【文献】
“未来工業 電材カタログ1”,日本,未来工業株式会社[オンライン],2012年 3月,2012−2013,p.492,[平成26年12月 3日検索]、インターネット,URL,<http://www.mekatoro.net/digianaecatalog/mirai-sougou1/book/mirai-sougou1-P0492.html>
【文献】
“miraiニュース 電設かわら版”,未来工業株式会社,2012年10月,172号,p.1,[平成24年12月 3日]、インターネット,URL,<http://www.mirai.co.jp/kawara-d/pdf/k-172.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バンドの長手方向に複数形成された被係合歯が前記ロック部のロック爪に係合するように構成されたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の配設装置。
前記支持具は、前記バンドを挿通可能に前記台座に貫通形成され、前記バンドが係止状態で貫通配置される収容部、及び、該収容部に連通するとともに前記バンドの幅方向の側端を通過可能に開口した受入口を備えた貫通部を備え、
前記ロック部が、前記貫通部に挿通した前記バンドを長尺方向に脱抜防止に係止することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の配設装置。
前記バンドは平板帯形状を有し、前記バンドの被係合歯が前記台座と対面する面と反対側の表面に形成され、前記バンドの幅方向の側端面側から前記貫通部内に挿入されることを特徴とする請求項6に記載の配設装置。
前記貫通部には、前記収容部に収容された前記バンドの幅方向の側端面に対向し、前記バンドが幅方向に移動して前記収容部から抜け出ることを規制する離脱防止部が設けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載の配設装置。
前記貫通部には、前記受入口を介して前記バンドを前記収容部に対して傾斜させた姿勢で前記収容部内にガイドするガイド部が設けられていることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の配設装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の支持具固定装置では、遠隔操作で支持具をボルトに取着可能であるが、特許文献2のようにバンドで支持対象物(ケーブル)を支持具に結束操作するには、作業者が脚立を準備して高所でバンドを直接操作して、バンドで支持対象物を支持具に括り付けなければならない。このような高所でのバンドの結束操作は、作業性及び安全性の面で望ましくないことが問題であった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、被固定材に固定された支持具に対して支持対象物の配設作業を実施する際、支持具を遠隔操作可能に構成された配設装置、操作具及び支持具の操作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の配設装置は、被固定材に固定されて支持対象物を支持する支持具、及び、該支持具を遠隔操作するための操作具とからなる配設装置であって、
支持具は、支持対象物を支持するための台座と、台座と協働して支持対象物を包囲するための長尺のバンドと、支持対象物を包囲する位置でバンドをロックするロック部と、を備え、
操作具は、長尺の竿と、該竿に設けられ、支持具を操作するための操作部を有する操作具本体と、を備えており、
操作部は、バンドに形成された被掛合部に掛合する掛合部を有し、
被固定材に固定された支持具の台座に支持対象物を支持した状態で、操作具の掛合部にバンドの被掛合部を掛合させて操作具を操作することで、支持対象物をバンドで取り囲み、バンドをロック位置に導入可能としたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の配設装置は
、支持対象物を支持する支持具、及び、該支持具を遠隔操作するための操作具とからなる配設装置であって、
支持具は、支持対象物を支持するための台座と、台座と協働して支持対象物を包囲するための長尺のバンドと、支持対象物を包囲する位置でバンドをロックするロック部と、を備え、
操作具は、長尺の竿と、該竿に設けられ、支持具を操作するための操作部を有する操作具本体と、を備えており、
被固定材に固定された支持具の台座に支持対象物を支持した状態で、操作部がロック部によるバンドのロックを解除可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の配設装置は
、支持対象物を支持する支持具、及び、該支持具を遠隔操作するための操作具とからなる配設装置であって、
支持具は、支持対象物を支持するための台座と、台座と協働して支持対象物を包囲するための長尺のバンドと、支持対象物を包囲する位置でバンドをロックするロック部と、を備え、
操作具は、長尺の竿と、該竿に設けられ、支持具を操作するための操作部を有する操作具本体と、を備えており、
操作部は、バンドに形成された被掛合部に掛合する掛合部を有し、
被固定材に固定された支持具の台座に支持対象物を支持するとともに支持具上で支持対象物を包囲した状態で、バンドの被
掛合部に操作具の掛合部を掛合させてバンドを牽引することで、支持対象物を包囲する輪を縮小させて、支持対象物を支持
具へと結束可能としたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の配設装置は、請求項1から3のいずれかに記載の配設装置において、ロック部は、ロック爪と、該ロック爪が形成された弾性片とを備え、
操作部が弾性片を弾性変形させることでロック爪をロック解除位置に弾性移動させてバンドのロックを解除可能であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の配設装置は、請求項1から4のいずれかに記載の配設装置において、バンドの長手方向に複数形成された被係合歯がロック部のロック爪に係合するように構成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の配設装置は、請求項1から5のいずれかに記載の配設装置において、支持具は、バンドを挿通可能に台座に貫通形成され、バンドが係止状態で貫通配置される収容部、及び、該収容部に連通するとともにバンドの幅方向の側端を通過可能に開口した受入口を備えた貫通部を備え、
ロック部が、貫通部に挿通したバンドを長尺方向に脱抜防止に係止することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の配設装置は、請求項6に記載の配設装置において、バンドは平板帯形状を有し、バンドの被係合歯が台座と対面する面と反対側の表面に形成され、バンドの幅方向の側端面側から貫通部内に挿入されることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の配設装置は、請求項6又は7に記載の配設装置において、貫通部には、収容部に収容されたバンドの幅方向の側端面に対向し、バンドが幅方向に移動して収容部から抜け出ることを規制する離脱防止部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の配設装置は、請求項6から8のいずれかに記載の配設装置において、貫通部には、受入口を介してバンドを収容部に対して傾斜させた姿勢で収容部内にガイドするガイド部が設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の操作方法は、支持具を操作具で遠隔操作する方法であって、
支持具は、支持対象物を支持するための台座と、台座と協働して支持対象物を包囲するための長尺のバンドと、支持対象物を包囲する位置でバンドをロックするロック部と、を備え、
操作具は、直状の竿と、該竿に設けられ、支持具を操作するための操作部を有する操作具本体と、を備えており、
被固定材に固定された支持具の台座に支持対象物を支持する工程と、
操作具の掛合部にバンドの被掛合部を掛合させる工程と、
竿を把持して操作具を操作し、支持対象物をバンドで取り囲み、バンドをロック位置に導入する工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の操作方法は、支持具を操作具で遠隔操作する方法であって、
支持具は、支持対象物を支持するための台座と、台座と協働して支持対象物を包囲するための長尺のバンドと、支持対象物を包囲する位置でバンドをロックするロック部と、を備え、
操作具は、長尺の竿と、該竿に設けられ、支持具を操作するための操作部を有する操作具本体と、を備えており、
被固定材に固定された支持具の台座に支持対象物を支持した状態で、竿を把持して操作具を操作し、操作部でロック部によるバンドのロックを解除することを特徴とする操作方法。
【0019】
請求項12に記載の操作方法は、支持具を操作具で遠隔操作する方法であって、
支持具は、支持対象物を支持するための台座と、台座と協働して支持対象物を包囲するための長尺のバンドと、支持対象物を包囲する位置でバンドをロックするロック部と、を備え、
操作具は、長尺の竿と、該竿に設けられ、支持具を操作するための操作部を有する操作具本体と、を備えており、
被固定材に固定された支持具の台座に支持対象物を支持するとともに支持具上で支持対象物を包囲した状態で、操作具の掛合部にバンドの被掛合部を掛合させる工程と、
バンドの被
掛合部に操作具の掛合部を掛合させてバンドを牽引することで、支持対象物を包囲する輪を縮小させて、支持対象物を支持
具へと結束する工程と、を含むことを特徴とする操作方法。
【0020】
請求項13に記載の操作具は、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の配設装置において支持対象物を支持する支持具を遠隔操作する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一形態によれば、操作具の長尺の竿を操作して支持具のバンド及びロック部を遠隔操作することに特徴を有する。すなわち、被固定材に固定されるとともに台座上に支持対象物を支持した支持具に対して、操作具の掛合部にバンドの被掛合部を掛合させて操作具でバンドを遠隔操作することで、支持対象物をバンドで取り囲み、バンドをロック位置に導入可能とした。特には、高所などの手が届かない位置で被固定材に取着された支持具上の支持対象物をバンドで包囲して台座に括り付ける場合、従来のように作業者が脚立を準備して高所で作業を行う必要性がなくなり、長尺の竿を把持してバンドを遠隔操作して括り付け作業を行うことが可能となった。したがって、本発明は、作業性及び安全性を大幅に改善するものである。
【0022】
本発明の一形態によれば、操作具の長尺の竿を操作して支持具のバンド及びロック部を遠隔操作することに特徴を有する。被固定材に固定されるとともに台座上に支持対象物を支持した支持具に対して、操作具の操作部によってロック部を遠隔操作することでロック部によるバンドのロックを解除可能とした。特には、高所などの手が届かない位置で被固定材に取着された支持具上で支持対象物を包囲するバンドのロックを解除する場合、従来のように作業者が脚立を準備して高所で作業を行う必要性がなくなり、長尺の竿を把持してロック部を遠隔操作してロック解除作業を行うことが可能となった。したがって、本発明は、作業性及び安全性を大幅に改善するものである。
【0023】
本発明の一形態によれば、操作具の長尺の竿を操作して支持具のバンド及びロック部を遠隔操作することに特徴を有する。被固定材に固定されるとともに台座上の支持対象物をバンドで包囲する支持具に対して、バンドの被掛合部に操作具の掛合部を掛合させ、遠隔位置からバンドを牽引操作することで、支持対象物を包囲する輪を縮小させて、支持対象物を支持
具へと結束可能とした。特には、高所などの手が届かない位置で被固定材に取着された支持具上の支持対象物を包囲するバンドの輪を縮めて支持対象物を台座に結束する場合、従来のように作業者が脚立を準備して高所で作業を行う必要性がなくなり、長尺の竿を把持してバンドを遠隔操作して結束作業を行うことが可能となった。したがって、本発明は、作業性及び安全性を大幅に改善するものである。
【0024】
本発明の別の特徴によれば、操作部を弾性片に押圧してロック爪をロック解除位置に弾性移動させてバンドのロックを解除可能である。すなわち、簡単な押圧操作でバンドのロックを解除することができる。
【0025】
本発明の別の特徴によれば、バンドの長手方向に複数形成された被係合歯がロック部のロック爪に係合するように構成されたことにより、バンドのロック位置をバンドの長尺方向に沿って変更することが可能である。これにより、支持対象物の大きさに対応してバンドで包囲又は結束することができる。
【0026】
本発明の別の特徴によれば、貫通部が、バンドが係止状態で貫通配置される収容部、及び、収容部に連通するとともにバンドの幅方向の側端を通過可能に開口した受入口を備える。すなわち、バンドを操作してバンド側端を貫通部の(貫通方向と異なる)側方から受入口に挿入することにより、収容部にバンドを容易に収容することが可能である。さらに、バンドが平板帯形状を有し、バンドの幅方向の端面側から貫通部内に挿入可能であることで、より一層バンドの操作が容易となる。
【0027】
本発明の別の特徴によれば、バンドが平板帯形状を有し、バンドの幅方向の側端面側から貫通部内に挿入可能であることで、より一層バンドの操作が容易となる。
【0028】
本発明の別の特徴によれば、バンドが幅方向に移動して収容部から抜け出ることを規制する離脱防止部が設けられていることにより、バンドをロック状態で貫通部内に安定して維持することができる。
【0029】
本発明の別の特徴によれば、ガイド部がバンドを収容部に対して傾斜させた姿勢で収容部内にガイドする。すなわち、バンドを受入口の手前側に捻って変形させ、バンド側端を台座の壁面に対して摺動させることで、受入口の位置を容易に探ってバンド側端を受入口に簡単に進入させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。また、本発明における上下左右の方向は、相対的な位置を示す概念にすぎず、これらを入れ替えて適用可能であることは言うまでもない。
【0032】
本発明の一実施形態の配設装置10は、支持具100と操作具150とからなる。まず、
図1乃至
図9を参照して、支持具100の構成と、該支持具100を取着した支持構造1について説明する。
【0033】
本発明の一実施形態の支持具100は、棒材である吊りボルトBに固定されて、支持対象物である配線・配管材P(具体的にはケーブル)を所定高さに保持するように構成されたものである。以下、
図1乃至
図4を参照して、本実施形態の支持具100の構成を詳細に説明する。
【0034】
図1(a),(b)は、本発明の一実施形態の支持具100の正面から見た斜視図、背面から見た斜視図である。
図2(a),(b)は、該支持具100の正面図及び背面図である。
図3(a),(b),(c),(d)は、該支持具100の平面図、左側面図、右側面図及び底面図である。
図4(a),(b),(c)は、支持具100の各箇所での断面図である。
【0035】
図1乃至4に示すとおり、本実施形態の支持具100は、正面視において、上方が開放した略コ字形状を有する。該支持具100は、被固定材である吊りボルトBに取着される固定部110、及び、支持対象物である配線・配管材Pを支持するための支持部120を備えてなる。
【0036】
固定部110は、支持部120が前面(右側面)111aに形成された基部111と、該基部111の後面(左側面)111bから突出して吊りボルトB(
図5参照)側部に当接する第1挟持部112と、吊りボルトBの軸方向において第1挟持部112とは異なる位置で基部111から突出し、第1挟持部112と協働して吊りボルトBを挟持する第2挟持部113と、第1挟持部112と相反する側で基部111の後面111bから突出するとともに、前記軸方向に沿って延在する側壁部114と、前記軸方向において基部111から離隔した位置に設けられ、吊りボルトBに対して支持部120と相反する方向から吊りボルトBに当接するフック部115と、を備える。
【0037】
基部111は、縦長の矩形平板状に形成され、支持部120側の前面111a及び吊りボルトB側の後面111bを有する。該基部111は、その平面が側方を向くように配置され、前面111aに支持部120が一体形成され、後面111bが吊りボルトBに当接するように構成されている。そして、支持部120を吊りボルトBに取着したとき、該基部111の長手方向(長辺方向)が、吊りボルトBの軸方向に合致する。また、該基部111の下端縁には、吊りボルトBの支持部120側の側面に当接して、支持具100の支持部120が吊りボルトBに対して下方に回動することを規制する規制部111cが設けられている。さらに、基部120の後面111bの上端には、テーパー面111dが設けられている。なお、この基部111の(吊りボルトBを挟んで)対向する箇所が開放されており、肉部が存在しない。
【0038】
第1挟持部112は、該基部111の長手方向の下端且つ幅方向の一方の側端(
図3(b)の右側)から後面111b側に略垂直に延設された突出片である。この第1挟持部112において、円弧状の挟圧面112aが内面に形成されている。該挟圧面112aには、吊りボルトBの螺旋状のネジ溝に対応したピッチで複数の突条が突設されている。また、第1挟持部112の先端には、幅方向外側(
図3(b)の右側)に広がって延びる正面視三角形状のガイド片112bが設けられている。このガイド片112bは、
図3(d)に示すように傾斜面を有し、吊りボルトBを第1挟持部112の内面の挟圧面112aにガイドするように機能する。なお、この第1挟持部112の(吊りボルトBを挟んで)対向する箇所が開放されており、肉部が存在しない。
【0039】
第2挟持部113は、該基部111の長手方向の下方で幅方向の他方の側端(
図3(b)の左側)から後面111b側に略垂直に延設された突出片である。該第2挟持部113は、基部111の長手方向(軸方向)において第1挟持部112と異なる位置で重複しないように延在している。より詳細には、第1挟持部112の上縁と第2挟持部113の下縁とが軸方向において僅かに離隔して互いに対面しないように、第1挟持部112及び第2挟持部113が段違いに配置されている。この第2挟持部113において、円弧状の挟圧面113aが内面に形成されている。該挟圧面113aには、吊りボルトBの螺旋状のネジ溝に対応したピッチで複数の突条が突設されている。なお、この第2挟持部113の(吊りボルトBを挟んで)対向する箇所が開放されており、肉部が存在しない。
【0040】
これら一対の挟持部(第1挟持部112及び第2挟持部113)の先端は、基部後面111b側(支持部120の反対側)に吊りボルトBを挿通可能に開け放たれ(又は、開口し)、幅方向において吊りボルトBを押し込み可能な間隔で離隔している。換言すると、挟持部先端の開口を介して吊りボルトBを基部111の正面(後面111b)から真っ直ぐ押し込むことで、(第1挟持部112及び第2挟持部113を幅方向の外側に撓ませて)これらの間に吊りボルトBを配置して挟持することが可能であるように、第1及び第2挟持部112,113の位置関係が定められている。そして、第1挟持部112及び第2挟持部113は、吊りボルトBの側面にその軸方向の異なる位置で両側からそれぞれ当接することにより、協働して吊りボルトBを挟持するように構成されている。
【0041】
側壁部114は、第2挟持部113の上側に連設され、該基部111の幅方向の他方の側端(
図3(b)の左側)から後面111b側に略垂直に延在している。つまり、該側壁部114の下端(一端)に第2挟持部113が一体的に形成されている。また、該側壁部114は、基部111の上縁を越えて軸方向の上方にさらに延在している。この側壁部114は、設置時に吊りボルトBの側面に当接可能であるが、第1挟持部112と協働して吊りボルトBを挟持するようには構成されていない。
【0042】
さらに、
図2(a),(b)に示すように、側壁部114の基部111よりも上側の部分において、側壁部114の基部111側の端縁(正面視の右端部)が傾斜し、傾斜辺114aが形成されている。この傾斜辺114aにより、側壁部114が正面視において上方ほど幅狭となっている。そして、側壁部114の上部の正面視左端部からフック部115が正面視手前側に向かって(基部111の幅方向に沿って)一体的に延び出ている。この側壁部114の(吊りボルトBを挟んで)対向する箇所が開放されており、肉部が存在しない。
【0043】
フック部115は、
図4(a)に示すとおり、軸方向において基部111と離隔して配置されており、側壁部114上部から固定部110上端まで軸方向に沿って延在している。該フック部115は、側壁部114に連結された(左)側面側の壁部と、基部111が延在する平面の対向面に延在する正面側の壁部とから構成される。より詳細には、該フック部115は、その基端で側壁部114上部に一体化され、且つ、吊りボルトBを挟んで基部111と相反する側の面で延在している。さらに、フック部115は、その先端が基部111(支持部120)側に向かうとともに支持部120側に開放したフック状に湾曲しており、側壁部114が延在する平面と対向する平面にまで延びている。そして、フック部115は、当接する吊りボルトBの外径に対応した円弧状の外面及び内面を有している。
【0044】
さらに、フック部115は、
図2(a)に示すとおり、その正面視(幅方向)の右側端縁が傾斜し、傾斜辺(又は傾斜面)115bが形成されている。この傾斜辺115bにより、フック部115が正面視において上方ほど幅広となっている。なお、後述するように、2つの同じ支持具100を吊りボルトBの同じ高さに対で取着したときに、側壁部114の傾斜辺114aとフック部115の傾斜辺115bとが組み合わさり、側壁部114とフック部115とが円筒形状を形成して吊りボルトBを包囲する。さらに、フック部115内面の傾斜面115bは、基部111のテーパー面111dとほぼ平行に対向している。そして、このフック部115の上端且つ(幅方向)先端には、
図3(a)に示すように外方(正面視手前)に広がって延びるガイド片115aが設けられている。このガイド片115aは、傾斜面を有し、吊りボルトBをフック部115の内面側にガイドするように機能する。このフック部115の(吊りボルトBを挟んで)対向する箇所が開放されており、肉部が存在しない。
【0045】
そして、基部111とフック部115との間には、吊りボルトBを遊挿可能な遊挿空間116が設けられている。この遊挿空間116は、基部111、側壁部114及びフック部115の間に定められる吊りボルトBを配置可能な空間である。該遊挿空間116において、吊りボルトBを遊挿状態で収容可能であるように、基部111上端とフック部115下端とが吊りボルトBの外径よりも離隔している。さらに、該吊りボルトBを遊挿空間116に支持具100の正面から導入することが可能であるように、フック部115の正面側の壁部が傾斜状に切り欠かれている(傾斜辺115bを形成する)。この遊挿空間116に吊りボルトBを導入して基部111を吊りボルトBに押し込むことで、第1挟持部112及び第2挟持部113の間に吊りボルトBを嵌挿して支持具100を吊りボルトBに取着することができる。なお、基部111上端にテーパー面111dが形成されていることにより、該遊挿空間116に吊りボルトBを導入するときに基部111上端に吊りボルトBが引っ掛かることが抑えられる。
【0046】
他方、支持部120は、支持対象物である配線・配管材Pを支持するための台座121と、固定端及び自由端を有し、配線・配管材Pに回されて該台座121に配線・配管材Pを結束するための長尺のバンド123と、該バンド123を挿通可能に台座121に貫通形成された貫通部125と、貫通部125に挿通したバンド123を長尺方向に脱抜防止に係止するロック部127と、を備える。
【0047】
台座121は、基部111に一体形成され、該基部111の前面111aから略垂直方向に延びる正面視略L字形状の支持腕である。該台座121は、正面視左右方向に延在し、配線・配管材Pを載置可能な載置部121aと、該載置部121aの先端で垂直に立設した立壁部121bとを備える。該載置部121aと立設部121bは、その内面において連続した緩やかな湾曲面を形成している。これにより、支持対象物が台座121上で滑らかに支持(又は載置)されるとともに、支持対象物が台座121から落下しないように規制される。さらに、台座121の基端側の正面及び背面には、縦方向に延びる凸条部129が設けられている。この凸条部129は、後述する操作具150の保持部155のレール溝に対応する。
【0048】
バンド123は、台座121の基端近傍で基部前面111aに固定され、該固定端から台座121の先端側に延びる長尺体である。バンド123は、少なくとも台座121の載置部121aの正面視左右の幅よりも長く形成され、その先端に自由端を有する。また、バンド123は、扁平な断面形状を有する平板帯体である。つまり、バンド123は幅広な平面と、相対的に幅狭な側端面とからなる。それ故、バンド123は、その長尺方向に撓み変形し易いが、その幅方向に撓み変形し難い。そして、バンド123は、捻れ変形可能であり、その一部又は全体の平面が捻れた傾斜姿勢をとることができる。なお、バンド123は、長尺方向において略L字状に屈曲した初期姿勢を有しており、長尺方向又は捻れ方向に弾性変形した後に初期姿勢に弾性復帰可能に構成されている。
【0049】
本実施形態では、該バンド123の上下の平面のうち台座121(又は支持対象物)に対向する側の面を裏面と定め、台座121の反対側を向いた面を表面と定める。このバンド123の表面には、その長尺方向に沿って並列する複数の被係合歯123aが設けられている。複数の被係合歯123aは、バンド123表面の中央近傍から先端近傍に亘って突設されており、長手方向に被係合部を形成している。各被係合歯123aは、長尺方向に沿った断面視(
図4(a)参照)において鋸歯形状を有し、バンド123基端側が表面から垂直に立設するとともにバンド123先端側が傾斜している。また、各被係合歯123aは、
図4(c)に示すように、バンド123の幅方向に沿って略矩形断面を有する。この被係合歯123aの略矩形断面において、被係合歯123a先端で片方の側端面がテーパー状に面取りされている。このテーパー部123bは、支持具100の背面側の側部に形成され、換言すると、後述の貫通部125の受入口125bに先に入る側の側端に形成されている。
【0050】
さらに、バンド123の先端には、その幅方向に沿ってバンド123の両縁からT字状に突出する被掛合部123cが設けられている。後述の操作具150に設けられた操作部156(掛合部156a)がこの被掛合部123cに掛合されて、バンド123が遠隔操作される。
【0051】
貫通部125は、台座121先端近傍において、正面視において上下に台座121を貫通するように形成されている。
図4(b)に示すとおり、貫通部125は、平面視において屈折した貫通路を形成する。つまり、貫通部125は、台座121の幅方向(平面視において台座121の延設方向と直交する方向)に沿って延びる直状のスリットと、該スリットに対して平面視左側に傾斜した傾斜路とを組み合わせてなる貫通路である。
【0052】
該貫通部125は、バンド123が係止状態で貫通配置される収容部125aと、該収容部125aに連通するとともにバンド123の幅方向の側端を受け入れ可能に開口した受入口125bと、該受入口125bを介してバンド123を収容部125aに対して傾斜させた姿勢で収容部125a内にガイドするガイド部125cと、収容部125aに収容されたバンド123の幅方向の側端面に対向し、バンド123が幅方向に移動して収容部125aから抜け出ることを規制する離脱防止部125dとを備える。次に貫通部125の各構成要素についてより詳細に説明する。
【0053】
収容部125aは、台座121の幅方向(正面視における前後方向)に沿って延びる直状のスリット(空隙)である。該収容部125aは、バンド123を収容可能な大きさで構成されている。該収容部125aの面積は、収容したバンド123のがたつきを抑えるべく、バンド123の横断面積とほぼ等しいことが好ましい。本実施形態では、収容部125aの横幅がバンド123の幅よりも僅かに大きく、その縦幅がバンド123の厚みよりも僅かに大きい。該収容部125aの正面視手前側が傾斜方向に開放され、正面視奥側が台座121の肉部によって閉塞されている。
【0054】
受入口125bは、傾斜路を介して収容部125aに連通するように、台座121正面に開口する縦方向に延びるスリットである。つまり、受入口125bは、台座121の長手方向(延設方向)に直交するように開口している。該受入口125bは、台座121の基端側の第1傾斜面125c1(ガイド部125c)と先端側の第2傾斜面125c2(ガイド部125c)との間に定められている。そして、該受入口125bは、バンド123の側端を正面からスライドさせて導入可能に構成されている。つまり、受入口125bは、台座121の肉部を縦方向に貫通(又は切断)し、バンド123の厚みよりも広く開口している。
【0055】
ガイド部125cは、台座121の基端側で受入口125bの外側(正面視前方)から内側(正面視後方)へと傾斜する第1傾斜面125c1と、台座121の先端側で該第1傾斜面125c1に対向して傾斜する第2傾斜面125c2とを有する。このガイド部125の傾斜面125c1,125c2の間に、平面視左下から右上へと延びる傾斜路が定められる。換言すると、ガイド部125cは、受入口125bの外側から収容部125aの側端に延びる傾斜路であり、バンド123を傾斜姿勢に変形させるとともに、バンド123の側端を受入口125b、収容部125a内へと導入するように機能する。すなわち、ガイド部125cは、バンド123表面が正面視手前を向くようにバンド123を捻り変形させ、バンド123を傾斜姿勢のままで支持部120正面から受入口125bを介して収容部125aへとガイドする。
【0056】
離脱防止部125dは、正面視手前側で受入口125bよりも台座121の先端側に形成され、正面視左右に延在する壁体である。
図3(d)及び
図4(b)に示すとおり、該離脱防止部125dは、収容部125aにロック状態で収容されたバンド123の幅方向の側端面に対向するように延在し、収容部125aを支持具100の正面から遮蔽する。該離脱防止部125dの側端面は、傾斜面に切り欠かれており、そこにガイド部125cの第2傾斜面125c2が定められている。すなわち、離脱防止部125dは、収容部125aに平行な姿勢で収容されたバンド123の側端面を係止して貫通部125から離脱することを規制し、他方、バンド123が捻られて傾斜姿勢をとるとバンド123を規制せずに離脱させるように機能する。
【0057】
ロック部127は、
図4(a)に示すように、台座121先端の立壁部121bに連設されており、受入口125b(収容部125a)よりも台座121の先端側に位置する。該ロック部127は、収容部125a側に延びるロック爪127aと、該ロック爪127aが設けられた長板状の弾性片127bとを備える。これらロック爪127a及び弾性片127bは、収容部125aに配置されたバンド123の表面に対向するように配置されている。
【0058】
ロック爪127aは、バンド123の被係合歯123aを係止可能な形状を有する。より具体的には、ロック爪127aは、その先端ほど下方に傾斜する上面と、弾性片127bに対して垂直な下面とを有する。つまり、このロック爪127aの傾斜面が鋸歯状の被係合歯123aの傾斜面に摺動可能であり、ロック爪127aの垂直面が被係合歯123aの垂直面に係合するように配置されている。これにより、ロック部127は、バンド123が貫通部125内をその長尺方向の先端側に移動することを許容し、該バンド123が貫通部125内をその長尺方向の基端側に移動することを規制する。
【0059】
弾性片127bは、その基端が台座121の立壁部121bに一体的に固定された固定端、及び、支持部120の下端から延び出る自由端を有する。該弾性片127bは、板状の弾性片であり、固定端を支点として台座121の長手方向(正面視左右)に弾性変形可能である。弾性片127bの初期位置では、ロック爪127aが収容部125aに入り込み、バンド123の被係合歯123aに係合し、ロック部127でバンド123がロックされる。他方、弾性片127bの弾性変形位置では、ロック爪127aが収容部125aから離脱する方向に弾性変形し、バンド123の被係合歯123aに係合せずに、ロック部127によるバンド123のロックが解除される。後述するとおり、ロック爪127aが傾斜したバンド123の側端面に押圧されることにより、弾性片127bが弾性変形位置に変形し、バンド123が収容部125aに収容されたとき、あるいは、バンド123が受入口125bから離脱したとき、初期位置に弾性復帰する。なお、後述の操作具150の操作部157(ロック解除部157b)で弾性片127bの支持部120の下端から延び出る自由端を操作することによっても、弾性片127bを弾性変形可能である。
【0060】
なお、本実施形態の支持具100は、合成樹脂を一体成形することで製造可能である。しかしながら、本発明の支持具は、これに限定されず、当業者であれば、その材質、製法等を適宜選択可能であり、例えば、金属材料等を採用してもよい
【0061】
図5は、本実施形態の支持具100を固定部110を介して吊りボルトBに取着したときの(a)概略正面図、(b)概略背面図である。
図5に示すとおり、固定部110の基部110が吊りボルトBに右側方から当接し、第1挟持部112が吊りボルトBに正面から当接し、第2挟持部113及び側壁部114がボルトBに背面から当接し、フック部115が吊りボルトBに左側方及び正面から当接している。このとき、第1挟持部112及び第2挟持部113が弾性的に吊りボルトBを(軸方向に異なる位置で)段違いに挟持するとともに、各挟圧面112a、113aの複数の突条が吊りボルトBのネジ溝に嵌合することにより、支持具100が吊りボルトBにしっかりと固定されている。また、
図5の取着構造では、支持部120に荷重がかかったときに、支持具110上端でフック部115が吊りボルトBの支持部120と反対側の側面に当接するとともに、支持具110の下端で規制部111aが吊りボルトBの支持部120側の側面に当接する。これにより、支持部1220への荷重により支持具110が下方に回動して吊りボルトBから外れることが効果的に規制されている。さらに、本実施形態では、支持具100の基部110、側壁部114及びフック部115と、吊りボルトB外面との間に有意な隙間が形成されることがない。このため、1つの支持具100を吊りボルトBに取着した場合においても、支持具100が吊りボルトBに対してがたつくことを抑えることができる。
【0062】
次に、本実施形態の支持具100を吊りボルトBの同じ高さに対で固定し、該一対の支持具100で支持対象物である配線・配管材Pを支持した支持構造1について、
図6乃至
図9を参照して説明する。
【0063】
図6は、支持構造1の概略正面図である。
図7は、その縦断面図である。
図8は、吊りボルトBの軸方向の各部分における端面図である。
図9は、貫通部125内でロックされたバンド123を示す部分断面図である。以下、説明の便宜上、他方の支持具及びその構成要素の符番の末尾に「’」を付す。例えば、一方の支持具を支持具100と示し、他方の支持具を支持具100’と示す。
【0064】
図6及び
図7に示すとおり、該支持構造1では、同一の2つの支持具100,100’が吊りボルトBの軸方向の同じ位置に、それぞれ固定部110,110’を介して取着されている。そして、これら一対の支持具100,100’は、吊りボルトBを中心に対称に配置されている。また、該支持構造1では、各支持具100,100’の支持部120,120’で複数の配線・配管材Pを保持している。これら複数の配線・配管材Pは、その長尺方向が台座121,121’の幅方向に沿うように配設されている。
【0065】
本実施形態の支持構造1において、支持具100,100’を吊りボルトBの軸方向の同位置に取着したときに、少なくとも基部111,111’、第1挟持部112,112’、第2挟持部113,113’及びフック部115,115’が互いに干渉することなく吊りボルトBを挟んで対向配置されている。
【0066】
より具体的には、
図8(a)に示すとおり、一方の支持具100の第1挟持部112の挟圧面112aが吊りボルトBに正面側から圧接し、その反対側において、他方の支持具100’の第1挟持部112’の挟圧面112a’が吊りボルトBに背面側から圧接している。また、一方の基部111が吊りボルトBに正面視右側方から当接し、その反対側において、他方の基部111’が吊りボルトBに正面視左側方から当接している。
【0067】
図8(b)に示すとおり、一方の支持具100の第2挟持部113の挟圧面113aが吊りボルトBに背面側から圧接し、その反対側において、他方の支持具100’の第2挟持部113’の挟圧面113a’が吊りボルトBに正面側から圧接している。また、一方の基部111が吊りボルトBに正面視右側方から当接し、その反対側において、他方の基部111’が吊りボルトBに正面視左側方から当接している。
【0068】
図8(c)に示すとおり、一方の支持具100の側壁部114が吊りボルトBに背面側から当接し、その反対側において、他方の支持具100’の側壁部114’が吊りボルトBに正面側から当接している。また、一方の基部111が吊りボルトBに正面視右側方から当接し、その反対側において、他方の基部111’が吊りボルトBに正面視左側方から当接している。
【0069】
図8(d)に示すとおり、一方の支持具100のフック部115が吊りボルトBに正面視左側方及び正面側から当接し、その反対側において、他方の支持具100’のフック部115’が吊りボルトBに正面視右側方及び背面側から当接している。また、一方の側壁部114が吊りボルトBに背面側から当接し、その反対側において、他方の支持具100’の側壁部114’が吊りボルトBに正面側から圧接している。そして、
図6の正面視において、一方のフック部115の傾斜片115bと他方の側壁部114’の傾斜片114a’が合致しており、逆もまた同様である。このように支持具100,100’が組み合わされている。
【0070】
図8(a)〜(d)に示したように、各部位が対向配置される位置における吊りボルトBの軸方向に水平な断面(端面)において、一方(又は他方)の支持具100の肉部が存在しない空間を他方(又は一方)の支持具100’の肉部が補完し、吊りボルトBの周囲を実質的(隙間を考慮せず)に包囲している。これにより、一対の支持具100、100’が協働して互いの吊りボルトBの固定強度を高め、堅牢な支持構造1が構築されている。
【0071】
さらに、支持構造1は、複数の配線・配管材Pを支持部120,120’の台座121,121’に保持している。より具体的には、配線・配管材Pが台座121,121’の載置部121a,121a’に配置された状態でバンド123,123’によって支持部120,120’に結束固定されている。つまり、一方の支持部120において、バンド123が台座121先端側で貫通部125を貫通することで、バンド123と台座121と基部111とで閉塞した輪を形成し、その輪の中に配線・配管材Pが保持されている。そして、バンド123がピンと張るまでバンド123先端が貫通部125の下端から延び出ており、バンド123裏面が配線・配管材P表面に圧接している。この状態でバンド123がロック部127でロックされることにより、配線・配管材Pが台座121に括り付けられている。
【0072】
図9(a)、(b)に示すとおり、バンド123が貫通部125の収容部125aを上下に貫通した状態でロック部127により脱抜不能な状態でロックされている。このロック部127は、バンド123が貫通部125内をその長尺方向の先端側に移動することを許容し、該バンド123が貫通部125内をその長尺方向の基端側に移動することを規制している。
【0073】
より詳細には、
図9(a)に示すように、ロック状態では、ロック部127の弾性片127bが初期位置(又は僅かに弾性変形した状態)にあり、ロック爪127aがバンド123の被係合歯123aの間に配置されている。このとき、ロック爪127aの垂直面と被係合歯123aの垂直面とが係合して、バンド123が上方に抜け出ることが規制されている。
【0074】
図9(b)に示すように、バンド123は、収容部125aに配置され、ロック爪127a先端及び収容部125aの内壁125a1に当接している。該収容部125aの内壁125a1は、台座121の幅方向(正面視前後方向)に延在している。そして、該収容部125aに収容されたバンド123は、内壁125a1に当接して、該バンド123の幅方向が台座121の幅方向を向くように、その姿勢が矯正されている。つまり、
図9(b)のロック状態では、バンド123が長尺方向に屈曲しているだけであり、その幅方向に捻れていない。この姿勢は、バンド123の初期姿勢と合致する。
【0075】
そして、バンド123の正面側の側端面が、離脱防止部125dの壁面に対向している。これにより、ロック(捻れていない)状態のバンド123が内壁125a1に沿って受入口125b側にスライドしたとしても、バンド123の側端面が離脱防止部125dの壁面に係止される。また、バンド123が捻れていない姿勢では、バンド123の貫通部125内での移動方向が(内壁125a1及びロック爪127aによって)幅方向に限定されるため、バンド123側端が傾斜路に進入することはない。すなわち、このロック状態において、バンド123は、貫通部125の受入口125bから不意に抜け出ることなく安定的に収容部125aに保持される。
【0076】
したがって、本実施形態の支持構造1では、一対の支持具100,100’が吊りボルトBに強固に固定されているとともに、複数の配線・配管材Pが支持部120,120’によって安定的に保持されている。
【0077】
本発明の一実施形態の操作具150は、支持具100を遠隔操作して吊りボルトBに取り付けるように構成されたものである。以下、
図10乃至
図12を参照して、本実施形態の操作具150の構成を詳細に説明する。
図10(a),(b)は、本発明の一実施形態の操作具150の正面から見た斜視図、背面から見た斜視図である。
図11(a),(b),(c)は、該操作具150の操作具本体151の正面図、右側面図及び平面図である。
図12(a),(b)は、操作具150のI−I、J−J断面図である。
【0078】
図10に示すとおり、操作具150は、操作具本体151と、該操作具本体151を支持する長尺の竿159とを備えてなる。竿159は、断面視円形の細長い直状の棒材からなり、その先端に操作具150を連結するものである。図示しないが、竿159の基端近傍には、使用者が把持するための把持部が設けられている。この竿159の長さは、支持具100が取り付けられる吊りボルトBの高さに応じて任意に設定される。なお、竿159は、伸縮可能な構造を有してもよい。
【0079】
図10乃至
図12に示すとおり、操作具本体151は、竿159先端が連結された連結部152と、該連結部152に角度調整部153を介して接続されたヘッド部154と、を備える。
【0080】
連結部152は、下端が開放した中空の円筒形状を有し、その内部に竿159を内挿可能に構成されている。そして、連結部152の下端に竿159先端を内挿した状態でビス孔152aを介してビスで固定されることにより、連結部152と竿159とが固定される。
【0081】
角度調整部153は、連結部152上端に設けられ、連結部152(又は竿159)とヘッド部154との角度を調整可能に接続するものである。
図12に示すとおり、角度調整部153の外周の中心に設けられた調整ネジ153aによって、ヘッド部154が角度調整部153に連結される。そして、角度調整部153は、平面視円形の外周を有し、その外周に沿ってヘッド部154を回動可能に接続する。すなわち、調整ネジ153aを中心軸としてヘッド部154が回動する。この調整ネジ153aを緩めると、ヘッド部154が回動可能となり連結部152に対して角度調整を行うことができる。他方、調整ネジ153aを締めるとヘッド部154が連結部152に対して回動不能に固定される。
【0082】
ヘッド部154は、該支持具100を遠隔操作して吊りボルトBに取り付けるべく、支持具100を保持可能な形状を有している。該ヘッド部154は、正面視奥側の後側板154aと、該後側板154aの反対側に位置する正面視手前側の前側板154bと、これら前後側板154a,154bを連結し、支持具100を載置するための載置面154cとを備える。そして、ヘッド部154は、これら側板154a,154b間に支持具100を収容可能な収容空間を有する。後側板154aは、正面視略U字(又はV字)形状を有し、支持具100の背面を被覆可能な大きさを有する。他方、前側板154bは、支持具100の台座121の一部を被覆する大きさしか有さない。そのため、ヘッド部154の収容空間は、正面側に大きく開放されている。このヘッド部154正面の開放部を支持具100が通過可能であり、ヘッド部154の正面側に支持具100を相対的にスライドさせることにより、操作具150の収容空間から支持具100を容易に離脱させることができる。
【0083】
また、ヘッド部154には、支持具100を脱落しないように着脱自在に保持するための保持部155、支持具100のフック部115外面を裏支えするための引掛補助部156、支持具100のバンド123を操作するための操作部157、及び、支持具100を保持部155に保持した状態で支持具100の支持部120とともに配線・配管材Pを下支えするように構成された受け部158が設けられている。
【0084】
保持部155は、後側板154a及び前側板154bに設けられ、縦方向に延びる対向する一対のレール溝として形成されている。保持部155の上端は、支持具100の被保持部としての凸条部129を受け入れ可能に開放されている。また、該保持部155は、その下端が閉塞されており、支持具100の凸条部129を下方から受けるように構成されている。そして、保持部155のレール溝内に支持具100の凸条部129が嵌まるように構成されている。つまり、保持部155は、支持具100の被保持部(凸条部129)を凹凸係合により保持するものである。そして、操作具150を支持具100に対して下方に移動させることで、凸条部129がスライドして保持部155から離脱するように構成されている(
図15(c)参照)。
【0085】
引掛補助部156は、後側板154aの片側(正面視左側)のU字先端近傍に形成されている。該引掛補助部156は、後側板154aから前側板154b側に略垂直に立設している。この引掛補助部156は、搭載した支持具100のフック部115に対応する位置に形成されている。また、引掛補助部156は、内面(U字内方)に湾曲面を有する。この湾曲面は、支持具100のフック部115の外面に合致する形状を有している。すなわち、操作具本体151に支持具100を保持して支持具100を吊りボルトBに取り付けるときに、引掛補助部156がフック部115外面を裏支えすることが可能である(
図15(a),(b)参照)。
【0086】
操作部157は、後側板154aの片側(正面視左側)のU字先端近傍で引掛補助部156の反対側(U字外方)に設けられている。この操作部157は、後側板154a先端から正面視左側に延びる掛合部157aを備える。掛合部157aは、一対の鉤爪として形成されている。すなわち、操作部157は、掛合部157aの鉤爪の間にバンド123の帯部分を収容し、バンド123の側方に延びる被掛合部123cを一対の鉤爪に掛合させるように構成されている(
図16参照)。
【0087】
また、操作部157は、その上端で開口したロック解除部157bを備える。該ロック解除部157bは、支持具100のロック部127の弾性片127bに係合可能に形成されておる。すなわち、ロック解除部157bの溝内に、台座121の下方に突出する弾性片127b下端を嵌め込み、台座121先端側に弾性片127bを傾動させることにより、ロック爪127aをバンドの被係合歯123aから離脱させ、ロック解除操作することが可能である(
図19参照)。
【0088】
すなわち、本実施形態の操作具150は、バンド123先端の被掛合部123cに掛合部157aを掛合させ、又は、ロック部127の弾性片127bにロック解除部157bを当接させるように、操作部157でバンド123を遠隔操作することにより、バンド123の括り付け作業(
図16(b)参照)、バンド123の結束作業(
図16(c)参照)及び/又はバンド123のロック解除作業(
図19参照)を遠隔位置(例えば、地表)から行うことが可能である。
【0089】
受け部158は、U字形状の後側板154aの基底部に設けられた上方を向いた湾曲面である。この受け部158は、搭載した支持具100の載置部121aに対応する位置に形成されているとともに該載置部121a上面に対応する形状を有している。すなわち、操作具本体151に支持具100を保持して支持具100を吊りボルトBに取り付けるときに、受け部158と載置部121aが協働して支持対象物(配線・配管材P)を下支えすることが可能である(
図18参照)。
【0090】
なお、本実施形態の操作具本体151及び竿159は、合成樹脂を一体成形することで製造可能である。しかしながら、本発明の操作具は、これに限定されず、当業者であれば、その材質、製法等を適宜選択可能であり、例えば、金属材料等を採用してもよい。
【0091】
図13は、本実施形態の操作具150に支持具100を搭載した配設装置10の斜視図である。配設装置10は、支持対象物である配線・配管材Pを吊りボルトB(被固定材)に対して配設する作業に用いられる装置である。
図13に示すとおり、支持具100の台座121が操作具150の載置面154cに載置され、一対の側板154a,154b間の収容空間に支持具100が収容されている。より詳細には、取着部150の保持部155の一対のレール溝内に支持具100の一対の凸条部(被保持部)129が配置されている。これにより、載置部121aを鉛直上方に向けた姿勢で支持具100が抜け落ちないように操作具150に保持されている。また、該配設装置10では、支持具100のフック部115外面が操作具150の引掛補助部156内面に当接している。そして、支持具100の載置部121aが、協働して支持対象物(配線・配管材P)を下支え可能であるように、受け部158上に配置されている。さらに、配設装置10では、正面視において、正面側の前側板154bと引掛補助部156とが離隔しており、その間に正面から吊りボルトBを遊挿可能である。すなわち、支持具100と操作具150とを組み合わせた状態で、操作具150の肉部が支持具100の遊挿空間116に干渉しないように構成されている。
【0092】
図14は、該配設装置10の分解斜視図である。
図14に示すとおり、操作具150のヘッド部154、連結部152(操作具本体151)及び竿159が別体として形成され、これらがビス等で固定される。そして、支持具100の凸条部129が操作具150の保持部155のレール溝内を摺動するように、支持具100を操作具150に対して上方から下方向にスライドさせることにより、支持具100と操作具150とを組み合わせることができる。なお、支持具100は操作具150上に乗っているだけなので、支持具100を上方にスライドさせることにより、両者を簡単に分離することができる。
【0093】
次に、
図15乃至
図18を参照して、配設装置10を使用して支持構造1を構築するまでの一連の工程を詳細に説明する。なお、本工程において、支持具100が吊りボルトBの高所に取り付けられることを前提とする。
【0094】
まず、吊りボルトBの配線・配管材P(支持対象物)を支持する位置を決定し、その位置に基づいて吊りボルトBに支持具100を取着する位置を定める。この吊りボルトBの取着位置に対して、竿159を把持しながら、その先端に保持された支持具100を近づける。次いで、
図15(a)に示すとおり、竿159を鉛直方向から傾斜させるように支持具100を遠隔操作しつつ、支持具100の側壁部114(及び操作具150の後側板154a)を吊りボルトBの背面側に配置する。そして、基部111の長手方向(竿159の軸方向)と吊りボルトBの軸方向とを傾斜(交差)させた状態で該吊りボルトBを遊挿空間116に支持具100及び操作具150の正面から導入する。このとき、側壁部114の内面に吊りボルトBを当接させ、支持具100を吊りボルトBの軸方向に沿って摺動させて取着位置(高さ)の調整を行ってもよい。
【0095】
次に、傾斜姿勢の竿150を吊りボルトBに対して平行となる方向に傾動させて、遊挿空間116内で固定部110を傾動させる。すなわち、第1挟持部112及び第2挟持部113の先端を吊りボルトBに(正面視右側の)側方から当接させるとともに、フック部115を吊りボルトBに引っ掛けるようにフック部115の内面を吊りボルトBにその反対側の(正面視左側の)側方から当接させる。このとき、第1挟持部112のガイド片112bと、フック部115のガイド片115aとが吊りボルトBを当該位置にガイドする。
【0096】
次いで、
図15(b)に示すとおり、竿159が吊りボルトBに対して平行な姿勢(鉛直方向に沿った姿勢)をとるようにフック部115を支点として竿159を回動(傾動)操作し、支持具100に吊りボルトB側へ直線的な力を加えて、基部111を吊りボルトBに対して側方から押し付ける。このとき、操作具150の保持部155によって支持具100の凸条部129が吊りボルトB側に押圧されるように力が伝達される。なお、被保持部である凸条部129が挟持部112,113近傍に設けられていることにより、保持部155で挟持部112,113の近い位置に力を加えることができ、竿159の傾動操作による力が支持具100に伝わり易い。
【0097】
そして、支持具100上端に位置するフック部115を支点として、該フック部115を引掛補助部156が裏支えしつつ、該支持具100下端近傍の第1挟持部112及び第2挟持部113が吊りボルトB側に回動する。なお、竿159の傾動操作に伴い、引掛補助部156がフック部115を吊りボルトBに対して押圧するため、フック部115と吊りボルトBとの当接がより確実なものとなり、支持具100を吊りボルトBにより確実に取着することができる。その結果、第1挟持部112及び第2挟持部113が弾性変形して吊りボルトBをその間に受け入れる。このとき、フック部115を支点として挟持部112,113が回動するため、その取付位置が吊りボルトBの軸方向にずれることが抑えられる。こうして、支持具100を遠隔操作して吊りボルトBの所定高さに取着することができる。
【0098】
続いて、
図15(c)に示すとおり、竿159を垂直下方にスライドさせることで、吊りボルトBに取着された支持具100から操作具150(保持部155)を分離する。そして、引掛補助部156と前側板154bとの間の前面開口に吊りボルトBを通すことにより、吊りボルトBから操作具150を離脱させる。
【0099】
さらに、配設装置10を同様に操作することにより、一方の支持具100が取着された吊りボルトBに対して、該吊りボルトBの軸方向の同じ位置に他方の支持具100’を取着することができる。なお、固定部110、110’の各構成要素の対向する箇所が開放されており、肉部が存在しない。そのため、一方の支持具100と他方の支持具100’を組み合わせて吊りボルトBに取着したときに、各構成要素を互いに干渉させずに吊りボルトBを挟んで対向配置させることが可能である。
【0100】
このように一対の支持具100,100’を吊りボルトBに取着した後、支持対象物である配線・配管材Pを支持部120,120’に配置して結束することにより、支持構造1を構築することができる。
図16及び
図17を参照して、この配線・配管材Pを支持部120に結束する工程を説明する。なお、説明の便宜上、
図16は、一方の支持具100のみを吊りボルトBに取着したものである。
【0101】
まず、操作具150の受け部158上に複数の配線・配管材Pを束ねて載置したまま所定高さに持ち上げて、竿159を操作して、配線・配管材Pを支持部120の台座121上の載置面121aに載置する。そして、
図16(a)に示すとおり、操作具150の竿159を操作して、バンド123先端の被掛合部123cに対して操作部157の掛合部157aを引っ掛ける。そのまま、竿159でバンド123の被掛合部123cを遠隔操作して、支持具100の正面視手前側に屈曲させ、受入口125bの手前付近にバンド123を配置する。
【0102】
そして、
図16(b)に示すとおり、バンド123を遠隔操作しながら、バンド123の側端を正面視手前から受入口125bを介して傾斜姿勢で収容部125aに進入させ、貫通部125にバンド123を貫通配置する。この工程について、
図17(a)〜(d)を参照して、より詳細に説明する。
【0103】
まず、
図17(a)に示すように、操作具150の操作部157によって、支持具100の正面視手前側に屈曲させたバンド123を受入口125bの手前付近に配置する。そして、バンド123を台座121先端の正面側壁(離脱防止部125dの外壁面)に対して台座121基端側に摺動させるように操作すると、バンド123側端を受入口125bの端縁まで簡単に導くことができる(
図17(b)参照)。このとき、バンド123に設けられたテーパー部123bにより、バンド123側端が受入口125bの端縁に引っ掛かることがないため、バンド123が滑らかに受入口125bに進入する。すなわち、バンド123を受入口125bの手前側に捻って変形させ、バンド123側端を台座121の側面に対して摺動させることで、受入口125bの位置を容易に探ってバンド123側端を受入口125bに簡単に進入させることができる。
【0104】
そして、バンド123裏面をガイド部125cの(正面側に臨む)第1傾斜面125c1に当接させた状態で、バンド123を受入口125b内に進入させる。このとき、バンド123裏面がガイド部125cの第1傾斜面125c1に当接するか、又は、バンド123表面がガイド部125cの第2傾斜面125c2に当接することにより、バンド123の表面(被係合歯123a)が正面を向く方向に捻られて傾斜姿勢をとる。このとき、竿157がその軸を中心に若干回転する。この傾斜姿勢のまま、バンド123側端をガイド部125cに沿って収容部125aに進入させると、バンド123の側端面(又はテーパー部123b)がロック爪127aの先端に当接する。さらに、ガイド部125cに沿って傾斜方向に力を加えてバンド123を操作すると、
図17(c)に示すように、弾性片127bが弾性変形することでロック爪127aが後退して、バンド123が収容部125aに通過可能となる。そのまま、バンド123をガイド部125cに沿って傾斜姿勢で押し込むことで、ロック爪127aを後退させつつ、バンド123を収容部125aに配置することができる。そして、
図17(d)に示すとおり、収容部125aに配置されたバンド123が傾斜姿勢から元の姿勢に復帰するとともに弾性片127bが初期位置に弾性復帰することで、ロック爪127aと被係合歯123aとが係合する。その結果、バンド123は、貫通部125を貫通した状態でロック部127によって脱抜防止にロックされる。
【0105】
続いて、
図16(c)に示すとおり、掛合部157aが被掛合部123cに係合した状態で、竿159を引き下げて、貫通部125を貫通するバンド123を長尺方向の先端側に強く引っ張ることにより、バンド123が貫通部125内を下方に進行し、配線・配管材Pを包囲する輪を縮めて、配線・配管材Pを支持部120に強く結束することができる。より詳細には、ロック状態でバンド123を下方(長尺方向の先端側)に移動させると、被係合歯123aの傾斜面がロック爪127aの傾斜面に対して摺動すると同時に弾性片127bが後方に弾性変形して、ロック爪127aが被係合歯123aを乗り越え、バンド123先端を長尺方向に進行させることができる。
【0106】
以上の工程を経て、支持構造1を構築することができる。しかしながら、支持構造1を構築する工程は、上記工程に限定されることはない。
【0107】
例えば、
図18に示すように、支持具100,100’の支持部120,120’に配線・配管材Pを予め結束した上で、支持具100,100’を吊りボルトBに取着してもよい。このような長尺の配線・配管材Pを保持したままでも上記工程と同様の操作で支持具100を吊りボルトBに簡単に取着することができる。すなわち、配線・配管材Pを支持部120に括り付けた状態の支持具100を吊りボルトBに取着する際、竿159を吊りボルトBに平行な姿勢に傾動させることで、支持具100が配線・配管材Pの長手方向に傾斜することなく、支持具100が吊りボルトBに直線的に押圧される。そのため、配線・配管材Pを局所的にほとんど屈曲又は捻転させずに、配線・配管材Pを保持したまま、取着操作を行うことができる。また、
図18に示すとおり、本実施形態では、ヘッド部154に受け部158が設けられているので、該受け部154が載置部121aを下支えする。すなわち、操作具150の受け部158と支持具100の載置部121aとで協働して配線・配管材Pを支持することができる。これにより、このような配線・配管材Pを支持部120に括り付けた状態の支持具100であっても、支持具100及び配線・配管材Pを高所まで持ち上げて安定した取着作業を行うことが可能である。なお、受け部は、載置部を介さずに直接的に支持対象物を支持するように構成されてもよい。
【0108】
次に、本配設装置10を用いて支持構造1を解体する工程を説明する。
【0109】
まず、配線・配管材Pのバンド123による結束を解くには、
図16(a)〜(c)で説明した工程を逆に行えばよい。より具体的には、操作具150の竿159を操作して、バンド123先端の被掛合部123cに対して操作部157の掛合部157aを引っ掛ける。そのまま、竿159をその軸を中心に回転させ、ロック状態のバンド123をその表面が正面視手前を向くように捻って、バンド123側端でロック爪127aを押圧して弾性片127bを弾性変形させて後退させる。この傾斜姿勢のまま、ガイド部125に沿ってバンド123側端を受入口125b側にスライドさせることにより、バンド123を貫通部125から引き出して、配線・配管材Pの結束を解除することができる。
【0110】
このロック解除操作は、
図19に示すように、操作具150の操作部157のロック解除部157bを用いてもよい。
図19(a)に示すとおり、竿159を操作してロック解除部157bの溝をロック部127の弾性片127bの突出部分に近接させる。そして、ロック解除部157bの溝内に弾性片127bを挿入(把持)した状態で、竿159を操作して操作部157を後方に傾動させることにより、弾性片127bを台座121先端側に押圧し、弾性片127bが後方に弾性変形してロック爪127aが弾性移動する。その結果、
図19(b)に示すとおり、ロック爪127aがバンド123の係合歯123aから離脱してロック部127によるロックが解除される。このようにロック解除した状態で、操作部157で被掛合部123cをさらに操作することにより、バンド123を貫通部125から簡単に離脱させることができる。
【0111】
このように配線・配管材Pの支持部120への結束を解除した状態で、竿159を操作して配線・配管材Pを受け部158によって持ち上げて地面に下ろすことができる。
【0112】
そして、吊りボルトBから支持具100を取り外すには、
図15の逆の操作を行えばよい。より具体的には、操作具150を支持具100に近接させるように垂直上方に移動させて、支持具100の凸条部129を保持部155のレール溝に嵌め込む。そして、垂直姿勢の竿159を、その基端が吊りボルトBから離隔する方向に傾動させて、吊りボルトBから離隔する方向に直線的な力を固定部110に対して加えることにより、第1挟持部112及び第2挟持部113の間から吊りボルトBを引き抜いて、簡単に離脱させることができる。
【0113】
なお、上述した取着具150による支持具100の遠隔操作は、鉛直方向に延びる吊りボルトBの高所に限定されず、状況に応じて応用可能である。例えば、作業者の手の届かない水平方向に離隔した吊りボルトB(被固定材)に支持具100を取着する場合、角度調整部153を介して、竿159(連結部151)とヘッド部154とを
図10の基本姿勢から90度回動させて固定する。そして、竿159を水平方向に保持して、ヘッド部154によって鉛直に保持された支持具100を吊りボルトBに対して取着することができる。より詳細には、竿159の基端が上がるように竿159を吊りボルトBに対して傾斜させて、遊挿空間116に吊りボルトBを導入し、竿159を水平方向に傾動させることにより、支持具100を吊りボルトBに対して取着することができる。また、ヘッド部154を屈折させた状態で操作部157を操作することで、水平方向に離隔したバンド123の操作も同様に行うことができる。
【0114】
以下、本発明に係る一実施形態の配設装置10(及び操作具150)における作用効果について説明する。
【0115】
本実施形態の配設装置10(及び操作具150)は、操作具150の長尺の竿159を操作して、吊りボルトBに固定された取着具150のバンド123及びロック部127を遠隔操作することにその特徴(技術的意義)を有する。すなわち、本配設装置10は、バンド123で支持部120上の配線・配管材Pを包囲するとともにバンド123を貫通部125内でロックする括り付け作業、バンド123先端を貫通部125内で前進させてバンド123で配線・配管材Pを台座121に結束する結束作業、及び/又は、バンド123による配線・配管材Pの包囲又は結束を解くべく、ロック部127によるバンド123のロック解除作業を遠隔操作にて行うことを可能とする。これにより、従来のように作業者が脚立を準備して高所で作業を行う必要性がなくなり、配線・配管材Pの配設作業における作業性及び安全性を大幅に改善するものである。
【0116】
第1に、吊りボルトBに固定されるとともに台座121上に配線・配管材Pを支持した支持具100に対して、操作具150の掛合部157にバンド123の被掛合部123cを掛合させて操作具150を操作することで、竿159を介した遠隔位置からバンド123を貫通部125内に挿入するとともに配線・配管材Pをバンド123で取り囲み、バンド123を貫通部125内のロック位置に導入可能とした。これにより、高所などの手が届かない位置で吊りボルトBに取着された支持具100上の配線・配管材Pをバンド123で包囲して台座121に括り付ける場合、作業者は遠隔位置(例えば、地表)から長尺の竿159を把持してバンド123を遠隔操作可能となり、括り付け作業が容易となった。
【0117】
第2に、吊りボルトBに固定されるとともに台座121上に配線・配管材Pを支持した支持具100に対して、操作具150のロック解除部157b(操作部)でロック部127の弾性片127bを遠隔位置から押圧操作することにより、ロック爪127aを弾性移動させて被係合歯123aから離脱させ、ロック部127によるバンド123のロックを解除可能とした。これにより、高所などの手が届かない位置で吊りボルトBに取着された支持具100上で配線・配管材Pを包囲するバンド123のロックを解除する場合、作業者が遠隔位置(例えば、地表)から長尺の竿159を把持してロック部127を遠隔操作可能となり、ロック解除作業が容易となった。
【0118】
第3に、吊りボルトBに固定されるとともに台座121上の配線・配管材Pをバンド123で包囲する支持具100に対して、バンド123の被掛合部123cに操作具150の掛合部157aを掛合させてバンド123を牽引することで、バンド123を貫通部125内で前進させ、配線・配管材Pを包囲する輪を縮小させて、配線・配管材Pを支持部120へと結束可能とした。これにより、高所などの手が届かない位置で吊りボルトBに取着された支持具100上の吊りボルトBを包囲するバンド123の輪を縮めて配線・配管材Pを台座121に結束する場合、作業者が遠隔位置(例えば、地表)から長尺の竿159を把持してバンド123を遠隔操作可能となり、結束作業が容易となった。
【0119】
本実施形態の配設装置10は、上記3つの作用効果を全て発揮できるように構成されている。しかしながら、本発明の配設装置は、上記3つの作用効果のうち少なくとも1つの作用効果を発揮できるように構成されていればよい。
【0120】
さらに本実施形態の配設装置10によれば、支持具100において、バンド123の側端を貫通部125の貫通方向と異なる側方(つまり、台座121正面)から受入口125bに挿入することにより、収容部125aにバンド123を簡単に収容することが可能である。すなわち、扁平なバンド123を受入口125bの手前側に捻って変形させ、バンド123の側端を台座121の壁面に対して摺動させることで、受入口125bの位置を容易に探ってバンド123の側端を受入口125bに簡単に進入させることができる。このとき、被係合歯123aの側端面のうちの受入口125bに先に入る側がテーパー状に面取りされていることにより、バンド123側端を受入口125bに進入させるときに、被係合歯123aの側端が受入口125bの端縁に当接して引っ掛かることを抑える。すなわち、本配設装置10は、バンド123の遠隔操作において、バンド123を貫通部125内により滑らかに配置することが可能であり、良好な操作感を提供する。
【0121】
そして、受入口125bに進入させたバンド123を収容部125a側に移動させると、貫通部125内に傾斜路を形成するガイド部125cがバンド123を傾斜姿勢で収容部125a内にガイドする。つまり、捻られて受入口125bに進入したバンド123が収容部125aに対して傾斜した姿勢のままでガイド部125cを通過して収容部125a内へ収容される。当該収容部125aに収容されたバンド123は、元の姿勢に復帰し、ロック部127によってバンド123の貫通部125の貫通方向の移動が規制されるとともに、その幅方向への移動が離脱防止部125dによって規制される。すなわち、ロック状態では、バンド123が長尺方向に移動して貫通部125から抜け出ないよう保持され、尚且つ、バンド123の側端が貫通部125の収容部125aから側方に抜け出ないよう保持される。なお、バンド123が扁平な断面を有するため、収容部125a内で元の姿勢に復帰したバンド123を人為的に捻らない限り、貫通部125から側方に簡単に抜け出ることがない。これにより、支持対象物である配線・配管材Pがバンド123で安定的に台座121に保持及び/又は結束される。したがって、本実施形態の配設装置10は、竿159を操作してバンド123で支持対象物を簡単且つ迅速に括り付けることが可能であり、支持対象物の保持における作業性と安定性とを両立するものである。
【0122】
(変形例)
本発明の配設装置及び/又は操作具は、上記実施形態に限定されず、例えば、以下のように変形可能である。特には、本発明は、操作具の長尺の竿を操作して、被固定材に固定された取着具のバンド及びロック部を遠隔操作することにその特徴(技術的意義)を有する。その故、上記実施形態は、その一例を示しているにすぎず、本技術的思想を利用するものであれば、本発明の技術的範囲に含まれる。なお、図示の変形例において、一実施形態と共通する構成要素の説明を省略するが、3桁で示した要素のうち下二桁の符号が共通する部材は、一般的に同様又は類似する部材を意味する。
【0123】
(1)上記実施形態では、被固定材が吊りボルトであるが、本発明はこれに限定されない。例えば、被固定材は、壁材や造営材であってもよい。
【0124】
(2)上記実施形態では、支持対象物が配線・配管材Pのような長尺材であるが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明の支持対象物は、被固定材に対して支持具で支持される用途があれば如何なるものであってもよく、例えば、継ぎ手などであってもよい。
【0125】
(3)本発明の固定部は、上記実施形態に限定されない。例えば、
図20(a)に示す支持具200は、造営材に釘で固定される固定部210と、一実施形態と同様の支持部220とを備えている。すなわち、本発明の固定部は、当業者が想定し得る限り、その用途や環境に応じて任意に変更可能である。
【0126】
(4)上記実施形態では、台座が腕(アーム)状に形成されているが、本発明の台座はこれに限定されず、支持対象物の形態によって種々の形態や形状を取り得る。例えば、
図20(b)の支持部300のように固定部310と支持部320とが一体的になったものでもよい。この場合、台座321が梁等の被固定材にビスで固定され、該台座321にバンド323を介して支持対象物Pが結束される。
【0127】
(5)上記実施形態では、配設装置の操作具は、支持具の保持、バンドの括り付け(ロック)作業、結束作業、及び、ロック解除操作の全てを実施可能に構成されている。しかしながら、本発明の配設装置(操作具)は、これら全ての機能を一体に有していなくてもよい。すなわち、本発明の配設装置(操作具)は、括り付け作業、結束作業、及び、ロック解除操作のいずれか1つのみを実行可能に構成されたものであってもよい。例えば、
図21(a)示した本発明の別実施形態の操作具450は、操作部457として一対の鉤爪状の掛合部457aのみを有し、保持部やロック解除部などを備えていない。あるいは、
図21(b)に示した本発明の別実施形態の操作具550は、操作部557としてロック解除部557bのみを有し、保持部や掛合部などを備えていない。
【0128】
(6)上記実施形態では、貫通部がその貫通方向と異なる方向に開口した受入口を備えているが、本発明の配設体の支持具において、貫通部に受入口を形成しなくてもよい。つまり、貫通部がその貫通方向にしか開口していない場合であっても、操作具を操作してバンドを貫通部内に貫通させることが可能である。例えば、
図22に示した本発明の別実施形態の配設装置60は、支持具600と、操作具650とからなる。この支持具600では、台座621を貫通部625が上下に貫通するように形成されている。該貫通部625には、ロック部627及び収容部(図示せず)が設けられているが、受入口が存在しない。また、バンド623には、被係合歯623aに加えて、その中央近傍及び先端近傍に孔状の被掛合部623c1,623c2が穿設されている。他方、操作具650は、操作部657として、先端が尖った鉤爪状の掛合部657を備えるが、ロック解除部や保持部等の構成が省略されている。
図22(a)に示すとおり、竿659を操作して、略中央の孔(被掛合部623c1)に掛合部657aの先端を通して掛合させ、バンド623先端を貫通部625の上方開口に通すように押し下げることにより、遠隔位置からバンド623を操作して支持対象物(図示略)を支持部620に括り付けることができる。さらに、
図22(b)に示すとおり、竿659を操作して、バンド623先端の孔(被掛合部623c2)に掛合部657aを掛合させて、バンド623先端を引き下げることにより、バンド623を締めて台座621に支持対象物を結束することができる。
【0129】
(7)本発明のロック部の形態は、上記実施形態の形態に限定されず、当業者であれば任意に選択可能である。例えば、ロック部は、電気式の駆動機構を有し、支持具表面に配置されたスイッチによってバンドのロック及びロック解除の制御を行うものであってもよい。このような場合、操作具の操作部(ロック解除部)は、該スイッチ(例えば、押しボタン)を操作(例えば、押圧操作)可能な形状を有して構成される。すなわち、本発明の支持具のロック部及び操作具の操作部は、当業者が考え得る限り、任意に選択可能である。
【0130】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。