特許第6285798号(P6285798)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285798
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】放送受信機及び中継局サーチ方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/16 20060101AFI20180215BHJP
   H04N 21/438 20110101ALI20180215BHJP
   H04H 60/11 20080101ALI20180215BHJP
   H04H 60/51 20080101ALI20180215BHJP
   H04H 60/65 20080101ALI20180215BHJP
   H04H 20/57 20080101ALI20180215BHJP
【FI】
   H04B1/16 Z
   H04N21/438
   H04H60/11
   H04H60/51
   H04H60/65
   H04H20/57
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-101223(P2014-101223)
(22)【出願日】2014年5月15日
(65)【公開番号】特開2015-220521(P2015-220521A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】山崎 武
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−22910(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0060082(US,A1)
【文献】 特開2005−045592(JP,A)
【文献】 特開2001−044803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/16
H04H 20/57
H04H 60/11
H04H 60/51
H04H 60/65
H04N 21/438
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々周波数チャネルで放送される、登録すべきプリセット番号の指定を伴う放送を受信する放送受信機であって、
複数のプリセット番号の各々に対して周波数チャネルを登録したプリセットテーブルと、
複数のプリセット番号の各々に対して周波数チャネルを登録したサブプリセットテーブルと、
ユーザから指定されたプリセット番号に対して前記プリセットテーブルに登録されている周波数チャネルに、受信する周波数チャネルを切り替えるプリセット受信制御手段と、
周波数チャネルをスキャンし、各プリセット番号について、当該プリセット番号の指定を伴う放送が行われている受信可能な周波数チャネルのうちの、最も受信状態の良い周波数チャネルを、前記プリセットテーブルに当該プリセット番号に対する周波数チャネルとして登録し、2番目に受信状態の良い周波数チャネルを、前記サブプリセットテーブルに当該プリセット番号に対する周波数チャネルとして登録するスキャン処理を行うスキャン手段と、
受信中の周波数チャネルに受信不良が生じた場合に、当該受信不良が生じた周波数チャネルである不良周波数チャネルと同じ放送局の放送が行われている受信状態が良好な周波数チャネルである代替チャネルを探索し、当該代替チャネルの探索が成功した場合に、当該探索された代替チャネルに、受信する周波数チャネルを切り替える中継局サーチ手段とを有し、
前記中継局サーチ手段は、
前記代替チャネルとして探索された周波数チャネルが、前記サブプリセットテーブルに登録されていない場合に、前記プリセットテーブルの前記不良周波数チャネルが登録されているプリセット番号に対して登録する周波数チャネルを、前記代替チャネルとして探索された周波数チャネルに更新し、
前記代替チャネルとして探索された周波数チャネルが、前記サブプリセットテーブルに登録されている場合に、前記サブプリセットテーブルで前記プリセットテーブルを置換することを特徴とする放送受信機。
【請求項2】
請求項1記載の放送受信機であって、
前記中継局サーチ手段は、前記代替チャネルとして探索された周波数チャネルが、前記サブプリセットテーブルに登録されている場合に、前記サブプリセットテーブルで前記プリセットテーブルを置換すると共に、当該置換前の前記プリセットテーブルで前記サブプリセットテーブルを置換することを特徴とする放送受信機。
【請求項3】
請求項1または2記載の放送受信機であって、
前記中継局サーチ手段は、前記代替チャネルとして、不良周波数チャネルと同じ放送局の放送が行われている周波数チャネルのうちの、最も受信状態が良好な周波数チャネルを探索することを特徴とする放送受信機。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の放送受信機であって、
現在位置の都道府県境の越境を検出する越境検出手段を有し、
前記スキャン手段は、前記越境検出手段が都道府県境の越境を検出したときに、前記スキャン処理を実行することを特徴とする放送受信機。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の放送受信機であって、
当該放送受信機は自動車に搭載された放送受信機であることを特徴とする放送受信機。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載の放送受信機であって、
前記放送は地上デジタルテレビ放送であることを特徴とする放送受信機。
【請求項7】
各々周波数チャネルで放送される、登録すべきプリセット番号の指定を伴う放送を受信する放送受信機において、受信中の周波数チャネルに受信不良が生じた場合に、当該受信不良が生じた周波数チャネルである不良周波数チャネルと同じ放送局の放送が行われている受信状態が良好な周波数チャネルである代替チャネルに、受信する周波数チャネルを切り替える中継局サーチ方法であって、
当該放送受信機が、周波数チャネルをスキャンし、各プリセット番号について、当該プリセット番号の指定を伴う放送が行われている受信可能な周波数チャネルのうちの、最も受信状態の良い周波数チャネルを、プリセットテーブルに当該プリセット番号に対する周波数チャネルとして登録し、2番目に受信状態の良い周波数チャネルを、サブプリセットテーブルに当該プリセット番号に対する周波数チャネルとして登録するスキャンステップと、
当該放送受信機が、ユーザから指定されたプリセット番号に対して前記プリセットテーブルに登録されている周波数チャネルに、受信する周波数チャネルを切り替えるプリセット受信制御ステップと、
当該放送受信機が、受信中の周波数チャネルに受信不良が生じた場合に、前記代替チャネルを探索し、当該代替チャネルの探索が成功した場合に、当該探索された代替チャネルに、受信する周波数チャネルを切り替える中継局サーチステップとを有し、
前記中継局サーチステップにおいて、
前記代替チャネルとして探索された周波数チャネルが、前記サブプリセットテーブルに登録されていない場合に、前記プリセットテーブルの前記不良周波数チャネルが登録されているプリセット番号に対して登録する周波数チャネルを、前記代替チャネルとして探索された周波数チャネルに更新し、
前記代替チャネルとして探索された周波数チャネルが、前記サブプリセットテーブルに登録されている場合に、前記サブプリセットテーブルで前記プリセットテーブルを置換することを特徴とする中継局サーチ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、放送受信機において、受信中の周波数チャネルの受信状態が悪化したときに、受信する周波数チャネルを切り替える技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放送受信機において、受信中の周波数チャネルの受信状態が悪化したときに、受信する周波数チャネルを切り替える技術としては、1から12までのプリセット番号(キー番号)に受信可能な周波数チャネルを割り当てて、プリセット番号の指定により受信する周波数チャネルの選択を受け付ける放送受信機において、あるプリセット番号の周波数チャネルの受信中に受信状態が悪化したときに、受信中の周波数チャネルで放送している放送局と同じ放送を行っている他の中継局の周波数チャネルをサーチする中継局サーチを行い、中継局サーチで発見した周波数チャネルに、受信する周波数チャネルを切り替えると共に、当該プリセット番号に割り当てる周波数チャネルを発見した周波数チャネルに更新する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-022910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、中継局は複数の周波数チャネルの放送を行っていることが多いため、移動体に搭載された放送受信機において、あるプリセット番号に割り当てられている周波数チャネルの受信状態が悪化した場合には、他のプリセット番号に割り当てられている他の周波数チャネルの受信状態も悪化している蓋然性が大きい。
【0005】
そして、このような場合には、あるプリセット番号の周波数チャネルの受信中の受信状態の悪化に応答して最初に中継局サーチを行って発見した他の中継局の周波数チャネルに受信する周波数チャネルを切り替えた後には、ユーザが最初の中継局サーチ以降に指定していない他のプリセット番号を指定して受信する周波数チャネルを切り替える度に、切り替え先の周波数チャネルを受信できずに、切り替え先の周波数チャネルについて再度中継局サーチを行う必要が生じることとなる。そして、このために、ユーザがプリセット番号によって指定した放送をすみやかに視聴できなくなる。
【0006】
そこで、本発明は、ユーザがプリセット番号によって指定した放送の視聴を、よりすみやかに行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、各々周波数チャネルで放送される、登録すべきプリセット番号の指定を伴う放送を受信する放送受信機に、複数のプリセット番号の各々に対して周波数チャネルを登録したプリセットテーブルと、複数のプリセット番号の各々に対して周波数チャネルを登録したサブプリセットテーブルと、ユーザから指定されたプリセット番号に対して前記プリセットテーブルに登録されている周波数チャネルに、受信する周波数チャネルを切り替えるプリセット受信制御手段と、周波数チャネルをスキャンし、各プリセット番号について、当該プリセット番号の指定を伴う放送が行われている受信可能な周波数チャネルのうちの、最も受信状態の良い周波数チャネルを、前記プリセットテーブルに当該プリセット番号に対する周波数チャネルとして登録し、2番目に受信状態の良い周波数チャネルを、前記サブプリセットテーブルに当該プリセット番号に対する周波数チャネルとして登録するスキャン手段と、受信中の周波数チャネルに受信不良が生じた場合に、当該受信不良が生じた周波数チャネルである不良周波数チャネルと同じ放送局の放送が行われている受信状態が良好な周波数チャネルである代替チャネルを探索し、当該代替チャネルの探索が成功した場合に、当該探索された代替チャネルに、受信する周波数チャネルを切り替える中継局サーチ手段とを備えたものである。ただし、前記中継局サーチ手段は、前記代替チャネルとして探索された周波数チャネルが、前記サブプリセットテーブルに登録されていない場合に、前記プリセットテーブルの前記不良周波数チャネルが登録されているプリセット番号に対して登録する周波数チャネルを、前記代替チャネルとして探索された周波数チャネルに更新し、前記代替チャネルとして探索された周波数チャネルが、前記サブプリセットテーブルに登録されている場合に、前記サブプリセットテーブルで前記プリセットテーブルを置換するものである。
【0008】
ここで、このような放送受信機は、前記中継局サーチ手段において、前記代替チャネルとして探索された周波数チャネルが、前記サブプリセットテーブルに登録されている場合に、前記サブプリセットテーブルで前記プリセットテーブルを置換すると共に、当該置換前の前記プリセットテーブルで前記サブプリセットテーブルを置換するように構成してもよい。
【0009】
また、以上の放送受信機において、前記中継局サーチ手段は、前記代替チャネルとして、不良周波数チャネルと同じ放送局の放送が行われている周波数チャネルのうちの、最も受信状態が良好な周波数チャネルを探索するようにしてもよい。
【0010】
また、前記放送受信機に、現在位置の都道府県境の越境を検出する越境検出手段を設け、前記スキャン手段において、前記越境検出手段が都道府県境の越境を検出したときに、前記スキャン処理を実行するようにしてもよい。
【0011】
ここで、放送受信機は、たとえば、自動車に搭載された放送受信機である。また、前記放送は、たとえば、地上デジタルテレビ放送である。
本発明に係る放送受信機によれば、スキャン手段によって、各プリセット番号について最も受信状態の良い周波数チャネルを前記プリセットテーブルに登録し、2番目に受信状態の良い周波数チャネルをサブプリセットテーブルに登録する。また、プリセット受信制御手段によって、プリセットテーブルを用いて、ユーザのプリセット番号の指定に応じた周波数チャネルの切り替えを行う。
【0012】
そして、あるプリセット番号の周波数チャネルの受信中の受信状態の悪化に応答して、中継局サーチ手段は、中継局の周波数チャネルの探索と、探索した周波数チャネルに受信する周波数チャネルの切り替えを行うと共に、探索した周波数チャネルがサブセットテーブルに登録されていれば、プリセットテーブルをサブセットテーブルで置換する。
【0013】
ここで、スキャン手段によって、プリセットテーブルに登録された各周波数チャネルは同じ中継局から放送される周波数チャネルであり、サブプリセットテーブルに登録された各周波数チャネルは他の同じ中継局から放送される周波数チャネルである蓋然性が大きい。
【0014】
したがって、中継局サーチ手段によって、プリセットテーブルをサブセットテーブルで置換した後に、ユーザがプリセット番号を指定して受信する周波数チャネルを切り替えたときには、受信状態が良好な周波数チャネルとして中継局サーチ手段が最後に探索した周波数チャネルと同じ中継局が放送する、最後に探索した周波数チャネルと同様に受信状態が良好であることが期待できる周波数チャネルが既にプリセットテーブルに登録されている蓋然性が大きい。
そして、この場合には、新たな中継局サーチが行われることなく、ユーザは、すみやかに指定したプリセット番号の視聴を開始することができるようになる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、ユーザは、プリセット番号によって指定した放送の視聴を、よりすみやかに行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る放送受信機の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係るプリセットテーブルとサブプリセットテーブルとを示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るスキャン処理を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る中継局サーチ処理を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係るスキャン処理と中継局サーチ処理の処理例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について自動車に搭載される車載システムへの適用を例にとり説明する。
図1に、本実施形態に係る車載システムの構成を示す。
図示するように、車載システムは、地上波デジタルTV放送を受信する放送受信機1、ナビゲーション装置2、制御装置3、入力装置4、出力処理部5、アンプやスピーカなどを備えた音声出力装置6、表示装置7を備えている。
【0018】
そして、放送受信機1は、アンテナ11、フロントエンド部12、復調部13、ビデオデコーダ14、チューナ制御部15、メモリ16を備えている。
このような構成において、放送受信機1は、地上波デジタルTV放送を受信し、放送で受信した映像信号や音声信号を出力処理部5に出力する。
ナビゲーション装置2は、地図データを保持しており、現在位置の算出や、設定された目的地までのルート探索や、現在位置やルートを地図上に表したナビゲーション画面を出力処理部5に出力したり、ルートに沿った進行を案内する案内音声を出力処理部5に出力する処理などを行う。
【0019】
出力処理部5は、制御装置3の制御に従って、放送受信機1から入力する映像信号を表示装置7に表示したり、放送受信機1から入力する音声信号を音声出力装置6に出力したり、ナビゲーション装置2から入力するナビゲーション画面を表示装置7に表示したり、ナビゲーション装置2から入力する案内音声を音声出力装置6に出力する処理を行う。
【0020】
そして、制御装置3は、各種ユーザ操作受付用のメニュー画面を出力処理部5を介して表示装置7に表示したり、入力装置4で受け付けたユーザ操作に応じて放送受信機1やナビゲーション装置2や出力処理部5の動作を制御する処理などを行う。
【0021】
次に、放送受信機1において、フロントエンド部12は、チューナ制御部15から受信チャネルとして設定された周波数チャネルを受信し、受信信号を復調部13に出力する。復調部13は、入力する受信信号に対してOFDM復調やビタビ復号などの復調/復号処理を行ってTS(Transport Stream)を復元し、ビデオデコーダ14に送ると共に、NIT(Network Information Table)やBIT(Broadcaster Infomation Table)などの制御情報をチューナ制御部15に送る。
【0022】
ビデオデコーダ14は、TSの、チューナ制御部15から指定されたPID(Packet Idetification)のTSP(Transport Stream Packet)をデコードする。そして、デコードした映像信号と音声信号とを出力処理部5に出力する。
【0023】
また、復調部13は、フロントエンド部12の受信電界強度などを参照して、現在の受信チャネルの受信信号のC/N(Carrier to Noise Ratio;搬送波電力対雑音電力比)や、BER(Bit Error Rate;ビット誤り率)や、受信信号に対するOFDM、(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)の同期確立の有無を受信信号の受信状態として測定しチューナ制御部15に通知する。
【0024】
次に、放送受信機1のメモリ16に格納するプリセットテーブルと、サブプリセットテーブルについて説明する。
図2aに示すようにプリセットテーブルには、1から12までのプリセット番号が登録された12のエントリを有し、各エントリは、各々一つの周波数チャネルに対応づけられており、各エントリには、対応する周波数チャネルの情報が登録されている。すなわち、各エントリには、対応する周波数チャネルで放送を行っている放送局の放送局名(NID:Network_identification)、対応する周波数チャネルで放送を行っている放送局の系列(番組供給系列/ネットワーク)を表す系列ID(Affiliation ID)、対応する周波数チャネル、対応する周波数チャネルで行われている放送と同じ放送を行っている各周波数チャネル(すなわち、対応する周波数チャネルで放送を行っている放送局の放送の各中継局の周波数チャネル)を表す中継局周波数チャネルが登録される。
【0025】
次に、図2bに示すように、サブプリセットテーブルは、図2aのプリセットテーブルと同じ構成を備えており、プリセットテーブルと同様に1から12までのプリセット番号が登録された12のエントリを有し、各エントリには、それぞれ一つの周波数チャネルに対応し対応する周波数チャネルの情報が登録される。
【0026】
さて、図1に戻り、制御装置3は、1から12までのプリセット番号の指定を入力装置4で受け付けると、チューナ制御部15に指定されたプリセット番号を通知し、プリセット番号の通知を受けたチューナ制御部15は、プリセットテーブルの通知されたプリセット番号のエントリに登録されている周波数チャネルに、フロントエンド部12に設定する受信チャネルを変更することにより、放送受信機1で受信出力する周波数チャネルを、ユーザから指定されたプリセット番号に対してプリセットテーブルに登録されている周波数チャネルに切り替える。
【0027】
次に、放送受信機1のチューナ制御部15が、プリセットテーブルとサブプリセットテーブルの各エントリへの情報登録のために行うスキャン処理について説明する。
ここで、このスキャン処理は、車載システムが初めて起動されたときに行われるほか、ナビゲーション装置2が算出している現在位置が都道府県境を越えたときに行う。
すなわち、車載システムの制御装置3は、車載システムが初めて起動されたときに、放送受信機1のチューナ制御部15にスキャン処理を行わせる。また、車載システムのナビゲーション装置2は、算出している現在位置が都道府県境を越えたときに越境を制御装置3に通知し、越境を通知された制御装置3は、放送受信機1のチューナ制御部15にスキャン処理を行わせる。
【0028】
さて、図3に放送受信機1のチューナ制御部15が行うスキャン処理の手順を示す。
図示するように、スキャン処理においてチューナ制御部15は、まず、フロントエンド部12に各周波数チャネルをスキャンさせて、受信可能な周波数チャネルを探索し、探索した周波数チャネルで送信される制御情報と、探索した周波数チャネルについて復調部13から通知される受信状態とを取得する(ステップ302)。
【0029】
そして、1から12までの各プリセット番号iについて(ステップ304、314、316)、以下の処理を行う。
すなわち、まず、探索されたプリセット番号iと等しいRemote_Control_Key_IDを含む周波数チャネルの数が1以上であるかどうかを調べ(ステップ306)、1以上でない、すなわち、0であれば、このプリセット番号iについての処理を終了し、未処理のプリセット番号があれば(ステップ314)、次のプリセット番号についての処理に進み(ステップ316)、未処理のプリセット番号が無ければスキャン処理を終了する。
【0030】
なお、Remote_Control_Key_IDは、探索された周波数チャネルのTS中のNIT(Network Information Table)に含まれている。
一方、探索されたプリセット番号iと等しいRemote_Control_Key_IDを含む周波数チャネルの数が1以上である場合には(ステップ306)、探索されたプリセット番号iと等しいRemote_Control_Key_IDを含む周波数チャネルのうちの、受信状態が最も良好な放送を行っている周波数チャネルの制御情報を用いて、プリセットテーブルのプリセット番号iのエントリに、最も良好な放送を行っている周波数チャネルの情報を登録する(ステップ308)。
【0031】
ここで、プリセットテーブルのプリセット番号iのエントリに登録する情報は、上述のように、放送局の放送局名(NID:Network_identification)、系列ID(Affiliation ID)、周波数チャネル、中継局周波数チャネルであり、NIDや中継局周波数チャネルは、探索した周波数チャネルのTS中のNIT(Network Information Table)に、系列IDはTS中のBITに含まれる。
【0032】
そして、次に、探索されたプリセット番号iと等しいRemote_Control_Key_IDを含む周波数チャネルの数が2以上であるかどうかを調べ(ステップ310)、2以上でなければ、このプリセット番号iについての処理を終了し、未処理のプリセット番号があれば(ステップ314)、次のプリセット番号についての処理に進み(ステップ316)、未処理のプリセット番号が無ければスキャン処理を終了する。
【0033】
一方、探索されたプリセット番号iと等しいRemote_Control_Key_IDを含む周波数チャネルの数が2以上であれば(ステップ310)、探索されたプリセット番号iと等しいRemote_Control_Key_IDを含む周波数チャネルのうちの、受信状態が2番目の良好な放送を行っている周波数チャネルの制御情報を用いて、サブプリセットテーブルのプリセット番号iのエントリに、2番目の良好な放送を行っている周波数チャネルの情報を登録する(ステップ312)。ここで、サブプリセットテーブルのプリセット番号iのエントリに登録する情報は、上述のように、放送局の放送局名(NID:Network_identification)、系列ID(Affiliation ID)、周波数チャネル、中継局周波数チャネルである。
【0034】
そして、このプリセット番号iについての処理を終了し、未処理のプリセット番号があれば(ステップ314)、次のプリセット番号についての処理に進み(ステップ316)、未処理のプリセット番号が無ければスキャン処理を終了する。
【0035】
以上、放送受信機1のチューナ制御部15が行うスキャン処理について説明した。
次に、放送受信機1のチューナ制御部15が行う中継局サーチ処理について説明する。
ここで、この中継局サーチ処理は、放送受信機1の放送の受信、出力と並行して行われる処理である。
図4に、この中継局サーチ処理の手順を示す。
図示するように、放送受信機1のチューナ制御部15は中継局サーチ処理において、現在受信している周波数チャネルのT秒(たとえば、5秒)以上の受信不良の発生(ステップ402)を監視する。ここで、現在受信している周波数チャネルの受信不良は、復調部13から通知される受信状態に基づいて判定する。
【0036】
そして、受信不良が発生したならば(ステップ402)、出力処理部5への映像信号や音声信号の出力を停止する(ステップ404)。
そして、現在受信している周波数チャネルのプリセット番号をプリセット番号jとして、プリセットテーブルのプリセット番号jのエントリに中継局周波数チャネルとして登録されている各周波数チャネルの受信状態を順次、調査する(ステップ406)。
【0037】
なお、各周波数チャネルの受信状態は、フロントエンド部12に、その周波数チャネルの受信を行わせ、これにより復調部13から通知される、その周波数状態の受信状態を取得することにより行う。
【0038】
そして、良好な受信状態で受信可能な周波数チャネルが、プリセットテーブルのプリセット番号jのエントリに中継局周波数チャネルとして登録されている各周波数チャネルのうちに、存在したかどうかを調べ(ステップ408)、存在しない場合には、出力処理部5への映像信号や音声信号の出力を再開し(ステップ418)、中継局サーチ処理を終了する。ただし、良好な受信状態で受信可能な周波数チャネルが存在しなかった場合には、上述したスキャン処理や、系列局サーチ処理を起動して中継局サーチ処理を終了するようにしてもよい。
【0039】
なお、系列局サーチ処理は、プリセットテーブルのプリセット番号jのエントリに登録されている系列IDと同じ系列IDの周波数チャネルを探索し、探索した周波数チャネルの情報に、プリセットテーブルのプリセット番号jのエントリの情報を更新し、探索した周波数チャネルにフロントエンド部12で受信する周波数チャネルを変更し、出力処理部5への映像信号や音声信号の出力を再開する処理である。
【0040】
一方、プリセット番号jのエントリに中継局周波数チャネルとして登録されている各周波数チャネルのうちに、良好な受信状態で受信可能な周波数チャネルが存在した場合には(ステップ408)、存在した周波数チャネルのうちで、最も受信状態が良好な周波数チャネルkが、サブプリセットテーブルのプリセット番号jのエントリに周波数チャネルとして登録されているかどうかを調べる(ステップ410)。
【0041】
そして、周波数チャネルkが、サブプリセットテーブルのプリセット番号jのエントリに周波数チャネルとして登録されていなければ(ステップ410)、プリセットテーブルのプリセット番号jのエントリの情報を、周波数チャネルkで受信した制御情報を用いて、周波数チャネルkの情報に更新し(ステップ412)、フロントエンド部12に設定する受信チャネルとして、プリセットテーブルのプリセット番号jのエントリに登録されている周波数チャネルを設定し(ステップ416)、出力処理部5への映像信号や音声信号の出力を再開し(ステップ418)、中継局サーチ処理を終了する。
【0042】
一方、周波数チャネルkが、サブプリセットテーブルのプリセット番号jのエントリに周波数チャネルとして登録されていれば(ステップ410)、プリセットテーブルとサブプリセットテーブルを入れ替え(ステップ414)、フロントエンド部12に設定する受信チャネルとして、プリセットテーブルのプリセット番号jのエントリに登録されている周波数チャネルを設定し(ステップ416)、出力処理部5への映像信号や音声信号の出力を再開し(ステップ418)、中継局サーチ処理を終了する。
【0043】
すなわち、これまでのサブプリセットテーブルを以降のプリセットテーブルに設定し、これまでのプリセットテーブルを以降のサブプリセットテーブルに設定した上で(ステップ414)、フロントエンド部12で受信する周波数チャネルをプリセットテーブルのプリセット番号jのエントリに登録されている周波数チャネルに変更し(ステップ416)、出力処理部5への映像信号や音声信号の出力を再開し(ステップ418)、中継局サーチ処理を終了する。
【0044】
以上、放送受信機1のチューナ制御部15が行う中継局サーチ処理について説明した。
以下、以上のようなスキャン処理と中継局サーチ処理の処理例について説明する。
いま、図5aに示すように、中継局Aが、プリセット番号PN(Remote_Control_Key_ID)が1で周波数チャネルChが20chの放送と、プリセット番号PNが2で周波数チャネルChが13chの放送とを送信しており、中継局Bが、プリセット番号PNが1で周波数チャネルがCh42chの放送と、プリセット番号PNが2で周波数チャネルChが25chの放送とを送信しているものとする。そして、中継局Aのプリセット番号PNが1で周波数チャネルChが20chの放送と、中継局Bのプリセット番号PNが1で周波数チャネルChが42chの放送とは同じ放送局の同じ放送であり、中継局Aのプリセット番号PNが2で周波数チャネルChが13chの放送と、中継局Bのプリセット番号PNが2で周波数チャネルChが25chの放送とは同じ放送局の同じ放送であるものとする。
【0045】
そして、車載システムを搭載した自動車が、県境Xを通過し、中継局Aと中継局Bとの双方の送信電波を受信できる位置501に到達した時点で、県境Xを越境したことによりスキャン処理が実行されると、比較的中継局Aの電波を良好に受信できる場合、プリセットテーブルのプリセット番号PN=1に対しては周波数チャネルChとして20ch、中継局周波数チャネルRChとして42chが登録され、プリセットテーブルのプリセット番号PN=2に対しては周波数チャネルChとして13ch、中継局周波数チャネルRChとして25chが登録される。また、サブプリセットテーブルのプリセット番号PN=1に対しては周波数チャネルChとして42ch、中局周波数チャネルRChとして20chが登録され、サブプリセットテーブルのプリセット番号PN=2に対しては周波数チャネルChとして25ch、中継局周波数チャネルRChとして13chが登録される。
【0046】
そして、その後、ユーザが中継局Aから放送されているプリセット番号PN=2、周波数チャネルCh=13chの放送を視聴している状態で、図5bに示すように、自動車が中継局Bに近づく方向に移動し、中継局Aの送信電波を良好に受信できくなる位置502まで到達すると、中継局サーチ処理が実行され、中継局Bのプリセット番号PN=2、周波数チャネルCh=25chの放送が探索される。そして、探索されたプリセット番号PN=2、周波数チャネルCh=25chは、サブプリセットテーブルに登録されているので、プリセットテーブルとプリセットテーブルとが入れ替えられる。また、受信出力する周波数チャネルが、入れ替え後のプリセットテーブルのプリセット番号PN=2に対して登録されている周波数チャネルCh=25chに切り替えられる。
【0047】
そして、この後、ユーザがプリセット番号PN=1を指定すると、受信出力する周波数チャネルが、入れ替え後のプリセットテーブルのプリセット番号PN=1に対して登録されている周波数チャネルCh=42chに切り替えられる。ここで、この周波数チャネルCh=42chは中継局Bから放送されているので、放送受信機1において良好に受信することができる。
【0048】
また、この後、もし、ユーザが、中継局Bから放送されているプリセット番号PN=1、周波数チャネルCh=42chを視聴している状態で、自動車が中継局Aに近づく方向に移動し、中継局Bの送信電波を良好に受信できくなる位置503まで到達すると、再度、中継局サーチ処理が実行され、中継局AのPN=1、周波数チャネルCh=20chの放送が探索される。そして、探索されたプリセット番号PN=1、周波数チャネルCh=20chは、サブプリセットテーブルに登録されているので、再度、プリセットテーブルとプリセットテーブルとが入れ替えられる。そして、受信出力する周波数チャネルが、入れ替え後のプリセットテーブルのプリセット番号PN=1に対して登録されている周波数チャネルCh=20chに切り替えられる。
【0049】
一方、中継局Cが、図5cに示すように、プリセット番号PNが1で周波数チャネルChが33chの放送と、プリセット番号PNが2で周波数チャネルChが48chの放送とを送信しているものとする。そして、中継局Aのプリセット番号PNが1で周波数チャネルChが20chの放送と、中継局Cのプリセット番号PNが1で周波数チャネルChが33chの放送とは同じ放送局の同じ放送であり、中継局Aのプリセット番号PNが2で周波数チャネルChが13chの放送と、中継局Cのプリセット番号PNが2で周波数チャネルChが48chの放送とは同じ放送局の同じ放送であるものとする。
【0050】
そして、ユーザが中継局Aから放送されているプリセット番号PN=2、周波数チャネルCh=13chの放送を視聴している状態で、図5aの位置501から、図5cに示すように、自動車が中継局Cに近づく方向に移動し、中継局Aの送信電波を良好に受信できくなる位置504まで到達すると、中継局サーチ処理が実行され、中継局Cのプリセット番号PN=2、周波数チャネルCh=48chの放送が探索される。そして、探索されたプリセット番号PN=2、周波数チャネルCh=48chは、サブプリセットテーブルに登録されていないので、プリセットテーブルのプリセット番号PN=2に対して登録されている情報のみが周波数チャネルCh=48chの情報に更新される。そして、受信出力する周波数チャネルが、入れ替え後のプリセットテーブルのプリセット番号PN=2に対して登録されている周波数チャネルCh=48chに切り替えられる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明した。
以上のように本実施形態によれば、スキャン処理によって、各プリセット番号について最も受信状態の良い周波数チャネルを前記プリセットテーブルに登録し、2番目に受信状態の良い周波数チャネルをサブプリセットテーブルに登録する。そして、プリセットテーブルを用いて、ユーザのプリセット番号の指定に応じた周波数チャネルの切り替えを行う。
【0052】
そして、あるプリセット番号の周波数チャネルの受信中の受信状態の悪化に応答して、中継局の周波数チャネルの探索と、探索した周波数チャネルに受信する周波数チャネルの切り替えを行うと共に、探索した周波数チャネルがサブセットテーブルに登録されていれば、プリセットテーブルとサブセットテーブルを交替する。
【0053】
ここで、スキャン処理によって、プリセットテーブルに登録された各周波数チャネルは同じ中継局から放送される周波数チャネルであり、サブプリセットテーブルに登録された各周波数チャネルは他の同じ中継局から放送される周波数チャネルである蓋然性が大きい。
【0054】
したがって、プリセットテーブルとサブセットテーブルを交替した後に、ユーザがプリセット番号を指定して受信する周波数チャネルを切り替えたときには、受信状態が良好な周波数チャネルとして最後に探索した周波数チャネルと同じ中継局が放送する、最後に探索した周波数チャネルと同様に受信状態が良好であることが期待できる周波数チャネルが既にプリセットテーブルに登録されている蓋然性が大きい。そして、この場合には、新たな中継局サーチが行われることなく、ユーザは、すみやかに指定したプリセット番号の視聴を開始することができるようになる。
【符号の説明】
【0055】
1…放送受信機、2…ナビゲーション装置、3…制御装置、4…入力装置、5…出力処理部、6…音声出力装置、7…表示装置、11…アンテナ、12…フロントエンド部、13…復調部、14…ビデオデコーダ、15…チューナ制御部、16…メモリ。
図1
図2
図3
図4
図5