【文献】
J. Serb. Chem. Soc.,2012年,77(4),415-421
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記式(3)で表されるシアノ基含有ラクトン化合物を式(4)で表されるN−アシルカルバモイル基含有ラクトン化合物に転化する工程において、式(3)で表されるシアノ基含有ラクトン化合物と、下記式(5)
Rb−COOH (5)
(式中、Rbは水素原子、又は置換基を有していてもよい非芳香族性炭化水素基を示す)
で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体とを反応させることにより式(4)で表されるN−アシルカルバモイル基含有ラクトン化合物を得る請求項1記載のN−アシルカルバモイル基及びラクトン骨格を含む単量体の製造方法。
式(3)で表されるシアノ基含有ラクトン化合物と式(5)で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体との反応を、ルイス酸及び/又はブレンステッド酸の存在下で行う請求項2記載のN−アシルカルバモイル基及びラクトン骨格を含む単量体の製造方法。
式(8)で表されるシアノ基含有ラクトン化合物と式(5)で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体との反応を、ルイス酸及び/又はブレンステッド酸の存在下で行う請求項6記載のN−アシルカルバモイル基含有ラクトン化合物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記シアノ基及びラクトン骨格を含む環を分子内に有するビニル系単量体のシアノ基をより親水性の高いN−アシルカルバモイル基(イミド基)に置き換えることができれば、フォトレジスト用樹脂等に応用した場合に耐薬品性等の安定性を保持しつつ、有機溶剤に対する溶解性に優れるとともに、アルカリ現像液に対する溶解性がさらに向上することが期待される。また、親水性の高いN−アシルカルバモイル基とラクトン骨格を含む環を有する化合物は、他の機能性高分子の単量体又はその中間体、或いは医薬品等の精密化学品又はその中間体としての利用も期待できる。しかし、従来、N−アシルカルバモイル基とラクトン骨格を含む環を有する化合物の工業的に効率のよい製造方法は無かった。
【0006】
なお、特開2013−101277号公報及び特開2013−113915号公報には、ラクトン骨格を含む環を有する酸クロライドとメタクリル酸アミドを、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)を用いて反応させて、ラクトン骨格を含む環にN−メタクリロイルカルバモイル基が結合した化合物を合成する方法が開示されている。しかし、この方法は、工業的には扱いにくい強塩基のLDAを用いるので、工業的に効率の良い方法とは言えない。
【0007】
従って、本発明の目的は、N−アシルカルバモイル基及びラクトン骨格を含む環を有する化合物の工業的に効率のよい製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、フォトレジスト用樹脂に使用されるラクトン骨格を有する新規な単量体の合成検討を進める中で、シアノ基及びラクトン環含有多環式骨格を有する単量体にカルボン酸又はその反応性誘導体を反応させると、N−アシルカルバモイル基(イミド基)及びラクトン環含有多環式骨格を有する単量体が効率よく得られることを見出した。これにより、従来導入が難しかった部位へのイミド構造の導入が容易になった。本発明は、これらの知見に基づき、さらに検討を加えることにより完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【化1】
[式中、R
aは水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、R
1は環に結合している置換基であって、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ヒドロキシル基部分が保護基で保護されていてもよく且つハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、塩を形成していてもよいカルボキシル基、又は置換オキシカルボニル基を示す。Aは炭素数1〜6のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又は非結合を示す。mはR
1の個数であって0〜8の整数を示す。Xは下記式(2)
【化2】
(式中、R
b、R
cはそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよい非芳香族性炭化水素基を示す。R
b、R
cは互いに結合して、式中に示される窒素原子及び炭素原子とともに環を形成していてもよい)
で表されるN−アシルカルバモイル基を示す。nは環に結合しているXの個数であって1〜9の整数を示す。Yは炭素数1〜6の2価の有機基を示す。kは0又は1を示す。CH
2=C(R
a)CO−(O−Y−CO)
k−O−基の立体的な位置はエンド、エキソの何れであってもよい]
で表されるN−アシルカルバモイル基及びラクトン骨格を含む単量体の製造方法であって、下記式(3)
【化3】
[式中、R
1、A、mは前記式(1)と同じ。nは環に結合しているシアノ基の個数であって1〜9の整数を示す。R
eは水素原子又は有機基を示す。R
eO−基の立体的な位置はエンド、エキソの何れであってもよい]
で表されるシアノ基含有ラクトン化合物を、下記式(4)
【化4】
[式中、R
1、A、X、m、nは前記式(1)と同じ。R
eは前記式(3)と同じ。R
eO−基の立体的な位置はエンド、エキソの何れであってもよい]
で表されるN−アシルカルバモイル基含有ラクトン化合物に転化する工程を少なくとも含むことを特徴とするN−アシルカルバモイル基及びラクトン骨格を含む単量体の製造方法を提供する。
【0010】
上記単量体の製造方法では、前記式(3)で表されるシアノ基含有ラクトン化合物を式(4)で表されるN−アシルカルバモイル基含有ラクトン化合物に転化する工程において、式(3)で表されるシアノ基含有ラクトン化合物と、下記式(5)
R
b−COOH (5)
(式中、R
bは水素原子、又は置換基を有していてもよい非芳香族性炭化水素基を示す)
で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体とを反応させることにより式(4)で表されるN−アシルカルバモイル基含有ラクトン化合物を得てもよい。この場合、式(3)で表されるシアノ基含有ラクトン化合物と式(5)で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体との反応を、ルイス酸及び/又はブレンステッド酸の存在下で行ってもよい。
【0011】
また、式(5)で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体として、下記式(6)
R
b−COO− (6)
(式中、R
bは水素原子、又は置換基を有していてもよい非芳香族性炭化水素基を示す)
で表されるアシルオキシ基を有する酸無水物を用いてもよい。
【0012】
さらに、前記式(3)におけるR
eが、下記式(7)
【化5】
(式中、R
aは水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、Yは炭素数1〜6の2価の有機基を示し、kは0又は1を示す)
で表される基であってもよい。
【0013】
本発明は、また、下記式(8)
【化6】
[式中、R
1は環に結合している置換基であって、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ヒドロキシル基部分が保護基で保護されていてもよく且つハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、塩を形成していてもよいカルボキシル基、又は置換オキシカルボニル基を示す。Aは炭素数1〜6のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又は非結合を示す。mはR
1の個数であって0〜8の整数を示す。nは環に結合しているシアノ基の個数であって1〜9の整数を示す。R
dは水素原子又は有機基を示す。R
dが有機基の場合その立体的な位置はエンド、エキソの何れであってもよい]
で表されるシアノ基含有ラクトン化合物と、下記式(5)
R
b−COOH (5)
(式中、R
bは水素原子、又は置換基を有していてもよい非芳香族性炭化水素基を示す)
で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体とを反応させることにより、下記式(9)
【化7】
[式中、R
1、R
d、A、mは前記に同じ。Xは下記式(2)
【化8】
(式中、R
b、R
cはそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基を示す。R
b、R
cは互いに結合して、式中に示される窒素原子とともに環を形成していてもよい)
で表されるN−アシルカルバモイル基を示す。nは環に結合しているXの個数であって1〜9の整数を示す。R
dが有機基の場合その立体的な位置はエンド、エキソの何れであってもよい]
で表される化合物を得ることを特徴とするN−アシルカルバモイル基含有ラクトン化合物の製造方法を提供する。
【0014】
この製造方法において、式(8)で表されるシアノ基含有ラクトン化合物と式(5)で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体との反応を、ルイス酸及び/又はブレンステッド酸の存在下で行ってもよい。
【0015】
また、前記式(5)で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体として、下記式(6)
R
b−COO− (6)
(式中、R
bは水素原子、又は置換基を有していてもよい非芳香族性炭化水素基を示す)
で表されるアシルオキシ基を有する酸無水物を用いてもよい。
【0016】
また、前記式(8)におけるR
dは、(メタ)アクリロイル基含有基であってもよい。
【0017】
本発明は、さらに、上記の何れかに記載の製造方法で得られる単量体組成物であって、下記式(1)
【化9】
[式中、R
aは水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、R
1は環に結合している置換基であって、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ヒドロキシル基部分が保護基で保護されていてもよく且つハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、塩を形成していてもよいカルボキシル基、又は置換オキシカルボニル基を示す。Aは炭素数1〜6のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又は非結合を示す。mはR
1の個数であって0〜8の整数を示す。Xは下記式(2)
【化10】
(式中、R
b、R
cはそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよい非芳香族性炭化水素基を示す。R
b、R
cは互いに結合して、式中に示される窒素原子及び炭素原子とともに環を形成していてもよい)
で表されるN−アシルカルバモイル基を示す。nは環に結合しているXの個数であって1〜9の整数を示す。Yは炭素数1〜6の2価の有機基を示す。kは0又は1を示す。CH
2=C(R
a)CO−(O−Y−CO)
k−O−基の立体的な位置はエンド、エキソの何れであってもよい]
で表されるN−アシルカルバモイル基及びラクトン骨格を含む単量体と、下記式(10)
【化11】
[式中、R
a、R
1、A、Y、m、kは前記に同じ。Zはカルボキシル基又はカルバモイル基を示す。nは環に結合しているZの個数であって1〜9の整数を示す。CH
2=C(R
a)CO−(O−Y−CO)
k−O−基の立体的な位置はエンド、エキソの何れであってもよい]
で表されるカルボキシル基又はカルバモイル基含有化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物とを含む単量体組成物を提供する。
【0018】
なお、6−オキサビシクロ[3.2.1
1,5]オクタン環における位置番号、及び3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン環における位置番号を下記に示す(前者が左、後者が右)。
【化12】
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法によれば、入手しやすい原料から簡易な手段で、N−アシルカルバモイル基及びラクトン骨格を含む単量体、N−アシルカルバモイル基含有ラクトン化合物を効率よく製造できる。本発明の製造方法により得られる化合物は、有機溶剤溶解性に優れるとともに、水やアルカリ溶液に対する親和性が高いため、それらの機能、特性を活かして、フォトレジスト用樹脂等の機能性高分子の単量体又はその中間体、或いは医薬品等の精密化学品又はその中間体として使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[N−アシルカルバモイル基及びラクトン骨格を含む単量体の製造]
本発明のN−アシルカルバモイル基及びラクトン骨格を含む単量体の製造方法では、前記式(1)で表される化合物(6−オキサビシクロ[3.2.1
1,5]オクタン−7−オン誘導体及び3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オン誘導体等)を製造する。
【0021】
式(1)中、R
aは水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示し、R
1は環[6−オキサビシクロ[3.2.1
1,5]オクタン環(Aが非結合の場合)、3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン環(Aがメチレン基の場合)等]に結合している置換基であって、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、ヒドロキシル基部分が保護基で保護されていてもよく且つハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、塩を形成していてもよいカルボキシル基、又は置換オキシカルボニル基を示す。Aは炭素数1〜6のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又は非結合を示す。mはR
1の個数であって0〜8の整数を示す。Xは前記式(2)で表されるN−アシルカルバモイル基を示す。nは環[6−オキサビシクロ[3.2.1
1,5]オクタン環(Aが非結合の場合)、3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン環(Aがメチレン基の場合)等]に結合しているXの個数であって1〜9の整数を示す。Yは炭素数1〜6の2価の有機基を示す。kは0又は1を示す。CH
2=C(R
a)CO−(O−Y−CO)
k−O−基の立体的な位置はエンド、エキソの何れであってもよい。
【0022】
式中、Xは前記式(2)で表されるN−アシルカルバモイル基を示す。式(2)中、R
b、R
cはそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよい非芳香族性炭化水素基を示す。なお、R
b、R
cは互いに結合して、式中に示される窒素原子及び炭素原子とともに環を形成していてもよい。
【0023】
R
b、R
cにおける「置換基を有していてもよい非芳香族性炭化水素基」の「非芳香族性炭化水素基」としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、これらが2以上結合した2価の基が挙げられる。前記脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。前記アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6)のアルキル基などが挙げられる。前記アルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル基等の炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜6)のアルケニル基などが挙げられる。前記アルキニル基としては、例えば、エチニル、プロピニル基等の炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜6)のアルキニル基などが挙げられる。前記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基等の3〜8員のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロヘキセニル基等の3〜8員のシクロアルケニル基;アダマンチル、ノルボルニル基等の炭素数4〜20(好ましくは7〜12)の橋架け環式炭化水素基などが挙げられる。これらの中でも、非芳香族性炭化水素基としては、炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6)のアルキル基、3〜8員(好ましくは5又は6員)のシクロアルキル基、炭素数4〜20(好ましくは7〜12)の橋架け環式炭化水素基、又はこれらが2以上結合した基が好ましい。
【0024】
前記「置換基を有していてもよい非芳香族性炭化水素基」の「置換基」としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、メトキシ基等のアルコキシ基(例えば、C
1-6アルコキシ基等)、カルボキシル基、メトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基(例えば、C
1-6アルコキシ−カルボニル基等)、アセチル基等のアシル基(例えば、C
1-6アシル基等)、シアノ基、フェニル基等のアリール基(例えば、C
6-14アリール基等)、メチル基等のアルキル基(例えば、C
1-20アルキル基、好ましくはC
1-10アルキル基、さらに好ましくはC
1-6アルキル基)、ビニル基等のアルケニル基(例えば、C
2-6アルケニル基等)、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基(例えば、C
3-12シクロアルキル基等)、ニトロ基などが挙げられる。
【0025】
R
b、R
cが互いに結合して、式中に示される窒素原子及び炭素原子とともに形成してもよい環としては、例えば、β-ラクタム環(4員環)、γ-ラクタム環(5員環)、δ-ラクタム環(6員環)などの4〜12員(好ましくは5〜6員)の非芳香族性含窒素複素環が挙げられる。該環を構成する原子には置換基が結合していてもよい。このような置換基としては、前記R
b、R
cにおける「置換基を有していてもよい非芳香族性炭化水素基」の「置換基」と同様の基が挙げられ、なかでも、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6)のアルキル基などが挙げられる。これらの置換基の中でも、メチル基等の炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
【0026】
R
b、R
cとしては、それぞれ、水素原子、炭素数1〜6(特に1〜4)のアルキル基、3〜8員(特に5又は6員)のシクロアルキル基、炭素数4〜20(特に7〜12)の橋架け環式炭化水素基が好ましい。また、R
b、R
cが互いに結合して、式中に示される窒素原子及び炭素原子とともに5〜6員の非芳香族性含窒素複素環を形成するのも好ましい。アルカリ現像液との親和性の観点からは、酸性の官能基を構成することから、R
cとしては水素原子が好ましい。さらに、R
b、R
cとしては、特に、R
cが水素原子で、R
bが炭素数1〜6(特に1〜4)のアルキル基、3〜8員(特に5又は6員)のシクロアルキル基、又は炭素数4〜20(特に7〜12)の橋架け環式炭化水素基である組み合わせが好ましい。
【0027】
式(1)に記載されたR
a、R
1としてのハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素原子などが含まれる。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、C
1-4アルキル基、特にメチル基が好ましい。ハロゲン原子を有する炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、クロロメチル基などのクロロアルキル基;トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル基などのフルオロアルキル基(好ましくは、C
1-3フルオロアルキル基)などが挙げられる。R
aにおける置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基としては、前記ハロゲン原子を有する炭素数1〜6のアルキル基などが挙げられる。
【0028】
R
1における炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、6−ヒドロキシヘキシル基などが挙げられる。ハロゲン原子を有する炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ジフルオロヒドロキシメチル、1,1−ジフルオロ−2−ヒドロキシエチル、2,2−ジフルオロ−2−ヒドロキシエチル、1,1,2,2−テトラフルオロ−2−ヒドロキシエチル基などが挙げられる。ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基の中でも、炭素数1又は2(特に炭素数1)のヒドロキシアルキル基若しくはヒドロキシハロアルキル基が好ましい。ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基のヒドロキシル基の保護基としては、有機合成の分野でヒドロキシル基の保護基として通常用いられる保護基、例えば、メチル基、メトキシメチル基等のヒドロキシル基を構成する酸素原子とともにエーテル又はアセタール結合を形成する基;アセチル基、ベンゾイル基等のヒドロキシル基を構成する酸素原子とともにエステル結合を形成する基などが挙げられる。カルボキシル基の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩などが挙げられる。
【0029】
前記置換オキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、プロポキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基(C
1-4アルコキシ−カルボニル基等);ビニルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル基などのアルケニルオキシカルボニル基(C
2-4アルコキシ−カルボニル基等);シクロヘキシルオキシカルボニル基などのシクロアルキルオキシカルボニル基;フェニルオキシカルボニル基などのアリールオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0030】
R
aとしては、水素原子、メチル基等のC
1-3アルキル基、トリフルオロメチル基等のC
1-3ハロアルキル基が好ましく、特に、水素原子又はメチル基が好ましい。また、R
1としては、メチル基やトリフルオロメチル基等の炭素数1〜3のアルキル基若しくはハロアルキル基、ヒドロキシ部分が保護基で保護されていてもよい炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基若しくはヒドロキシハロアルキル基(特に、ヒドロキシメチル基、アセトキシメチル基等の保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基)、置換オキシカルボニル基などが好ましい。
【0031】
mは0〜8、好ましくは0〜6、さらに好ましくは0〜3である。R
1が複数個の場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。nは1〜9、好ましくは1〜5、さらに好ましくは1又は2である。Xが複数個の場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。Aが非結合の場合、置換基Xは、6−オキサビシクロ[3.2.1
1,5]オクタン環の1位、2位、3位、4位、5位、8位のどの位置に結合していてもよいが、1位(ラクトンのα位)又は2位が好ましく、中でも1位(ラクトンのα位)が特に好ましい。また、Aが炭素数1〜6のアルキレン基、酸素原子、又は硫黄原子の場合、置換基Xは、3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン環等の1位、4位、5位、6位、7位、8位、9位等のどの位置に結合していてもよいが、3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン環の1位若しくは9位(又はこれらに相当する位置)が好ましく、中でも1位(又はこれに相当する位置;ラクトンのα位)が特に好ましい。
【0032】
Aは炭素数1〜6のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又は非結合を示すが、炭素数1〜6のアルキレン基としては、例えば、アルキル基で置換されていてもよいメチレン基、アルキル基で置換されていてもよいエチレン基、アルキル基で置換されていてもよいプロピレン基が挙げられる。中でも、Aとして、炭素数1〜6のアルキレン基又は非結合が好ましい。
【0033】
Yは炭素数1〜6の2価の有機基を示す。2価の有機基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのアルキレン基(特に、C
1-6アルキレン基);ビニレンなどのアルケニレン基(特に、C
2-6アルケニレン基);シクロペンチレン、シクロヘキシレン基等のシクロアルケニレン基;これらの2以上が、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、エステル結合(−COO−;−OCO−)などの連結基を介して結合した2価の有機基などが挙げられる。特に、メチレン、エチレン、プロピレンなどが好ましい。これらの例示された基にはハロゲン原子、特にフッ素原子で置換されたものも有用である。
【0034】
式(1)で表されるN−アシルカルバモイル基及びラクトン骨格を有する単量体の代表的な例として、下記式で表される1−置換(X)−6−オキサビシクロ[3.2.1
1,5]オクタン−7−オン化合物(各立体異性体を含む)、2−置換(X)−6−オキサビシクロ[3.2.1
1,5]オクタン−7−オン化合物(各立体異性体を含む)、1−置換(X)−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オン化合物(各立体異性体を含む)、9−置換(X)−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オン化合物(各立体異性体を含む)、及びこれらに対応する式(1)におけるAがメチレン基以外のアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子である化合物が挙げられる。式中、RはCH
2=C(R
a)CO−(O−Y−CO)
k−基を示し、Acはアセチル基を示す。置換基であるXは前記式(2)で表されるN−アシルカルバモイル基を示す。
【0037】
本発明の製造方法においては、前記式(3)で表されるシアノ基含有ラクトン化合物を、前記式(4)で表されるN−アシルカルバモイル基含有ラクトン化合物に転化する工程を少なくとも経ることにより、前記式(1)で表されるN−アシルカルバモイル基及びラクトン骨格を含む単量体を製造する。
【0038】
式(3)中、R
1、A、mは前記式(1)と同じ。nは環に結合しているシアノ基の個数であって1〜9の整数を示す。R
eは水素原子又は有機基を示す。R
eO−基の立体的な位置はエンド、エキソの何れであってもよい。また、式(4)中、R
1、A、X、m、nは前記式(1)と同じ。R
eは前記式(3)と同じ。R
eO−基の立体的な位置はエンド、エキソの何れであってもよい。
【0039】
R
eにおける有機基としては、CH
2=C(R
a)CO−(O−Y−CO)
k−基、又は反応によりCH
2=C(R
a)CO−(O−Y−CO)
k−基に誘導できる基である(R
a、Y、kは前記に同じ)。反応によりCH
2=C(R
a)CO−(O−Y−CO)
k−基に誘導できる基として、例えば、Z
a−Y−CO−基(Z
aはハロゲン原子を示す)等が挙げられる。R
eとしては、特に、CH
2=C(R
a)CO−(O−Y−CO)
k−基[=前記式(7)で表される基]が好ましい。
【0040】
式(3)で表される代表的な化合物として、下記式(3a)〜(3c)で表される化合物が挙げられる。
【0042】
上記式中、R
a、R
1、A、m、n、Y、kは前記式(3)と同じ。Z
aはハロゲン原子を示す。該ハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素原子などが挙げられる。式(3a)における水酸基は慣用の保護基で保護されていてもよい。
【0043】
前記式(3a)〜(3c)で表される化合物は公知の製造法により合成できる(例えば、WO2009/107327参照)。
【0044】
式(3)で表されるシアノ基含有ラクトン化合物を式(4)で表されるカルバモイル基含有ラクトン化合物に転化(変換)する方法としては、例えば、式(3)で表されるシアノ基含有ラクトン化合物と、下記式(5)
R
b−COOH (5)
(式中、R
bは水素原子、又は置換基を有していてもよい非芳香族性炭化水素基を示す)
で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体とを、必要であれば、ルイス酸及び/又はブレンステッド酸を触媒として用いて反応させ、式(4)で表されるN−アシルカルバモイル基含有ラクトン化合物を得る方法が挙げられる。
【0045】
式(5)で表されるカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸などの炭素数1〜21(好ましくは1〜11、さらに好ましくは1〜7)の脂肪族カルボン酸;シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、アダマンタンカルボン酸、ノルボルナンカルボン酸などの炭素数4〜21の脂環式カルボン酸(シクロアルカンカルボン酸、橋架け環式カルボン酸等)などの非芳香族カルボン酸が挙げられる。
【0046】
前記カルボン酸の反応性誘導体としては、酸無水物、酸ハロゲン化物、活性エステルなどが挙げられる。式(5)で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体として、特に、下記式(6)
R
b−COO− (6)
(式中、R
bは前記に同じ)
で表されるアシルオキシ基を有する酸無水物が好ましい。
【0047】
上記式(6)で表されるアシルオキシ基を有する酸無水物は、等価なカルボン酸(R
b−COOH)同士のカルボン酸無水物(対称酸無水物)、非等価なカルボン酸同士の混合酸無水物、カルボン酸(R
b−COOH)とトリフルオロメタンスルホン酸などのスルホン酸との混合酸無水物、カルボン酸(R
b−COOH)と硫酸などの無機酸との混合酸無水物などのいずれであってもよい。これらの酸無水物は、酸無水物の交換反応や、カルボン酸の脱水反応等を行うことにより、系内で発生させて使用してもよい。なお、カルボン酸(R
b−COOH)とスルホン酸との混合酸無水物、カルボン酸(R
b−COOH)と無機酸との混合酸無水物を用いる場合には、ルイス酸、ブレンステッド酸を用いなくても反応が進行する場合がある。
【0048】
式(6)で表されるアシルオキシ基を有する酸無水物の代表的な例として、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族カルボン酸無水物;ビス(シクロペンタンカルボン酸)無水物、ビス(シクロヘキサンカルボン酸)無水物等の脂環式カルボン酸無水物;ビス(アダマンタンカルボン酸)無水物、ビス(ノルボルナンカルボン酸)無水物等の橋架け環式カルボン酸無水物;酢酸プロピオン酸無水物、酢酸トリフルオロメタンスルホン酸無水物、酢酸硫酸無水物等の混合酸無水物などが挙げられる。
【0049】
式(5)で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体の使用量は、式(3)で表される化合物1モルに対して、例えば、1〜100モル、好ましくは2〜50モル程度である。大過剰量用いてもよい。
【0050】
前記ルイス酸としては、例えば、塩化スズ(IV)(SnCl
4)、塩化スズ(II)(SnCl
2)、塩化鉄(III)(FeCl
3)、塩化アルミニウム(III)(AlCl
3)、四塩化チタン(TiCl
4)、四塩化ケイ素(SiCl
4)、三フッ化ホウ素エーテル錯体などが挙げられる。これらの中でも、塩化スズ(IV)(SnCl
4)、塩化スズ(II)(SnCl
2)、塩化鉄(III)(FeCl
3)、塩化アルミニウム(III)(AlCl
3)が好ましい。
【0051】
ルイス酸の使用量は、式(3)で表される化合物1モルに対して、例えば、0.5〜10モル、好ましくは1〜4モルである。
【0052】
前記ブレンステッド酸としては、例えば、硫酸などの無機酸;トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類などが挙げられる。これらの中でも、特に、硫酸が好ましい。
【0053】
ブレンステッド酸の使用量は、式(3)で表される化合物1モルに対して、例えば、0.5〜20モル、好ましくは1〜15モル、さらに好ましくは3〜10モルである。
【0054】
式(3)で表される化合物と式(5)で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体とを反応させる際の反応温度は、反応性の観点、及び化合物中の官能基の安定性、特に重合性基を含む場合はその安定性の観点から、50〜150℃が好ましく、70〜100℃がさらに好ましい。式(3)で表される化合物が(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する場合は、系内に、p−メトキシフェノール等の重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤の添加量は、例えば、式(3)で表される化合物1モルに対して、0.001〜0.2モル程度、好ましくは0.01〜0.1モルである。
【0055】
式(3)で表される化合物と式(5)で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体を反応させた後、必要に応じて加水分解する。加水分解は、好ましくは、酸触媒の存在下で行われる。酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、ポリリン酸等の無機酸;p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等のスルホン酸類などが挙げられる。式(3)で表される化合物と式(5)で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体との反応にブレンステッド酸を用いた場合には、さらに酸触媒を加えなくてもよい。加水分解の温度は、例えば、−10℃〜100℃、好ましくは0〜50℃である。
【0056】
式(3)で表される化合物として式(3a)で表される化合物を用いた場合には、式(3a)中のシアノ基を式(2)で表されるN−アシルカルバモイル基に変換して、対応する式(4)で表される化合物とし、また、式(3a)中の水酸基がアシル化された場合には加水分解した後、好ましくは塩基(トリエチルアミン等の第三級アミンなど)の存在下、CH
2=C(R
a)CO−Z
bで表される酸ハライド(Z
bはハロゲン原子を示す)と反応させることにより、前記式(1)において、k=0である化合物を製造できる。Z
bにおけるハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0057】
式(3)で表される化合物として式(3b)で表される化合物を用いた場合には、式(3b)中のシアノ基を式(2)で表されるN−アシルカルバモイル基に変換して、対応する式(4)で表される化合物とした後、好ましくは塩基(トリエチルアミン等の第三級アミンなど)の存在下、CH
2=C(R
a)COOHで表されるカルボン酸と反応させることにより、前記式(1)において、k=1である化合物を製造できる。
【0058】
また、式(3)で表される化合物として式(3c)で表される化合物を用いた場合には、式(3c)中のシアノ基を式(2)で表されるN−アシルカルバモイル基に変換することにより、対応する式(4)で表される化合物、すなわち前記式(1)で表される化合物を製造できる。
【0059】
反応で生成した式(4)で表される化合物、式(1)で表される化合物は、例えば、濾過、濃縮、抽出、液性調整、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段に付すことにより精製できる。
【0060】
[N−アシルカルバモイル基含有ラクトン化合物の製造方法]
本発明のN−アシルカルバモイル基含有ラクトン化合物の製造方法では、前記式(8)で表されるシアノ基含有ラクトン化合物と、下記式(5)
R
b−COOH (5)
(式中、R
bは水素原子、又は置換基を有していてもよい非芳香族性炭化水素基を示す)
で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体とを、ルイス酸及び/又はブレンステッド酸を触媒として用いて反応させて、前記式(9)で表されるN−アシルカルバモイル基含有ラクトン化合物を製造する。
【0061】
式(8)におけるR
1、A、m、nは式(3)と同様であり、式(9)におけるR
1、A、X、m、nは式(4)と同様である。式(8)及び式(9)におけるR
dは、水素原子又は有機基を示す。
【0062】
R
dにおける有機基としては、炭化水素基、複素環式基、これらが2以上結合した基、又は、これらの基の1又は2以上と、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、エステル結合(−COO−)、アミド結合(−CONH−)、カルボニル基(−CO−)から選択された連結基の1又は2以上とが結合した基などが挙げられる。
【0063】
前記炭化水素基には脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらが2以上結合した基が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基(C
1-8アルキル基等);アリル、メタリル、クロチル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルケニル基(C
2-8アルケニル基等);プロピニル基等の直鎖状または分岐鎖状のアルキニル基(C
2-8アルキニル基等)などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基(3〜8員シクロアルキル基等);シクロペンテニル、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基(3〜8員シクロアルケニル基等);アダマンチル、ノルボルニル基等の橋架け炭素環式基(C
4-20橋架け炭素環式基等)などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチル基等のC
6-14芳香族炭化水素基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基としては、ベンジル、2−フェニルエチル基などが挙げられる。これらの炭化水素基は、アルキル基(C
1-4アルキル基等)、ハロアルキル基(C
1-4ハロアルキル基等)、ハロゲン原子、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、オキソ基などの置換基を有していてもよい。保護基としては有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。
【0064】
前記複素環式基としては、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を含む複素環式基が挙げられる。
【0065】
前記R
dとしては、式(3)及び式(4)と同じR
eO−基(R
eは前記に同じ)が好ましく、特に、CH
2=C(R
a)CO−(O−Y−CO)
k−O−基(R
a、Y、kは前記に同じ)等の(メタ)アクリロイル基含有基であることが好ましい。この場合には、フォトレジスト用高分子等の機能性高分子の単量体又はその中間体の製造方法として特に有用である。また、R
dとしては、炭素数1〜20(特に、炭素数1〜12)の炭化水素基、又は、前記炭化水素基の1又は2以上と、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、エステル結合(−COO−)、アミド結合(−CONH−)、カルボニル基(−CO−)から選択された連結基の1又は2以上とが結合した基も好ましい。
【0066】
反応に用いる式(5)で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体としては、前記式(6)で表されるアシルオキシ基を有する酸無水物が好ましい。
【0067】
反応に用いるルイス酸、ブレンステッド酸、反応条件等については、前記式(3)で表される化合物と、式(5)で表されるカルボン酸又はその反応性誘導体との反応と同様である。
【0068】
反応で生成した式(9)で表されるN−アシルカルバモイル基含有ラクトン化合物は、例えば、濾過、濃縮、抽出、液性調整、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段に付すことにより精製できる。
【0069】
こうして得られるN−アシルカルバモイル基含有ラクトン化合物は、有機溶剤溶解性に優れるとともに、水やアルカリ溶液に高い親和性を有し、また、ラクトン環が加水分解等により開環するので、それらの機能、特性を利用することにより、機能性高分子等の機能性化合物の原料、医薬等の精密化学品又はその中間体などとして有用である。
【0070】
式(9)で表されるN−アシルカルバモイル基含有ラクトン化合物の代表的な例として、前記式(1)で表されるN−アシルカルバモイル基及びラクトン骨格を有する単量体の代表的な例として化学構造式で示した、1−置換(X)−6−オキサビシクロ[3.2.1
1,5]オクタン−7−オン化合物(各立体異性体を含む)、2−置換(X)−6−オキサビシクロ[3.2.1
1,5]オクタン−7−オン化合物(各立体異性体を含む)、1−置換(X)−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オン化合物(各立体異性体を含む)、9−置換(X)−5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オン化合物(各立体異性体を含む)、及びこれらに対応する式(1)におけるAがメチレン基以外のアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子である化合物において、式中の「RO−」を「R
d−」に置き換えた化合物が挙げられる。
【0071】
[単量体組成物]
本発明の単量体組成物は、前記本発明のN−アシルカルバモイル基及びラクトン骨格を含む単量体の製造方法又は本発明のN−アシルカルバモイル基含有ラクトン化合物の製造方法で得られる単量体組成物であり、前記式(1)で表されるN−アシルカルバモイル基及びラクトン骨格を含む単量体と、前記式(10)で表されるカルボキシル基(−COOH)又はカルバモイル基(−CONH
2)を含有する化合物から選ばれた少なくとも1つの化合物とを含む。なお、式(10)で表される化合物のうち、Zがカルボキシル基である化合物をカルボキシル基含有ラクトン化合物、Zがカルバモイル基である化合物をカルバモイル基含有ラクトン化合物と称する場合がある。
【0072】
上記本発明の製造方法によれば、式(1)で表されるN−アシルカルバモイル基及びラクトン骨格を含む単量体を製造する際、前記式(10)で表されるカルボキシル基またはカルバモイル基含有ラクトン化合物が副生し、これらの混合物である単量体組成物が得られる。この単量体組成物をフォトレジスト用樹脂に使用した場合には、そのカルボキシル基またはカルバモイル基の親水性により、樹脂中への現像液の浸透が容易となり、該式(1)で表されるN−アシルカルバモイル基及びラクトン骨格含有単量体に由来する構造部位の加水分解が速やかになることで、現像液に対する溶解性が向上し、露光部位のポリマーが速やかに現像液に溶解する。従って、この単量体組成物は、フォトレジスト用ポリマー用の単量体組成物として非常に有用である。
【0073】
本発明の単量体組成物において、式(10)で表されるカルボキシル基またはカルバモイル基含有ラクトン化合物の含有量(カルボキシル基含有ラクトン化合物とカルバモイル基含有ラクトン化合物の合計)の、式(1)で表されるN−アシルカルバモイル基及びラクトン骨格を含む単量体と式(10)で表されるカルボキシル基またはカルバモイル基含有ラクトン化合物の総含有量に占める割合は、特に制限はないが、好ましくは0.001〜5重量%であり、さらに好ましくは0.01〜1重量%である。
【0074】
なお、本発明の単量体組成物を晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段に付すことにより、上記の各化合物をそれぞれ単離することができる。
【実施例】
【0075】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0076】
実施例1
下記の反応式に従って、1−(N−アセチルカルバモイル)−5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オンを製造した。
【化16】
【0077】
窒素置換した100ml撹拌機付き三つ口フラスコに、1−シアノ−5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オン 3.0g(12.1ミリモル)、無水酢酸12.4g(12.1ミリモル)を入れ、撹拌し混合した。水浴で液温を25℃以下に保ちつつ、塩化スズ(IV)4.1g(15.8ミリモル)を添加し、その後、液温80℃で2時間、100℃で2時間撹拌した。反応終了後、水浴で冷却し、内温を25℃以下に保ちつつ、酢酸エチル100g、5N塩酸130gを添加し、30分撹拌した。有機相を分離して、さらに酢酸エチル200g、5N塩酸300gを添加し、30分撹拌した。有機相を分離し、減圧濃縮した。得られた粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、1−(N−アセチルカルバモイル)−5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オンを0.60g(19.7ミリモル、収率16%)、1−カルボキシ−5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オンを0.004g、1−カルバモイル−5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オンを0.005g得た。NMRスペクトルデータは以下に示した。
【0078】
<1−(N−アセチルカルバモイル)−5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オンのスペクトルデータ>
1H−NMR(CDCl
3)δ:9.72(1H,brs),6.12(1H,m),5.64(1H,m),4.67(1H,m),4.65(1H,m),3.49(1H,m),2.70(1H,m),2.42(3H,s),2.29−2.33(1H,m),2.09−2.15(3H,m),1.95(3H,s)
【0079】
<1−カルバモイル−5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オンのスペクトルデータ>
1H−NMR(DMSO−d6)δ:7.58(1H,brs),7.37(1H,brs),6.07(1H,s),5.72(1H,s),4.65(1H,d),4.56(1H,s),3.48(1H,d),2.51−2.54(1H,m),2.44(1H,dd),1.92(1H,d),1.89(3H,s),1.76(1H,dd),1.59(1H,d)
【0080】
実施例2
下記の反応式に従って、1−(N−アセチルカルバモイル)−5−(2−メタクリロイルオキシアセトキシ)−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オンを製造した。
【化17】
【0081】
窒素置換した200ml撹拌機付き三つ口フラスコに、1−シアノ−5−(2−メタクリロイルオキシアセトキシ)−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オン3.0g(9.8ミリモル)、無水酢酸10.0g(98ミリモル)を入れ、攪拌し混合した。水浴で液温を25℃以下に保ちつつ、塩化スズ(IV)3.3g(12.8ミリモル)を添加し、その後、液温80℃で6時間攪拌した。反応終了後、氷浴で冷却し、内温を25℃以下に保ちつつ、酢酸エチル100g、5N塩酸130gを添加、30分攪拌した。有機相を分離して、さらに酢酸エチル200g、5N塩酸300gを添加し30分攪拌した。有機相を分離し、減圧濃縮した。得られた粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、1−(N−アセチルカルバモイル)−5−(2−メタクリロイルオキシアセトキシ)−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オンを0.51g(1.4ミリモル、収率14%)、1−カルボキシ−5−(2−メタクリロイルオキシアセトキシ)−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オンを0.002g、1−カルバモイル−5−(2−メタクリロイルオキシアセトキシ)−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オンを0.001g得た。NMRスペクトルデータは以下に示した。
【0082】
<1−(N−アセチルカルバモイル)−5−(2−メタクリロイルオキシアセトキシ)−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オンのスペクトルデータ>
1H−NMR(CDCl
3)δ:9.68(1H,brs),6.23(1H,m),5.69(1H,m),4.62−4.70(4H,m),3.48(1H,m),2.69(1H,m),2.42(3H,s),2.28−2.32(1H,m),2.05−2.15(3H,m),1.99(3H,s)
【0083】
<1−カルバモイル−5−(2−メタクリロイルオキシアセトキシ)−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オンのスペクトルデータ>
1H−NMR(DMSO−d6)δ:7.56(1H,brs),7.37(1H,brs),6.13(1H,s),5.80(1H,s),4.77(1H,s),4.59(1H,s),3.48(1H,s)、2.49(1H,m),2.42(1H,dd),1.92(3H,s),1.83(1H,d),1.77(1H,d),1.57(1H,d)
【0084】
実施例3
下記の反応式に従って、1−(N−アセチルカルバモイル)−5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オンを製造した。
【化18】
【0085】
窒素置換した100ml撹拌機付き三つ口フラスコに、1−シアノ−5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オン 5.0g(20.2ミリモル)、無水酢酸13.4g(131ミリモル)、p−メトキシフェノール0.15g(1.2ミリモル)を入れ、撹拌し混合した。氷浴で液温を5℃以下に保ちつつ、硫酸19.8g(202ミリモル)と無水酢酸41.3g(404ミリモル)の混合液を滴下し、滴下終了後、液温80℃で6時間撹拌した。氷浴で冷却し、内温を25℃以下に保ちつつ、酢酸エチル200g、水200gを添加し、撹拌した。有機相を分離して、8重量%炭酸水素ナトリウム水溶液200gで洗浄し、減圧濃縮した。得られた粗結晶を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付すことにより、1−(N−アセチルカルバモイル)−5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オンを4.75g(15.5ミリモル、収率76%)、1−カルボキシ−5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オンを0.003g、1−カルバモイル−5−メタクリロイルオキシ−3−オキサトリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン−2−オンを0.001g得た。