内枠の外側面及び上面から前記縦溝に達する複数の横溝により、前記内枠の外側部に複数形成されていることを特徴とするフィルム固定型キャリアである。
【0018】
又、上記フィルム固定型キャリアにおいて、前記ばね部は、前記外側面から前記内枠の直径方向に形成した複数の横溝のみで形成されていることを特徴とするフィルム固定型キャリアである。
【0019】
又、上記フィルム固定型キャリアにおいて、前記ばね部は、前記外側面から前記内枠の直径方向と交差する方向に形成した複数の横溝により形成されていることを特徴とするフィルム固定型キャリアである。
【0020】
又、上記フィルム固定型キャリアにおいて、前記ばね部は、前記内枠の上面から下面方向に、又は、下面から上面方向に、前記内枠の周囲に亘って形成した縦溝により形成されていることを特徴とするフィルム固定型キャリアである。
【0021】
又、上記フィルム固定型キャリアにおいて、前記横溝は前記内枠の円周方向に均等の間隔で形成することを特徴とするフィルム固定型キャリアである。
【0022】
又、上記フィルム固定型キャリアにおいて、前記外枠の内側周面には凹部が形成され、前記内枠の外側面には、外方向に突出する凸部が形成され、前記外枠と前記内枠の嵌合時に、前記外枠の凹部と前記内枠の凸部は嵌り合わず、保持される粘着フィルムを前記凸部と前記凹部の上端及び下端との縦断面視で2点で保持し、前記凸部は前記ばね部に形成されていることを特徴とするフィルム固定型キャリアである。
【発明の効果】
【0023】
以上のような本発明によれば、外枠と内枠で挟んで粘着フィルムを張った状態で保持するキャリアにおいて、外枠と内枠の相互の着脱、粘着フィルムの着脱を容易とすることが可能となった。
【0024】
又、外枠と内枠との相互への着脱時、粘着フィルムの着脱時、その他の使用時に破損し難くすることが可能となった。
【0025】
又、挟み込んで保持する粘着フィルムの厚さの変化に対応が出来、粘着フィルムの厚さが変化した場合であっても粘着フィルムの設置が容易で、且つ粘着フィルムの保持及び張りを確実に行うことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明キャリアの一実施例の斜視図
図2】本発明キャリアの一実施例の使用状態平面図
図3】本発明キャリアの一実施例の分解斜視図
図4】内枠の一実施例の底面図
図5図2A−A断面図
図6図5の一部拡大断面図
図7】本発明キャリアの第二実施例一部拡大断面図
図8】本発明キャリアの第三実施例の使用状態平面図
図9図8B−B断面図
図10】本発明キャリアの第四実施例の使用状態平面図
図11図10C−C断面図
図12】内枠の実施例の平面図
図13図12D−D断面図
図14】内枠の実施例の平面図
図15図14E−E断面図
図16】内枠の実施例の平面図
図17図16F−F断面図
図18】内枠の実施例の平面図
図19図18G−G断面図
図20】内枠の実施例の平面図
図21】本発明キャリアの第五実施例の使用状態断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下本発明の実施の形態を図を参照して説明する。本発明は、粘着フィルムを張った状態に維持し、粘着フィルム上に被保持物を貼り付けて保持するフィルム固定型のキャリアであり、外枠に形成された開口部に内枠が嵌め込み自在に構成され、内枠の外側部又は/及び外枠の内側周面部にばね部を備えて構成されている。以下、内枠の外側部にばね部が形成された実施の形態を例に説明する。
【0028】
図1図3に示すように、キャリア1は、外枠2と内枠8を備え、外枠2と内枠8間に粘着フィルム10を挟んで、外枠2に形成された開口部22に内枠8が嵌め込み自在に構成され、内枠8には、少なくとも外枠2と内枠8間に粘着フィルム10を挟んで設置する時に圧縮されるばね部91を備えている。
【0029】
尚、このキャリア1の使用範囲は特に限定されず、ICチップの製造工程、電子部品の保管や運搬、電子部品を含む各種部品の検査、生物の調査、塵芥のカウント、細菌の観察、細菌培養の観察、花粉や粉塵の評価、マイクロマシーンの保管等に用いることが出来る。従って、このキャリア1で保持する被保持物は、以下の実施の形態ではシリコンウエハを例に説明するが、特に限定されず、シリコンウエハの他、ICチップ、電子部品、その他の部品、生物、その他の物が含まれる。
【0030】
外枠2と内枠8の材質は特に限定されないが、合成樹脂が好適に用いられ、特にキャリア1がICチップの製造工程に用いられる場合には、ICチップの製造工程、例えば電極のハンダ付け工程において、要求される耐熱温度を備えた合成樹脂が好ましい。具体例としては、耐熱性が要求されない場合には、耐熱性が低いが、曲げ強度が高いPPS等を使用すればよく、耐熱性が要求される場合には、150℃以上、好ましくは200℃以上の耐熱性を有する合成樹脂が望ましく、例えばLCP等を使用すればよい。
【0031】
外枠2は、平面視正方形の平板状の基部3の上面31の外周端から、外周に亘って側壁部4が上方に延びて設けられている。又、基部3の外側面34の下部外周端から、外周に亘って脚部5が下方及び外方に延びて設けられている。又、基部3には、内枠8が嵌め込まれる平面視円形の開口部22が基部3を貫通して形成されている。そして、開口部22により形成される、外枠2の内側周面6の上端には、開口部22の内方に延びる突起61が開口部22の周囲に亘って形成され、内側周面6の中間部には、縦断面四角形の凹部63が開口部22の周囲に亘って形成されている。
【0032】
内枠8は、図1図5に示すように、平面視で内側及び外側が円形の環状体であり、外枠2に形成された開口部22に嵌め込むことが可能な大きさ及び形状に形成されている。又、内枠8は、外側部81にばね部91を備えて構成されている。ばね部91は、内枠8の内方及び外方に移動可能に形成され、外枠2と内枠8間に粘着フィルム10を挟んで設置する時に、圧縮され、外枠2と内枠8間に挟んだ粘着フィルム10を外枠2へ押し付ける作用を有している。
【0033】
内枠8は、粘着フィルム10を設置しないで外枠2に内枠8を嵌め込んだ平時には、外枠2の内側周面6と内枠8の外側面89が対向し、ばね部91の少なくとも1部がばね部91と対向する外枠2の内側周面6と接触するように、或いは、ばね部91の少なくとも1部が外枠2の内側周面6と、挟む粘着フィルム10の厚さ未満の間隔をもって位置するように形成されている。
【0034】
即ち、内枠8の外側面89のばね部部分の直径は、外枠2の内側周面6の直径以上の長さ、又は、外枠2の内側周面6の直径より短い長さであって、その差が挟むフィルムの厚さの2倍未満の長さに形成されている。
【0035】
そして、図3図6に示す実施の形態では、内枠8は、外側面89の直径が、外枠2の内側周面6の直径以上の長さに形成されている。そして、内枠8の外側部81の一部が、横溝85により円周方向に複数に分割され、内枠8の内方及び外方に移動可能な複数のばね部91が形成されている。詳しくは、ばね部91は、内枠8の本体80の下面87から上面83方向に、且つ内枠8の周囲に亘って形成した環状の縦溝84と、外側面89及び下面87から縦溝84に達する、内枠8の直径方向に形成する複数の横溝85により、内枠8の外側部81に複数形成されている。
【0036】
横溝85は円周方向に均等の間隔で形成することが好ましい。このような構成とすることで、内枠8は円周方向に亘って均一に収縮、拡張して、粘着フィルム10を均一に張り、保持することが出来るからである。又、ばね部91の形成数は特に限定されず、内枠8の大きさや材質等に応じて所定の撓みやすさ及び反発力を備えるような数を形成すればよいが、内枠8の円周上に1個の横溝85のみを形成して1個のばね部のみ形成する構成でもよい。
【0037】
又、縦溝84の高さPは特に限定されないが、ばね部が撓みやすくするために、内枠8の高さの1/2以上とすることが好ましい。又、横溝85の高さR1は縦溝84の高さPと同一に形成するが、横溝85の高さは縦溝84の高さPと同一に限定されず、図7に示すように、横溝85の高さR2を内枠8の高さと同一に形成する等横溝85の高さと縦溝84の高さを異ならせてもよい。
【0038】
又、内枠8の外側部81の上部には外周に亘って段部88が形成され、外側部81の中間部であって、ばね部91上には、外枠2の凹部63に対応する位置に外方向に突出する縦断面円弧状の凸部82が内枠8の周囲に亘って形成されている。そして、凸部82が内枠8の最外側面となり、凸部82の直径が内枠8の外側面89の直径となっている。又、凸部82の高さLが外枠2の凹部63の高さH以上の長さに形成されている。
【0039】
このような構成であるので、粘着フィルム10を挟み込んで外枠2に内枠8を嵌め込む際には、凸部82が外枠2の内側周面6に当接し、ばね部91は内枠8の内方に移動し一部が縦溝84内に入り圧縮され、外枠2と内枠8の嵌合時には、ばね部91は反発力で内枠8の外方に移動し、内枠8の凸部82の一先端部のみが外枠2の凹部63に挿入され、外枠2の凹部63と内枠8の凸部82は完全には嵌り合わず、粘着フィルム10は、凸部82と凹部63の上端631及び下端632との縦断面視で2点で押さえ付けられて、外枠2と内枠8間に挟まれて保持される。
【0040】
このように、ばね部91で粘着フィルム10を外枠2に押さえ付けて固定するので、挟み込む粘着フィルム10の厚さの違いに対応出来、しかも粘着フィルム10を確実に保持することが可能となっている。又、外枠2と内枠8の相互の着脱、粘着フィルム10の着脱が容易となり、更に、キャリア1の破損を防止することが出来る。
【0041】
又、粘着フィルム10をキャリア1に、ばね部91において縦断面視で2点で押さえて固定することにより、1点、3点以上又は面で固定する方法に比べて、粘着フィルム10のずれ及び緩みを抑制し、キャリア1に強固に固定することが可能となっている。同時に外枠2の凹部63に内枠8の凸部82の一部が挿入されて、外枠2及び内枠8の結合強度を高めることが可能となっている。尚、粘着フィルム10の破損防止のため、外枠2の凹部63の上端631及び下端632の角部には面取りを施すことが好ましい。
【0042】
このように、外枠2に形成された開口部22の内径と内枠8の外径が略等しく、外枠2の内側に内枠8を粘着フィルム10を介して嵌め込ませて一体的に固定され、キャリア1が構成される。キャリア1の使用態様の一具体例としては、図2図3及び図5によく示すように、外枠2に内枠8を嵌め込み、外枠2と内枠8間に上面に粘着層を有すると共に伸縮性を有する粘着フィルム10を挟み込むことにより、粘着フィルム10を張った状態で保持し、粘着フィルム10上に貼着した被保持物の一例としてのシリコンウエハ11を保持するものである。
【0043】
図5及び図6の断面図に示すように、粘着フィルム10をキャリア1へ設置する場合には、図3に示すように、外枠2と内枠8間に粘着フィルム10を位置させ、内枠8を外枠2の開口部22へ挿入させて行い、外枠2と内枠8の嵌合時には、外枠2の突起61が内枠8の段部88に挿入されて位置し、粘着フィルム10は、外枠2の突起61と内枠8の段部88間に挟まれることにより弛まずに張ることが出来る。尚、内枠8を外枠2の上方から開口部22に挿入可能な構成とするため等の理由から、外枠2の開口部22の突起及び内枠8の段部を形成しない構成としてもよい。
【0044】
キャリア1は、複数個を上下方向に重ねて保管、運搬等の使用をすることも可能である。上下方向に重ねる場合、下段の外枠2の側壁部4の上端41が、上段の外枠2の下面33に当接して上段の外枠2を支持する。同時に、下段の外枠2の側壁部4は上段の外枠2の脚部5の内側に挿入され、下段の側壁部4の外側面42が上段の脚部5の内側面51と対向し、下段の側壁部4と上段の脚部5が相互に横方向への移動を規制して、下段の外枠2と上段の外枠2とは相互にずれることがない。
【0045】
外枠2及び内枠8の製造方法としては、特に限定されないが、合成樹脂で成形する場合には、射出成形やトランスファ成形等の溶融させた樹脂を流動させて成形品を成形する方法を用いればよい。
【0046】
又、凸部82及び凹部63の形状は、上記形状に限定されず、粘着フィルム10を2点で挟んで固定できる形状であればよく、更に、外枠2に凸部、内枠8に凹部を形成する構成でもよい。
【0047】
又、上述のように、粘着フィルム10をキャリア1に縦断面視で2点で固定する構成に限定されず、1点、3点以上又は面で固定する方法としてもよい。このような構成としても、外枠2と内枠8が嵌り込んだ際に圧縮されて反発力で粘着フィルム10を外枠2に押し付けるばね部により粘着フィルム10を確実に固定することが可能である。例えば、図9に示すように、内枠18に凸部を形状せず、外枠12に凹部を形成しない構成としてもよい。
【0048】
更に、キャリアの形状として、図8及び図9に示すように、キャリア100はいわゆるグリップリングの形状とし、外枠12及び内枠18を平面視で円形の環状体とし、且つ断面が四角形であって、外枠12及び内枠18を略同一幅、同一高さに形成した構成や、図10及び図11に示すように、外枠102及び内枠108を所定幅を備えた環状の薄板状に形成し、内枠108を平面視で円形の環状体且つ断面が四角形とし、外枠102は、内周は円形に形成する一方、外形は円形の外側一部を切欠いて直線状の端部71を形成すると共に角部72が略円弧状の略正方形状に形成した構成等としてもよい。
【0049】
又、ばね部91は、上述のような構成に限定されず、図12及び図13に示すように、上述のような構成の縦溝84に替えて、内枠8の上面83から下面87方向に、且つ内枠8の周囲に亘って形成した縦溝804と外側面89及び上面83から縦溝804に達する複数の横溝85により形成してもよい。
【0050】
更に、図14及び図15に示すように、ばね部901は、横溝を形成せずに、内枠8の全周に亘って内枠8の下面87から上面83方向に形成した縦溝804のみにより1個のみを環状に形成してもよく、或いは、図16及び図17に示すように、ばね部902は、横溝を形成せずに、内枠8の全周に亘って内枠8の上面83から下面87方向に形成した縦溝805のみにより形成してもよい。
【0051】
又、図18及び図19に示すように、ばね部911は、外側面89から内枠8の直径方向に形成した複数の横溝85のみで形成することとしてもよい。このような構成の場合、ばね部911は、内枠8の直径方向につぶれたり、横溝85内に移動したりすることにより圧縮されてばねとして作用することが出来る。ばね部911は、縦溝を形成する上述のような実施の形態に比べて、横溝85を多数形成し、多数形成することが好ましい。又、この構成の横溝85は、内枠8の下面87及び上面83の一方の面から他方の面に達してもよいが達しなくてもよい。
【0052】
又、横溝のみでばね部を形成する場合及び横溝及び縦溝でばね部を形成する場合において、横溝は内枠8の直径方向に形成する構成に限定されず、図20に示すように、内枠8の直径方向と交差する方向に形成する構成の斜め横溝850とすることが出来る。斜め横溝850の側面は湾曲させると共に、対向する側面は縮径させて半三日月型に形成しているが、他の実施の形態のように直線状に形成してもよい。斜めの横溝850のみでばね部912を形成する場合、ばね部912は斜めの横溝850内、即ち内枠8の内方に移動し圧縮されたりすることによりばねとして作用することが出来る。
【0053】
尚、図1図3に示す実施形態では、内枠8は環状体であり、内側形状及び外側形状は平面視で円形であるが、内枠8の内側形状は平面視で円形に限定されず、多角形や楕円形等の他の形状としてもよい。
【0054】
又、図示はしないが、外枠及び内枠は、互いに嵌合可能であれば、外枠の開口部及び内枠の外側形状は平面視で円形に限定されず、キャリアは、外枠の開口部及び内枠の外側形状は平面視で正方形に形成する等、その他の多角形、楕円形等に形成してもよい。
【0055】
又、図21に示すように、キャリア111は、内枠800にはばね部を設けずに、外枠200の内側面部231に、少なくとも外枠200と内枠800間に粘着フィルム10を挟んで設置する時に圧縮されるばね部900を形成した構成としてもよい。この際のばね部900及び内側面部231の構造は、上述のようなばね部91及び内枠8の外側部81と同様な構造として形成することが出来る。
【0056】
更に、キャリアは、図示はしないが、外枠の内側面部及び内枠の外側部の双方にばね部を形成した構成でもよい。そして、外枠の内側面部及び内枠の外側部の夫々に形成したばね部同士が対向してもよいがしなくてもよい。又、ばね部は、内枠8の外側部81の全周に亘って形成してもよいが、一部にのみ形成してもよい。
【0057】
又、外枠2の凹部63及び内枠8の凸部82は、夫々外枠2の内側周面6及び内枠8の外側面89の全周に亘って形成してもよいが、一部にのみ形成してもよい。外枠2の凹部63を一部にのみ形成する場合には、内枠8の凸部82は凹部63に対応する個所のみに形成する。又、図示はしないが、外枠2の内側周面6に凸部を形成し、内枠8の外側部81に凹部を設けることとしてもよい。この場合、ばね部に凸部又は凹部を設けることが好ましい。
【0058】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されず、上記の実施の形態を適宜組み合わせて構成したものも含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のような本発明は、ICチップの製造工程に好適に用いることが出来、特に高耐熱性を有することにより、シリコンウエハの保管及び運搬からICチップの製造工程まで一貫して同じ保持容器で保持できるので好適に用いることが出来る。又、被保持物が限定されず、電子部品のみならず生物、微生物まで保持することが出来、理化学の分野においても使用することが出来る。
【符号の説明】
【0060】
1 キャリア
10 粘着フィルム
11 シリコンウエハ
2 外枠
22 開口部
3 基部
31 上面
34 外側面
4 側壁部
41 上端
42 外側面
5 脚部
51 内側面
6 内側周面
61 突起
63 凹部
631 凹部の上端
632 凹部の下端
8 内枠
80 本体
81 外側部
82 凸部
83 上面
84 縦溝
85 横溝
850 斜め横溝
87 下面
88 段部
89 外側面
91 ばね部
901 ばね部
902 ばね部
911 ばね部
912 ばね部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21