(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0014]本議論は代表的な態様のみの記載であり、本発明のより広い形態を限定することは意図しないことが当業者によって理解される。
【0011】
[0015]本発明は、概して、ポリアリーレンスルフィド繊維、及びポリアリーレンスルフィド繊維を含む製造物に関する。また、繊維及び製造物を形成する方法も開示される。より具体的には、ポリアリーレンスルフィド繊維には反応性官能化ポリアリーレンスルフィドを含ませることができ、これによってポリアリーレンスルフィドと他の材料(繊維を形成するために用いるポリアリーレンスルフィド組成物に対する添加剤、及び複合体内の繊維に隣接して配置することができる外部材料の両方を包含する)との間の向上した相溶性を与えることができる。ポリアリーレンスルフィド繊維は、反応性官能化ポリアリーレンスルフィドポリマーを1種類以上の添加剤と共に含む組成物から形成することができる。ポリアリーレンスルフィドポリマーの反応性によって、組成物中に含まれるポリアリーレンスルフィドポリマーと1種類又は複数の添加剤との間の相互作用を促進させることができ、これにより組成物全体にわたる添加剤の分散を向上させ、ポリアリーレンスルフィドポリマーと1種類又は複数の添加剤との間の混和性を向上させることができる。
【0012】
[0016]ポリアリーレンスルフィド組成物全体にわたる添加剤の向上した分散によって、繊維形成中におけるポリアリーレンスルフィドポリマーと添加剤との間の相分離を抑制することができる。これは任意の直径の繊維、例えば約5ミリメートル以下、例えば約0.5ミリメートル〜約5ミリメートル、又は約1ミリメートル〜約3ミリメートルの直径を有する大径繊維に関して有益であるが、これは小径繊維を形成する際に特に有益である可能性がある。例えば、本ポリアリーレンスルフィド組成物を用いて、約500マイクロメートル未満、約100マイクロメートル未満、約50マイクロメートル未満、約20マイクロメートル未満、又は約10マイクロメートル未満の直径を有するポリアリーレンスルフィド繊維を形成することができ、繊維形成中において組成物の相の間の相分離を抑止することができる。一態様においては、小径繊維としては、約6グラム/10,000メートル未満(約6.7dpf未満のデニール数)、約5グラム/10,000メートル未満(約5.6dpf未満)、約4グラム/10,000メートル未満(約4.4dpf未満)、又は約3グラム/10,000メートル未満(3.3dpf未満)の線質量密度を有するものを挙げることができる。延伸繊維は、更により低く、例えば約2グラム/10,000メートル未満(約2.2dpf未満)、又は約1.5グラム/10,000メートル未満(約1.6dpf未満)の線質量密度を有することができる。例えば、延伸ステープル繊維は、約100マイクロメートル未満、例えば約20〜約50マイクロメートルの間の断面直径を有することができ、メルトブローン繊維は、更により小さく、例えば約10マイクロメートル未満、又は約1〜約5マイクロメートルの間の直径に成形することができる。
【0013】
[0017]相分離を抑止するのに加えて、反応性官能化ポリアリーレンスルフィドポリマーを1種類以上の添加剤と共に用いることによって、高いレベルの1種類又は複数の添加剤をポリアリーレンスルフィド組成物中に導入することを促進することができる。例えば、ポリアリーレンスルフィド組成物には、ポリアリーレンスルフィド繊維形成性組成物中に伝統的に導入される添加剤のレベルの約125%より多く、又は約150より多い量の添加剤(例えば、着色剤、耐衝撃性改良剤、充填剤、安定剤等)を含ませることができる。組成物中の添加剤のより高いレベルによって、添加剤の所望の特性を増大させることができる。例えば、組成物中により高いレベルの耐衝撃性改良剤を含ませることによって、繊維は、従来公知のポリアリーレンスルフィド繊維と比べて向上し且つより長く持続するレベルの色、可撓性、伸び、及び耐衝撃性を示すことができる。
【0014】
[0018]ポリアリーレンスルフィド繊維は、個々のステープル繊維(別個の長さの繊維)又はフィラメント(連続繊維)、或いは複数のステープル繊維又はフィラメントを含むヤーンの形態であってよい。ヤーンとしては、例えば、一緒に撚糸した複数のステープル繊維(紡績糸)、撚糸しないで一緒に積層したフィラメント(不撚マルチフィラメントヤーン)、一定度合いの撚糸と共に積層したフィラメント(撚糸マルチフィラメントヤーン)、撚糸を行うか又は行わない単一フィラメント(モノフィラメント)等を挙げることができる。
【0015】
[0019]ポリアリーレンスルフィド繊維は、単一の押出機から押出されるポリアリーレンスルフィド組成物又はこの組成物と更なるポリマーとのブレンドから形成される一成分繊維であってよい。更なるポリマーとしては、例えば、ポリオレフィン、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル等を挙げることができる。かかる繊維においては、ポリアリーレンスルフィド組成物は、通常は、繊維の約30重量%〜約95重量%、幾つかの態様においては約35重量%〜約90重量%、幾つかの態様においては約40重量%〜約80重量%を構成する。組成物の添加剤と同様に、反応性官能化ポリアリーレンスルフィドは、ブレンドのポリアリーレンスルフィドと更なるポリマーとの間の向上した相溶性を与えることができ、これによって繊維の物理特性を向上させることができる。
【0016】
[0020]ポリアリーレンスルフィド繊維はまた、別々の押出機から押出されるが、一緒に紡糸して繊維を形成する、ポリアリーレンスルフィド組成物及び少なくとも1種類の更なるポリマー組成物から形成される多成分繊維(例えば二成分繊維)であってもよい。かかる多成分繊維は、シース/コア、サイドバイサイド、海島等のような種々の構造を有することができる。例えばシース/コア構造においては、第1のポリマー成分の別個の区域を、第2のポリマー成分の別個の区域で取り囲む。通常は、第2のポリマー成分はポリアリーレンスルフィド組成物であってよく、これは全繊維の約30重量%〜約95重量%、幾つかの態様においては約35重量%〜約90重量%、幾つかの態様においては約40重量%〜約80重量%を構成することができる。1つの区域のポリアリーレンスルフィド組成物と、第2の隣接する区域のポリマーとの間の向上した相溶性によって、二成分繊維の全体的な強度及びテナシティー特性を向上させることができる。
【0017】
[0021]ポリアリーレンスルフィドポリマーと、繊維を形成するポリアリーレンスルフィドと混合することができる他の材料との間の相溶性を向上させることに加えて、ポリアリーレンスルフィドポリマーの反応性によって、複合体内のポリアリーレンスルフィド繊維と他の材料との相溶性を向上させることもでき、これにより複合体の異なる成分の間のより良好な接着をもたらすことができる。例えば、ヤーン中のポリアリーレンスルフィドステープル繊維又はフィラメントには、ポリアリーレンスルフィド繊維を、同じ材料及び/又は異なる材料で形成される繊維と組み合わせて含ませることができる。ポリアリーレンスルフィド繊維の反応性官能化ポリアリーレンスルフィドによって、隣接するポリアリーレンスルフィド繊維の間、及びポリアリーレンスルフィド繊維と異なる材料で形成される繊維との間の接着を向上させることができ、これによりヤーンの強度及び寿命を向上させることができる。同様に、本ポリアリーレンスルフィド繊維を含ませた織成又は不織ウェブは、ウェブの個々の繊維の間の向上した接着を示すことができる。
【0018】
[0022]繊維中の反応性官能化ポリアリーレンスルフィドによって与えられる他の材料との向上した相溶性は、複合体の非繊維成分に拡張することができる。例えば、ポリアリーレンスルフィドポリマーの反応性によって、繊維と、繊維及び/又は繊維状構造体の表面に施すことができる被覆との間の接着を向上させることができる。被覆材料としては、例えば、着色剤、接着剤、サイズ剤などを挙げることができる。例として、ポリアリーレンスルフィド繊維は、繊維強化複合体、例えば繊維強化ラバー複合体の形成において用いられるような接着剤で被覆することができる。ポリアリーレンスルフィド繊維と、繊維上に被覆した接着剤との間の向上した接着のために、被覆した繊維は複合体の取り囲んでいるマトリクスへの向上した結合を示すことができる。ポリアリーレンスルフィド繊維は更に、繊維強化複合体における強化材料として非被覆ポリアリーレンスルフィド繊維を含ませる態様においては、直接マトリクス材料への向上した接着を示すことができる。複合体としては、例えば、組織状又は一方向プリプレグ、連続又は不連続整列繊維強化複合体、不連続ランダム配向強化複合体等を挙げることができる。かかる繊維強化複合体は、自動車又は工業用途のためのエンドレスベルト、タイヤなどのような高性能用途において用いることができる。
【0019】
[0023]繊維を形成するために用いるポリアリーレンスルフィド組成物は、出発ポリアリーレンスルフィドを反応性官能化ジスルフィド化合物と共に溶融加工することによって形成することができる。これにより出発ポリアリーレンスルフィドの加工性を向上させることができるだけでなく、低ハロゲン含量を有する繊維を与えることもできる。溶融体中における出発ポリアリーレンスルフィドと反応性官能化ジスルフィド化合物との間の反応によって、ジスルフィド化合物の反応性官能基を出発ポリアリーレンスルフィド骨格に付加して、これによって反応性官能化ポリアリーレンスルフィドを形成することができる。しかしながら、更にはジスルフィド化合物と出発ポリアリーレンスルフィドとの間の反応によって、出発ポリアリーレンスルフィドポリマーのポリマー連鎖切断を引き起こすこともできる。このポリマー連鎖切断によって、反応性官能化ポリアリーレンスルフィドは出発ポリアリーレンスルフィドと比べてより低い溶融粘度を示すことができる。例えば、反応性官能化ポリアリーレンスルフィドを含むポリアリーレンスルフィド組成物は、出発ポリアリーレンスルフィドを含む同様のポリアリーレンスルフィド組成物の溶融粘度の約50%未満、約48%未満、又は約45%未満の溶融粘度を示すことができる。同様のポリアリーレンスルフィド組成物とは、反応性官能化ジスルフィド化合物を加えることを除いて全ての同じ成分を同量で含むものである。ポリアリーレンスルフィドポリマーの溶融粘度を減少させることによって組成物の加工性を向上させることができ、反応性官能化ポリアリーレンスルフィド組成物から繊維を形成する際に関係するコストの削減を与えることができる。例えば、本ポリアリーレンスルフィド組成物は、ISO試験No.11443にしたがって1200秒
−1の剪断速度及び310℃の温度で測定して約2000ポイズ未満、約1500ポイズ未満、又は約1200ポイズ未満の溶融粘度を有することができる。更に、出発ポリアリーレンスルフィドは高分子量で高溶融粘度のポリアリーレンスルフィドであってよいので、低いハロゲン含量を有することもできる(より高い分子量のポリアリーレンスルフィドはより少ない末端基を含み、したがってより低いハロゲン含量を有する)。出発ポリアリーレンスルフィドのポリマー連鎖切断によって溶融粘度を減少させることができ、出発ポリマーの低いハロゲン含量を維持しながら良好な加工特性を有するポリマーを与えることができる。例えば、本ポリアリーレンスルフィド組成物は、約1500ppm未満、約1000ppm未満、約900ppm未満、約600ppm未満、又は約400ppm未満のハロゲン含量を有することができる。ハロゲン含量は、例えばパールボンブ燃焼を用いて元素分析を行い、次にイオンクロマトグラフィーを行うことによって求めることができる。
【0020】
[0024]出発ポリアリーレンスルフィドは、式(I):
【0022】
(式中、Ar
1、Ar
2、Ar
3、及びAr
4は、同一か又は異なり、6〜18個の炭素原子のアリーレン単位であり;W、X、Y、及びZは、同一か又は異なり、−SO
2−、−S−、−SO−、−CO−、−O−、−COO−、又は1〜6個の炭素原子のアルキレン若しくはアルキリデン基から選択される二価の連結基であり、連結基の少なくとも1つは−S−であり;そして、n、m、i、j、k、l、o、及びpは、独立して、0、又は1、2、3、若しくは4であり、但しこれらの合計は2以上である)
の繰り返し単位を含むポリアリーレンチオエーテルであってよい。アリーレン単位のAr
1、Ar
2、Ar
3、及びAr
4は、選択的に置換又は非置換であってよい。有利なアリーレン系は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセン、及びフェナントレンである。出発ポリアリーレンスルフィドは、通常は約30モル%より多く、約50モル%より多く、又は約70モル%より多いアリーレンスルフィド(−S−)単位を含む。一態様においては、出発ポリアリーレンスルフィドは、少なくとも約85モル%の、2つの芳香環に直接結合しているスルフィド連結基を含む。一態様においては、出発ポリアリーレンスルフィドは、本発明においてその成分としてフェニレンスルフィド構造:−(C
6H
4−S)
n−(式中、nは1以上の整数である)を含むものとして定義されるポリフェニレンスルフィドである。
【0023】
[0025]組成物の形成プロセスには、出発ポリアリーレンスルフィドの合成(これは反応性官能化ポリアリーレンスルフィドを形成する前に合成することができる)を含ませることができる。しかしながら、これは組成物形成プロセスの必須要件ではなく、他の態様においては、出発ポリアリーレンスルフィドは公知の供給業者から購入することができる。例えば、Florence, Kentucky,米国のTiconaから入手できるFortron(登録商標)ポリフェニレンスルフィドを購入して出発ポリアリーレンスルフィドとして用いることができる。
【0024】
[0026]出発ポリアリーレンスルフィドの形成において用いることができる合成技術は、当該技術において一般的に知られている。例として、ポリアリーレンスルフィドを製造するプロセスには、ヒドロスルフィドイオンを与える材料、例えばアルカリ金属硫化物を、有機アミド溶媒中でジハロ芳香族化合物と反応させることを含ませることができる。
【0025】
[0027]アルカリ金属硫化物は、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム、又はこれらの混合物であってよい。アルカリ金属硫化物が水和物又は水性混合物である場合には、アルカリ金属硫化物を、重合反応の前に脱水操作によって処理することができる。アルカリ金属硫化物はまた、その場で生成させることもできる。更に、少量のアルカリ金属水酸化物を反応中に含ませて、アルカリ金属硫化物と共に非常に少量で存在する可能性があるアルカリ金属ポリスルフィド又はアルカリ金属チオスルフェートのような不純物を除去するか又は(例えばかかる不純物を無害の材料に変化させるために)反応させることができる。
【0026】
[0028]ジハロ芳香族化合物は、限定なしに、o−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、p−ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、メトキシ−ジハロベンゼン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシド、又はジハロジフェニルケトンであってよい。ジハロ芳香族化合物は、単独か又はその任意の組合せのいずれかで用いることができる。具体的な代表的ジハロ芳香族化合物としては、限定なしに、p−ジクロロベンゼン;m−ジクロロベンゼン;o−ジクロロベンゼン;2,5−ジクロロトルエン;1,4−ジブロモベンゼン;1,4−ジクロロナフタレン;1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン;4,4’−ジクロロビフェニル;3,5−ジクロロ安息香酸;4,4’−ジクロロジフェニルエーテル;4,4’−ジクロロジフェニルスルホン;4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド;及び4,4’−ジクロロジフェニルケトン;を挙げることができる。
【0027】
[0029]ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素であってよく、同じジハロ芳香族化合物中の2つのハロゲン原子は、同一か又は互いと異なっていてよい。一態様においては、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、又はこれらの2以上の化合物の混合物をジハロ芳香族化合物として用いる。
【0028】
[0030]当該技術において公知なように、ポリアリーレンスルフィドの末端基を形成するか、或いは重合反応及び/又はポリアリーレンスルフィドの分子量を調節するために、モノハロ化合物(必ずしも芳香族化合物ではない)をジハロ芳香族化合物と組み合わせて用いることもできる。
【0029】
[0031]出発ポリアリーレンスルフィドはホモポリマーであってよく、又はコポリマーであってよい。ジハロ芳香族化合物の好適な選択的組み合わせによって、2以上の異なる単位を含むポリアリーレンスルフィドコポリマーを形成することができる。例えば、p−ジクロロベンゼンをm−ジクロロベンゼン又は4,4’−ジクロロジフェニルスルホンと組み合わせて用いる場合には、式(II):
【0031】
の構造を有するセグメント、及び式(III):
【0033】
の構造を有するセグメント、又は式(IV):
【0035】
の構造を有するセグメントを含む出発ポリアリーレンスルフィドコポリマーを形成することができる。
【0036】
[0032]一般に、充填したアルカリ金属硫化物の有効量1モルあたりの1種類又は複数のジハロ芳香族化合物の量は、一般に1.0〜2.0モル、1.05〜2.0モル、又は1.1〜1.7モルであってよい。これにより、ポリアリーレンスルフィドにハロゲン化アルキル(一般に塩化アルキル)末端基を含ませることができる。
【0037】
[0033]出発ポリアリーレンスルフィドを製造する方法には、有機アミド溶媒中で重合反応を行うことを含ませることができる。重合反応において用いる代表的な有機アミド溶媒としては、限定なしに、N−メチル−2−ピロリドン;N−エチル−2−ピロリドン;N,N−ジメチルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド;N−メチルカプロラクタム;テトラメチル尿素;ジメチルイミダゾリジノン;ヘキサメチルリン酸トリアミド、及びこれらの混合物を挙げることができる。反応において用いる有機アミド溶媒の量は、例えばアルカリ金属硫化物の有効量1モルあたり0.2〜5キログラム(kg/モル)であってよい。
【0038】
[0034]重合は段階的重合プロセスによって行うことができる。第1重合段階には、ジハロ芳香族化合物を反応器に導入し、そしてジハロ芳香族化合物を、水の存在下、約180℃〜約235℃、又は約200℃〜約230℃の温度において重合反応にかけ、ジハロ芳香族化合物の転化率が理論的に必要な量の約50モル%以上に達するまで重合を継続することを含ませることができる。
【0039】
[0035]第2重合段階においては、水を反応スラリーに加えて、重合系中の水の全量が充填したアルカリ金属硫化物の有効量1モルあたり約7モル、又は約5モルまで増加するようにする。次に、重合系の反応混合物を、約250℃〜約290℃、約255℃〜約280℃、又は約260℃〜約270℃の温度に加熱することができ、かくして形成される出発ポリマーの溶融粘度がポリアリーレンスルフィドの所望の最終レベルに上昇するまで重合を継続することができる。第2重合段階の継続時間は、例えば約0.5〜約20時間、又は約1〜約10時間であってよい。
【0040】
[0036]出発ポリアリーレンスルフィドは、線状、半線状、分岐、又は架橋型であってよい。線状ポリアリーレンスルフィドは、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主構成単位として含む。一般に、線状ポリアリーレンスルフィドは約80モル%以上のこの繰り返し単位を含んでいてよい。線状ポリアリーレンスルフィドは少量の分岐単位又は架橋単位を含んでいてよいが、分岐又は架橋単位の量はポリアリーレンスルフィドの全モノマー単位の約1モル%未満であってよい。線状ポリアリーレンスルフィドポリマーは、上記に記載の繰り返し単位を含むランダムコポリマー又はブロックコポリマーであってよい。
【0041】
[0037]3つ以上の反応性官能基を有する少量の1種類以上のモノマーをポリマー中に導入することによって与えられる架橋構造又は分岐構造を有していてよい半線状ポリアリーレンスルフィドを出発ポリアリーレンスルフィドとして用いることができる。例えば、3つ以上の反応性官能基を有するモノマーから、ポリマーの約1モル%〜約10モル%の間を形成することができる。半線状ポリアリーレンスルフィドの製造において用いることができる方法は、当該技術において一般的に知られている。例として、半線状ポリアリーレンスルフィドを形成するのに用いるモノマー成分に、分岐ポリマーの製造において用いることができる分子あたり2以上のハロゲン置換基を有する一定量のポリハロ芳香族化合物を含ませることができる。かかるモノマーは、式:R’X
n(式中、それぞれのXは、塩素、臭素、及びヨウ素から選択され、nは3〜6の整数であり、R’は、約4個以下のメチル置換基を有していてよい価数nの多価芳香族基であり、R’中の炭素原子の総数は6〜約16の範囲内である)によって表すことができる。半線状ポリアリーレンスルフィドを形成するのに用いることができる分子あたり2個より多いハロゲンで置換されている幾つかのポリハロ芳香族化合物の例としては、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3−ジクロロ−5−ブロモベンゼン、1,2,4−トリヨードベンゼン、1,2,3,5−テトラブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロ−2,4,6−トリメチルベンゼン、2,2’,4,4’−テトラクロロビフェニル、2,2’,5,5’−テトラヨードビフェニル、2,2’,6,6’−テトラブロモ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、1,2,3,4−テトラクロロナフタレン、1,2,4−トリブロモ−6−メチルナフタレンなど、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
[0038]重合の後、出発ポリアリーレンスルフィドを液体媒体で洗浄することができる。例えば、出発ポリアリーレンスルフィドを、混合物を形成する間に、他の成分と混合する前に、水、及び/又は限定なしにアセトン、N−メチル−2−ピロリドンなどのポリアリーレンスルフィドを分解しない有機溶媒、塩溶液、及び/又は酢酸若しくは塩酸のような酸性媒体で洗浄することができる。出発ポリアリーレンスルフィドは、当業者に一般に知られている逐次的方法で洗浄することができる。酸性溶液又は塩溶液による洗浄によって、ナトリウム、リチウム、又はカルシウム金属イオン末端基濃度を約2000ppmから約100ppmに減少させることができる。
【0043】
[0039]出発ポリアリーレンスルフィドは熱水洗浄プロセスにかけることができる。熱水洗浄の温度は、約100℃以上、例えば約120℃より高く、約150℃より高く、又は約170℃より高くてよい。
【0044】
[0040]出発ポリアリーレンスルフィドを形成するための重合反応装置は特に限定されないが、高粘度流体の形成において通常的に用いられている装置を用いることが通常は望ましい。かかる反応装置の例としては、アンカータイプ、多段式タイプ、螺旋リボンタイプ、スクリューシャフトタイプなど、或いはこれらの変形形状のような種々の形状の撹拌ブレードを有する撹拌装置を有する撹拌タンクタイプの重合反応装置を挙げることができる。かかる反応装置の更なる例としては、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー等のような混練において通常的に用いられている混合装置が挙げられる。重合の後、溶融した出発ポリアリーレンスルフィドを、通常は所望の構造のダイを取り付けた押出オリフィスを通して反応器から排出し、冷却し、回収することができる。通常は、有孔ダイを通して出発ポリアリーレンスルフィドを排出してストランドを形成することができ、これを水浴中で巻き取り、ペレット化し、乾燥する。出発ポリアリーレンスルフィドはまた、ストランド、顆粒、又は粉末の形態であってもよい。
【0045】
[0041]出発ポリアリーレンスルフィドポリマー又はコポリマーの分子量は特に限定されないが、一態様においては、出発ポリアリーレンスルフィド(1種類以上の出発ポリアリーレンスルフィドポリマー及び/又はコポリマーのブレンドも包含することができる)は、比較的高い分子量及び低いハロゲン含量を有していてよい。例えば、出発ポリアリーレンスルフィドは、約25,000g/モルより大きく、又は約30,000g/モルより大きい数平均分子量、及び約60,000g/モルより大きく、又は約65,000g/モルより大きい重量平均分子量を有していてよい。低ハロゲン含量の出発ポリアリーレンスルフィドは、一般に、約1000ppm未満、約900ppm未満、約600ppm未満、又は約400ppm未満のハロゲン含量を有していてよい。
【0046】
[0042]出発ポリアリーレンスルフィドは、反応性官能化ジスルフィド化合物と共に溶融化合して反応性官能化ポリアリーレンスルフィドを形成することができる。一態様においては、反応性官能化ポリアリーレンスルフィドは出発ポリアリーレンスルフィドの形成と連係して合成することができ、即ち、出発ポリアリーレンスルフィドを合成し、出発ポリアリーレンスルフィドをポリマーの初期形成とインラインでジスルフィド化合物との反応によって反応性官能化して反応性官能化ポリアリーレンスルフィドを形成することができる。しかしながら、上述したようにこれは必須要件ではなく、出発ポリアリーレンスルフィドは、別に、反応性官能化ポリアリーレンスルフィドを形成する前に合成することができる。
【0047】
[0043]一般に、ジスルフィド化合物は式(V):
R
1−S−S−R
2 (V)
(式中、R
1及びR
2は、同一か又は異なっていてよく、独立して1〜約20個の炭素原子を含む炭化水素基である)
の構造を有していてよい。例えば、R
1及びR
2は、アルキル、シクロアルキル、アリール、又は複素環式基であってよい。更に、R
1及びR
2の少なくとも1つは、ジスルフィド化合物の1つ又は複数の末端における反応性官能基を含んでいてよい。例えば、R
1及びR
2の少なくとも1つは、末端カルボキシル基、ヒドロキシル基、置換又は非置換アミノ基、ニトロ基などを含んでいてよい。出発ポリアリーレンスルフィドと混合することができるような反応性末端基を含むジスルフィド化合物の例としては、限定なしに、2,2’−ジアミノジフェニルジスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルジスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ジチオサリチル酸、ジチオグリコール酸、α,α’−ジチオジ乳酸、β,β’−ジチオジ乳酸、3,3’−ジチオジピリジン、4,4’−ジチオモルホリン、2,2’−ジチオビス(ベンゾチアゾール)、2,2’−ジチオビス(ベンズイミダゾール)、2,2’−ジチオビス(ベンゾオキサゾール)、及び2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールを挙げることができる。
【0048】
[0044]用いる出発ポリアリーレンスルフィドの量とジスルフィド化合物の量との比は、約1000:1〜約10:1、約500:1〜約20:1、又は約400:1〜約30:1であってよい。一態様においては、反応性官能化ポリアリーレンスルフィド組成物の所望の溶融粘度を発現させるのに十分な反応性官能化ジスルフィド化合物を出発ポリアリーレンスルフィドに加えることができる。しかしながら過度に多いジスルフィド化合物を出発ポリアリーレンスルフィドに加えると、ポリアリーレンスルフィド組成物の形成中に反応性官能化ジスルフィド化合物と混合物の他の成分、例えばUV安定剤との間に望ましくない相互作用が引き起こされる可能性がある。
【0049】
[0045]ポリアリーレンスルフィド組成物には、組成物の重量基準で約10重量%〜約99.5重量%、例えば組成物の重量基準で約20重量%〜約90重量%の量の反応性官能化ポリアリーレンスルフィド(複数のポリアリーレンスルフィドのブレンドも包含する)を含ませることができる。
【0050】
[0046]反応性官能化ポリアリーレンスルフィドは、一般にポリアリーレンスルフィド組成物に関して意図される最終用途及び組成物を形成するのに用いる加工方法に応じて、任意の好適な分子量及び溶融粘度のものにすることができる。例えば、反応性官能化ポリアリーレンスルフィドは、約500ポイズ未満の溶融粘度を有する低粘度材料、約500ポイズ〜約1500ポイズの間の溶融粘度を有する中粘度ポリアリーレンスルフィド、又は約1,500ポイズより大きい溶融粘度を有する高溶融粘度ポリアリーレンスルフィドにすることができる。溶融粘度は、ISO試験No.11443にしたがって1200秒
−1の剪断速度及び310℃の温度において測定することができる。
【0051】
[0047]反応性官能化ポリアリーレンスルフィドは、1種類以上の添加剤と混合してポリアリーレンスルフィド組成物を形成することができる。一態様においては、出発ポリアリーレンスルフィドの反応性官能化は、1種類以上の添加剤を組成物に加えるのと連係して行うことができる。例えば、出発ポリアリーレンスルフィドポリマーを、反応性官能化ジスルフィド化合物及び1種類又は複数の添加剤と共に溶融加工して組成物を形成することができる。この態様においては、反応性官能化ジスルフィド化合物及び1種類又は複数の添加剤を、溶融加工ユニット内において出発ポリアリーレンスルフィドに、互いと同時か、別々か、又はこれらの所望の組み合わせで加えることができる。他の態様によれば、反応性官能化ポリアリーレンスルフィドは別の操作で形成することができ、この形成の後に反応性官能化ポリアリーレンスルフィドを1種類又は複数の添加剤と共に溶融加工することができる。
【0052】
[0048]ポリアリーレンスルフィドの反応性官能基と組成物の1種類又は複数の添加剤との間の向上した相互作用は、増加した結合の形成、電荷−電荷相互作用、電荷−結合相互作用、又は成分の間の任意の他の好ましい相互作用のためである可能性がある。例えば、ポリアリーレンスルフィドの反応性官能化によって、組成物のポリアリーレンスルフィドと1種類以上の添加剤との間の共有又は非共有(例えば水素又はイオン)結合の形成を促進することができる。このようにして、組成物中に含ませる添加剤を考慮してかかる相互作用が促進されるようにジスルフィド化合物の反応性官能基を選択することが有益である可能性がある。例えば、エポキシ変性耐衝撃性改良剤のようなエポキシ官能基を含む添加剤を加えることを考察する場合、2つの間の共有結合の形成が促進されるように、出発ポリアリーレンスルフィドに加えるためのカルボキシル含有官能基を選択することが有益である可能性がある。ポリアリーレンスルフィド及び添加剤の反応性の変性及び/又は選択は、組成物の反応性官能化ポリアリーレンスルフィドと1種類又は複数の添加剤との間の相互作用を最大にするように標準的な手順にしたがって評価することができる。
【0053】
[0049]限定なしにUV安定剤、耐衝撃性改良剤、充填剤、着色剤、潤滑剤等をはじめとする当該技術において一般的に知られている1種類以上の添加剤をポリアリーレンスルフィド組成物中に含ませることができる。例えば一態様においては、ポリアリーレンスルフィド組成物にUV安定剤を含ませることができる。UV安定剤は、一般にポリアリーレンスルフィド組成物の重量基準で約0.5重量%より多く、約1重量%より多く、約2重量%より多く、約5重量%より多く、又は約10重量%より多い量で組成物中に含ませることができる。例として、ポリアリーレンスルフィド組成物に、約0.5重量%〜約15重量%の間、約1重量%〜約8重量%の間、又は約1.5重量%〜約7重量%の間のUV安定剤を含ませることができる。
【0054】
[0050]反応性官能化ポリアリーレンスルフィドをUV安定剤と共に用いることによって、ポリアリーレンスルフィド組成物から形成される製造物は、UV放射線による劣化に対して優れた抵抗性を示すことができる。例えば、本ポリアリーレンスルフィド組成物(及びこれから形成される製造物)は、通常の非官能化ポリアリーレンスルフィドを含む同様の組成物と比べて、一定時間のUV経時変化の後により少ない色の変動を示すことができる。例えば、反応性官能化ポリアリーレンスルフィドをUV安定剤と共に含むポリアリーレンスルフィド組成物から形成される製造物は、約25未満、約20未満、又は約18未満の一定時間のUV経時変化の後のΔEを示すことができる。一態様においては、本ポリアリーレンスルフィド組成物は、第2の組成物が反応性官能化ポリアリーレンスルフィドではなく非官能化ポリアリーレンスルフィドを含む点においてのみ本ポリアリーレンスルフィド組成物と異なる第2の組成物から形成される第2の製造物のΔEの約90%未満、約80%未満、又は約70%未満であるΔEを示すことができる。UV経時変化は、例えば約420nmにおいて約1W/m
2のUV露光を約16時間、約50kJ/m
2の全UV露光量行うことができる。勿論、その代わりに他のUV露光条件を適用することができる。例えば、当該技術において公知の加速UV経時変化プロセスを代わりに用いることができる。
【0055】
[0051]UV経時変化の効果における変動は、Pocket Guide to Digital Printing, F. Cost, Delmar Publishers, Albany, N.Y., ISBN-0-8273-7592-1, p.144及び145、並びに"Photoelectric color difference meter", Journal of Optical Society of America, vol. 48, p.985-995, S. Hunter, (1958)(いずれもそれらの全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されている「CIELAB」として知られる標準的な試験法にしたがって、光学式読み取り装置を用いて吸光度を測定することによって定量化することができる。より具体的には、CIELAB試験法は3つの「ハンター」スケール値であるL
*、a
*、及びb
*を規定し、これらは色覚の反対色理論に基づく知覚色の3つの特性に対応し、次のように規定される。
【0056】
L
*=明度(又は光度);0〜100の範囲;0=暗、100=明;
a
*=赤/緑軸;−100〜100の範囲;正の値は赤色調であり、負の値は緑色調である;
b
*=黄/青軸;−100〜100の範囲;正の値は黄色色調であり、負の値は青色調である。
【0057】
[0052]色の測定は、積分球を用いるDataColor 650分光光度計を用いて行うことができ、測定は正反射光を除去しないモードを用いて行う。また、色座標は、ASTM−D2244−11にしたがって、光源D65/10°、A/10°、又はF2/10°観察装置視野角の下で、CIELABユニットを用いて計算することができる。CIELAB色空間は多少視覚的に均等であるので、次式:
【0059】
を用いて、人間によって知覚される2つの色(例えばUV経時変化の前後)の間の全絶対色差を表すデルタ値:ΔEを計算することができる。
【0060】
[0053]ここで、ΔL
*は、UV経時変化の前の試験片の色の明度値からUV経時変化の後の試験片の色の明度値を減じた値であり;Δa
*は、UV経時変化の前の試験片の色の赤/緑軸の値からUV経時変化の後の試験片の色の赤/緑軸の値を減じた値であり;Δb
*は、UV経時変化の前の試験片の黄/青軸の値からUV経時変化の後の試験片の黄/青軸の値を減じた値である。CIELAB色空間においては、それぞれのΔE単位は2つの色の間の「弁別」閾にほぼ等しく、したがって、色における差を表現する目的のために用いることができる対象物の装置独立表色系に関する良好な指標である。
【0061】
[0054]用いることができる1つの特定の好適なUV安定剤は、ヒンダードアミンUV安定剤である。好適なヒンダードアミンUV安定剤化合物は、アルキル置換ピペリジル、ピペリジニル、ピペラジノン、アルコキシピペリジニル化合物などのような置換ピペリジンから誘導することができる。例えば、ヒンダードアミンは、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジニルから誘導することができる。ヒンダードアミンは、例えば、約1,000以上、幾つかの態様においては約1000〜約20,000、幾つかの態様においては約1500〜約15,000、幾つかの態様においては約2000〜約5000の数平均分子量を有するオリゴマー又はポリマー化合物であってよい。かかる化合物は、通常はポリマー繰り返し単位あたり少なくとも1つ(例えば1〜4つ)の2,2,6,6−テトラアルキルピペリジニル基を含む。1つの特に好適な高分子量ヒンダードアミンは、ClariantからHostavin(登録商標)N30(1200の数平均分子量)の名称で商業的に入手できる。他の好適な高分子量ヒンダードアミンは、Adeka Palmarole SASからADK STAB(登録商標)LA-63及びADK STAB(登録商標)LA-68の名称で商業的に入手できる。好適な高分子量ヒンダードアミンの更に他の例としては、例えば、N−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール及びコハク酸のオリゴマー(Ciba Specialty ChemicalsからのTinuvin(登録商標)622、Mw=4000);シアヌル酸及びN,N−ジ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンのオリゴマー;ポリ((6−モルホリン−S−トリアジン−2,4−ジイル)(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−イミノヘキサメチレン−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ)(CytecからのCyasorb(登録商標)UV3346、Mw=1600);ポリメチルプロピル−3−オキシ−[4(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル)シロキサン(Great Lakes ChemicalからのUvasil(登録商標)299、Mw=1100〜2500);α−メチルスチレン−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)マレイミド及びN−ステアリルマレイミドのコポリマー;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸との2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジエタノールテトラメチルポリマー;などが挙げられる。
【0062】
[0055]高分子ヒンダードアミンに加えて、低分子量ヒンダードアミンを用いることもできる。かかるヒンダードアミンは一般的にモノマー性であり、約1000以下、幾つかの態様においては約155〜約800、幾つかの態様においては約300〜約800の分子量を有する。かかる低分子量ヒンダードアミンの具体例としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(Ciba Specialty ChemicalsからのTinuvin(登録商標)770、Mw=481);ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ブチルプロパンジオエート;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート;8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ−(4,5)−デカン−2,4−ジオン;ブタン二酸−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)エステル;テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート;7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ(5.1.11.2)ヘネイコサン−20−プロパン酸,2,2,4,4−テトラメチル−21−オキソ,ドデシルエステル;N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−N’−アミノ−オキサミド;o−t−アミル−o−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)モノペルオキシカーボネート;β−アラニン,N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル),ドデシルエステル;エタンジアミン,N−(1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)−N’−ドデシル;3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン;3−ドデシル−1−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン;3−ドデシル−1−(1−アセチル,2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン;(ClariantからのSanduvar(登録商標)3058、Mw=448.7);4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;1−[2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシ)エチル]−4−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;2−メチル−2−(2”,2”,6”,6”−テトラメチル−4”−ピペリジニルアミノ)−N−(2’,2’,6’,6’−テトラメチル−4’−ピペリジニル)プロピオニルアミド;1,2−ビス(3,3,5,5−テトラメチル−2−オキソ−ピペラジニル)エタン;4−オレオイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0063】
[0056]他の好適なUV安定剤としては、ベンゾトリアゾール類又はベンゾフェノン類のようなUV放射線を吸収することができるUV吸収剤を挙げることができる。好適なベンゾトリアゾール類としては、例えば、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類、例えば2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(CytecからのCyasorb(登録商標)UV5411);2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール;2−(2H−ベンゾトリアゾル−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール;2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール;2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール;2,2’−メチレンビス(4−tert−オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール);2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル;2−[2−ヒドロキシ−3−(2−アクリロイルオキシエチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール;2−[2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−tert−ブチルフェニル]ベンゾトリアゾール;2−[2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−tert−オクチルフェニル]ベンゾトリアゾール;2−[2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)5−tert−ブチルフェニル]−5−クロロベンゾトリアゾール;2−[2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2−[2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2−[2−ヒドロキシ−3−tert−アミル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2−[2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−5−クロロベンゾトリアゾール;2−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシメチル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2−[2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニル]ベンゾトリアゾール;2−[2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]ベンゾトリアゾール;及びこれらの組み合わせを挙げることができる。更に、代表的なベンゾフェノン光安定剤としては、2−ヒドロキシ4−ドデシルオキシベンゾフェノン;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン;2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート(CytecからのCyasorb(登録商標)UV209);2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシ)ベンゾフェノン(CytecからのCyasorb(登録商標)531);2,2’−ジヒドロキシ−4−(オクチルオキシ)ベンゾフェノン(CytecからのCyasorb(登録商標)UV314);ヘキサデシル−3,5−ビス−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート(CytecからのCyasorb(登録商標)UV2908);2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェノラト)−n−ブチルアミンニッケル(II)(CytecからのCyasorb(登録商標)UV1084);3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸,(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)エステル(CytecからのCyasorb(登録商標)712);4,4’−ジメトキシ−2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン(CytecからのCyasorb(登録商標)UV12);及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0064】
[0057]一態様においては、ポリアリーレンスルフィド組成物には当該技術において一般的に知られている着色剤を含ませることができる。例えば、ポリアリーレンスルフィド組成物に、約0.1重量%〜約10重量%、又は約0.2重量%〜約5重量%の1種類以上の着色剤を含ませることができる。本明細書において用いる「着色剤」という用語は、一般に材料に対して色を付与することができる任意の物質を指す。したがって、「着色剤」という用語は、水溶液中において可溶性を示す染料、及び水溶液中において可溶性を少ししか示さないか又は全く示さない顔料の両方を包含する。
【0065】
[0058]用いることができる染料の例としては分散染料が挙げられるが、これに限定されない。好適な分散染料としては、"Disperse Dyes", Color Index, 3版に記載されているものを挙げることができる。かかる染料としては、例えば、カルボン酸基を含まず及び/又はスルホン酸基を含まないニトロ、アミノ、アミノケトン、ケトンイミン、メチン、ポリメチン、ジフェニルアミン、キノリン、ベンズイミダゾール、キサンテン、オキサジン、及びクマリン染料、アントラキノン、並びにアゾ染料、例えばモノ又はジアゾ染料が挙げられる。分散染料としてはまた、原色の赤色の分散染料も挙げられ、これらとしては、Disperse Red 60(Intrasil Brilliant Red 2B200%)、Disperse Red 50(Intrasil Scarlet 2GH)、Disperse Red 146(Intrasil Red BSF)、Disperse Red 127(Dianix Red BSE)、Dianix Red ACE、Disperse Red 65(Intrasil Red MG)、Disperse Red 86(Tetrasil Pink 2GLA)、Disperse Red 191(Intrasil Pink SRL)、Disperse Red 338(Intrasil Red 4BY)、Disperse Red 302(Tetrasil Pink 3G)、Disperse Red 13(Intrasperse Bordeaux BA)、Disperse Red 167(Foron Rubine S-2GFL)、Disperse Violet 26(Intrasil Violet FRL)等を挙げることができ;原色の青色の分散染料としては、Disperse Blue 60(Tetrasil Blue BGE200%)、Disperse Blue 291(Intrasil Blue MGS)、Disperse Blue 118(Tetrasil Blue GBT)、Tetrasil Blue HLB、Dianix Blue ACE、Disperse Blue 87(Intrasil Blue FGB)、Disperse Blue 148(Palnnil Darkblue 3RT)、Disperse Blue 56(Intrasil Blue FBL)、Disperse Blue 332(Bafixan Turquoise 2BL液)等を挙げることができ;原色の黄色の染料としては、Disperse Yellow 64(Disperite Yellow 3G200%)、Disperse Yellow 23(Intrasil Yellow 5R)、Palanil Yellow HM、Disperse Blown 19(Dispersol Yellow D-7G)、Disperse Orange 30(Foron Yellow Brown S-2RFL)、Disperse Orange 41(Intrasil Orange 4RL)、Disperse Orange 37(Intrasil Dark Orange 3GH)、Disperse Yellow 3、Disperse Orange 30、Disperse Yellow 42、Disperse Orange 89、Disperse Yellow 235、Disperse Orange 3、Disperse Yellow 54、Disperse Yellow 233(Foron Yellow S-6GL)等を挙げることができる。
【0066】
[0059]ポリアリーレンスルフィド組成物中に含ませることができる顔料としては、限定なしに、有機顔料、無機顔料、金属顔料、リン光顔料、蛍光顔料、光発色性顔料、熱発色性顔料、虹色顔料、及び真珠光沢顔料を挙げることができる。顔料の具体的な量は、製造物の所望の最終の色によって定めることができる。着色顔料に二酸化チタン白色顔料又は同様の白色顔料を加えると、一般に淡い色合いが達成される。
【0067】
[0060]ポリアリーレンスルフィド組成物には有機シランカップリング剤を含ませることができる。有機シランカップリング剤は、当該技術において公知のアルコキシシランカップリング剤であってよい。アルコキシシラン化合物は、ビニルアルコキシシラン、エポキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるシラン化合物であってよい。用いることができるビニルアルコキシシランの例としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、及びビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シランが挙げられる。用いることができるエポキシアルコキシシランの例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及びγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。用いることができるメルカプトアルコキシシランの例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ−メルカプトプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0068】
[0061]含ませることができるアミノシラン化合物は、通常は式:R
3−Si−(R
4)
3(式中、R
3は、NH
2のようなアミノ基;アミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチルなどのような、約1〜約10個の炭素原子、又は約2〜約5個の炭素原子のアミノアルキル;エチレン、プロピレン、ブチレンなどのような、約2〜約10個の炭素原子、又は約2〜約5個の炭素原子のアルケン;並びに、エチン、プロピン、ブチンなどのような、約2〜約10個の炭素原子、又は約2〜約5個の炭素原子のアルキン;からなる群から選択され;R
4は、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどのような、約1〜約10原子、又は約2〜約5個の炭素原子のアルコキシ基である)のものである。
【0069】
[0062]一態様においては、R
3は、アミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、エチレン、エチン、プロピレン、及びプロピンからなる群から選択され、R
4は、メトキシ基、エトキシ基、及びプロポキシ基からなる群から選択される。他の態様においては、R
3は、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのような約2〜約10個の炭素原子のアルケン、並びに、エチン、プロピン、ブチンなどのような約2〜約10個の炭素原子のアルキンからなる群から選択され、R
4は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのような約1〜約10原子のアルコキシ基である。また、種々のアミノシランの組合せを混合物中に含ませることもできる。
【0070】
[0063]混合物中に含ませることができるアミノシランカップリング剤の幾つかの代表例としては、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルトリメトキシシラン、エチレントリメトキシシラン、エチレントリエトキシシラン、エチントリメトキシシラン、エチントリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン又は3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3−アミノプロピル)テトラメトキシシラン、ビス(3−アミノプロピル)テトラエトキシジシロキサン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。アミノシランはまた、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ジアリルアミノプロピルトリメトキシシラン、及びγ−ジアリルアミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノアルコキシシランであってもよい。1つの好適なアミノシランは、Degussa、Sigma Chemical Company、及びAldrich Chemical Companyから入手できる3−アミノプロピルトリエトキシシランである。
【0071】
[0064]含ませる場合には、ポリアリーレンスルフィド組成物に、混合物の重量基準で約0.1重量%〜約5重量%、混合物の重量基準で約0.3重量%〜約2重量%、又は混合物の重量基準で約0.2重量%〜約1重量%の量の有機シランカップリング剤を含ませることができる。
【0072】
[0065]組成物にはまた、当該技術において一般的に知られている1種類以上の充填剤を含ませることもできる。1種類以上の充填剤は、一般に、ポリアリーレンスルフィド組成物の重量基準で約5重量%〜約70重量%、又は約20重量%〜約65重量%の量でポリアリーレンスルフィド組成物中に含ませることができる。
【0073】
[0066]充填剤は、標準的な手順にしたがってポリアリーレンスルフィド組成物に加えることができる。例えば、充填剤は、溶融加工ユニットの下流の位置において組成物に加えることができる。更に、充填剤は単一の供給位置において加えることができ、或いは分割して溶融加工ユニットに沿った複数の供給位置において加えることができる。
【0074】
[0067]一態様においては、繊維状充填剤をポリアリーレンスルフィド組成物中に含ませることができる。繊維状充填剤としては、限定なしに、ポリマー繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維など、又は複数の繊維タイプの組み合わせなどの1以上の繊維タイプを挙げることができる。一態様においては、繊維は、短繊維、連続繊維、又は繊維粗紡糸(トウ)であってよい。
【0075】
[0068]繊維の寸法は当該技術において公知なように変化させることができる。一態様においては、繊維は約3mm〜約5mmの初期長さを有していてよい。繊維の直径は、用いる特定の繊維によって変化してよい。繊維は、例えば、約100μm未満、例えば約50μm未満の直径を有していてよい。例えば、繊維は短繊維又は連続繊維であってよく、約5μm〜約50μm、例えば約5μm〜約15μmの繊維径を有していてよい。
【0076】
[0069]また、所望の特性を達成するのを助けるために、無機充填剤のような粒子状充填剤を用いることもできる。用いる場合には、かかる無機充填剤は、通常は、繊維の約5重量%〜約60重量%、幾つかの態様においては約10重量%〜約50重量%、幾つかの態様においては約15重量%〜約45重量%を構成する。クレイ鉱物は本発明において用いるのに特に好適な可能性がある。かかるクレイ鉱物の例としては、例えば、タルク(Mg
3Si
4O
10(OH)
2)、ハロイサイト(Al
2Si
2O
5(OH)
4)、カオリナイト(Al
2Si
2O
5(OH)
4)、イライト((K,H
3O)(Al,Mg,Fe)
2(Si,Al)
4O
10[(OH)
2,(H
2O)])、モンモリロナイト(Na,Ca)
0.33(Al,Mg)
2Si
4O
10(OH)
2・nH
2O)、バーミキュライト((MgFe,Al)
3(Al,Si)
4O
10(OH)
2・4H
2O)、パリゴルスカイト((Mg,Al)
2Si
4O
10(OH)・4(H
2O))、パイロフィライト(Al
2Si
4O
10(OH)
2)等、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。クレイ鉱物の代わりか又はそれに加えて、更に他の無機充填剤を用いることもできる。例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、マイカ、珪藻土、珪灰石などのような他の好適なシリケート充填剤を用いることもできる。例えば、マイカは本発明において用いるのに特に好適な鉱物である可能性がある。地質学的存在状態における相当な相違を有する幾つかの化学的に異なるマイカ種が存在するが、全て実質的に同じ結晶構造を有する。本明細書において用いる「マイカ」という用語は、モスコバイト(KAl
2(AlSi
3)O
10(OH)
2)、バイオタイト(K(Mg,Fe)
3(AlSi
3)O
10(OH)
2)、フロゴパイト(KMg
3(AlSi
3)O
10(OH)
2)、レピドライト(K(Li,Al)
2〜3(AlSi
3)O
10(OH)
2)、グローコナイト(K,Na)(Al,Mg,Fe)
2(Si,Al)
4O
10(OH)
2)等、並びにこれらの組み合わせのような任意のこれらの種を総称的に包含すると意図される。
【0077】
[0070]また、実質的に分解することなくポリアリーレンスルフィドの加工条件(通常は約290℃〜約320℃)に耐えることができる潤滑剤を用いることもできる。かかる潤滑剤の代表例としては、脂肪酸エステル、その塩、エステル、脂肪酸アミド、有機ホスフェートエステル、及びエンジニアリングプラスチック材料の加工において潤滑剤として通常的に用いられているタイプの炭化水素ワックスが挙げられ、これらの混合物が包含される。好適な脂肪酸は、通常は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、モンタン酸、オクタデカン酸、パリナリン酸などのように、約12〜約60個の炭素原子の骨格炭素鎖を有する。好適なエステルとしては、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエステル、ワックスエステル、グリセロールエステル、グリコールエステル、及びコンプレックスエステルが挙げられる。脂肪酸アミドとしては、脂肪酸第1級アミド、脂肪酸第2級アミド、メチレン及びエチレンビスアミド、並びにアルカノールアミド、例えば、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアラミドなどが挙げられる。ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどのような脂肪酸の金属塩;パラフィンワックス、ポリオレフィン及び酸化ポリオレフィンワックス、並びに微結晶質ワックスなどの炭化水素ワックス;も好適である。特に好適な潤滑剤は、ステアリン酸の酸、塩、又はアミド、例えばペンタエリトリトールテトラステアレート、カルシウムステアレート、又はN,N’−エチレンビスステアラミドである。用いる場合には、1種類又は複数の潤滑剤は、通常は、繊維の約0.05重量%〜約1.5重量%、幾つかの態様においては約0.1重量%〜約0.5重量%を構成する。
【0078】
[0071]組成物中に含ませることができる耐衝撃性改良剤としては、限定なしに、オレフィンのコポリマー又はターポリマー、架橋又は非架橋エラストマー、エラストマー性の単一相コア及び硬質の外側グラフト層から形成されるグラフトコポリマー等を挙げることができる。耐衝撃性改良剤の例としては、例えば、ポリウレタン、ポリブタジエン及びスチレン−アクリロニトリルから形成される2相混合物(ABS)、変性ポリシロキサン、シリコーンラバー、並びにポリジエンベースのエラストマー性の単一相コア及び硬質の外側グラフト層から形成されるグラフトコポリマー(コア−シェル構造)を挙げることができる。
【0079】
[0072]一態様によれば、耐衝撃性改良剤は、反応性官能化ポリアリーレンスルフィドと反応する官能基を含むように変性されているオレフィンのコポリマー又はターポリマーであってよい。例えば、耐衝撃性改良剤は、約0.01〜約0.5のモル分率の、以下:約3〜約8個の炭素原子を有するα,β−不飽和ジカルボン酸又はその塩;約3〜約8個の炭素原子を有するα,β−不飽和カルボン酸又はその塩;約3〜約8個の炭素原子を有する無水物又はその塩;約3〜約8個の炭素原子を有するモノエステル又はその塩;スルホン酸又はその塩;約4〜約11個の炭素原子を有する不飽和エポキシ化合物;の1以上で変性することができる。かかる変性官能基の例としては、無水マレイン酸、フマル酸、マレイン酸、メタクリル酸、アクリル酸、及びグリシジルメタクリレートが挙げられる。
【0080】
[0073]用いることができる耐衝撃性改良剤の非限定的なリストには、エチレン−アクリル酸コポリマー、エチレン−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−アルキル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸ターポリマー、エチレン−アルキル(メタ)アクリレート−グリシジル(メタ)アクリレートターポリマー、エチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸ターポリマー、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸ターポリマー、エチレン−メタクリル酸−メタクリル酸アルカリ金属塩(イオノマー)ターポリマーなどが含まれる。例えば一態様においては、耐衝撃性改良剤としては、エチレン、メチルアクリレート、及びグリシジルメタクリレートのランダムターポリマーを挙げることができる。
【0081】
[0074]耐衝撃性改良剤の分子量は広く変化してよい。例えば、耐衝撃性改良剤は、約7,500〜約250,000g/モル、幾つかの態様においては約15,000〜約150,000g/モル、幾つかの態様においては約20,000〜100,000g/モルの数平均分子量を、通常は2.5〜7の範囲の多分散指数と共に有していてよい。
【0082】
[0075]存在させる場合には、耐衝撃性改良剤は、約0.05重量%〜約25重量%の量、例えば約0.1重量%〜約15重量%の量で組成物中に存在させることができる。
【0083】
[0076]ポリアリーレンスルフィド組成物中に含ませることができる更に他の添加剤としては、限定なしに、抗菌剤、酸化防止剤、他のタイプの安定剤、界面活性剤、ワックス、流動促進剤、固体溶媒、並びに特性及び加工性を向上させるために加える他の材料を挙げることができる。かかる随意的な材料は通常の量で用いることができる。
【0084】
[0077]ポリアリーレンスルフィド組成物は、当該技術において公知の技術にしたがって溶融加工することができる。例えば、出発ポリアリーレンスルフィド、反応性官能化ジスルフィド化合物、UV安定剤、及び任意の他の添加剤を、一軸又は多軸押出機内において、約250℃〜約320℃の温度で溶融混練することができる。組成物は、複数の温度区域を含む押出機内で溶融加工することができる。例えば、約250℃〜約320℃の間の温度に維持している少なくとも1つの温度区域を含む多区域押出機内で組成物を溶融加工することができる。汎用スクリューデザインを用いて組成物を溶融加工することができる。一態様においては、出発ポリアリーレンスルフィド、反応性官能化ジスルフィド化合物、及びUV安定剤を全て、計量フィーダーを用いて多区域押出機の第1のバレル内のフィードスロートに供給することができる。他の態様においては、公知なように、異なる成分を押出機内の異なる添加位置において加えることができる。混合物を溶融及び混合し、次にダイを通して押出すことができる。押出された溶融加工ポリアリーレンスルフィド組成物は、次に水浴内で急冷して固化させ、ペレット化器内で粒状化し、次に乾燥、例えば約120℃において乾燥することができる。
【0085】
[0078]ポリアリーレンスルフィド繊維は、限定なしにメルトブロー、スパンボンド等をはじめとする一般的に知られている任意の成形プロセスにしたがって成形することができる。例として、
図1は、ポリアリーレンスルフィド組成物を含む繊維を形成するために用いることができるメルトブロープロセスの一態様を示す。メルトブロープロセスは、ポリアリーレンスルフィド組成物、及びポリアリーレンスルフィド組成物とブレンドした第2の異なるポリマーのような任意の他の随意的な成分を、押出機27から直線配列の単一押出しオリフィス28を通して、一般に30aと30bとの間に画定されている高速加熱気体流中に直接押し出すことを含む。高速で移動する高温気体によって、繊維29はオリフィス28から排出されながら大きく細化される。ダイチップは、穴がそれぞれの側部30a、30bから衝突する高速気体と直線状になるようにデザインされている。通常のダイは、それぞれが最終繊維直径よりも大きい直径を有する離隔している穴を有する。例えば、小さい直径の繊維を形成する際には、ダイは、それぞれが約50マイクロメートル〜約200マイクロメートルの間、例えば約75マイクロメートル〜約150マイクロメートルの間の直径を有する複数の整列されたオリフィス28を有するようにすることができる。しかしながら成形プロセスは小さい直径の繊維に限定されず、他の態様においては、ダイは、例えば約200マイクロメートル〜約500マイクロメートル、或いは所望に応じて更に大きいより大きなオリフィスを有することができる。
【0086】
[0079]衝突する高速高温気体によって繊維が細化されて所望の繊維直径が形成される。一態様によれば、低温高圧ブロー法を用いることができる。例えば、押出機温度は、約250℃〜約380℃の間、又は約270℃〜約360℃の間であってよい。高速の気体は、約300℃〜約410℃の間、約320℃〜約390℃の間、又は約330℃〜約370℃の間の温度であってよい。ブローガスのゲージ圧は、約1.5kg/cm
2より高く、例えば約2.0kg/cm
2〜約5.0kg/cm
2の間であってよい。ブローガスの温度は、ガスヘッダー(
図1には示していない)内の気体の温度であるとみなされる。一般に、空気又は水蒸気のいずれかをブローガスとして用いる。
【0087】
[0080]メルトブローン繊維は、コンベヤー又は巻き取りスクリーン21上に堆積させることができる。一態様においては、堆積された繊維は、例えば約50マイクロメートル未満、約20マイクロメートル未満、又は約10マイクロメートル未満の小さい直径を有することができる。一態様によれば、繊維の細化中に、繊維を別個の長さに破断して小さい直径のステープル繊維を形成することもできる。例えば、小さい直径の繊維は、30ミリメートル以上、例えば100mm〜500mmの長さを有することができる。或いは、繊維はステープル繊維を形成しないで細化して、小さい直径のフィラメントを形成することができる。
【0088】
[0081]ロール25、26を通して供給されるコンベヤ又は巻き取りスクリーン21上に繊維を堆積させて、ランダムな絡合ウェブを形成することができる。繊維は、例えば配管32によって空気を掃引するファン33を用いる吸引装置31を用いることによって、コンベヤ21に送ることができる。適当な条件下において、繊維はレイダウン時に多少柔軟なままにすることができ、繊維−繊維熱結合を形成する傾向があり、即ち粘着する。繊維の絡合と繊維−繊維の粘着を組み合わせることによって、ウェブを更に結合させることなく取り扱うことができるのに十分な絡合を生起させることができる。
【0089】
[0082]他の態様によれば、繊維は、個々の繊維の間の熱結合を回避するようにコンベヤ又は巻き取りスクリーン21の上に堆積させることができる。例えば、高速気体流の温度及び/又は押出オリフィス28からコンベヤ21迄の距離を、個々の繊維の熱結合が回避されるように予め定めることができる。堆積させた後、繊維を例えば切断又は切刻によって更に加工して、例えば約100ミリメートル未満、約50ミリメートル未満、又は約30ミリメートル未満のより短い長さのステープル繊維を形成することができる。
【0090】
[0083]ステープル繊維及びフィラメントはまた、他の公知のプロセスにしたがって形成することができる。例えば、繊維を紡糸し、場合によって延伸し、繊維形成布帛上に堆積させるスパンボンドプロセスを用いることができる。スパンボンドフィラメントを形成した後、フィラメントを切刻してステープル繊維を形成することができるが、公知なように、スパンボンドプロセスを用いて、更なる切刻又は切断操作の必要なしにステープル繊維を直接形成することもできる。
【0091】
[0084]ポリアリーレンスルフィド繊維は、公知の他の押出プロセスにしたがって形成することができる。例えば、
図2はそれによってポリアリーレンスルフィド組成物から延伸ヤーンを形成することができるプロセス及びシステム410を示す。示されている態様によれば、例えばペレット又はチップの形態のポリアリーレンスルフィド組成物を押出機装置412に供給することができる。他の態様によれば、ポリアリーレンスルフィド組成物を押出機装置412内で形成することができる。例えば、出発ポリアリーレンスルフィドポリマー、反応性官能化ジスルフィド化合物、及び1種類以上の添加剤を押出機装置412に供給して、組成物を押出機装置412内で形成することができる。一態様においては、ポリアリーレンスルフィド組成物(又はポリアリーレンスルフィド組成物の成分)を、第2の異なるポリマーと共に押出機装置412に供給して、ポリマーブレンドで形成される繊維を形成することができる。第2の異なるポリマーとしては、限定なしに、ポリオレフィン、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル等を挙げることができる。
【0092】
[0085]押出機装置412には混合マニホールド411を含ませることができ、その中でポリアリーレン組成物を加熱して溶融組成物を形成し、場合によっては任意の更なる添加剤と混合することができる。所望の場合には、溶融混合物の流動状態を確保するのを助けるために、溶融混合物を押出の前に濾過することができる。例えば、約325メッシュ又はそれより微細のフィルターを用いることによって、溶融混合物を濾過して混合物から微細粒子を除去することができる。
【0093】
[0086]溶融混合物を形成した後、混合物を加圧下で押出機装置412の紡糸口金414に送ることができ、そこで1以上の紡糸口金オリフィスを通して押出して1以上のフィラメント409を形成することができる。約280℃〜約340℃の範囲、例えば約290℃〜約320℃の範囲の押出温度を用いることができる。ポリアリーレンスルフィド組成物を押出してフィラメント409を形成した後、未延伸のフィラメント409を液体浴416内で急冷し、巻き取りロール418によって回収して、例えばマルチフィラメント繊維構造体又は繊維束428を形成することができる。巻き取りロール418及びロール420は、浴416内に配置して、浴416を通して個々のフィラメント409及びギャザリングされた繊維束428を送ることができる。浴416中における材料の滞留時間は、ライン速度、浴温度、繊維寸法等によって変化させることができる。急冷浴から排出した後、繊維束428を一連のニップロール423、424、425、426に通して、過剰の液体を繊維束428から除去することができる。場合によっては、繊維束428に潤滑剤を施すことができる。例えば、紡糸仕上げ剤塗布器チェスト422において紡糸仕上げ剤を施すことができる。続いて、繊維を適当な温度に加熱するように設計されている延伸区域を有する通常の装置を用いて、ポリアリーレンスルフィド繊維束を90℃〜110℃の範囲の温度において延伸することができる。例えば
図2に示す態様においては、繊維束428はオーブン443内で延伸することができる。更に、この態様において、延伸ロール432、434は、当該技術において一般的に知られているようにオーブン443の内部又は外部のいずれかに配することができる。繊維束428を延伸した後、100℃〜約200℃の温度範囲の高温ロール440又は加熱区域を用いて、形成されたポリアリーレンスルフィド繊維430を少なくとも部分的に結晶化させることができる。
【0094】
[0087]形成した後、延伸した繊維束は、形成したままの状態で、例えば織成ウェブ、プリプレグ複合体などを形成するのに用いることができ、或いは所望の長さに切刻して織成又は不織ウェブにおいて用いることができるか又は複合体における強化材料として用いることができるステープル繊維を形成することができる。
【0095】
[0088]ポリアリーレン繊維は、互いと、及び場合によっては異なる材料で形成されている繊維と組み合わせて織成又は不織ウェブを形成することができる。上述したように、ポリアリーレンスルフィドの反応性官能基によって、複合体製造物中における繊維と隣接する材料、例えば他の繊維との相溶性を向上させることができる。したがって、ポリアリーレンスルフィド繊維を含む織成又は不織ウェブを考えると、材料の間の向上した相互作用によって、それ自体をより強固でより長い寿命の複合体製造物として示すことができる。
【0096】
[0089]一態様によれば、ポリアリーレンスルフィドステープル繊維を、場合によっては異なる材料で形成されている繊維と共に用いて不織ウェブを形成することができる。ウェブの形成においては、一般的に知られている任意のウェブ形成法を用いることができる。例えば、カーディング法(その例を
図3に示す)にしたがって不織ウェブを形成することができる。カーディング装置1には、通常の方法でカバー3及び/又は一連の作動ローラー、及びそれに付随するクリアラーローラー(付番していない)と相互作用するカーディングシリンダー2を含ませることができる。
図3においては、単一のカーディングシリンダー2及び付随するカバー3並びにそれに付随する一連の作動ローラー(付番していない)を有する装置1が示されているが、公知なように、幾つかのかかるシリンダー2及びカバー3を付随する作動ローラーと共に用いることができることを理解すべきである。更に、通常的なように、ストリッパーローラー5及び1対の巻き取りローラー6及び7を含むストリッパー装置4が与えられている。ストリッパー装置4はまた、それに付随してドッファーコーム(図示せず)などを有していてもよい。
【0097】
[0090]ストリッパー装置4とカーディングシリンダー2との間に、その表面に沿って複数の組の歯9を有する中間歯付きローラー8が配され、それに隣接して材料ガイドプレート10が配置されて、これは、これに関連して付番していない頭付きの矢印によって示されるローラー8の回転方向で収束する。したがって、中間ローラー8とガイドプレート10の間にこれらによって供給される材料は、まず、材料がガイドプレート10を過ぎて排出される前の初期クリアランス「a」の下流の最終クリアランス「b」よりも大きい初期クリアランス「a」で2つの間に導入される。中間ローラー8の歯9及びガイドプレート10からのクリアランスは、例えば、クリアランス「a」において約4〜約6mm、クリアランス「b」において約1mmにすることができる。材料ガイドプレート10は、ストリッパーローラー5が作動状態になる位置、即ち中間ローラー8及びストリッパーローラー5の中心を接続する仮想線11よりも先の位置から所定の距離「c」で終了する。歯付きの対向するローラー5、8の表面の間のセクション又は領域「c」は自由状態の不織布形成区域を示し、ここでは「a」から「b」への減少するクリアランスの妨害作用が突然に停止又は開放されて、それによって中間歯付きローラー8によって運ばれる繊維の一部がその歯9から引き離されるようになり、その後にストリッパーローラー5上に絡合繊維の不織布が形成される。不織布を形成するための自由区域「c」は、約8〜約12ミリメートルの長さを有していてよい。区域「c」の自由長は、例えば約10ミリメートルであってよい。
【0098】
[0091]中間歯付きローラー8に対するカーディングシリンダー2の回転速度は、表面速度がシリンダーからローラーへ大きくなるように調整することができる。移動因子は例えば約1.5であってよい。ストリッパーローラー5に対する中間歯付きローラー8の回転速度は、表面速度がローラー8からローラー5へ相当に減少するように調整することができる。ローラー8とローラー5の速度比は、一般に約10:1〜約100:1であってよい。
【0099】
[0092]装置1にはまた、不織ウェブを形成するための自由区域「c」において作動する吸引装置13を含ませることもでき、かかる吸引を用いて、ローラー8及び5の間の空隙又は区域からの空気を吸引又は掃去する。製造されるウェブの集束及び後処理の程度によって、比較的軽量、例えば布帛表面積1m
2あたり約8〜約25gの間の重量範囲の不織ウェブを製造するためにカーディングプロセスを用いることができる。しかしながら、カードウェブ形成法は軽量不織ウェブの形成に限定されず、中量ウェブ(例えば約25〜約70g/m
2)、或いは重量ウェブ(例えば約70g/m
2より大きい)を形成するために用いることができる。
【0100】
[0093]本ポリアリーレンスルフィド組成物から形成される繊維ウェブは、限定なしに、バッテリーセパレーター、油吸収材、フィルター媒体、病院−医療用品、断熱詰物などをはじめとする種々の用途において用いることができる。例として、
図4は、複数のポリアリーレンスルフィド繊維314、及び第2の材料から形成される複数の繊維316を含む繊維不織ウェブ312を示す。繊維不織ウェブ312は、一態様においては気体又は液体流から微細粒子を捕捉するために用いることができる。例えば、本ポリアリーレンスルフィド組成物から形成される繊維を含むフィルターは、燃料、油、排気、エンジン、例えば自動車エンジン内の他の流体の濾過において、或いは例えば工業用煙突に関して用いることができるフィルターバッグの形成において用いることができる。本ポリアリーレンスルフィド組成物を含む不織ウェブはまた、電気部品における絶縁紙又は布のような絶縁材料の形成において用いることもできる。
【0101】
[0094]織成ウェブには、縦糸、横糸、又は両方の方向にポリアリーレンスルフィド繊維を含ませることができる。更に、縦糸及び/又は横糸には、ポリアリーレンスルフィド繊維に加えてか又はこれに代えて他の繊維を含ませることができる。
【0102】
[0095]織成ウェブは、所望のように縦編み又は横編みによって形成することができる。限定なしに、ウェブを一定の幅の連続的な中断しない長さで編成する横編み機;縦列方向の構造化繰り返しシーケンスの製造において編成動作と協働させる更なる制御メカニズムを有するガーメントレングス機;平編み機;丸編み機;ワープ直線編み機;などをはじめとする任意のタイプの編み機を用いることができる。
【0103】
[0096]本ポリアリーレンスルフィド組成物から形成することができるウェブとしては、アグロテキスタイル、建築用編織布、ジオテキスタイル、自動車用編織布、高温保護編織布等のような高性能の織成又は不織ウェブ、並びに衣服用編織布、医療用編織布、スポーツ用編織布、座席用編織布などのようなより伝統的なウェブを挙げることができる。
【0104】
[0097]ポリアリーレン繊維は、1種類以上の非繊維材料と共に更に加工して複合体を形成することができる。例えば、ポリアリーレンスルフィド繊維を被覆することができ、ポリアリーレンスルフィドの反応性官能基によって繊維に対する被覆材料の接着を向上させることができる。被覆としては、着色剤、サイズ剤などのような仕上げ被覆を挙げることができ、或いは繊維と複合体の他の成分との相互作用を向上させることができる被覆を挙げることができる。例えば一態様においては、個々の繊維、不織ウェブ、又は織成ウェブの形態の繊維を、接着剤、例えばエポキシ接着剤で被覆することができ、これによって被覆された繊維を繊維強化複合体の封入マトリクスに接着させることができる。
【0105】
[0098]被覆溶液は、バー塗布、ロール塗布、ナイフ塗布、カーテンコート、印刷(例えば輪転グラビア)、スプレー、スロットダイ、ドロップコート、又は浸漬被覆技術のような任意の通常の技術を用いて適用することができる。例えば一態様においては、それぞれの浴飽和の後にニップロール絞りを用いて、ヤーンを飽和液(「パッド浴」と呼ばれる)で処理することができる。ヤーンはまた、「パッケージ」形態で飽和液によって処理することもできる。織成布は、連続ステンター(大開口)フレーム内か、又は反染め、ジェット、ベック、ジガー、又はパドル機のようなバッチプロセスを用いてパッド浴仕上げ処理することができる。編成布は、織成布と同じ機械装置(連続及びバッチの両方)内において、全く異なる条件下で処理することができる。衣服に関しては、工業用衣服洗浄機を用いることができる。随意的な適用法としては、噴霧又は手動湿潤アドオン法のような手動のプロセスが挙げられる。
【0106】
[0099]ポリアリーレンスルフィド繊維は、繊維強化複合体中に含ませることができる。本発明に包含される繊維強化複合体としては、限定なしに、組織状又は一方向プリプレグ、連続又は不連続整列繊維強化複合体、不連続ランダム配向強化複合体等が挙げられる。ポリアリーレンスルフィド繊維の反応性官能基によって、複合体のマトリクス材料の間の接着を向上させることができ、或いは繊維の上に配置される被覆、例えば接着剤の間の接着を向上させることができ、被覆された繊維は次に繊維強化複合体において用いることができる。強化繊維に関して一般的に知られており、本発明に包含される被覆材料としては、限定なしに、繊維を互いに対して結合させ(織成又は不織ウェブの場合)、周囲のマトリクス材料への繊維の接着を促進させる1種類以上の接着剤が挙げられる。例として、繊維は、まず、水性又は溶剤性のいずれかであってよいポリイソシアネート及びエポキシ化合物のようなプライマーで被覆することができる。被覆された繊維は次に、他の通常の及び/又は他の形態の好適な接着剤、例えばレゾルシノールホルムアルデヒドラテックス(RFL)で被覆することができる。それぞれの被覆の後、繊維を、例えば約100℃〜約290℃の温度の1つのオーブン又は一連の複数のオーブンに通して接着剤を乾燥及び硬化させることができる。場合によっては、繊維を、更なる接着の向上のために、更なるオーバーコート接着剤、例えば水性媒体中の高品質エマルジョン、顔料、及び硬化剤の混合物、或いはLord CorporationによってCHEMLOKの商標で入手できるもののような溶媒溶液中の顔料及び硬化剤と溶解したポリマーとの混合物、又は他の好適なラバーセメントで被覆することができる。強化材のポリアリーレンスルフィド繊維は、ステープル繊維又はフィラメントのランダム又は整列した分布、織成ウェブ、不織ウェブなどをはじめとする任意の形態であってよい。
【0107】
[0100]マトリクス材料には、任意の通常の及び/又は好適なエラストマーを含ませることができる。用いることができる好適なエラストマーとしては、限定なしに、ポリウレタンエラストマー(ポリウレタン/尿素エラストマーを含む)、或いは硬化エラストマー、例えばポリクロロプレンラバー、アクリロニトリルブタジエンラバー、イソプレンラバー、ネオプレンラバー、水素化ニトリルブタジエンラバー、水素化アクリロニトリルブタジエンラバー、ブチルラバー、ハロブチルラバー、スチレンイソプレンブタジエンラバー、スチレン−ブタジエンラバー、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロロヒドリン、ポリブタジエンラバー、天然ラバー、シリコーンラバー等が挙げられる。他のエラストマーとしては、エチレンオレフィンエラストマー、例えばエチレンα−オレフィンエラストマー、例えばエチレンプロピレンコポリマー、エチレンプロピレンジエンターポリマー、エチレンオクテンコポリマー、エチレンブテンコポリマー、エチレンオクテンターポリマー;及びエチレンブテンターポリマー;エチレン酢酸ビニルエラストマー;及びエチレンメタクリレートを挙げることができる。上記の任意の2以上の組合せを用いることもできる。
【0108】
[0101]例として、
図5は本ポリアリーレンスルフィド繊維強化複合体を含ませることができるエンドレスベルト200の断面図を示す。ベルト200は、主ベルト体部分212及び繊維強化複合体部分220を含む。主ベルト体部分212は、主ベルト体部分212の内周縁上の接触部分214、及び主ベルト体部分212の上表面上の接触部分216を確定する。接触部分214は、使用中に形成されたベルト200を運ぶことができる通常のプーリー、スプロケット、ローラーなどのメカニズムと接触するようにデザインされている。
図5のベルトの接触部分214は、反対側に面する側部の間に確定されている複数のトラフ領域238と交互に形成される隆起した領域又は先端部236を含む複数のリブの形態である。接触部分216は、ベルト200に関して意図される具体的な最終使用用途に応じて、同様のメカニズムと接触するか又は材料を運ぶようにデザインすることができる。形成されたベルト200において、接触部分214は主ベルト体部分212と一体であり、繊維強化複合体に関連して上記に記載したものと同じ1種類又は複数のエラストマー材料から形成することができる。
【0109】
[0102]繊維強化複合体部分220は、ベルト200に対して支持及び強度を与えるために主ベルト体部分212内に配置する。繊維強化複合体セクション220は、マトリクス材料218及びポリアリーレンスルフィド繊維222を含む。この態様においては、繊維222はベルト200の長さに沿って整列しているが、これは必須要件ではなく、繊維222は公知なようにランダムに分布した繊維であってよい。繊維は、複合体セクション220においてマトリクス材料218によって封入されている。
図5においては、ポリアリーレンスルフィド繊維222及びマトリクス材料218を含む複合体セクション220は、それをベルト200の他のエラストマー部分から視覚的に識別するために誇張した形態で示している。実際には、複合体はしばしば周囲のエラストマーベルト体から視覚的に識別することができない。マトリクス材料218は、一態様においてはエラストマーの主ベルト体212と同じ材料のものであってよい。
【0110】
[0103]任意の好適な及び/又は通常の方法を用いて、ポリアリーレンスルフィド繊維強化複合体を含ませることができるベルトを形成することができる。例えば、非キャスト性ベルトエラストマー、即ち製粉可能なラバーを用いる場合には、ベルト形成工程には、歯又はリブ又はノッチを形成するための溝付き部分を有する適当な構造の金型キャビティ内、或いは適当な構造のベルト形成ドラム又はマンドレル上に織成又は不織布カバー部材を配置し;布帛の周りに1以上のコードを螺旋状に巻き付けることなどによって、載荷ポリアリーレンスルフィド繊維を布帛カバー部材の表面に対して配置し;布帛カバーに対して封入マトリクス材料を配置し;所定の構造の必要性に応じて、繊維部材及び又はエラストマー材料の更なる配列をこの構造体に対して配置し;エラストマー材料を硬化又は加硫処理するのに十分な温度及び圧力を加え;金型キャビティ又はマンドレルからアセンブリを取り出す;ことを含ませることができる。
【0111】
[0104]本繊維強化複合体は、例えばタイヤ、ベルト(例えばコンベヤーベルト、V−ベルト、タイミングベルト等)、ホース、ラバークローラーなどをはじめとする広範囲の高性能用途において用いることができる。
【0112】
[0105]本発明の幾つかの態様を以下の実施例によって示すが、これらは単に幾つかの態様の例示の目的のものであり、本発明の範囲又は本発明を実施することができる方法を限定するものとはみなされない。他に具体的に示さない限りにおいて、部及びパーセントは重量基準で与える。
【0113】
試験方法:
[00106]溶融粘度:溶融粘度は走査剪断速度粘度として報告する。ここで報告する走査剪断速度粘度は、ISO試験No.11443(ASTM−D3835と技術的に同等である)にしたがって、1200秒
−1の剪断速度及び310℃の温度において、Dynisco 7001毛細管流量計を用いて測定した。流量計オリフィス(ダイ)は、1mmの直径、20mmの長さ、20.1のL/D比、及び180°の入口角を有していた。バレルの直径は9.55mm±0.005mmであり、ロッドの長さは233.4mmであった。
【0114】
[0107]繊維特性:デニール数、破断テナシティー、及び破断伸びなどの繊維特性は、ASTM−D5446−08にしたがって求めた。
【0115】
[0108]UV劣化:Ford FLTM BO 116-01試験法にしたがって、キセノンアークウェザロメーターを用いて色に対するUV照射の影響を求めた。全照射量は50kJ/m
2(420nmにおいて1.06W/m
2の照射を約16時間)であった。明サイクルに関する試験条件は、89℃のブラックパネル温度、50%の相対湿度、及び3.8時間のサイクル時間を含んでいた。暗サイクルに関する試験条件は、38℃のブラックパネル温度、95%の相対湿度、及び1.0時間のサイクル時間を含んでいた。
【0116】
実施例1:
[0109]用いた材料は次の通りであった。
【0117】
出発ポリアリーレンスルフィド:
PPS1−Fortron(登録商標)0309B4−Florence, KentuckyのTicona Engineering Polymersから入手できる低溶融粘度の非充填ポリフェニレンスルフィドポリマー;
PPS−2−Fortron(登録商標)0320B0−Florence, KentuckyのTicona Engineering Polymersから入手できる高溶融粘度の非充填ポリフェニレンスルフィドポリマー;
UV:UV-234−W.F. McDonald Company, Los Angeles, Californiaから入手できる紫外線吸収剤:(2−(2H−ベンゾトリアゾル−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール);
ジスルフィド:ジチオジ安息香酸。
【0118】
[0110]試料は、以下のような押出プロセスで形成した。
【0119】
[0111]形成した後、試料を試験して溶融粘度を求めた。試料の配合及び溶融粘度の結果を下表1に示す。試料の配合は重量%としての成分を与える。
【0121】
[0112]示されるように、ジスルフィド化合物を加えると、出発ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度の大きな減少が与えられる。
【0122】
[0113]試料#2及び試料#3(対照例)を、UV劣化特性に関して試験した。結果を下表2に与える。
【0124】
[0114]示されるように、UV安定剤を組成物に加えると組成物の色保持性が向上する。
【0125】
[0115]試料の幾つかから繊維を形成した。繊維形成加工パラメーターを下表3に与える。
【0127】
[0116]繊維を形成後に延伸し、デニール数、破断テナシティー、及び破断伸びに関して試験した。延伸パラメーター及び製造物特性を下表4に与える。
【0129】
[0117]本発明を例示する目的のために幾つかの代表的な態様及び詳細を示したが、本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更及び修正を本発明において行うことができることは当業者に明らかであろう。