(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コントローラは、前記駐車ブレーキ操作装置からの指令信号によって前記駐車ブレーキの作動の有,無を判定し、前記アキュムレータに蓄圧される圧油の圧力値は、前記圧力センサからの検出信号に基づいて制御する構成としてなる請求項1に記載の作業車両。
前記傾転アクチュエータは、前記アキュムレータの圧力値を下げるときに前記制御信号によって前記油圧ポンプの前記容量可変部を傾転角が小さくなる方向に傾転させ、前記アキュムレータの圧力値を上げるときには前記油圧ポンプの前記容量可変部を傾転角が大きくなる方向に傾転させる構成としてなる請求項1または2に記載の作業車両。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態による作業車両として、鉱山等で採掘した砕石物を運搬するダンプトラックを例に挙げ、添付図面の
図1ないし
図3に従って詳細に説明する。
【0011】
大型の運搬用作業車両であるダンプトラックには、原動機としてのエンジン1が搭載されている。該エンジン1は、作動油タンク2と共に油圧源を構成する可変容量型の油圧ポンプ3を回転駆動する。この油圧ポンプ3は、例えば斜板、弁板等の容量可変部3Aを有している。該容量可変部3Aは、傾転アクチュエータ4により傾転駆動され、その傾転角に応じて油圧ポンプ3の押除け容積(即ち、圧油の吐出量)を増減させるものである。
【0012】
例えばエンジン1を所定の回転数で回転させる通常の運転条件下において、油圧ポンプ3から吐出される圧油の吐出量は、容量可変部3Aの傾転角を傾転アクチュエータ4により大きくすると、これに従って増大し、最大傾転時には最大吐出量となる。一方、容量可変部3Aの傾転角を小さくすると、これに従って油圧ポンプ3の吐出量は減少し、最小傾転時には最小吐出量となる。
【0013】
油圧ポンプ3の吐出側には、プライオリティバルブと呼ばれる方向制御弁5を介して第1,第2の供給管路6,7が接続されている。方向制御弁5は、例えば油圧パイロット式または電磁式の3方向切換弁により構成されている。方向制御弁5は、ダンプトラックの運転室内でオペレータが遠隔操作装置(いずれも図示せず)を手動操作することにより、第1位置(A)と第2位置(B)と第3位置(C)とのいずれかの位置に切換えられる。
【0014】
方向制御弁5は、第1位置(A)に切換えられているときに、油圧ポンプ3から吐出された圧油を第1の供給管路6に向けてのみ流通させる。第2位置(B)に切換えられているときには、油圧ポンプ3からの圧油を第1,第2の供給管路6,7の両方に向けて流通させる。第2位置(B)から第3位置(C)へと切換えられたときには、油圧ポンプ3からの圧油を第2の供給管路7に向けてのみ流通させる。
【0015】
第2の供給管路7には、制御弁装置8を介してホイストシリンダ9が接続されている。制御弁装置8は、油圧ポンプ3からの圧油がホイストシリンダ9に給排されるのを制御するものである。ダンプトラックの運転室内には操作レバー(図示せず)が設けられ、このレバー操作により制御弁装置8は切換操作される。ホイストシリンダ9は、油圧ポンプ3からの圧油が第2の供給管路7、制御弁装置8を介して給排されることにより、下記のように伸長または縮小動作する。
【0016】
ここで、ホイストシリンダ9は、ダンプトラックの車体と荷台(いずれも図示せず)との間に伸縮可能に設けられた多段式(例えば、3段式)の油圧シリンダにより構成されている。ホイストシリンダ9は、例えば排土作業を行うため上,下方向に伸長することにより、前記荷台を車体の斜め後方へと傾斜(回動)させる。一方、ホイストシリンダ9の縮小時には、前記荷台が車体に対して下向きに倒伏し、荷物の運搬位置へと回動されるものである。
【0017】
第1の供給管路6には、ステアリングバルブ10を介して一対のステアリングシリンダ11(一方のみ図示)が設けられている。ここで、ステアリングバルブ10と各ステアリングシリンダ11とは、ダンプトラックの動力舵取り装置を構成し、ステアリングハンドル12を舵取り操作するときの操作力を軽減するものである。
【0018】
ダンプトラックのオペレータが、ステアリングハンドル12を舵取り操作すると、これによって、ステアリングバルブ10が中立位置(D)から左,右の切換位置(E),(F)のいずれかに切換えられる。このとき、油圧ポンプ3から第1の供給管路6へと吐出された圧油は、ステアリングバルブ10を介してステアリングシリンダ11に供給され、ステアリングシリンダ11のロッド11Aを伸長または縮小させる。これにより、ダンプトラックの操舵輪(例えば、前輪側)は、ステアリングシリンダ11の伸縮動作に応じて舵取り操作される。タンク管路13は、ステアリングシリンダ11からの戻り油を作動油タンク2にリターンさせるものである。
【0019】
ブレーキ用管路14は、その基端側14Aが第1の供給管路6の途中部位から分岐して設けられている。ブレーキ用管路14の先端側は、駐車ブレーキ15のブレーキシリンダ16(後述の油圧室16C)に接続されている。駐車ブレーキ15は、外部からブレーキシリンダ16に圧油が供給されることにより制動力を解除し、圧油が供給されない通常時は車両に制動力を付与するネガティブ型のブレーキ装置である。
【0020】
駐車ブレーキ15のブレーキシリンダ16内には、摺動変位可能に挿嵌されたピストン16Aと、該ピストン16Aを車両制動側へと常時付勢したばね16Bと、該ばね16Bとはピストン16Aを挟んで反対側に配置された油圧室16Cとが設けられている。ダンプトラックの各車輪と一体に回転するディスク17には、ピストン16Aによって摩擦用のブレーキ板18が押付けられ、ばね16Bによる制動力が付与される。
【0021】
ブレーキ用管路14の途中(即ち、ブレーキシリンダ16とアキュムレータ21との間の位置)には、ブレーキシリンダ16の油圧室16Cにブレーキ解除圧を給排するブレーキ解除バルブ19が設けられている。該ブレーキ解除バルブ19は、付勢ばね19Aとソレノイド19Bとを含んだ電磁弁により構成されている。ブレーキ解除バルブ19は、常時はソレノイド19Bが消磁されているため付勢ばね19Aにより制動位置(G)に置かれ、ソレノイド19Bが励磁されたときには付勢ばね19Aに抗して制動位置(G)から解除位置(H)に切換えられる。
【0022】
ブレーキ解除バルブ19が制動位置(G)から解除位置(H)に切換えられると、ブレーキ用管路14からの圧油は、ブレーキ解除圧となってブレーキシリンダ16の油圧室16Cに供給される。このため、ブレーキシリンダ16のピストン16Aは、ばね16Bに抗してブレーキ解除方向に押動され、ブレーキ板18をディスク17から離間させる。これにより、駐車ブレーキ15は、車両の制動力を解除し、ダンプトラックの走行動作を許すものである。
【0023】
駐車ブレーキスイッチ20は、駐車ブレーキ15の作動および解除を指令する駐車ブレーキ操作装置を構成している。駐車ブレーキスイッチ20は、ダンプトラックの運転室内に設けられ、オペレータにより手動操作される。駐車ブレーキスイッチ20による指令信号は、後述のコントローラ23に出力される。コントローラ23は、このときの指令信号に基づいてブレーキ解除バルブ19を励磁または消磁させるブレーキ制御信号を出力する。なお、駐車ブレーキ15の作動および解除を指令する駐車ブレーキ操作装置は、駐車ブレーキスイッチ20に限るものではなく、例えば操作レバーまたは操作ダイヤル(摘み)等を用いて駐車ブレーキ操作装置を構成してもよい。
【0024】
ブレーキ用管路14には、第1の供給管路6とブレーキ解除バルブ19との間に位置してアキュムレータ21が設けられている。このアキュムレータ21は、油圧ポンプ3から第1の供給管路6に吐出された圧油を蓄圧し、例えばステアリングシリンダ11および駐車ブレーキ15に対する臨時の油圧源を構成する。即ち、油圧ポンプ3の故障等により、油圧ポンプ3から第1の供給管路6に圧油が供給されない異常時には、アキュムレータ21に蓄圧された圧油をステアリングシリンダ11および/または駐車ブレーキ15に供給する。
【0025】
このような異常時において、駐車ブレーキ15の作動を解除したり、ダンプトラック(車両)の動力舵取り操作をしたりする必要が生じた場合には、アキュムレータ21に蓄圧された圧油の圧力を活用することによって、緊急対策を適切に施すことができる。なお、アキュムレータ21の取付位置は、ブレーキ用管路14の途中位置に限るものではなく、例えば第1の供給管路6の途中に設けてもよい。
【0026】
第1の供給管路6の途中には、ステアリングバルブ10よりも上流側となる位置に圧力センサ22が設けられている。この圧力センサ22は、アキュムレータ21内に蓄圧された圧油の圧力P(
図2、
図3参照)を検出し、その検出信号を後述のコントローラ23に出力する。なお、圧力センサ22は、ブレーキ用管路14の途中に設ける構成としてもよい。即ち、アキュムレータ21と圧力センサ22との取付位置は、
図1中に示す位置に限られるものではなく、設計の都合等に応じて適宜に変更可能である。要は、アキュムレータ21内に蓄圧された圧油の圧力Pを、圧力センサ22によって検出できればよい。
【0027】
ダンプトラックの制御装置となるコントローラ23は、マイクロコンピュータ等により構成され、例えばフラッシュメモリ、ROM、RAM等に代表される記憶装置(以下、メモリ23Aという)を備えている。コントローラ23の入力側には、駐車ブレーキ15の作動,解除を指令する駐車ブレーキスイッチ20と、前記圧力センサ22等とが接続されている。コントローラ23の出力側には、油圧ポンプ3の傾転アクチュエータ4と、ブレーキ解除バルブ19のソレノイド19B等とが接続されている。
【0028】
コントローラ23は、駐車ブレーキスイッチ20からの指令信号に基づいて駐車ブレーキ15の作動,解除を制御するため、ブレーキ解除バルブ19のソレノイド19Bに励磁または消磁用の制御信号を出力する。コントローラ23のメモリ23Aには、アキュムレータ21の圧力制御処理用のプログラム(
図2参照)等が格納されている。コントローラ23は、駐車ブレーキスイッチ20および圧力センサ22からの信号に基づいて駐車ブレーキ15および油圧ポンプ3の傾転アクチュエータ4の作動を制御する。
【0029】
具体的には
図2に示すように、コントローラ23は、駐車ブレーキ15の作動の有,無に応じてアキュムレータ21に蓄圧された圧油の圧力Pを可変に制御するため、傾転アクチュエータ4により油圧ポンプ3の容量可変部3Aを傾転して油圧ポンプ3による圧油の吐出量を変化させる傾転アクチュエータ制御手段(例えば、
図2中のステップ2およびステップ4〜7参照)を有している。この傾転アクチュエータ制御手段は、駐車ブレーキ15の作動中に、ブレーキ解除時よりもアキュムレータ21に蓄圧される圧油の圧力値を下げるように、容量可変部3Aを傾転させる制御信号を傾転アクチュエータ4に出力する構成となっている。
【0030】
コントローラ23による傾転アクチュエータ制御手段は、駐車ブレーキ操作装置(即ち、駐車ブレーキスイッチ20)からの指令信号によって駐車ブレーキ15の作動の有,無を判定する。また、前記傾転アクチュエータ制御手段は、傾転アクチュエータ4を作動制御することにより、アキュムレータ21に蓄圧される圧油の圧力Pを、圧力センサ22からの検出信号に基づいてフィードバック制御する構成としている。
【0031】
ここで、傾転アクチュエータ4は、コントローラ23からの制御信号により、アキュムレータ21の圧力Pを下げるときには、油圧ポンプ3の容量可変部3Aを傾転角が小さくなる方向に傾転させる。一方、アキュムレータ21の圧力Pを上げるときには、油圧ポンプ3の容量可変部3Aを傾転角が大きくなる方向に傾転させるものである。
【0032】
図3中に示す特性線24は、アキュムレータ21に蓄圧された圧油の圧力特性を表している。アキュムレータ21の圧力Pは、特性線24に示すように圧力値Pa,Pb,Pc(Pa<Pb<Pc)の如く変動している。ここで、アキュムレータ21の圧力Pが、例えば時間t3 〜t5 で低下している理由は、油圧回路中での圧油の漏洩によると考えられる。また、時間t1 〜t2 、時間t6 〜t8 、時間t9 〜t11で圧力Pが低下しているのも同様な理由による。
【0033】
特性線25は、駐車ブレーキ15の作動、解除の特性を示し、駐車ブレーキスイッチ20の開,閉成(OFF,ON)操作に対応している。駐車ブレーキ15の作動中は、車両が駐・停車した停止状態にあり、駐車ブレーキ15が解除されている間は、車両が走行可能な状態にある。特性線26は、油圧ポンプ3の容量可変部3Aを最小傾転と最大傾転との間で傾転アクチュエータ4により傾転駆動するときの特性を表している。
【0034】
本実施の形態による作業車両(即ち、ダンプトラック)は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0035】
ダンプトラックの運転室内でオペレータがエンジン1を起動し作動させると、油圧ポンプ3が回転駆動される。油圧ポンプ3は、作動油タンク2内の油液を吸込みつつ、吐出側から圧油を吐出させる。方向制御弁5が第1位置(A)に切換えられているときには、油圧ポンプ3からの圧油が第1の供給管路6、ブレーキ用管路14を通じてアキュムレータ21に供給され、アキュムレータ21内には圧油が蓄圧される。
【0036】
ダンプトラックのオペレータが駐車ブレーキスイッチ20を操作して駐車ブレーキ15を解除するときには、コントローラ23からブレーキ解除バルブ19に制御信号を出力されてソレノイド19Bが励磁される。これにより、ブレーキ解除バルブ19は、制動位置(G)から解除位置(H)に切換えられ、油圧ポンプ3からブレーキ用管路14に導かれた圧油がブレーキ解除圧となってブレーキシリンダ16の油圧室16Cに供給される。
【0037】
このため、ブレーキシリンダ16のピストン16Aは、ばね16Bに抗してブレーキ解除方向に押動され、ブレーキ板18をディスク17から離間させる。これにより、駐車ブレーキ15は、車両の制動力を解除し、ダンプトラックの走行動作を許すことになる。
【0038】
この状態で、運転室内のオペレータがダンプトラックを走行させ、ステアリングハンドル12を舵取り操作すると、これによって、ステアリングバルブ10が中立位置(D)から左,右の切換位置(E),(F)のいずれかに切換えられる。このとき、油圧ポンプ3から供給管路6へと吐出された圧油は、ステアリングバルブ10を介してステアリングシリンダ11に供給され、ステアリングシリンダ11のロッド11Aを伸長または縮小させる。これにより、ダンプトラックの操舵輪は、ステアリングシリンダ11の伸縮動作に応じて舵取り操作され、オペレータは、車両のステアリング操作を比較的軽い力で行うことができる。
【0039】
ここで、アキュムレータ21は、油圧ポンプ3に対して臨時の油圧源を構成している。即ち、油圧ポンプ3から第1の供給管路6に向けた圧油の供給が仮に断たれた場合でも、アキュムレータ21内に蓄圧された圧油をステアリングバルブ10を介してステアリングシリンダ11に供給することができ、所謂動力舵取り操作を行うことができる。また、ブレーキ解除バルブ19が制動位置(G)から解除位置(H)に切換えられている間は、アキュムレータ21内に蓄圧された圧油をブレーキ解除圧としてブレーキシリンダ16の油圧室16Cに供給でき、駐車ブレーキ15の制動力を解除してダンプトラックの走行動作を許すことができる。
【0040】
方向制御弁5が第1位置(A)から第2位置(B)に切換えられたときには、油圧ポンプ3から吐出される圧油は、第1,第2の供給管路6,7の両方に向けて流通される。これにより、駐車ブレーキ15の作動を解除した状態で、車両のステアリング操作とホイストシリンダ9の伸縮動作とを共に行うことができる。一方、方向制御弁5が第2位置(B)から第3位置(C)へと切換えられたときには、油圧ポンプ3からの圧油が第2の供給管路7に向けてのみ流通される。この場合には、駐車ブレーキ15を作動させて車両を停止させたままの状態で、ホイストシリンダ9を伸縮させ前記荷台の昇降動作を行うことができる。
【0041】
ところで、ダンプトラックに代表される作業車両は、駐車ブレーキ15の作動の有,無に拘わらず、アキュムレータ21に蓄圧する圧油の圧力をほぼ一定(例えば、
図3中に示す圧力値Pb〜Pcの範囲)に保つ構成としている。しかし、駐車ブレーキ15の作動中は、ブレーキ解除バルブ19が制動位置(G)にあって車両は駐・停車状態にあり、ステアリングハンドル12も舵取り操作されることなく、ステアリングバルブ10は中立位置(D)に保持されている。
【0042】
このため、駐車ブレーキ15の作動中は、例えばオペレータが駐車ブレーキスイッチ20を閉成操作(ON操作)するまで、アキュムレータ21に蓄圧された圧油が消費されることはない。換言すると、アキュムレータ21に蓄圧すべき圧油の圧力は、駐車ブレーキ15の作動中に必要以上に高くなっており、省エネルギ化を図る上で改善の余地が残されている。
【0043】
そこで、本実施の形態にあっては、コントローラ23によって
図2に示す制御処理を実行することにより、駐車ブレーキ15の作動中にはアキュムレータ21に蓄圧される圧油の圧力値を低下させ、省エネルギ化を図ることができるようにしている。
【0044】
即ち、
図2に示す制御処理がスタートすると、エンジン1が作動しているか否かを判定し、「YES」と判定すると、次のステップ2で駐車ブレーキ15が作動中であるか否かを判定する。ここで、コントローラ23は、駐車ブレーキスイッチ20からの指令信号により駐車ブレーキ15が作動中か、解除されているかを判定することができる。
【0045】
ステップ2で「NO」と判定したときには、駐車ブレーキ15の作動が解除され、車両は走行可能な状態にあり、ステアリング操作も適宜に行われる場合である。このため、次のステップ3では、下記の如く通常制御を行うようにする。例えば
図3中の時間t2 〜t7 、さらには時間t12以降のように、駐車ブレーキ15が解除された車両の走行可能状態では、オペレータのステアリング操作等に常に備えるため、アキュムレータ21に十分な圧油を蓄圧しておく必要がある。
【0046】
このため、通常制御を行うときには、アキュムレータ21に蓄圧する圧油の圧力を、例えば
図3中に示す圧力値Pb〜Pc(圧力値Paよりも1〜3MPa程度高い圧力)の範囲で制御する。具体的には、コントローラ23から傾転アクチュエータ4に傾転用の制御信号を出力し、油圧ポンプ3の容量可変部3Aを最小傾転と最大傾転との間で傾転アクチュエータ4により傾転駆動する。
【0047】
これにより、油圧ポンプ3から吐出される圧油の吐出量(流量)は、傾転角を最大傾転としたときに増大され、アキュムレータ21に蓄圧される圧油の圧力Pは、例えば時間t3 で圧力値Pcまで昇圧される。これに対し、時間t3 〜t4 では、アキュムレータ21の圧力Pが前記圧力値Pc以上に高くなるのを抑えるため、油圧ポンプ3の容量可変部3Aを傾転アクチュエータ4により最小傾転となるように駆動し、油圧ポンプ3による圧油の吐出量を、最小流量となるように低減させている。
【0048】
一方、
図1に示す油圧回路中では、例えば方向制御弁5、ステアリングバルブ10およびブレーキ解除バルブ19等の各種油圧機器から圧油が漏洩し、このときの漏洩油は作動油タンク2にタンク管路13等を通じて戻される。このため、例えば
図3中の時間t3 〜t5 のように、油圧ポンプ3の容量可変部3Aを傾転角が小さくなるように最小傾転側に駆動すると、アキュムレータ21の圧力Pは、前記漏洩油の影響で徐々に低下してしまう。
【0049】
そこで、時間t5 〜t6 では、アキュムレータ21の圧力Pが、圧力値Pb以下まで低下しないように、油圧ポンプ3の容量可変部3Aを傾転アクチュエータ4により最大傾転側に駆動し、油圧ポンプ3による圧油の吐出量を増大させている。アキュムレータ21の圧力Pが、例えば時間t6 で圧力値Pcまで再び昇圧されると、時間t6 以降は、アキュムレータ21の圧力Pが圧力値Pc以下となるように、油圧ポンプ3の容量可変部3Aを傾転アクチュエータ4により最小傾転側に駆動している。
【0050】
次に、時間t7 〜t12では、駐車ブレーキ15が解除状態から作動状態に切換えられている。このため、
図2のステップ2では、「YES」と判定することになる。これにより、次のステップ4では、圧力センサ22からの検出信号によってアキュムレータ21の圧力Pを読込む。次のステップ5では、アキュムレータ21の圧力Pが制御目標値Pi以上であるか否かを判定する。
【0051】
ここで、制御目標値Piは、前記圧力値Pcよりも例えば2〜3MPa程度低い圧力値Pa〜Pbの範囲(Pi=Pa〜Pb)に設定されている。ステップ5で「YES」と判定したときには、例えば
図3中の時間t7 以降のように、アキュムレータ21の圧力Pが制御目標値Pi以上となっている。このため、次のステップ6では、ポンプ傾転角を小さくするように傾転アクチュエータ4を作動制御する。
【0052】
即ち、油圧ポンプ3の容量可変部3Aを、傾転アクチュエータ4により最小傾転側に駆動し、油圧ポンプ3による圧油の吐出量を低減させる。この結果、時間t6 〜t8 では、油圧回路中の圧油漏洩によりアキュムレータ21の圧力Pが低下している。換言すると、油圧ポンプ3による圧油の吐出量(供給量)が最小となっているので、圧油の漏洩量が供給量を上回って、アキュムレータ21の圧力Pは徐々に低下する。
【0053】
例えば時間t8 で、アキュムレータ21の圧力Pが圧力値Paまで低下すると、
図2中のステップ5では「NO」と判定し、アキュムレータ21の圧力Pが制御目標値Piよりも低くなっている。このため、次のステップ7では、ポンプ傾転角を大きくするように傾転アクチュエータ4を作動制御する。即ち、
図3中の時間t8 〜t9 のように、油圧ポンプ3の容量可変部3Aを傾転アクチュエータ4により最大傾転側に駆動し、油圧ポンプ3による圧油の吐出量(供給量)を増大させる。
【0054】
これにより、アキュムレータ21に蓄圧される圧油の圧力Pは、例えば時間t9 で圧力値Pbまで昇圧される。このため、
図2中のステップ5では、圧力Pが制御目標値Pi以上であるとして「YES」と判定し、次のステップ6でポンプ傾転角を小さくするように制御する。即ち、時間t9 〜t10では、アキュムレータ21の圧力Pが前記圧力値Pb以上に高くなるのを抑えるため、油圧ポンプ3の容量可変部3Aを傾転アクチュエータ4により最小傾転となるように駆動し、油圧ポンプ3による圧油の吐出量を、最小流量となるように低減させている。時間t9 〜t11では、油圧回路中の圧油漏洩によりアキュムレータ21の圧力Pが低下している。
【0055】
例えば時間t11で、アキュムレータ21の圧力Pが圧力値Paまで低下すると、
図2中のステップ5では「NO」と判定する。これにより、次のステップ7では、ポンプ傾転角を大きくするように制御し、油圧ポンプ3による圧油の吐出量を増大させる。この結果、
図3中の時間t11〜t12のように、アキュムレータ21の圧力Pは、圧力値Paよりも高い圧力となるように上昇する。
【0056】
図2中のステップ8では、エンジン1が停止操作されたか否かを判定し、「NO」と判定する間は、前記ステップ2〜8にわたる処理を繰返すようにし、ステップ8で「YES」と判定したときには、エンジン1が停止操作されているので、制御処理を終了する。
【0057】
かくして、本実施の形態によれば、駐車ブレーキ15の作動の有,無に応じてアキュムレータ21に蓄圧される圧油の圧力を可変に制御するため、コントローラ23から傾転アクチュエータ4に傾転用の制御信号を出力し、油圧ポンプ3の容量可変部3Aを最小傾転と最大傾転との間で傾転アクチュエータ4によって傾転駆動する。これより、傾転アクチュエータ4は、駐車ブレーキ15の解除中に比較して駐車ブレーキ15の作動中に、アキュムレータ21に蓄圧される圧油の圧力値を下げるように容量可変部3Aを傾転する構成としている。
【0058】
このため、本実施の形態では、駐車ブレーキ15が解除されているときに、アキュムレータ21に蓄圧される圧油の圧力Pを圧力値Pb〜Pcの範囲で制御し、駐車ブレーキ15の作動中は、これよりも低い圧力値Pa〜Pbの範囲でアキュムレータ21の圧力Pを制御することができる。
【0059】
このように、駐車ブレーキ15の解除中に比較して駐車ブレーキ15の作動中には、油圧ポンプ3の吐出量を低下させてアキュムレータ21の圧力Pを、圧力値Pa〜Pbまで下げることができる。従って、エンジン1が油圧ポンプ3から受ける回転負荷を低減することができ、エンジン1の燃料消費量を減らして省エネルギ化を図ることができる。また、アキュムレータ21の圧力Pを、圧力値Pa〜Pbまで下げることにより、構成部品の摩耗、損傷を抑え、長寿命化も図ることができる。
【0060】
なお、前記実施の形態では、
図2に示すステップ1〜8のうち、ステップ2およびステップ4〜7の処理が、本発明の構成要件である傾転アクチュエータ制御手段の具体例を示している。
【0061】
また、前記実施の形態では、作業車両としてダンプトラックを例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式油圧ショベル、ホイール式油圧クレーン、ホールローダ等のように、駐車ブレーキと動力舵取り装置を備えた作業車両にも適用できるものである。
【0062】
さらに、前記実施の形態では、作業車両の原動機としてエンジン1を用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば電動モータを原動機として用いてもよく、エンジンと発電兼用の電動モータとを原動機として用いるハイブリット式作業車両にも適用できるものである。