(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一の溶媒が、前記樹脂層の総質量に対して、0.5質量%から50質量%の間の量で存在し、前記第二の溶媒が、前記樹脂層の総質量に対して、3質量%から45質量%の間の量で存在する、請求項1に記載のドライフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書における開示の理解を容易にするために、以下に用語を定義している。
【0015】
用語「約」とは、当業者によって測定された所与の値の許容可能な偏差を指し、その値の測定方法又は決定方法によってある程度左右される。
【0016】
本発明において、用語「アルキル」とは、好ましくは炭素原子1〜30個、より好ましくは炭素原子1〜20個を含む飽和、直鎖状又は分岐状アルキルを指す。例には、(これらに限定されないが)メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、アミル、ヘキシル及び同様な基が含まれる。
【0017】
本発明において、用語「アルケニル」とは、好ましくは炭素原子2〜30個、より好ましくは炭素原子10〜20個を含む、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する不飽和の直鎖状又は分岐状アルキルを指す。例には、(これらに限定されないが)エテニル、プロペニル、メチルプロペニル、イソプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、1-プロペニル、2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル及び同様な基が含まれる。
【0018】
本発明において、用語「アルキニル」とは、好ましくは炭素原子2〜30個、より好ましくは炭素原子10〜20個を含む、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有する不飽和の直鎖状又は分岐状アルキルを指す。例には、(これらに限定されないが)エチニル、プロパルギル、3-メチル-1-ペンチニル、2-ヘプチニル及び同様な基が含まれる。
【0019】
本発明において、用語「アリール」又は「芳香族化合物」とは、6員単環式炭素環、10員二環式炭素環、又は14員三環式炭素環を含む、芳香環系を指す。アリールの例には、(これらに限定されないが)フェニル、トリル、ナフチル、フルオレニル、アントリル、フェナントレニル及び同様な基が含まれる。
【0020】
本発明において、用語「ハロゲン化アルキル」とは、ハロゲンで置換されたアルキルを指し、その中で「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を示し、好ましくはフッ素又は塩素を示す。
【0021】
本発明において、用語「アルコキシ」とは、酸素原子に結合したアルキルを指す。例には、(これらに限定されないが)メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ、ベンジルオキシ、フルオレニルオキシ及び同様な基が含まれる。
【0022】
従来技術において、ドライフィルムが、その使用の間に高濃度の揮発性有機化合物を発生させるのを防ぎ、ドライフィルムの貯蔵の間に、コーティングされたグルー(すなわち樹脂層)の流動に起因するグルー過多現象(ブリーディング)を減らすために、コーティング済みのドライフィルムの半製品を、樹脂層を乾燥させて樹脂層を担体に完全に接着させる目的でオーブンに送る。この工程で、有機溶媒はほとんど完全に揮発する。したがって、従来のドライフィルム製品中の有機溶媒含量は、一般に1質量%未満である。
【0023】
更に、ドライフィルムがフレキシブルプリント回路板の積層プロセスに適用される場合、気泡現象が通常観察される。気泡の存在は、基準を外れた品質のドライフィルムを生じることから、回路板の性能に影響を及ぼす。結果として、空気を除去するために真空積層装置が一般に使用される。しかし、上述のように、真空積層装置は費用効果が低い。
【0024】
本発明は、担体及び樹脂層を含む溶媒含有ドライフィルムであって、この樹脂層が樹脂及び溶媒を含む、溶媒含有ドライフィルムを提供する。溶媒が、樹脂層の総質量に対して、少なくとも5質量%の総量で存在する場合、このドライフィルムは気泡溶解効果を有し、それにより積層する間、基板とドライフィルムとの間に含有される空気を、ドライフィルムに含有される溶媒中に溶解させることが可能となり、したがってフレキシブルプリント回路板の積層プロセスの間にドライフィルムによって発生する気泡の問題が解決される。
【0025】
本発明において使用される担体は、ガラス又はプラスチック等の当業者公知の任意の担体であってもよい。プラスチック担体は特に制約されずに、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリメタクリレート樹脂;ポリイミド樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリシクロオレフィン樹脂;ポリオレフィン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリウレタン樹脂;トリアセテートセルロース(TAC);又はこれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。好ましい担体は、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリシクロオレフィン樹脂若しくはトリアセテートセルロース、又はこれらの混合物である。より好ましくは、担体はポリエチレンテレフタレートである。担体の厚さは、通常所望の光学製品の目的に応じて、約16μmから約250μmの範囲にあることが好ましい。
【0026】
樹脂層中に使用するための樹脂の型には特別な制約はなく、例えば、アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、又はポリイミド樹脂であってもよい。350℃を超える高温でのプロセスに適用する場合、この樹脂は、ポリイミド樹脂が好ましい。
【0027】
広範な研究及び再現実験により、本発明の発明者らは、フレキシブルプリント回路板へのドライフィルムの積層の間にドライフィルムによって発生する気泡の問題がより効果的に解決されるように、本発明のドライフィルム中の溶媒は、樹脂層の総質量に対して、少なくとも5質量%の総量で、好ましくは15質量%から60質量%の総量で存在することを見出した。溶媒は、より好ましくは15質量%から50質量%、最も好ましくは15質量%から47質量%の総量で存在し、一般に、下限は20質量%でありうる。本発明の一実施形態において、溶媒の含量が少な過ぎる場合(例えば、15質量%未満、又は5質量%未満も)、ドライフィルムが剛性且つ脆性となり、ほとんど軟質板に積層されず、したがって積層プロセスの間の気泡溶解効果が低下し、再気泡発生の現象(すなわち溶解後の気泡の再発生)をもたらし易くなる傾向がある。しかし、溶媒の含量が多過ぎる場合、特に60質量%を超える場合、ドライフィルムの表面は、粘着性となり、操作性がより悪く、積層プロセスの間の、期待されるより良好な気泡溶解効果を達成することができない。
【0028】
本発明の好ましい一実施形態により、本発明において使用される溶媒は、ガス溶解効果を有する少なくとも1種の溶媒を含む。ガス溶解効果を有する溶媒は、樹脂層と基板との間の位置にある望ましくないガスを溶解させることができ、したがってドライフィルムはガス溶解効果を有し、そのため樹脂層と基板との間の空気の存在による望ましくない現象を低減し、且つ真空積層装置を使用せずに、基板へのドライフィルムの積層プロセスの間に発生する気泡の問題を解決することができる。ガス溶解効果を有する前述の溶媒は、樹脂層の総質量に対して、5質量%から60質量%の間、好ましくは6質量%から45質量%の間、より好ましくは7質量%から40質量%の間の量で存在する。
【0029】
ガス溶解効果を有する前述の溶媒は、第一の溶媒、第二の溶媒及びこれらの組合せから好ましく選択され、第一の溶媒及び第二の溶媒は、以下に定義される。
【0030】
本発明のドライフィルムは、プリント回路板上のコーティングを保護するドライフィルムソルダーマスク又はカバー層としてプリント回路板に適用することができ、又は半導体パッケージの表面に適用することもできる。本発明のドライフィルムによって形成される層は、電気絶縁性であり、回路を保護することができ、更に回路酸化及びはんだショートの防止等の優れた効果を達成することができる。
【0031】
その上、本発明のドライフィルムは、高解像度、高現像速度、電解めっき抵抗性、無電解めっき抵抗性、高温耐久性、高湿度耐久性等を有する。したがって、本発明のドライフィルムは、プリント回路板又はウェーハ関連の製造プロセスにおけるフォトレジストとしても使用することができる。
【0032】
本発明の好ましい一実施形態により、溶媒含有ドライフィルムは、担体及びポリイミド層(樹脂層)を含むポリイミドドライフィルムである。担体は上記に定義した通りであり、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。ポリイミド層は、感光性又は非感光性ポリイミド層であってもよい。ポリイミド層は感光性ポリイミド層であることが好ましい。ポリイミド層は、ポリイミド樹脂及び溶媒を含み、このポリイミド樹脂は、ポリイミド前駆体若しくは可溶性ポリイミド又はこれらの組合せであってもよく、このような化学種は、以下で定義される。溶媒は、樹脂層の全質量に対して、少なくとも5質量%、好ましくは15質量%から60質量%の間、より好ましくは15質量%から50質量%の間、特に好ましくは15質量%から47質量%の間の総量で存在し;一般に、下限は20質量%であってもよい。この溶媒はガス溶解効果を有し、第一の溶媒、第二の溶媒及びこれらの組合せから選択され、第一の溶媒及び第二の溶媒は、以下に定義される。
【0033】
ポリイミド層のレベリング性は、そのガラス転移温度の影響を受ける。ガラス転移温度がより高いほど、ポリイミド層のレベリング性は不良になり、したがって積層を行うことが困難であり、積層プロセスの間、不溶解気泡を生成し易い。ガラス転移温度がより低いと、ポリイミド層は、積層プロセスの間粘着性となり易く、これが乏しい操作性につながる。前述の溶媒は、ポリイミド層のガラス転移温度を調節する機能も有する。本発明の一実施形態により、本発明におけるポリイミド層は、好ましくは-10℃から20℃の間、より好ましくは0℃から15℃の間のガラス転移温度を有する。
【0034】
(a)ポリイミド前駆体又は可溶性ポリイミド
ポリイミド前駆体
本発明において使用されるポリイミド前駆体は特に限定されず、当業者周知のポリアミック酸、ポリアミドエステル、反応によりポリイミドを生成することが可能な任意の材料、及びこれらの混合物等であってもよい。種々のポリイミド前駆体が、当技術分野で開発されている。例えば、台湾(ROC)特許出願第095138481号、第095141664号、第096128743号、第097151913号又は第100149594号中に開示されているものがあり、それらの内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0035】
ポリイミド前駆体は、主として式(A):
【0037】
の反復単位を有し、
式中、Gは四価有機基であり、
Pは、二価有機基であり、
Rは、C
1〜C
14アルキル、C
6〜C
14アリール、C
6〜C
14アラルキル、フェノール性基又はエチレン性不飽和基であり、
nは、0を超える整数、好ましくは1から1000の整数である。
【0038】
場合によって、ポリイミド前駆体は種々の置換基/基により変性できる。例えば、感光性基を使用することによって、感光性ポリイミド前駆体を調製することができる;ポリイミド前駆体の反応性、又はそれから調製したポリイミドの特性は、式(A)の反復単位に結合した末端基を調節することによって変更できる。
【0039】
台湾特許出願第100149594号は、式(1)から式(4):
【0041】
の反復単位のうち1つを有するポリイミド前駆体を開示しており、
式中、G
1は、独立に四価有機基を表し、
それぞれのR
xは、独立にH、又はエチレン性不飽和基を表し、
それぞれのDは、独立に窒素含有複素環基、又は-OR
*基を表し、但しR
*はC
1〜C
20アルキルであり、
それぞれのmは、0から100の整数、好ましくは5から50の整数、より好ましくは10から25の整数であり、
G、P及びRは、上記において定義した通りである。
【0042】
エチレン性不飽和基は、特に限定されず、その例にはエテニル、プロペニル、メチルプロペニル、n-ブテニル、イソブテニル、エテニルフェニル、プロペニルフェニル、プロペニルオキシメチル、プロペニルオキシエチル、プロペニルオキシプロピル、プロペニルオキシブチル、プロペニルオキシペンチル、プロペニルオキシヘキシル、メチルプロペニルオキシメチル、メチルプロペニルオキシエチル、メチルプロペニルオキシプロピル、メチルプロペニルオキシブチル、メチルプロペニルオキシペンチル、メチルプロペニルオキシヘキシル、下記の式(5)の基及び下記の式(6):
【0044】
の基が含まれるが、それらに限定されず、式中、R
12は、フェニレン、C
1〜C
8アルキレン、C
2〜C
8アルケニレン、C
3〜C
8シクロアルキレン又はC
1〜C
8ヒドロキシルアルキレンであり;R
13は、水素又はC
1〜C
4アルキルである。なかでも特に、好ましい式(6)の基は、
【0047】
四価有機基G及びG
1は、特に限定されず、その例には四価芳香族基又は四価脂肪族基が含まれるが、それらに限定されない。芳香族基は、単環式環又は多環式環であってもよく、
【0049】
及びそれらの組合せからなる群から選択されることが好ましく、
式中、Xは、それぞれ独立に水素、ハロゲン、C
1〜C
4パーフルオロアルキル又はC
1〜C
4アルキルであり、A及びBは、それぞれ独立に共有結合、C
1〜C
4アルキル、C
1〜C
4パーフルオロアルキル、アルコキシ、シラニル、酸素、硫黄、カルボニル、カルボキシレート、スルホニル、フェニル、ビフェニル、又は
【0051】
であり、式中、Jは、-O-、-SO
2-、-CH
2-、C(CF
3)
2又はC(CH
3)
2である。
【0052】
より好ましくは、四価有機基G及びG
1は、それぞれ独立に
【0054】
からなる群から選択される芳香族基であり、式中、Zは、水素又はハロゲンである。
【0055】
最も好ましくは、四価有機基G及びG
1は、それぞれ独立に
【0060】
からなる群から選択することができる。
【0061】
二価有機基Pは、特に限定されることなく、芳香族基等であるが、それらに限定されない。二価有機基Pは、それぞれ独立に
【0063】
からなる群から選択されることが好ましく、
式中、R
17は、それぞれ独立にH、C
1〜C
4アルキル、C
1〜C
4パーフルオロアルキル、メトキシ、エトキシ、ハロゲン、OH、COOH、NH
2又はSHであり、
それぞれのaは、独立に0から4の整数であり、
それぞれのbは、独立に0から4の整数であり、
R
18は、共有結合、又は-O-、-S-、-CH
2-、-S(O)
2-、
【0065】
、-C(CF3)
2-、-C(O)-、-C(CH
3)
2-、
【0067】
から選択される基であり、
式中、c及びdは、それぞれ独立に0〜20の整数であり、
R
17及びaは、上記において定義した通りであり、
R
19は、-S(O)
2-、-C(O)-、共有結合又はC
1〜C
18アルキルである。
【0068】
より好ましくは、それぞれの二価有機基Pは、
【0070】
からなる群から独立に選択され、
式中、それぞれのaは、独立に0から4の整数であり、
それぞれのZは、独立に水素、メチル、トリフルオロメチル又はハロゲンである。
【0071】
最も好ましくは、それぞれの二価有機基Pは、独立に
【0074】
二価有機基Pは、非芳香族基、例えば、
【0076】
であってもよいが、それらに限定されず、
式中、それぞれのR
20は、独立にH、メチル又はエチルであり、
e及びfは、それぞれ独立に0を超える整数である。
【0080】
式(1)から式(4)のポリイミド前駆体において、それぞれのRは、独立にC
1〜C
14アルキル、C
6〜C
14アリール、C
6〜C
14アラルキル、フェノール性基、又はエチレン性不飽和基である。C
1〜C
14アルキルは、例えば、下記の基:
【0082】
(式中pは、0から10の整数である)であってもよいが、それらに限定されない。C
1〜C
14アルキルは、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル又はオクチルであってもよいが、それらに限定されない。エチレン性不飽和基は、上記において定義した通りである。上述のC
6〜C
14アリール又はC
6〜C
14アラルキルは、
【0084】
からなる群から選択されることが好ましい。
【0087】
からなる群から選択されることが最も好ましい。
【0088】
式(1)及び式(3)のポリイミド前駆体において、それぞれのR
xは、独立にH又はエチレン性不飽和基であり、そのうちエチレン性不飽和基は、上記において定義した通りである。本発明により、それぞれのR
xは、独立にH、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロペニル、メチルプロペニル、n-ブテニル又はイソブテニルであることが好ましい;より好ましくは、それぞれのR
xは、独立にH又は、下記に示した式:
【0090】
の2-ヒドロキシプロピルメタクリレートである。
【0091】
式(4)のポリイミド前駆体において、それぞれのDは、独立に窒素含有複素環基又はOR
*含有基であり、ここでR
*はC
1〜C
20アルキルである。本発明により、用語「窒素含有複素環基」とは、非芳香族の、ヘテロ原子1〜3個を有する5〜8員単環式環、ヘテロ原子1〜6個を有する6〜12員二環式環、又はヘテロ原子1〜9個を有する11〜14員三環式環(ここで、ヘテロ原子は窒素である)を指す;それらの例には、ピリジル、イミダゾリル、モルホリニル、ピペリジル、ピペラジニル、ピロリジニル、ピロリジノニル等が含まれるが、これらに限定されない。それぞれのDは、独立に
【0094】
可溶性ポリイミド
本発明の可溶性ポリイミドは、特に限定されず、当業者公知の任意の従来の可溶性ポリイミド、例えば台湾特許出願第097101740号、第099105794号、第097138725号又は第097138792号中に開示されているもの等とすることができ、それらの内容は、それらの全体が参照のため本明細書に組み込まれている。
【0095】
本発明の可溶性ポリイミドは、主として式(B):
【0097】
の反復単位を有し、
式中、C'は四価有機基であり、
E'は、二価有機基であり、又
t'は、0を超える整数、好ましくは1から1000の整数である。
【0098】
四価有機基C'は、上記で基Gについて定義したのと同一の意味を有する。
【0099】
二価有機基E'は、上記で基Pについて定義したのと同一の意味を有する。
【0100】
場合によって、可溶性ポリイミドは種々の置換基/基により変性できる。例えば、感光性基を使用して、感光性ポリイミドを調製することができる。可溶性ポリイミドの特性は、式(B)の反復単位に結合した末端基を調節することによって変更できる。
【0101】
式(B)の反復単位に結合した末端基を調節することによって得られた変性可溶性ポリイミドには
【0103】
(式中、R
20'は、飽和又は不飽和C
2〜C
20二価有機基、好ましくは-C=C-、
【0105】
であり、R
21'は、不飽和C
2〜C
20一価有機基であり、ヘテロ原子又は-OH基によって置換でき、C'、E'及びt'は上記で定義した通りである)が含まれるが、それらに限定されない。
【0106】
好ましくは、感光性基によって変性された可溶性ポリイミドには、下記の反復単位を有し、台湾特許出願第099105794号において開示されているもの:
【0108】
を含むものが挙げられるが、これらに限定されず、
式中、A'及びJ'は、独立に四価有機基であり;B'及びD'は、独立に二価有機基であり;n'は、0又は0を超える整数であり;m'は、0を超える整数であり;又A'及びB'の少なくとも1つは、
【0110】
からなる群から選択される1種又は複数の感光性基G
*を有し、
式中、R'は、-C=C-を有する不飽和基であるか、又は
【0112】
からなる群から選択され、R
10'はアクリレート基を有する不飽和基であり、ここでR
1'が置換された又は非置換の飽和若しくは不飽和C
1〜C
20有機基であり、又R
2'が-C=C-を有する不飽和基である。
【0113】
上述の-C=C-を有する不飽和基は、
【0115】
からなる群から選択されることが好ましく、式中、R
4'及びR
5'は、それぞれ独立にH、又は置換された又は非置換のC
1〜C
7有機基であり、R
6'は、共有結合、-O-、又は置換された又は非置換のC
1〜C
20有機基である。
【0116】
より好ましくは、上述の-C=C-を有する不飽和基は、
【0118】
からなる群から選択され、式中、zは、0から6の範囲にある整数である。
【0119】
最も好ましくは、上述の-C=C-を有する不飽和基は、
【0121】
からなる群から選択され、式中、zは、0から6の範囲にある整数である。
【0122】
R
1'は、置換された又は非置換の飽和若しくは不飽和C
1〜C
20有機基であり、例えば、
【0124】
からなる群から選択でき、式中、r'は、0を超える整数、好ましくは1から20の範囲にある整数であり;o'、p'及びq'は、それぞれ独立に0又は0を超える整数であり、好ましくは0から10の範囲にある整数であり;R
4'、R
5'及びR
6'は、上記において定義した意味を有し;R
7'はH、又は置換された又は非置換のC
1〜C
12有機基であり;R
8'は、共有結合、又は
【0130】
R
10'は、アクリレート基を有する不飽和基である。本発明において、アクリレート基を有する不飽和基は、
【0132】
であることが好ましく、式中、R
17'は、H、又はメチルであり、又K1及びK2は、独立に0から6の範囲にある、好ましくは2から4の範囲にある整数である。
【0133】
式(4')により、式(4')の化合物は、n'が0でない場合、2つの重合単位を有する。前記2つの重合単位は、無作為に配列することができる。すなわち、式(4')における重合単位は、感光性基を有するm'連続単位の規則正しい配列のほかに、それに続いて、非感光性基を有するn'連続単位の配列を有することができる。
【0134】
(b)溶媒
本発明において使用されるガス溶解効果を有する溶媒は、第一の溶媒、第二の溶媒、又はこれらの組合せであってもよい。
【0135】
第一の溶媒は、ガス溶解効果に加えて他の効果をもたらすこともできる。例えば、第一の溶媒は、樹脂合成又は配合のプロセスの間に必要とされる溶媒として使用できる(例えば、ポリイミド前駆体を合成するために必要とされる溶媒、又は可溶性ポリイミドのために要する溶媒)。第一の溶媒は、極性非プロトン性溶媒が好ましく、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルスルホキシド、N,N-ジメチル-メタンアミド(DMF)、N,N-ジエチル-メタンアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、ピロカテコール、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジオキソラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TGDE)、メタノール、エタノール、ブタノール、2-ブトキシエタノール、γ-ブチロラクトン(GBL)、キシレン、トルエン、ヘキサメチルホスホルアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、及びこれらの混合物から選択できる。
【0136】
ガス溶解効果に加えて、第二の溶媒は、溶媒極性を調節するのにも有用でありうる。第一の溶媒と比較すると、第二の溶媒は気泡溶解溶媒であり、より良好なガス溶解効果を有する。第二の溶媒は、好ましくは、
【0138】
パーフルオロ芳香族化合物、C
2〜C
20パーフルオロアルカン、トリ-(C
1〜C
6パーフルオロアルキル)アミン、パーフルオロエーテル、C
6〜C
16アルカン、及びこれらの組合せから選択され、
式中、
R
1"、R
9"及びR
10"は、独立にH、C
1〜C
20アルキル、C
2〜C
20アルケニル又はC
2〜C
20アルキニルであり、
R
7"は、H、又はC
1〜C
3アルキルであり、
R
2"は、C
1〜C
10アルキル又はC
10〜C
30アルケニルであり、
R
3"は、C
2〜C
20アルキル、-C
1〜C
10アルキル-O-C
1〜C
10アルキル、又はC
10〜C
30アルケニルであり、
R
4"及びR
5"は、独立にC
1〜C
10アルキルであるか、又はR
4"及びR
5"は、それらが結合される酸素原子と一緒に5〜6員複素環を形成し、
R
6"は、C
1〜C
15アルキル又はC
4〜C
8シクロアルキルであり、
R
8"は、C
2〜C
10アルキレンであり、又
R
11"及びR
12"は、独立にC
1〜C
10アルキルである。
【0139】
広範な研究及び再現実験により、本発明の発明者らは、フッ素、アルキル基、又はエステル基を含有する溶媒が、より良好なガス溶解効率を有し、好ましい第二の溶媒であることを見出した。以下に第二の溶媒の種類を例示する。
【0142】
第一の溶媒は、樹脂層の総質量に対して、0.5質量%から50質量%、好ましくは1質量%から28質量%の間、より好ましくは1.5質量%から25質量%の間の量で存在する。第二の溶媒が存在する場合、第二の溶媒は、樹脂層の総質量に対して、3質量%から45質量%、好ましくは5質量%から43質量%の間、又より好ましくは7質量%から40質量%の間の量で存在する。
【0143】
本発明の一実施形態により、溶媒含有ドライフィルムは、担体及び樹脂層を含み;担体がポリエチレンテレフタレートであり、樹脂層がポリイミド層である場合、本発明の溶媒の総量は、樹脂層の総質量に対して、15質量%から60質量%の間、好ましくは20質量%から50質量%の間、又より好ましくは25質量%から47質量%の間の量である。本発明において使用される溶媒は、第一の溶媒及び場合によって第二の溶媒を含み;第一の溶媒は、ガス溶解効果を有し、ポリイミド前駆体又は可溶性ポリイミドの合成に使用される溶媒であり、第一の溶媒の種類は、上記に定義した通りである。第一の溶媒の量は、樹脂層の総質量に対して、0.5質量%から50質量%の間、好ましくは1質量%から28質量%の間、より好ましくは1.5質量%から25質量%の間の量である。更に、より良好なガス溶解効果を有する第二の溶媒が添加されると、真空積層装置を使用せずとも、基板とポリイミド層との間の望ましくないガスがポリイミド層中に急速に溶解し、溶解後長期間にわたって再発泡の現象が起こらないような、より良好なガス溶解効果を達成することができる。第二の溶媒の種類は、上記に定義した通りである。存在する場合、第二の溶媒の量は、樹脂層の総質量に対して、3質量%から45質量%の間、好ましくは5質量%から43質量%の間、より好ましくは7質量%から40質量%の間である。第二の溶媒の量が少な過ぎる場合(例えば3質量%未満)、ドライフィルムは、積層プロセスの間、より不良な気泡溶解効果を有し、そのため第二の溶媒は、顕著な且つ急速な気泡溶解効果を達成することができず、再発泡の現象が生じ易い恐れがある。しかし、第二の溶媒の量が多過ぎる場合(例えば45質量%を超える)、ドライフィルムは過剰に疎水性となり、そのためグルーの流動が生じる;別の成分とのポリイミド層の相容性は乏しく、したがってポリイミド層は基板への乏しい接着性を有し、操作性がより悪化する。その上、近年環境保護への意識が成長し、当業界は、エネルギー消費を低減するためより低い温度で実施することができる方法に焦点を合わせている。低い温度の方法が適用される場合、第二の溶媒は、7質量%から15質量%の間の量で存在することができ、本発明のドライフィルムは依然として良好な気泡溶解効果を達成する。
【0144】
第二の溶媒は、フッ素、アルキル基又はエステル基を含有する気泡溶解性溶媒が好ましい。エステル基を含有する気泡溶解性溶媒は、より良好なガス溶解効果を有し、これらは、例えば
【0147】
ドライフィルム形成方法
例えば、本発明のドライフィルムは、下記の工程により調製できる(一例としてポリイミド樹脂を取り上げる):
(1)ポリイミド樹脂及び第一の溶媒を含むポリイミド樹脂組成物を調製する工程、
(2)場合によって、このポリイミド樹脂組成物に第二の溶媒又は添加剤を添加する工程、
(3)工程(2)から調製したポリイミド樹脂組成物を、担体上に適用して、担体及び樹脂層を含むドライフィルム半製品を形成する工程、
(4)このドライフィルム半製品をオーブンに移して、溶媒の一部が除去されるように加熱及び乾燥し、それにより樹脂層内の溶媒の総量を減少させ;加熱時間及び温度の調節によってドライフィルム半製品内の適正量の溶媒(例えば、樹脂層の総質量に対して、少なくとも5質量%)の存在を確実にし、溶媒が樹脂層の総質量に対して、少なくとも5質量%の総量で存在する溶媒含有ドライフィルムを形成する工程、並びに
(5)場合によって、樹脂層上に保護フィルムを適用する工程。
【0148】
上記の工程(1)で言及したポリイミド樹脂組成物において、第一の溶媒の量は特に限定されず、必要とされる場合当業者により調節することができる。組成物の総質量に対して、添加される第一の溶媒の量は、20質量%から90質量%、好ましくは45質量%から80質量%である。第一の溶媒の種類は、上記において定義した通りである。
【0149】
上記の工程(2)における第二の溶媒の種類は、上記において定義した通りである。
【0150】
上記の工程(2)において、当業者公知の任意の適切な添加剤を、樹脂組成物に場合によって添加できる。例えば、樹脂層が感光性ポリイミド層である場合、添加剤は光開始剤及びアクリレートモノマーを含む。上述の感光性ポリイミド樹脂の種類は、先に本明細書において定義した通りである。
【0151】
光開始剤は、光照射のもとでフリーラジカルを生成させ、フリーラジカルの移動による重合を開始するために使用される。本発明の感光性ポリイミド樹脂の組成物において有用な光開始剤には特別な制約はない。光開始剤は、波長約350nm〜約500nmを有する光の吸収によりフリーラジカルを生成することが可能な化合物を含むことが好ましい。
【0152】
光開始剤の量は、感光性ポリイミド100質量部に対して約0.01質量部から約20質量部、好ましくは約0.05質量部から約5質量部である。本発明における使用に適した光開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス-4,4'-ジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾフェノン、カンファーキノン、3,5-ビス(ジエチルアミノベンジリデン)-N-メチル-4-ピペリドン、3,5-ビス(ジメチルアミノベンジリデン)-N-メチル-4-ピペリドン、3,5-ビス(ジエチルアミノベンジリデン)-N-エチル-4-ピペリドン、3,3'-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノ)クマリン、3,3'-カルボニル-ビス(7-ジメチルアミノ)クマリン、リボフラビンテトラブチレート、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、3,5-ジメチルチオキサントン、3,5-ジイソプロピルチオキサントン、1-フェニル-2-(エトキシカルボニル)オキシイミノプロパン-1-オン、ベンゾインエーテル、ベゾインイソプロピルエーテル、ベンゾアントロン、5-ニトロアセナフテン、2-ニトロフルオレン、アントロン、1,2-ベンゾアントラキノン、1-フェニル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、チオキサンテン-9-オン、10-チオキサンテノン、3-アセチルインドール、2,6-ジ(p-ジメチルアミノベンザル)-4-カルボキシシクロヘキサノン、2,6-ジ(p-ジメチルアミノベンザル)-4-ヒドロキシシクロヘキサノン、2,6-ジ(p-ジエチルアミノベンザル)-4-カルボキシシクロヘキサノン、2,6-ジ(p-ジエチルアミノベンザル))-4-ヒドロキシシクロヘキサノン、4,6-ジメチル-7-エチルアミノクマリン、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン、7-ジエチルアミノ-3-(1-メチルベンゾイミダゾリル)クマリン、3-(2-ベンゾイミダゾリル)-7-ジエチルアミノクマリン、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノクマリン、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンゾオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)キノリン、4-(p-ジメチルアミノスチリル)キノリン、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)-3,3-ジメチル-3H-インドール及びこれらの組合せからなる群から選択できる。好ましい光開始剤は、ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド又はこれらの組合せである。
【0153】
前述のアクリレートモノマーは、少なくとも1つの-C=C-結合を含有するアクリレートモノマー、好ましくは2つ以上の-C=C-結合を含有する多官能性アクリレートモノマーである。このようなモノマーの添加は、分子間に架橋を形成し、組成物の実用性を向上させ得る。次の基から選択されるアクリレートモノマーを、本発明において使用し得ることが好ましい:エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAエチレングリコール変性ジアクリレート、ビスフェノールAエチレングリコール変性ジメタクリレート、ビスフェノールFエチレングリコール改変性アクリレート、ビスフェノールFエチレングリコール変性ジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメチルアクリレート及びこれらの組合せ。アクリレートモノマーが存在する場合、感光性ポリイミド前駆体100質量部に対して、添加されるアクリレートモノマーの量は、約5質量部から80質量部、好ましくは10質量部から40質量部である。
【0154】
上記の工程(3)における担体の種類は、上記において定義した通りである。
【0155】
上記の工程(4)において、加熱温度及び時間への特別な制約はない。工程(4)における加熱処理は、主として樹脂層中の溶媒量の減少を目指している。例えば、加熱は、乾燥のため適正温度80℃から250℃の間で30秒から10分にわたって行うことができる。従来のドライフィルム調製のプロセスの間、ドライフィルムの使用の間の高濃度の揮発性有機化合物の発生を防ぐため、又ドライフィルムの貯蔵の間のコーティングされたグルーの流動に起因するグルー過多現象(ブリーディング)を減らすため、上記工程(4)に対応する溶媒除去の工程で、溶媒がほとんど完全に(1質量%未満の量まで)揮発するような加熱がしばしば行われる。しかし、従来の工程とは異なり、本発明では、溶媒除去の工程で溶媒は完全に除去されずに、適正量で残留し(例えば、樹脂層の総質量に対して、少なくとも5質量%)、これにガス溶解効果への役割を与えることができ、こうして有利な気泡溶解効果を達成する。
【0156】
上記の工程(4)における溶媒は、第一の溶媒、第二の溶媒、及びそれらの混合物から選択される。一般に、種々の溶媒の沸点の差異のため、ドライフィルム中の溶媒の総量は、加熱温度及び時間の適切な調節によって制御することができる。上述のように、真空積層装置なしで、基板とポリイミド層との間の望ましくないガスが急速にポリイミド層中に溶解し、且つ溶解後長期間再発泡の現象が生じないという効果を達成するために、工程(4)で得られるドライフィルム中の溶媒の総量は、ポリイミド樹脂層の総質量に対して、15質量%から60質量%の間が好ましく、又第二の溶媒の量はポリイミド樹脂層の総質量に対して、3質量%から45質量%の間が好ましい。
【0157】
工程(5)における保護フィルムには、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET) 又はポリエチレンナフタレート(PEN);ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリメタクリレート樹脂;ポリイミド樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリシクロオレフィン樹脂;ポリオレフィン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリウレタン樹脂;トリアセテートセルロース(TAC)又はこれらの組合せが含まれるが、それらに限定されない。保護フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリシクロオレフィン樹脂、トリアセテートセルロース又はこれらの組合せが好ましい。保護フィルムは、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0158】
従来技術では、ドライフィルムは、プリント回路板又はウェーハへのカバーレイ又はパッシベーション層として適用される。真空積層装置における投資が高コスト過ぎるために、商業生産では長いプロセスサイクル及び低い生産性がボトルネックとなる。本発明の溶媒含有ドライフィルムは、真空積層装置なしで、望ましくないガスを容易に溶解させるガス溶解効果を有する溶媒の特性を活用することができる。したがって、本発明のドライフィルムは、従来技術で使用されるよりも簡単且つ費用効果が高い方法の使用によって、プリント回路板、ウェーハ、ディスプレイ又はタッチパネル等の分野に応用できる。
【0159】
基板上へのドライフィルムの適用方法
本発明は更に、基板上へのドライフィルムの適用方法であって、
(a)場合による保護フィルムを除去した後、ドライフィルムを、ドライフィルムの樹脂層が基板に面する形で基板に積層する工程、並びに
(b)場合によって、加圧下での気泡溶解操作を行う工程
を含む、適用方法を提供する。
【0160】
先に定義した上記の基板は、フレキシブル回路板、ウェーハ、ディスプレイ又はタッチパネル等を含むことができる。
【0161】
上記の積層方法には、ローラー積層、ホットプレス、真空積層又は真空プレスが含まれる。
【0162】
上記の工程(a)は、ロールツーロールの形で実施できることが好ましい。当業者公知のロールツーロール操作は、ロールに巻きつけた材料からサンプルを引き出す工程、サンプルを処理する工程、並びに処理したサンプルを、ローラーとして巻き取る工程を指す。例えば、
図1に示したように、基板Aが、基板Aのロールから引き出され、ドライフィルムロール1からのドライフィルムを、ローラー2及び3の使用によって積層し、次いで製品Bを形成するため巻き取られる。したがって、本発明のドライフィルムは、連続方法によって基板に積層でき、このことは、方法の単純化及び方法のスピードアップのために有利である。
【0163】
真空積層装置なしで、基板と樹脂層との間の望ましくないガスを急速に樹脂層中に溶解させることを達成するために、上記の工程(b)は、当業者周知の加圧下での気泡溶解操作を使用する工程によって実施できる。例えば、ドライフィルムがその上に適用されている担体がロールとして巻き取られることが好ましく、次いでロール全体がオートクレーブ中に運ばれて、気泡を溶解させる。加圧は、30℃から100℃の間の温度及び2atmから10atmの間の圧力で、10から60分間行われることが好ましい。
【0164】
本発明のドライフィルムはガス溶解効果を有する溶媒を含有するので、基板とポリイミド層との間に残留する望ましくないガスは、基板にポリイミド層を積層する間に、ポリイミド層中に溶解させることができる。したがって、それにより最終製品の品質が効果的に向上すると予想される。更に、ポリイミド層中に溶解した空気は、露光、焼付け及び現像等の、その後の処理工程で除去でき、或いは、場合によって、加熱などの更なる処理工程の使用によって除去できる。例えば、ドライフィルムを回路板に限定すると、露光、焼付け(例えば、80℃〜100℃で5分から20分間)及び現像等の工程によって、所望のパターンがドライフィルム上に形成できる;次いで、ポリイミド前駆体が環化され、加熱により重合されてポリイミドになる。このような工程(特に焼付け及び/又は加熱の工程)では、ポリイミド層中に溶解した空気を、溶媒の揮発と共に除去できる。
【0165】
本発明のドライフィルムの適用
本発明のドライフィルムは、真空積層装置なしで、一般的な積層技術の使用によって、プリント回路板、ウェーハ、ディスプレイ又はタッチパネル等の基板に積層できる。したがって、従来技術と比較して、本発明のドライフィルムの積層は、より容易に入手可能な装置の使用によって、より単純な工程により実施することができる。全体として、本発明は、真空積層装置又は他の処理装置を採用する従来技術よりも費用効果が高い。
【0166】
更に、本発明のドライフィルムは、真空積層装置の使用なしで、樹脂層と基板との間に存在するガスの量を効果的に減少させ、それによって、製品の品質を改良することができる。
【実施例】
【0167】
(合成実施例1)
感光性ポリイミド前駆体樹脂PI-1
21.81g(0.1モル)のピロメリト酸二無水物(本明細書では以後「PMDA」と呼ぶ)を、200gのN-メチル-2-ピロリドン(本明細書では以後「NMP」と呼ぶ)に溶解させた。次いで得られた混合物を50℃まで加熱し、反応のため2時間にわたって撹拌した。1.161g(0.01モル)の2-ヒドロキシエチルアクリレート(本明細書では以後「HEA」と呼ぶ)をゆっくり添加し、次いで混合物を、50℃の一定温度で2時間にわたって反応のため撹拌した。次いで、20.024g(0.1モル)の4,4'-オキシジアニリン(本明細書では以後「ODA」と呼ぶ)を溶液に添加し、完全に溶解させた後、更に50℃の一定温度で6時間にわたって反応のため撹拌して、感光性ポリイミド前駆体樹脂PI-1を形成した。その固体含量は約17質量%である。この固体含量は、PI-1中の不揮発性物質の質量百分率であり、例えば、樹脂を250℃又は300℃で1時間焼き付け、実際の不揮発性物質の質量を得るために焼付け前後の質量差を測定し、PI-1中の不揮発性物質の質量百分率を計算する工程によって得ることができる。
【0168】
(合成実施例2)
感光性ポリイミド前駆体樹脂PI-2
21.81g(0.1モル)のPMDAを、200gのNMPに溶解させた。得られた混合物を、次いで50℃まで加熱し、反応のため2時間にわたって撹拌した。13.01g(0.01モル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレート(本明細書では以後「HEMA」と呼ぶ)をゆっくり添加し、次いで混合物を、50℃の一定温度で2時間にわたって反応のため撹拌した。次いで、20.024g(0.1モル)のODAを溶液に添加し、完全に溶解させた後、更に50℃の一定温度で6時間にわたって反応のため撹拌して、感光性ポリイミド前駆体樹脂PI-2を形成した。その固体含量は約21質量%である。
【0169】
(合成実施例3)
ポリイミド前駆体樹脂PI-3
21.81g(0.1モル)のPMDAを、200gのNMPに溶解させた。得られた混合物を、次いで50℃まで加熱し、反応のため2時間にわたって撹拌した。0.601g(0.01モル)のイソプロパノールをゆっくり添加し、次いで混合物を、50℃の一定温度で2時間にわたって反応のため撹拌した。次いで、32.02g(0.1モル)の2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(本明細書では以後「TFMB」と呼ぶ)を溶液に添加し、完全に溶解させた後、更に50℃の一定温度で6時間にわたって反応のため撹拌して
、ポリイミド樹脂前駆体PI-3を形成した。その固体含量は約21質量%である。
【0170】
(合成実施例4)
カルボキシル基含有可溶性ポリイミドPI-4
43.62g(0.2モル)のPMDA及び30.43g(0.2モル)の3,5-ジアミノ安息香酸(本明細書では以後「DABA」と呼ぶ)を提供し、300mLのNMPと混合した。得られた混合物を、室温で1時間撹拌した。次いで、混合物を50℃まで加熱し、4時間撹拌した。4時間後、50mLのトルエンを添加した。150℃でディーンスターク装置により水分を除去した。水分除去が完了した後、トルエンを除去し、カルボキシル基含有ポリイミド溶液PI-4(固体含量は約19質量%である)が得られた。
【0171】
(合成実施例5)
イソシアネートにより変性されたカルボキシル基を有する可溶性ポリイミドPI-5
370gのPI-4を提供し、1.4gの1-メチルイミダゾール(本明細書では以後「1-MI」と呼ぶ)、15.5gの2-イソシアナトエチルメタクリレート(本明細書では以後「IEM」と呼ぶ)及び0.1gのフェノチアジン(本明細書では以後「PTZ」と呼ぶ)と混合した。混合物を、室温で1時間撹拌した。1時間後、混合物を60℃まで加熱し、6時間撹拌して、イソシアネートにより変性されたカルボキシル基を有する可溶性ポリイミドPI-5を得た。その固体含量は約19質量%である。
【0172】
(合成実施例6)
ヒドロキシル基含有可溶性ポリイミドPI-6
88.85g(0.2モル)の4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(本明細書では以後「6FDA」と呼ぶ)及び57.26g(0.2モル)の(2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(本明細書では以後「BAPA」と呼ぶ)を提供し、300mLのNMPと混合した。得られた混合物を、室温で1時間撹拌した。次いで、混合物を50℃まで加熱し、4時間撹拌した。4時間後、50mLのトルエンを添加した。150℃でディーンスターク装置により水分を除去した。水分除去及びトルエン除去が完了した後、ヒドロキシル基含有ポリイミド溶液PI-6が得られた。その固体含量は約32質量%である。
【0173】
(合成実施例7)
イソシアネートにより変性されたヒドロキシル基を有する可溶性ポリイミドPI-7
440gのPI-6を提供し、1.67gの1-MI、36.86gのIEM及び0.12gのPTZと混合した。混合物を、室温で1時間撹拌した。1時間後、混合物を60℃まで加熱し、6時間撹拌して、イソシアネートにより変性されたヒドロキシル基を有する可溶性ポリイミドPI-7を得た。その固体含量は約37質量%である。
【0174】
(合成実施例8)
ジイソシアネートにより変性されたカルボキシル基を有する可溶性ポリイミドPI-8
370gのPI-4を提供し、1.4gの1-MI、13.01gのHEMA、14.01gのテトラメチレンジイソシアネート(本明細書では以後「TMDC」と呼ぶ)及び0.1gのPTZと混合した。混合物を、室温で1時間撹拌した。1時間後、混合物を60℃まで加熱し、6時間撹拌して、ジイソシアネートにより変性されたカルボキシル基を有する可溶性ポリイミドPI-8を得た。その固体含量は約24質量%である。
【0175】
(合成実施例9)
ジイソシアネートにより変性されたヒドロキシル基を有するポリイミドPI-9
440gのPI-6を提供し、1.67gの1-MI、13.01gのHEMA、14.01gのTMDC及び0.12gのPTZと混合した。混合物を、室温で1時間撹拌した。1時間後、混合物を60℃まで加熱し、6時間撹拌して、ジイソシアネートにより変性されたヒドロキシル基を有するポリイミドPI-9を得た。その固体含量は約36質量%である。
【0176】
下記の例で使用される略語は、以下で定義される。
DA1:
【0177】
【化38】
【0178】
DA2:
【0179】
【化39】
【0180】
DA3:
【0181】
【化40】
【0182】
(合成実施例10)
イソシアネート変性可溶性ポリイミドPI-10
64.85g(0.2モル)のDA1及び42.46g(0.2モル)の2,2'-ジメチルビフェニル-4,4'-ジアミン(本明細書では以後「DMDB」と呼ぶ)を提供し、300mLのNMPと混合した。混合物を、室温で1時間撹拌した。次いで、混合物を50℃まで加熱し、4時間撹拌した。4時間後、50mLのトルエンを添加した。130℃でディーンスターク装置により水分を除去した。水分除去及びトルエン除去が完了した後、溶液を室温まで冷却した。7g(0.05モル)の2-イソシアナトエチルアクリレート(本明細書では以後「2-IEA」と呼ぶ)、0.05gの1-MI及び0.06gのPTZを添加した。溶液を80℃まで加熱し、8時間撹拌して、イソシアネート変性可溶性ポリイミドPI-10を得た。その固体含量は約27質量%である。
【0183】
(合成実施例11)
イソシアネート変性ポリイミドPI-11
73.256g(0.2モル)のDA2及び42.46g(0.2モル)のDMDBを提供し、350mLのNMPと混合した。混合物を、室温で1時間撹拌した。次いで、混合物を50℃まで加熱し、4時間撹拌した。4時間後、50mLのトルエンを添加した。130℃でディーンスターク装置により水分を除去した。水分除去及びトルエン除去が完了した後、溶液を室温まで冷却した。7g(0.05モル)の2-IEA、0.05gの1-MI及び0.06gのPTZを添加した。溶液を80℃まで加熱し、8時間撹拌して、イソシアネート変性ポリイミドPI-11を得た。その固体含量は約26質量%である。
【0184】
(合成実施例12)
イソシアネート変性可溶性ポリイミドPI-12
100.074g(0.2モル)のDA3及び42.46g(0.2モル)のDMDBを提供し、450mLのNMPと混合した。混合物を、室温で1時間撹拌した。次いで、混合物を50℃まで加熱し、4時間撹拌した。4時間後、50mLのトルエンを添加した。130℃でディーンスターク装置により水分を除去した。水分除去及びトルエン除去が完了した後、溶液を室温まで冷却した。7g(0.05モル)の2-IEA、0.05gの1-MI及び0.06gのPTZを添加した。溶液を80℃まで加熱し、8時間撹拌して、イソシアネート変性可溶性ポリイミドPI-12を得た。その固体含量は約24質量%である。
【0185】
(合成実施例13)
ヒドロキシル基含有可溶性ポリイミドPI-13
88.85g(0.2モル)の6FDA、28.63g(0.1モル)のBAPA及び23.03g(0.1モル)のビス(4-アミノフェノキシ)メタン(本明細書では以後「MEMG」と呼ぶ)を提供し、300mLのNMPと混合した。混合物を、室温で1時間撹拌した。次いで、混合物を50℃まで加熱し、4時間撹拌した。4時間後、50mLのキシレンを添加した。150℃でディーンスターク装置により水分を除去した。水分除去及びキシレン除去が完了した後、ヒドロキシル基含有ポリイミドPI-13が得られ、その固体含量は約31質量%である。
【0186】
(合成実施例14)
エポキシ変性可溶性感光性ポリイミドPI-14
実施例13から得られた140.5gのポリイミドPI-13を提供し、6.11g(0.05モル)のグリシジルメタクリレート(本明細書では以後「GMA」と呼ぶ)、0.015gのテトラブチルアンモニウムブロミド(本明細書では以後「TBAB」と呼ぶ)及び0.06gのヒドロキノンモノメチルエーテル(本明細書では以後「MEHQ」と呼ぶ)を添加した。混合物を、次いで90℃まで加熱し、12時間撹拌して、可溶性感光性ポリイミドPI-14を得た。その固体含量は約31質量%である。
【0187】
(合成実施例15)
-COOH基含有可溶性ポリイミドPI-15
100.074g(0.2モル)のDA3及び42.46g(0.2モル)のDMDBを提供し、450mLのNMPと混合した。混合物を、室温で1時間撹拌した。次いで、混合物を50℃まで加熱し、4時間撹拌した。4時間後、50mLのトルエンを添加した。130℃でディーンスターク装置により水分を除去した。水分除去及びトルエン除去が完了した後、COOH基含有ポリイミドPI-15が得られた。その固体含量は約24質量%である。
【0188】
(合成実施例16)
エポキシ変性可溶性感光性ポリイミドPI-16
実施例15から得られた142.5gのPI-15を提供し、6.11g(0.05モル)のGMA、0.015gのTBAB及び0.06gのMEHQを添加した。混合物を、次いで90℃まで加熱し、12時間撹拌して、エポキシ変性可溶性感光性ポリイミドPI-16を得た。その固体含量は約25質量%である。
【0189】
(合成実施例17)
感光性ポリイミド前駆体樹脂PI-17
2.181g(0.01モル)のPMDAを200gのNMPに溶解させ、この溶液を50℃まで加熱し、2時間撹拌した。1.161g(0.01モル)のHEAをゆっくり添加し、次いで50℃の一定温度で2時間にわたって反応のため撹拌した。次いで、18.018g(0.09モル)のODAを溶液に添加し、完全に溶解させた後、18.0216g(0.09モル)のPMDAを添加した。混合物を、更に50℃の一定温度で6時間にわたって反応のため撹拌した。2.0024g(0.01モル)のODAを添加した。混合物を1時間撹拌して、感光性ポリイミド前駆体樹脂PI-17を得た。その固体含量は約17質量%である。
【0190】
(合成実施例18)
アミン基含有ポリイミド溶液PI-18
32.023g(0.1モル)のTFMB及び39.98g(0.09モル)の6FDAを提供し、300mLのNMPと混合した。混合物を、室温で1時間撹拌した。次いで、混合物を50℃まで加熱し、4時間撹拌した。4時間後、50mLのトルエンを添加した。150℃でディーンスターク装置により水分を除去した。水分除去及びトルエン除去が完了した後、アミン基含有ポリイミド溶液PI-18が得られた。その固体含量は約19質量%である。
【0191】
(合成実施例19)
ポリイミド溶液PI-19
32.023g(0.1モル)のTFMB及び0.9806g(0.02モル)の無水マレイン酸を提供し、300mLのNMPと混合した。混合物を、室温で1時間撹拌した。39.98g(0.09モル)の6FDAを添加し、混合物を次いで50℃まで加熱し、4時間撹拌した。4時間後、50mLのトルエンを添加した。150℃でディーンスターク装置により水分を除去した。水分除去及びトルエン除去が完了した後、ポリイミド溶液PI-19が得られた。その固体含量は約19質量%である。
【0192】
(合成実施例20)
ポリイミド溶液PI-20
32.023g(0.1モル)のTFMB及び4.9646g(0.02モル)の4-フェニルエチニルフタル酸無水物を提供し、300mLのNMPと混合した。混合物を、室温で1時間撹拌した。39.98g(0.09モル)の6FDAを添加し、混合物を次いで50℃まで加熱し、4時間撹拌した。4時間後、50mLのトルエンを添加した。150℃でディーンスターク装置により水分を除去した。水分除去及びトルエン除去が完了した後、ポリイミド溶液PI-20が得られた。その固体含量は約20質量%である。
【0193】
(合成実施例21)
ポリイミド溶液PI-21
32.023g(0.1モル)のTFMB及び48.8664g(0.11モル)の6FDAを提供し、300mLのNMPと混合した。混合物を、室温で1時間撹拌し、次いで、50℃まで加熱し、4時間撹拌した。4時間後、50mLのトルエンを添加した。150℃でディーンスターク装置により水分を除去した。水分除去及びトルエン除去が完了した後、ポリイミド溶液PI-21が得られた。その固体含量は約20質量%である。
【0194】
(合成実施例22)
アクリル感光性基含有ポリイミド溶液PI-22
32.023g(0.1モル)のTFMB及び48.8664g(0.11モル)の6FDAを提供し、300mLのNMPと混合した。混合物を、室温で1時間撹拌し、次いで50℃まで加熱し、4時間撹拌した。4時間後、50mLのトルエンを添加した。150℃でディーンスターク装置により水分を除去した。水分除去及びトルエン除去が完了した後、2.322g(0.02モル)のHEAを50℃で添加し、混合物を4時間撹拌して、アクリル感光性基含有ポリイミド溶液PI-22が得られた。その固体含量は約21質量%である。
【0195】
(合成実施例23)
ポリイミド溶液PI-23
32.023g(0.1モル)のTFMB及び48.8664g(0.11モル)の6FDAを提供し、300mLのNMPと混合した。混合物を、室温で1時間撹拌し、次いで50℃まで加熱し、4時間撹拌した。4時間後、50mLのトルエンを添加した。150℃でディーンスターク装置により水分を除去した。水分除去及びトルエン除去が完了した後、0.02モルの3-(フェニルエチニル)アニリンを50℃で添加し、混合物を4時間撹拌して、ポリイミド溶液PI-23が得られた。その固体含量は約23質量%である。
【0196】
ドライフィルムの調製
表1から表6に掲げた第二の溶媒を、合成実施例1〜23において調製したポリイミド前駆体溶液又は可溶性ポリイミド溶液100質量部に場合によって添加した。添加した第二の溶媒の量は、それぞれの表に示す通りであった。次いで、それぞれの組成物を、それぞれブレードコーターを使用してポリエチレンテレフタレート(PET)担体上に一様に適用し、オーブン内で焼き付けた。焼付け温度及び時間は、それぞれ、各表中に示される。こうして、ポリイミド前駆体のコーティング又は可溶性ポリイミドのコーティングを含むドライフィルムが得られた;コーティングの厚さは、約20μmであった。コーティングの前に添加した第一の溶媒の量及び第二の溶媒の量(質量部)は、100質量部のポリイミド前駆体溶液又は可溶性ポリイミド溶液に対するものであった。一方、乾燥後、第一の溶媒及び第二の溶媒の量(質量%)は、樹脂層の全質量に対するものであった。
【0197】
ドライフィルムの試験
上記のドライフィルムは、溶媒含量並びに表面粘着性、ガラス転移温度(Tg)、積層性等を含む物理的特性について試験した。それぞれの試験は、以下に記述される。
【0198】
溶媒含量の試験
0.01gのポリイミド前駆体コーティング又は可溶性ポリイミドコーティング(PET担体は含まれない)を採取し、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解させた。モデルDB1701のカラム(0.53mm、30mm、1.5um)を有するAgilent Technologies Co., Ltd.社により製造された7890GCガスクロマトグラフを使用して、定量的ガスクロマトグラフィーを実施した。
【0199】
表面粘着性の試験
20×20cmドライフィルムを採取し、ドライフィルムのポリイミド層が銅はく(箔)で完全に被覆されるように、ドライフィルムのポリイミド層が銅はくに面した状態で30×30cm銅はく上に静かに置いた。30秒後、ドライフィルムを銅はくから剥がして、銅はくの表面に残留したドライフィルムの百分率を観察した。残留なしを0で表し、全部残留したものを10で表し、0〜10%残留を1で表す等とした。
【0200】
Tgの測定
ドライフィルムのTgを、熱機械分析装置(TMA、Texas Instruments Incorporatedにより製造されたTA Q400機器)を使用して測定した。測定範囲は-50℃から100℃の間であり、温度は10℃/分で上昇させた。
【0201】
積層性の試験
20×20cmドライフィルムを採取し、圧力3kgf/cm
2による温度80℃の熱ローラーの使用によって、形成した回路をその上に有する銅張積層板上に積層した。ドライフィルムのポリイミド層は、銅張積層板に面していた。銅張積層板は、ライン幅L/S=30/30μmを有している。4時間静置した後、次いで気泡の状態を観察し、その状態を気泡の残留率により、0が、気泡の残留率0%であることを表し、10が、気泡の残留率100%であることを表し、1が、気泡の残留率0〜10%であることを表す等、10グレードに分類した。
【0202】
加圧試験
20×20cmドライフィルムを採取し、圧力3kgf/cm
2による温度80℃の熱ローラーの使用によって、形成した回路をその上に有する銅張積層板上に積層した。ドライフィルムのポリイミド層は、銅張積層板に面していた。銅張積層板は、ライン幅L/S=30/30μmを有している。次いで、その積層板を、50℃/5気圧/30分の加圧条件下にあるオートクレーブ内に置いた。加圧した後、気泡の状態を観察し、その状態を気泡の残留率に従って10グレードに分類し、ここで0は、気泡の残留率0%であることを表し、10は、気泡の残留率100%であることを表し、1は、気泡の残留率0〜10%であることを表す等である。
【0203】
再発泡の試験
加圧した気泡除去操作を行った後、このフィルム(20×20cm)を、25℃及びRH50〜70%の環境条件に24時間置いた。24時間後、光学顕微鏡を使用して気泡の状態を観察し、その状態を気泡の出現率により、0が、気泡の出現率0%であることを表し、10が、気泡の出現率100%であることを表し、1が、気泡の出現率0〜10%であることを表す等、10グレードに分類した。
【0204】
グルー過多(ブリーディング)の試験
加圧した気泡除去操作を行った後、このフィルム(20×20cm)を、光学顕微鏡を使用して観察し、開口部の端部又はフィルムの端部におけるブリーディング問題の評価を行った。開口部の端部を超えて0.5mmの距離でグルーが流動する場合、「ブリーディング問題」が生じている。
【0205】
実施例の試験結果を、表1から表6に示した。
【0206】
【表1】
【0207】
【表2】
【0208】
【表3】
【0209】
【表4A】
【0210】
【表4B】
【0211】
【表5A】
【0212】
【表5B】
【0213】
【表6】
【0214】
表1は、種々の溶媒含量を有するドライフィルムに関する表面粘着性及び積層性の試験結果を示す。表1に示した結果により、ドライフィルムは、その中に含まれる溶媒が、従来技術の予想を超える、ある量以上を達成する場合、ガス溶解効果をもたらすことができる。しかし、溶媒の量が少な過ぎると(4.9質量%)、溶媒は気泡を効果的に除去することができない;溶媒の量が多過ぎると(64.9質量%)、表面粘着が起こる。
【0215】
表2〜表6は、樹脂組成物に、より良好なガス溶解効果を有する他の溶媒を添加する工程によって得られるドライフィルムに関する。
【0216】
表2は、乾燥後の溶媒の総量が異なっており、すなわち乾燥ドライフィルム中の溶媒の総量が、それぞれ4.9質量%、10.4質量%、15質量%、18.9質量%、31.6質量%、40.1質量%、52質量%及び56.4質量%であるドライフィルムに関する表面粘着性及び積層性の試験結果を示す。実施例1-11から1-17において、ドライフィルム中の第二の溶媒の量は、約7質量%から約8質量%の間の量に実質的に保持される。表2に示したように、実施例1-10中の溶媒の総量は4.9質量%であり、気泡溶解効果は良好ではない。実施例1-14及び実施例1-16のドライフィルムは、より良好な気泡溶解効果を有する;しかし実施例1-16のドライフィルムは、溶媒の総量が最大52質量%なので、他の実施例におけるドライフィルムと同様な抗粘着効果を有しない。加えて実施例1-17のドライフィルムは、溶媒の総量が最大66.4質量%なので、抗粘着効果は一層不良である。更に、表1(第二の溶媒を含まない)及び表2の比較により、同一の溶媒の総量で、第二の溶媒を含有するドライフィルムは、より低い気泡の残留率を示し、したがってより良好な気泡溶解効果を有することが示され得る。例えば、実施例1-5及び1-13のドライフィルムでは、溶媒の総量は、約20質量%である;しかし、第二の溶媒を添加しなかった実施例1-5について気泡の残留率はグレード8に分類され、一方で第二の溶媒を添加した実施例1-13について気泡の残留率はグレード6に低下した。この結果は、第二の溶媒の添加が、気泡溶解効果を促進することを示す。関連した実施例についての比較の結果を、下記の表7に掲げている。
【0217】
【表7】
【0218】
表3における実施例1-19から1-26は、乾燥後の第一の溶媒と第二の溶媒との比率が異なっているが、それらの中で溶媒の総量は同一である(約40質量%)ドライフィルムに関する表面粘着性及び積層性の試験結果を示す。表3に示したように、同一の溶媒総量では、第二の溶媒の量の増加は、気泡の残留率の低下に有利である。表3の実施例1-18では、第二の溶媒の量は3質量%を超えるが、溶媒の総量が4.9質量%であり、そのため気泡溶解効果は良好ではない。表3の実施例1-19において、同一の溶媒の総量(約40質量%)で、乾燥後の第二の溶媒の量が3質量%未満である場合、気泡の残留率を低下させる効果が達成されないことを知ることができる(表2の実施例1-15との比較)。乾燥後の第二の溶媒の量が3質量%から45質量%の間(すなわち実施例1-20から1-26)である場合、気泡の残留率は、グレード4、3、2又は1にまで突然低下し、このことは、乾燥後の第二の溶媒の量が3質量%から45質量%の間である場合、気泡溶解効果を効果的に向上させ得ることを示している。更に、表3の実施例1-27(溶媒の総量が約50質量%)を見ると、乾燥後の第二の溶媒の量が45質量%を超えると、グルー過多(ブリーディング)が生じ、抗粘着効果が良好にならない点を知ることができる。
【0219】
表4は、第二の溶媒を添加して、又は添加せずに、種々のポリイミド前駆体又は可溶性ポリイミドで作製したドライフィルムに関する表面粘着性及び積層性の試験結果を示す。それぞれの実施例において、第二の溶媒は、コーティング前に4質量%の量で組成物中に添加され、乾燥後6質量%から9質量%の間に保たれた。実施例の結果についての納得のいく見方は、種々のポリイミド前駆体又は可溶性ポリイミドで作製した全てのドライフィルムがガス溶解効果を有すること、並びに第二の溶媒の添加は、ドライフィルムにおける気泡の残留率を更に低下させることができ、こうしてより良好な効果を得ることができることを示している。
【0220】
表5は、種々の第二の溶媒を含有するドライフィルムに関する表面粘着性及び積層性の試験結果を示す。表5における実施例の納得のいく見方は、全ての本発明の溶媒含有ドライフィルムがガス溶解効果をもたらすこと、並びに適正な第二の溶媒を選択すると、更にガス溶解効果を向上させ得ることを示している。実施例17-3から17-11及び実施例17-12から17-14の結果から、エーテル又はアルコールに属する第二の溶媒が、より高い気泡残留率を有することを知ることができ、このことは、エーテル又はアルコールに属する第二の溶媒が、置換された又は非置換のアルカン又はエステル等の他の第二の溶媒よりも、顕著でないガス溶解効果を有することを示している。異性体化合物である第二の溶媒の中で、分岐鎖を有する第二の溶媒(実施例17-3)は、直鎖を有する第二の溶媒(実施例17-4)よりも良好なガス溶解効果を有する。
【0221】
表6は、積層後、加圧下での気泡溶解操作を受けたドライフィルムに関する。結果は、本発明の溶媒含有ドライフィルムが、加圧下での気泡溶解操作の間に、気泡の残留率を著しく低下させ、優れた効果が得られることを示す。表6の実施例1-31は、加圧下での気泡溶解操作の工程だけが表2の実施例1-14と異なる。結果は、加圧した気泡溶解の工程を採用する実施例1-31が、気泡の残留率をグレード0に低下させることができることを示している。更に、表6は、ドライフィルム中の溶媒が乾燥後60質量%を超える総量で存在する場合(実施例1-33及び1-34)、加圧下での気泡溶解操作をドライフィルムが受けていても、気泡の残留率への改善が限定され、又は気泡の残留率が改善されても抗粘着効果が良好でないことも示している。