特許第6285770号(P6285770)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285770
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】ワーク搬送装置および加工ライン
(51)【国際特許分類】
   B23Q 41/02 20060101AFI20180215BHJP
   B23Q 7/00 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   B23Q41/02 A
   B23Q7/00 E
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-63254(P2014-63254)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-182215(P2015-182215A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133868
【弁理士】
【氏名又は名称】岡林 義弘
(72)【発明者】
【氏名】小杉 将人
(72)【発明者】
【氏名】池田 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 悟
【審査官】 青山 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−170329(JP,A)
【文献】 特開平06−321333(JP,A)
【文献】 特開平06−079573(JP,A)
【文献】 特開2001−058724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 41/02
B23Q 7/00 − 7/18
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の側面に設けられた開口部からワークを当該装置外へ搬出または当該装置内へ搬入するワーク搬送装置であって、
前記開口部から前記装置内へ伸びて配設されたフレームと、
このフレームに沿って移動自在に設けられ前記ワークを保持するパレットと、
前記フレームを回動自在に支持する回動支持機構と、
前記フレームを回動させる回動駆動装置と、
前記パレットを前記フレームに沿って搬送する搬送手段と、を備え
前記回動駆動装置は、前記装置の移動体に設けられた原節と、前記フレームに設けられた従節と、からなるカム機構を備えている、ワーク搬送装置。
【請求項2】
前記移動体は、前記装置の加工室に配設されたスライド扉であり、
前記回動駆動装置は、前記スライド扉の移動動作に連動して前記フレームを回動させる、
請求項に記載のワーク搬送装置。
【請求項3】
前記移動体は、前記装置の加工室に配設されたスライドテーブルであり、
前記回動駆動装置は、前記スライドテーブルの移動動作に連動して前記フレームを回動させる、
請求項に記載のワーク搬送装置。
【請求項4】
前記装置を複数並べて構成した加工ラインであって、一の前記装置と、この一の装置に隣接する他の前記装置との間に請求項1から請求項のいずれか1項に記載のワーク搬送装置を設置し、
前記一の装置の側面に設けられた前記開口部に前記ワーク搬送装置の一端を配設し、前記他の装置の側面に設けられた前記開口部に前記ワーク搬送装置の他端を配設した、加工ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク搬送装置および加工ラインに係り、特に、装置の側面に設けられた開口部からワークを装置外へ搬出または装置内へ搬入するワーク搬送装置および加工ラインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の加工装置を並べて構成した加工ラインにおいて、各装置の前方にコンベアを備え、そのコンベアから各装置にワークを装置内に搬入したり、装置内から搬出したりするワーク搬送装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−305619
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のワーク搬送装置では、各装置の前方にワーク搬送装置を配設しているため、作業者の作業スペースを圧迫して作業性が悪いという問題があった。作業者は、例えば、加工プログラム調整や、装置内部の部品交換、精度調整を行うときは、通常、装置正面で作業を行うのが最も行いやすい。このため、装置前面はなるべく搬送装置などを設置せず、作業者が装置前面をラインに沿って通行できることが望ましい。
【0005】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、ワーク搬送装置を簡素化して装置前方を開放し、工場内のスペース効率を高め、しかもワークを装置内まで円滑に搬送して生産性を向上させることができるワーク搬送装置および加工ラインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、装置の側面に設けられた開口部からワークを当該装置外へ搬出または当該装置内へ搬入するワーク搬送装置であって、前記開口部から前記装置内へ伸びて配設されたフレームと、このフレームに沿って移動自在に設けられ前記ワークを保持するパレットと、前記フレームを回動自在に支持する回動支持機構と、前記フレームを前記回動軸回りに回動させる回動駆動装置と、前記パレットを前記フレームに沿って搬送する搬送手段と、を備え、前記回動駆動装置は、前記装置の移動体に設けられた原節と、前記フレームに設けられた従節と、からなるカム機構を備えている
【0007】
本発明の請求項1に係るワーク搬送装置は、装置(工作機械、加工装置、洗浄装置、乾燥装置、処理装置その他の装置)の側面に設けられた開口部からワークを当該装置外へ搬出または当該装置内へ搬入することで、装置前方のスペースを開放して工場内のレイアウトの自由度を確保し、装置の柔軟な運用を可能とすることができるため、作業性および生産性を向上させることができる。
また、作業者は装置のごく近くから装置に接することができる。これにより、作業者による装置へのワークの着脱及び装置のメンテナンス作業が容易になる効果が生ずる。
【0008】
また、前記フレームを回動自在に支持する回動支持機構によってフレームを傾斜させることで、例えば、ワークを装置内に搬入する時には、搬送方向前方が下降するように傾斜させることができるため、ワークを装置内に搬入しやすくすることが可能となる。
そして、ワークを装置内に設置した後は、フレームが水平状態になるように傾斜を解消することで、装置内でのワークの加工や処理等の障害にならないように退避させることができる。
【0009】
つまり、装置の側面に設けられた開口部からワークを搬入しようとすると、装置高さが低い場合や、装置内に配設された加工用の固定治具等へワークを移送するロボットを装置に組み込む場合には、ワーク搬送装置が装置内の作業空間を圧迫して装置内に配設された治具やロボットと干渉してしまうという弊害が生じる。
そこで、本発明は、装置稼働時にはフレームを治具等との干渉を防ぐ所定の高さに保持するとともに、装置内へのワーク移送時にはフレームを下降させて、ワーク上方の空間を確保して作業性および装置の稼動効率を向上させたものである。
【0010】
このようにして、本発明の請求項1に係るワーク搬送装置は、搬送装置を簡素化して装置前方を開放し、工場内のスペース効率を高め、しかもワークを装置内まで円滑に搬送して生産性を向上させることができる。
【0012】
また、かかる構成により、回動駆動装置を移動体に設けた駆動源(ドライバ)としての原節と、フレームに設けられた従動部材である従節と、から構成することで、原節と従節を係合させるという簡易な構成によって不用意な動作を回避しながら確実にフレームを傾斜させることができるため、確実な動作を保証しながら回動駆動装置を装置内にコンパクトに収容することができる。
【0013】
また、カム機構を備えたことで、移動体が移動するエネルギーを利用してフレームを回動させることで、フレームを回動させるためだけの専用の駆動装置を排除することができるため、回動駆動装置の部品点数を削減してコンパクトに構成することができる。
【0014】
本発明の請求項に係る発明は、請求項に記載のワーク搬送装置であって、前記移動体は、前記装置の加工室を開閉するスライド扉であり、前記回動駆動装置は、前記スライド扉の移動動作に連動して前記フレームを回動させている。
【0015】
かかる構成によれば、前記スライド扉の移動動作に連動して前記フレームを回動させることで、例えば、装置によるワークの加工等が完了して次に加工するワークを装置内に搬入する場合には、スライド扉の開動作によって搬入方向前方が下降するように傾斜させることができるため、効率よく円滑にワークを装置内に搬入しやすくすることができる。
【0016】
本発明の請求項に係る発明は、請求項に記載のワーク搬送装置であって、前記移動体は、前記装置の加工室内に配設されたワークを載置するスライドテーブルであり、前記回動駆動装置は、前記スライドテーブルの移動動作に連動して前記フレームを回動させている。
【0017】
かかる構成によれば、前記スライドテーブルの移動動作に連動して前記フレームを回動させることで、例えば、装置によるワークの加工等が完了して次に加工するワークを装置内に搬入する場合には、スライドテーブルの移動動作によって搬入方向前方が下降するように傾斜させることができるため、効率よく円滑にワークを装置内に搬入しやすくすることができる。
【0018】
本発明の請求項に係る発明は、前記装置を複数並べて構成した加工ラインであって、一の前記装置と、この一の装置に隣接する他の前記装置との間に請求項1から請求項のいずれか1項に記載のワーク搬送装置を設置し、前記一の装置の側面に設けられた前記開口部に前記ワーク搬送装置の一端を配設し、前記他の装置の側面に設けられた前記開口部に前記ワーク搬送装置の他端を配設している。
【0019】
本発明の請求項に係る加工ラインは、一の装置に隣接する他の前記装置との間に前記ワーク搬送装置を設置したことで、一の装置と他の装置を近接して配置することができるため、ワークの搬送効率および作業効率を向上させ、かつコンパクトな加工ラインを構成することができる。このため、工場内のスペース効率を向上させ生産性を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、ワーク搬送装置を簡素化して装置前方を開放し、工場内のスペース効率を高め、しかもワークを装置内まで円滑に搬送して生産性を向上させることができるワーク搬送装置および加工ラインを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態における搬送装置を複数の装置により構成される加工ラインに適用した例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図を示す。
図2】本発明の実施形態における搬送装置の正面図を示す。
図3】本発明の実施形態における搬送装置の左側面図を示す。
図4】本発明の実施形態における搬送装置の動作を示す正面図であり、(a)はパレットが前工程の装置内にある状態、(b)はパレットが後工程の装置内に移動した状態、(c)は駆動機構により搬送装置のフレームが下降した状態を示す。
図5】本発明の実施形態の変形例における搬送装置の動作を示す左側面図であり、(a)はフレームが上昇した状態、(b)はフレームが下降した状態を示す。
図6】本発明の実施形態の変形例における搬送装置の動作を示す正面図であり、(a)はフレームが上昇した状態、(b)はフレームが下降した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態を図に従って説明する。
図1に示すように、搬送装置10は、装置50(50a、50b、50c)を多数並べて構成した加工ライン100のワーク搬送装置として好適に適用することができ、ワークWを装置50外の次工程へ搬出または装置50内へ搬入する装置である。
装置50(50a、50b、50c)は、工作機械、加工装置、洗浄装置、乾燥装置、処理装置、検査装置その他の装置であり、種々の装置に好適に搬送装置10を適用することができる。ワークWは、主に機械部品等である。
【0023】
図1の左側の搬送装置10と右側の搬送装置10は、同じ構成であり、左側の搬送装置10は、装置50aの右側面に設けられた開口部18と装置50bの左側面に設けられた開口部18との間に懸架されるように配設され、装置50aの加工室52aからワークWを搬出して装置50bの加工室52bへ搬入する。右側の搬送装置10は、装置50bの右側面に設けられた開口部18と装置50cの左側面に設けられた開口部18との間に配設され、装置50bの加工室52bからワークWを搬出して装置50cの加工室52cへ搬入する。
【0024】
搬送装置10が装置50の側面に設けられた開口部18を貫通して配設されることで、作業者(不図示)は装置50の正面において、装置50に対面することができる。このため、作業者は装置50の正面から搬送装置10により搬送されたワークWを体の近くで取り扱うことができる。また、装置50の正面には作業者と装置50を遮るものが存在しないため、作業者が装置50の動作の確認やメンテナンスを行う事が容易となる。
【0025】
なお、開口部18には、フレーム11、ワークW、パレット14aが通過するように開閉シャッタ、暖簾状のゴムシートその他の飛散防止機構を設けることができる。飛散防止機構を設けることで、装置50の内部からクーラント、洗浄液、又は切りくずが装置外部に飛散することを防止することができる。
【0026】
図1の左側に示す搬送装置10の構成を主に図2に従って、説明する。
搬送装置10は、開口部18から装置50b内へ伸びて配設されたフレーム11と、このフレーム11に沿って移動自在に設けられワークWを保持するパレット14aと、フレーム11を回動自在に支持する回動支持機構12と、フレーム11を回動軸12aの回りに回動させる回動駆動装置であるカム機構16と、パレット14aをフレームに沿って搬送する搬送手段14と、を備えている。
【0027】
フレーム11は、長尺の板状に形成された第1フレーム11aと、第1フレーム11aに対面するように連結された第2フレーム11b(図3参照)と、第1フレーム11aと第2フレーム11bとを連結する第3フレーム(図3参照)と、を備えて断面コの字形状に構成されている。フレーム11は、開口部18を貫通して装置50bの内部(加工室52b)に臨むように配設される(図3参照)。
なお、装置50bがターンテーブルその他のワークWの搬送装置を備える場合、装置50bの内部のフレーム11が臨むように配設される位置は、加工室52bに替えて、装置50bの搬入室に変更しうる。
【0028】
回動支持機構12は、第1フレーム11aと第2フレーム11b(図3参照)との間に配設された回動軸12aと、搬送装置10の外部に固定される軸支体12bと、を備えている。
回動軸12aは、搬送方向に直交する水平方向に沿って配設されている。
回動支持機構12は、回動軸12aを中心としてフレーム11を上下方向に回動(揺動)して、フレーム11が水平方向になる状態(図4(b)参照)から搬送方向前方が下降するように傾斜させることができるように支持している(図4(c)参照)。
【0029】
軸支体12bは、装置50の前工程の装置50aや工場内の柱等の固定物に固定されている。軸支体12bは、回動軸12aを軸支できる構造を有すれば良く、例えば回動軸12aを支える円筒、貫通穴、軸受等を採用することができる。
【0030】
なお、本実施形態においては、回動支持機構12としてフレーム11に配設された回動軸12aを軸支体12bで固定してフレーム11を回動軸12aの回りに回動するようしたが、これに限定されるものではなく、カム機構、リンク機構によってフレーム11自体が回動するように構成してもよい。また、回動方向に付勢する弾性体を利用して水平方向の原位置に戻るようにしても良い。
【0031】
カム機構16は、装置50bの移動体であるスライド扉51bに設けられた原節であるカムフォロア16aとフレーム11aに設けられた従節である板カム16bとからなる。フレーム11は、回動軸12aを中心として上下方向に回動し、フレーム11に作用する重力により、下方に下がり、板カム16bはその下面において下方のカムフォロア16aに当接している。板カム16bの下面は、搬送方向前側(図の右側)が下がっており、搬送方向後側(図の左側)に来るにしたがって徐々に上方に位置するように傾斜している。
【0032】
原節を装置50bのスライド扉51bに設け、従節をフレーム11に設けることで、フレーム11の回動が装置50bの移動体であるスライド扉51bの移動動作と連動するため、同期不良による干渉が発生しない。スライド扉51bの移動動作に連動したフレーム11の回動動作については後述する。また、装置50bの駆動力及び重力によりフレーム11が回動するため、駆動エネルギーが不要となる。
【0033】
なお、本実施形態におけるカム機構16は、装置50bの移動体であるスライド扉51bにカムフォロア16aを設け、フレーム11aに板カム16bを設けて構成したが、これに限定されるものではなく、スライド扉51bに板カム16bを設け、フレーム11aにカムフォロア16aを設けて構成してもよい。
また、回動駆動装置は、カム機構16に替えてエアシリンダ、油圧シリンダ、電気シリンダ等のシリンダ、又は電気モータとボールねじ機構、スライダクランク機構その他の回転運動を直線運動に変換する変換機構との組合せを利用できる。
【0034】
搬送手段14は、フレーム11に配設された直線移動機構(直動機構)である。
搬送手段14は、図3に示すように、ワークWを載せて搬送するパレット14aと、パレット14aの両側に配設されたローラ14bと、ローラ14bを搬送方向に案内するレール14cと、搬送方向に沿って配設された複動式のエアシリンダであるロッドレスシリンダ14dと、を備えている。
【0035】
パレット14aは、位置決めピン(不図示)及び着座面(不図示)を備える。ワークWは、着座面に戴置され、位置決めピンにより、その戴置位置が定められる。ワークWが位置決めピンにより位置決めされ、着座面でのみパレット14aと接触して搬送されるため、搬送装置が振動した場合においても、搬送中にワークWが摺動せず、搬送中にワークWに傷がつかない。
なお、位置決めピンに替えてワークWの外形をガイドするラフガイドを設けることができる。
【0036】
レール14cは、搬送方向両側に一対が配設され、第1フレーム11aに上下合わせて2本、第2フレーム11bに上下合わせて2本が搬送方向に沿って配設されている。
ローラ14bは、フレーム11の両側に配設されたそれぞれ2本のレール14cの間を転がるように片側で搬送方向の前後に2輪が配設されている。ローラ14bが2本のレール14cの間を転がることで、レール14cに沿ってパレット14aが搬送方向に移動する。
【0037】
ロッドレスシリンダ14dは、図2に示すように、スライダ14eを往復移動させる駆動装置である。スライダ14eは、ブラケット14fを介してパレット14aに連結されている。ロッドレスシリンダ14dを駆動させてパレット14aに載せたワークWを搬送方向に沿って移動させることができる。
【0038】
なお、直動機構としては、ローラ14b、レール14c、ロッドレスシリンダ14dに替えて、直動ガイドとシリンダの組合せ、直動ガイドとモータの組合せ、又はパンタグラフ機構とシリンダの組合せを利用できる。
【0039】
また、ロッドレスシリンダ14d等の駆動装置による搬送手段14に替えて、フリーローラコンベアを利用することができる。フリーローラコンベアを利用することにより、フレーム11が駆動装置により上下方向に移動し、フレーム11が傾斜したときに、ワークWに作用する重力の作用によりフリーローラコンベア上をワークWが移動する。フリーローラコンベアを利用した場合には、ワークWの移動が重力のみで行われるため、搬送エネルギーを必要としない。また、構造が単純になる利点がある。
【0040】
第1の検知手段であるリミットスイッチ13a、13bはパレット14aの位置を検知する。後工程側の移動端のリミットスイッチ13aは、パレット14aの端位置を検知することで、パレット14aから装置50bへのワークWの積み下ろしが可能か否かを判別することができる(図4(b),(c)参照)。また、前工程側の移動端のリミットスイッチ13bは、パレット14aの端位置を検知することで、パレット14aへのワークWの搭載が可能か否かを判別することができる(図4(a)参照)。
【0041】
なお、第1の検出手段として、リミットスイッチに替えて、磁気スイッチ、近接スイッチを用いることができる。
【0042】
第2の検知手段である遮光スイッチ19a,19bは、パレット上のワークWの有無を判別する。遮光スイッチとしては光通過型の遮光スイッチ、又は光反射型の遮光スイッチが利用できる。遮光スイッチ19aは後工程側端におけるワークWの有無を検知し(図4(b),(c)参照)、遮光スイッチ19bは前工程端におけるワークWの有無を検知する(図4(a)参照)。パレット14aが後工程側の端にある場合において、遮光スイッチ19aがワークWの有無を検知することで、ワークWの抜取りが可能であると判定する。パレット14aが前工程側の端にある場合において、遮光スイッチ19bがワークWの有無を検知することで、重複したワークW搭載を防止し、また、ワークWの未搭載のままのパレット14aの移動を防止することができる。
【0043】
なお、遮光スイッチ19a、19bに替えて、リミットスイッチ、ドグスイッチ、近接スイッチを利用することができる。
【0044】
次に、図4を参照して搬送装置10の動作について説明する。図4(a)は装置50aの後工程の装置50bが稼働中でそのスライド扉51bが閉じられている状態を示す。この状態においては、スライド扉51bに配設されたカムフォロア16aが板カム16bの先端に掛かっているため、カムフォロア16aと板カム16bとの接触点はフレーム11の下方寄りにあるため、フレーム11は水平(高い位置)に保持されている。ロッドレスシリンダ14dのスライダが前工程の装置50a側の端に移動してパレット14aが前工程の装置50a内にある。パレット14aが端まで移動を完了していると、パレット14aに取付けられたドグがリミットスイッチ13bを叩き、パレット14aの移動完了が検知される。前工程の装置50aで加工等されたワークWがパレット14aに載せられる。このとき、遮光スイッチ19bがワークWの搭載を検知する。
【0045】
遮光スイッチ19bがワークWの搭載を検知すると、搬送手段14はロッドレスシリンダ14dの移動により、パレット14aを移動させる。パレット14aが後工程側の端部に達すると、パレット14aのドグがリミットスイッチ13aを叩く。そして、パレット14aの移動完了が検知される。そして、ワークWは遮光スイッチ19aの光線を遮り、ワークの到着を確認する(図4(b)参照)。
【0046】
後工程の装置50bが装置50b内のワークWの加工等を終了すると、図4(c)に示すように、スライド扉51bが開く。スライド扉51bの開動作と共に、スライド扉51bに設けられたカムフォロア16aが前工程側(図の左側)に移動し、板カム16bとカムフォロア16aとの接触位置がフレーム11に対して下方から上方へ移動する。フレーム11は作用する重力のため、回動軸12aを支点として下方に倒れる。フレーム11が下方に倒れるため、フレーム11に設置されたパレット14aおよびパレット14a上に搭載されたワークWも下方に下がる。これにより、後工程の装置50b内でのワークWの上方の空間が広がり、ワークWのパレット14aから装置50bへの移送が容易になる。
【0047】
ワークWを後工程の装置50bへ移送した後、作業者が装置50bを起動すると、装置50bのスライド扉51bが閉じる。スライド扉51bの閉動作と共に、スライド扉51bに配設されたカムフォロア16aが前工程側から離れ(図右方向への移動)、カムフォロア16aと板カム16bとの接触点がフレーム11から見て下方へ移動する。すると、フレーム11が回動軸12aを中心として持ち上がり、スライド扉が閉じきったときにフレーム11が水平位置(高い位置)に移動する(図4(a)参照)。
【0048】
装置50b内では、主軸、ワークWを搭載する工作テーブル、ワークWを搭載する回転テーブル等が様々なタイミングで動作しているため、搬送装置10のフレーム11が不意に回動するとそれらと搬送装置10が干渉して装置破損を引き起こす可能性がある。しかし、本実施例においては、カム機構16により、装置50bの動作完了後のスライド扉51bの開動作と連動して、フレーム11が回動するため、装置50b内の移動物と搬送装置10との干渉を予防することができる。
【0049】
本実施形態の搬送装置10によれば、フレーム11が装置50bの稼働時のみ装置50bと搬送装置10との干渉を防ぐよう、高い水平位置に位置し、作業者が搬送装置10からワークWを移送するときにフレーム11が下方に回動して、フレーム11に搭載されたワークWの上方の空間が広く確保されるため、装置50bの装置高さを低く抑えることができる。装置50を作業者の目の高さよりも低く抑えた場合には、作業者がライン全体を見通すことができる。
【0050】
[変形例]
以上の実施形態では、カム機構16は、後工程の装置50bのスライド扉51bの移動(搬送方向に沿う方向に移動)に応じてフレーム11の上下動作を行った。しかし、これに限定されるものではなく、後工程の装置60bの移動体であるスライドテーブル62が前後方向(搬送方向に直交する方向)に移動する動作に連動しても良い。
【0051】
以下、図5及び図6に従って、加工ライン200において、後工程の装置60bのスライドテーブル62が前後方向(搬送方向に直交する方向)に移動する場合において、スライドテーブル62にカムフォロア26aを設け、フレーム11に板カム26bを設けた変形例における搬送装置20を示す。なお、上述の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0052】
後工程の装置60bは、前後方向に移動するスライドテーブル62を有し、スライドテーブル62には原節であるカムフォロア26aが備えられる。搬送装置20のフレーム11には、従節である板カム26bが備えられる。フレーム11は回動軸12aを中心に回動する。フレーム11は、その重力により板カム26bがその下方に配設されるカムフォロア26aに接して支えられている。
【0053】
カムフォロア26aと板カム26bとが回動駆動装置であるカム機構26を構成する。板カム26bの底面は装置60bの前方にそりあがる傾斜を有している。
装置60bがそのスライドテーブル62上のワークWを加工している時は、スライドテーブル62は装置60bの後方に下がっている(図5(a)、図6(a))。このとき、カムフォロア26aと板カム26bの接触点はフレーム11から見て下方に下がっており、フレーム11は水平位置(高い位置)に保持される。フレーム11が高い位置に保持されているため、装置60bの動作に支障をきたさない。
【0054】
装置60bが加工を終了し、ワークWの載せ替えを行う時に、スライドテーブル62は前進する。すると、カムフォロア26aと板カム26bの接触点はフレーム11から見てやや上方に移動し、フレーム11は回動軸12aを中心として下方に倒れる(図5(b)、図6(b))。このとき、フレーム11の上方のパレット14aに載せられたワークWの上方のスペースが広がるため、ワークWの載せ替えが容易となる。
【0055】
なお、本実施形態におけるカム機構26は、装置60bの移動体であるスライドテーブル62にカムフォロア26aを設け、フレーム11aに板カム26bを設けて構成したが、これに限定されるものではなく、スライドテーブル62に板カム26bを設け、フレーム11aにカムフォロア26aを設けて構成してもよい。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施することが可能である。
例えば、本実施形態においては、移動体であるスライド扉51bは、搬送方向に沿う方向に移動するものを適用したが、これに限定されるものではなく、変形例として示したスライドテーブル62と同様に構成して、搬送方向に直交する前後方向に移動するスライド扉を適用することもできる。
【0057】
また、本変形例においては、移動体であるスライドテーブル62は、搬送方向に直交する方向(前後方向)に移動するものを適用したが、これに限定されるものではなく、本実施形態として示したスライド扉51bと同様に構成して、搬送方向に沿う方向に移動するスライドテーブル62を適用することもできる。
【0058】
また、移動体としては、スライドテーブル62に替えて、装置内のリフトアンドキャリー装置、ターンテーブルその他のトランスファー装置を適用することもできる。移動体の移動形態に合わせてカム機構を適宜設計することができる。
【符号の説明】
【0059】
10,20 搬送装置
11 フレーム
11a 第1フレーム
11b 第2フレーム
12 回動支持機構
12a 回動軸
12b 軸支体
14 搬送手段
14a パレット
14b ローラ
14c レール
14d ロッドレスシリンダ
14e スライダ
14f ブラケット
16,26 カム機構(回動駆動手段)
16a,26a カムフォロア(原節)
16b,26b 板カム(従節)
18 開口部
20 搬送装置
50(50a,50b,50c) 装置
51b スライド扉
60(60a,60b,60c) 装置
62 スライドテーブル
100,200 加工ライン
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6