【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的のうち画像処理方法に関する部分の目的は、請求項1に記載の方法ステップにより達成される。
【0014】
このように構成された本発明に係る方法は、下記の方法ステップを含むものである。
a)シーンの画像データを電磁波の線束として光学装置を介して取込む方法ステップ。ここで電磁波の線束とは、例えば、可視光スペクトル領域、赤外線スペクトル領域、それに紫外線スペクトル領域などにおける電磁波の線束である。
b)前記ステップa)において取込んだ前記画像データに画像処理装置により処理を施して前記画像データの信号雑音比を改善する方法ステップ。この方法ステップは下記のサブステップb1)〜サブステップb5)を含むものである。
b1)前記画像データから成る原画像を、複数本の行及び複数本の列に分割することにより、ラスタ画像を生成するサブステップ。
b2)1つのラスタ画素を、奇数本の行と奇数本の列とを有するラスタフィルタの中心ラスタフィルタ素子に位置合わせするサブステップ。
b3)前記中心ラスタフィルタ素子以外のその他のラスタフィルタ素子の各々が個別の減光特性を有しており、前記ラスタフィルタがカバーしている複数個のラスタ画素の各々の輝度値を求めるサブステップ。
b4)前記サブステップb3)において求めた複数の輝度値の総和である輝度総和値を求め、該輝度総和値をもって、前記中心ラスタフィルタ素子に位置合わせされているラスタ画素の輝度総和値とするサブステップ。
b5)前記サブステップb2)〜前記サブステップb4)を、前記ラスタ画像に含まれるラスタ画素の各々について反復実行するサブステップ。
c)前記ステップb)で個々に求めた複数個のラスタ画素の輝度総和値から、原画像と同じ解像度を有する処理後画像を生成する方法ステップ。
【0015】
本発明に係る画像処理方法によれば、取込んだ原画像の輝度変化が平滑化され、原画像の信号雑音比が改善される。また、原画像の背景に起因するノイズ画素が除去されることによっても、画像が平滑化される。処理後画像における輝度変化は安定しており、原画像における輝度変化との相違は顕著である。更に、画像コントラストも改善されるため、原画像に含まれている対象物は、処理後画像にはより鮮明に明確に現れることになる。
【0016】
本発明に係る画像処理方法の特に好適な発展形態によれば、前記ステップa)において、前記シーンの画像データを2つ以上の電磁波波長領域において取込むことによって互いに異なる複数のスペクトル領域における前記シーンの原画像を取込み、前記ステップb)及び前記ステップc)を複数の前記シーンの原画像の各々について実行することによって互いにスペクトル領域が異なる複数の処理後画像を生成し、そして、互いにスペクトル領域が異なるそれら複数の処理後画像を重ね合わせて合成することによって1つのマルチスペクトル処理後画像を生成する。
【0017】
互いに異なる複数のスペクトル領域における前記シーンの取込みを、複数の狭帯域(例えば20nm)のフィルタを切換えつつ複数の画像を次々と、即ちシーケンシャルに取込むことによって行うようにし、それら互いに異なる複数のスペクトル領域における原画像の各々に本発明に従って処理を施して夫々に処理後画像とし、そして、それらを1つのマルチスペクトル処理後画像にすることにより、最終的に得られる画像の表現力を改善することができる。
【0018】
特にその改善が顕著であるのは、複数の処理後画像を互いに色の異なる単色画像とし、それらを合成して1つのマルチスペクトル処理後画像とする場合である。使用する複数のフィルタの夫々のスペクトル領域を、観測対象物の温度(例えば2300°K)に合わせて黒体放射曲線の短波長側部分に位置するように選定することによって得られるマルチスペクトル画像は、温度画像に変換することのできる、カラー画像のマルチスペクトル画像となる。そして、その温度画像を用いて、例えばロケットの火焔噴流の尾部のような、その規模が非常に大きく、場合によっては局所的な高輝度部分を含み、また大きな揺らぎを有する輝度領域を背景とした、小さな安定した温度領域を検出することができる。
【0019】
これに関しては、互いに異なる前記複数のスペクトル領域における前記シーンの画像データの取込みを、互いにスペクトル領域が異なる複数のスペクトル領域フィルタを高速で順次切換えつつ、高速カメラを用いて行うとよい。これによって、観測対象物の移動量と比べれば、ほぼ同時的といってよい程の短時間の間に、互いに異なる複数のスペクトル領域における複数の原画像を取込むことができ、そして、それら複数の原画像が極めて短時間のうちに次々と取込まれるため、それら複数の原画像の中の観測対象物の位置は互いに略々同一となり、それゆえ、何ら問題を生じることなく、複数の処理後画像を重ね合わせて合成することで1枚のマルチスペクトル処理後画像を生成することができる。
【0020】
上記目的のうち、自動対象物検出方法に関する部分の目的は、請求項4に記載の特徴を備えた方法により達成される。この自動対象物検出方法においては、本発明に係る画像処理方法を用いて以下の方法ステップが実行される。
前記方法ステップa)における前記シーンの取込みを、前記光学装置の光軸(X)を中心とした回転角を夫々に異ならせて複数回実行する方法ステップ。
前記回転角の各々において、前記画像処理方法の前記方法ステップを実行して処理後画像を生成する方法ステップ。
個々の処理後画像を、対象物データベースに格納しておいた個々の対象物のサンプル画像と比較する方法ステップ。
処理後画像のうちの1枚または数枚との差分が最小のサンプル画像によって、前記シーンに含まれている対象物を特定すると共に、処理後画像の中の当該対象物の位置を判定する方法ステップ。
【0021】
この自動対象物検出方法によれば、本発明に係る画像処理方法を用いて自動的に対象物を特定することができる。更に、この自動対象検出方法によれば、処理後画像の中の当該対象物の位置を判定することができ、そのため、シーンの取込み及び解析を行うだけで、対象物(例えばロケット)の運動の方向ベクトルを従来方法より高精度で予測することができる。
【0022】
本発明に係る対象物検出方法の特に好適な発展形態によれば、処理後画像の中の対象物の位置の判定は、サンプル画像の対応するラスタ画素に相当する当該処理後画像のラスタ画素を判定することにより行われる。
【0023】
上記目的のうち観測装置に関する部分は、請求項6に記載の特徴を備えた観測装置並びに請求項7に記載の特徴を備えた観測装置により達成される。
【0024】
請求項6に記載の特徴を備えた観測装置は、本発明に係る画像処理方法を実施するための観測装置であるのに対して、請求項7に記載の観測装置は、本発明に係る画像処理方法を用いた本発明に係る自動対象物検出方法を実施するための観測装置である。
【0025】
本発明に係るそれら観測装置はいずれも、前記画像処理装置が画像ラスタ化モジュールとラスタフィルタモジュールとを備えている実施の形態とすると有利である。
【0026】
本発明に係る観測装置の第1の実施形態によれば、前記画像ラスタ化モジュールはマトリクス状に配列された複数個の導光素子を備えており、それら複数個の導光素子は、前記光学装置と、取込んだ線束を検出するセンサとの間に配設されている。また、前記複数個の導光素子のうちの少なくとも幾つかの導光素子は、それらの各々に、輝度減衰フィルタ素子である前記ラスタフィルタモジュールのラスタフィルタ素子が備えられている。前記光学装置は取込んだ画像データを前記画像ラスタ化モジュールの入力面に原画像として投射するように構成されている。前記光学装置は原画像を前記画像ラスタ化モジュールの前記入力面上において、該入力面に対して相対的に移動させ得るように構成されている。更に、演算処理装置を備えており、該演算処理装置は前記センサから輝度信号を受取るようにしてあり、また、請求項1の前記方法ステップc)を実施し、また好ましくは更に請求項2〜請求項5の何れか1項の前記方法ステップを実施するソフトウェアが、前記演算処理装置において実行されるようにしてある。前記観測装置のこの好適な実施形態は、本発明に係る方法ステップを光学的機械的に実施するようにしたものである。
【0027】
本明細書において使用する「輝度」という用語は、可視光スペクトル領域に限定されずその他のスペクトル領域の線束の強度をも含むものであり、その他のスペクトル領域の具体例としては、例えば赤外線スペクトル領域や紫外線スペクトル領域があり、またそれらに限定されるものでもない。
【0028】
あるいは、本発明に係る方法ステップがソフトウェアによって実施されるようにすることも可能であり、それに適した観測装置は、演算処理装置を備えると共に、前記光学装置の後段に画像センサが備えられており、前記光学装置は取込んだ画像データを前記画像センサのセンサ面上に投射するように構成されており、該演算処理装置は前記画像センサから画像信号を受取るようにしてあり、請求項1の方法ステップb)及びc)を実施し、また好ましくは更に請求項2〜請求項5の何れか1項の方法ステップを実施するソフトウェアが、前記演算処理装置において実行されるようにしてあり、前記画像ラスタ化モジュール及び前記ラスタフィルタモジュールは、前記ソフトウェアのサブルーチンとして構成されていることを特徴とする。
【0029】
観測装置のこの好適な実施形態は、本発明に係る方法ステップを光電子的に実施するようにしたものである。
【0030】
合成マルチスペクトル画像は、互いに異なるスペクトル領域において取込んだ個々の原画像に上述した画像処理を施した上で夫々のスペクトル領域に応じた色を付与した複数の処理後画像を、演算処理装置において重ね合わせることにより生成される。十分な枚数の処理後画像を重ね合わせれば、それら多数の処理後画像の平均値を取れることから、その合成マルチスペクトル画像の信号雑音比は、重ね合わせられる前の個々の原画像のものと比べて格段に改善され、好適な例では100倍以上にも改善される。
【0031】
合成マルチスペクトル画像の評価は、マルチスペクトル画像に対して
図3ないし
図4に示した画像評価及び識別方法を適用して、画像評価装置25、125において行うようにするとよい。またその場合に好ましくは、先ず、ターゲットの挙動を観測し、特に、見えている対象物の数と移動経路曲線とを判定する。続いて、全ての飛翔対象物とその飛翔経路とをデータファイルに記録する。これによって、将来の計測において観測されるあらゆる対象物を高い信頼性をもって認識することが可能になると共に、対象物の観測された位置から先の飛翔経路を外挿法により算出することも可能になり、また特に、その飛翔経路の最終点である飛翔対象物の落下点を算出することが可能になる。また何よりも、合成マルチスペクトル画像に基づいて観測及び解析を行うことによって、対象物の挙動(例えば多段ロケットの切り離し、レーダー擾乱物の放出、弾頭の飛翔経路制御)の時系列的な履歴を把握することができる。
【0032】
合成マルチスペクトル画像は更に、マルチスペクトル画像に対して
図3ないし
図4に示したターゲット画像の画像認識を行うようにして、格納装置29、129に記録されているターゲット画像のサンプル画像データベースとの比較をマルチスペクトル画像どうしで行う上でも有用である。ターゲット画像の画像認識は、ターゲット画像に含まれているターゲット(対象物)の種別を特定して識別し得るようにするものである。このターゲット画像の画像認識は、多数のステップから成る処理操作を加える前に画像を加え合わせてマルチスペクトル画像を生成するならば、それによって、より高い信頼性をもってより正確に区別し得るものとなる。
【0033】
そのためには先ず合成マルチスペクトル画像を本発明に従って正規化した画像とする。その正規化のためには先ず各画素ごとに、互いに直交する色ベクトル成分を合わせて合計輝度値を求め、その合計輝度値をもって当該画素の輝度値とし、更に続いて、個々の色ベクトル成分をその合計輝度値に対して正規化する。こうして合計した色ベクトルは、輝度値と正規化された色成分値とを有する。RGB色座標系では3つの色成分を定めることしかできないが、この方法によれば任意の個数のスペクトル成分を有する色座標系を定義することができ、その色座標系では、マルチスペクトル画像に対していかなる色相操作を加えることも可能である。
【0034】
そして、各画素ごとに、当該画素の全ての色成分値と輝度値とに対して、
図2に示したデジタル方式の画像処理を施すことにより、画像の平滑化と識別性強化とが同時に達成され、即ち、複数の画像の平均が取られるために残存していたノイズ画素が除去されて平滑化され、またそれによって、輝度急変部即ちエッジ部が強調されるために、処理後画像の鮮鋭度、コントラスト、及び彩度が向上して、より信頼性の高い画像認識が可能になる。これらは、正規化された画像の全ての色成分及び輝度成分が変換されることによって達成されるものであり、その変換は、
図2に示した、信号雑音比の劣る画像にデジタル方式で画像処理を施すための画像処理装置に備えられている、図示例では5×5画素の大きさのフィルタマトリクスであるラスタフィルタ122によって行われるものである。
【0035】
その処理後画像には更に、色相アフィン変換を施して、ターゲットに特徴的なスペクトル成分を拡大して評価容易性を高め、特徴的でないスペクトル成分は圧縮するとよい。これにより、ターゲット認識において処理後画像と当該画像に隠れている真正ターゲットである対象物との相関を求める際に、真正ターゲットと、真正ターゲットであると誤認される偽ターゲットとの区別を、この処理を施さない場合よりも明瞭に行えるようになる。
【0036】
マルチスペクトル画像の画像認識は、光学方式で画像認識を実施するための
図3に示した装置を用いて行うことも、また、デジタル方式で画像認識を実施するための
図4に示した装置を用いて行うこともでき、後者の装置の方が高い精度が得られる。
【0037】
光学方式の装置(
図3に示した装置)では、望遠鏡ユニット110が偏向ミラー112を介して、遠距離ターゲットの実像を25×25画素の大きさのターゲット画像として、画像取込装置120に備えられている5×5個の導光素子を束にした光学構成要素の前面が位置する平面121上に結像させる。この光学構成要素の前面において、その結像した実像のターゲット画像のうちの5×5画素の部分が取込まれる。走査ミラーである偏向ミラー112は、ターゲット画像を水平方向及び垂直方向に偏向して、各5×5画素ブロックの各中心画素を、次々と、即ちシーケンシャルに、5×5個の導光素子の束からなる光学構成要素の中心導光素子の位置に合わせて行く。25×25画素の大きさのターゲット画像に含まれる25個の5×5画素ブロックの夫々に対応した25個の値が、所定の複数のスペクトル領域の各々について演算処理装置126において格納される。そして、25×25画素の大きさのターゲット画像を、360°を12等分した12個の回転位置に次々と位置付けつつ、以上を反復して実行する。ターゲット画像に含まれる複数の15×15画素ブロックから成るサーチ領域と、サーチ対象の15×15画素の大きさのサンプル画像とを、それらの各5×5画素ブロックの各中心画素の値について比較し、その際には、入力画像のサーチ領域と現在サーチ対象となっているサンプル画像との間で、それらの9個ずつの係数の値の夫々の差分を求める。それら差分の合計値が最小で、しかも所定の最小値以下になるような位置及び回転位置をもって、現在サーチ対象となっているサンプル画像のターゲット種別である発見されたターゲットの位置及び回転位置として記録する。サーチ領域の外に位置する画像部分は考慮されない。この画像認識における位置の解像度は、水平方向及び垂直方向のいずれも5画素である。
【0038】
デジタル方式の装置(
図4に示した装置)では、例えば望遠鏡ユニット110が偏向ミラー112を介して、近赤外線カメラを備えた画像取込装置120の投影面上に、レーダー波をこちらから照射している遠距離ターゲットの実像を25×25画素の大きさのターゲット画像として結像させる。近赤外線カメラは、光信号を高解像度のデジタル画像であるマルチスペクトル画像に変換する。マルチスペクトル画像認識の場合には、本発明に係る評価関数の特性値は、既述のごとくサーチ画像(その大きさは25×25画素である)の中の各々のサーチ画素位置について算出される。以上に述べた評価関数を生成するならば、画像を取込む回転位置を12個に制限しても、分離鮮鋭度が低下することはない。
【0039】
以上に述べた実施形態のうちの1つに従って構成された近赤外線センサシステムを使用することによって、ターゲットの検出、飛翔経路の追跡、飛翔経路の計測、及びターゲットの観察及びターゲットの識別を、発射されたロケットについて行うことができ、エンジン停止後も、500km離れていても可能である。
【0040】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態、更なる細部構成、更なる利点について、より詳細に説明する。