特許第6285732号(P6285732)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285732
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】ポリイソシアネート組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/10 20060101AFI20180215BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20180215BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   C08G18/10
   C08K5/521
   C08L75/04
【請求項の数】3
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-16390(P2014-16390)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-143291(P2015-143291A)
(43)【公開日】2015年8月6日
【審査請求日】2016年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】片川 洋徳
(72)【発明者】
【氏名】山内 理計
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 純
(72)【発明者】
【氏名】田中 勉
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−251369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/10
C08K 5/521
C08L 75/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン基および/またはアロファネート基を有し、脂肪族ジイソシアネート単位および/または脂環族ジイソシアネート単位からなるポリイソシアネート、および下記式(I)
【化1】
(式中、R、R、Rは、同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜20個の直鎖状、分岐状、環状を含むアルキル基、アリール基、を表わす。)で表わされるリン酸トリエステル化合物を90ppm含有する、ポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
前記ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネート単位からなるポリイソシアネートであって、脂肪族ジイソシアネートが少なくとも1,6−ジイソシアナトヘキサンを含む、請求項1記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
前記ポリイソシアネートが、赤外吸収スペクトル測定における(ウレタン基、アロファネート基吸収の合計)/(イソシアネート基吸収)の高さ比が0.05〜5.0である、請求項1または2に記載のポリイソシアネート組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートと水酸基平均数が2.0以上であるポリオール化合物を原料とし、ウレタン基やアロファネート基を含み、実質的にイソシアヌレート基を有しないポリイソシアネートは、公知であり、例えば、特許文献1〜3に記載されている。
上記のポリイソシアネートは、芳香族ジイソシアネートを原料とするポリイソシアネートと比べて、耐候性、耐熱性に優れる。また、イソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートと比べて、製造時に触媒を使用する必要がなく、使用するポリオール化合物を選択することにより、各種性能が発現するため、幅広く使用されている。しかし、上記のポリイソシアネートは、貯蔵条件によっては、貯蔵後に色度の上昇、粘度の増粘、イソシアネート基の含有率(以下、NCO含有率と記載する)の低下等が見られる場合があった。
【0003】
一方、イソシアヌレートおよび/または末端イソシアヌレートのポリオール付加体をイソシアヌレート化反応する際に、飽和脂肪酸金属塩の存在下、助触媒としてフェノールを、溶剤としてリン酸トリエステル化合物を用いることで、イソシアヌレート化が効率的に進行する技術が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
さらに、製造時に亜リン酸エステル系化合物を添加することで、黄変度の小さいポリイソシアネートが得られる技術も提案されている(例えば、特許文献5参照)。
また、イソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートに、酸性リン酸化合物や酸性リン酸エステルといったリン系化合物を添加することにより、密閉容器内および湿気接触状況での安定性を向上させる技術も提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−28518号公報
【特許文献2】特公昭63−37125号公報
【特許文献3】特開平8−325516号公報
【特許文献4】特開昭63−93770号公報
【特許文献5】特開昭63−96178号公報
【特許文献6】特開2004−175888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献4〜6は、いずれもイソシアヌレート基を含むポリイソシアネートが主成分であるポリイソシアネートに関するものである。また、貯蔵後のポリイソシアネートの色度、粘度、NCO含有率の変化については、何ら検討がなされていない。
そこで、本発明は、ウレタン基やアロファネート基を含むポリイソシアネートにおいて、貯蔵後の色度、粘度、NCO含有率の変化が小さいポリイソシアネートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究した結果、ウレタン基および/またはアロファネート基を有し、脂肪族ジイソシアネート単位および/または脂環族ジイソシアネート単位からなるポリイソシアネート、および特定のリン酸トリエステル化合物を特定量含有するポリイソシアネート組成物が上記課題を達成できることを発見し、本発明を成すに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
ウレタン基および/またはアロファネート基を有し、脂肪族ジイソシアネート単位および/または脂環族ジイソシアネート単位からなるポリイソシアネート、および下記式(I)
【化1】
(式中、R、R、Rは、同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜20個の直鎖状、分岐状、環状を含むアルキル基、アリール基、を表わす。)で表わされるリン酸トリエステル化合物を90ppm含有する、ポリイソシアネート組成物。
〔2〕
前記ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネート単位からなるポリイソシアネートであって、脂肪族ジイソシアネートが少なくとも1,6−ジイソシアナトヘキサンを含む、前記〔1〕記載のポリイソシアネート組成物。
〔3〕
前記ポリイソシアネートが、赤外吸収スペクトル測定における(ウレタン基、アロファネート基吸収の合計)/(イソシアネート基吸収)の高さ比が0.05〜5.0である、前記〔1〕または〔2〕に記載のポリイソシアネート組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、貯蔵後の色度、粘度、NCO含有率の変化が小さい、ウレタン基やアロファネート基を含むポリイソシアネート組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。なお、特に断りがない限り、「(メタ)アクリル」はメタクリルとアクリルを包含し、「(メタ)アクリレート」はメタクリレートとアクリレートを包含するものとする。
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、ウレタン基および/またはアロファネート基を有し、脂肪族ジイソシアネート単位および/または脂環族ジイソシアネート単位からなるポリイソシアネート、および下記式(I)
【0010】
【化2】
(式中、R1、R2、R3は、同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜20個の直鎖状、分岐状、環状を含むアルキル基、アリール基、を表わす。)で表わされるリン酸トリエステル化合物を0.1〜100ppm含有する、ポリイソシアネート組成物である。
【0011】
ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート単位および/または脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートと、ポリオール化合物を原料とすることで得られ、ウレタン基および/またはアロファネート基を含有する。
脂肪族ジイソシアネートとしては、炭素数4〜30のものが好ましく、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナトペンタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(以下、HDIと記載する)、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。中でも、工業的入手のしやすさからHDIが好ましい。脂肪族ジイソシアネートは、単独で使用してもいいし、2種以上を併用しても構わない。
【0012】
脂環族ジイソシアネートとしては、炭素数8〜30のものが好ましく、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと記載する)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートなどが例示される。中でも、耐候性、工業的入手の容易さから、IPDIが好ましい。脂環族ジイソシアネートは単独で使用してもいいし、2種以上を併用しても構わない。
これらのジイソシアネートの中でも、工業的な入手のしやすさ、ポリイソシアネート製造時の反応性からHDIがより好ましい。
【0013】
ポリイソシアネート中に、ウレタン基および/またはアロファネート基を形成するためには、原料として、ポリオール化合物が必須成分として使用される。使用するポリオール化合物を選択することで、多岐にわたる特徴を有するポリイソシアネートを製造することが可能である。
ポリオール化合物としては、1分子中に水酸基を有する化合物であれば、特に制限されないが、その中でも、統計的1分子が持つ水酸基数(以下、水酸基平均数)が2.0以上であるポリオール化合物が好ましく、より好ましくは、水酸基平均数が2.0〜10.0である。水酸基平均数が2.0以上であることで、架橋性に優れたポリイソシアネートが得られる。また、水酸基平均数を10.0以下とすることで、取扱いやすい粘度のポリイソシアネートを得ることができる。水酸基平均数の上限値としては、より好ましくは、8.5であり、さらに好ましくは、7.0である。
【0014】
ポリオール化合物の数平均分子量は、50〜10,000であることが好ましい。数平均分子量が10,000以下であることで、取扱いやすい粘度のポリイソシアネートを得ることができる。数平均分子量の下限値としては、70であることがより好ましい。また、数平均分子量の上限値は、より好ましくは、5,000であり、さらに好ましくは、3,000である。
ポリオール化合物としては、例えば、脂肪族ポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、アクリルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、フッ素ポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、エポキシ樹脂類などが挙げられる。
【0015】
その中で、脂肪族ポリオール類としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の直鎖ジオール類、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,2−ブタンジオール、2−メチル−2,3−ブタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2.5−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA、ポリブタジエンジオールなどの分岐ジオール類、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族トリオール類、ペンタエリトリトール等の脂肪族テトラオール類が挙げられる。脂肪族ジオール類の中では、結晶性抑制等の観点から、分岐ジオールを含むことが好ましい。
【0016】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、例えば水酸化物(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、強塩基性触媒(アルコラート、アルキルアミン等)、複合金属シアン化合物錯体(金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等)等を使用して、アルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド等)の単独又は混合物を、多価ヒドロキシ化合物にランダムまたはブロック付加して、得られるポリエーテルポリオール類;ポリアミン化合物(エチレンジアミン類等)にアルキレンオキシドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類;及びこれらポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類等が挙げられる。
【0017】
上記多価ヒドロキシ化合物としては、(i)例えば、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなど、(ii)例えば、エリトリトール、D−トレイトール、L−アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物、(iii)例えば、アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類、(iv)例えば、トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類、(v)例えば、ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類、(vi)例えば、スタキオースなどの四糖類、等が挙げられる。
【0018】
ポリエステルポリオールは、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等の二塩基酸等の単独又は混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2−メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等の多価アルコールの単独又は混合物とを、縮合反応させることによって得ることができる。例えば、上記の成分を混合し、そして約160〜220℃で加熱することによって、縮合反応を行うことができる。更に、例えば、ε−カプロラクトン等のラクトン類を、多価アルコールを用いて開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等もポリエステルポリオールとして用いることができる。これらのポリエステルポリオールは、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及びこれらから得られるポリイソシアネートを用いて変性させることが出来る。この場合、特に脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及びこれら得られるポリイソシアネートが、耐候性及び耐黄変性等の観点から好ましい。水系ベース塗料として用いる場合には、一部残した二塩基酸等の一部のカルボン酸を残存させておき、アミン、アンモニア等の塩基で中和することで、水溶性、あるいは水分散性の樹脂とすることができる。この中でも、耐候性の観点から、ポリカプロラクトンポリオール類が好ましい。
【0019】
アクリルポリオールは、例えば、一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーと、当該重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとを、共重合させることによって得ることができる。アクリルポリオールは、例えば、活性水素を有するアクリル酸エステル類(アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル等)、または活性水素を有するメタクリル酸エステル類(メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチル等)、グリセリンやトリメチロールプロパン等のトリオールの(メタ)アクリル酸モノエステル等の多価活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類;ポリエーテルポリオール類(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等)と上記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類とのモノエーテル;グリシジル(メタ)アクリレートと酢酸、プロピオン酸、p−tert−ブチル安息香酸等の一塩基酸との付加物;上記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類の活性水素にラクトン類(ε−カプロラクタム、γ−バレロラクトン等)を開環重合させることにより得られる付加物からなる群より選ばれる1種以上を必須成分として、必用に応じて(メタ)アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等)、不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等)、不飽和アミド類(アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等)、又は加水分解性シリル基を有するビニルモノマー類(ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロプロピルトリメトキシシラン等)、その他の重合性モノマー(スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリルニトリル、フマル酸ジブチル等)からなる群より選ばれる1種以上を、常法により共重合させて得ることができる。例えば、上記の単量体成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合し、必要に応じて有機溶剤等で希釈することによって、アクリルポリオールを得ることができる。
ポリオレフィンポリオール類としては、ポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレンなどが挙げられる。ポリオールの水酸基平均数は2以上であることが好ましい。
【0020】
フッ素ポリオール類は、分子内にフッ素を含むポリオールであり、例えば、特開昭57−34107号公報、特開昭61−275311号公報で開示されているフルオロオレフィン、シクロビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体が挙げられる。
ポリカーボネートポリオール類としては、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート等の低分子カーボネート化合物と、前述の脂肪族ポリオール類とを、縮重合して得られるものが挙げられる。
【0021】
エポキシ樹脂類としては、例えばノボラック型、β−メチルエピクロ型、環状オキシラン型、グリシジルエーテル型、グリコールエーテル型、脂肪族不飽和化合物のエポキシ型、エポキシ化脂肪酸エステル型、多価カルボン酸エステル型、アミノグルシジル型、ハロゲン型、レゾルシン型当のエポキシ樹脂類が挙げられる。
上記の中でも、入手のし易さの面から、脂肪族ポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、アクリルポリオールが好ましく、より好ましくは、脂肪族ポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類であり、さらに好ましくは、ポリエーテルポリオール類である。
【0022】
さらに、ポリエーテルポリオール類の中でも、各種基材との相溶性、分散性の観点からプロピレンオキシドを含有するポリエーテルポリオールが好ましい。
ポリイソシアネートは、ウレタン基および/またはアロファネート基を含有する。ウレタン基および/またはアロファネート基を有することで、分子間で水素結合しうる構造を有していることから、基材、あるいは、他のコーティング層との密着性に優れるポリイソシアネート組成物を得ることができる。ウレタン基は下記式(II)で示される構造であり
、アロファネート基は下記式(III)で示される構造である。
【0023】
【化3】
【0024】
【化4】
【0025】
ポリイソシアネート中のウレタン基とアロファネート基の合計量は、特に制限されないが、赤外吸収スペクトル測定において、(ウレタン基、アロファネート基吸収の合計)/(イソシアネート基吸収)の高さ比が0.05〜5.0であることが好ましい。当該高さ比が、0.05以上であることで、基材との密着性を発現することができ、5.0以下であることで、NCO含有率の低下を防ぐことができる。当該高さ比の下限値は、0.20であることがより好ましく、さらに好ましくは、0.40であり、最も好ましくは、0.60である。また、当該高さ比の上限値は、4.0であることがより好ましく、さらに好ましくは、3.0であり、最も好ましくは、2.0である。
【0026】
ポリイソシアネート中のウレタン基とアロファネート基とのモル比は特に限定されないが、1H−NMR測定における(アロファネート基のモル数)/(ウレタン基、アロファネート基の合計モル数)のモル比が0.05〜0.90であることが好ましい。0.05以上であることで、ポリイソシアネートの統計的1分子が持つイソシアネート基数(以下、イソシアネート基平均数)を高めることが可能であり、0.90以下であることで、塗膜の強靭性を発現することができる。また、当該下限値は、より好ましくは、0.10であり、さらに好ましくは、0.15である。また、当該上限値は、より好ましくは0.70であり、さらに好ましくは0.50である。
【0027】
ポリイソシアネート中のイソシアヌレート基の含有量は、赤外吸収スペクトル測定における(イソシアヌレート基吸収)/(ウレタン基、アロファネート基吸収の合計)の高さ比が0.20以下であることが好ましい。また、当該モル比は0.15以下であることがより好ましく、さらに好ましくは0.10以下であり、最も好ましくは、0.05以下である。イソシアヌレート基は下記式(IV)で示される構造である。
【0028】
【化5】
【0029】
ポリイソアネートは、ウレトジオン基を含有しても構わない。ウレトジオン基は下記式(V)で示される構造である。
【化6】
【0030】
ウレトジオン基の含有量は、特に限定されないが、赤外吸収スペクトル測定における(ウレトジオン基吸収)/(ウレタン基、アロファネート基吸収の合計)の高さ比が0.40以下であることが好ましい。当該高さ比が0.40を超えると、貯蔵後のHDIモノマー増加量が多くなり、ポリイソシアネート組成物の耐熱性が不十分となる場合がある。当該高さ比は、より好ましくは、0.35以下であり、さらに好ましくは、0.30以下である。
【0031】
上記したウレタン基、アロファネート基、イソシアヌレート基、ウレトジオン基に関する各比率は、赤外吸収スペクトル測定、1H−NMR測定によって求めることが出来る。具体的には実施例に記載の方法に準じて測定することができる。
本実施形態のポリイソアネート組成物は、貯蔵後の色度変化低減、粘度、分子量の変化低減の観点から、下記式(I)
【0032】
【化7】
(式中、R1、R2、R3は、同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜20個の直鎖状、分岐状、環状を含むアルキル基、アリール基、を表わす。)で示されるリン酸トリエステル系化合物を、0.1〜100ppm含有する。0.1ppm以上含有することにより、貯蔵時の色度変化低減、粘度、分子量の変化低減を発現することができ、100ppm以上の場合、湿気安定性が低下する場合がある。
【0033】
リン酸トリエステル系化合物の含有量の下限値としては、1ppmであることが好ましく、より好ましくは、3ppmであり、さらに好ましくは、5ppmである。また、リン酸トリエステル系化合物の含有量の上限値としては、80ppmであることが好ましく、より好ましくは、65ppm、さらに好ましくは、50ppmであり、最も好ましくは35ppm以下である。
【0034】
リン酸トリエステル系化合物を以下に具体的に説明する。
式(I)で示されるリン酸トリエステル系化合物のR1、R2、R3は、同じでも異な
っていてもよく、炭素数1〜20個の直鎖状、分岐状、環状を含むアルキル基、アリール基、を表わす。R1、R2、R3の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、フェニル基、クレジル基、キシリル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ベンジル基等が例示される。R1、R2、R3の炭素数の上限値は、貯蔵後の色度変化低減、粘度、分子量の変化低減の観点から、15であることが好ましく、より好ましくは10であり、さらに好ましくは5であり、最も好ましくは、3である。
【0035】
リン酸エステル化合物はリン酸とアルコール化合物類又はフェノール化合物類のトリエステル化合物であれば特に制限はなく、脂肪族リン酸トリエステル、脂環族リン酸トリエステル、芳香族リン酸トリエステル及び脂肪族−芳香族リン酸トリエステルのいずれであってもよい。
【0036】
脂肪族リン酸トリエステルの具体例としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリ(n−プロピル)、リン酸トリイソプロピル、リン酸トリ(n−ブチル)、リン酸トリイソブチル、リン酸トリ(n−ペンチル)、リン酸トリ(n−ヘキシル)、リン酸トリ(2−エチルヘキシル)等が例示される。その中でも、貯蔵後の色度変化低減、粘度、分子量の変化低減の観点から、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリ(n−プロピル)、リン酸トリイソプロピル、リン酸トリ(n−ブチル)、リン酸トリイソブチル、リン酸トリ(n−ペンチル)から選ばれる1種であることが好ましく、より好ましくは、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリ(n−プロピル)、リン酸トリイソプロピル、リン酸トリ(n−ブチル)、リン酸トリイソブチルから選ばれる1種であり、最も好ましくは、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリ(n−プロピル)、リン酸トリイソプロピルから選ばれる1種である。
【0037】
脂環族リン酸トリエステルの具体例としては、リン酸トリシクロヘキシル等が挙げられる。
芳香族リン酸トリエステルの具体例としては、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシリル、リン酸クレジル(ジフェニル)、リン酸トリ(イソプロピルフェニル)等が挙げられる。
脂肪族−芳香族リン酸トリエステルの具体例としては、リン酸メチル(ジフェニル)、リン酸ジメチル(フェニル)、リン酸エチル(ジフェニル)、リン酸ジエチル(フェニル)等が挙げられる。
これらの中でも脂肪族リン酸トリエステル、脂肪族−芳香族リン酸トリエステルが好ましく、より好ましくは脂肪族リン酸トリエステルである。
【0038】
本実施形態のポリイソシアネート組成物中のジイソシアネートモノマー質量濃度は、好ましく2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以下である。ジイソシアネートモノマー濃度が2質量%以下であれば、取り扱い時の危険性を一層低減でき、かつ、塗料組成物としたときの硬化性を一層向上させることができる。
【0039】
本実施形態のポリイソシアネート組成物のイソシアネート基の含有率(NCO含有率)は、好ましくは5.0〜25.0質量%である。NCO含有率の下限値は、より好ましくは6.0質量%以下であり、更に好ましくは7.0質量%以下である。NCO含有率を5.0質量%以上とすることで、ポリイソシアネート組成物の架橋性を一層向上させることができる。NCO含有率を25.0質量%以下とすることで、ポリイソシアネート組成物のHDIモノマー濃度を低下でき、危険性を一層低減することができる。なお、NCO含有率は、ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基を過剰の2Nアミンで中和した後、1N塩酸による逆滴定によって求めることができる。なお、NCO含有率は、ポリイソシアネート組成物の固形分に対する値であり、後述する実施例に記載の方法に準じて測定することができる。
【0040】
本実施形態のポリイソシアネート組成物中の固形分の25℃における粘度は、好ましくは300mPa・s〜30,000mPa・sである。粘度の下限値はより好ましくは、1,000mPa・s以上であり、更に好ましくは2,000mPa.s以上である。粘度の上限値は、より好ましくは25,000mPa・s以下であり、更に好ましくは20,000mPa・s以下である。ポリイソシアネート組成物の粘度を300mPa・s以上とすることで、ポリイソシアネート組成物の収率が一層向上する。ポリイソシアネート組成物の粘度を30,000mPa・s以下とすることで、得られる塗膜の光沢が一層向上する。粘度は、E型粘度計(トキメック社製)を用いることによって測定することができる。
【0041】
本実施形態のポリイソシアネート組成物中の固形分の数平均分子量は、400〜10,000であることが好ましい。数平均分子量の下限値は、より好ましくは450であり、更に好ましくは500である。数平均分子量の上限値は、より好ましくは7,500であり、更に好ましくは5,000である。数平均分子量を400以上とすることで、得られるポリイソシアネート組成物の収率が一層向上する。数平均分子量を10,000以下とすることで、得られる塗膜の光沢が一層向上する。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求めることができる。具体的には実施例に記載の方法に準じて測定することができる。
【0042】
以下、本実施形態のポリイソシアネート組成物の製造方法の一例を説明する。
ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネート、及びポリオール化合物を原料として用い、所定の温度で、反応させることで製造することができる。ジイソシアネートとポリオール化合物は、反応温度を昇温する前に、混合しても良いし、先にジイソシアネートを反応器に仕込み、所定温度に達成した後、ポリオールを一括あるいは、分割で添加してもよい。その際の反応温度は、40〜200℃の範囲で実施されることが好ましい。40℃以上であることにより、反応完結までの時間を短くすることができ、200℃以下とすることで、望ましくない副反応を抑制することができる。
【0043】
反応温度の下限値は、60℃であることが好ましく、より好ましくは80℃であり、さらに好ましくは、100℃であり、最も好ましくは120℃である。反応温度の上限値は、190℃であることが好ましく、より好ましくは180℃であり、さらに好ましくは170℃である。
前記反応の反応時間は、反応温度により異なるが、1〜24時間であることが好ましくい。反応時間の上限は、12時間であることがより好ましく、さらに好ましくは6時間である。
反応の際には、無溶剤でも良いし、イソシアネート基に不活性な任意の溶剤を用いても良い。
【0044】
反応に際して、ジイソシアネートのイソシアネート基とポリオール化合物の水酸基のモル比であるイソシアネート基/水酸基のモル比は、2〜30が好ましい。2以上であることにより、反応後の粘度をハンドリングしやすい粘度に保つことができ、30以内であることで、生産性を維持することができる。イソシアネート基/水酸基のモル比の下限値は、4であることが好ましく、より好ましくは、6である。イソシアネート基/水酸基のモル比の上限値は、25であることが好ましく、より好ましくは20である。
【0045】
反応が終了後の反応液には、通常、未反応のHDIモノマーを含むため、これを薄膜蒸発感、抽出等で除去することが好ましい。このような処理を行うことで、ポリイソシアネート組成物に含有されるHDIモノマー濃度を1質量%以下に制御することが好ましい。HDIモノマー濃度の上限値は、より好ましくは0.7質量%以下であり、更に好ましくは0.5質量%以下であり、より更に好ましくは0.3質量%以下であり、一層好ましくは0.1質量%である。HDIモノマー濃度を上記上限値以下とすることで、ポリイソシアネート組成物の毒性を一層低減でき、安全性を向上させることができる。
【0046】
本発明で必須成分であるリン酸トリエステル化合物は、ジイソシアネートとポリオール化合物の反応前に添加してもよいし、反応終了後の反応液に添加してもよい。また、HDIモノマーを除去したポリイソシアネートに添加しても構わない。
【0047】
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、塗料組成物またはコーティング組成物の硬化剤等として好適に用いることもできる。すなわち、本実施形態のポリイソシアネート組成物を含有する塗料組成物またはコーティング組成物とすることができる。その塗料組成物の樹脂成分としては、イソシアネート基との反応性を有する活性水素を分子内に2個以上有する化合物を含有することが好ましい。活性水素を分子内に2個以上有する化合物として、例えば、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール等が挙げられる。これらの中でも、ポリオールが好ましい。ポリオールの具体例としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、フッ素ポリオール等が挙げられる。
本実施形態のポリイソシアネート組成物を用いた塗料組成物またはコーティング組成物は、溶剤ベース、水系ベースどちらにもすることが出来る。
【0048】
溶剤ベースの塗料組成物またはコーティング組成物とした場合には、活性水素を分子内に2個以上有する化合物を含有する樹脂、あるいはその溶剤希釈物に、必要に応じて他の樹脂、触媒、顔料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を加えたものに、本実施形態のポリイソシアネート組成物を硬化剤として添加し、必要に応じて、更に溶剤を添加して、粘度を調整した後、手攪拌、あるいはマゼラー等の攪拌機器を用いて攪拌することによって、溶剤ベースの塗料組成物またはコーティング組成物を得ることが出来る。
【0049】
水系ベースの塗料組成物またはコーティング組成物とした場合には、活性水素を分子内に2個以上有する化合物を含有する樹脂の水分散体、または水溶物に、必要に応じて他の樹脂、触媒、顔料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を加えたものに、本実施形態のポリイソシアネート組成物を硬化剤として添加し、必要に応じて、水や溶剤を更に添加した後、攪拌機器により強制攪拌することのよって水系ベースの塗料組成物またはコーティング組成物を得ることが出来る。
【0050】
ポリエステルポリオールは、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等の二塩基酸等の単独又は混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2−メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等の多価アルコールの単独又は混合物とを、縮合反応させることによって得ることができる。例えば、上記の成分を一緒にし、そして約160〜220℃で加熱することによって、縮合反応を行うことができる。更に、例えば、ε−カプロラクトン等のラクトン類を、多価アルコールを用いて開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等もポリエステルポリオールとして用いることができる。これらのポリエステルポリオールは、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及びこれらから得られるポリイソシアネートを用いて変性させることが出来る。この場合、特に脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及びこれら得られるポリイソシアネートが、耐候性及び耐黄変性等の観点から好ましい。水系ベース塗料として用いる場合には、一部残した二塩基酸等の一部のカルボン酸を残存させておき、アミン、アンモニア等の塩基で中和することで、水溶性、あるいは水分散性の樹脂とすることができる。
【0051】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、例えば水酸化物(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、強塩基性触媒(アルコラート、アルキルアミン等)、複合金属シアン化合物錯体(金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等)等を使用して、アルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド等)の単独又は混合物を、多価ヒドロキシ化合物にランダムまたはブロック付加して、得られるポリエーテルポリオール類;ポリアミン化合物(エチレンジアミン類等)にアルキレンオキシドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類;及びこれらポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類等が挙げられる。
【0052】
上記多価ヒドロキシ化合物としては、(i)例えば、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなど、(ii)例えば、エリトリトール、D−トレイトール、L−アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物、(iii)例えば、アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類、(iv)例えば、トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類、(v)例えば、ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類、(vi)例えば、スタキオースなどの四糖類、等が挙げられる。
【0053】
アクリルポリオールは、例えば、一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーと、当該重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとを、共重合させることによって得ることができる。
アクリルポリオールは、例えば、活性水素を有するアクリル酸エステル類(アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル等)、または活性水素を有するメタクリル酸エステル類(メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチル等)、グリセリンやトリメチロールプロパン等のトリオールの(メタ)アクリル酸モノエステル等の多価活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類;ポリエーテルポリオール類(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等)と上記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類とのモノエーテル;グリシジル(メタ)アクリレートと酢酸、プロピオン酸、p−tert−ブチル安息香酸等の一塩基酸との付加物;上記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類の活性水素にラクトン類(ε−カプロラクタム、γ−バレロラクトン等)を開環重合させることにより得られる付加物からなる群より選ばれる1種以上を必須成分として、必用に応じて(メタ)アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等)、不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等)、不飽和アミド類(アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等)、又は加水分解性シリル基を有するビニルモノマー類(ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロプロピルトリメトキシシラン等)、その他の重合性モノマー(スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリルニトリル、フマル酸ジブチル等)からなる群より選ばれる1種以上を、常法により共重合させて得ることができる。
【0054】
例えば、上記の単量体成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合し、必要に応じて有機溶剤等で希釈することによって、アクリルポリオールを得ることができる。水系ベースアクリルポリオールを得る場合には、オレフィン性不飽和化合物を溶液重合し、水層に転換する方法や乳化重合などの公知の方法で製造することができる。その場合、アクリル酸、メタアクリル酸等のカルボン酸含有モノマーやスルホン酸含有モノマー等の酸性部分をアミンやアンモニアで中和することによって水溶性、あるいは水分散性を付与することが出来る。
【0055】
フッ素ポリオールとは、分子内にフッ素を含むポリオールであり、例えば、特開昭57−341075号公報、特開昭61−215311号公報等で開示されているフルオロオレフィン、シクロビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体等が挙げられる。
上記ポリオールの水酸基価は、特に限定されないが、通常、30〜200mgKOH/gであり、酸価は0〜30mgKOH/gである。水酸基価は、JIS K1557に準拠して測定することができる。
【0056】
上記の中でも、ポリオールとしては、耐候性、耐薬品性、及び硬度の観点から、アクリルポリオールが好ましく、機械強度、及び耐油性の観点から、ポリエステルポリオールが好ましい。
上記した活性水素を分子内に2個以上有する化合物の水酸基に対する、本実施形態のポリイソシアネート組成物のイソシアネート基の当量比(NCO/OH比)は、好ましくは0.2〜5.0であり、より好ましくは0.4〜3.0であり、更に好ましくは0.5〜2.0である。当該当量比を0.2以上とすることで、一層強靱な塗膜を得ることが可能となる。当該当量比を5.0以下とすることで、塗膜の平滑性を一層向上させることができる。
【0057】
塗料組成物には、必要に応じて完全アルキル型、メチロール型アルキル、イミノキ型アルキル等のメラミン系硬化剤を添加することが出来る。
上記活性水素を分子内に2個以上有する化合物、本実施形態のポリイソシアネート組成物、塗料組成物、コーティング組成物は、いずれも、有機溶剤と混合して使用することができる。有機溶剤としては、水酸基及びイソシアネート基と反応する官能基を有していない方が好ましい。また、ポリイソシアネート組成物と相溶する方が好ましい。このような有機溶剤としては、一般に塗料溶剤として用いられているエステル化合物、エーテル化合物、ケトン化合物、芳香族化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル系の化合物、ポリエチレングリコールジカルボキシレート系の化合物、炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤等が挙げられる。
【0058】
上記活性水素を分子内に2個以上有する化合物、本実施形態のポリイソシアネート組成物、塗料組成物、コーティング組成物は、いずれも、目的及び用途に応じて、本実施形態の効果を損なわない範囲で、触媒、顔料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、界面活性剤等の当該技術分野で使用されている各種添加剤を混合して使用することもできる。
硬化促進用の触媒の例としては、ジブチルスズジラウレート、2−エチルヘキサン酸スズ、2−エチルヘキサン酸亜鉛、コバルト塩、等の金属塩;トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’−エンドエチレンピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、等の3級アミン類等が挙げられる。
【0059】
本実施形態のポリイソシアネート組成物を硬化剤として用いた塗料組成物またはコーティング組成物は、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の塗料として用いることができる。例えば、金属(鋼板、表面処理鋼板等)、プラスチック、木材、フィルム、無機材料等の素材に対するプライマーや上中塗り塗料として有用である。また、防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車塗装などに美粧性、耐候性、耐酸性、防錆性、耐チッピング性などを付与するための塗料としても有用である。また、接着剤、粘着剤、エラストマー、フォーム、表面処理剤等のウレタン原料としても有用である。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
<色度>
得られたポリイソシアネート組成物の色度は、着色度(ハーゼン色数)を測定した。ハーゼン色数は、JIS K0071−1に準じて測定した。
【0061】
<粘度>
粘度は、E型粘度計(トキメック社製)を用いて25℃で測定した。測定に際しては、標準ローター(1°34’×R24)を用いた。回転数は、以下の通り。
100rpm (128mPa・s未満の場合)
50rpm (128mPa・s〜256mPa・sの場合)
20rpm (256mPa・s〜640mPa・sの場合)
10rpm (640mPa・s〜1280mPa・sの場合)
5rpm (1280mPa・s〜2560mPa・sの場合)
なお、後述する各実施例及び各比較例で作製したポリイソシアネート組成物の不揮発分を以下に記載の方法によって調べ、その値が98質量%以上であったものは、そのまま測定した。
【0062】
<不揮発分>
不揮発分は、ポリイソシアネート組成物を105℃、3時間加熱した場合の残存量から求めた。
不揮発分(質量%)=(105℃、3時間加熱後のポリイソシアネート組成物の質量)/(加熱前のポリイソシアネート組成物の質量)×100
【0063】
<NCO含有率>
NCO含有率(質量%)は、測定試料中のイソシアネート基を過剰の2Nアミンで中和した後、1N塩酸による逆滴定によって求めた。なお、後述する実施例及び比較例で作製したポリイソシアネート組成物の不揮発分を上述した方法によって調べ、その値が98質量%以上であったものは、そのまま測定した
【0064】
<(ウレタン基、アロファネート基吸収の合計)/(イソシアネート基吸収)の高さ比の定量方法>
測定試料をKBrプレートに薄膜に塗布し、縦軸を吸光度表記した際に、吸光度の最大値が0.8〜1.0となる条件で、赤外吸収スペクトル測定を行うことによって求めた。具体的な測定方法は以下の通りであった。
赤外吸収スペクトル測定装置:FT/IR−4200(JASCO社製)
測定波長:600cm-1〜4000cm-1
光源:セラミック光源
検出器:TGS
積算回数:16回
以下のシグナルのベースラインからの高さを測定することにより、高さ比を算出した。
ウレタン基、アロファネート基:1710−1735cm-1
イソシアネート基:2265−2275cm-1
【0065】
<ウレタン基、アロファネート基のモル比>
ウレタン基、アロファネート基に関する比率は、測定試料の1H−NMR測定を行うことによって求めた。具体的な測定条件は以下の通りであった。
1H−NMR装置:RESONANCE EC400(JEOL社製)
観測核(周波数):1H(400MHz)
溶剤(濃度):CDCL3(5質量/vol%)
積算回数:256回
測定温度:50℃
化学シフト基準:TMS 0ppm
以下のシグナルの積分値を、測定している炭素の数で除し、その値から各モル比を求めた。
ウレタン基:4.7ppm付近:積分値÷1
アロファネート基:8.5ppm付近:積分値÷1
【0066】
<(イソシアヌレート基吸収)/(ウレタン基、アロファネート基吸収の合計)の高さ比の定量方法>
測定試料をKBrプレートに薄膜に塗布し、縦軸を吸光度表記した際に、吸光度の最大値が0.7〜1.0となる条件で、赤外吸収スペクトル測定を行うことによって求めた。具体的な測定方法は以下の通りであった。
赤外吸収スペクトル測定装置:FT/IR−4200(JASCO社製)
測定波長:600cm-1〜4000cm-1
光源:セラミック光源
検出器:TGS
積算回数:16回
以下のシグナルの高さを測定することにより、高さ比を算出した。
イソシアヌレート基:1680−1695cm-1
ウレタン基、アロファネート基:1710−1735cm-1
【0067】
<(ウレトジオン基吸収)/(ウレタン基、アロファネート基吸収の合計)の高さ比の定量方法>
測定試料をKBrプレートに薄膜に塗布し、縦軸を吸光度表記した際に、吸光度の最大値が0.7〜1.0となる条件で、赤外吸収スペクトル測定を行うことによって求めた。具体的な測定方法は以下の通りであった。
赤外吸収スペクトル測定装置:FT/IR−4200(JASCO社製)
測定波長:600cm-1〜4000cm-1
光源:セラミック光源
検出器:TGS
積算回数:16回
以下のシグナルの高さを測定することにより、高さ比を算出した。
ウレトジオン基:1760−1775cm-1
ウレタン基、アロファネート基:1710−1735cm-1
【0068】
<ポリイソシアネート組成物中のリン酸トリエステル化合物の定性、定量方法>
最初に、20mlサンプル瓶をデジタル天秤に乗せ試料を約2g精秤する。次に、クロロホルム約8gを加えた後、蓋をしっかりして良く混合し、サンプルを調整した。上記調整液を以下の条件で、GC/MS測定により、リン酸トリエステル化合物の特定を実施した。定量は、各リン酸トリエステル化合物のGC感度をリン酸トリエチルと同じと見なし、定量を実施した。本分析の検出限界は0.05ppmであった。
リン酸ジエステル化合物、リン酸モノエステル化合物、リン酸系化合物のように、リン原子上に水酸基を有する化合物は、水酸基をトリメチルシリル化処理した後に、リン酸トリエステル化合物と同様の方法で、定性、定量を実施した。
GC装置:Agilent Technologies 6890
注入口温度:320℃
注入量:1μL
注入法:スプリット法(スプリット比 10:1)
カラム:DB−1(長さ30m、内径0.25mm、液相厚 0.25μm)
カラム温度:40℃(5分保持)→20℃/分昇温→320℃(11分保持)
MS装置:Agilent Technologies 5973MSD
イオン源温度:230℃
インターフェイス温度:300℃
イオン化法:電子イオン化法(EI)
測定法:SCAN法
【0069】
<HDIモノマー質量濃度の測定>
最初に、20mlサンプル瓶をデジタル天秤に乗せ試料を約1g精秤する。次に、ニトロベンゼン(内部標準液)を0.03〜0.04g加え精秤する。最後に、酢酸エチルを約9ml加えた後、蓋をしっかりして良く混合し、サンプルを調整した。上記調整液を以下の条件で、ガスクロマトグラフィー分析し、定量した。
装置:SHIMADZU(株)GC−8A
カラム:信和化工(株)Silicone OV−17
カラムオーブン温度 ;120℃
インジェクション/ディテクター温度; 160℃
【0070】
<貯蔵後色度評価>
得られたポリイソシアネート組成物をサンプル瓶に添加し、50℃下、30日間貯蔵した。貯蔵前後の着色度(ハーゼン色数)を測定することで評価した。ハーゼン色数は、JIS K0071−1に準じて測定した。
ハーゼン色数が貯蔵前後で、100以上増加した場合を×、75以上100未満の場合を△、50以上75未満の場合を○、50未満の場合を◎とした。
【0071】
<貯蔵後粘度評価>
得られたポリイソシアネート組成物をサンプル瓶に添加し、50℃下、30日間貯蔵した。貯蔵前後の粘度測定を実施することで評価した。
貯蔵前の粘度からの変化率が15.0%以上の場合を×、10.0%以上15.0%未満の場合を△、7.5%以上10.0%未満の場合を○、7.5%未満の場合を◎とした。
【0072】
<貯蔵後NCO含有率評価>
得られたポリイソシアネート組成物をサンプル瓶に添加し、50℃下、30日間貯蔵した。貯蔵前後のNCO含有率の測定を実施することで評価した。
貯蔵前のNCO含有率と比較して貯蔵後のNCO含有率が、0.2%以上低下した場合を×、0.1%以上0.2%未満の場合を△、0.10%未満の場合を○とした。
【0073】
(実施例1)
HDI 10000g、ネオペンチルグリコール(NPG)410gを仕込み、窒素雰囲気下、160℃、1時間反応させた。次いで、薄膜蒸発缶を用いて、160℃、0.2Torrの条件で2回精製し、不揮発分99.5質量%のポリイソシアネートp−1を得た。
また、得られたポリイソシアネートp−1の赤外吸収スペクトル測定、1H−NMR測定を実施し、組成比を算出した結果、以下の結果となった。
(ウレタン基、アロファネート基吸収の合計)/(イソシアネート基吸収)の高さ比:0.75
(アロファネート基)/(ウレタン基、アロファネート基の合計量)のモル比:0.16
(イソシアヌレート基吸収)/(ウレタン基、アロファネート基吸収の合計)の高さ比:0.01
(ウレトジオン基吸収)/(ウレタン基、アロファネート基吸収の合計)の高さ比:0.21
【0074】
その後、得られたポリイソシアネートp−1 1000gに対し、リン酸トリイソプロピルを15mg添加し、窒素雰囲気下、50℃で1時間攪拌し、ポリイソシアネート組成物P−1を得た。得られたポリイソシアネート組成物P−1は、粘度1300mPa.S(25℃)、NCO含有率18.8質量%、HDIモノマー質量濃度0.22%、リン酸トリイソプロピルの含有量は15ppmであった。また、ハーゼン色数、貯蔵後色度評価、貯蔵後粘度評価、貯蔵後NCO含有率の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0075】
(実施例2)
HDI 10000g、2,3−ブタンジオール(2,3BG)360gを仕込み、窒素雰囲気下、160℃、1時間反応させた。次いで、薄膜蒸発缶を用いて、160℃、0.2Torrの条件で2回精製し、不揮発分99.5質量%のポリイソシアネートp−2を得た。
また、得られたポリイソシアネートp−2の赤外吸収スペクトル測定、1H−NMR測定を実施し、組成比を算出した結果、以下の結果となった。
(ウレタン基とアロファネート基吸収の合計)/(イソシアネート基吸収)の高さ比:0.68
(アロファネート基)/(ウレタン基、アロファネート基の合計量)のモル比:0.20
(イソシアヌレート基吸収)/(ウレタン基、アロファネート基吸収の合計)の高さ比:0.01
(ウレトジオン基吸収)/(ウレタン基、アロファネート基吸収の合計)の高さ比:0.26
【0076】
その後、得られたポリイソシアネートp−2 1000gに対し、リン酸トリメチルを20mg添加し、窒素雰囲気下、50℃で1時間攪拌し、ポリイソシアネート組成物P−2を得た。得られたポリイソシアネート組成物P−2は、粘度2000mPa.S(25℃)、NCO含有率19.0質量%、HDIモノマー質量濃度0.18%、リン酸トリメチルの含有量は20ppmであった。また、ハーゼン色数、貯蔵後色度評価、貯蔵後粘度評価、貯蔵後NCO含有率の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0077】
(実施例3)
HDI 10000g、プラクセル305(ポリエステルポリオール、株式会社ダイセルの製品)1450gを仕込み、窒素雰囲気下、100℃、2時間反応させた。次いで、薄膜蒸発缶を用いて、160℃、0.2Torrの条件で2回精製し、不揮発分99.6質量%のポリイソシアネート組成物p−3を得た。
また、得られたポリイソシアネート組成物p−3の赤外吸収スペクトル測定、1H−NMR測定を実施し、組成比を算出した結果、以下の結果となった。
(ウレタン基とアロファネート基吸収の合計)/(イソシアネート基吸収)の高さ比:1.20
(アロファネート基)/(ウレタン基、アロファネート基の合計量)のモル比:0.17
(イソシアヌレート基吸収)/(ウレタン基、アロファネート基吸収の合計)の高さ比:0.01
(ウレトジオン基吸収)/(ウレタン基、アロファネート基吸収の合計)の高さ比:0.01
【0078】
その後、得られたポリイソシアネート組成物p−3 1000gに対し、リン酸トリエチルを25mg添加し、窒素雰囲気下、50℃で1時間攪拌し、ポリイソシアネート組成物P−3を得た。得られたポリイソシアネート組成物P−3は、粘度5400mPa.S(25℃)、NCO含有率11.5質量%、HDIモノマー質量濃度0.15%、リン酸トリエチルの含有量は25ppmであった。また、ハーゼン色数、貯蔵後色度評価、貯蔵後粘度評価、貯蔵後NCO含有率の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0079】
(実施例4)
HDI 10000g、HP1030(ポリエーテルポリオール、株式会社ADEKAの製品)1120gを仕込み、窒素雰囲気下、160℃、2時間反応させた。次いで、薄膜蒸発缶を用いて、160℃、0.2Torrの条件で2回精製し、不揮発分99.6質量%のポリイソシアネート組成物p−4を得た。
また、得られたポリイソシアネート組成物p−4の赤外吸収スペクトル測定、1H−NMR測定を実施し、組成比を算出した結果、以下の結果となった。
(ウレタン基とアロファネート基吸収の合計)/(イソシアネート基吸収)の高さ比:0.90
(アロファネート基)/(ウレタン基、アロファネート基の合計量)のモル比:0.33
(イソシアヌレート基吸収)/(ウレタン基、アロファネート基吸収の合計)の高さ比:0.01
(ウレトジオン基吸収)/(ウレタン基、アロファネート基吸収の合計)の高さ比:0.08
【0080】
その後、得られたポリイソシアネート組成物p−4 1000gに対し、リン酸トリエチルを2mg添加し、窒素雰囲気下、50℃で1時間攪拌し、ポリイソシアネート組成物P−4を得た。得られたポリイソシアネート組成物P−4は、粘度8600mPa.S(25℃)、NCO含有率13.6質量%、HDIモノマー質量濃度0.13%、リン酸トリエチルの含有量は2ppmであった。また、ハーゼン色数、貯蔵後色度評価、貯蔵後粘度評価、貯蔵後NCO含有率の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0081】
(実施例5)
実施例4と同様の方法により得られたポリイソシアネート組成物p−4 1000gに
対し、リン酸トリエチルを15mg添加し、窒素雰囲気下、50℃で1時間攪拌し、ポリイソシアネート組成物P−5を得た。得られたポリイソシアネート組成物P−5は、粘度8600mPa.S(25℃)、NCO含有率13.6質量%、HDIモノマー質量濃度0.13%、リン酸トリエチルの含有量は15ppmであった。また、ハーゼン色数、貯蔵後色度評価、貯蔵後粘度評価、貯蔵後NCO含有率の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0082】
(実施例6)
実施例4と同様の方法により得られたポリイソシアネート組成物p−4 1000gに
対し、リン酸トリエチルを40mg添加し、窒素雰囲気下、50℃で1時間攪拌し、ポリイソシアネート組成物P−6を得た。また、得られたポリイソシアネート組成物P−6は、粘度8600mPa.S(25℃)、NCO含有率13.6質量%、HDIモノマー質量濃度0.13%、リン酸トリエチルの含有量は40ppmであった。また、ハーゼン色数、貯蔵後色度評価、貯蔵後粘度評価、貯蔵後NCO含有率の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0083】
(実施例7)
実施例4と同様の方法により得られたポリイソシアネート組成物p−4 1000gに
対し、リン酸トリエチルを90mg添加し、窒素雰囲気下、50℃で1時間攪拌し、ポリイソシアネート組成物P−7を得た。また、得られたポリイソシアネート組成物P−7は、粘度8600mPa.S(25℃)、NCO含有率13.6質量%、HDIモノマー質量濃度0.13%、リン酸トリエチルの含有量90ppmであった。また、ハーゼン色数、貯蔵後色度評価、貯蔵後粘度評価、貯蔵後NCO含有率の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0084】
(実施例8)
実施例4と同様の方法により得られたポリイソシアネート組成物p−4 1000gに
対し、リン酸トリ(2−エチルへキシル)を25mg添加し、窒素雰囲気下、50℃で1時間攪拌し、ポリイソシアネート組成物P−7を得た。得られたポリイソシアネート組成物P−8は、粘度8600mPa.S(25℃)、NCO含有率13.6質量%、HDIモノマー質量濃度0.13%、リン酸トリ(2−エチルヘキシル)の含有量は25ppmであった。また、ハーゼン色数、貯蔵後色度評価、貯蔵後粘度評価、貯蔵後NCO含有率の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0085】
(実施例9)
実施例4と同様の方法により得られたポリイソシアネート組成物p−4 1000gに
対し、リン酸トリフェニルを25mg添加し、窒素雰囲気下、50℃で1時間攪拌し、ポリイソシアネート組成物P−9を得た。また、得られたポリイソシアネート組成物P−9は、粘度8600mPa.S(25℃)、NCO含有率13.6質量%、HDIモノマー質量濃度0.13%、リン酸トリフェニルの含有量は25ppmであった。また、ハーゼン色数、貯蔵後色度評価、貯蔵後粘度評価、貯蔵後NCO含有率の評価を実施した。得られた結果を表2に示す。
【0086】
(実施例10)
実施例4と同様の方法により得られたポリイソシアネート組成物p−4 1000gに
対し、リン酸ジメチル(フェニル)を25mg添加し、窒素雰囲気下、50℃で1時間攪拌し、ポリイソシアネート組成物P−10を得た。また、得られたポリイソシアネート組成物P−10は、粘度8600mPa.S(25℃)、NCO含有率13.6質量%、HDIモノマー質量濃度0.13%、リン酸ジメチル(フェニル)の含有量は25ppmであった。また、ハーゼン色数、貯蔵後色度評価、貯蔵後粘度評価、貯蔵後NCO含有率の評価を実施した。得られた結果を表2に示す。
【0087】
(実施例11)
実施例4と同様の方法により得られたポリイソシアネート組成物p−4 1000gに
対し、リン酸トリメチルを15mg添加し、窒素雰囲気下、50℃で1時間攪拌し、ポリイソシアネート組成物P−11を得た。また、得られたポリイソシアネート組成物P−11は、粘度8600mPa.S(25℃)、NCO含有率13.6質量%、HDIモノマー質量濃度0.13%、リン酸トリメチルの含有量は15ppmであった。また、ハーゼン色数、貯蔵後色度評価、貯蔵後粘度評価、貯蔵後NCO含有率の評価を実施した。得られた結果を表2に示す。
【0088】
(実施例12)
HDI 10000g、HP1030(ポリエーテルポリオール、株式会社ADEKAの製品)1120g、リン酸トリメチル10gを仕込み、窒素雰囲気下、160℃、2時間反応させた。次いで、薄膜蒸発缶を用いて、160℃、0.2Torrの条件で2回精製し、不揮発分99.6質量%、粘度8600mPa.S(25℃)、NCO含有率13.6質量%、HDIモノマー質量濃度0.12%のポリイソシアネート組成物P−12を得た。
また、得られたポリイソシアネート組成物P−12の赤外吸収スペクトル測定、1H−NMR測定を実施し、組成比を算出した結果、以下の結果となった。
(ウレタン基とアロファネート基吸収の合計)/(イソシアネート基吸収)の高さ比:0.90
(アロファネート基)/(ウレタン基、アロファネート基の合計量)のモル比:0.33
(イソシアヌレート基吸収)/(ウレタン基、アロファネート基吸収の合計)の高さ比:0.01
(ウレトジオン基吸収)/(ウレタン基、アロファネート基吸収の合計)の高さ比:0.08
【0089】
その後、得られたポリイソシアネート組成物P−12をGC/MS測定したところ、リン酸トリメチルを12ppm含有していることが判明した。また、得られたポリイソシアネート組成物P−12について、ハーゼン色数、貯蔵後色度評価、貯蔵後粘度評価、貯蔵後NCO含有率の評価を実施した。得られた結果を表2に示す。
【0090】
(比較例1)
実施例4の方法により得られたポリイソシアネートp−4をそのまま使用した。p−4は、粘度8600mPa.S(25℃)、NCO含有率13.6質量%、HDIモノマー質量濃度0.13%で、リン酸トリエステル化合物は検出されなかった(0.05ppm未満)。また、ハーゼン色数、貯蔵後色度評価、貯蔵後粘度評価、貯蔵後NCO含有率の評価を実施した。得られた結果を表2に示す。
【0091】
(比較例2)
実施例4と同様の方法により得られたポリイソシアネート組成物p−4 1000gに
対し、リン酸トリエチルを200mg添加し、窒素雰囲気下、50℃で1時間攪拌し、ポリイソシアネート組成物C−2を得た。得られたポリイソシアネート組成物C−2は、粘度8600mPa.S(25℃)、NCO含有率13.6質量%、HDIモノマー質量濃度0.13%、リン酸トリエチルの含有量は200ppmであった。また、ハーゼン色数、貯蔵後色度評価、貯蔵後粘度評価、貯蔵後NCO含有率の評価を実施した。得られた結果を表2に示す。
【0092】
(比較例3)
実施例4と同様の方法により得られたポリイソシアネート組成物p−4 1000gに
対し、リン酸ジブチルを15mg添加し、窒素雰囲気下、50℃で1時間攪拌し、ポリイソシアネート組成物C−3を得た。得られたポリイソシアネート組成物C−3は、粘度8600mPa.S(25℃)、NCO含有率13.6質量%、HDIモノマー質量濃度0.13%であり、リン酸トリエステル化合物は検出されなかった(0.05ppm未満)が、リン酸ジブチルの含有量は15ppmであった。
また、ハーゼン色数、貯蔵後色度評価、貯蔵後粘度評価、貯蔵後NCO含有率の評価を実施した。得られた結果を表2に示す。
【0093】
(比較例4)
実施例4と同様の方法により得られたポリイソシアネート組成物p−4 1000gに
対し、ポリリン酸25mgを添加し、窒素雰囲気下、50℃で1時間攪拌し、ポリイソシアネート組成物C−4を得た。得られたポリイソシアネート組成物C−4は、粘度8600mPa.S(25℃)、NCO含有率13.6質量%、HDIモノマー質量濃度0.13%であり、リン酸トリエステル化合物は検出されなかった(0.05ppm未満)が、ポリリン酸の含有量は25ppmであった。
また、ハーゼン色数、貯蔵後色度評価、貯蔵後粘度評価、貯蔵後NCO含有率の評価を実施した。得られた結果を表2に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
以上より、各実施例のポリイソシアネート組成物は、貯蔵後の色度変化が小さく、粘度、NCO含有率の変化が小さいことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明のポリイソシアネート組成物を硬化剤として用いた塗料組成物は、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の塗料として利用することができる。さらには、鋼板、表面処理鋼板等の金属、及びプラスチック、木材、フィルム、無機材料等の素材へのプライマーや上中塗り塗料として用いることができる。さらには、防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車塗装等に耐熱性、美粧性(表面平滑性、鮮鋭性)等を付与する塗料としても有用である。またさらに、接着剤、粘着剤、エラストマー、フォーム、表面処理剤等のウレタン原料としても有用である。更には、水系塗料の硬化剤に用いた場合、VOC成分を減らすことも可能となるため、水系のプラスチック用塗料、水系の自動車塗料の原料等としても幅広い分野において利用できる。