特許第6285844号(P6285844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6285844-エレベータの保守運転装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285844
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】エレベータの保守運転装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   B66B5/00 G
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-216567(P2014-216567)
(22)【出願日】2014年10月23日
(65)【公開番号】特開2016-84201(P2016-84201A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 尊之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一朗
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−111881(JP,A)
【文献】 特開平09−227049(JP,A)
【文献】 特許第5332805(JP,B2)
【文献】 特開2009−057190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00−5/28
B66B 1/00−1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの制御装置に設けられ前記エレベータの制御信号を無線通信で送受信可能な制御信号通信部と無線通信する指令信号通信部を備えたエレベータの保守運転装置において、
前記エレベータの前記制御装置の前記制御信号通信部は、前記指令信号通信部から送信された接続開始信号に対し接続応答信号を送信するものから成り、
当該保守運転装置は、前記指令信号通信部とともに、処理部と、表示部と、操作部とを有し、
前記表示部は、前記指令信号通信部が受信した前記接続応答信号を送信した前記エレベータを表示するものから成り、
前記操作部は、前記表示部に表示された前記エレベータのうちのいずれかを選択し、選択した前記エレベータの乗かごを指定した階床に到着させる到着階床設定処理を行うものから成り、
前記処理部は、前記指令信号通信部に、前記操作部で選択した前記エレベータの前記制御装置の前記制御信号通信部に対して、前記操作部で設定した到着階床に相応する到着階床設定信号を送信させる処理を行わせるとともに、前記操作部で選択した前記エレベータの前記乗かごが前記操作部で設定した前記到着階床に到着後、保守運転に設定されたことを検出し、前記指令信号通信部に、前記エレベータの前記制御装置の前記制御信号通信部に対して、保守運転走行指令を送信させる処理を行うものから成ることを特徴とするエレベータの保守運転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの保守点検作業に際して用いられるエレベータの保守運転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの保守運転操作を行う保守用携帯端末とエレベータを有線で接続する場合は、物理的に接続されたエレベータ号機とのみ通信が可能で、かつ目視によっても接続中であることが確認できるため、操作するエレベータ号機を誤ることは無く、例えば通常運転中の他のエレベータ号機に対して保守運転操作を行うなどの問題は発生しない。しかし、エレベータと保守用携帯端末を無線で接続する場合は、通信可能範囲にある全てのエレベータ号機と接続できることになるため、操作するエレベータ号機を誤る虞がある。
【0003】
これを解決する手段として、特許文献1,2が提案されている。特許文献1に記載された従来技術は、携帯端末によって入力された各エレベータ号機を特定するための特定データがエレベータの固有情報記憶部に予め記憶されている固有情報データと一致し、かつ呼び釦が操作されることで特定されるエレベータの特定条件が満たされた場合のみ、携帯端末からの通信による司令によって動作を可能にすることで、隣接するエレベータ号機を誤操作させることなく保守運転を実行させるようにしたものである。
【0004】
特許文献2に記載された従来技術は、PC(パソコン)などの保守ツールを制御盤に有線接続し、乗場にて携帯端末と暗号鍵の共有により無線通信可能とし、携帯端末の入力操作によって呼び出したいエレベータ号機と階床を指定して呼び出し、保守動作指令を行い、保守運転を実行させるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−298122号公報
【特許文献2】特許第5332805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された従来技術は、エレベータの呼び操作を伴うが、誤動作を防止するために通常のエレベータ操作と異なる操作であることが望ましく、エレベータと保守用携帯端末との接続のためだけに特定操作を行うことを保守作業者に強いることになる。特許文献2に記載された従来技術は、保守用携帯端末とは別のPCなどの保守ツールを予めエレベータの制御盤に有線接続しておく必要があり、常に保守用携帯端末とは別にPCなどの保守ツールを持参する必要がある。また機械室の無いエレベータでは、保守ツールの設置自体が困難となる。
【0007】
本発明は、前述した従来技術における実情からなされたもので、その目的は、保守作業者に特別な操作や装置の持参を要求することなく、操作するエレベータ号機を無線接続することができるエレベータの保守運転装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明に係るエレベータの保守運転装置は、エレベータの制御装置に設けられ前記エレベータの制御信号を無線通信で送受信可能な制御信号通信部と無線通信する指令信号通信部を備えたエレベータの保守運転装置において、前記エレベータの前記制御装置の前記制御信号通信部は、前記指令信号通信部から送信された接続開始信号に対し接続応答信号を送信するものから成り、当該保守運転装置は、前記指令信号通信部とともに、処理部と、表示部と、操作部とを有し、前記表示部は、前記指令信号通信部が受信した前記接続応答信号を送信した前記エレベータを表示するものから成り、前記操作部は、前記表示部に表示された前記エレベータのうちのいずれかを選択し、選択した前記エレベータの乗かごを指定した階床に到着させる到着階床設定処理を行うものから成り、前記処理部は、前記指令信号通信部に、前記操作部で選択した前記エレベータの前記制御装置の前記制御信号通信部に対して、前記操作部で設定した到着階床に相応する到着階床設定信号を送信させる処理を行わせるとともに、前記操作部で選択した前記エレベータの前記乗かごが前記操作部で設定した前記到着階床に到着後、保守運転に設定されたことを検出し、前記指令信号通信部に、前記エレベータの前記制御装置の前記制御信号通信部に対して、保守運転走行指令を送信させる処理を行うものから成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るエレベータの保守運転装置は、保守作業者に特別な操作や装置の持参を要求することなく、操作するエレベータ号機を無線接続することができ、エレベータの保守点検作業の能率を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るエレベータの保守運転装置の一実施形態を含むシステム構成図である。
図2】本実施形態における処理操作を含む図1に示すシステムの処理操作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るエレベータの保守運転装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明に係るエレベータの保守運転装置の一実施形態を含むシステム構成図である。なお、この図1においては、例えば本実施形態に係る保守運転装置4が通信可能な範囲に、エレベータが2台設置されている例を示してある。
【0013】
図1に示すように、2台のエレベータ(図示せず)のそれぞれの制御装置1a,1bは、無線通信でエレベータの制御信号を送受信可能な制御信号通信部2a,2bを備えている。また、これらの制御装置1a,1bは、エレベータの運転制御を行う運転制御部3a,3bを備えている。各エレベータの乗かご(図示せず)は、エレベータを通常運転モードと保守運転モードとを切り替える保守運転スイッチ(図示せず)を備えている。
【0014】
保守運転作業者が保守点検作業に際して用いる携帯端末、すなわち本実施形態に係る保守運転装置4は、エレベータの制御装置1a,1bのそれぞれに設けられた制御信号通信部2a,2bと無線通信する指令信号通信部5を備えている。前述したエレベータの制御装置1a,1bの制御信号通信部2a,2bは、保守運転装置4の指令信号通信部5から送信された接続開始信号に対し接続応答信号を送信するものから成っている。
【0015】
本実施形態に係る保守運転装置4は、前述した指令信号通信部5とともに、処理部8と、表示部6と、操作部7とを有している。
【0016】
表示部6は、指令信号通信部5が受信した接続応答信号を送信したエレベータを表示するものから成っている。この表示部6は、指令信号通信部5が受信した制御信号が示すエレベータの状態や、当該保守運転装置4の操作メッセージも表示する。
【0017】
また、操作部7は、表示部6に表示されたエレベータのうちのいずれかを選択し、選択したエレベータの乗かごを指定した階床に到着させる到着階床設定処理を行うものから成っている。すなわち、この操作部7は、表示部6に表示されたエレベータ号機の選択操作、あるいはエレベータを呼び寄せる到着階床の入力操作を行う数字キー7a、当該保守運転装置4の電源の投入・遮断を行う電源スイッチ7d、及び保守運転モード時に使用する上昇釦7b、下降釦7cを備えている。なお、操作部7の電源スイッチ7d以外の各種釦は、本実施形態に備えられる表示部6をタッチキー仕様にして、この表示部6の画面上に表示することもできる。
【0018】
処理部8は、指令信号通信部5に、操作部7で選択したエレベータの制御装置1a,1bのうちの該当する制御信号通信部2a,2bに対して、操作部7で設定した到着階床に相応する到着階床設定信号を送信させる処理を行わせる。また、この処理部8は、操作部7で選択したエレベータが操作部7で設定した到着階床に到着後、保守運転に設定されたことを検出し、指令信号通信部5に、エレベータの制御装置1a,1bの制御信号通信部2a,2bに対して、保守運転走行指令を送信させる処理を行うものから成っている。
【0019】
図2は、本実施形態における処理操作を含む図1に示すシステムの処理操作を示すフローチャートである。この図2を用いて、エレベータの保守点検作業に際して行われる本実施形態に係る保守運転装置4を含むシステムの処理操作について説明する。なお、同図2において、保守作業者の処理手順を処理番号にSを付けて記載し、保守運転装置4の処理手順を処理番号にTを付けて記載し、エレベータの制御装置1a,1bの処理手順を処理番号にUを付けて記載してある。
【0020】
最初に、保守作業者は、手順S1に示すように、エレベータの乗場(図示せず)にて、本実施形態に係る保守運転装置4の電源スイッチ7dを投入する。
【0021】
このとき、手順T1において、保守運転装置4の処理部8は電源スイッチ7dの投入の有無を確認する。電源投入が無ければ(手順T1でNO)、手順T1で電源スイッチ7dの投入を待つ。
【0022】
手順S1の結果、保守運転装置4は電源スイッチ7dが投入され(手順T1でYES)、手順T2において、処理部8は、指令信号通信部5に、制御装置1a,1bに対する接続開始信号を送信させる。
【0023】
一方、手順U1において、制御装置1a,1bは、保守運転装置4からの接続開始信号の受信を待つ。接続開始信号の受信が無ければ(手順U1でNO)、手順U1を繰り返し実施する。接続開始信号を受信した場合(手順U1でYES)、手順U2において、制御装置1a,1bの制御信号通信部2a,2bは、接続応答信号を本実施形態に係る保守運転装置4に送信する。
【0024】
制御装置1a,1bの制御信号通信部2a,2bからの接続応答信号を指令信号通信部5で受信した処理部8は、手順T3において、表示部6に接続応答信号を受信したエレベータ号機と号機選択のメッセージを表示する。
【0025】
手順S2において、保守作業者は表示部6に表示されたエレベータ号機と号機選択のメッセージから、保守点検作業を実施するエレベータ号機と、該当するエレベータの乗かごを到着させたい階床を、操作部7の数字キー7aによって入力する。
【0026】
手順T4において、処理部8は、操作部7によって選択されたエレベータ号機に応じた選択号機信号と到着階床信号を、指令信号通信部5から対応するエレベータの制御装置1a,1bに送信させる。
【0027】
手順U3において、制御装置1a,1bのうちの該当するものは、受信した選択号機信号が自号機の場合(手順U3でYES)、手順U4に移り、乗かごを受信した到着階床に走行させる制御を行う。今例えば、選択号機は制御装置1aによって制御されるエレベータであったとする。次に、手順U5に示すように、乗かごが到着階床に到着するまで(手順U5でNO)、手順U4を繰り返し実施する。
【0028】
乗かごが到着階床に到着すると(手順U5でYES)、乗かごは停止し扉(図示せず)が開かれる。このとき、到着階床で待機していた保守作業者は、手順S3において、乗かごに乗り込み、保守運転スイッチを投入し、エレベータを保守運転モードに設定する。
【0029】
手順U6において、制御装置1aは、保守作業者による手順S3の保守運転スイッチの投入を待つ。保守運転スイッチが投入されない場合(手順U6でNO)、手順U6を繰り返し実施する。保守運転スイッチが投入された場合(手順U6でYES)、手順S7において、制御装置1aはエレベータを保守運転モードに設定し、制御信号通信部2aは保守運転設定信号を指令信号通信部5に送信する。
【0030】
手順T5において、処理部8は、指令信号通信部5を介しての制御装置1aからの手順U7の保守運転設定信号の受信を待つ。手順U7の保守運転設定信号の受信が無い場合(手順T5でNO)、繰り返し手順T5を実施する。
【0031】
手順U7の保守運転設定信号を受信すると(手順T5でYES)、手順T6に移り、制御信号通信部2aとの保守運転接続を確立し、解除されるまで制御信号通信部2aとのみ通信を実施する。
【0032】
次に、手順T7において、処理部8は、表示部6に保守運転中の旨を表示し、手順S4において、保守作業者は必要に応じて上昇釦7b、下降釦7cを操作する。処理部8は、操作された上昇釦7b、下降釦7cに応じて、手順T8において、上昇信号または下降信号を制御信号通信部2aに送信する。手順U8において、制御信号通信部2aは、受信した上昇信号または下降信号を運転制御部3aに送信する。運転制御部3aは、上昇信号または下降信号に対応した乗かごの保守走行を実施させる。
【0033】
このように、手順T7、手順S4、手順T8、手順U8によって、乗かごを走行させ、エレベータにおける所望の保守点検作業を実施することができる。
【0034】
保守点検作業が終了すると、手順S5において、保守作業者は乗かご内の保守運転スイッチを解除し、エレベータを通常運転モードに設定する。手順U9において、制御装置1aは、保守運転スイッチが操作されて保守運転モードが解除されたかどうか確認する。保守運転モードが解除されない場合(手順U9でNO)、繰り返し手順U8を実施する。
【0035】
保守運転モードが解除された場合(手順U9でYES)、手順U10において、制御装置1aは、保守運転装置4に通常運転設定信号を送信し、この制御装置1aにおける処理は終了する。
【0036】
手順T9で、制御装置1aからの通常運転設定信号の受信を待つ本実施形態に係る保守運転装置4は、通常運転設定信号を受信しない場合(手順T9でNO)、手順T7を繰り返し実施する。
【0037】
制御装置1aからの通常運転設定信号を受信した場合(手順T9でYES)、制御装置1aの制御信号通信部2aとの保守運転接続を解除し、本実施形態に係る保守運転装置4における処理を終了する。
【0038】
以上のように構成した本実施形態に係る保守運転装置4によれば、保守作業者に特別な操作や装置の持参を要求することなく、操作するエレベータ号機を無線接続することができ、エレベータの保守点検作業の能率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0039】
1a,1b 制御装置
2a,2b 制御信号通信部
3a,3b 運転制御部
4 保守運転装置(本実施形態)
5 指令信号通信部
6 表示部
7 操作部
7a 数字キー
7b 上昇釦
7c 下降釦
7d 電源スイッチ
8 処理部
図1
図2