特許第6285921号(P6285921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6285921超音波血栓溶解療法を用いたクモ膜下血腫の治療、並びに関連する装置、システム、及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285921
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】超音波血栓溶解療法を用いたクモ膜下血腫の治療、並びに関連する装置、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   A61B17/00 700
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-517277(P2015-517277)
(86)(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公表番号】特表2015-519970(P2015-519970A)
(43)【公表日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】US2013042744
(87)【国際公開番号】WO2013188084
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2016年5月20日
(31)【優先権主張番号】61/659,269
(32)【優先日】2012年6月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514314934
【氏名又は名称】ニューウェル,デイビッド ダブリュー.
【氏名又は名称原語表記】NEWELL,David,W.
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】110000132
【氏名又は名称】大菅内外国特許事務所特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ニューウェル,デイビッド ダブリュー.
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/066856(WO,A1)
【文献】 特開平03−222961(JP,A)
【文献】 特開2004−024668(JP,A)
【文献】 特開平05−220152(JP,A)
【文献】 特表2003−534032(JP,A)
【文献】 特表2012−509126(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0319376(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0319927(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クモ膜下血腫を持つ人間の患者を治療するためのシステムであって、
計測装置を含む血栓溶解剤デリバリモジュールであって、前記クモ膜下血腫を含むクモ膜下領域に血栓溶解剤をデリバリするように構成された血栓溶解剤デリバリモジュールと、
経頭蓋超音波エネルギーを前記クモ膜下血腫を含む前記クモ膜下領域へ手を使わずにデリバリし、かつ、前記クモ膜下血腫に近接する1つ以上の動脈における血流速度を手を使わずに検知するように構成されたヘッドセットを含む超音波モジュールと、
前記血栓溶解剤デリバリモジュール及び前記超音波モジュールに動作可能に接続されたコントローラを含む制御モジュールであって、前記コントローラは、前記超音波モジュールからの前記血流速度に対応する信号を受信し、かつ、前記信号に応じて前記計測装置から前記クモ膜下領域への血栓溶解剤のデリバリを制御するか、又は、前記信号に応じて前記ヘッドセットから前記クモ膜下領域への超音波エネルギーのデリバリを制御、又はその両方の制御を行うように構成されている、制御モジュールと
脳脊髄液ドレーンを含むドレナージモジュールであって、前記脳脊髄液ドレーンは、クモ膜下血腫の消褪の副産物を含む脳脊髄液を排出するように構成されている、ドレナージモジュールと、
を含むシステム。
【請求項2】
前記血栓溶解剤デリバリモジュールは、脳室造瘻術を使って前記クモ膜下領域に前記血栓溶解剤をデリバリするように構成されたカテーテルを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記脳脊髄液ドレーンは、前記クモ膜下血腫の消褪の副産物を含む前記脳脊髄液を前記患者の腰部領域から排出するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
クモ膜下血腫を持つ人間の患者を治療するためのシステムであって、
計測装置を含む血栓溶解剤デリバリモジュールであって、前記クモ膜下血腫を含むクモ膜下領域に血栓溶解剤をデリバリするように構成された血栓溶解剤デリバリモジュールと、
経頭蓋超音波エネルギーを前記クモ膜下血腫を含む前記クモ膜下領域へ手を使わずにデリバリするように構成されたヘッドセットを含む超音波モジュールと、
クモ膜下血腫の消褪の副産物を含む脳脊髄液を排出するように構成された脳脊髄液ドレーンと、前記クモ膜下血腫の消褪の1つ以上の指標を検知するように構成された脳脊髄液分析器と、を含むドレナージモジュールと、
コントローラを含む制御モジュールと
を含み、
前記コントローラは、
(1)前記血栓溶解剤デリバリモジュール及び前記ドレナージモジュールに動作可能に接続され、前記コントローラは、前記ドレナージモジュールからの前記クモ膜下血腫の消褪の前記1つ以上の指標に対応する信号を受信し、前記信号に応じて前記計測装置から前記クモ膜下領域への血栓溶解剤のデリバリを制御するようにプログラムされ、
(2)前記超音波モジュール及び前記ドレナージモジュールに動作可能に接続され、前記コントローラは、前記ドレナージモジュールからの前記クモ膜下血腫の消褪の前記1つ以上の指標に対応する信号を受信し、前記信号に応じて前記ヘッドセットから前記クモ膜下領域への超音波エネルギーのデリバリを制御するようにプログラムされ、又は
(3)前記(1)及び(2)の両方である、システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記血栓溶解剤デリバリモジュール及び前記超音波モジュールに動作可能に接続され、
前記ヘッドセットは血流速度を手を使わずに検知するように構成され、
前記コントローラは、前記超音波モジュールからの前記血流速度に対応する信号を受信し、かつ、前記信号に応じて前記計測装置から前記クモ膜下領域への前記血栓溶解剤のデリバリを制御するか、又は、前記信号に応じて前記ヘッドセットから前記クモ膜下領域への超音波エネルギーのデリバリを制御、又はその両方の制御を行うようにプログラムされる、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記脳脊髄液分析器はフローサイトメータである、請求項4に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願に対する相互参照]
本願は、2012年6月13日に出願されその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第61/659,269号の利益を主張する。先行する該出願及び/又は参照によって本明細書に組み込まれる任意の他の資料が本開示と矛盾する限度において、本開示はコントロールする。
【0002】
本技術は概して神経治療(neurological treatments)に関する。特に、例えば投与計画(regimes)で使用される血栓溶解剤のタイプ及び/又は量に起因する更なる脳出血を引き起こす可能性が比較的低い血管外血栓溶解治療計画(extravascular thrombolytic treatment regimes)において、(例えば、脳血管攣縮を予防するため又は脳血管攣縮の重症度を低減するために)血腫の消褪を超音波エネルギーを用いて促進することに、いくつかの実施形態は向けられている。
【背景技術】
【0003】
約5,000,000人の北米人が頭蓋内動脈瘤を抱えている。動脈瘤破裂の推定年間発生率は、100,000人あたり約10人から28人である。残念なことに、動脈瘤破裂は現在のところ比較的高い罹患率及び致死率と結びつけられている。N.F.Kassel及びJ.C. Tornerによる「The International Cooperative Study on the Timing of Aneurysm Surgery」の「an Update, 23 STROKE 205, 210」(1992)によれば、1980年代前半に複数年の期間に渡り脳神経外科の治療を受けた患者の外科的及び内科的処置の結果を報告する大規模で国際的な調査は、北米人の患者の内では42%の致死率及び罹患率であることを明らかにした。この調査から40年間で、クモ膜下出血の治療方法はわずかに向上してきた。クモ膜下出血の多くの重度の合併症の内、脳血管攣縮から生じる動脈狭窄がおそらく最もまん延し有害である。この合併症は、動脈瘤性クモ膜下出血の患者の約40から70%で発症し、これらの患者の約20から30%で遅発性の虚血性障害を引き起こす。これが、初期の出血を切り抜けて生き残った患者の致死及び罹患の最大の要因であると一般に考えられる。
【0004】
脳血管攣縮を予防するため、脳血管攣縮の重症度を低減するため、及び/又は脳血管攣縮の虚血による影響を低減するために様々な治療法が臨床試験されてきた。脳血管攣縮を予防すること又は脳血管攣縮の重症度を低減することを意図した被検治療薬は、ある種のカルシウムチャンネル遮断薬、エンドセリン受容体拮抗薬、及び鎮痙薬を含む。多くの場合、これらの薬剤は、アウトカムの向上をもたらすことができないか、或いは短期間のみの効果を与えるかのどちらかであった。ニモジピン(カルシウムチャンネル遮断薬)及びパパベリン(鎮痙薬)はいくらか有望ではあるが、それでも脳血管攣縮を確実に予防する可能性がほとんど或いは全くない。脳血管攣縮による虚血性の結果を低減することを意図した被検治療薬は、ある種のN−メチル−D−アスパラギン酸受容体拮抗薬及びフリーラジカルスカベンジャーを含む。これまで、これらの薬剤もアウトカムを有意に向上させることができないでいた。
【0005】
クモ膜下出血後のアウトカムを向上させる上で有効性が高いことを示す単独の薬剤が現在ないため、標準的な治療法には現在、複数の治療の組み合わせが挙げられる。循環血液量増加、高血圧、及び血液希釈を誘発するための薬及び液体の組み合わせを血管内に投与することを含むTriple−H療法(Triple−H therapy)が現在最も広く利用される治療法である。攣縮している血管を流れる血流量を増加させそれにより脳の虚血領域への血液の送り込みを増加させることをこの方法は意図している。あるケースでは、主要な脳内動脈の経皮的バルーン血管形成も同じ目的で採用される。Triple−H療法及び経皮的バルーン血管形成は、有用ではあるものの、脳血管攣縮に関連する虚血をせいぜい部分的に低減するだけである。神経学的障害又は死亡を阻止するのにさえこれらの効果は不十分であることが多い。更に、これらの方法は重大な合併症を引き起こす場合がある。例えば、Triple−H療法は、肺水腫、心筋虚血、低ナトリウム血症、腎髄質の洗い出し(renal medullary washout)、脳浮腫、及び更なる脳出血の発生率を上昇させることがある。経皮的バルーン血管形成は、外科的に引き起こされる神経障害、感染症、及び血管狭窄症のリスクを上昇させることがある。
【発明の概要】
【0006】
脳血管攣縮に直接対処すること(例えば脳血管攣縮を予防すること又は脳血管攣縮の重症度を低減すること)は、付随する虚血の結果を単に軽減するよりもアウトカムを向上させる可能性をはるかに有する。更に、脳血管攣縮は、典型的には遅発性であり出血後(例えば動脈瘤破裂の後)に比較的緩やかな臨床経過をたどるため、ほとんどの場合で予防的治療を行う機会がある。脳血管攣縮を予防する又は脳血管攣縮の重症度を低減するための効果的な方法は、年間で数千の生命を救い、数千件の神経学的障害を予防する可能性がある。したがって、この理由及び/又は本明細書では述べないその他の理由から、クモ膜下血腫、脳血管攣縮、及び/又はその他の関連疾患を治療するための装置、システム、及び方法に関して技術革新する必要性がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の多く側面は以下の図面を参照することでよりよく理解できる。図面の構成要素は必ずしも一定の縮尺ではない。その代わりに、本開示の原理を明確に図示することに力点が置かれている。
図1】クモ膜下血腫を持つ患者を示す頭蓋下部の図である。
図2】本技術の実施形態に従った、クモ膜下血腫を持つ患者を治療中の治療システムを示す部分概略透視図である。
図3】本技術の実施形態に従った、市販のヘッドセットを使用した超音波血栓溶解療法中の図1に示した患者の頭蓋下部の図である。
図4】本技術の実施形態に従った、他のヘッドセットを使用した超音波血栓溶解療法中の図1に示した患者の頭蓋下部の図である。
図5】本技術の実施形態に従った、他のヘッドセットを使用した超音波血栓溶解療法中の図1に示した患者の頭蓋下部の図である。
図6】本技術の実施形態に従った、他のヘッドセットを使用した超音波血栓溶解療法中の図1に示した患者の頭蓋下部の図である。
図7】本技術の実施形態に従った、超音波エネルギーのクモ膜下領域へのデリバリ(delivery)を示す部分概略断面図である。
図8】本技術の実施形態に従った、クモ膜下血腫の消褪を示す部分概略断面図である。
図9】本技術の実施形態に従った、脳脊髄液の排出を示す部分概略透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本技術のいくつかの実施形態の具体的な詳細が図1から図9を参照して本明細書に記載される。超音波血栓溶解療法を用いてクモ膜下血腫を治療するための装置、システム、及び方法に関する実施形態の多くが本明細書に記載されるが、本明細書に記載される実施形態に加えてその他の応用(application)及びその他の実施形態が本技術の範囲内にある。例えば、虚血性脳卒中及び/又はその他の神経学的疾患を治療する上でいくつかの実施形態は有用であり得る。加えて、本技術のいくつかの他の実施形態は、本明細書に記載されるものとは異なる構成、構成要素、又は手順を含むことが可能である。本技術が様々な更なる実施形態を有し得ること、及び図1から図9を参照して本明細書に記載される実施形態のいくつかの細部なしに本技術が実施され得ることを、当業者は理解するであろう。本明細書に提供される表題は便宜のためのみにある。
I.脳血管攣縮
【0009】
脳血管攣縮は、血管の痙攣と、血管壁の中膜における平滑筋の関連する収縮とを含む。この疾患はクモ膜下血腫の領域で生じることが知られている。図1は、側頭葉106より下方で小脳108より前方の基底槽104においてクモ膜下血腫102を持つ患者100を示す頭蓋下部の図である。いくつかの主要な大脳動脈及び小脳動脈(図示せず)が基底槽104又はその近くにある。これらの動脈は脳にとっての主要な血液供給源である。したがって、クモ膜下血腫102によって引き起こされるこれらの動脈の痙攣後の脳虚血は、神経学的障害又は死亡に急速につながり得る。基底槽104は脳内出血後に血液が集まりやすい部位であるが、その他の部位であってもよい。これらの他の部位における動脈の脳血管攣縮も重篤な合併症を引き起こし得る。
【0010】
動脈瘤破裂は、脳血管攣縮につながるクモ膜下血腫の最も多い原因ではあるが、外傷、腫瘍、又は動静脈奇形といったその他の原因もあり得る。クモ膜下血腫の全ての場合で脳血管攣縮が起きるわけではなく、また、起きた場合、その発病は典型的には遅発性である。例えば、脳血管攣縮は、動脈瘤性クモ膜下出血後の4日目と10日目との間にしばしば起きることが観察されている。それは血腫消褪の副産物(例えば血管収縮剤又はその他の血管作動性物質)と関連付けられ得ることを、脳血管攣縮の臨床症状は示唆する。しかしながら、脳血管攣縮が神経性の虚血性障害を引き起こす根本的な病態生理学的メカニズムはまだよく理解されていない。その他のメカニズム案としては、ニューロン機構、内皮細胞由来の弛緩因子の減損、増殖性血管障害、免疫反応性のメカニズム、炎症メカニズム、機械的現象(例えば、クモ膜繊維を伸ばすこと或いは血腫による血管の直接的な圧迫)、及び血小板凝集に関連するメカニズムがとりわけ挙げられる。
【0011】
脳血管攣縮の正確な病態生理は周知ではないかもしれないが、関連する血腫の早期の除去が脳血管攣縮を予防するか少なくとも脳血管攣縮の重症度を低減する可能性が高いことをエビデンスが示唆する。上記したように、ほとんどのクモ膜下血腫は基底槽で発生する。これらの血腫は様々な程度の凝固を伴い得、多くの場合、血塊とみなされ得る。近くの構造体(例えば基底大脳動脈(basal cerebral arteries))を損傷することなくクモ膜下血腫をメカニカルに除去することは通常は不可能である。しかしながら、クモ膜下血腫を除去するための薬理学的アプローチは、脳血管攣縮を予防する又は脳血管攣縮の重症度を低減する大きな可能性を有する。しかしながら、こうしたアプローチは、その利点を相殺するほどの重大な副次的影響を引き起こす可能性もある。例えば、クモ膜下血腫の急速な消褪は典型的には望ましいが、頭蓋内の他の血塊の破壊(disruption)は脳出血を悪化させる場合がある。特に、動脈瘤破裂の周囲或いは(例えば外科的なクリッピング或いは血管内のコイリングに関連した)手術創傷部で血塊を破壊することは、クモ膜下腔に更なる出血を引き起こし得る。その他の重大な副次的影響だけでなくその他の箇所からの更なる脳出血の可能性もある。
II.超音波血栓溶解療法
【0012】
本技術の少なくともいくつかの実施形態は、従来の治療法と比べて副次的影響が低減された、クモ膜下血腫の除去(例えば完全若しくは部分的な排除(evacuation)又はその他の消褪)を容易にすることを含み得る。いくつかの実施形態では、血栓溶解剤を治療用超音波エネルギーと組み合わせて使用し得る。一般に超音波血栓溶解療法として知られるこの組み合わせは、他の用途では効果的であることが示されていた。例えば、超音波血栓溶解療法は、虚血性脳卒中の治療において再疎通を促進することが示されていた。理論的にのみ言えば、血栓溶解剤の効果についての超音波エネルギーの効果は、化学的というよりは主にメカニカル的である可能性が高い。例えば、超音波エネルギーは、構造体中への血栓溶解剤の流れ込み及び/又は混合を促進することにより、血腫の構造体中の結合部位への血栓溶解剤の結合を高め得る。その他のメカニズムもあり得る。
【0013】
脳出血を引き起こす又は悪化させる可能性があるために、血管系の外側で血栓溶解剤を使用することは、神経学的な用途としては一般的に奨励されなかったか少なくとも非常に制限されてきた。しかしながら、血栓溶解治療に超音波エネルギーを加えることは、侵襲性がより低い(less aggressive)血栓溶解剤及び/又はより少ない量の血栓溶解剤の使用を容易にし得る。例えば、更なる脳出血、例えば血腫が最初に生じた箇所からの再出血を引き起こす又は悪化させる臨床学的可能性をごく僅かに若しくは無視できる程度又はほとんど全く上昇させないタイプ、又はその程度の十分少量の血栓溶解剤を使用した、治療効果のあるクモ膜下血腫の治療が超音波エネルギーを使用することで可能となり得る。いくつかの実施形態では、例えば5%未満の上昇又は2%未満の上昇といったように、再出血の臨床学的可能性において10%未満の上昇をもたらす程度の十分に少量で、血栓溶解剤を導入できる。更に、超音波エネルギーを血栓溶解剤と組み合わせて使用することは、治療上効果がある最小限の投与量又はそれに近い量に維持できるよう、治療計画の期間に渡って血栓溶解剤の投与量を更に制限するための制御アルゴリズムの使用を容易にし得る。
III.選択された実施例
【0014】
図2は、本技術の実施形態に従った、クモ膜下血腫(図示せず)を持つ患者202を治療中の治療システム200の部分概略透視図である。システム200は、血栓溶解剤デリバリモジュール204、超音波モジュール206、ドレナージモジュール208、及び制御モジュール210を含み得る。血栓溶解剤デリバリモジュール204は、計測装置212と、例えば脳室造瘻術を使って患者202のクモ膜下領域215へ血栓溶解剤をデリバリする(deliver)ように構成されたカテーテル214とを含み得る。超音波モジュール206は、ヘッドセット216と、電源218と、ヘッドセット216と電源218との間に延びる電源コード220とを含み得る。経頭蓋超音波エネルギーを手を使わないでクモ膜下領域215へデリバリするようにヘッドセット216は構成され得る。ドレナージモジュール208は、ドレーン線222と、脳脊髄液ドレーン224と、ドレーン線222と脳脊髄液ドレーン224との間の脳脊髄液分析器226とを含み得る。ドレーン線222は、患者202の腰部領域227又は他の適切な領域から、血腫の消褪の副産物を非限定的に含む脳脊髄液を排出するように構成され得る。制御モジュール210は、ユーザインタフェース228、血栓溶解剤デリバリモジュール204、超音波モジュール206、及びドレナージモジュール208に動作可能に接続されたコントローラ229とを含み得る。血栓溶解剤デリバリモジュール204及び超音波モジュール206は、クモ膜下血腫の治療用に構成されたキットに含まれ得る。いくつかの実施形態では、このキットはドレナージモジュール208及び/又は制御モジュール210を更に含み得る。
【0015】
本技術の実施形態に従った方法の一例では、患者202は、クモ膜下血腫を持つ又は持つ可能性があるとまず診断され得る。そして、脳室造瘻術が実施され得、脳室造瘻術によって患者の脳230の脳室腔(図示せず)中へカテーテル214が挿入され得る。その方法は、カテーテル214を介して計測装置212から脳室腔内の脳脊髄液へ血栓溶解剤をデリバリすることを更に含み得る。計測装置212は、ポンプ、バルブ、タイマ、電源、容器、及び/又はその他の適切な機構(feature)を含み得る。導入の後、血栓溶解剤は、脳脊髄液中に血管外で拡散し得、クモ膜下血腫を含むクモ膜下領域215へ最終的に移動し得る。いくつかのケースでは、血栓溶解剤とクモ膜下血腫との接触を促進する上で、及び/又は矢印232により示される流路(path)に沿って血腫の消褪の副産物をドレーン線222に向かって流れやすくする上で、脳室造瘻術によって血栓溶解剤をデリバリすることは有用であり得る。その他のケースでは、血栓溶解剤は、大槽内で、クモ膜下腔内で脊髄に近接して、又は脳室造瘻術以外の別の適切な方法で導入され得る。
【0016】
ドレナージモジュール208は、血腫の消褪の副産物の除去を容易にし得る。いくつかの実施形態では、副産物を含む脳脊髄液は、ヘッドセット216を用いてクモ膜下領域215へ超音波エネルギーをデリバリしている間に、ドレーン線222を介して患者からゆっくりと排出され得る。図2に示されるドレーン線222は、腰部領域227に接続されているが、脳脊髄液を排出するに相応しいその他の部位にも使用可能である。例えば、腰部領域227よりもクモ膜下領域215に近い頸部領域234で、ドレーン線222は、患者202とクモ膜下腔内に接続され得る。更に、いくつかの実施形態では、血栓溶解剤デリバリモジュール204及び超音波モジュール206は、ドレナージモジュール208なしに使用され得る。例えば、いくつかのケースでは、血腫の消褪の副産物を脳脊髄液を介して単に消散することが、脳血管攣縮を予防する又は脳血管攣縮の重症度を低減する上で十分であり得る。
【0017】
血栓溶解剤のデリバリの開始前又は後に、ヘッドセット216は患者202に接続され得る。ヘッドセット216は、一つ以上の超音波トランスデューサ(図示せず)を含み得、治療用超音波エネルギーがクモ膜下領域215へ向うようにトランスデューサが位置するように、患者202に取り付けられ得る。例えば、ヘッドセット216は、手を使わずに経頭蓋超音波エネルギーをクモ膜下領域215へデリバリするように構成され得る。いくつかのケースでは、本技術の実施形態に従った治療計画は数時間又は数日間に及び得る。これら又はその他のケースでは、経頭蓋超音波エネルギーの手を使わないデリバリは、臨床医の継続的な立会いを伴う技術を用いた超音波エネルギーのデリバリよりも高い実用性及び/又は信頼性を有し得る。ヘッドセット216を患者202につなげることは、ヘッドセット216が治療の間適切な位置に概ね留まるように、超音波ゲルを患者202に塗布してヘッドセット216を密接に(snuggly)取り付けることを含み得る。いくつかの実施形態では、ヘッドセット216は様々な頭のサイズに合うように調整可能であり得る。ヘッドセット216の位置は、ずれが生じていないかを判定するために治療の間定期的に監視され得る。位置決めの後、血栓溶解剤の血栓溶解効果を高めるために、ヘッドセット216は、超音波エネルギーをクモ膜下領域215へデリバリするために起動され得る。血栓溶解剤の血栓溶解効果を高めることは、例えば、血腫の消褪の割合を少なくとも約20%、少なくとも約50%、又は少なくとも約100%上昇させることを含み得る。ヘッドセット216は図2にはバンドとして図示されているが、他の実施形態では、ヘッドセット216はその他の適切な形状を有し得る。例えば、ヘッドセット216は、ヘルメットであり得、又は完全な円周ではない形状を有し得る。ヘッドセット216の更なる詳細は、図3から図6を参照して以下に記載される。
【0018】
制御モジュール210は、システム200の全体又は部分の動作を自動又は手動で制御するように構成され得る。いくつかの実施形態では、超音波モジュール206及び/又はドレナージモジュール208からの入力を受け、その入力に従ってシステム200の1以上の局面の動作を制御するように、コントローラ229はプログラムされ得る。例えば、超音波モジュール206から信号を受け、その信号に応えて計測装置212からクモ膜下領域215への血栓溶解剤のデリバリを制御するように、及び/又はその信号に応えてヘッドセット216からクモ膜下領域215への超音波エネルギーのデリバリを制御するように、コントローラ229はプログラムされ得る。更に、ドレナージモジュール208から信号を受け、その信号に応えて計測装置212からクモ膜下領域215への血栓溶解剤のデリバリを制御するように、及び/又はその信号に応えてヘッドセット216からクモ膜下領域215への超音波エネルギーのデリバリを制御するように、コントローラ229はプログラムされ得る。血栓溶解剤のデリバリを制御することは、例えば、血栓溶解剤の継続的又は断続的な投与(例えば投与率)を時間と共に制御することを含み得る。超音波エネルギーのデリバリを制御することは、例えば、超音波エネルギーの周波数、強度、デューティサイクル、波形、パルス形状、及び/又はその他の適切なパラメータを時間と共に制御することを含み得る。
【0019】
超音波モジュール206及び/又はドレナージモジュール208は、コントローラ229により使用され得及び/又はユーザインタフェース228により表示され得る情報を作成するための診断機能を有し得る。例えば、ヘッドセット216は、クモ膜下血腫に近接した(例えば、クモ膜下血腫での又はクモ膜下血腫の近くの)1以上の動脈(例えば、中大脳動脈又は内頸動脈の頭蓋内部分)における血流速度を超音波で検知し、対応する信号をコントローラ229へ送信するように構成され得る。そのような実施形態では、ヘッドセット216は、ドップラー効果に基づいて処理され得る超音波エコーを受信して血流速度を判定するように構成された1つ以上のトランスデューサを含み得る。血流速度は、患者202の脳血管攣縮の推定される臨床経過の信頼できる指標であり得る。例えば、上昇する血流速度の軌跡は、脳血管攣縮の推定される最大の重症度を示し得る。したがって、超音波モジュール206が血流速度の急上昇を検知する場合には、より多量の血栓溶解剤がクモ膜下領域215中に導入されるようにコントローラ229はプログラムされ得、超音波モジュール206が血流速度の緩慢な上昇を検知する場合には、より少量の血栓溶解剤がクモ膜下領域215中に導入されるようにコントローラ229はプログラムされ得る。診断機能の詳細及びヘッドセット216の潜在的に有用なその他の態様は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,733,450号に詳述されている。
【0020】
ドレナージモジュール208は、クモ膜下血腫の消褪の1以上の指標を検知し、対応する信号をコントローラ229へ送信するように構成され得る。そうした指標は、例えば、血腫の消褪の副産物(例えば赤血球)の濃度、又は血腫の消褪に対応する脳脊髄液中のその他の化学的標識を含み得る。いくつかの実施形態では、脳脊髄液分析器226は、これらの濃度を継続的又は断続的に時間と共に検知するように構成されたフローサイトメータである。脳脊髄液分析器226からの情報は血腫の消褪の割合(rate)を示し得る。したがって、ドレナージモジュール208がクモ膜下血腫の急速な消褪を検知する場合には、より少量の血栓溶解剤がクモ膜下領域215中に導入されるようにコントローラ229はプログラムされ得、ドレナージモジュール208がクモ膜下血腫の緩慢な消褪を検知する場合には、より多量の血栓溶解剤がクモ膜下領域215中に導入されるようにコントローラ229はプログラムされ得る。同様に、ドレナージモジュール208がクモ膜下血腫の緩慢な消褪を検知する場合には、別の強度、周波数及び/又はその他の適切なパラメータで超音波エネルギーがクモ膜下領域215中に導入されるようにコントローラ229はプログラムされ得る。超音波エネルギーのパラメータは、例えばクモ膜下血腫の消褪の割合が十分なレベルに上昇するまで、可変であり得る。
【0021】
超音波モジュール206及びドレナージモジュール208の診断機能はいくつかの実施形態では省略され得る。超音波モジュール206及び/又はドレナージモジュール208からの入力に応えてシステム200を制御することに加えて又は代えて、例えば、血栓溶解剤の投与量、超音波エネルギーの周波数、超音波エネルギーの強度、及び/又はその他の適切なパラメータを含む所定の治療計画のパラメータ等、所定の治療パラメータに従ってシステム200の動作を時間と共に制御するようにコントローラ229はプログラムされ得る。コントローラ229は、これらのパラメータをユーザインタフェース228から直接受信し、及び/又はユーザインタフェース228からのその他のデータに基づいてこれらのパラメータを計算するようにプログラムされ得る。ユーザは、患者情報(例えば、年齢、性別、体重等)と条件情報(例えば、動脈瘤破裂からの経過時間、おおよその血腫容量等)とを入力し得、コントローラ229は、プログラムされたアルゴリズムに基づく治療のパラメータを、この情報を使って決定し得る。例えば、動脈瘤破裂からの経過時間が比較的長い(例えば、約36時間を超える)場合及び/又はおおよその血腫容量が比較的大きい(例えば、約15mLを超える)場合、侵襲性がより高い治療計画を使用し得る。同様に、動脈瘤破裂からの経過時間が比較的短い(例えば、約24時間より短い)場合及び/又はおおよその血腫容量が比較的小さい(例えば、10mLより小さい)場合、侵襲性がより低い治療計画を使用し得る。制御モジュール210の多くの適切な変形が可能である。更に、いくつかの実施形態では、制御モジュール210は省略し得、血栓溶解剤デリバリモジュール204、超音波モジュール206、及び/又はドレナージモジュール208は、一人以上の臨床医の監視の下で独立して動作され得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、図2に示したヘッドセット216は、例えば、基底大脳動脈における虚血性脳卒中の治療用と表示された市販のヘッドセット等の市販のヘッドセットであり得る。そのようなヘッドセットの一例は、Cerevast Therapeutics社(ワシントン州、レッドモンド)から市販されているCLOTBUST ERである。図3は、本技術の実施形態に従った市販のヘッドセット300を使用した超音波血栓溶解療法中の図1に示した患者100の頭蓋下部の図である。側頭葉106及び小脳108は、図示を容易にするために示されていない。図3に示されるように、ヘッドセット300は、前部ヘッドフレーム部材302と、後部ヘッドフレーム部材304と、後部ヘッドフレーム部材304の一部を前部ヘッドフレーム部材302へ引き入れそれによりヘッドセット300が患者の頭の周囲で締まるように回転可能なノブ306とを含み得る。前部ヘッドフレーム部材302は患者100と額で接触するように構成され得、後部ヘッドフレーム部材304は首の後ろの部分で患者100と接触するように構成され得る。ヘッドセット300は、ヘッドセット300の位置決めを容易にし得る前部締め具308を更に含み得る。図3に示されるように、ヘッドセット300は、患者の耳313a及び313bに近接した側部トランスデューサアセンブリ312a及び312bと、後部ヘッドフレーム部材304上の中心に置かれた(centered on)後部トランスデューサアセンブリ314とを含み得る。トランスデューサアセンブリ312a、312b、及び314用の電力及び制御信号はケーブル316を介してヘッドセット300に伝達され得る。ヘッドセット300は、様々な適切なパターン(例えば、周波数、強度、デューティサイクル、波形、又はその他の適切なパラメータ)に従ってトランスデューサアセンブリ312a、312b、及び314を動作させるように構成され得る。これらのパターン、及びヘッドセット300の潜在的に有用なその他の態様は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0083717号及び第2012/0083718号に詳述されている。図示を容易にするため、図3には、超音波エネルギー318がトランスデューサアセンブリ312a、314からのみ、すなわち個々のトランスデューサからではなくトランスデューサ群から発せられていることが示されている。
【0023】
図3において、ヘッドセット300は、超音波エネルギー318への(例えば、側頭葉106を含む)脳実質の暴露を低減しながら超音波エネルギー318を基底槽104へデリバリするように構成され得る。このことは、例えば、基底槽104の外側での超音波血栓溶解療法のレベルを低減する上で有用であり得る。クモ膜下血腫102が脳内出血の結果である場合、脳内出血が最初に発生した箇所での超音波エネルギーの強度よりも基底槽104での超音波エネルギーの強度が高く(例えば、少なくとも50%高く又は少なくとも100%高く)なるように、超音波エネルギー318は基底槽104に向けられ得る。これは、脳内出血が最初に発生した箇所での更なる出血を引き起こす可能性を低減する上で場合によっては有用であり得る。更に、低い強度の超音波への長時間の暴露は脳組織にとって安全であると一般的に考えられるが、そうした暴露を低減することは、特に、暴露が治療上有用でないケースでは、未知の副次的影響の可能性を低減するためにやはり望ましい場合がある。
【0024】
トランスデューサアセンブリ312a、312b、及び314が超音波エネルギー318を基底槽104の中央領域320に注ぎ込めるように、ヘッドセット300は、頭蓋学的な標識構造とのアライメント(alignment)のために構成され得る。主要な大脳動脈及び小脳動脈は、中央領域320に主に位置しており、虚血性脳卒中に関連する治療領域とする。超音波エネルギー318を中央領域320へデリバリすることは、クモ膜下血腫の超音波血栓溶解療法にも有用であり得る。しかしながら、図3に示されるように、クモ膜下血腫102は基底槽104の周辺領域322にまで広がり得る。中央領域320及び周辺領域322の両方におけるクモ膜下血腫102の超音波血栓溶解療法は消褪の割合を上昇させ得る。いくつかのケースでは、血栓溶解剤は、周辺領域322におけるクモ膜下血腫102の部分に比べて、中央領域320におけるクモ膜下血腫102の部分に到達しにくい可能性がある。それ故、超音波血栓溶解療法の可能性は、中央領域320に比べて周辺領域322において高くなり得る。クモ膜下血腫の厳密な部分は患者によって異なり、クモ膜下血腫の縮小と共に治療の過程で変化し得る。従って、いくつかの実施形態では、超音波エネルギー318は、一般的に虚血性脳卒中の治療に検討されるよりも基底槽104のより広い部分(例えば、概ね全部分)に渡って(又は離れたクモ膜下の領域にまで)デリバリされ(例えば、概ね均等にデリバリされ)得る。
【0025】
図4から図6は、本技術の実施形態に従った他のヘッドセットを使用した超音波血栓溶解療法中の図1に示した患者100の頭蓋下部を示す図である。図3のように、側頭葉106及び小脳108は図示されておらず、超音波エネルギーの描写は、図示を容易にするために図4から図6において簡略化されている。図4に示されるように、特定の実施形態に従って構成されるヘッドセット400は、周辺領域322への超音波エネルギー406のデリバリを広げるように構成された中高形状を有する、側部トランスデューサアセンブリ402a、402b及び後部トランスデューサアセンブリ404を含み得る。他の実施形態では、トランスデューサアセンブリ402a、402b、及び404の個々のトランスデューサの圧電性結晶(図示せず)の形状特性は、トランスデューサアセンブリ402a、402b、及びトランスデューサアセンブリ404が中高であるか否かに係わらず、超音波エネルギー406のデリバリを広げるために選択され得る。図5に示されるように、別のヘッドセット500は、基底槽104の中央領域320及び周辺領域322の両方へ超音波エネルギー506をデリバリするために位置決めされた4つの側部トランスデューサアセンブリ502a〜502d及び2つの後部トランスデューサアセンブリ504a及び504bを含み得る。他の実施形態では、ヘッドセット500はトランスデューサアセンブリの他の適切な個数及び配置(arrangements)を採用し得る。図6に示されるように、別のヘッドセット600は、患者100の側頭領域604a、604b間に概ね連続的に伸びるように構成された曲線状のトランスデューサアセンブリ602を含み得る。曲線状のトランスデューサアセンブリ602は、その長さに渡って配置された複数の(図6に示されるように)個別トランスデューサ606を含み得る。いくつかの実施形態では、曲線状のトランスデューサアセンブリ602は、様々なサイズの患者により良く合うように、少なくとも部分的に可撓性を持ち及び/又は調整可能であり得る。ヘッドセット600は周辺領域322の少なくとも後ろ側半分に渡って概ね均一に超音波エネルギー608をデリバリすることに適し得る。
【0026】
図7及び図8本技術の実施形態に従った超音波血栓溶解療法の態様を示す部分概略断面図であり、図9その部分概略透視図である。図7に示されるように、トランスデューサアセンブリ702の複数のトランスデューサ700は、超音波エネルギー704をクモ膜下腔706に経頭蓋的にデリバリすることがあり得る。超音波エネルギー704は皮膚708、頭蓋骨710、硬膜712及びクモ膜713を含む解剖学的ないくつかの層を通って伝わり得る。図2を参照して上記されたように、超音波エネルギー704の周波数、強度、デューティサイクル、波形、パルス形状、及び/又は他の適切なパラメータは(例えば臨床学的要因に基づいて)手動又は自動で選択され得る。例えば、(例えば更なる脳出血といった)望ましくない副次的作用の可能性を低減しながら血腫の消褪の割合を上昇させることはしばしば、治療を開始する前はケースバイケースで考慮されかつ、超音波エネルギー704の適切なパラメータの選択を通達するために治療の最中に断続的に又は継続的に再考慮されることが可能な矛盾する目的である。ある場合では、より低い強度及び/又はより高い周波数を使用することで望ましくない副次的作用の可能性を低減し得、その一方で、より高い強度及び/又はより低い周波数を使用することで血腫の消褪の割合を上昇させることがあり得る。様々な異なる或いは更なる効果及び相関も可能性がある。
【0027】
より低い周波数の超音波はより高い周波数の超音波よりも(例えば、図7及び図8に示される皮膚708、頭蓋骨710、硬膜712及びクモ膜713といった)解剖学的な層を、典型的には、より有効に通過する。しかし、より低い周波数の超音波はより高い周波数の超音波よりも、脳の小血管に対してより破壊的であり損傷を与える可能性を有している場合もある。いくつかの実施形態では、超音波エネルギー704の周波数は(例えば、約3MHzより高い、約3.5MHzより高い、或いは約4MHzより高いといったように)比較的高く選択され得る。このことにより、超音波血栓溶解療法を主として周辺領域322(図3から図6)で引き起こすことが可能となり、より低い周波数を使用すること及び/又は超音波エネルギー704を中央領域320にデリバリする(図3から図6)ことによる潜在的な副次的影響を低減し得る。他の実施形態では、より低い周波数の使用は適切であり得る。超音波エネルギー704の適切な周波数は、例えば、約0.5から約5MHzの間の周波数、約1から約4MHzの間の周波数、或いは他の適切な範囲内の周波数を含み得る。超音波エネルギー704の適切な強度は、例えば、約5W/cm2未満の強度、約3.5W/cm2未満の強度、約2W/cm2未満の強度、約0.1から約5W/cm2の間の強度、約0.2から約3.5W/cm2の間の強度、或いは他の適切な範囲内の強度を含み得る。
【0028】
クモ膜下腔706内で、超音波エネルギー704は、血栓溶解剤714と凝固血液716の間の混合を容易にするか或いは血栓溶解剤714の活量(activity)を高めるかをし得る。図示を簡略化するために、血栓溶解剤714及び凝固血液716が、クモ膜下腔706の全体に渡って概ね均等に分散されている様子が概略的に図7に示されている。より典型的には、クモ膜下腔706の異なる部分は血栓溶解剤714及び凝固血液716の異なる濃度を持ち得る。例えば、基底槽内のクモ膜下腔706の中央領域は、クモ膜下腔706の周辺領域よりも、血栓溶解剤714のより低い濃度を持ち得、凝固血液716のより高い濃度を持ち得る。図8及び図9に示されるように、血栓溶解剤714及び消褪による産物718は矢印720及び722の方向に脊柱管724を下って、腰椎728に近接するドレーン線726へ向かって移動し得る。ドレーン線726からは、血栓溶解剤714及び消褪による産物718が採集バッグ730に採集され得る。
【0029】
本技術の多くの実施形態が、向上された血栓溶解効果を引き起こすために超音波エネルギーを使用することに関連して、本明細書に記載されているが、エネルギーの他の適切な形態も使用され得る。例えば、図2に示される超音波モジュール206は、熱エネルギー、(例えば無線周波数といった)電磁的エネルギー、或いは(例えば、振動、或いは音響流といった)他の適切なタイプの力学的エネルギーをデリバリするように構成されたエネルギーデリバリモジュールであり得る。
【0030】
適切な血栓溶解剤714は、例えば、(例えばアルテプラーゼ(alteplase)、レテプラーゼ(retaplase)、テネクテプラーゼ(tenecteplase)といった)組織プラスミノゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、アニストレプラーゼ、及びウロキナーゼ、その他を含み得る。血栓溶解剤714のタイプ及び/又は量は超音波エネルギー704の使用に関連する向上された血栓溶解効果に基づいて選択され得る。治療上効果のある量は、血栓溶解剤714のタイプ、患者の身体的特性、及び状態の重症度(severity of the condition)といった要因に従って変化し得る。適切な治療の特定の例において、各投与の後に約2時間に渡って経頭蓋超音波を印加しながら、組織プラスミノゲン活性化因子は8時間あたり約1mgの量にて脳室造瘻術を使って投与され得る。いくつかの実施形態では、血栓溶解剤714は、多様な薬又は(例えば抗凝血剤といった)他の薬剤の組み合わせを含み得る。更に、超音波血栓溶解療法促進剤(sonothrombolysis enhancing agent)は、血栓溶解剤714と共に又は血栓溶解剤714とは別にクモ膜下腔706に血管外で導入され得る。超音波血栓溶解療法促進剤は、例えば、診察用超音波検査での使用のために市販されている音波マイクロバブル(echogenic microbubbles)或いは他のコントラスト強調剤を含み得る。そのような粒子(particles)は典型的には浮揚性を有するが、このことは血管内での使用の間には殆ど或いは全く重要性を持たない。しかし、本技術のいくつかの実施形態では、(例えば脳室造瘻術によって)導入された後に脳脊髄液内で沈下し重力によって基底槽内に留まり得るように、超音波血栓溶解療法促進粒子は概ね非浮揚性のものが選択され得る。例えば、脳の実質内部分の内での超音波血栓溶解療法の低減された可能性及び追加の脳内出血の関連付けられる可能性をもつクモ膜下血腫を含む領域への超音波血栓溶解療法の選択性を高めることにこのことは有用であり得る。
【0031】
本技術に従った超音波血栓溶解療法は、患者における、脳血管攣縮を予防する又は脳血管攣縮の重症度或いはクモ膜下血腫の他の合併症の重症度を低減する十分な可能性を有している。脳血管攣縮の解析的尺度は、例えば、(例えば、中大脳動脈及び内頸動脈の頭蓋内部分といった)クモ膜下血腫に近接する動脈における血流速度を含む。他の有用な尺度は、内頸動脈の頭蓋外部分における血流速度に対する中大脳動脈における血流速度の比であり得る。いくつかの実施形態では、本技術に従った超音波血栓溶解療法は、血栓溶解剤の最初の投与後少なくとも約14日間に渡って、クモ膜下血腫に近接する概ね全ての動脈における血流速度を(例えば約160或いは約200cm/秒未満といったように)約120cm/秒未満に維持し得る。これら又は他の実施形態では、内頸動脈の頭蓋外部分における血流速度に対する中大脳動脈における血流速度の比は、血栓溶解剤の最初の投与後少なくとも約14日間に渡って(例えば約4或いは約6未満といったように)少なくともと約3未満に概ね維持され得る。本技術の実施形態は、制御に関して(relative to control)統計的に有意に高い発生の率でこれら又は他の結果を獲得し得ることが期待される。
IV.付加的実施例
(実施例1)
クモ膜下血腫を含むクモ膜下領域に血栓溶解剤を血管外で導入し、
経頭蓋超音波エネルギーをクモ膜下領域へ手を使わずにデリバリするように構成されたヘッドセットを患者につなげ、
血栓溶解剤の血栓溶解効果を向上させるために、ヘッドセットを通してクモ膜下領域へ超音波エネルギーをデリバリすること
を含む、クモ膜下血腫を持つ人間の患者を治療する方法。
(実施例2)
クモ膜下領域に超音波エネルギーをデリバリすることは、超音波エネルギーを基底槽の概ね全てにデリバリすることを含む、
実施例1に記載の方法。
(実施例3)
超音波エネルギーをデリバリすることは、約3.5MHzより高い周波数で超音波エネルギーをデリバリすることを含む、
実施例1に記載の方法。
(実施例4)
血栓溶解剤を導入することは再出血の臨床学的可能性における5%未満の上昇を引き起こすのに十分に少ない量にて血栓溶解剤を導入することを含む、
実施例1に記載の方法。
(実施例5)
向上された血栓溶解効果に基づいて血栓溶解剤の量を選択することを更に含む、
実施例1に記載の方法。
(実施例6)
向上された血栓溶解効果に基づいて血栓溶解剤のタイプを選択することを更に含む、
実施例1に記載の方法。
(実施例7)
クモ膜下血腫は脳内出血の結果であり、
超音波エネルギーをデリバリすることは、脳内出血が最初に生じた箇所における超音波エネルギーの強度よりもクモ膜下領域における超音波エネルギーの強度が高くなるように、超音波エネルギーをクモ膜下領域に向かって方向付けることを含む、
実施例1に記載の方法。
(実施例8)
血栓溶解剤を導入することは、脳室造瘻術を使って血栓溶解剤を導入することを含む、
実施例1に記載の方法。
(実施例9)
血栓溶解剤を導入することは、血栓溶解剤を大槽内で導入することを含む、
実施例1に記載の方法。
(実施例10)
血栓溶解剤を導入することは、クモ膜下腔内で脊髄に近接して血栓溶解剤を導入することを含む、
実施例1に記載の方法。
(実施例11)
患者から脳脊髄液を排出することを更に含む、
実施例1に記載の方法。
(実施例12)
患者から脳脊髄液を排出することは、超音波エネルギーをクモ膜下領域にデリバリしながら患者から脳脊髄液を排出することを含む、
実施例11に記載の方法。
(実施例13)
ヘッドセットを用いて血流速度を超音波によって監視することを更に含む、
実施例1に記載の方法。
(実施例14)
血流速度に応じて血栓溶解剤の量を制御することを更に含む、
実施例13に記載の方法。
(実施例15)
超音波血栓溶解療法促進剤をクモ膜下領域に血管外で導入することを更に含む、
実施例1に記載の方法。
(実施例16)
超音波血栓溶解療法促進剤は非浮揚性の粒子を含み、
超音波血栓溶解療法促進剤を導入することは脳室造瘻術を使って超音波血栓溶解療法促進剤を導入することを含む、
実施例15に記載の方法。
(実施例17)
患者における脳血管攣縮を予防すること又は脳血管攣縮の重症度を低減することを更に含む、
実施例1に記載の方法。
(実施例18)
患者における脳血管攣縮を予防すること又は脳血管攣縮の重症度を低減することは、クモ膜下血腫に近接する概ね全ての動脈における血流速度を、血栓溶解剤の導入後少なくとも約14日間に渡って約120cm/秒未満に維持することを含む、
実施例17に記載の方法。
(実施例19)
患者における脳血管攣縮を予防すること又は脳血管攣縮の重症度を低減することは、クモ膜下血腫に近接する概ね全ての動脈における血流速度を、血栓溶解剤の導入後少なくとも約14日間に渡って約200cm/秒未満に維持することを含む、
実施例17に記載の方法。
(実施例20)
患者における脳血管攣縮を予防すること又は脳血管攣縮の重症度を低減することは、
中大脳動脈及び内頸動脈の頭蓋内部分における血流速度を、血栓溶解剤の導入後少なくとも約14日間に渡って約120cm/秒未満に概ね維持することと、
内頸動脈の頭蓋外部分における血流速度に対する中大脳動脈における血流速度の比を約3未満に概ね維持すること、
を含む、
実施例17に記載の方法。
(実施例21)
患者における脳血管攣縮を予防すること又は脳血管攣縮の重症度を低減することは、
中大脳動脈及び内頸動脈の頭蓋内部分における血流速度を、血栓溶解剤の導入後少なくとも約14日間に渡って約200cm/秒未満に概ね維持することと、
内頸動脈の頭蓋外部分における血流速度に対する中大脳動脈における血流速度の比を約6未満に概ね維持すること、
を含む、
実施例17に記載の方法。
(実施例22)
計測装置を含む血栓溶解剤デリバリモジュールと、
経頭蓋超音波エネルギーをクモ膜下血腫を含むクモ膜下領域へ手を使わずにデリバリし、クモ膜下血腫に近接する1以上の動脈における血流速度を手を使わずに検知するように構成されたヘッドセットを含む超音波モジュールと、
血栓溶解剤デリバリモジュール及び超音波モジュールに動作可能に接続されたコントローラであって、超音波モジュールからの血流速度に対応する信号を受信し、並びに信号に応じて計測装置からクモ膜下領域への血栓溶解剤のデリバリを制御する、信号に応じてヘッドセットからクモ膜下領域への超音波エネルギーのデリバリを制御する、又はその両方を行うように構成された前記コントローラを含む制御モジュールと
を含む、クモ膜下血腫を持つ人間の患者を治療するシステム。
(実施例23)
血栓溶解剤デリバリモジュールは、脳室造瘻術を使ってクモ膜下領域に血栓溶解剤をデリバリするように構成されたカテーテルを更に含む、
実施例22に記載のシステム。
(実施例24)
脳脊髄液ドレーンを含むドレナージモジュールを更に含む、
実施例22に記載のシステム。
(実施例25)
計測装置を含む血栓溶解剤デリバリモジュールと、
経頭蓋超音波エネルギーをクモ膜下血腫を含むクモ膜下領域へ手を使わずにデリバリするように構成されたヘッドセットを含む超音波モジュールと、
脳脊髄液ドレーンと、クモ膜下血腫の消褪の1つ以上の指標を検知するように構成された脳脊髄液分析器とを含むドレナージモジュールと、
コントローラを含む制御モジュールとを含み、
コントローラは、
(1)血栓溶解剤デリバリモジュール及びドレナージモジュールに動作可能に接続され、コントローラは、ドレナージモジュールからのクモ膜下血腫の消褪の1つ以上の指標に対応する信号を受信し、信号に応じて計測装置からクモ膜下領域への血栓溶解剤のデリバリを制御するようにプログラムされ、
(2)超音波モジュール及びドレナージモジュールに動作可能に接続され、コントローラは、ドレナージモジュールからのクモ膜下血腫の消褪の1つ以上の指標に対応する信号を受信し、信号に応じてヘッドセットからクモ膜下領域への超音波エネルギーのデリバリを制御するようにプログラムされ、又は
(3)(1)及び(2)の両方である、
クモ膜下血腫を持つ人間の患者を治療するシステム。
(実施例26)
コントローラは、血栓溶解剤デリバリモジュール及び超音波モジュールに動作可能に接続され、
ヘッドセットは血流速度を手を使わずに検知するように構成され、
コントローラは、超音波モジュールからの血流速度に対応する信号を受信し、並びに信号に応じて計測装置からクモ膜下領域への血栓溶解剤のデリバリを制御する、信号に応じてヘッドセットからクモ膜下領域への超音波エネルギーのデリバリを制御する、又はその両方を行うようにプログラムされた、
実施例25に記載のシステム。
(実施例27)
脳脊髄液分析器はフローサイトメータである、
実施例25に記載のシステム。
V.結び
【0032】
本技術の実施形態の上記の詳細な記載は説明目的のみにあり、これらが完全なものであると意図されておらず、また、本技術を上記された厳密な形態(form(s))に限定するように意図されてもいない。当業者が理解できるように様々な等価な修正が本技術の範囲内で可能である。例えば、段階(stage)が所与の順番で提示されているかも知れないが、代替の実施形態は別の順番で段階を実施し得る。本明細書に記載される様々な実施形態及びそれらの要素は、更なる実施形態を提供するために組み合わされることもあり得る。いくつかの場合では、本技術の実施形態の記載を不必要に不明瞭にすることを避けるために良く知られた構造及び機能は示されていないか詳細には記載されていない。
【0033】
本技術のある態様は、コントローラ又は他のデータプロセッサによって実施されるルーチンを含むコンピュータ実施可能な命令の形態を取り得る。いくつかの実施形態では、本技術に従って構成されたコントローラ又は他のデータプロセッサは、これらのコンピュータ実施可能な命令の1つ以上を実施するために、具体的にプログラムされ、構成され、又は組み立てられ得る。更に、本技術のいくつかの態様は、電磁的な又は光学的に読み取り可能なコンピュータディスク又は取り外し可能なコンピュータディスクを含むコンピュータ読取可能メディアに及びネットワークに電子的に配布されたメディアに記憶された又は分配されたデータの形態を取り得る。従って、本技術の態様に特有のデータ構造及びデータの送信は、本技術の範囲内に含まれる。本技術は、特有のステップを実施するようにコンピュータ読取可能なメディアをプログラムすること及びステップを実施することの両方の方法をも含む。
【0034】
文脈が許容する場合は、単数又は複数の用語はそれぞれ複数又は単数の用語をも含み得る。更に、「又は」、「或いは」、「若しくは」、「か」といった語(word “or”)が、2以上のもの(items)の集まり(list)を参照して他のものを除いた単数のものであるとのみ意味するように明確に限定されている場合を除き、そのような集まりにおける「又は」、「或いは」、「若しくは」、「か」といった語の用法は、(a)集まりにおける任意の1つのもの、(b)集まりにおけるものの全て、又は(c)集まりにおけるものの任意の組み合わせ、を含むものとして解釈される。加えて、「含む」、「持つ」、「有する」(comprise)等といった用語は本開示の全般で、少なくとも挙げられた特徴(単数であるか複数であるかを問わない)を、より多くの任意の数のその特徴(単数であるか複数であるかを問わない)及び/又は他の特徴の更なるタイプが排除されないかたちで、含むことを意味するために使用される。本技術から逸脱することなく、記載された実施形態に対して様々な修正が行われ得ることも理解される。更に、本技術のある実施形態に関連する利点が、それらの実施形態の文脈にて記載されてきたかも知れないが、他の実施形態もそのような利点を示すことがあり得、また、本技術の範囲に含まれるために全ての実施形態がそのような利点を示す必要が必ずしもあるわけではない。従って、開示及び関連する技術は、本明細書に明確に示されていない或いは記載されていない(not expressly shown or described herein)他の実施形態を包含し得る。
図1
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図9