特許第6285944号(P6285944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285944
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】ガラクトオリゴ糖の検出・定量方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20180215BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20180215BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20180215BHJP
   G01N 33/02 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   G01N30/88 N
   G01N30/88 101K
   G01N30/06 E
   G01N30/26 A
   G01N30/88 201X
   G01N33/02
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-539394(P2015-539394)
(86)(22)【出願日】2014年9月26日
(86)【国際出願番号】JP2014075718
(87)【国際公開番号】WO2015046463
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2017年2月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-205503(P2013-205503)
(32)【優先日】2013年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
(74)【代理人】
【識別番号】100145517
【弁理士】
【氏名又は名称】宮原 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】水越 晴美
(72)【発明者】
【氏名】木村 一雅
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008-170428(JP,A)
【文献】 特表2000-502180(JP,A)
【文献】 特開2009-103680(JP,A)
【文献】 木村一雅ら,市販牛乳中に含まれる天然ガラクトオリゴ糖の分析,ヤクルト研究所研究報告集,1997年,第17号,p.1−7
【文献】 水越晴美ら,PMP誘導体化法を用いた酵素分解とHPLCによる食品中のガラクトオリゴ糖の定量,Jornal of Applied Glycoscience,2005年,Vol.52, Suppl.,p.44
【文献】 Susumu Honda et al.,High-Performance liquid Chromatography of Reducing Carbonhydrates as Strongly Ultraviolet-Absorbing and Electrochemically Sensitive 1-phenyl-3-methyl-5-pyrazolone Derivatives,ANALYTICAL BIOCHEMISTRY,1989年,Vol.180,p.351-357
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00−30/96
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラクトオリゴ糖とデキストリンを含む試料中のガラクトオリゴ糖を検出・定量する方法であって、前記試料を誘導体化試薬と反応させ、試料中のデキストリンおよびガラクトオリゴ糖を誘導体化し、次いで、C30逆相クロマトグラフィー用カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより当該試料中のガラクトオリゴ糖成分を分離することを特徴とするガラクトオリゴ糖の検出・定量方法。
【請求項2】
高速液体クロマトグラフィーで用いる溶出液として、緩衝液と極性の有機溶媒の混合液を用いることを特徴とする請求項1に記載のガラクトオリゴ糖の検出・定量方法。
【請求項3】
前記緩衝液として、pH5〜6の緩衝液を用いることを特徴とする請求項2に記載のガラクトオリゴ糖の検出・定量方法。
【請求項4】
前記混合液の緩衝液と極性の有機溶媒の混合比(vol/vol)が、緩衝液/極性の有機溶媒=79/21〜80/20であることを特徴とする請求項2または3に記載のガラクトオリゴ糖の検出・定量方法。
【請求項5】
前記混合液の調製に用いる緩衝液として、リン酸カリウム緩衝液、クエン酸カリウム緩衝液、ギ酸アンモニウム緩衝液および酢酸カリウム緩衝液から選ばれる少なくとも1種を用い、極性の有機溶媒として、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールから選ばれる少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のガラクトオリゴ糖の検出・定量方法。
【請求項6】
ガラクトオリゴ糖とデキストリンを含む試料が、飲食品である請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラクトオリゴ糖の検出・定量方法。
【請求項7】
分離されるガラクトオリゴ糖成分が、4´−ガラクトシルラクトースであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラクトオリゴ糖の検出・定量方法。
【請求項8】
誘導体化試薬として、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、2−アミノピリジン、2−アミノベンズアミド、3−アミノキノン、4−アミノ安息香酸エチル、4−アミノ安息香酸ブチル、4−トリメチルアンモニウムアニリンから選ばれる1種を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のガラクトオリゴ糖の検出・定量方法。
【請求項9】
C30逆相クロマトグラフィー用カラムが、二重結合があるシス型のアルキル基を有する固定相を備えるものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のガラクトオリゴ糖の検出・定量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラクトオリゴ糖と、デキストリンを含む試料中のガラクトオリゴ糖を検出・定量する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラクトオリゴ糖は、ガラクトースを主成分とする結合様式の異なるオリゴ糖の混合物であり、一般的には、乳糖にβ−ガラクトシダーゼによる転移反応を行うことで製造される。ガラクトオリゴ糖はその生理効果として、腸に生息しているビフィズス菌を増加させ、腸内環境を整える効果や、腸間膜脂肪の低減を通じ生活習慣病予防に資するなどの効果が報告されており、特定保健用食品や各種機能性食品またはそれらの素材として、以前から重宝されている。特定保健用食品などの成分としてガラクトオリゴ糖を使用する場合には、その品質、規格の保証や機能性成分としての定量分析データの表示等のため、正確性の高い定量法を確立することが求められる。
飲食品中のガラクトオリゴ糖を定量する方法には、ガラクトオリゴ糖にβ−ガラクトシダーゼを作用させ、酵素分解で生じるガラクトースを定量し、オリゴ糖を算出する方法がある(非特許文献1)。しかし、生成するガラクトースの検出には、高価なパルス型電気化学検出器を装着したアニオン交換高速液体クロマトグラフィーを用いる必要があり、汎用性が低いという問題がある。また、飲食品中に乳糖などの栄養成分が含まれている場合、酵素処理で生じたガラクトースと、乳糖から遊離したガラクトースを判別することができず、結果的にガラクトオリゴ糖の定量の精度が低下してしまう。
【0003】
ガラクトオリゴ糖中の特徴的な成分、例えば、4´−ガラクトシルラクトース(4´−GL;Galβ1−4Galβ1−4Glc)を定量し、その量から逆算して、ガラクトオリゴ糖の全量を算出する方法も存在している。この方法は、使用するガラクトオリゴ糖中の4´−GLの含有量が判明しており、当該含有量がロット差等なく安定している場合に、特に有効である。飲食品試料中の4´−GLを定量する方法としては、従来は主に、ゲルろ過クロマトグラフィーにより、飲食品中の他の成分と4´−GLとを分子のサイズにより分離する方法が用いられている。
【0004】
しかしながら、ガラクトオリゴ糖は、上記のとおり機能性の素材として、栄養成分の豊富な飲食品、例えば育児用調製粉乳や発酵乳製品などに使用されることが多く、当該飲食品中には、4´−GLと分子の大きさが同等な糖質源が含まれることも多いため、ゲルろ過クロマトグラフィーでは、それら糖質源と4´−GLを分離することはできない。例えば、デキストリンに含まれる糖類の一種であるマルトトリオースを含む飲食品中の4´−GLをゲルろ過クロマトグラフィーで分離・定量しようとした場合、マルトトリオースと4´−GLは分子サイズが同一であることから、カラムから溶出後の両者のピークが重なり合ってしまうため、4´−GLの定量、すなわちガラクトオリゴ糖の定量に支障をきたしてしまう。
【0005】
オリゴ糖を逆相クロマトグラフィーで検出する方法として、C8またはC18逆相クロマトグラフィー用カラムを用いる方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、これらのカラムを使用して飲食品中のガラクトオリゴ糖の分離を試みた場合、飲食品の他の成分とガラクトオリゴ糖成分とを分離することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007−523352号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of AOAC International, Volume 85, Number 2, March 2002, pp.417−423(7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、ガラクトオリゴ糖とデキストリンを含む試料から、簡易かつ低コストに4´−GLを分離し、4´−GLおよびガラクトオリゴ糖を正確に定量する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ガラクトオリゴ糖とデキストリンを含む試料を誘導体化試薬と反応させ、前記試料中のデキストリンおよびガラクトオリゴ糖を誘導体化し、次いで、C30逆相クロマトグラフィー用カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーに供することで、当該試料中のガラクトオリゴ糖成分を十分に分離できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、ガラクトオリゴ糖とデキストリンを含む試料中のガラクトオリゴ糖を検出・定量する方法であって、前記試料を誘導体化試薬と反応させ、試料中のデキストリンおよびガラクトオリゴ糖を誘導体化し、次いで、C30逆相クロマトグラフィー用カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより当該試料中のガラクトオリゴ糖成分を分離することを特徴とするガラクトオリゴ糖の検出・定量方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の検出・定量方法によれば、試料中のガラクトオリゴ糖と他の成分とを簡易、低コストに分離し、正確にガラクトオリゴ糖の定量を行うことができる。本発明の方法を用いて、飲食品等のガラクトオリゴ糖を検出・定量することで、当該飲食品等に含まれるガラクトオリゴ糖の量を正確に管理し、品質保証できるとともに、各種有効性試験データの取得、表示などを正確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ゲルろ過カラムを用いたHPLCのクロマトグラム
図2】PMP誘導体逆相HPLCクロマトグラム(C30)
図3】PMP誘導体−逆相HPLCクロマトグラム(C18逆相カラム)
図4】PMP誘導体−逆相HPLCクロマトグラム(C8逆相カラム)
図5】PMP誘導体逆相HPLCクロマトグラム(C30)、リン酸カリウム緩衝液(pH4)/CHCN(78/22)
図6】PMP誘導体逆相HPLCクロマトグラム(C30)、リン酸カリウム緩衝液(pH5)/CHCN(79/21)
図7】PMP誘導体逆相HPLCクロマトグラム(C30)、リン酸カリウム緩衝液(pH7)/CHCN(81/19)
図8】PMP誘導体逆相HPLCクロマトグラム(C30)、リン酸カリウム緩衝液(pH7)/CHCN(82/18)
図9】PMP誘導体逆相HPLCクロマトグラム(C30)、リン酸カリウム緩衝液(pH8)/CHCN(82/18)
図10】PMP誘導体逆相HPLCクロマトグラム(C30)、リン酸カリウム緩衝液(pH8)/CHCN(83/17)
図11】PMP誘導体逆相HPLCクロマトグラム(C30)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の検出・定量方法は、飲食品等の試料中に含まれるガラクトオリゴ糖を誘導体化したうえでC30逆相クロマトグラフィー用カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供し、試料中の他の成分とガラクトオリゴ糖とを分離、定量するものである。ガラクトオリゴ糖は、一般式:Gal−(Gal)n−Glc(ただし、式中Galはガラクトース残基、Glcはグルコース残基、nは0〜4の整数)で表される、分子内にガラクトースを一分子以上含む2〜6糖の混合物である。ただし、乳糖はガラクトオリゴ糖には含まれない。
【0014】
ガラクトオリゴ糖の主成分は、乳糖の非還元末端にガラクトースが一つ結合した3糖の4´−ガラクトシルラクトース(4´−GL)である。その他の具体的な成分としては、Galβ1−3Glc、Galβ1−2Glc、Galβ1−6Glc、Galβ1−6Galβ1−4Glc、Galβ1−6Galβ1−4Galβ1−4Glc、Galβ1−4Galβ1−4Galβ1−4Glcなどが挙げられる。本発明の検出・定量方法では、ガラクトオリゴ糖を混合物として検出・定量してもよく、個々のガラクトオリゴ糖成分を検出・定量してもよいが、4´−GLを対象として分離した後、検出・定量し、その量から逆算して、ガラクトオリゴ糖の全量を算出することが、定量の精度の点から好ましい。
【0015】
ガラクトオリゴ糖は、如何なる方法で得られたものでもよく、例えば、乳糖を原料として、乳糖分解酵素(β−ガラクトシダーゼ)による転移反応を利用して生産されたものを使用できる。転移反応では、原料に酵素を産生する微生物を作用させてもよい。乳糖を含む原料としては、例えば、市販の乳糖、乳汁、粉乳、チーズホエー等が挙げられる。用いる酵素は、ガラクトオリゴ糖を得ることのできる酵素であれば特に限定されるものではなく、例えば、原料中の乳糖を加水分解し、分解により生じたガラクトースを乳糖やグルコースに転移させることができる酵素、具体的にはβ−ガラクトシダーゼやα−ガラクトシダーゼが挙げられる。これらの酵素は単独であるいは2種以上を組み合わせて使用できる。酵素処理条件は特に限定されず、一般的には原料濃度は10〜70%、pHは3〜8、酵素濃度は0.01〜100units/ml、温度は20〜70℃、反応時間は2時間〜3日間が適当である。また、市販のガラクトオリゴ糖液糖を用いることもでき、例えば、オリゴメイト55N(ヤクルト薬品工業株式会社)を挙げることができる。また、ガラクトオリゴ糖を含む天然物から定法により単離、精製したものを用いることもできる。ガラクトオリゴ糖を含む天然物の種類は何ら限定されず、例えば哺乳動物の乳汁が挙げられる。
【0016】
本発明において、ガラクトオリゴ糖の検出・定量の対象となる試料は、ガラクトオリゴ糖と、デキストリンを含むものであれば特に制限されず、特定保健用食品、機能性食品、健康食品、栄養補助食品、乳児用、幼児用、妊産婦用、病者用特別用途食品、えん下困難者用食品、育児用調製粉乳等の飲食品やそれらの素材、または医薬品等が挙げられる。中でも糖質成分が多く含まれる育児用調製粉乳に本発明の方法を適用した場合に、高精度にガラクトオリゴ糖の検出・定量ができ好ましい。デキストリンとは、3分子以上のグルコースが重合した物質の総称である。また、デキストリンの一種としてマルトデキストリンがあり、マルトデキストリンとは、α−1,4結合によってD−グルコースが重合した重合体であり、デキストロース当量が20未満で、デンプンの加水分解により得られるものである。
マルトデキストリンには3分子のグルコースからなるマルトトリオースや、4分子のグルコースが重合した4糖、もしくはそれ以上のグルコースが重合した多糖類を含む。マルトトリオースは3分子のグルコースが重合したもので、4´−GLと分子量と分子サイズが同一であり、一部のヒドロキシル基の立体構造が異なっている。飲食品等の試料中に、こうした4´−GLと同じ大きさの分子が存在している場合、ゲルろ過クロマトグラフィー等の従来法では4´−GLとマルトトリオース等を分離し、ガラクトオリゴ糖を定量することができなかったが、本発明の方法によれば、両者を十分に分離することが可能となる。デキストロース当量とは、試料中の還元糖をグルコースとして表し、固形分に対する百分率として求められる値である。デキストロース当量の最大は100で、固形分のすべてがグルコースであることを意味する。デキストロース当量は、デンプンからの加水分解率を表す指標であり、デキストロース当量が小さい、すなわち加水分解率が小さいデキストリンには多糖成分が多く含まれる。一方、デキストロース当量が大きい、すなわち加水分解率が大きいデキストリンには、少糖類が多く含まれる。
【0017】
本発明の検出・定量方法では、まず試料に誘導体化試薬を反応させ、試料中の糖質を誘導体化する。誘導体化試薬は、ガラクトオリゴ糖を誘導体化できるものであれば特に制限されず、例えば、紫外、可視吸収または蛍光検出が可能な疎水性の誘導体が挙げられ、具体的には、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン(PMP)、2−アミノピリジン、2−アミノベンズアミド、3−アミノキノン、4−アミノ安息香酸エチル、4−アミノ安息香酸ブチル、4−トリメチルアンモニウムアニリンが挙げられ、これらから選ばれる1種を用いることができる。中でも、PMPを用いることが、ガラクトオリゴ糖成分の分離を十分に行うためには好ましい。
誘導体化は、例えばPMPによる誘導体化であれば、試料に0.5MのPMPのメタノール溶液と0.6MのNaOH溶液を加え、70℃で30分間反応させ、反応液に0.1M塩酸とクロロホルムを添加し、撹拌後、下層のクロロホルムを除去することで行うことができる。ガラクトオリゴ糖等の糖質は親水性であるが、疎水性の誘導体化試薬で誘導体化されたことにより、当該誘導体化部分が疎水性となるため、固定相にアルキル基を含む高速液体クロマトグラフィー用カラムに供した場合、親水性の成分に比べ、長時間カラム内に保持されることとなる。
【0018】
誘導体化処理後の試料は、高速液体クロマトグラフィーに供し、試料中のガラクトオリゴ糖成分を分離する。本発明において、高速液体クロマトグラフィーに使用するカラムには、C30逆相クロマトグラフィー用カラム、すなわち、固定相に炭素数30のアルキル基(トリアコンチル基)を含むカラムを用いる。試料中のガラクトオリゴ糖を十分に分離するためには、炭素数30のカラムを用いることが必要なためである。より具体的には、Develosil RPAQUEOUS(野村化学株式会社)、Develosil C30−UG(野村化学株式会社)、Inertosil C30 S−Select(ジーエルサイエンス株式会社)が挙げられる。これらの中でも二重結合があるシス型のアルキル基を有する固定相を備えるものが、ガラクトオリゴ糖の分離能の点から好ましく、具体的には、Develosil RPAQUEOUS(野村化学株式会社)が好ましい。C30逆相クロマトグラフィー用カラムが、ガラクトオリゴ糖成分の分離に好適な理由は、アルキル基の長さとその立体構造が、ガラクトオリゴ糖とマルトトリオース等の保持時間の変化に寄与しているものと考えられる。
【0019】
高速液体クロマトグラフィーの移動相に用いる溶出液は、カラムや装置に悪影響を与えないものであれば特に制限なく使用でき、例えば、水のみからなる溶出液、緩衝液のみからなる溶出液、水または緩衝液と極性の有機溶媒との混合液を挙げることができ、特に緩衝液と極性の有機溶媒との混合液を用いることが好ましい。緩衝液と極性の有機溶媒の混合比(vol/vol、以下、すべての混合比の単位はvol/volとする)は、特に限定されるものではないが、緩衝液/極性の有機溶媒=79/21〜80/20が好ましい。これらの溶出液を用いることで、ガラクトオリゴ糖の分離が十分になされ、良好なクロマトグラムを得られるためである。また、同様の理由から、緩衝液のpHは、pH4〜8が好ましく、特にpH5〜6が好ましい。
また、緩衝液としてリン酸カリウム緩衝液、クエン酸カリウム緩衝液、ギ酸アンモニウム緩衝液および酢酸カリウム緩衝液から選ばれる少なくとも1種と、極性の有機溶媒としてアセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールから選ばれる少なくとも1種とを含む混合液を用いることが好ましく、特に、リン酸カリウム緩衝液とアセトニトリルの混合液を用いることが好ましく、リン酸カリウム緩衝液のpHは5〜6が好ましく、リン酸カリウム緩衝液とアセトニトリルの混合比は、リン酸カリウム緩衝液/アセトニトリル=79/21〜80/20が好ましい。
【0020】
高速液体クロマトグラフィーは、市販のHPLC装置を用いて行うことができ、カラムの平衡化や流速等の諸条件は、試料の容量等に基づき適宜設定すればよい。高速液体クロマトグラフィーを行った後、得られた画分は各種の検出器を用いて検出・定量できる。例えば、紫外吸光度検出器、可視吸光度検出器等の吸光度検出器や、各種旋光度検出器、蛍光検出器等を用いることができる。本発明では、紫外吸光度検出器を用いれば簡便であり定量の精度も高い。
【0021】
試料中のガラクトオリゴ糖の検出・定量方法としては、例えば次の手段が挙げられる。まず、4´−GL含量の判明しているガラクトオリゴ糖を含む試料に水等の溶媒を加え溶解した後、内部標準物質を適量加え、試料溶液を調製する。別途、同一のガラクトオリゴ糖と内部標準物質とを水等に溶解し、標準試験液を調製する。標準試験液は、段階希釈し、例えば10、20、40倍希釈したものを準備する。次いで、試料溶液と標準試験液をPMP等の誘導体化試薬で誘導体化する。誘導体化後の試料溶液と標準試験液は、それぞれ高速液体クロマトグラフィーに供し、検出器によりクロマトグラムを得る。高速液体クロマトグラフィーの条件は、上記に示したとおりである。
【0022】
得られた標準試験液の結果から、検量線を作成する。段階希釈した各標準試験液について、ガラクトオリゴ糖の含有量を横軸、4´−GLと内部標準物質の面積比を縦軸として、最小二乗法により検量線を求め、次の式(検量線)を得ることができる。
面積比(y)=定数(a)×ガラクトオリゴ糖含有量(x)
次に、試料溶液の結果から、4´−GLと内部標準物質の面積比を算出し、当該面積比を上記の検量線に代入することで、試料中のガラクトオリゴ糖含有量を算出することが可能となる。前処理段階での試料の希釈率等に即し、適宜算出結果に補足の計算を行うことで、正確なガラクトオリゴ糖含有量が定量される。
【0023】
以下、実施例を挙げて本発明の内容をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制約されるものではない。
【実施例】
【0024】
比較例1:ゲルろ過クロマトグラフィーを用いた4´−GLの定量
(1)試料溶液の調製
ガラクトオリゴ糖液糖(オリゴメイト55N:ヤクルト薬品工業株式会社)をガラクトオリゴ糖含量として2.3g/100gの割合で含み、マルトデキストリンを1.5g/100gの割合で含む育児用調製粉乳2.6gを秤量し、少量の温水を加えて溶解後、室温になるまで放置し、蒸留水を加えて20mlとし、溶解乳を作製した。溶解乳4mlをメスフラスコに入れ、内部標準物質を0.1%含有する水溶液2mlを正確に加え、蒸留水で20mlとし、試料溶液(粉乳101(GOS添加))とした。溶解乳20mlあたりのガラクトオリゴ糖含量は、2.6g×2.3/100=0.0598gであるから、100mlあたりでは、0.299gとなる。
なお、育児用調製粉乳は、原材料として、乳糖、ホエイたんぱく質消化物、パーム油、全粉乳、パーム核分別油、大豆白絞油、ガラクトオリゴ糖液糖、カゼインカルシウム、マルトデキストリン(でんぷん糖化物)、精製魚油、炭酸Ca、塩化Mg、レシチン、リン酸K、塩化K、リン酸Na、水酸化K、ラクトフェリン、V.C、塩化Ca、ピロリン酸鉄、タウリン、V.E、硫酸亜鉛、シスチン、シチジル酸Na、ナイアシン、パントテン酸Ca、V.A、硫酸銅、イノシン酸Na、ウリジル酸Na、グアニル酸Na、V.B1、5’−AMP、V.B6、V.B2、葉酸、カロテン、V.D、V.B12を含み、その栄養成分は表1のとおりである。表1の炭水化物は、乳糖、ガラクトオリゴ糖、デキストリン、単糖を含む。
【0025】
【表1】
【0026】
(2)プラセボ試料溶液の調製
ガラクトオリゴ糖を含まない育児用調製粉乳として、粉乳101(GOS添加)と同様の調製工程を行い、プラセボ試料溶液(粉乳102(プラセボ))を調製した。調製に用いた育児用調製粉乳は、ガラクトオリゴ糖液糖を含まず、マルトデキストリンを6.2g/100gの割合で含む以外は、原材料の組成は、試料溶液(粉乳101(GOS添加))を作成した育児用調製粉乳と同じものである。粉乳101(GOS添加)には、ガラクトオリゴ糖液糖由来の乳糖、ガラクトオリゴ糖、単糖が合計で4.7g/100g含まれており、粉乳101(GOS添加)と粉乳102(プラセボ)は、炭水化物量が同一である。
【0027】
(3)ガラクトオリゴ糖標準試験液の調製
ガラクトオリゴ糖液糖(オリゴメイト55N:ヤクルト薬品工業株式会社)をガラクトオリゴ糖液糖として2.0g/100mlになるように50ml容メスフラスコに量りとり、内部標準物質を1%含有する水溶液1mlを正確に加え、蒸留水を加えて50mlとし、標準試験液(OM55N)とした。
【0028】
(4)マルトデキストリン標準試験液の調製
前記育児用調製粉乳の製造に使用したマルトデキストリン液糖(ハイマルトースシロップ)をマルトデキストリン溶液として2.0g/100mlになるように50ml容メスフラスコに量りとり、内部標準物質を1%含有する水溶液1mlを正確に加え、蒸留水を加えて50mlとし、標準試験液(マルトデキストリン)とした。
【0029】
(5)フィルター処理
試験溶液、プラセボ試験溶液、ガラクトオリゴ糖標準試験液およびマルトデキストリン標準試験液を0.45μmフィルターで濾過し、以下のHPLC条件で分析した。
【0030】
(6)HPLC分析
Column :GPC(KS−802)(8.0×300mm)
Eluent :蒸留水
Flow rate :0.5ml/min
Detector :RI検出器(Shodex SE−201)
Column temp:80℃
【0031】
その結果、図1に示す通り、マルトデキストリンに含まれる3糖(マルトトリオース:Mal−3)と、標準試験液(OM55N)に含まれる3糖の4´−GLは、同一の保持時間でカラムから溶出しており、ゲルろ過クロマトグラフィーではマルトデキストリン中のマルトトリオースとガラクトオリゴ糖中の4´−GLのピークが重なってしまい、4´−GLを定量することができなかった。
【0032】
実施例1:C30カラムを用いたPMP誘導体―HPLC逆相クロマトグラム
比較例1と同様に、育児用調製粉乳の試料溶液、プラセボ試料溶液、ガラクトオリゴ糖標準試験液、マルトデキストリン標準試験液を調製した。ガラクトオリゴ糖標準試験液は、さらに蒸留水で10、20、40倍希釈した希釈液を作製した。希釈液のガラクトオリゴ糖液糖の濃度は、それぞれ0.2g/100ml、0.1g/100ml、0.05g/100mlである。
【0033】
(1)PMP誘導体化
試料溶液、ガラクトオリゴ糖標準試験液、マルトデキストリン標準試験液のそれぞれ100μlをネジ口試験管に取り、0.6M NaOH水溶液を100μl加えて攪拌した。次いで、0.5M PMPメタノール溶液を200μl加えて攪拌した。70℃で30分加熱し、PMP誘導体化した。室温まで冷却した後、0.1M HCl水溶液0.7mlを加えて弱酸性とし、クロロホルムで抽出して過剰の試薬を除いた。すなわち、クロロホルム約1mlを加えて、30秒以上攪拌し、2500rpm、5分間遠心分離して下層のクロロホルムを除去した。同様の操作を2回繰り返した。水層を0.45μmフィルターで濾過し、以下のHPLC条件で分析した。
【0034】
(2)HPLC分析条件
Column :Develosil RPAQUEOUS(4.6×250mm)(C30)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH6)/CHCN(80/20)
Flow rate :1.0ml/min
Detection :UV245nm
Column temp:35℃
【0035】
その結果、図2の点線で示す通り、試料溶液(粉乳101)で検出された4´−GLのピークは、プラセボ試料溶液(粉乳102)では検出されておらず、PMPでの誘導体化後、C30逆相クロマトグラフィー用カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーに供することにより、4´−GLとマルトトリオースを分離できることが確認された。
【0036】
(3)ガラクトオリゴ糖含量の算出
ガラクトオリゴ糖標準試験液から作製した希釈液について、上記と同様の分析条件にてHPLCに供し、内部標準物質と4´−GLの面積比を用いて、ガラクトオリゴ糖液糖の検量線を作成した。HPLC分析の結果は表2のとおりである。
【0037】
【表2】
【0038】
ガラクトオリゴ糖液糖の含有量をx、面積比をyとして、最小二乗法により検量線を求めると、検量線は、y=3.9909xであった。この検量線のyとして、試料溶液中の内部標準物質と4´−GLの面積比(0.5526)を代入し、試料溶液の希釈率等を勘案して、試料中のガラクトオリゴ糖量を算出した(表3)。具体的には、検量線y=3.9909xにy=0.5526を代入すると、x(試料溶液中のガラクトオリゴ糖液糖濃度)は0.138(g/100ml)となった。試料溶液は、溶解乳を5倍希釈したものであるため、溶解乳中のガラクトオリゴ糖液糖量は、0.138×5=0.690(g/100ml)となる。液糖中の固形分含量は75%、固形分中のガラクトオリゴ糖含量は、56.4%であるため、溶解乳中のガラクトオリゴ糖含量は、0.690×0.75×0.564=0.292(g/100ml)となる。溶解乳中の育児用調製粉乳の濃度は、2.6g/20mlであるため、溶解乳100mlには、13gの育児用調製粉乳が含まれており、その中に0.292g/100mlのガラクトオリゴ糖が含まれているから、育児粉乳100gあたり、2.25g/100gのガラクトオリゴ糖が含まれていることが算出され、ガラクトオリゴ糖の配合量(2.3g/100g)とほぼ一致した。
【0039】
【表3】
【0040】
比較例2:C8、C18のカラムを用いたPMP誘導体−逆相HPLCクロマトグラム
ガラクトオリゴ糖液糖(オリゴメイト55N:ヤクルト薬品工業株式会社)をガラクトオリゴ糖含量として2.3g/100gの割合で含み、マルトデキストリンを1.5g/100gの割合で含む育児用調製粉乳5gを精密に、少量の温水を加えて溶解後、室温になるまで放置した。内部標準物質を1%含有する水溶液1mlを正確に加え、蒸留水を加えて50mlとし、試料溶液(粉乳101(GOS添加))とした。
また、ガラクトオリゴ糖を含まない育児用調製粉乳として、粉乳101(GOS添加)と同様の調製工程を行い、プラセボ試料溶液(粉乳102(プラセボ))を調製した。調製に用いた育児用調製粉乳は、ガラクトオリゴ糖を含まず、マルトデキストリンを6.2g/100gの割合で含む以外は、原材料の組成は、試料溶液(粉乳101(GOS添加))を作成した育児用調製粉乳と同じものである。
ガラクトオリゴ糖液糖をガラクトオリゴ糖として3.0g/100mlになるように50ml容メスフラスコに量りとり、内部標準物質を1%含有する水溶液1mlを正確に加え、蒸留水を加えて50mlとし、ガラクトオリゴ糖標準試験液とした。
前記育児用調製粉乳の製造に使用したマルトデキストリン液糖(ハイマルトースシロップ)をマルトデキストリン溶液として2.0g/100mlになるように50ml容メスフラスコに量りとり、内部標準物質を1%含有する水溶液1mlを正確に加え、蒸留水を加えて50mlとし、標準試験液(マルトデキストリン)とした。
【0041】
PMP誘導体化
試料溶液、ガラクトオリゴ糖標準試験液、マルトデキストリン標準試験液のそれぞれ100μlをネジ口試験管に取り、0.6M NaOH水溶液を100μl加えて攪拌した。次いで0.5M PMP メタノール溶液を200μl加えて攪拌した。70℃で30分加熱し、PMP誘導体化した。室温まで冷却した後、0.1M HCl水溶液 0.7mlを加えて弱酸性とし、クロロホルムで抽出して過剰の試薬を除いた。すなわち、クロロホルム約1mlを加えて、30秒以上攪拌し、2500rpm、5分間遠心分離して下層のクロロホルムを除去した。同様の操作を2回繰り返した。水層を0.45μmのフィルターで濾過し、下記の2つのHPLC条件で分析した。
【0042】
HPLC分析条件
(1)C18カラムを用いたHPLC
Column :Inertosil ODS−3(4.6×250mm)(C18逆相カラム)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH6)/CHCN(80/20)
Flow rate :1.0ml/min
Detectoion :UV245nm
Column temp:35℃
(2)C8カラムを用いたHPLC
Column :Imtakt UK−8(4.6×150mm)(C8逆相カラム)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH6)/CHCN(80/20)
Flow rate :1.0ml/min
Detector :UV245nm
Column temp:35℃
【0043】
その結果、C18逆相クロマトグラフィー用カラムでは、4´−GLとマルトトリオース(Mal―3)は分離しているものの、4´−GLと他のガラクトオリゴ糖成分のピークが重なっており、4´−GLを分離することはできなかった。すなわち、図3に示すとおり、ガラクトオリゴ糖標準試験液(OM55N)と、試料溶液(粉乳101)の結果において、4´−GLのピークでは、頂点部の左側に別の物質のピークが重なり、段になってしまっていた。
【0044】
C8逆相クロマトグラフィー用カラムを用いた場合、4´−GLとマルトトリオース(Mal―3)は分離しているものの、4´−GLと他のガラクトオリゴ糖成分のピークが重なり、分離できていないことがわかる(図4)。すなわち、C30逆相クロマトグラフィー用カラムを用いた場合(図2)と比較すると、図2では4´−GLの左隣に他のガラクトオリゴ糖成分のピークがあるのに対し、図4では、当該ピークが4´−GLのピークと重なり、結果的にピークが高くなっている。こうした結果から、C8、C18カラムのいずれを用いた場合でも、4´−GLを分離、定量できないことが示された。
【0045】
実施例2:HPLCにおける溶出液の検討
比較例2と同様に、試料溶液(粉乳101(GOS添加)、粉乳102(プラセボ))、ガラクトオリゴ糖標準試験液およびマルトデキストリン標準試験液を調製し、それぞれを比較例2と同様にPMP誘導体化し以下6種類のHPLC条件で分析した。
【0046】
(1)緩衝液pH4の条件下でのHPLC
Column :Develosil RPAQUEOUS(4.6×250mm)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH4)/CHCN(78/22)
Flow rate :1.0ml/min
Detection :UV245nm
Column temp:35℃
(2)緩衝液pH5の条件下でのHPLC
Column :Develosil RPAQUEOUS(4.6×250mm)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH5)/CHCN(79/21)
Flow rate :1.0ml/min
Detection :UV245nm
Column temp:35℃
(3)緩衝液pH7の条件下でのHPLC
Column :Develosil RPAQUEOUS(4.6×250mm)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH7)/CHCN(81/19)
Flow rate :1.0ml/min
Detection :UV245nm
Column temp:35℃
(4)緩衝液pH7の条件下でのHPLC
Column :Develosil RPAQUEOUS(4.6×250mm)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH7)/CHCN(82/18)
Flow rate :1.0ml/min
Detection :UV245nm
Column temp:35℃
(5)緩衝液pH8の条件下でのHPLC
Column :Develosil RPAQUEOUS(4.6×250mm)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH8)/CHCN(82/18)
Flow rate :1.0ml/min
Detection :UV245nm
Column temp:35℃
(6)緩衝液pH8の条件下でのHPLC
Column :Develosil RPAQUEOUS(4.6×250mm)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH8)/CHCN(83/17)
Flow rate :1.0ml/min
Detection :UV245nm
Column temp:35℃
【0047】
実施例1の結果から、pH6のリン酸カリウム緩衝液を用いた場合には、4´−GLが分離できており、ガラクトオリゴ糖の定量が可能であった。これに対し、図5、7〜10に示すとおり、pH4、7、8のリン酸カリウム緩衝液を用いた場合には、4´−GLと他のガラクトオリゴ糖成分のピークが重なってしまい、4´−GLを分離・定量できなかった。すなわち、図2では4´−GLの左隣に他のガラクトオリゴ糖成分のピークがあるのに対し、pH4のリン酸カリウム緩衝液を用いた場合には、OM55Nのクロマトグラムでは、当該ピークが1つであり4´−GLを分離できていない(図5)。
また、リン酸カリウム緩衝液(pH7)とCHCNを81/19の割合とした溶出液を用いた場合(図7)、OM55Nのクロマトグラムでは、4´−GLのピークの頂点部の右側に他のガラクトオリゴ糖成分のピークが重なり、結果として4´−GLのピークの面積が大きくなっている。
リン酸カリウム緩衝液(pH7)とCHCNを82/18の割合とした溶出液を用いた場合(図8)、OM55Nのクロマトグラムでは、本来4´−GLの左隣に検出されるピークがなく、当該ピークと4´−GLのピークが重なっている。
リン酸カリウム緩衝液(pH8)とCHCNを82/18の割合とした溶出液を用いた場合(図9)、あるいは83:17の割合とした溶出液を用いた場合(図10)、OM55Nとマルトデキストリンのクロマトグラムを比較すると、4´−GLは、マルトトリオース、その他のオリゴ糖成分と分離できているが、OM55Nとプラセボ試料溶液(粉乳102)のクロマトグラムを比較すると、4´−GLのピークと、粉乳102に含まれている成分のピークが一致しており、4´−GLのみを分離できていないことがわかる。
一方、リン酸カリウム緩衝液(pH5)とCHCNを79/21の割合とした溶出液を用いた場合(図6)、4´−GLは、マルトトリオースおよび他のガラクトオリゴ糖成分と分離できていた。
【0048】
実施例3:栄養食品を試料とした場合のPMP誘導体−逆相HPLCクロマトグラム(C30)
表4に示す原材料を混合し、栄養食品を調製した。この栄養食品10gに蒸留水を加えて50mlとした後、20000g×30分で遠心分離し、さらに20000g×30分で遠心分離した。遠心分離後には栄養食品は、下層、中間層、上層の3層に分離していた。その中間層を分取し、当該分取した試料を0.45μmのフィルターでろ過した。別途、標準試料としてガラクトオリゴ糖標準試験液をオリゴメイト55(ヤクルト薬品工業株式会社)を用いて、比較例1と同様に調製した。ろ過した試料とガラクトオリゴ糖標準試験液のそれぞれ100μlをネジ口試験管に取り、減圧乾固した。内部標準物質を0.02%含有する水溶液100μlを加え、0.5MのPMPメタノール溶液を200μl加えて撹拌した。次いで70℃で30分加熱し、PMP誘導体化し、以下のHPLC条件で分析した。
【0049】
【表4】
【0050】
HPLC分析条件
Column :Develosil RPAQUEOUS(4.6×250mm)
Eluent :リン酸カリウム緩衝液(pH6)/CHCN(80/20)
Flow rate :1.0ml/min
Detection :UV245nm
Column temp:35℃
【0051】
その結果、図11に示すとおり、4´−GLのピークは、保持時間24.324分で出現し、サンプルに含まれるその他の成分から分離されたことが判明した。なお、4´−GLのピークが、保持時間24.324分に出現することは、同一のHPLC分析条件にて、ガラクトオリゴ糖標準試験液を分析し、確認済みである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の検出・定量方法によれば、試料中のガラクトオリゴ糖と他の成分とを簡易、低コストに分離し、正確にガラクトオリゴ糖の定量を行うことができるため、当該試料中に含まれるガラクトオリゴ糖の量を正確に管理できるとともに、各種有効性試験データの取得、表示などを正確に行うことが可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11