特許第6285919号(P6285919)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6285919デトネーションエンジンを備える軌道離脱装置を装備した宇宙船
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285919
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】デトネーションエンジンを備える軌道離脱装置を装備した宇宙船
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/24 20060101AFI20180215BHJP
   B64G 1/40 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   B64G1/24 Z
   B64G1/40 A
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-515567(P2015-515567)
(86)(22)【出願日】2013年6月3日
(65)【公表番号】特表2015-522465(P2015-522465A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】FR2013051247
(87)【国際公開番号】WO2013182795
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年5月9日
(31)【優先権主張番号】1255215
(32)【優先日】2012年6月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スーリエ、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィチェンティーニ、マキシム
(72)【発明者】
【氏名】コンラルディ、ジャン‐マリー
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 特許第2802130(JP,B2)
【文献】 特表2010−537880(JP,A)
【文献】 米国特許第05873240(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0050592(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01852350(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0201134(US,A1)
【文献】 英国特許出願公開第02468515(GB,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0061028(US,A1)
【文献】 特開2000−313400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/00− 1/68
F02K 7/02− 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの主推進剤タンク(14a、14b)と、推進剤が前記主推進剤タンク(14a、14b)によって供給される主エンジン(12)と、軌道離脱装置(16)とを備える宇宙船(10)であって、
前記軌道離脱装置(16)は、推進剤が前記主推進剤タンク(14a、14b)によって供給されるデトネーションエンジン(18)を備え
前記主エンジン(12)は、デフラグレーションエンジンであることを特徴とする宇宙船(10)。
【請求項2】
前記デトネーションエンジン(18)は、前記推進剤が注入装置(26)より上流で固相または液相から気相へと移行するように、前記推進剤を加熱するためのヒータ(20)を備える請求項1に記載の宇宙船(10)。
【請求項3】
前記デトネーションエンジン(18)は、燃焼室(24)と、該燃焼室(24)を冷却するための冷却回路(22)とを備え、
前記ヒータ(20)は、前記冷却回路(22)を備える請求項2に記載の宇宙船(10)。
【請求項4】
前記デトネーションエンジン(18)は、前記主推進剤タンク(14a、14b)に対して前記主エンジン(12)の反対側に配置される請求項1〜3のいずれか一項に記載の宇宙船(10)。
【請求項5】
2つの主推進剤タンク、すなわち燃料タンク(14a)および酸化剤タンク(14b)を備え、
前記主エンジン(12)および前記デトネーションエンジン(18)の各々は、両方の主推進剤タンク(14a、14b)に接続される請求項1〜4のいずれか一項に記載の宇宙船(10)。
【請求項6】
前記デトネーションエンジン(18)は、連続的に回転するデトネーションエンジンである請求項1〜のいずれか一項に記載の宇宙船(10)。
【請求項7】
前記デトネーションエンジン(18)は、パルスデトネーションエンジンである請求項1〜のいずれか一項に記載の宇宙船(10)。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の宇宙船(10)によって形成された少なくとも1つの段(103)を備える宇宙打ち上げロケット(100)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの段(103)は、当該宇宙打ち上げロケット(100)の最終段および/または最後から2番目の段である請求項に記載の宇宙打ち上げロケット(100)。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載の宇宙船(10)の軌道離脱の方法であって、
該軌道離脱が、前記主エンジン(12)の停止後に、前記軌道離脱装置(16)によって実行され、
該軌道離脱装置(16)の前記デトネーションエンジン(18)に、10bar以下の圧力で前記主推進剤タンク(14a、14b)によって推進剤が供給されることを特徴とする宇宙船(10)の軌道離脱の方法。
【請求項11】
宇宙打ち上げロケット(100)の段(103)を形成する請求項またはに記載の宇宙船(10)の軌道離脱の方法であって、
前記主エンジン(12)の停止後かつ軌道離脱の実行前に、前記段(103)が前記宇宙打ち上げロケット(100)から分離される軌道離脱の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道離脱装置を装備した宇宙船、そのような宇宙船を含む宇宙打ち上げロケット、およびそのような宇宙船の軌道離脱の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙空間の軌道の汚染または混雑を避けるために、宇宙船を、使用後に、軌道から離脱させることが必要である。換言すると、宇宙船を、使用後に、地球の大気圏へと戻し、地球へと落下させ、通常は分解させるために、軌道から遠ざけることが必要である。これにより、宇宙船が当初に位置した軌道が汚染されることがなく、その後に、もはや使用されていない古い宇宙船によって動作を乱されることなくかつ該宇宙船と衝突することなく、新たな宇宙船をその軌道に配置することができる。
【0003】
宇宙船の軌道離脱に宇宙船の主エンジンを使用することは、推進剤の大部分が主エンジンによって宇宙船を前記軌道に配置するために消費され、したがって主推進剤タンク内の圧力が大幅に低下し、もはや主エンジンに推進剤を適切に送ることができないことに鑑み、主推進剤タンクに残る推進剤の圧力が主エンジンを動作させることができるためには低すぎるため、通常は不可能である。伝統的な主エンジンは、動作することができるために、推進剤が或る最小圧力(数十bar程度)で供給されることを必要とする。
【0004】
宇宙船に追加される補助装置の形態の軌道離脱装置も知られている。しかしながら、そのような伝統的な軌道離脱装置は、自身の専用の推進剤タンクを有し、したがって通常は重く、すなわち宇宙船の性能にとって不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述の欠点を、少なくとも実質的に除去することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1つの主推進剤タンクと、前記主タンクによって推進剤が供給される主エンジンと、軌道離脱装置とを備える宇宙船を、提供することによってこの目的を達成し、前記軌道離脱装置は、推進剤が前記主タンクによって供給されるデトネーションエンジンを備える。
【0007】
用語「宇宙船」が、宇宙空間へと送られるビークル(vehicle)を意味して用いられることを、理解できるであろう。この用語は、とくには、これらに限られるわけではないが、宇宙打ち上げロケットの段、1段だけの宇宙打ち上げロケット、スペースシャトル、衛星、または同等物を包含する。
【0008】
主エンジンは、宇宙船を宇宙空間へと運び、あるいは所定の軌道上に配置するためのエンジンである。主タンクは、主エンジンへの供給のための推進剤を収容するタンクである。当然ながら、主エンジンおよびデトネーション(detonation)エンジンがただ1つの推進剤を使用して動作するのか、あるいは複数の推進剤の混合物を使用して動作するのかに応じて、1つ以上の推進剤タンクが存在できる。以下では、とくにそのようでないと指定されない限り、包括的な用語「推進剤」が、主エンジンの動作に必要な1つの推進剤または複数の推進剤を指して区別なく使用される。主タンクに収容される推進剤の大部分(約95%またはそれ以上)が、宇宙船を宇宙空間へと運び、あるいは所定の軌道に配置するための主たる推進において、主エンジンによって消費される。主たる推進の後に残る推進剤が、「残余の」推進剤と称される。主タンク内に存在した初期の圧力が、主エンジンによってもたらされる主たる推進において推進剤が使用されるときに低下し、残余の推進剤は、主タンクにおいて低い圧力にある。以下で、用語「主たる推力」は、宇宙船を宇宙空間へと運び、あるいは所定の軌道に配置するために主エンジンによってもたらされる推力を指す。
【0009】
デトネーションエンジンは、推進剤の高圧での供給を必要としない(例えば3bar〜5barなど、数barの圧力で充分である)公知の種類のエンジンである。したがって、主タンクに存在する低い圧力の残余の推進剤を、デトネーションエンジンへの供給に使用することができる。したがって、本発明の軌道離脱装置は、専用の推進剤タンクを必要とせず、したがって伝統的な軌道離脱装置よりも軽量である。さらに、この軌道離脱装置は、主タンク内の残余の推進剤のほぼすべてを使い切るという利点を有する。このように、搭載された推進剤のほぼすべてが使用され、これは経済的な観点および環境保護の観点の両方からの利点を構成する。
【0010】
デトネーションエンジンが、燃焼波の伝播速度が音速以上であるエンジンであることを、思い出すべきである。デトネーションは、衝撃波と化学反応(燃焼)の領域との間の強力な結合を特徴とする燃焼の態様である。これらの衝撃波そのものが、媒体を推進剤の自動点火の条件(自動点火点)を超える圧力および温度まで圧縮することによって化学反応を生じさせる。燃焼室に存在する平均圧力は、推進剤の初期の圧力(例えば、3bar〜8barの範囲など、数bar程度)の10倍を超える大きさとなりうる。最後に、末広がりのノズルまたは「エアロスパイク(aerospike)」における燃焼ガスの膨張が、宇宙船の軌道離脱のための充分な推力の発生を可能にする。
【0011】
有利には、前記デトネーションエンジンは、前記推進剤が注入装置より上流で固相または液相から気相へと移行するように、前記推進剤を加熱するためのヒータを備える。
【0012】
推進剤を気相へと移行させることによって、推進剤が、デトネーションによりよく適合する。デトネーションエンジンに複数の推進剤が供給される場合、ヒータは、1つ、一部、またはすべての推進剤を加熱することができる。
【0013】
有利には、前記デトネーションエンジンは、燃焼室と、該燃焼室を冷却するための冷却回路とを備え、前記ヒータは、前記冷却回路を備える。
【0014】
換言すると、冷却回路が、ヒータの一部を形成する。したがって、推進剤が、冷却回路を通過することによって主タンクから注入装置へと流れると、理解することができる。燃焼室を冷却することによって、推進剤が加熱される。これは、結果として、第1には燃焼室を冷却して、所定の動作温度の維持を可能にし、第2には推進剤を加熱して、デトネーションに向けて準備するという2つの相補的な効果を生み出す。
【0015】
有利には、前記デトネーションエンジンは、前記主タンクに対して前記主エンジンの反対側に配置される。
【0016】
デトネーションエンジンおよび主エンジンをこのやり方で配置することによって、宇宙船の制動がより容易になる。すなわち、デトネーションエンジンが、デトネーションエンジンの生み出す推力が主エンジンによって生成された推力とは反対の方向(したがって、結果としての宇宙船の運動とは反対の方向)であるような方向を向く。通常の利用の条件下で、軌道離脱装置が、主エンジンが動作している限りは停止している一方で、軌道離脱装置が、主エンジンが停止しているときに動作することを、理解できるであろう。
【0017】
有利には、本発明の宇宙船は、2つの主タンク、すなわち燃料タンクおよび酸化剤タンクを備え、前記主エンジンおよび前記デトネーションエンジンの各々は、両方の主タンクに接続される。
【0018】
例えば、燃料が、液体水素であってよく、酸化剤が、液体酸素であってよい。
【0019】
好ましくは、前記主エンジンは、デフラグレーションエンジンである。
【0020】
デフラグレーション(deflagration)エンジンは、宇宙船の主たる推力をもたらすために使用される伝統的なエンジンである。デフラグレーションエンジンは、燃焼波の伝播速度が音速よりも遅いエンジンであることを、思い出すべきである。そのようなエンジンには、数十bar程度の何らかの最低圧力(好ましくは、100bar〜130barの範囲にある圧力)で推進剤が供給される必要がある。
【0021】
構造的に言えば、デトネーションエンジンは、とくにデトネーションエンジンが点火のためにプレデトネータ(pre-detonator)を呈する点で、デフラグレーションエンジンと異なることに気が付くべきである。例えば、プレデトネータは、点火スパークプラグを備える分岐推進剤供給回路を備える。デフラグレーションエンジンは、プレデトネータを有さない。
【0022】
デフラグレーションエンジンによってもたらされる主たる推力の最中に、100bar〜130barの範囲にある推進剤の初期の圧力が、約10bar程度またはさらに低い圧力へと低下し、この圧力は、もはや主たるデフラグレーションエンジンを動作させるためには充分でない。このように、主エンジンが停止するとき、残余の推進剤は、10bar以下の圧力にある。しかしながら、この残余の推進剤の圧力は、軌道離脱装置のデトネーションエンジンを動作させるためには充分である。
【0023】
第1の変形例においては、前記デトネーションエンジンは、連続的に回転するデトネーションエンジンである。
【0024】
連続的に回転するデトネーションエンジンは、他のどこかで公知である。連続的に回転するデトネーションエンジンにおいては、燃焼室が環状であり、燃焼の波面が局所的であり、環状の燃焼室内を方位角方向に移動することを、思い出すべきである。プレデトネータを初期のデトネーションを開始させるためだけに使用すればよく、このデトネーションが、方位角において一方の方向または他方の方向に伝播する。推進剤が注入されるとき、圧縮および膨張の段階が、自律的な様相で交互に繰り返される。具体的には、膨張波がデトネーション波(または、圧縮波)に続き、したがって膨張波は、次にデトネーションの波面が通過するときにデトネーションのために必要な推進剤を吸い込む。複数のデトネーションを開始させ、複数の連続的なデトネーションの波面を生成することも可能である。
【0025】
構造的に言うと、連続的に回転するデトネーションエンジンは、とくには燃焼室の内部のコア(または、中心の部材)が側壁と協働して環状の空間を定めている点で、デフラグレーションエンジンと異なることに気が付くべきである。デフラグレーションエンジンは、燃焼室内にコアを有していない。
【0026】
第2の変形例においては、前記デトネーションエンジンは、パルスデトネーションエンジンである。
【0027】
パルスデトネーションエンジンは、他のどこかで公知である。パルスデトネーションエンジンにおいて、燃焼室は、伝統的な円柱形であり、注入端において閉じられ、他端において開いていることを、思い出すべきである。推進剤が、燃焼室へと注入される。プレデトネータが、デトネーションを開始させる。デトネーションの終了後に、推進剤が再び注入され、新たなデトネーションが、プレデトネータの助けによって開始される。連続的に回転してデトネーションが連続的に生じるデトネーションエンジンと異なり、パルスデトネーションエンジンにおけるデトネーションは、連続的でなく、各々の場合における再度の開始を必要とする。
【0028】
また、本発明は、本発明の宇宙船によって形成された少なくとも1つの段を備える宇宙打ち上げロケットを提供する。
【0029】
有利には、前記少なくとも1つの段は、当該宇宙打ち上げロケットの最終段および/または最後から2番目の段である。
【0030】
宇宙打ち上げロケットの第1段は、宇宙打ち上げロケットがまだ地球に充分に近いときに放棄され、したがってこれら第1段が地球の重力場によって速やかに落下し、軌道に残ることがない。対照的に、宇宙打ち上げロケットの最終段および/または最後から2番目の段は、宇宙打ち上げロケットがすでに宇宙空間にあるときに放棄され、これらの段を地球の重力場によって地球へと速やかに落下させるには遠すぎる。したがって、到達した軌道から遠ざけることができ、地球大気圏へと戻して地球へと落下させることができるように、打ち上げロケットの最終段および/または最後から2番目の段に、本発明の軌道離脱装置が取り付けられる。
【0031】
また、本発明は、本発明の宇宙船の軌道離脱の方法を提供し、該軌道離脱が、前記主エンジンの停止後に、前記軌道離脱装置によって実行され、該軌道離脱装置の前記デトネーションエンジンに、10bar以下の圧力で前記主タンクによって推進剤が供給される。
【0032】
宇宙船を軌道に配置するために、主エンジンが推進剤の大部分を消費し、結果として主タンク内の圧力が10bar以下となることを、理解できるであろう。主エンジンが停止したときに、宇宙船を軌道から離脱させるために軌道離脱装置を使用することが可能である。
【0033】
有利には、宇宙船が宇宙打ち上げロケットの段であるとき、前記主エンジンが停止した後かつ軌道離脱が実行される前に、前記段が前記宇宙打ち上げロケットから分離される。
【0034】
これにより、この段の軌道離脱が、宇宙打ち上げロケットに影響を及ぼすことがない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明および本発明の利点は、本発明を限定するものではない例として提示される本発明の実施の形態の以下の詳細な説明を検討することで、よりよく理解することができる。説明においては、添付の図面を参照する。
図1図1は、本発明の宇宙打ち上げロケットを示している。
図2図2は、図1の宇宙打ち上げロケットの最終段を形成している本発明の宇宙船を示している。
図3図3は、図2の宇宙船のデトネーションエンジンの燃焼室を示している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図面がきわめて図式的であり、それらの目的が、本発明の宇宙打ち上げロケットおよび宇宙船の全体的な構造をできるだけ簡潔かつ明瞭なやり方で示すことにあることを、理解すべきである。
【0037】
図1は、2つの段、すなわち第1段101、第2段102と、第3の最終段103とを、例えば衛星などの宇宙空間へと運ばれる荷物を収容するためのハウジング104とともに備えている宇宙打ち上げロケット100を示している。
【0038】
第3の最終段103は、宇宙船10によって形成され、宇宙打ち上げロケット100の外形に幾何学的な連続性をもたらす2つのシュラウド103aおよび103bを備える一方で、第2段102および/またはハウジング104へと固定されている。
【0039】
図2は、図1の宇宙打ち上げロケット100の最終段103を形成している宇宙船10を示している。宇宙船10は、主デフラグレーションエンジン12と、2つの主推進剤タンク14aおよび14bと、デフラグレーションエンジン18を備える軌道離脱装置16とを備えている。
【0040】
主タンク14aおよび14bは、例えば水素などの燃料および例えば酸素などの酸化剤を、圧力のもとで液体の状態にてそれぞれ収容している。配管15は、主タンク14aおよび14bを、推進剤を供給するために、主エンジン12およびデトネーションエンジン18へと接続している。
【0041】
デトネーションエンジン18は、主タンク14aおよび14bに対して主エンジン12の反対側に位置している。より詳しくは、宇宙船10が、軸方向Aに延びており、主エンジン12およびデトネーションエンジン18が、この軸方向Aにおいて主タンク14aおよび14bの両端に位置している。
【0042】
図3に示されるとおり、デトネーションエンジン18は、燃焼室24を所定の温度に維持し、推進剤を加熱するために、燃焼室24の周囲に巻き付けられたコイルの形態の冷却回路22を有するヒータ20を備えている。このやり方で加熱される推進剤が、燃焼室24の(推進剤の流れの方向における)上流に位置する注入装置26へと運ばれる。この実施の形態において、燃料および酸化剤は、冷却回路22を通って流れる(当然ながら、たとえ図3にはただ1つのコイルしか示されていなくても、各々の推進剤が別々に保たれ、別個のコイルを流れる)。ある変形例においては、燃料のみまたは酸化剤のみが、冷却回路を通って流れる。
【0043】
この例では、デトネーションエンジン18が、連続的に回転するデトネーションエンジンである。したがって、燃焼室24が、外壁24aおよびコア24bを有し、外壁24とコア24bとの間に存在する環状空間24cが、デトネーション波が方位角方向(azimuth direction)に伝播する空洞を形成している。
【0044】
図1を参照すると、宇宙打ち上げロケット100の飛行中に第2段102が放棄されるとき、シュラウド103aも放棄されることを理解できるであろう。次いで、第3段106の主エンジン12が点火され、第3段103とハウジング104とで形成される集合体を駆動し、この集合体を宇宙空間または所定の軌道へと届けるために主たる推進力をもたらす。主エンジン12からの主たる推進力が終わるとき、主エンジン12は停止される。この主たる推進力の最中に、主タンク14aおよび14bに収容された水素および酸素の大部分が消費され、主タンク内の初期の圧力が、10bar以下の圧力へと低下する。次いで、第3段103およびハウジング104が分離される。この分離の際に、シュラウド103bも、宇宙船10から分離される。この分離の後で、軌道離脱装置16が始動され、主タンク14aおよび14bに含まれる低圧の残余の酸素および水素が供給されるデトネーションエンジン18の点火によって、宇宙船10を宇宙打ち上げロケット100のハウジング104から遠ざける。
【0045】
本発明を、特定の実施の形態に関して説明したが、それらの例について、特許請求の範囲によって定められる本発明の全体的な範囲を超えることなく、変更および変化が可能であることは明らかである。とくには、図示および/または上述した種々の実施の形態および/または変種の個々の特徴を、さらなる実施の形態において組み合わせることができる。したがって、明細書および図面は、限定よりもむしろ例示として理解すべきである。例えば、第2段102および/または第1段101を、宇宙船10と同様の宇宙船によって形成されてもよい。さらに、宇宙船10のデトネーションエンジン18は、連続的に回転するデトネーションエンジンではなくて、パルスデトネーションエンジンであってもよい。
図1
図2
図3