(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
両方向に作動油の流出入が可能な2つの流出入ポートを有する少なくとも1つの閉回路用作動油流出入制御部と、ピストン、前記ピストンの伸長時に前記作動油が導入されるヘッド室、および前記ピストンの縮退時に前記作動油が導入されるロッド室を有する片ロッド式油圧シリンダとを備え、前記閉回路用作動油流出入制御部の2つの流出入ポートを前記ヘッド室および前記ロッド室に環状に接続した閉回路と、
作動油タンクから作動油を流入する流入ポートおよび作動油を流出する流出ポートを有する少なくとも1つの開回路用作動油流出入制御部、前記開回路用作動油流出入制御部の流出ポートと前記片ロッド式油圧シリンダの前記ヘッド室とを接続する第1流路、前記第1流路に設けた第1開閉装置、前記第1流路に接続し、前記開回路用作動油流出入制御部の流出ポートから流出する作動油を前記作動油タンクへ戻す第2流路、および前記第2流路に設けた第2開閉装置を備えた開回路と、
前記閉回路用作動油流出入制御部と、前記開回路用作動油流出入制御部と、前記第1および第2開閉装置とを制御する制御装置と、
前記片ロッド式油圧シリンダの伸縮動作を操作し前記操作に応じた操作信号を前記制御装置に出力する操作装置と、を具備し、
前記制御装置は、前記片ロッド式油圧シリンダを伸長動作させる操作信号を前記操作装置から入力した場合に、前記第2開閉装置を閉動作させてから、前記第1開閉装置を開動作させ、前記開回路用作動油流出入制御部を制御する
ことを特徴とする油圧駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置を搭載した油圧ショベルを示す概略図である。
図2は、油圧駆動装置のシステム構成を示す油圧回路図である。本第1実施形態は、片ロッド式油圧シリンダを伸長動作する際に、開回路から閉回路に合流する流路上に設けた切換弁前後の圧力差が小さくなるように、作動油を作動油タンクへ排出するために開回路に設けた排出流路を閉じるタイミングと、合流する流路上の切換弁を開けるタイミングとを制御することで、開回路から閉回路に作動油を合流する作動油の流量の変化を抑制して、片ロッド式油圧シリンダの良好な起動特性を得るようにしている。また同時に、片ロッド式油圧シリンダを縮退動作する場合は、片ロッド式油圧シリンダのヘッド室側から流出する作動油を閉回路と開回路とに分流し、ヘッド室側から流出する作動油のうちの余剰流量分の作動油を作動油タンクに急速に流出させ、片ロッド式油圧シリンダの縮退動作を高速化している。
【0021】
<全体構成>
図2に示す、本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置105を搭載する作業機械として、油圧ショベル100を例として説明する。油圧ショベル100は、
図1に示すように、左右方向の両側にクローラ式の走行装置8a,8bを備えた下部走行体103と、下部走行体103上に旋回可能に取り付けた本体としての上部旋回体102とを備える。上部旋回体102上には、オペレータが搭乗するキャブ101を設けている。下部走行体103と上部旋回体102とは、旋回装置7を介して旋回可能としている。
【0022】
上部旋回体102の前側には、例えば掘削作業等を行うための作動装置であるフロント作業機104の基端部を回動可能に取り付けている。ここで、前側とは、キャブ101の正面方向(
図1中の左方向)をいう。フロント作業機104は、上部旋回体102の前側に基端部を俯仰動可能に連結したブーム2を備える。ブーム2は、作動油(圧油)の供給にて伸縮駆動する片ロッド式油圧シリンダであるブームシリンダ1を介して動作する。ブームシリンダ1は、ロッド1cの先端部を上部旋回体102に連結し、シリンダチューブ1dの基端部をブーム2に連結している。
【0023】
ブームシリンダ1は、
図2に示すように、シリンダチューブ1dの基端側に位置し作動油を供給することによりロッド1cの基端部に取り付けたピストン1eを押圧して作動油圧による荷重を与えて、ロッド1cを伸長移動するヘッド室1aを備える。また、ブームシリンダ1は、シリンダチューブ1dの先端側に位置し作動油を供給することによりピストン1eを押圧して作動油圧による荷重を与えて、ロッド1cを縮退移動するロッド室1bを備える。
【0024】
ブーム2の先端部には、アーム4の基端部を俯仰動可能に連結している。アーム4は、片ロッド式油圧シリンダであるアームシリンダ3を介して動作する。アームシリンダ3は、ロッド3cの先端部をアーム4に連結し、アームシリンダ3のシリンダチューブ3dをブーム2に連結している。アームシリンダ3は、
図2に示すように、シリンダチューブ3dの基端側に位置し作動油を供給することによりロッド3cの基端部に取り付けたピストン3eを押圧して、ロッド3cを伸長移動するヘッド室3aを備える。また、アームシリンダ3は、シリンダチューブ3dの先端側に位置し作動油を供給することによりピストン3eを押圧して、ロッド3cを縮退移動するロッド室3bを備える。
【0025】
アーム4の先端部には、バケット6の基端部を俯仰動可能に連結している。バケット6は、片ロッド式油圧シリンダであるバケットシリンダ5を介して動作する。バケットシリンダ5は、ロッド5cの先端部をバケット6に連結し、バケットシリンダ5のシリンダチューブ5dの基端をアーム4に連結している。バケットシリンダ5は、シリンダチューブ5dの基端側に位置し作動油を供給することによりロッド5cの基端部に取り付けたピストン5eを押圧して、ロッド5cを伸長移動するヘッド室5aを備える。また、バケットシリンダ5は、シリンダチューブ5dの先端側に位置し作動油を供給することによりピストン5eを押圧して、ロッド5cを縮退移動するロッド室5bを備える。
【0026】
なお、ブームシリンダ1、アームシリンダ3およびバケットシリンダ5のそれぞれは、供給する作動油によって伸縮動作し、この供給する作動油の供給方向に依存して伸縮駆動する。油圧駆動装置105は、フロント作業機104を構成するブームシリンダ1、アームシリンダ3およびバケットシリンダ5に加え、旋回装置7および走行装置8a,8bの駆動に用いる。旋回装置7および走行装置8a,8bは、作動油の供給を受け回転駆動する液圧モータである。
【0027】
油圧駆動装置105は、
図2に示すように、キャブ101内に設置された操作部としての操作レバー装置56の操作に応じて、油圧アクチュエータであるブームシリンダ1、アームシリンダ3、バケットシリンダ5、旋回装置7および走行装置8a,8bを駆動する。ブームシリンダ1、アームシリンダ3およびバケットシリンダ5の伸縮動作、すなわち動作方向および動作速度は、操作レバー装置56の各操作レバー56a〜56dの操作方向および操作量にて指示する。
【0028】
油圧駆動装置105は、動力源であるエンジン9を備える。エンジン9は、例えば所定のギヤ等で構成し動力を配分するための動力伝達装置10に接続している。動力伝達装置10には、可変容量式の閉回路ポンプ12,14,16,18と、可変容量式の開回路ポンプ13,15,17,19と、各閉回路A〜Dの作動油圧が低下した場合に作動油を補充してこれら閉回路A〜Dの作動油圧を確保するためのチャージポンプ11とをそれぞれ接続している。
【0029】
閉回路ポンプ12,14,16,18は、後述する閉回路A〜Dに用いられ、作動油の吐出方向を変更させて該当する油圧アクチュエータの駆動を制御する必要性から、両方向に作動油が吐出可能な両傾転斜板機構(図示せず)を備えている。このため、各閉回路ポンプ12,14,16,18は、両方向への作動油の流出入を可能とする一対の流出入ポートを備えている。また、各閉回路ポンプ12,14,16,18は、両傾転斜板機構を構成する両傾転式の斜板の傾転角(傾斜角度)を調整するための流量調整部としてのレギュレータ12a,14a,16a,18aを備えている。一方、開回路ポンプ13,15,17,19は、切換弁44a〜44d,46a〜46d,48a〜48d,50a〜50dにて作動油の供給方向を制御する開回路E〜Hに用いられるため、一方向に作動油を吐出させればよい。このため、開回路ポンプ13,15,17,19は、片方向にのみ作動油が吐出可能な片傾転斜板機構を備えている。よって、これら各開回路ポンプ13,15,17,19は、作動油の流出側である出力ポートと、作動油の流入側である入力ポートとを備えている。また、開回路ポンプ13,15,17,19は、片傾転斜板機構を構成する片傾転式の斜板の傾転角(傾斜角度)を調整するための流量調整部としてのレギュレータ13a,15a,17a,19aを備える。開回路ポンプ13,15,17,19は、所定量(最小吐出流量)以上の流量の作動油を吐出する。各レギュレータ12a〜19aは、コントローラである制御装置57が出力する操作信号に応じて、対応する閉回路ポンプおよび開回路ポンプ12〜19の斜板の傾転角を調整して、これら閉回路ポンプおよび開回路ポンプ12〜19が吐出する作動油の流量を制御する流量制御部である。なお、閉回路ポンプおよび開回路ポンプ12〜19は、斜軸機構など可変傾転機構であればよく、斜板機構に拘るものではない。
【0030】
閉回路ポンプ12,14,16,18は、閉回路A〜Dに接続した閉回路用作動油流出入制御部として用いる閉回路用の油圧ポンプである。開回路ポンプ13,15,17,19は、開回路E〜Hに接続した開回路用作動油流出入制御部として用いる開回路用の油圧ポンプである。
【0031】
具体的に、閉回路ポンプ12の一方の入出力ポートを流路200に接続し、他方の入出力ポートを流路201に接続している。流路200,201には、複数、例えば4つの切換弁43a〜43dを接続している。切換弁43a〜43cは、閉回路ポンプ12に対して閉回路状に接続したブームシリンダ1、アームシリンダ3、バケットシリンダ5への作動油の供給を切り換えて、これらブームシリンダ1、アームシリンダ3、バケットシリンダ5のうちの必要とする油圧アクチュエータを伸縮駆動させるための閉回路用切換部である。切換弁43dは、閉回路ポンプ12に対して閉回路状に接続した旋回装置7への作動油の供給を切り換えて、旋回装置7の旋回方向を切り換えるための液圧モータ用の閉回路用切換部である。切換弁43a〜43dは、制御装置57から出力される操作信号に応じて、流路200,201の導通と遮断とを切り換える構成であり、制御装置57からの操作信号の出力が無い場合は遮断状態となる。制御装置57は、切換弁43a〜43dが同時に導通状態にならないように制御する。
【0032】
切換弁43aは、流路212,213を介してブームシリンダ1に接続している。閉回路ポンプ12は、制御装置57が出力する操作信号に応じて切換弁43aが導通状態になった場合に、流路200,201、切換弁43aおよび流路212,213を介してブームシリンダ1に閉回路状に接続する閉回路Aを構成する。切換弁43bは、流路214,215を介してアームシリンダ3に接続している。閉回路ポンプ12は、制御装置57が出力する操作信号に応じて切換弁43bが導通状態になった場合に、流路200,201、切換弁43bおよび流路214,215を介してアームシリンダ3に閉回路状に接続する閉回路Bを構成する。
【0033】
切換弁43cは、流路216,217を介してバケットシリンダ5に接続している。閉回路ポンプ12は、制御装置57からの操作信号により切換弁43cが導通状態になった場合に、流路200,201、切換弁43cおよび流路216,217を介してバケットシリンダ5に閉回路状に接続する閉回路Cを構成する。切換弁43dは、流路218,219を介して旋回装置7に接続している。閉回路ポンプ12は、制御装置57からの操作信号により切換弁43dが導通状態になった場合に、流路200,201、切換弁43dおよび流路218,219を介して旋回装置7に閉回路状に接続する閉回路Dを構成する。
【0034】
流路212は、ブームシリンダ1を後述する開回路E〜Hの複数の切換弁44a,46a,48a,50aに独立して接続するための油圧シリンダ用の接続流路である。流路214は、アームシリンダ3を後述する開回路E〜Hの複数の切換弁44b,46b,48b,50bに独立して接続するための油圧シリンダ用の接続流路である。流路216は、バケットシリンダ5を、後述する開回路E〜Hの複数の切換弁44c,46c,48c,50cに独立して接続するための油圧シリンダ用の接続流路である。
【0035】
また、閉回路ポンプ14の一方の入出力ポートに流路203を接続し、他方の入出力ポートに流路204を接続している。流路203,204には、複数、例えば4つの切換弁45a〜45dを接続している。切換弁45a〜45cは、閉回路ポンプ14に対して閉回路状に接続したブームシリンダ1、アームシリンダ3およびバケットシリンダ5への作動油の供給を切り換えて、これらブームシリンダ1、アームシリンダ3、バケットシリンダ5のうちの必要とする油圧アクチュエータを伸縮駆動させるための閉回路用切換部である。切換弁45dは、閉回路ポンプ14に対して閉回路状に接続した旋回装置7への作動油の供給を切り換えて、旋回装置7の旋回方向を切り換えるための液圧モータ用の閉回路用切換部である。切換弁45a〜45dは、制御装置57が出力する操作信号に応じて、流路203,204の導通と遮断とを切り換える構成であり、制御装置57からの操作信号の出力が無い場合に遮断状態となる。制御装置57は、切換弁45a〜45dが同時に導通状態にならないように制御する。
【0036】
切換弁45aは、流路212,213を介してブームシリンダ1に接続している。閉回路ポンプ14は、制御装置57からの操作信号により切換弁45aが導通状態になった場合に、流路203,204、切換弁45aおよび流路212,213を介してブームシリンダ1に環状、すなわち閉回路状に接続する閉回路Aを構成する。切換弁45bは、流路214,215を介してアームシリンダ3に接続している。閉回路ポンプ14は、制御装置57からの操作信号により切換弁45bが導通状態になった場合に、流路203,204、切換弁45bおよび流路214,215を介してアームシリンダ3に閉回路状に接続する閉回路Bを構成する。
【0037】
切換弁45cは、流路216,217を介してバケットシリンダ5に接続している。閉回路ポンプ14は、制御装置57からの操作信号により切換弁45cが導通状態になった場合に、流路203,204、切換弁45cおよび流路216,217を介してバケットシリンダ5に閉回路状に接続する閉回路Cを構成する。切換弁45dは、流路218,219を介して旋回装置7に接続している。閉回路ポンプ14は、制御装置57からの操作信号により切換弁45dが導通状態になった場合に、流路203,204、切換弁45dおよび流路218,219を介して旋回装置7に閉回路状に接続する閉回路Dを構成する。
【0038】
閉回路ポンプ16の一方の入出力ポートに流路206を接続し、他方の入出力ポートに流路207を接続している。流路206,207には、複数、例えば4つの切換弁47a〜47dを接続している。切換弁47a〜47cは、閉回路ポンプ16に対して閉回路状に接続したブームシリンダ1、アームシリンダ3およびバケットシリンダ5への作動油の供給を切り換えて、これらブームシリンダ1、アームシリンダ3、バケットシリンダ5のうちの必要とする油圧アクチュエータを伸縮駆動させるための閉回路用切換部である。切換弁47dは、閉回路ポンプ16に対して閉回路状に接続した旋回装置7への作動油の供給を切り換えて、旋回装置7の旋回方向を切り換えるための液圧モータ用の閉回路用切換部である。切換弁47a〜47dは、制御装置57が出力する操作信号に応じて、流路の導通と遮断とを切り換える構成であり、制御装置57からの操作信号の出力が無い場合に遮断状態となる。制御装置57は、切換弁47a〜47dが同時に導通状態にならないように制御する。
【0039】
切換弁47aは、流路212,213を介してブームシリンダ1に接続している。閉回路ポンプ16は、制御装置57からの操作信号により切換弁47aが導通状態になった場合に、流路206,207、切換弁47aおよび流路212,213を介してブームシリンダ1に閉回路状に接続する閉回路Aを構成する。切換弁47bは、流路214,215を介してアームシリンダ3に接続している。閉回路ポンプ16は、制御装置57からの操作信号により切換弁47bが導通状態になった場合に、流路206,207、切換弁47bおよび流路214,215を介してアームシリンダ3に閉回路状に接続する閉回路Bを構成する。
【0040】
切換弁47cは、流路216,217を介してバケットシリンダ5に接続している。閉回路ポンプ16は、制御装置57からの操作信号により切換弁47cが導通状態になった場合に、流路206,207、切換弁47cおよび流路216,217を介してバケットシリンダ5に閉回路状に接続する閉回路Cを構成する。切換弁47dは、流路218,219を介して旋回装置7に接続している。閉回路ポンプ16は、制御装置57からの操作信号により切換弁47dが導通状態になった場合に、流路206,207、切換弁47dおよび流路218,219を介して旋回装置7と閉回路状に接続する閉回路Dを構成する。
【0041】
閉回路ポンプ18の一方の入出力ポートに流路209を接続し、他方の入出力ポートに流路210を接続している。流路209,210には、複数、例えば4つの切換弁49a〜49dを接続している。切換弁49a〜49cは、閉回路ポンプ18に対して閉回路状に接続したブームシリンダ1、アームシリンダ3およびバケットシリンダ5への作動油の供給を切り換えて、これらブームシリンダ1、アームシリンダ3、バケットシリンダ5のうちの必要とする油圧アクチュエータを伸縮駆動させるための閉回路用切換部である。切換弁49dは、閉回路ポンプ18に対して閉回路状に接続した旋回装置7への作動油の供給を切り換えて、旋回装置7の旋回方向を切り換えるための液圧モータ用の閉回路用切換部である。切換弁49a〜49dは、制御装置57が出力する操作信号に応じて、流路の導通と遮断とを切り換える構成であり、制御装置57からの操作信号の出力が無い場合は遮断状態となる。制御装置57は、切換弁49a〜49dが同時に導通状態にならないように制御する。
【0042】
切換弁49aは、流路212,213を介してブームシリンダ1に接続している。閉回路ポンプ18は、制御装置57からの操作信号により切換弁49aが導通状態になった場合に、流路209,210、切換弁49aおよび流路212,213を介してブームシリンダ1と閉回路状に接続する閉回路Aを構成する。切換弁49bは、流路214,215を介してアームシリンダ3に接続している。閉回路ポンプ18は、制御装置57からの操作信号により切換弁49bが導通状態になった場合に、流路209,210、切換弁49bおよび流路214,215を介してアームシリンダ3に閉回路状に接続する閉回路Bを構成する。
【0043】
切換弁49cは、流路216,217を介してバケットシリンダ5に接続している。閉回路ポンプ18は、制御装置57からの操作信号により切換弁49cが導通状態になった場合に、流路209,210、切換弁49cおよび流路216,217を介してバケットシリンダ5に閉回路状に接続する閉回路Cを構成する。切換弁49dは、流路218,219を介して旋回装置7に接続している。閉回路ポンプ18は、制御装置57からの操作信号により切換弁49dが導通状態になった場合に、流路209,210、切換弁49dおよび流路218,219を介して旋回装置7に閉回路状に接続する閉回路Dを構成する。
【0044】
開回路ポンプ13の一方の入出力ポートには、流路202を介して複数、例えば4つの切換弁44a〜44dと、リリーフ弁21とを接続している。開回路ポンプ13の他方の入出力ポートは、作動油タンク25に接続して開回路Eとしている。切換弁44a〜44dは、制御装置57が出力する操作信号に応じて流路202の導通と遮断とを切り換え、開回路ポンプ13から流出する作動油の供給先を、後述する連結流路301〜304に切り換える開回路切換部であり、制御装置57からの操作信号の出力が無い場合に遮断状態となる。制御装置57は、切換弁44a〜44dが同時に導通状態にならないように制御する。
【0045】
切換弁44aは、連結流路301と流路212とを介してブームシリンダ1に接続している。連結流路301は、流路212から分岐して設けた連結管路である。切換弁44bは、連結流路302と流路214とを介してアームシリンダ3に接続している。連結流路302は、流路214から分岐して設けた連結管路である。切換弁44cは、連結流路303と流路216とを介してバケットシリンダ5に接続している。連結流路303は、流路216から分岐して設けた連結管路である。切換弁44dは、連結流路304と流路220と介して、走行装置8a,8bへの作動油の給排出を制御するコントロールバルブである比例切換弁54,55に接続している。リリーフ弁21は、流路202内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、この流路202内の作動油を作動油タンク25へ逃がして流路202、ひいては油圧駆動装置105(油圧回路)を保護する。
【0046】
流路202と作動油タンク25との間には、第2開閉装置であるブリードオフ弁64を接続している。ブリードオフ弁64は、切換弁44a〜44dと開回路ポンプ13とを繋ぐ流路202から分岐して作動油タンク25へ繋がる管路上に接続している。ブリードオフ弁64は、制御装置57が出力する操作信号に応じて、流路202から作動油タンク25に流す作動油の流量を制御する。ブリードオフ弁64は、制御装置57からの操作信号の出力が無い場合は遮断状態となる。
【0047】
開回路ポンプ15の一方の入出力ポートには、流路205を介して複数、例えば4つの切換弁46a〜46dと、リリーフ弁22とを接続している。開回路ポンプ15の他方の入出力ポートは、作動油タンク25に接続して開回路Fとしている。切換弁46a〜46dは、制御装置57が出力する操作信号に応じて流路205の導通と遮断とを切り換え、開回路ポンプ15から流出する作動油の供給先を、連結流路301〜304に切り換える開回路切換部であり、制御装置57からの操作信号の出力が無い場合に遮断状態となる。制御装置57は、切換弁46a〜46dが同時に導通状態にならないように制御する。
【0048】
切換弁46aは、連結流路301および流路212を介してブームシリンダ1に接続している。切換弁46bは、連結流路302および流路214を介してアームシリンダ3に接続している。切換弁46cは、連結流路303および流路216を介してバケットシリンダ5に接続している。切換弁46dは、連結流路304および流路220を介して比例切換弁54,55に接続している。一方、リリーフ弁22は、流路205内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、この流路205内の作動油を作動油タンク25へ逃がして流路205を保護する。
【0049】
流路205と作動油タンク25との間には、第2開閉装置であるブリードオフ弁65を接続している。ブリードオフ弁65は、切換弁46a〜46dと開回路ポンプ15とを繋ぐ管路である流路205から分岐して作動油タンク25へ繋がる管路上に接続している。ブリードオフ弁65は、制御装置57から出力される操作信号に応じて、流路205から作動油タンク25に流す作動油の流量を制御する。ブリードオフ弁65は、制御装置57からの操作信号の出力が無い場合は遮断状態となる。
【0050】
開回路ポンプ17の一方の入出力ポートには、流路208を介して複数、例えば4つの切換弁48a〜48dと、リリーフ弁23とを接続している。開回路ポンプ17の他方の入出力ポートは、作動油タンク25に接続して開回路Gとしている。切換弁48a〜48dは、制御装置57が出力する操作信号に応じて流路208の導通と遮断とを切り換え、開回路ポンプ17から流出される作動油の供給先を、連結流路301〜304に切り換える開回路切換部であり、制御装置57からの操作信号の出力が無い場合に遮断状態となる。制御装置57は、切換弁48a〜48dが同時に導通状態にならないように制御する。
【0051】
切換弁48aは、連結流路301および流路212を介してブームシリンダ1に接続している。切換弁48bは、連結流路302および流路214を介してアームシリンダ3に接続している。切換弁48cは、連結流路303および流路216を介してバケットシリンダ5に接続している。切換弁48dは、連結流路304および流路220を介して比例切換弁54,55に接続している。リリーフ弁23は、流路208内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、この流路208内の作動油を作動油タンク25へ逃がして流路208を保護する。
【0052】
流路208と作動油タンク25との間には、第2開閉装置であるブリードオフ弁66を接続している。ブリードオフ弁66は、切換弁48a〜48dと開回路ポンプ17とを繋ぐ管路である流路208から分岐して作動油タンク25へ繋がる管路上に接続している。ブリードオフ弁66は、制御装置57が出力する操作信号に応じて、流路208から作動油タンク25に流す流量を制御する。ブリードオフ弁66は、制御装置57からの操作信号の出力が無い場合は遮断状態となる。
【0053】
開回路ポンプ19の一方の入出力ポートには、流路211を介して複数、例えば4つの切換弁50a〜50dと、リリーフ弁24とを接続している。開回路ポンプ19の他方の入出力ポートは、作動油タンク25に接続して開回路Hとしている。切換弁50a〜50dは、制御装置57が出力する操作信号に応じて流路211の導通と遮断とを切り換え、開回路ポンプ19から流出する作動油の供給先を、連結流路301〜304に切り換える開回路切換部であり、制御装置57からの操作信号の出力がない場合は遮断状態となる。制御装置57は、切換弁50a〜50dが同時に導通状態にならないように制御する。
【0054】
切換弁50aは、連結流路301および流路212を介してブームシリンダ1に接続している。切換弁50bは、連結流路302および流路214を介してアームシリンダ3に接続している。切換弁50cは、連結流路303および流路216を介してバケットシリンダ5に接続している。切換弁50dは、連結流路304および流路220を介して比例切換弁54,55に接続している。リリーフ弁24は、流路211内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、この流路211内の作動油を作動油タンク25へ逃がして流路211を保護する。
【0055】
切換弁44a〜44d,46a〜46d,48a〜48d,50a〜50dは、開回路E〜Hから閉回路A〜Dへの作動油の供給、および閉回路A〜Dから開回路E〜Hへの作動油の分流を制御するための第1開閉装置として機能する構成である。
【0056】
流路211と作動油タンク25との間には、第2開閉装置であるブリードオフ弁67を接続している。ブリードオフ弁67は、切換弁50a〜50dと開回路ポンプ19とを繋ぐ管路である流路211から分岐して作動油タンク25へ繋がる管路上に接続している。ブリードオフ弁67は、制御装置57が出力する操作信号に応じて、流路211から作動油タンク25に流す作動油の流量を制御する。ブリードオフ弁67は、制御装置57からの操作信号の出力が無い場合は遮断状態となる。
【0057】
連結流路301は、複数の開回路E〜Hのうちの少なくとも1つの切換弁44a,46a,48a,50aの作動油の排出側に接続した開回路用接続流路305a〜308aと、閉回路Aを構成する流路212に接続した閉回路用接続流路309aとで構成している。連結流路302は、複数の開回路E〜Hのうちの少なくとも1つの切換弁44b,46b,48b,50bの作動油の排出側に接続した開回路用接続流路305b〜308bと、閉回路Bを構成する流路214に接続した閉回路用接続流路309bとで構成している。連結流路303は、複数の開回路E〜Hのうちの少なくとも1つの切換弁44c,46c,48c,50cの作動油の排出側に接続した開回路用接続流路305c〜308cと、閉回路Cを構成する流路216に接続した閉回路用接続流路309cとで構成している。流路304は、複数の開回路E〜Hのうちの少なくとも1つの切換弁44d,46d,48d,50dの作動油の排出側に接続した開回路用接続流路305d〜308dと、流路220に接続した接続流路309dとで構成している。
【0058】
油圧駆動装置105は、閉回路ポンプ12,14,16,18とブームシリンダ1、アームシリンダ3、バケットシリンダ5および旋回装置7とが、これら閉回路ポンプ12,14,16,18の一方の流出入ポートから油圧アクチュエータを介して他方の流出入ポートへ閉回路状に接続した閉回路A〜Dから構成し、さらに開回路ポンプ13,15,17,19と切換弁44a〜44d,46a〜46d,48a〜48d,50a〜50dとが、これら開回路ポンプ13,15,17,19の出力ポートに切換弁44a〜44d,46a〜46d,48a〜48d,50a〜50dを接続し、これら開回路ポンプ13,15,17,19の入力ポートに作動油タンク25を接続した開回路E〜Hから構成している。これら閉回路A〜Dおよび開回路E〜Hは、例えば4回路ずつ、対をなして設けている。
【0059】
チャージポンプ11の吐出口は、流路229を介してチャージ用リリーフ弁20、およびチャージ用チェック弁26〜29,40a,40b,41a,41b,42a,42bに接続している。チャージポンプ11の吸込口は、作動油タンク25に接続している。チャージ用リリーフ弁20は、チャージ用チェック弁26〜29,40a,40b,41a,41b,42a,42bのチャージ圧力を調整する。
【0060】
チャージ用チェック弁26は、流路200,201内の作動油圧が、チャージ用リリーフ弁20で設定した圧力を下回った場合に、流路200,201にチャージポンプ11から作動油を供給する。チャージ用チェック弁27は、流路203,204内の作動油圧が、チャージ用リリーフ弁20で設定した圧力を下回った場合に、流路203,204にチャージポンプ11から作動油を供給する。チャージ用チェック弁28は、流路206,207内の作動油圧が、チャージ用リリーフ弁20で設定した圧力を下回った場合に、流路206,207にチャージポンプ11から作動油を供給する。チャージ用チェック弁29は、流路209,210内の作動油圧が、チャージ用リリーフ弁20で設定した圧力下回った場合に、流路209,210にチャージポンプ11から作動油を供給する。
【0061】
チャージ用チェック弁40a,40bは、流路212,213内の作動油圧が、チャージ用リリーフ弁20で設定した圧力を下回った場合に、流路212,213にチャージポンプ11から作動油を供給する。チャージ用チェック弁41a,41bは、流路214,215内の作動油圧が、チャージ用リリーフ弁20で設定した圧力を下回った場合に、流路214,215にチャージポンプ11から作動油を供給する。チャージ用チェック弁42a,42bは、流路216,217内の作動油圧が、チャージ用リリーフ弁20で設定した圧力を下回った場合に、流路216,217にチャージポンプ11から作動油を供給する。
【0062】
流路200,201間には、一対のリリーフ弁30a,30bを接続している。リリーフ弁30a,30bは、流路200,201内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、流路200,201内の作動油を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25へ逃がして流路200,201を保護する。同様に、流路203,204間には、一対のリリーフ弁31a,31bを接続している。リリーフ弁31a,31bは、流路203,204内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、流路203,204内の作動油を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25へ逃がして流路203,204を保護する。
【0063】
流路206,207間にもまた、リリーフ弁32a,32bを接続している。リリーフ弁32a,32bは、流路206,207内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、流路206,207内の作動油を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25へ逃がして流路206,207を保護する。流路209,210間にもまた、リリーフ弁33a,33bを接続している。リリーフ弁33a,33bは、流路209,210内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、流路209,210内の作動油を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25へ逃がして流路209,210を保護する。
【0064】
流路212は、ブームシリンダ1のヘッド室1aに接続している。流路213は、ブームシリンダ1のロッド室1bに接続している。流路212,213間には、リリーフ弁37a,37bを接続している。リリーフ弁37a,37bは、流路212,213内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、流路212,213内の作動油を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25に逃がして流路212,213を保護する。流路212,213間には、フラッシング弁34を接続している。フラッシング弁34は、流路212,213内の余剰分の作動油(余剰油)を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25に排出する。
【0065】
流路214は、アームシリンダ3のヘッド室3aに接続している。流路215は、アームシリンダ3のロッド室3bに接続している。流路214,215間には、リリーフ弁38a,38bを接続している。リリーフ弁38a,38bは、流路214,215内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、流路214,215内の作動油を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25へ逃がして流路214,215を保護する。流路214,215間には、フラッシング弁35を接続している。フラッシング弁35は、流路214,215内の余剰分の作動油を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25に排出する。
【0066】
流路216は、バケットシリンダ5のヘッド室5aに接続している。流路217は、バケットシリンダ5のロッド室5bに接続している。流路216,217間には、リリーフ弁39a,39bを接続している。リリーフ弁39a,39bは、流路216,217内の作動油圧が所定の圧力以上になった場合に、流路216,217内の作動油を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25へ逃がして流路216,217を保護する。流路216,217間には、フラッシング弁36を接続している。フラッシング弁36は、流路216,217内の余剰分の作動油を、チャージ用リリーフ弁20を介して作動油タンク25に排出する。
【0067】
流路218,219は、旋回装置7にそれぞれ接続している。流路218,219間には、リリーフ弁51a,51bを接続している。リリーフ弁51a,51bは、流路218,219間の作動油の圧力差(流路圧力差)が所定の圧力以上になった場合に、高圧側の流路218,219内の作動油を低圧側の流路219,218へ逃がして流路218,219を保護する。
【0068】
比例制御弁54と走行装置8aとは、流路221,222にて接続している。流路221,222間には、リリーフ弁52a,52bを接続している。リリーフ弁52a,52bは、流路221,222間の作動油の圧力差が所定の圧力以上になった場合に、高圧側の流路221,222内の作動油を低圧側の流路222,221へ逃がして流路221,222を保護する。比例切換弁54は、制御装置57が出力する操作信号に応じて、流路220と作動油タンク25との接続先を、流路221および流路222のいずれかに切り換える流量調整可能な構成である。
【0069】
比例切換弁55と走行装置8bとは、流路223,224にて接続している。流路223,224間には、リリーフ弁53a,53bを接続している。リリーフ弁53a,53bは、流路223,224間の作動油の圧力差が所定の圧力以上になった場合に、高圧側の流路223,224内の作動油を低圧側の流路224,223へ逃がして流路223,224を保護する。比例切換弁55は、制御装置57が出力する操作信号に応じて、流路220と作動油タンク25との接続先を、流路223および流路224のいずれかに切り換える流量調整可能な構成である。
【0070】
制御装置57は、操作レバー装置56からのブームシリンダ1、アームシリンダ3およびバケットシリンダ5の伸縮方向および伸縮速度の指令値と、旋回装置7および走行装置8a,8bの回転方向および回転速度の指令値と、油圧駆動装置105内の種々のセンサ情報に基づいて、各レギュレータ12a〜19a、切換弁43a〜50a,43b〜50b,43c〜50c,43d〜50d、および比例切換弁54,55を制御する。
【0071】
具体的に、制御装置57は、例えば、ブームシリンダ1のヘッド室1aおよびロッド室1bに接続した流路212側の閉回路ポンプ12の流量である第1流量と、連結流路301に切換弁44aを介して接続した開回路ポンプ13の流量である第2流量との比が、ブームシリンダ1のヘッド室1aとロッド室1bとの受圧面積に応じて予め設定した所定値となるように、これら第1流量および第2流量を制御する受圧面積比制御を行う。同様に、制御装置57は、ブームシリンダ1以外のアームシリンダ3およびバケットシリンダ5についても、上記受圧面積比制御を行う。
【0072】
制御装置57は、ブームシリンダ1、アームシリンダ3およびバケットシリンダ5のうちの少なくとも1つ以上を動作した際に、切換弁43a〜50a,43b〜50b,43c〜50c,43d〜50dを適宜制御して、対応する開回路ポンプ13,15,17,19と同じ台数の閉回路ポンプ12,14,16,18が吐出する作動油を、動作するブームシリンダ1、アームシリンダ3およびバケットシリンダ5のうちの少なくとも1つ以上に供給する。
【0073】
操作レバー装置56の操作レバー56aは、ブームシリンダ1の伸縮方向および伸縮速度の指令値を制御装置57に与える。操作レバー56bは、アームシリンダ3の伸縮方向および伸縮速度の指令値を制御装置57に与え、操作レバー56cは、バケットシリンダ5の伸縮方向および伸縮速度の指令値を制御装置57に与える。操作レバー56dは、旋回装置7の回転方向および回転速度の指令値を制御装置57に与える。なお、走行装置8a,8bの回転方向および回転速度の指令値を制御装置57に与える操作レバー(図示せず)も備えている。
【0074】
<要部構成>
図3は、油圧駆動装置105の要部構成を示す概略図である。すなわち、
図3は、上記第1実施形態に係る油圧回路の要部を
図2から抽出した油圧回路図である。なお、
図3では、ブームシリンダ1の回路を
図2中から抽出して図示しているが、その他のアームシリンダ3、バケットシリンダ5の回路も同様の構成としている。
図3において、すでに説明した構成は同一符号を付して、その説明を省略する。
【0075】
油圧駆動装置105は、ブームシリンダ1と閉回路ポンプ12とを閉回路状に接続した閉回路Aと、ブームシリンダ1のヘッド室1a側の流路に切換弁44aを介して開回路ポンプ13を接続し開回路ポンプ13が流出する作動油を閉回路Aに導入可能とした開回路Eと、閉回路ポンプ12および開回路ポンプ13の駆動を制御する制御装置57とにて構成している。ブームシリンダ1は、切換弁44aおよびブリードオフ弁64の制御により、閉回路ポンプ12および開回路ポンプ13のそれぞれが吐出する作動油を合流した後にヘッド室1a側に供給して伸長動作する。開回路ポンプ13側には、作動油を作動油タンク25へ排出するための回路である第2流路としての排出流路404を設けている。ブームシリンダ1を縮退動作する際には、切換弁44aおよびブリードオフ弁64の制御により、ブームシリンダ1のヘッド室1aから流出する作動油を閉回路ポンプ12側と、開回路E側の排出流路404とに分流する。
【0076】
(制御装置)
制御装置57は、操作レバー56aの操作に応じて閉回路ポンプ12、開回路ポンプ13、切換弁44aおよびブリードオフ弁64の動作を制御する。制御装置57は、第1制御信号線である制御信号線405を介して切換弁44aの開閉動作を制御し、第2制御信号線である制御信号線406を介してブリードオフ弁64の開閉動作を制御する。制御装置57は、制御信号線408を介して閉回路ポンプ12のレギュレータ12aを制御し、閉回路ポンプ12の吐出流量とその方向を制御する。また、制御装置57は、制御信号線407を介して開回路ポンプ13のレギュレータ13aを制御し、開回路ポンプ13の吐出流量を制御する。
【0077】
制御装置57は、操作信号判断部503a、制御信号生成部503bおよび時間差算出部503cを備える。操作信号判断部503aは、操作レバー56aからブームシリンダ1の伸縮動作操作を受けた場合、操作レバー56aの操作量に応じてブームシリンダ1を伸縮動作させるために、閉回路ポンプ12および開回路ポンプ13それぞれの目標吐出流量を算出する。制御信号生成部503bは、制御信号線406を介してブリードオフ弁64に制御信号を与えるとともに、制御信号線405を介して切換弁44aに制御信号を与える。時間差算出部503cは、ブリードオフ弁64に制御信号を出力してから、切換弁44aに制御信号を出力するまでの時間差である伸長制御タイミングdT1および縮退制御タイミングdT2を算出する。
【0078】
(閉回路)
閉回路ポンプ12の2つの入出力ポートに流路200,201をそれぞれ接続し、ブームシリンダ1のヘッド室1aを、流路200を介して閉回路ポンプ12の一方の入出力ポートに接続し、ブームシリンダ1のロッド室1bを、流路201を介して閉回路ポンプ12の他方の入出力ポートに接続している。ブームシリンダ1の伸縮方向(伸長/縮退)は、閉回路ポンプ12の作動油の吐出方向に依存し、ブームシリンダ1のヘッド室1aおよびロッド室1b内の作動油圧は、ブームシリンダ1のピストン1eのヘッド室1a側の受圧面とロッド室1b側の受圧面とに作用し、ピストン1eは、これらヘッド室1aおよびロッド室1bから荷重を受ける。ピストン1eに作用する荷重差がピストン1eを駆動する駆動力となる。
【0079】
(開回路)
開回路ポンプ13の出力ポートは、第1流路である流路202に接続し、開回路ポンプ13の入力ポートは、作動油タンク25に接続している。流路202には、切換弁44aを設け、流路202は、流路305aを介して流路200に接続している。流路202には、開回路ポンプ13の流出ポートから流出する作動油を作動油タンク25へ戻すための第2流路である排出流路404を分岐して接続し、排出流路404は作動油タンク25に接続している。排出流路404には、ブリードオフ弁64が設けられている。ブリードオフ弁64は、切換位置として開位置64aおよび閉位置64bを有する二位置切換弁である。ブリードオフ弁64は、流路202へ流れ込む作動油を必要に応じ作動油タンク25へ排出するためのものであり、その切換位置は、制御信号線406を介して制御装置57にて制御される。
【0080】
ブリードオフ弁64は、制御装置57が出力する操作信号により切換位置が開位置64aに切り換わった場合に開状態となる。このとき、開回路ポンプ13が吐出する作動油は、流路404およびブリードオフ弁64を介して作動油タンク25へ排出する。制御装置57が出力する操作信号によりブリードオフ弁64の切換位置が閉位置64bに切り換わった場合は、閉状態となり、流路404から作動油タンク25への作動油の通過を遮断する。
【0081】
<作用>
次に、上記第1実施形態に係る油圧駆動装置105の作用につき、停止状態からブームシリンダ1を動作しブーム上げおよびブーム下げを行う場合について説明する。
図4は、油圧駆動装置105のブーム上げ動作時の状態を示すタイムチャートで、(a)は操作レバー56aの入力信号、(b)はブリードオフ弁64の状態、(c)は切換弁44aの状態、(d)は閉回路ポンプ12の吐出流量、(e)は開回路ポンプ13の吐出流量である。
【0082】
(停止時)
操作レバー56aが非操作の場合は、制御装置57にて制御信号線405を介して切換弁44aを閉位置44a1とし、かつ制御信号線406を介してブリードオフ弁64を開位置64とする。このとき、制御装置57は、制御信号線408を介して制御信号を出力し、閉回路ポンプ12の吐出流量が0になるようにレギュレータ12aを制御する。同時に、制御装置57は、制御信号線407を介して制御信号を出力し、開回路ポンプ13が最小吐出流量となるようにレギュレータ13aを制御する。
【0083】
開回路ポンプ13は、作動油を流路202へ吐出し、ブリードオフ弁64および排出流路404を介して作動油タンク25へ排出する。よって、ブームシリンダ1への作動油の流入および流出はなく、ブームシリンダ1を停止状態で保持する。
【0084】
(ブーム上げ)
操作レバー56aがブームシリンダ1を伸長する操作がなされた場合は、制御信号線406を介して制御装置57から制御信号を出力し、ブリードオフ弁64を閉位置64bに制御する。このとき、制御装置57は、制御信号線407を介してレギュレータ13aに制御信号を出力し、開回路ポンプ13の斜板を最小傾転に制御し、開回路ポンプ13は、流路202へ最小吐出流量の作動油を吐出する。
【0085】
制御装置57は、ブリードオフ弁64を閉位置64bとする制御信号を出力してから、
図4に示す伸長制御タイミングdT1が経過した後に、制御信号線405を介し切換弁44aを開位置44a2とする制御信号を出力すると同時に、開回路ポンプ13に対し、流量Qop1を吐出するようにレギュレータ13aに制御信号を出力する。切換弁44aは、制御信号を受けて開位置44a2となり、開回路ポンプ13の吐出した作動油を流路200へ合流する。ここで、伸長制御タイミングdT1の設定方法としては、開回路ポンプ13が最小吐出流量の作動油を吐出した際に、流路305aで発生しているブームシリンダ1の保持圧、すなわちブームシリンダ1が駆動していない状態での圧力に到達するまでの時間を実験的に求める方法が一例として挙げられる。また、開回路ポンプ13の最小吐出流量、および流路202の容積等から計算により算出してもよい。後述の縮退制御タイミングdT2についても同様に算出することができる。なお、
図4では、切換弁44を開位置44a2にするのと同時に、開回路ポンプ13が流量Qop1の作動油を吐出するように制御しているが、開回路ポンプ13が流量Qop1の作動油を吐出するように制御するタイミングは、ブームシリンダ1の伸長操作に影響を及ぼさない程度であれば、ブリードオフ弁64が閉じた直後から伸長制御タイミングdT1の間でもよいし、伸長制御タイミングdT1の後でもよい。
【0086】
また、制御装置57は、ブリードオフ弁64に制御信号を出力した同じ伸長制御タイミングdT1で制御信号線408を介して閉回路ポンプ12のレギュレータ12aに制御信号を出力して閉回路ポンプ12の斜板を制御し、流路200側へ流量Qcp1の作動油を吐出する。閉回路ポンプ12および開回路ポンプ13から吐出した作動油は、ブームシリンダ1のヘッド室1aへ流入してブームシリンダ1が伸長動作する。同時に、ブームシリンダ1のロッド室1bから流出した作動油は、流路201を介して閉回路ポンプ12に吸入する。
【0087】
(ブーム下げ)
図5は、油圧駆動装置105のブーム下げ動作時の状態を示すタイムチャートで、(a)は操作レバー56aの入力信号、(b)はブリードオフ弁64の状態、(c)は切換弁44aの状態、(d)は閉回路ポンプ12の吐出流量、(e)は開回路ポンプ13の吐出流量である。
【0088】
操作レバー56aがブームシリンダ1を縮退する操作がなされた場合は、制御装置57は、制御信号線406を介して制御信号を出力し、ブリードオフ弁64を閉位置64bに制御する。このとき、制御装置57は、開回路ポンプ13が最小吐出流量の作動油を吐出するように制御信号線407を介して制御信号をレギュレータ13aに出力して制御する。このとき、ブリードオフ弁64は、制御装置57が閉位置64bに制御しているが、開回路ポンプ13から最小吐出流量の作動油を流路202へ吐出しているため、流路202内の圧力が上昇する。
【0089】
制御装置57は、ブリードオフ弁64を閉位置64bとする制御信号を出力してから、
図5に示すように、縮退制御タイミングdT2が経過した後に、制御信号線405を介してブリードオフ弁64を開位置64aに制御する。同時に、制御装置57は、切換弁44aが閉位置44a1から開位置44a2になるように、制御信号線405を介し制御信号を切換弁44aに出力する。
【0090】
さらに、制御装置57は、制御信号線408を介して閉回路ポンプ12のレギュレータ12aに制御信号を出力して、閉回路ポンプ12の斜板を制御し、流路201側へ流量Qcp1の作動油を吐出する。
図5においては、閉回路ポンプ12の吐出流量を−Qcp1としているが、閉回路ポンプ12が、流路200の逆方向である流路201側へ流量Qcp1の作動油を吐出することを意味している。
【0091】
閉回路ポンプ12から吐出した作動油は、ブームシリンダ1のロッド室1bへ流入してブームシリンダ1が縮退動作する。同時に、ブームシリンダ1のヘッド室1aから流出した作動油は、流路200を介して閉回路ポンプ12が吸入する。このとき、ブームシリンダ1のロッド1cの形状に基づく受圧面積差により、ロッド室1bに流入する流量に対して、ヘッド室1aから流出する流量が多いため、閉回路ポンプ12にて吸入できない余剰分の作動油は、流路305a、切換弁44a、流路202、排出流路404およびブリードオフ弁64を介して作動油タンク25へ排出する。
【0092】
<効果>
図6は、油圧駆動装置105のブーム上げ動作時の流路202内の圧力の時系列応答を示すグラフで、(a)は伸長制御タイミングdT1を設けない場合、(b)は伸長制御タイミングdT1を設けて制御した場合である。
【0093】
ブームシリンダ1が停止状態においては、
図4に示すように、開回路ポンプ13の最小吐出流量の作動油を作動油タンク25へ排出するためにブリードオフ弁64を開位置64aに制御しているため、流路202内の作動油圧は0に近い。一方、アーム4およびバケット6の自重や、バケット6に作用する負荷は、ブームシリンダ1に作用するため、ブームシリンダ1のヘッド室1aおよび流路305a内の作動油圧は、流路202内の作動油圧よりも高い状態にある。
【0094】
(ブーム上げ時)
ここで、
図6(a)に示すように、例えばブームシリンダ1を伸長動作する際にブリードオフ弁64を閉位置64bに制御すると同時に、切換弁44aを開位置44a2に制御した場合は、流路202内は作動油圧が0に近いのに対し、流路305a内の作動油圧が高いため、流路305aから流路202へ作動油が逆流してしまい、ブームシリンダ1が一時的に縮退動作してしまう。さらに、ブームシリンダ1が縮退動作した場合には、ブームシリンダ1に作用している自重等の負荷により流路202,305a内の作動油を圧縮する。この後、開回路ポンプ13からの作動油の吐出により流路202,305a内の作動油圧が、
図6(a)中の一点鎖線の円内に示すように上昇してしまい、ブームシリンダ1のヘッド室1aへの作動油の流入流量が急激に変化する。
【0095】
このため、上記第1実施形態に係る油圧駆動装置105においては、
図4に示すように、切換弁44aを閉位置44a1から開位置44a2に制御するタイミングを、ブリードオフ弁64を開位置64aから閉位置64bに制御するタイミングよりも伸長制御タイミングdT1ほど遅らせている。すなわち、排出流路404から作動油タンク25への作動油の戻りを閉じた状態で、開回路ポンプ13が最小吐出流量の作動油を吐出することで、開回路ポンプ13から流出される作動油圧を、流路202内で上昇してから、切換弁44aを開き、流路305aおよび流路200を介してブームシリンダ1のヘッド室1aへ供給するため、
図6(b)中の一点鎖線の円内に示すように、流路202内の作動油圧を高め、流路305a内の作動油圧との圧力差を低減した状態で、閉回路ポンプ12が吐出する作動油と、開回路ポンプ13が吐出する作動油とを合流している。
【0096】
したがって、閉回路ポンプ12および開回路ポンプ13が吐出する作動油の合流時に、これら作動油間の圧力差にて生じ得る、作動油の逆流を防止できるから、ブームシリンダ1の一時的な縮退動作を無くすことができ、ブームシリンダ1の伸長動作起動時に、ブームシリンダ1のヘッド室1aへの作動油の流入流量の急激な変化を小さくできる。よって、ブームシリンダ1を滑らかに伸長開始できるから、ブームシリンダ1の良好な起動性能を得ることができる。
【0097】
(ブーム下げ時)
ブームシリンダ1を縮退動作する際には、上記特許文献1に記載の作業装置のように、閉回路と開回路との合流部にチェック弁を設けた場合は、閉回路ポンプのみでブームシリンダ1のヘッド室1aから流出する作動油を吸入してブームシリンダのシリンダを縮退するものである。これに対し、上記第1実施形態に係る油圧駆動装置105では、制御装置57にて、ブリードオフ弁64を縮退制御タイミングdT2の間、閉位置64bに維持し、開回路ポンプ13が最小吐出流量の作動油を吐出することにより流路202内の作動油圧が上昇した後、切換弁44aを開位置44a2に、およびブリードオフ弁64を開位置64aに、それぞれ制御することにより、流路305a内の作動油圧と流路202内の作動油圧との圧力差を低減した状態で、流路305a内の作動油を流路202に流すことができる。よって、ブームシリンダ1のヘッド室1aから流出する作動油のうちの余剰流量分の作動油を、流路202を介して作動油タンク25に円滑かつ短時間に流出できるため、ブームシリンダ1を高速で縮退動作できる。
【0098】
ここで、
図7は、油圧駆動装置105のブーム下げ動作時の流路202内の圧力の時系列応答を示すグラフで、(a)は縮退制御タイミングdT2を設けない場合、(b)は縮退制御タイミングdT2を設けて制御した場合である。
【0099】
まず、
図7(a)に示すように、ブームシリンダ1を縮退動作する際にブリードオフ弁64を開位置64bに制御したままの状態で切換弁44aを開位置44a2に制御した場合は、作動油を排出流路404から作動油タンク25へ排出することで、流路202内の作動油圧が0に近い状態のままで、圧力の高い流路305aと接続するため、流路305aから流路202へ一時的に大量の作動油が流れてしまい、
図7(a)中の一点鎖線の円内に示すように、流路305aの圧力が一時的に減少し、ブームシリンダ1のヘッド室1a内の作動油圧が低下し、ブームシリンダ1が大きく縮退方向に移動してしまう。
【0100】
このため、上記第1実施形態に係る油圧駆動装置105においては、
図5に示すように、一度ブリードオフ弁64を縮退制御タイミングdT2だけ閉位置64bへ制御し、ブリードオフ弁64および切換弁44aを開位置64a,44a1へ制御するタイミングを、操作レバー56aを操作してから縮退制御タイミングdT2ほど遅らせている。すなわち、排出流路404から作動油タンク25への作動油の戻りを閉じた状態とし、開回路ポンプ13から最小吐出流量の作動油を吐出させ、流路202内の作動油圧を上昇させた後、切換弁44aおよびブリードオフ弁64のそれぞれを開位置44a2,64aに制御し、ブームシリンダ1のヘッド室1aから流出する作動油(戻り作動油)を流路202へ流入するため、
図7(b)中の一点鎖線の円内に示すように、流路202内の作動油圧を高め、流路305a内の作動油圧との圧力差を低減した状態で、流路305aに流路202を接続できる。
【0101】
したがって、
図7(a)に示すように、流路202,305aでの作動油の接続時における圧力差による急激な流れを防止できるから、ブームシリンダ1の一時的な縮退動作を無くすことができる。よって、ブームシリンダ1の縮退動作起動時に、ブームシリンダ1のヘッド室1aからの作動油の流出流量の急激な変化を小さくでき、ブームシリンダ1を滑らかに縮退開始できるから、ブームシリンダ1の良好な起動性能を得ることができる。
【0102】
[第2実施形態]
図8は、本発明の第2実施形態に係る油圧駆動装置105Aの要部構成を示す概略図である。本第2実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態は、制御装置57を電気回路とした油圧駆動装置105に対し、第2実施形態は、制御装置57を油圧回路で構成した油圧駆動装置105Aとしている。なお、本第2実施形態において、第1実施形態と同一又は対応する部分には同一符号を付している。
【0103】
<構成>
具体的に、本第2実施形態は、流路202に第1開閉装置としてのパイロットチェック弁500を設けている。パイロットチェック弁500は、通常、流路202から流路305aへの一方向のみ作動油を流通可能とし、制御装置57から流路400を介してパイロットチェック弁500に制御圧力を与えた場合に、作動油の流通方向の制限機能を解除し、逆方向である流路305aから流路202の流通を可能とする。
【0104】
制御装置57は、操作レバー56aの操作に応じて閉回路ポンプ12、開回路ポンプ13、パイロットチェック弁500およびブリードオフ弁64の動作を制御し、操作レバー56a、減圧弁501a,501b、流路400〜402,403a,403bにて構成している。制御装置57は、操作レバー56aからブームシリンダ1の伸縮動作操作を受けた場合に、その操作方向に応じて減圧弁501aまたは減圧弁501bを開動作し、圧力供給源502が供給する圧油を流路400〜402,403a,403bへ供給して制御圧力を発生する。すなわち、操作レバー56aが中立位置の場合、流路400〜402,403a,403bは、減圧弁501aおよび減圧弁501bを介して作動油タンク25に接続され、圧力供給源502からの圧油の供給が遮断される。
【0105】
<作用>
次に、上記第2実施形態に係る油圧駆動装置105Aの作用につき、停止状態からブームシリンダ1を動作しブーム上げおよびブーム下げを行う場合について説明する。
【0106】
(停止時)
操作レバー56aが非操作の場合は、制御装置57の減圧弁501a,501bが閉動作され、流路400〜402,403a,403bは作動油タンク25に接続される。
【0107】
(ブーム上げ)
操作レバー56aがブームシリンダ1を伸長する操作がなされた場合は、制御装置57の減圧弁501bが開状態となり、流路401,402,403aが圧力供給源502にそれぞれ接続され、流路401,402,403a内の圧力が上昇して制御圧力が発生する。このとき、減圧弁501aは閉状態であり、流路400,403bが作動油タンク25に接続されるため、制御圧力は発生しない。ブリードオフ弁64は、流路401を介して制御装置57から制御圧力を受け開位置64aから閉位置64bとなる。制御装置57は、流路402を介しレギュレータ13aに制御圧力を与えて開回路ポンプ13の斜板を最小傾転に制御し、開回路ポンプ13は、流路202へ最小吐出流量の作動油を吐出する。
【0108】
制御装置57は、ブリードオフ弁64を閉位置64bとする制御圧力を出力する。この後、流路202内の作動油圧が流路305a内の圧力より高くなった場合に、パイロットチェック弁500が開動作し、開回路ポンプ13から吐出した作動油を流路200へ供給する。このとき、
図4に示す伸長制御タイミングdT1は、流路202内の作動油圧が流路305a内の圧力より高くなるまでの時間である。
【0109】
また、制御装置57は、閉回路ポンプ12のレギュレータ12aに流路403aを介して制御圧力を与え、閉回路ポンプ12の斜板を制御し、流路200側へ流量Qcp1の作動油を吐出すると同時に、開回路ポンプ13のレギュレータ13aに流路402を介して制御圧力を与え、開回路ポンプ13の斜板を制御し、流路202側へ流量Qop1の作動油を吐出する。閉回路ポンプ12および開回路ポンプ13が吐出した作動油は、ブームシリンダ1のヘッド室1aへ流入してブームシリンダ1が伸長動作する。同時に、ブームシリンダ1のロッド室1bから流出した作動油は、流路201を介して閉回路ポンプ12に供給される。
【0110】
<効果>
(ブーム上げ時)
上記第2実施形態とは異なり、例えばブームシリンダ1を伸長動作する際に、流路305aと流路202と間の作動油圧の圧力差が大きい状態で、閉回路ポンプ12が吐出する作動油と開回路ポンプ13が吐出する作動油とを、パイロットチェック弁500を介さずに合流した場合には、流路202内は作動油圧が0に近いのに対し、流路305a内の作動油圧が高いため、流路305aから流路202へ作動油が逆流してしまい、ブームシリンダ1が一時的に縮退動作してしまう。その後、開回路ポンプ13が吐出する作動油によって流路202,305aの作動油圧が上昇すると、ブームシリンダ1が急激に伸長し、滑らかな動作が得られない。
【0111】
このため、上記第2実施形態に係る油圧駆動装置105Aにおいては、リードオフ弁64を閉位置64bとして流路202内の作動油圧を流路305a内の圧力より高くし、流路305a内の作動油圧との圧力差をなくした状態で、閉回路ポンプ12が吐出する作動油と開回路ポンプ13が吐出する作動油とを合流している。したがって、上記第1実施形態に係る油圧駆動装置105と同様に、合流時の圧力差にて生じ得る、作動油の逆流を防止でき、ブームシリンダ1の一時的な縮退動作を無くすことができるから、ブームシリンダ1を滑らかに伸長開始でき、ブームシリンダ1の良好な起動性能を得ることができる。
【0112】
[第3実施形態]
図9は、本発明の第3実施形態に係る油圧駆動装置105Bの要部構成を示す概略図である。
図10は、油圧駆動装置105Bの時間差算出部503cの閉回路Aの流路200内の圧力Phに対する伸長制御タイミングdT1を示すグラフである。
【0113】
本第3実施形態が前述した第2実施形態と異なるのは、第1実施形態は、制御装置57を電気回路とした油圧駆動装置105に対し、第3実施形態は、その制御装置57に伸長制御タイミングdT1を算出する機能を設けた油圧駆動装置105Bとしている。なお、本第3実施形態において、第2実施形態と同一又は対応する部分には同一符号を付している。
【0114】
<構成>
制御装置57の時間差算出部503cは、ブームシリンダ1のヘッド室1aの圧力に基づいて伸長制御タイミングdT1を算出する機能を有している。流路200には、圧力検出装置としての圧力センサ506を設け、圧力センサ506と制御装置57とを圧力信号線409にて接続している。制御装置57は、圧力センサ506にてブームシリンダ1のヘッド室1a内の作動油圧(圧力Ph)を計測し、この圧力Phに基づいて時間差算出部503cにて伸長制御タイミングdT1を算出する。
【0115】
一般に、閉じられた流路200内の圧力Phは、その流路200内に流入される作動油の流量の時間積分値に比例する。すなわち、流入流量が一定の場合、ある圧力に到達する時間は一意的に決まり、圧力Phと比例関係になる。このある圧力に到達する時間に基づいて伸長制御タイミングdT1を設定すれば、圧力Phと伸長制御タイミングdT1とは、
図10に示すように、比例関係にある。そこで、切換弁44aの開閉制御に対し、算出した伸長制御タイミングdT1が経過した後に、制御信号線406を介してブリードオフ弁64の開閉を制御する。この結果、ブームシリンダ1に作用する負荷の大きさによらずブームシリンダ1を駆動する際の滑らかな動作を得るためのブリードオフ弁64前後の作動油圧の圧力差を小さくする伸長制御タイミングdT1を決定でき、ブームシリンダ1の良好な起動性能を得ることができる。
【0116】
<作用>
操作レバー56aがブームシリンダ1を伸長する操作がなされた場合は、ブリードオフ弁64は制御信号線406を介し制御装置57から制御信号を受け閉位置64bとなる。この状態で、制御装置57にて圧力信号線409を介して圧力センサ506が流路200内の圧力Phを計測する。その後、圧力Phに基づき、制御装置57の時間差算出部503cにて伸長制御タイミングdT1を算出する。伸長制御タイミングdT1の算出は、例えば、
図10に示すように、所定のマップに基づいて圧力Phに対する伸長制御タイミングdT1を決定する。なお、本第3実施形態においては、停止時およびブーム下げ時の動作は、上記第1実施形態と同様である。
【0117】
上記第3実施形態によれば、上記第1実施形態と同様に、良好なブームシリンダ1の起動開始特性を得ることができる上、ブームシリンダ1に作用する負荷の大きさによらずブームシリンダ1を駆動する際の滑らかな動作が得られる。すなわち、ブームシリンダ1に作用する負荷の大きさによらずブリードオフ弁64前後の圧力差を小さくする伸長制御タイミングdT1を、流路200内の圧力Phに基づいて変動できるため、ブームシリンダ1の伸長動作時の良好な起動性能を得ることができる。
【0118】
また、操作レバー56aがブームシリンダ1を縮退する操作がなされた場合においても、例えば
図10に示すマップに基づいて伸長制御タイミングdT1を設定したように、圧力センサ506にて検出した圧力Phに基づき、制御装置57の時間差算出部503cにて縮退制御タイミングdT2を設定することにより、ブームシリンダ1の縮退動作時においても良好な起動性能を得ることができる。
【0119】
[その他]
なお、本発明は前述した実施形態に限定するものではなく、様々な変形態様が含まれる。例えば、前述した実施形態は、本発明を分りやすく説明するために説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定するものではない。
【0120】
また、上記各実施形態では、ブームシリンダ1の伸縮開始時について説明しているが、本発明はアームシリンダ3やバケットシリンダ5等の他の片ロッド式油圧シリンダについても適用可能である。例えば、アームシリンダ3の伸長開始時においてもブーム上げ動作時と同様な流路内圧力差が発生し得るため、アームシリンダ3の伸縮開始時においても本発明が適用可能である。
【0121】
さらに、上記各実施形態では、油圧ショベル100に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明は油圧ショベル100以外の建設機械にも適用可能である。例えば、油圧式クレーンやホイールローダ等の作業装置で駆動し得る少なくとも1つ以上の片ロッド式油圧シリンダを備えた作業機械であれば本発明は適用可能である。
【0122】
また、上記各実施形態においては、開回路ポンプ13,15,17,19として、流量のみ制御可能な片傾転斜板機構を備えた液圧ポンプとしたが、吐出方向および流量が制御可能な両傾転斜板機構を備えた液圧ポンプを用いても良い。また、閉回路ポンプおよび開回路ポンプ12〜19のそれぞれを、動力伝達装置10を介して1台のエンジン9に接続した構成としたが、これら閉回路ポンプおよび開回路ポンプ12〜19として、複数の固定容量式の液圧ポンプを用意し、これら固定容量式の液圧ポンプに、回転方向および回転数が制御可能な電動機を接続し、これら電動機を制御装置57にて制御して、各固定容量式の液圧ポンプの回転方向および回転数によって作動油の吐出入方向および吐出流量を制御する構成とすることもできる。
【0123】
さらに、上記第各実施形態では、切換弁44a〜44d,46a〜46d,48a〜48d,50a〜50dや、方向切換弁54,55,60,63、ブリードオフ弁64〜は、制御装置57が出力する制御信号にて直接制御する場合のみならず、制御装置57が出力する制御信号を、電磁減圧弁などを用いて変換した油圧信号にて制御してもよい。