【実施例】
【0059】
(実施例1)
洗浄済みのガラス基板(コニカミノルタ社製、外径2.5インチ(65mm)、内径20mm、平均表面粗さ(Ra)0.2nm)を、DCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製C−3040)の成膜チャンバ内に収容して、到達真空度1×10
−5Paとなるまで成膜チャンバ内を排気した後、チャンバ内を0.8PaになるようにArガスを導入し、このガラス基板上に50Cr−50Ti{Cr含有量50at%−Ti含有量50at%}ターゲットを用いて、膜厚200nmの密着層を成膜した。
【0060】
次に、下地層として層厚5nmの95Ni−5W{Ni含有量95at%、W含有量5at%}膜、層厚10nmのRu膜、さらにチャンバ内の圧力を8.0Paとして層厚10nmのRu膜の順で積層した。次にチャンバ内の圧力を0.8PaになるようにArガスを調整し、強磁性層として層厚15nmの(Co−13Cr−16Pt)88mol%−(SiO
2)12mol%{Cr含有量13at%、Pt含有量16at%、残部Coの合金を88mol%、SiO
2からなる酸化物を12mol%}の強磁性膜を積層した。
【0061】
次に、反強磁性結合層として、膜厚0.3nmのRu膜を形成した後、RFスパッタリング法を用いて強誘電磁性層として(Bi
0.6Ba
0.4)FeO
3からなるターゲットを用いて厚さ10nmの膜を形成した。
【0062】
次にイオンビーム法にて保護層としてDLC膜を厚さ3nm形成し、潤滑膜を2nm塗布して垂直記録媒体を作製した。
【0063】
以上の方法で作製した垂直記録媒体の誘電特性として電圧−分極曲線を調べたところ、飽和分極50μC/cm
2が得られた。また、強誘電磁性層6の飽和磁化と膜厚の積(MsT)は、磁気記録媒体の基板面に垂直な方向のVSM測定により得られた飽和磁化(Ms)と残留磁化(Mr)から、(Ms−Mr)/2として計算して求めた強誘電磁性層6のMsをサンプルの面積で割ることで求めた。
【0064】
次にこの媒体をGuzik社製のスピンスタンド上に載せ、測定半径21mm、回転数5400rpm、最大信号周波数514.02MHz(1インチあたり2139キロビットの線記録密度)、書き込み電圧1.5Vの条件で電磁変換特性を測定した。ヘッドは、書き込み素子として先端径10nmの電極針を、再生素子としてTMR薄膜を有するヘッドを用い、データの書き込みにはデータ列を電気の極性に変換し電極針から電圧を印加する方法を用いた。再生は、データ列に応じた磁気変化をTMR素子で読み取ることで行った。その結果、S/Nは16.9dB、ビットエラーレート(BER)は1×10
−7.3が得られた。
【0065】
(実施例2−5)
強誘電磁性層の膜厚を表1に記載の厚さとした他は、実施例1と同様に作製した。
得られた磁気記録媒体について、それぞれ実施例1と同様に特性を評価した。結果を表1に示す。
【0066】
(実施例6−9)
実施例1と同様に垂直記録媒体を作製したが、垂直記録層は次のように作製した。すなわち、RFスパッタリング法を用いて強誘電磁性層として(Bi
0.6Ba
0.4)FeO
3からなるターゲットを用いて厚さ10nmの膜を形成した。
【0067】
その後、反強磁性結合層として、膜厚0.3nmのRu膜、強磁性層として層厚15nmの(Co−13Cr−16Pt)88mol%−(SiO
2)12mol%{Cr含有量13at%、Pt含有量16at%、残部Coの合金を88mol%、SiO
2からなる酸化物を12mol%}の強磁性膜を積層した。
【0068】
次にイオンビーム法にて保護層としてDLC膜を厚さ3nm形成し、潤滑膜を2nm塗布して磁気記録媒体を作成した。
【0069】
得られた磁気記録媒体について、それぞれ実施例1と同様に特性を評価した。結果を表1に示す。
【0070】
(実施例10−20)
密着層8を50Al−50Ti{Al含有量50at%、Ti含有量50at%}、100nmに変え、反強磁性結合層5を表2に記載の材料および膜厚にした他は実施例1と同様に垂直記録媒体を作製した。
【0071】
得られた磁気記録媒体について、それぞれGuzik社製のスピンスタンド上に載せ、測定半径21mm、回転数5400rpm、最大信号周波数514.02MHz(1インチあたり2139キロビットの線記録密度)、書き込み電圧1.5Vの条件で電磁変換特性を測定した。ヘッドは、書き込み素子として先端径10nmの電極針を、再生素子としてTMR薄膜を有するヘッドを用い、データの書き込みにはデータ列を電気の極性に変換し電極針から電圧を印加する方法を用いた。再生は、データ列に応じた磁気変化をTMR素子で読み取ることで行った。
それぞれの結果を表2に示す。
【0072】
(実施例21−35)
強誘電磁性層6を表3に記載の材料に変えた他は、実施例1と同様に磁気記録媒体を作製した。
【0073】
それぞれの磁気記録媒体について、強誘電磁性層6の飽和磁化と膜厚の積(MsT)は、磁気記録媒体を基板面に垂直方向のVSM測定により得られた飽和磁化(Ms)と残留磁化(Mr)から、(Ms−Mr)/2として計算して求めた強誘電磁性層のMsをサンプルの面積で割ることで求めた。
【0074】
次にこの媒体をGuzik社製のスピンスタンド上に載せ、測定半径21mm、回転数5400rpm、最大信号周波数514.02MHz(1インチあたり2139キロビットの線記録密度)、書き込み電圧1.5Vの条件で電磁変換特性を測定した。ヘッドは、書き込み素子として先端径10nmの電極針を、再生素子としてTMR薄膜を有するヘッドを用い、データの書き込みにはデータ列を電気の極性に変換し電極針から電圧を印加する方法を用いた。再生は、データ列に応じた磁気変化をTMR素子で読み取ることで行った。
それぞれの結果を表3に示す。
【0075】
(実施例36)
洗浄済みのガラス基板(コニカミノルタ社製、外径2.5インチ(65mm)、内径20mm、平均表面粗さ(Ra)0.2nm)を、DCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製C−3040)の成膜チャンバ内に収容して、到達真空度1×10
−5Paとなるまで成膜チャンバ内を排気した後、チャンバ内を0.8PaになるようにArガスを導入し、このガラス基板上に50Cr−50Ti{Cr含有量50at%、Ti含有量50at%}ターゲットを用いて、膜厚200nmの密着層を成膜した。
【0076】
次に、DCスパッタリング法を用いて、裏打ち層としてCo−27Fe−5Zr−3Ta−1Al−1Cr{Fe含有量27at%、Zr含有量5at%、Ta含有量3at%、Al含有量1at%、Cr含有量1at%、残部Co}のターゲット用いて厚さ100nmの膜を積層した。この段階で裏打ち層の磁束(Bs)と膜厚(T)の積(BsT)をVSMを用いて測定したところ、120Tnmの値が得られた。
【0077】
さらに下地層として層厚5nmの95Ni−5W{Ni含有量95at%、W含有量5at%}膜、層厚10nmのRu膜、さらにチャンバ内の圧力を8.0Paとして層厚10nmのRu膜の順で積層した。次にチャンバ内の圧力を0.8PaになるようにArガスを調整し、強磁性層として層厚15nmの(Co−13Cr−16Pt)88mol%−(SiO
2)12mol%{Cr含有量13at%、Pt含有量16at%、残部Coの合金を88mol%、SiO
2からなる酸化物を12mol%}の強磁性膜を積層した。
【0078】
次に、反強磁性結合層として、膜厚0.3nmのRu膜を形成した後、RFスパッタリング法を用いて強誘電磁性層として膜厚10nmの(Bi
0.6Ba
0.4)FeO
3からなるターゲットを用いて厚さ10nmの膜を形成した。
次にイオンビーム法にて保護層としてDLC膜を厚さ3nm形成し、潤滑膜を2nm塗布して垂直記録媒体を作製した。
【0079】
得られた磁気記録媒体について、Guzik社製のスピンスタンド上に載せ、測定半径21mm、回転数5400rpm、最大信号周波数514.02MHz(1インチあたり2139キロビットの線記録密度)、書き込み電圧1.5Vの条件で電磁変換特性を測定した。ヘッドは、書き込み素子として先端径10nmの電極針を、再生素子としてTMR薄膜を有するヘッドを用い、データの書き込みにはデータ列を電気の極性に変換し電極針から電圧を印加する方法を用いた。再生は、データ列に応じた磁気変化をTMR素子で読み取ることで行った。結果を表4に示す。
【0080】
(実施例37)
裏打ち層を表4に記載の材料に変えた他は実施例36と同様に磁気記録媒体を作成した。
この磁気記録媒体について、実施例36と同様に磁気特性の評価を行った。結果を表4に示す。
【0081】
(実施例38)
洗浄済みのガラス基板(コニカミノルタ社製、外径2.5インチ(65mm)、内径20mm、平均表面粗さ(Ra)0.2nm)を、DCマグネトロンスパッタ装置(アネルバ社製C−3040)の成膜チャンバ内に収容して、到達真空度1×10
−5Paとなるまで成膜チャンバ内を排気した後、チャンバ内を0.8PaになるようにArガスを導入し、このガラス基板上に50Cr−50Ti{Cr含有量50at%、Ti含有量50at%}ターゲットを用いて、膜厚200nmの密着層を成膜した。
【0082】
次に、DCスパッタリング法を用いて、裏打ち層として層厚40nmのCo−30Fe−3Ta−5Zr{Fe含有量30at%、Ta含有量3at%、Zr含有量5at%、残部Co}膜、層厚0.4nmのRu膜、層厚40nmのCo−30Fe−3Ta−5Zr{Fe含有量30at%、Ta含有量3at%、Zr含有量5at%、残部Co}膜、をこの順で積層した。
この段階で裏打ち層の磁束密度(Bs)と膜厚(T)の積(BsT)を、VSMを用いて測定したところ、140Tnmの値が得られた。
【0083】
さらに下地層として層厚5nmの95Ni−5W{Ni含有量95at%、W含有量5at%}膜、層厚10nmのRu膜、さらにチャンバ内の圧力を8.0Paとして層厚10nmのRu膜の順で積層した。次にチャンバ内の圧力を0.8PaになるようにArガスを調整し、強磁性層として層厚15nmの(Co−13Cr−16Pt)88mol%−(SiO
2)12mol%{Cr含有量13at%、Pt含有量16at%、残部Coの合金を88mol%、SiO
2からなる酸化物を12mol%}の強磁性膜を積層した。
【0084】
次に、反強磁性結合層として、膜厚0.3nmのRu膜を形成した後、RFスパッタリング法を用いて強誘電磁性層として(Bi
0.6Ba
0.4)FeO
3からなるターゲットを用いて厚さ10nmの膜を形成した。
【0085】
次にイオンビーム法にて保護層としてDLC膜を厚さ3nm形成し、潤滑膜を2nm塗布して垂直記録媒体を作製した。
【0086】
得られた磁気記録媒体について、Guzik社製のスピンスタンド上に載せ、測定半径21mm、回転数5400rpm、最大信号周波数514.02MHz(1インチあたり2139キロビットの線記録密度)、書き込み電圧1.5Vの条件で電磁変換特性を測定した。ヘッドは、書き込み素子として先端径10nmの電極針を、再生素子としてTMR薄膜を有するヘッドを用い、データの書き込みにはデータ列を電気の極性に変換し電極針から電圧を印加する方法を用いた。再生は、データ列に応じた磁気変化をTMR素子で読み取ることで行った。結果を表4に示す。
【0087】
(実施例39−40)
裏打ち層の材料を表4に記載の材料に変えた他は、実施例38と同様に磁気記録媒体を作成した。
【0088】
この磁気記録媒体について、実施例36と同様に磁気特性の評価を行った。結果を表4に示す。
【0089】
(実施例41−45)
垂直磁性層4を表5に記載の材料に変えた他は、実施例1と同様に磁気記録媒体を作成した。得られた磁気記録媒体について、Guzik社製のスピンスタンド上に載せ、測定半径21mm、回転数5400rpm、最大信号周波数514.02MHz(1インチあたり2139キロビットの線記録密度)、書き込み電圧1.5Vの条件で電磁変換特性を測定した。ヘッドは、書き込み素子として先端径10nmの電極針を、再生素子としてTMR薄膜を有するヘッドを用い、データの書き込みにはデータ列を電気の極性に変換し電極針から電圧を印加する方法を用いた。再生は、データ列に応じた磁気変化をTMR素子で読み取ることで行った。結果を表5に示す。
【0090】
(比較例1)
実施例1と同様に垂直記録媒体を作製したが、垂直記録層は次のように作製した。すなわち、強磁性層として層厚10nmの(Co−13Cr−16Pt)88mol%−(SiO
2)12mol%{Cr含有量13at%、Pt含有量16at%、残部Coの合金を88mol%、SiO
2からなる酸化物を12mol%}の強磁性膜を形成した。
【0091】
次に、RFスパッタリング法を用いて強誘電磁性層として膜厚3nmの(Bi
0.6Ba
0.4)FeO
3からなるターゲットを用いて厚さ10nmの膜を形成した。なお、この垂直記録層の層構成では、強磁性層と強誘電磁性層とは、反強磁性結合をせずに、強磁性結合をしている。
【0092】
以上の方法で作製した垂直記録媒体の誘電特性として電圧−分極曲線を調べたところ、飽和分極50μC/cm
2が得られた。また、強誘電磁性層6の飽和磁化と膜厚の積(MsT)は、磁気記録媒体を基板面に垂直方向のVSM測定により得られた飽和磁化(Ms)と残留磁化(Mr)から、(Ms−Mr)/2として計算して求めた強誘電磁性層のMsをサンプルの面積で割ることで求めた。
【0093】
次にこの媒体をGuzik社製のスピンスタンド上に載せ、測定半径21mm、回転数5400rpm、最大信号周波数514.02MHz(1インチあたり2139キロビットの線記録密度)、書き込み電圧1.5Vの条件で電磁変換特性を測定した。ヘッドは、書き込み素子として先端径10nmの電極針を、再生素子としてTMR薄膜を有するヘッドを用い、データの書き込みにはデータ列を電気の極性に変換し電極針から電圧を印加する方法を用いた。再生は、データ列に応じた磁気変化をTMR素子で読み取ることで行った。その結果、S/Nは11.1dB、ビットエラーレートは1×10
−3.3が得られた。
【0094】
(比較例2)
比較例1と同様に垂直記録媒体を作製したが、垂直記録層は次のように作製した。すなわち、RFスパッタリング法を用いて強誘電磁性層として膜厚3nmの(Bi
0.6Ba
0.4)FeO
3からなるターゲットを用いて厚さ10nmの膜を形成した。
【0095】
次に、強磁性層として層厚15nmの(Co−13Cr−16Pt)88mol%−(SiO
2)12mol%{Cr含有量13at%、Pt含有量16at%、残部Coの合金を88mol%、SiO
2からなる酸化物を12mol%}の強磁性膜を積層した。なお、この垂直記録層の層構成では、強磁性層と強誘電磁性層とは、反強磁性結合をせずに、強磁性結合をしている。
【0096】
以上の方法で得られた磁気記録媒体について比較例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
(比較例3)
比較例1と同様に垂直記録媒体を作製したが、垂直記録層は次のように作製した。すなわち、強磁性層として層厚15nmの(Co−13Cr−16Pt)88mol%−(SiO
2)12mol%{Cr含有量13at%、Pt含有量16at%、残部Coの合金を88mol%、SiO
2からなる酸化物を12mol%}の強磁性膜を積層した。
【0098】
以上の方法で得られた磁気記録媒体について比較例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
(比較例4−8)
反強磁性結合層5を表2に記載の材料に変えた他は、実施例10と同様に磁気記録媒体を作成した。得られた磁気記録媒体について、実施例10と同様の方法で特性を評価した。結果を表2に示す。
【0100】
実施例1及び6と比較例1及び2の比較から、強磁性層と強誘電磁性層との間に反強磁性層を設けた方が著しくS/Nが大きく、ビットエラーレートが小さくなることが分る。これは、反強磁性結合により強誘電磁性層の磁化が見かけ上相殺され、磁気ノイズの影響が少なくなったためである。
【0101】
実施例1と実施例6の比較から、強誘電磁性層を強磁性層の下側に設ける方が、再生時に再生素子と記録層間の距離が短くなる分、良好な特性が得られることが分る。
【0102】
実施例1〜9の比較から、強誘電磁性層の厚さは1nm以上50nm以下が好ましく、20nm以下であることが、より好ましいことが分る。
【0103】
実施例10−20と比較例4−8の比較から、強磁性層と強誘電磁性層が反強磁性で磁気的に結合されていることで著しくS/Nが大きく、ビットエラーレートが小さくなることが分る。これは、反強磁性結合により強誘電磁性層の磁化が見かけ上相殺され、磁気ノイズの影響が少なくなったためである。
【0104】
実施例21−35に示すように、強誘電磁性層として種々の材料を使用することができる。また、実施例30と34から強誘電磁性層の磁化と膜厚の積(MsT)は0.01以上あるほうが良好な特性が得られていることが分る。
【0105】
実施例36−40に示すように、密着層8と下地層3の間に裏打ち層2を設けることもできる。これにより良好なS/Nを大きくすることができる。また、実施例36、37と実施例38−40の比較から、裏打ち層を複数の軟磁性膜の積層とし、層間に非磁性層を設けることで反強磁性結合させた方が良好な特性が得られることが分る。
【0106】
実施例41−45に示すように、強磁性層として種々の磁性材料を使うことができる。
以上のように、強磁性層と強誘電磁性層との間にAFC層を設けることで、高密度記録に適した媒体が得られる。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】
【表5】