【実施例】
【0024】
比較例1:ゲルろ過クロマトグラフィーを用いた4´−GLの定量
(1)試料溶液の調製
ガラクトオリゴ糖液糖(オリゴメイト55N:ヤクルト薬品工業株式会社)をガラクトオリゴ糖含量として2.3g/100gの割合で含み、マルトデキストリンを1.5g/100gの割合で含む育児用調製粉乳2.6gを秤量し、少量の温水を加えて溶解後、室温になるまで放置し、蒸留水を加えて20mlとし、溶解乳を作製した。溶解乳4mlをメスフラスコに入れ、内部標準物質を0.1%含有する水溶液2mlを正確に加え、蒸留水で20mlとし、試料溶液(粉乳101(GOS添加))とした。溶解乳20mlあたりのガラクトオリゴ糖含量は、2.6g×2.3/100=0.0598gであるから、100mlあたりでは、0.299gとなる。
なお、育児用調製粉乳は、原材料として、乳糖、ホエイたんぱく質消化物、パーム油、全粉乳、パーム核分別油、大豆白絞油、ガラクトオリゴ糖液糖、カゼインカルシウム、マルトデキストリン(でんぷん糖化物)、精製魚油、炭酸Ca、塩化Mg、レシチン、リン酸K、塩化K、リン酸Na、水酸化K、ラクトフェリン、V.C、塩化Ca、ピロリン酸鉄、タウリン、V.E、硫酸亜鉛、シスチン、シチジル酸Na、ナイアシン、パントテン酸Ca、V.A、硫酸銅、イノシン酸Na、ウリジル酸Na、グアニル酸Na、V.B1、5’−AMP、V.B6、V.B2、葉酸、カロテン、V.D、V.B12を含み、その栄養成分は表1のとおりである。表1の炭水化物は、乳糖、ガラクトオリゴ糖、デキストリン、単糖を含む。
【0025】
【表1】
【0026】
(2)プラセボ試料溶液の調製
ガラクトオリゴ糖を含まない育児用調製粉乳として、粉乳101(GOS添加)と同様の調製工程を行い、プラセボ試料溶液(粉乳102(プラセボ))を調製した。調製に用いた育児用調製粉乳は、ガラクトオリゴ糖液糖を含まず、マルトデキストリンを6.2g/100gの割合で含む以外は、原材料の組成は、試料溶液(粉乳101(GOS添加))を作成した育児用調製粉乳と同じものである。粉乳101(GOS添加)には、ガラクトオリゴ糖液糖由来の乳糖、ガラクトオリゴ糖、単糖が合計で4.7g/100g含まれており、粉乳101(GOS添加)と粉乳102(プラセボ)は、炭水化物量が同一である。
【0027】
(3)ガラクトオリゴ糖標準試験液の調製
ガラクトオリゴ糖液糖(オリゴメイト55N:ヤクルト薬品工業株式会社)をガラクトオリゴ糖液糖として2.0g/100mlになるように50ml容メスフラスコに量りとり、内部標準物質を1%含有する水溶液1mlを正確に加え、蒸留水を加えて50mlとし、標準試験液(OM55N)とした。
【0028】
(4)マルトデキストリン標準試験液の調製
前記育児用調製粉乳の製造に使用したマルトデキストリン液糖(ハイマルトースシロップ)をマルトデキストリン溶液として2.0g/100mlになるように50ml容メスフラスコに量りとり、内部標準物質を1%含有する水溶液1mlを正確に加え、蒸留水を加えて50mlとし、標準試験液(マルトデキストリン)とした。
【0029】
(5)フィルター処理
試験溶液、プラセボ試験溶液、ガラクトオリゴ糖標準試験液およびマルトデキストリン標準試験液を0.45μmフィルターで濾過し、以下のHPLC条件で分析した。
【0030】
(6)HPLC分析
Column :GPC(KS−802)(8.0×300mm)
Eluent :蒸留水
Flow rate :0.5ml/min
Detector :RI検出器(Shodex SE−201)
Column temp:80℃
【0031】
その結果、
図1に示す通り、マルトデキストリンに含まれる3糖(マルトトリオース:Mal−3)と、標準試験液(OM55N)に含まれる3糖の4´−GLは、同一の保持時間でカラムから溶出しており、ゲルろ過クロマトグラフィーではマルトデキストリン中のマルトトリオースとガラクトオリゴ糖中の4´−GLのピークが重なってしまい、4´−GLを定量することができなかった。
【0032】
実施例1:C30カラムを用いたPMP誘導体―HPLC逆相クロマトグラム
比較例1と同様に、育児用調製粉乳の試料溶液、プラセボ試料溶液、ガラクトオリゴ糖標準試験液、マルトデキストリン標準試験液を調製した。ガラクトオリゴ糖標準試験液は、さらに蒸留水で10、20、40倍希釈した希釈液を作製した。希釈液のガラクトオリゴ糖液糖の濃度は、それぞれ0.2g/100ml、0.1g/100ml、0.05g/100mlである。
【0033】
(1)PMP誘導体化
試料溶液、ガラクトオリゴ糖標準試験液、マルトデキストリン標準試験液のそれぞれ100μlをネジ口試験管に取り、0.6M NaOH水溶液を100μl加えて攪拌した。次いで、0.5M PMPメタノール溶液を200μl加えて攪拌した。70℃で30分加熱し、PMP誘導体化した。室温まで冷却した後、0.1M HCl水溶液0.7mlを加えて弱酸性とし、クロロホルムで抽出して過剰の試薬を除いた。すなわち、クロロホルム約1mlを加えて、30秒以上攪拌し、2500rpm、5分間遠心分離して下層のクロロホルムを除去した。同様の操作を2回繰り返した。水層を0.45μmフィルターで濾過し、以下のHPLC条件で分析した。
【0034】
(2)HPLC分析条件
Column :Develosil RPAQUEOUS(4.6×250mm)(C30)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH6)/CH
3CN(80/20)
Flow rate :1.0ml/min
Detection :UV245nm
Column temp:35℃
【0035】
その結果、
図2の点線で示す通り、試料溶液(粉乳101)で検出された4´−GLのピークは、プラセボ試料溶液(粉乳102)では検出されておらず、PMPでの誘導体化後、C30逆相クロマトグラフィー用カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーに供することにより、4´−GLとマルトトリオースを分離できることが確認された。
【0036】
(3)ガラクトオリゴ糖含量の算出
ガラクトオリゴ糖標準試験液から作製した希釈液について、上記と同様の分析条件にてHPLCに供し、内部標準物質と4´−GLの面積比を用いて、ガラクトオリゴ糖液糖の検量線を作成した。HPLC分析の結果は表2のとおりである。
【0037】
【表2】
【0038】
ガラクトオリゴ糖液糖の含有量をx、面積比をyとして、最小二乗法により検量線を求めると、検量線は、y=3.9909xであった。この検量線のyとして、試料溶液中の内部標準物質と4´−GLの面積比(0.5526)を代入し、試料溶液の希釈率等を勘案して、試料中のガラクトオリゴ糖量を算出した(表3)。具体的には、検量線y=3.9909xにy=0.5526を代入すると、x(試料溶液中のガラクトオリゴ糖液糖濃度)は0.138(g/100ml)となった。試料溶液は、溶解乳を5倍希釈したものであるため、溶解乳中のガラクトオリゴ糖液糖量は、0.138×5=0.690(g/100ml)となる。液糖中の固形分含量は75%、固形分中のガラクトオリゴ糖含量は、56.4%であるため、溶解乳中のガラクトオリゴ糖含量は、0.690×0.75×0.564=0.292(g/100ml)となる。溶解乳中の育児用調製粉乳の濃度は、2.6g/20mlであるため、溶解乳100mlには、13gの育児用調製粉乳が含まれており、その中に0.292g/100mlのガラクトオリゴ糖が含まれているから、育児粉乳100gあたり、2.25g/100gのガラクトオリゴ糖が含まれていることが算出され、ガラクトオリゴ糖の配合量(2.3g/100g)とほぼ一致した。
【0039】
【表3】
【0040】
比較例2:C8、C18のカラムを用いたPMP誘導体−逆相HPLCクロマトグラム
ガラクトオリゴ糖液糖(オリゴメイト55N:ヤクルト薬品工業株式会社)をガラクトオリゴ糖含量として2.3g/100gの割合で含み、マルトデキストリンを1.5g/100gの割合で含む育児用調製粉乳5gを精密に、少量の温水を加えて溶解後、室温になるまで放置した。内部標準物質を1%含有する水溶液1mlを正確に加え、蒸留水を加えて50mlとし、試料溶液(粉乳101(GOS添加))とした。
また、ガラクトオリゴ糖を含まない育児用調製粉乳として、粉乳101(GOS添加)と同様の調製工程を行い、プラセボ試料溶液(粉乳102(プラセボ))を調製した。調製に用いた育児用調製粉乳は、ガラクトオリゴ糖を含まず、マルトデキストリンを6.2g/100gの割合で含む以外は、原材料の組成は、試料溶液(粉乳101(GOS添加))を作成した育児用調製粉乳と同じものである。
ガラクトオリゴ糖液糖をガラクトオリゴ糖として3.0g/100mlになるように50ml容メスフラスコに量りとり、内部標準物質を1%含有する水溶液1mlを正確に加え、蒸留水を加えて50mlとし、ガラクトオリゴ糖標準試験液とした。
前記育児用調製粉乳の製造に使用したマルトデキストリン液糖(ハイマルトースシロップ)をマルトデキストリン溶液として2.0g/100mlになるように50ml容メスフラスコに量りとり、内部標準物質を1%含有する水溶液1mlを正確に加え、蒸留水を加えて50mlとし、標準試験液(マルトデキストリン)とした。
【0041】
PMP誘導体化
試料溶液、ガラクトオリゴ糖標準試験液、マルトデキストリン標準試験液のそれぞれ100μlをネジ口試験管に取り、0.6M NaOH水溶液を100μl加えて攪拌した。次いで0.5M PMP メタノール溶液を200μl加えて攪拌した。70℃で30分加熱し、PMP誘導体化した。室温まで冷却した後、0.1M HCl水溶液 0.7mlを加えて弱酸性とし、クロロホルムで抽出して過剰の試薬を除いた。すなわち、クロロホルム約1mlを加えて、30秒以上攪拌し、2500rpm、5分間遠心分離して下層のクロロホルムを除去した。同様の操作を2回繰り返した。水層を0.45μmのフィルターで濾過し、下記の2つのHPLC条件で分析した。
【0042】
HPLC分析条件
(1)C18カラムを用いたHPLC
Column :Inertosil ODS−3(4.6×250mm)(C18逆相カラム)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH6)/CH
3CN(80/20)
Flow rate :1.0ml/min
Detectoion :UV245nm
Column temp:35℃
(2)C8カラムを用いたHPLC
Column :Imtakt UK−8(4.6×150mm)(C8逆相カラム)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH6)/CH
3CN(80/20)
Flow rate :1.0ml/min
Detector :UV245nm
Column temp:35℃
【0043】
その結果、C18逆相クロマトグラフィー用カラムでは、4´−GLとマルトトリオース(Mal―3)は分離しているものの、4´−GLと他のガラクトオリゴ糖成分のピークが重なっており、4´−GLを分離することはできなかった。すなわち、
図3に示すとおり、ガラクトオリゴ糖標準試験液(OM55N)と、試料溶液(粉乳101)の結果において、4´−GLのピークでは、頂点部の左側に別の物質のピークが重なり、段になってしまっていた。
【0044】
C8逆相クロマトグラフィー用カラムを用いた場合、4´−GLとマルトトリオース(Mal―3)は分離しているものの、4´−GLと他のガラクトオリゴ糖成分のピークが重なり、分離できていないことがわかる(
図4)。すなわち、C30逆相クロマトグラフィー用カラムを用いた場合(
図2)と比較すると、
図2では4´−GLの左隣に他のガラクトオリゴ糖成分のピークがあるのに対し、
図4では、当該ピークが4´−GLのピークと重なり、結果的にピークが高くなっている。こうした結果から、C8、C18カラムのいずれを用いた場合でも、4´−GLを分離、定量できないことが示された。
【0045】
実施例2:HPLCにおける溶出液の検討
比較例2と同様に、試料溶液(粉乳101(GOS添加)、粉乳102(プラセボ))、ガラクトオリゴ糖標準試験液およびマルトデキストリン標準試験液を調製し、それぞれを比較例2と同様にPMP誘導体化し以下6種類のHPLC条件で分析した。
【0046】
(1)緩衝液pH4の条件下でのHPLC
Column :Develosil RPAQUEOUS(4.6×250mm)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH4)/CH
3CN(78/22)
Flow rate :1.0ml/min
Detection :UV245nm
Column temp:35℃
(2)緩衝液pH5の条件下でのHPLC
Column :Develosil RPAQUEOUS(4.6×250mm)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH5)/CH
3CN(79/21)
Flow rate :1.0ml/min
Detection :UV245nm
Column temp:35℃
(3)緩衝液pH7の条件下でのHPLC
Column :Develosil RPAQUEOUS(4.6×250mm)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH7)/CH
3CN(81/19)
Flow rate :1.0ml/min
Detection :UV245nm
Column temp:35℃
(4)緩衝液pH7の条件下でのHPLC
Column :Develosil RPAQUEOUS(4.6×250mm)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH7)/CH
3CN(82/18)
Flow rate :1.0ml/min
Detection :UV245nm
Column temp:35℃
(5)緩衝液pH8の条件下でのHPLC
Column :Develosil RPAQUEOUS(4.6×250mm)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH8)/CH
3CN(82/18)
Flow rate :1.0ml/min
Detection :UV245nm
Column temp:35℃
(6)緩衝液pH8の条件下でのHPLC
Column :Develosil RPAQUEOUS(4.6×250mm)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH8)/CH
3CN(83/17)
Flow rate :1.0ml/min
Detection :UV245nm
Column temp:35℃
【0047】
実施例1の結果から、pH6のリン酸カリウム緩衝液を用いた場合には、4´−GLが分離できており、ガラクトオリゴ糖の定量が可能であった。これに対し、
図5、7〜10に示すとおり、pH4、7、8のリン酸カリウム緩衝液を用いた場合には、4´−GLと他のガラクトオリゴ糖成分のピークが重なってしまい、4´−GLを分離・定量できなかった。すなわち、
図2では4´−GLの左隣に他のガラクトオリゴ糖成分のピークがあるのに対し、pH4のリン酸カリウム緩衝液を用いた場合には、OM55Nのクロマトグラムでは、当該ピークが1つであり4´−GLを分離できていない(
図5)。
また、リン酸カリウム緩衝液(pH7)とCH
3CNを81/19の割合とした溶出液を用いた場合(
図7)、OM55Nのクロマトグラムでは、4´−GLのピークの頂点部の右側に他のガラクトオリゴ糖成分のピークが重なり、結果として4´−GLのピークの面積が大きくなっている。
リン酸カリウム緩衝液(pH7)とCH
3CNを82/18の割合とした溶出液を用いた場合(
図8)、OM55Nのクロマトグラムでは、本来4´−GLの左隣に検出されるピークがなく、当該ピークと4´−GLのピークが重なっている。
リン酸カリウム緩衝液(pH8)とCH
3CNを82/18の割合とした溶出液を用いた場合(
図9)、あるいは83:17の割合とした溶出液を用いた場合(
図10)、OM55Nとマルトデキストリンのクロマトグラムを比較すると、4´−GLは、マルトトリオース、その他のオリゴ糖成分と分離できているが、OM55Nとプラセボ試料溶液(粉乳102)のクロマトグラムを比較すると、4´−GLのピークと、粉乳102に含まれている成分のピークが一致しており、4´−GLのみを分離できていないことがわかる。
一方、リン酸カリウム緩衝液(pH5)とCH
3CNを79/21の割合とした溶出液を用いた場合(
図6)、4´−GLは、マルトトリオースおよび他のガラクトオリゴ糖成分と分離できていた。
【0048】
実施例3:栄養食品を試料とした場合のPMP誘導体−逆相HPLCクロマトグラム(C30)
表4に示す原材料を混合し、栄養食品を調製した。この栄養食品10gに蒸留水を加えて50mlとした後、20000g×30分で遠心分離し、さらに20000g×30分で遠心分離した。遠心分離後には栄養食品は、下層、中間層、上層の3層に分離していた。その中間層を分取し、当該分取した試料を0.45μmのフィルターでろ過した。別途、標準試料としてガラクトオリゴ糖標準試験液をオリゴメイト55(ヤクルト薬品工業株式会社)を用いて、比較例1と同様に調製した。ろ過した試料とガラクトオリゴ糖標準試験液のそれぞれ100μlをネジ口試験管に取り、減圧乾固した。内部標準物質を0.02%含有する水溶液100μlを加え、0.5MのPMPメタノール溶液を200μl加えて撹拌した。次いで70℃で30分加熱し、PMP誘導体化し、以下のHPLC条件で分析した。
【0049】
【表4】
【0050】
HPLC分析条件
Column :Develosil RPAQUEOUS(4.6×250mm)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH6)/CH
3CN(80/20)
Flow rate :1.0ml/min
Detection :UV245nm
Column temp:35℃
【0051】
その結果、
図11に示すとおり、4´−GLのピークは、保持時間24.324分で出現し、サンプルに含まれるその他の成分から分離されたことが判明した。なお、4´−GLのピークが、保持時間24.324分に出現することは、同一のHPLC分析条件にて、ガラクトオリゴ糖標準試験液を分析し、確認済みである。