(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記雨水・塵埃排出ボックスは、上側に位置して前記内部通気口が設けられた垂直面と、該垂直面の下端から前記下部位置にある前記開口に向けて下方に傾斜した前記排出案内面とが備えられていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0013】
まず、
図1ないし
図7は本発明の第1の実施の形態を示している。
図1、
図2において、油圧ショベル1は、クローラ式の建設機械を構成している。油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載され、該下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置4とを含んで構成されている。
【0014】
旋回フレーム5は、上部旋回体3の一部となる車体フレームを構成するもので、支持構造体として形成されている。旋回フレーム5は、
図3に示す如く、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板5Aと、該底板5A上に立設され、左,右方向の中央寄り位置に所定の間隔をもって前,後方向に延びて立設された左縦板5B,右縦板5Cと、前記底板5A、各縦板5B,5Cから左,右方向の外側に向けて張出した複数本の張出しビーム5Dと、前記各縦板5B,5Cの左,右に間隔をもって前,後方向に延び、前記各張出しビーム5Dの先端部に取付けられた左サイドフレーム5E,右サイドフレーム5Fと、前記底板5A、右縦板5Cの後側に設けられた例えば4個のエンジンブラケット5Gと、前記底板5Aと各サイドフレーム5E,5Fとの間に設けられた複数枚のアンダカバー5Hとにより構成されている。
図2に示すように、左,右の縦板5B,5Cの前側には、作業装置4が俯仰動可能に取付けられている。
【0015】
キャブ6は、旋回フレーム5の左前側に搭載され、該キャブ6は、上,下方向に延びるボックス体として形成されている。キャブ6は、オペレータが搭乗するもので、内部にはオペレータが着座する運転席、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー等(いずれも図示せず)が配設されている。
【0016】
カウンタウエイト7は、旋回フレーム5の後側に設けられている。このカウンタウエイト7は、作業装置4との重量バランスをとるもので、後面側が円弧状をした重量物として形成されている。
【0017】
図3に示すように、エンジン8は、カウンタウエイト7の前側に位置して旋回フレーム5上に搭載されている。このエンジン8は、左,右方向に延びる横置き状態に設けられ、その左側には外部から冷却風を吸込むための冷却ファン8Aが設けられている。さらに、エンジン8は、排気ガスを排出するための排気管8Bが後述する排気ガス後処理装置11に接続されている。そして、エンジン8は、防振マウント8Cを介して旋回フレーム5の各エンジンブラケット5Gに取付けられている。
【0018】
冷却ファン8Aは、エンジン8を動力源として回転駆動されることにより、後述する左側面ドア16の吸気口16Aから機械室15内に外気を吸込み、この外気を冷却風として後述の熱交換装置10に供給するものである。なお、冷却ファンは、エンジンと別個に設け、電動モータ等で回転駆動することもできる。
【0019】
油圧ポンプ9は、エンジン8の長さ方向の一方、即ち、エンジン8の右側に設けられている。この油圧ポンプ9は、下部走行体2、作業装置4等に設けられた各油圧アクチュエータを動作させるための圧油(作動油)を吐出するものである。
【0020】
熱交換装置10は、エンジン8の長さ方向の他方、即ち、エンジン8の左側に位置し、冷却ファン8Aと対面して旋回フレーム5上に設けられている。この熱交換装置10は、例えばラジエータ、オイルクーラ等を冷却風の流れ方向に対して並列、即ち、旋回フレーム5の前,後方向に並べて配置することにより構成されている。熱交換装置10は、冷却ファン8Aにより取込まれた外気(冷却風)により、エンジン冷却水、作動油等の流体を冷却するものである。
【0021】
ここで、熱交換装置10は、前述したように、ラジエータ、オイルクーラ等を冷却風の流れ方向に対して並列に配置しているから、冷却風を受ける面積を確保するために、上,下方向に長尺に形成されている。
【0022】
排気ガス後処理装置11は、エンジン8の右側となる油圧ポンプ9の上方に設けられている。排気ガス後処理装置11は、エンジン8から排出される排気ガス中の有害物質を除去すると共に、排気ガスの騒音を低減するものである。排気ガス後処理装置11は、エンジン8側に位置して旋回フレーム5の前,後方向に延びる円筒容器状の第1の筒状ケース11Aと、該第1の筒状ケース11Aの下流側に連通しつつ、該筒状ケース11Aとほぼ平行に延びた接続管11Bと、前記第1の筒状ケース11Aの右下位置に隣接して配置され、上流側が前記接続管11Bに接続された円筒容器状の第2の筒状ケース11Cと、前記各ケース11A,11C等に設けられた処理装置本体(図示せず)とにより構成されている。
【0023】
第1の筒状ケース11Aの上流側は、エンジン8の排気管8Bに接続されている。一方、第2の筒状ケース11Cの下流側には、出口管11Dが上向きに突出して設けられている。この出口管11Dは、後述する後処理装置用カバー部材21の外側カバー23に設けられる尾管26に接続される。
【0024】
ここで、各ケース11A,11C等に設けられた処理装置本体について説明すると、この処理装置本体としては、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集して除去するために酸化触媒やフィルタから構成された粒子状物質除去装置、排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を尿素水溶液を用いて浄化するNOx浄化装置、排気ガスの騒音を低減する消音装置(排気マフラ)等が知られている。これらの処理装置本体は、単体で使用したり、組合せて使用したりすることができる。
【0025】
作動油タンク12は、油圧ポンプ9の前側に位置して旋回フレーム5上に設けられている(
図2参照)。この作動油タンク12は、油圧ショベル1に搭載された油圧アクチュエータに供給する作動油を貯えるものである。また、燃料タンク13は、エンジン8に供給する燃料を貯えるもので、作動油タンク12の前側に位置して旋回フレーム5上に設けられている。
【0026】
建屋カバー14は、キャブ6とカウンタウエイト7との間に位置して旋回フレーム5に設けられている。この建屋カバー14は、エンジン8、油圧ポンプ9、熱交換装置10、排気ガス後処理装置11等の搭載機器を覆うもので、内部に当該搭載機器を収容する機械室15を形成するものである。建屋カバー14は、後述する左側面ドア16、右側面ドア17、上面板18等を含んで構成されている。
【0027】
左側面ドア16は、左側面板を形成するもので、カウンタウエイト7の左端縁位置から前側に延びるように旋回フレーム5の左サイドフレーム5E上に立設されている。この左側面ドア16は、熱交換装置10と対面し、例えば後端部を回動支点として前側を開,閉することができる。左側面ドア16の上側には、機械室15内を外部と連通するための多数本のスリットからなる吸気口16Aが設けられている。この吸気口16Aは、熱交換装置10を冷却する空気(外気)を吸込むためのものである。
【0028】
右側面ドア17は、右側面板を形成するもので、カウンタウエイト7の右端縁位置から前側に延びるように旋回フレーム5の右サイドフレーム5F上に立設されている。この右側面ドア17は、左側面ドア16と同様に、後端部を回動支点として前側を開,閉することができる。
【0029】
上面板18は、左,右の側面ドア16,17の上端に配置され、左,右方向に長尺な平板として形成されている。上面板18は、エンジン8を含む搭載機器をメンテナンスをするための開口部18A(
図3参照)を有している。ここで、上面板18は、例えば複数枚の板材を左,右方向で繋ぎ合わせることにより形成されている。さらに、上面板18の左側には、左側面ドア16の吸気口16Aの近傍に位置して他の吸気口18Bが設けられている。
【0030】
次に、本発明の特徴部分であるエンジンカバー19の構成を、
図2ないし
図5を用いて詳細に述べる。
【0031】
第1の実施の形態によるエンジンカバー19は、建屋カバー14を構成する上面板18の開口部18Aを閉塞するために設けられている。このエンジンカバー19は、エンジン8、熱交換装置10等の上方を覆うエンジン用カバー部材20と、排気ガス後処理装置11の上方を覆う後処理装置用カバー部材21とにより構成されている。なお、エンジンカバー19は、エンジン用カバー部材と後処理装置用カバー部材とに分割せず、1個の部材によって構成することもできる。
【0032】
図2に示すように、エンジン用カバー部材20は、上面板18の開口部18Aを前側から取囲む前周面板20Aと、前記開口部18Aを後側から取囲む後周面板20Bと、前記開口部18Aを左側から取囲む左周面板20Cと、前記各周面板20A〜20Cの上端位置に設けられた天面板20Dとにより、右側と下側が開放された扁平なボックス状に構成されている。
【0033】
天面板20Dには、熱交換装置10を通過して温度上昇した冷却風を外部に排出するための排気口20Eが複数個、例えば2個設けられている。エンジン用カバー部材20は、例えばカウンタウエイト7側に位置する後周面板20Bの下部が建屋カバー14の上面板18に回動支点として取付けられている。これにより、エンジン用カバー部材20は、前側が開,閉可能となっている。なお、エンジン用カバー部材20は、加工性、開,閉時の操作性、メンテナンス性等を考慮し、左,右方向で複数個に分割する構成としてもよい。
【0034】
後処理装置用カバー部材21は、排気ガス後処理装置11の上方を覆うもので、エンジン用カバー部材20の右側に隣接して配設されている。ここで、後処理装置用カバー部材21は、エンジン8よりも高い位置に配置された排気ガス後処理装置11を覆うものであるから、エンジン用カバー部材20よりも上側に突出して形成されている。
【0035】
後処理装置用カバー部材21は、エンジン用カバー部材20側(左,右方向の内側)に配置され、排気ガス後処理装置11の第1の筒状ケース11A上を覆った内側カバー22と、該内側カバー22の左,右方向の外側(右側)に位置して第2の筒状ケース11C上を覆った外側カバー23とを含んで構成されている。
【0036】
図2、
図3に示すように、内側カバー22は、前,後方向に長尺な箱状体として形成されている。具体的には、内側カバー22は、エンジン用カバー部材20の前周面板20Aに連続するように配置され上面板18の開口部18Aの前側を取囲んだ前周面板22Aと、エンジン用カバー部材20の後周面板20Bに連続するように配置され前記開口部18Aの後側を取囲んだ後周面板22Bと、エンジン用カバー部材20の天面板20Dの右端から立上るように形成された立上り板22Cと、各周面板20A,20Bおよび立上り板22Cの上端位置に設けられた天面板22Dとにより構成されている。
【0037】
前記天面板22Dには、温度上昇した冷却風を外部に排出するための排気口22Eが複数個、例えば前,後方向に並んで2個設けられている。そして、内側カバー22は、建屋カバー14の上面板18に対して開閉可能または着脱可能に取付けられている。
【0038】
次に、後処理装置用カバー部材21の外側カバー23の構成について説明する。この外側カバー23は、エンジンカバー19の一部を構成するもので、後述する通気口24と雨水・塵埃排出ボックス25とを備えている。
【0039】
外側カバー23は、内側カバー22と左,右方向で対向する前,後方向に長尺な箱状体として形成されている。具体的には、外側カバー23は、内側カバー22の前周面板22Aに連続するように配置され上面板18の開口部18Aの前側を取囲んだ前周面板23Aと、内側カバー22の後周面板22Bに連続するように配置され前記開口部18Aの後側を取囲んだ後周面板23Bと、前記開口部18Aを右側から取囲む右周面板23Cと、前記各周面板23A〜23Cの上端位置に設けられた天面板23Dとにより構成されている。
【0040】
図4、
図5に示すように、外側カバー23の前周面板23Aのうち、上,下方向の中間部から上側部分は、下方から上方に向けて内向き(後向き)に傾いた傾斜面部23A1となっている。また、右周面板23Cのうち、上,下方向の中間部から上側部分は、下方から上方に向けて内向き(左向き)に傾いた傾斜面部23C1となっている。この傾斜面部23A1,23C1には、後述の通気口24と雨水・塵埃排出ボックス25とが設けられている。
【0041】
ここで、前周面板23Aに設けた傾斜面部23A1と右周面板23Cに設けた傾斜面部23C1について述べる。この傾斜面部23A1,23C1は、前周面板23A、右周面板23Cの上側部分を内側に傾けることにより、エンジンカバー19の小型化を図り、キャブ6に搭乗したオペレータの後方視界を広げる働きを有している。
【0042】
右周面板23Cのうち、上,下方向の中間部から下側部分には、前,後方向に連なって複数個、例えば5個の排気口23Eが設けられている。一方、天面板23Dには、後述する尾管26を取付けるための取付開口23Fが設けられている。さらに、各傾斜面部23A1,23C1の内側面23A2,23C2には、後述の雨水・塵埃排出ボックス25が一体的に取付けられている。そして、外側カバー23は、建屋カバー14の上面板18に対して開閉可能または着脱可能に取付けられている。
【0043】
次に、外側カバー23に設けられる各通気口24と雨水・塵埃排出ボックス25の構成について述べる。
【0044】
通気口24は、例えばエンジンカバー19を構成する後処理装置用カバー部材21の外側カバー23に設けられた前周面板23Aの傾斜面部23A1に1箇所、右周面板23Cの傾斜面部23C1に2箇所、合計3箇所に設けられている。3箇所の通気口24は、基本的な形状(構造)が同じであるために、この実施の形態では、右周面板23Cの傾斜面部23C1の前側に配置された通気口24を代表的に説明するものとする。
【0045】
通気口24は、上,下方向に並んだ複数個、例えば3個の開口24A,24B,24Cによって形成されている。ここで、3個の開口24A,24B,24Cは、左,右方向(水平方向)に長尺な横長開口として形成され、この横長な3個の開口24A,24B,24Cを上,下方向に多段に並べることにより、通気口24を形成している。即ち、通気口24は、上開口24A、中開口24Bおよび下開口24Cとにより形成されている。
【0046】
各開口24A,24B,24Cの上,下方向の隙間寸法は、例えば後述の雨水・塵埃排出ボックス25を損傷するような飛石等の侵入を阻止しつつ、空気、熱気等を十分に流通できる寸法に設定されている。
【0047】
図5に示すように、雨水・塵埃排出ボックス25は、右周面板23Cの傾斜面部23C1の内側面23C2で通気口24と対向する位置に、3個の開口24A〜24Cを取囲んで設けられている。雨水・塵埃排出ボックス25は、機械室15とエンジンカバー19の外部との間で空気、熱気等が流通するのを許しつつ、機械室15内に雨水や塵埃が侵入するのを阻止するものである。
【0048】
図6、
図7に示すように、雨水・塵埃排出ボックス25は、右周面板23Cの傾斜面部23C1の内側面23C2に取付けられた状態で、上,下方向の上側に位置して垂直に延びる長方形状の垂直面25Aと、該垂直面25Aの下端から傾斜面部23C1に向け下方に傾斜して延びた長方形状の排出案内面25Bと、前記垂直面25Aおよび排出案内面25Bを挟んで設けられた三角形状の側面25Cとにより、山形状の内部空間を有するボックス体として形成されている。
【0049】
なお、垂直面25Aは、上,下方向に垂直に延びるものとして述べたが、本実施の形態における垂直とは、上,下方向に延びた形状を表現するものである。即ち、垂直面25Aとしては、落下する雨水や塵埃が後述の内部通気口25Dに侵入し難い形状(角度)であればよく、即ち、上側から下側に向け通気口24側に僅かに傾斜した形状、または通気口24と反対側に僅かに傾斜した形状を含むものである。
【0050】
そして、雨水・塵埃排出ボックス25は、右周面板23Cの傾斜面部23C1の内側面23C2に対し、通気口24の各開口24A〜24Cを取囲むように配置され、この状態で、例えば溶接手段を用いて外側カバー23と一体的に固着されている。このように固着された雨水・塵埃排出ボックス25は、その垂直面25Aが、3個の開口24A〜24Cのうち、上部に位置する上開口24Aと対面している。一方、排出案内面25Bは、垂直面25Aの下端から下部に位置する下開口24Cに向けて下方に傾斜している。
【0051】
ここで、上開口24Aと対面する垂直面25Aには、長方形状に大きく開口した内部通気口25Dが形成されている。この内部通気口25Dは、エンジンカバー19の内部(機械室15)と外部との間で空気を流通させるものである。さらに、垂直面25Aには、前記内部通気口25Dを覆う位置に網状部材としての多孔鋼板25E(一般的にはパンチングメタルと呼ばれている)が設けられている。この多孔鋼板25Eは、その周囲が垂直面25Aに対し溶接手段等を用いて固着されている。これにより、多孔鋼板25Eは、内部通気口25Dからの土砂の侵入を規制することができる。
【0052】
このように構成された雨水・塵埃排出ボックス25は、
図7中に点線矢示で示すように、各部を冷却して温度上昇した冷却風やエンジン8、排気ガス後処理装置11等が発生する熱気等は、内部通気口25D(多孔鋼板25E)、通気口24の上開口24A等を通じて外部に排出することができる。
【0053】
一方、
図7中に実線矢示で示すように、通気口24の各開口24A〜24Cからは、雨水や塵埃が侵入する。この場合、雨水や塵埃は、上側から下側に向けて落下するから、垂直面25Aに設けた内部通気口25Dに届かずに排出案内面25B上に落下する。排出案内面25B上に落下した雨水や塵埃は、該排出案内面25Bの傾斜に沿って下開口24Cに向けて案内され、該下開口24Cから外部に排出される。
【0054】
なお、外側カバー23には、天面板23Dに形成した取付開口23Fに尾管26が取付けられている。この尾管26は、外側カバー23を閉じた状態(または建屋カバー14の上面板18に取付けた状態)ときに、排気ガス後処理装置11の出口管11Dに接続される。
【0055】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、この油圧ショベル1の動作について説明する。
【0056】
まず、オペレータは、キャブ6に搭乗して運転席に着座する。この状態で走行用のレバーを操作することにより、下部走行体2を駆動して油圧ショベル1を作業現場まで移動させることができる。また、運転席に着座したオペレータは、作業用のレバーを操作することにより、作業装置4等を動作させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0057】
油圧ショベル1を稼働しているときには、エンジン8により冷却ファン8Aが回転駆動され、外部の空気が左側面ドア16の吸気口16A、上面板18の他の吸気口18Bから機械室15内に流入する。この流入した外気は、冷却風として熱交換装置10に供給され、エンジン冷却水や作動油等の流体を冷却する。一方、熱交換装置10を通過して温度上昇した冷却風は、エンジン用カバー部材20に設けられた排気口20E、後処理装置用カバー部材21の内側カバー22に設けられた排気口22E、外側カバー23に設けられた排気口23E等から外部に排出される。
【0058】
このときに、
図7に示すように、温度上昇した冷却風の一部、排気ガス後処理装置11が発生する熱気の一部は、各雨水・塵埃排出ボックス25の内部通気口25D、外側カバー23に設けられた各通気口24を通じて外部に排出することができる。
【0059】
一方、油圧ショベル1の作業現場では、雨が降り、塵埃が舞っている。これらの雨水や塵埃が各通気口24を通じてエンジンカバー19内に侵入した場合、機械室15内を汚すばかりか、エンジン8、排気ガス後処理装置11等に不具合を生じる虞がある。
【0060】
然るに、第1の実施の形態によれば、エンジンカバー19の後処理装置用カバー部材21を構成する外側カバー23の前周面板23Aには、下方から上方に向けて内向き(後向き)に傾いた傾斜面部23A1を設け、右周面板23Cには、下方から上方に向けて内向き(左向き)に傾いた傾斜面部23C1を設けている。この上で、各周面板23A,23Cの傾斜面部23A1,23C1には、上,下方向に並んだ複数個の開口24A〜24Cからなる通気口24を設ける。さらに、各傾斜面部23A1,23C1の内側面23A2,23C2で各通気口24と対向する位置には、3個の開口24A〜24Cを取囲んで雨水・塵埃排出ボックス25を設ける構成としている。
【0061】
そして、雨水・塵埃排出ボックス25には、開口の上部位置、例えば上開口24Aと対面しエンジンカバー19の内部(機械室15)と外部との間で空気を流通させる内部通気口25Dを設けている。また、雨水・塵埃排出ボックス25には、開口の下部位置、例えば下開口24Cと対面し通気口24から雨水・塵埃排出ボックス25内に侵入した雨水、塵埃を前記下開口24Cから外部に排出するように案内する排出案内面25Bを設ける構成としている。
【0062】
従って、エンジン8等の冷却に用いた冷却風やエンジン8、排気ガス後処理装置11等が発生する熱気は、雨水・塵埃排出ボックス25の内部通気口25Dを通じてエンジンカバー19の外部に流出させることができる。しかも、通気口24を形成する上開口24A等から侵入した雨水や塵埃は、下側に向けて落下するから、上部位置に配置された内部通気口25Dには、雨水や塵埃は入り難くなっている。さらに、雨水・塵埃排出ボックス25内に侵入した雨水や塵埃は、下部位置の排出案内面25B上に落下し、該排出案内面25Bに案内されることにより、下開口24Cから外部に排出することができる。
【0063】
この結果、油圧ショベル1を傾斜地等に駐機し、エンジンカバー19の通気口24に雨水や塵埃が侵入した際にも、雨水・塵埃排出ボックス25は、エンジンカバー19の外側に雨水や塵埃を排出することができる。
【0064】
しかも、上述のような機能をもった雨水・塵埃排出ボックス25は、エンジンカバー19の後処理装置用カバー部材21を構成する外側カバー23の内側面23A2,23C2に対し溶接手段を用いて一体的に取付けることができる。この結果、エンジンカバー19を建屋カバー14に組付ける場合には、雨水・塵埃排出ボックス25が予め取付けられたエンジンカバー19を組付けることができる。これにより、組付けに関する部品点数を削減することができ、組立作業性を向上することができる。
【0065】
雨水・塵埃排出ボックス25は、上側に位置して内部通気口25Dが設けられた垂直面25Aと、該垂直面25Aの下端から下開口24Cに向けて下方に傾斜した排出案内面25Bとを備える構成としている。従って、雨水・塵埃排出ボックス25の上部に位置する内部通気口25Dは、垂直面25Aに設けられているから、上方から落下してくる雨水や塵埃は、内部通気口25Dに入り難くすることができる。さらに、雨水・塵埃排出ボックス25は、例えば板体を折曲げて垂直面25Aと排出案内面25Bとを形成し、これに各側面25Cを設けるだけで、容易に製造することができる。
【0066】
一方、雨水・塵埃排出ボックス25には、内部通気口25Dを覆う位置に網状部材としての多孔鋼板25Eを設ける構成としている。これにより、通気口24の各開口24A〜24Cから土砂が侵入しても、多孔鋼板25Eによって内部通気口25Dからの土砂の侵入を規制することができ、エンジンカバー19(機械室15)内を清浄に保つことができる。
【0067】
通気口24の各開口24A〜24Cは、左,右方向に長尺な横長開口として形成し、この横長な開口24A〜24Cを上,下方向に多段に並べる構成としている。従って、通気口24を形成する各開口24A〜24Cは、通気のための開口面積を確保しつつ、小石等の侵入を阻止することができる。
【0068】
さらに、油圧ポンプ9の上方にエンジン8から排出された排気ガスを処理するための排気ガス後処理装置11を設けた構成では、エンジンカバー19の後処理装置用カバー部材21を構成する外側カバー23の周面板23A,23Cの傾斜面部23A1,23C1に設けられた通気口24は、排気ガス後処理装置11が発生する熱を外部に排出することができる。
【0069】
次に、
図8は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、外側カバーの前周面板と右周面板との角隅位置に対し、前周面板と右周面板の両方に亘って1個の雨水・塵埃排出ボックスを設ける構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0070】
図8において、第2の実施の形態による通気口31は、前周面板23Aの傾斜面部23A1の内側面23A2に設けられ、通気口32は、右周面板23Cの傾斜面部23C1の内側面23C2の前側位置に設けられている。この通気口31,32は、第1の実施の形態による通気口24とほぼ同様に、3個の開口31A〜31C,32A〜32Cを有している。しかし、第2の実施の形態による通気口31,32は、各開口31A〜31C,32A〜32Cが、第1の実施の形態による通気口24の各開口24A〜24Cよりも長尺に形成されている点で相違している。
【0071】
第2の実施の形態による雨水・塵埃排出ボックス33は、角隅部の形状に沿うように全体がL字状に屈曲して設けられ、2箇所の通気口31,32を取囲む大きさを有している。即ち、雨水・塵埃排出ボックス33は、通気口31に対面する第1の垂直面33A、第1の排出案内面33Bと、該第1の垂直面33A、第1の排出案内面33Bから屈曲して後側に延びて通気口32に対面する第2の垂直面33C、第1の排出案内面33Dと、第1の垂直面33Aと第1の排出案内面33Bの左端部に設けられた側面33Eと、第2の垂直面33Cと第2の排出案内面33Dの後端部に設けられた側面33Fとにより構成されている。さらに、第1の垂直面33Aには、内部通気口(図示せず)を覆うように多孔鋼板33Gが取付けられ、第2の垂直面33Cには、内部通気口(図示せず)を覆うように多孔鋼板33Hが取付けられている。
【0072】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用、効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、2箇所の通気口31,32に対して1個の雨水・塵埃排出ボックス33を取付けるだけでよいから、組立作業性をより一層向上することができる。
【0073】
なお、第1の実施の形態では、雨水・塵埃排出ボックス25の垂直面25Aには、内部通気口25Dを覆う位置に網状部材としての多孔鋼板25E(パンチングメタル)を設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、
図9に示す第1の変形例のように構成してもよい。即ち、第1の変形例による雨水・塵埃排出ボックス41を、垂直面41A、排出案内面41B、側面41Cから形成し、その垂直面41Aに多数本のスリット41Dを形成することにより、この多数本のスリット41Dを網状部材として用いる構成としてもよい。この場合、スリットに代えて円形孔を穿設する構成としてもよい。
【0074】
また、例えば、
図10に示す第2の変形例のように構成してもよい。即ち、第2の変形例による雨水・塵埃排出ボックス51を、垂直面51A、排出案内面51B、側面51C、内部通気口(図示せず)から形成し、その垂直面51Aに内部通気口を覆うように金網部材51Dを取付けることにより、この金網部材51Dを網状部材として用いる構成としてもよい。これらの構成は、第2の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0075】
第1の実施の形態では、通気口24を3個の開口24A〜24Cによって形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、
図11に示す第3の変形例のように構成してもよい。即ち、第3の変形例による通気口61は、スリット状の開口61Aを上,下方向に4段以上(この第3の変形例では8段(8本)を例示している)並べる構成としてもよい。この構成は、第2の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0076】
さらに、各実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。さらに、例えば油圧クレーン等のエンジンを備えた他の建設機械にも広く適用できるものである。