特許第6285948号(P6285948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6285948ワイヤレスネットワーク接続を最適化する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285948
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】ワイヤレスネットワーク接続を最適化する方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   H04B7/06 956
   H04B7/06 152
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-543415(P2015-543415)
(86)(22)【出願日】2013年11月20日
(65)【公表番号】特表2015-535666(P2015-535666A)
(43)【公表日】2015年12月14日
(86)【国際出願番号】EP2013074299
(87)【国際公開番号】WO2014079894
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2016年11月18日
(31)【優先権主張番号】12306446.1
(32)【優先日】2012年11月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501263810
【氏名又は名称】トムソン ライセンシング
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】カレル ヴァン ドアシーラー
(72)【発明者】
【氏名】コーエン ヴァン オースト
【審査官】 原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−524272(JP,A)
【文献】 特表2005−522940(JP,A)
【文献】 特開2006−197639(JP,A)
【文献】 特許第5388137(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成可変アンテナを備えた第2のネットワークデバイスにおいて、前記第2のネットワークデバイスと第1のネットワークデバイスとの間のワイヤレスネットワーク接続を最適化する方法であって、
前記第2のネットワークデバイスと前記第1のネットワークデバイスとの間のデータ接続を確立することと、
−前記第1のネットワークデバイスから、前記データ接続を介して、前記第1のネットワークデバイスが、ワイヤレスネットワークを使用して、データを受信することができる全ての第3のネットワークデバイスの識別を含む第1のデバイスシーンリストを受信することと、
前記第2のネットワークデバイスにおいて、前記第2のネットワークデバイスが、前記ワイヤレスネットワークおよび前記構成可変アンテナを使用して、前記第1のデバイスシーンリストに含まれるもの以外の第3のネットワークデバイスである任意のエクストラネットワークデバイスからデータを受信することができるかどうかをテストすることと、
前記第2のネットワークデバイスが任意のエクストラネットワークデバイスからデータを受信することができる場合、前記第2のネットワークデバイスがデータを受信することができるエクストラネットワークデバイスの数が減少するように前記構成可変アンテナを修正することと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
第1のネットワークデバイスと、構成可変アンテナを備えた第2のネットワークデバイスとの間のワイヤレスネットワーク接続を最適化する方法であって、
前記第1のネットワークデバイスと前記第2のネットワークデバイスとの間のデータ接続を確立することと、
前記第1のネットワークデバイスから、前記データ接続を介して、前記第2のネットワークデバイスへ、前記第1のネットワークデバイスが、ワイヤレスネットワークを使用して、データを受信することができる全ての第3のネットワークデバイスの識別を含む第1のデバイスシーンリストを送信することと、
前記第2のネットワークデバイスにおいて、前記第2のネットワークデバイスが、前記
ワイヤレスネットワークおよび前記構成可変アンテナを使用して、前記第1のデバイスシーンリストに含まれるもの以外の第3のネットワークデバイスである任意のエクストラネットワークデバイスからデータを受信することができるかどうかをテストすることと、
前記第2のネットワークデバイスが任意のエクストラネットワークデバイスからデータを受信することができる場合、前記第2のネットワークデバイスがデータを受信することができるエクストラネットワークデバイスの数が減少するように前記構成可変アンテナを修正することと、
を含む、前記方法。
【請求項3】
前記テストすることは、
前記第1のデバイスシーンリストを、前記第2のネットワークデバイスが、前記構成可変アンテナを使用した場合に、データを受信することができる全ての第3のネットワークデバイスの識別を含む第2のデバイスシーンリストと比較することであって、前記第2のデバイスシーンリストが前記第1のデバイスシーンリスト内に含まれない第3のネットワークデバイスの識別を含む場合に、前記第2のネットワークデバイスが、任意のエクストラネットワークデバイスからデータを受信することができるとみなす、前記比較することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
構成可変アンテナが個々にアクティブまたはパッシブになることができる区別可能なアンテナセクタを有する第2のネットワークデバイスにおいて使用され、前記修正することは、前記アンテナセクタの各々について、パッシブに設定するとエクストラネットワークデバイスの数が減少する場合に、パッシブに設定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のネットワークデバイスと前記第1のネットワークデバイスとの間のデータ接続を確立することの前に、全てのアンテナセクタをアクティブに設定する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記修正することは、前記アンテナセクタの各々について、アクティブに設定するとエクストラネットワークデバイスの数が増加しない場合に、アクティブに設定することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ワイヤレスネットワーク接続を使用して、前記データ接続が確立される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記データ接続に対して、前記構成可変アンテナは無指向性モードで動作する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記データ接続は、前記ワイヤレスネットワーク接続とは異なる手段で確立される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
構成可変アンテナを有し、請求項1に記載の、前記第2のネットワークデバイスの方法を実行するように装備されかつ構成されたネットワークデバイス。
【請求項11】
ワイヤレスネットワーク接続を最適化するシステムであって、第1のネットワークデバイスと構成可変アンテナを有する第2のネットワークデバイスとを備え、前記第1のネットワークデバイスは、前記第2のネットワークデバイスとのデータ接続を確立して、前記データ接続を介して前記第2のネットワークデバイスに、前記第1のネットワークデバイスが、ワイヤレスネットワークを使用して、データを受信することができる全ての第3のネットワークデバイスの識別を有する第1のデバイスシーンリストを送信するように装備されかつ構成され、前記第2のネットワークデバイスは、請求項1に記載の方法を実行するように装備されかつ構成された、前記システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のデバイスおよび第2のデバイスの間のワイヤレスネットワーク接続を最適化する方法に関し、詳細には、少なくとも1つのデバイスが構成可変アンテナ(configurable antenna)を含む場合に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、いわゆるWi-Fi技術による無線LANまたはWLANの急激な増加によって、物理メディアを共有する、周囲の他のWLANまたは非Wi-Fiシステムからの干渉に起因するパフォーマンスの低下に関する問題が増加している。全てのネットワークデバイスが範囲内にあるかまたは互いに到達距離にある場合、これは、それらは互いに「見える(see)」とも表現される。この場合のため、例えば、メディアが異なるデバイスの間で適切に共有されることを確実にするWi-Fiのメディアアクセスプロトコルである搬送波感知多重アクセス−衝突回避方式 ― CSMA−CAのようなネットワークプロトコルが存在する。その基本的なコンセプトによれば、送るパケットを有する各ネットワークデバイスはメディアがクリアになるまで待たなければならず、そうでない場合は、そのパケットを送ることができるようになる前に、特定のランダムバックオフタイムを遵守しなければならない。このような方法で、パケット同士の衝突が回避できる。
【0003】
第1のデバイスおよび第2のデバイスの間の機能的ワイヤレスネットワーク接続の近くに、第1のデバイスに「可視」であるが、第2のデバイスには可視でない、第3のデバイスが存在する場合、隠れノード(hidden node)といい、隠れステーション(hiden station)とも表現される。この場合、第3のデバイスは第2のデバイスについて隠れノードである。以下でさらに表現されているように、隠れノードが存在するとすぐに、衝突が発生し得るし、CSMA−CAメカニズムの効率がかなり低下する。人口密度の高いエリアでは、いくらかのエリアでWi−Fiが完全に使用不可能になるまで、この問題はますます頻繁に発生する。今日では、これは2.4GHz帯における場合にすぎないが、今後何年かすると、同じ状況が5GHz帯についても発生することが予想される。
【0004】
伝統的には、隠れノードによる完全なネットワーク崩壊は、RTS/CTSメカニズムによって対応されているが、これらのメカニズムは顕著なオーバヘッドを伴う。各ユニキャストデータフレームの前に、伝送ノードは、ブロードキャストモードで、パケットにどれだけの時間がかかるかについての指示を含むRTSとしても表現される送信要求パケット(Request−To−Send packet)を送る。RTSパケットは、受信ノードからの、CTSとしても表現される送信許可パケット(Clear−To−Send packet)によって応答されなければならない。CTSパケットは、パケットにどれだけの時間がかかるかを伝える。CTSまたはRTSパケットのいずれかを聞く各Wi−Fiノードは、メディアを空き状態に保つために必要な時間を遵守しなければならない。追加のオーバヘッドを除いて、RTS−CTS方式はブロードキャストフレームを保護していない。人口密度の高いエリアでは、人々は繰り返しワイヤレス接続を維持できなくなる。なぜならば、ワイヤレスゲートウェイまたはアクセスポイントからのビーコンが、隠れWi−Fiノードからのパケットとあまりに頻繁に衝突するからである。これは以下でさらに詳述される。
【0005】
図1は、記号による平面図であり、第1の従来技術のワイヤレスネットワーク構成である。第1のネットワーク構成は、第1のアクセスポイントAP1 101、第2のアクセスポイントAP2 105、第1のステーションSTA1 103、第2のステーションSTA2 107を備えている。図1は、ネットワークデバイスの可視の範囲、すなわち、ネットワークデバイスが他のネットワークデバイスからデータを受信できる範囲も図示している。第1のアクセスポイントの可視の範囲102、第2のアクセスポイントの可視の範囲106、第1のステーションの可視の範囲104、および第2のステーションの可視の範囲108である。ここでは、一般性を失うこと無く、可視の範囲は方向に依存しないことを想定し、それゆえ、それぞれのネットワークデバイスを中心とした円として図示される。図示を容易にするためだけに、および一般性を失うこと無く、図1のネットワークデバイスの可視範囲は同じ半径をもって表される。
【0006】
図1に表されたネットワーク構成において、第1のアクセスポイント101は第1のステーション103にワイヤレス接続109されて、第1のローカルネットワークを形成すると想定し、第2のアクセスポイント105は第2のステーション107にワイヤレス接続110されて第2のローカルネットワークを形成すると想定する。
【0007】
実際的な例として、第1のアクセスポイント101はアパートの中央に配置されたプライベートネットワークゲートウェイに対応することができる。第1のステーション103はラップトップに対応し、第1のアクセスポイント101に到達し接続される範囲内で操作され、アパートの外壁近傍の部屋やアパートの外の道路の近くに配置されることができる。第2のアクセスポイント105および第2のステーション107はアパートから道路を隔てて向かいに配置されたとてもビジーな企業ネットワークの部分に対応するだろう。
【0008】
図1に示された構成において、
−第1のアクセスポイント101には、第1のステーション103が見えるが、第2のアクセスポイント105も第2のステーション107も見えない
−第1のステーション103には、第1のアクセスポイント101、第2のアクセスポイント105、および第2のステーション107が見える
−第2のアクセスポイント105には、第1のステーション103および第2のステーション107が見えるが、第1のアクセスポイント101は見えない
−第2のステーション107には、第1のステーション103および第2のアクセスポイント105が見えるが、第1のアクセスポイント101は見えない
この状況において、隠れノード問題の第1の結果が発生する場合があり、以下の通り記述される:
−第1のアクセスポイント101は第1のステーション103へ送るパケットを有すると想定する。第1のステーション103が何も送信しない場合、第1のアクセスポイント101はメディアが空いているとみなして、そのパケットを送信する。
−もし、第1のアクセスポイント101がそのパケットを第1のステーション103に送信する間、第2のステーション107は第2のアクセスポイント105へ送信するパケットを有する場合、第2のステーション107は、第1のアクセスポイント101からのパケットの範囲外であるので、メディアが空いているとみなし、かつ第2のアクセスポイント105にそのパケットを送信する。このような場合、第1のステーション103の受信器は、第1のアクセスポイント101と第2のステーション107の両方の範囲内であるので、第1のアクセスポイント101からのパケットが第2のステーション107からのパケットと衝突する。
−したがって、第1のステーション103は第1のアクセスポイント101からのパケットを復号することができない。その時点で、再送、より長いバックオフタイム、より低下した変調速度などのネットワークのロバスト性メカニズムが採用される。しかし、副次的影響として、これらは全てメディアを介したトータルのスループットを大幅に低減するので、持続可能なソリューションを保障することができない。
【0009】
上述したように、隠れノード問題がデータフレームの送信の間に発生した場合、一定のオーバヘッドおよびパフォーマンスの低下を犠牲にしてRTS/CTSメカニズムを使用することが知られている。しかしながら、ブロードキャスト管理フレームおよびマルチキャスト/ブロードキャストデータフレームについては、RTS/CTSでさえ可能でない。これは隠れノード問題がいわゆる「ビーコン」の送信およびメカニズムに特別な影響を与えるゆえんである。ビーコンは、Wi−Fiネットワークの「ハートビート」の性質を有するブロードキャスト管理フレームである。アクセスポイントはビーコンを規則的に送出しなければならない。ビーコンの間の時間は設定可能であるが、100msの値はWi−Fiにおいて共通に使用されている。ステーションが、接続されるアクセスポイントからもはやビーコンが見えない場合、範囲外であり接続断とみなす。
【0010】
これは、隠れノード問題の第2の結果を構成する。例として、図1内の第1のローカルネットワークにほとんど活動がないと想定する。基本的に、ほとんどの時間は、例えば100msおきに第1のアクセスポイント101によって、ビーコンだけが送信される。ここで、第2のステーション107が第2のアクセスポイント105を介して大きなファイルのダウンロードを実行することを想定する。第1のアクセスポイント101は第2のアクセスポイント105の範囲外なので、第2のアクセスポイント105には第1のアクセスポイント101から送出されたビーコンが見えない、すなわち、他のWi−Fiノードからのいずれの活動も見えない。それゆえ、第2のアクセスポイント105はダウンロードの全期間について完全なメディアを奪う。これは、このダウンロードの間、第1のステーション103には、もはや第1のアクセスポイント101からのいずれのビーコンも見えないことを意味する。なぜなら、それらのビーコンが全て第2のアクセスポイント105からのデータフレームと衝突するからである。したがって、第1のステーション103は接続断となる。
【0011】
要約すると、隠れノードの影響は、アクティブな使用の間のWLANのパフォーマンスを低下させるだけでなく、他の隣接ネットワークが使用状態の場合はいつでも、接続―切断サイクルを永続的に引き起こす。干渉ネットワークがビジネスWLANである場合、これは基本的に、接続―切断の問題は業務時間の間いつでも予想されることを意味する。
【0012】
Hoffmann他に特許された特許文献1には、ワイヤレスローカルエリアネットワークまたはWLANにおけるアクセスポイントを操作する方法が開示されている。アクセスポイントは複数の遠隔ステーションと通信する指向性アンテナを含み、この複数の指向性アンテナは複数のアンテナパターンを含む。この方法は、アクセスポイントおよび各遠隔ステーションの間で、複数のアンテナパターンに対応する各測定された信号品質を関連付けることによってアンテナデータベースを作成することを含む。各測定された信号品質は、アクセスポイントによって、各遠隔ステーションとの通信に基づいて決定される。この方法はさらに、アンテナデータベースに基づいて各遠隔ステーションについて好ましいアンテナパターンを決定することと、遠隔ステーションおよび、対応する好ましい、通信するアンテナパターンを選択することとを含む。隠れノード問題を扱う1つの方法として、アンテナデータベースに基づいておよび選択された遠隔ステーションと通信する前に、非選択の遠隔ステーションが、そのような通信がいつ実際に発生するかを認識していない可能性を有するかどうかが決定される。これは互いに隠された2つのステーションが、同じアクセスポイントに接続された場合に発生し得る。無指向性のRTS/CTSの使用はこれらのケースについて記述される。
【0013】
非特許文献1には、DAMAとしても表現される指向性アンテナメディアアクセスプロトコル、および指向性アンテナによって提供される利益を最大限活かす拡張DAMA又はEDAMAと呼ばれるそれらの拡張バージョンが開示されている。これらの手法を使用する一組の通信ノードは、巡回指向性RTSおよびCTSを、それらの隣接するセクタにだけ同時に送信し、ゆえに全体的な通信遅延を低減し、スループットを向上する。IEEE802.11にあるように、全てのアンテナビームに対して単一のMACバッファを使用するDAMAとは異なり、EDAMAは、各アンテナセクタに対して別々のバッファを採用し、統合ネットワークおよびMACクロスレイヤ設計を導入する。
【0014】
上述したプロトコルは、隠れノードを回避できないという欠点があることがわかる。
【0015】
したがって、隠れステーションとしても知られる隠れノードの検出および回避に関する改良が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第7,103,386号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Gossain et al "Cross-layer directional antenna MAC protocol for wireless ad hoc networks", in WIRELESS COMMU ICA IONS & MOBILE COMPUTING | 6 (2) : pp. 171-182; MAR 2006
【発明の概要】
【0018】
本発明によれば、第1のネットワークデバイスおよび第2のネットワークデバイスの間の通信パスは最初に確立されなければならない。そして、通信パスは、第1のネットワークデバイスによって見えるネットワークデバイスと第2のネットワークデバイスによって見えるネットワークデバイスとを比較するために使用される。これにより隠れノードが識別できる。構成可変アンテナの存在と使用は、第2のネットワークデバイス上であることを想定する。構成可変アンテナをその後適切に修正することによって、できるだけ、第2のネットワークデバイスが、第1のネットワークデバイスに対して、隠れている、すなわち不可視である任意のネットワークデバイスがそれ以上見えないようにする。
【0019】
同様に、本発明は、第1のネットワークデバイスおよび構成可変アンテナを有する第2のネットワークデバイスの間の無線ネットワーク接続を設定する方法を提案する。データ接続は第1のネットワークデバイスおよび第2のネットワークデバイスの間に確立される。第1のネットワークデバイスから第2のネットワークデバイスへ、データ接続を介して、第1のデバイスシーンリスト(Device Seen List)が送られる。第1のデバイスシーンリストは、第1のネットワークデバイスが、ワイヤレスネットワークを介して、そこからデータを受信することができる、全ての第3のネットワークデバイスの識別を含む。第2のネットワークデバイスでは、ワイヤレスネットワークおよび構成可変アンテナを使用して第2のネットワークデバイスが任意のエクストラネットワークデバイスからのデータを受信できるかどうかがテストされる。エクストラネットワークデバイスとして、ここでは、第1のデバイスシーンリストに含まれるネットワークデバイス以外の任意の第3のネットワークデバイスを示している。エクストラネットワークデバイスが存在する場合、構成可変アンテナがエクストラネットワークデバイスの数を最小化するように修正される。これは結局、意図的な、指向性依存すなわち無指向性でない、第2のネットワークデバイスの可視範囲の制限になる。
【0020】
本発明による方法の利点は、第2のネットワークデバイスの可視範囲を意図的に制限することによって、隠れノード全般および記述されたビーコンの問題が回避されることである。もちろん、これが達成される程度は、関与するネットワークデバイスの数に依存するが、特定の構成可変アンテナによって提供される構成の柔軟性の幅にも依存する。
【0021】
上述した指向性アンテナを有するアクセスポイントを操作する既知の方法は、信号品質に基づいている。構成可変アンテナがセクタ化されたアンテナであると仮定すると、セクタ化されたアンテナの全てのセクタをアクティベートしないことになり、既存のネットワーク接続の信号品質に積極的には貢献しない。これは、多くの場合、アンテナの単一のセクタ、すなわち他方のデバイスが位置しているセクタのみが、アクティブに維持される結果になることが分かる。
【0022】
対照的に、本明細書で提案されるワイヤレスネットワーク接続の設定方法は、セクタ化されたアンテナの方向特性の部分のみをアクティベートしないことになり、これは特に隠れノードに貢献することになる。可視の隠れノードの数を減らすことがないアンテナ方向特性を有するセクタは維持される。そのようにして、有利には、ワイヤレスネットワークに他のネットワークデバイスが後から進入することは妨害されない。
【0023】
本発明の好適実施形態は、添付の図面を参照して記述される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来技術の第1のワイヤレスネットワーク構成を示す図である。
図2】本発明にかかる第2のワイヤレスネットワーク構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図2は、本発明を図示するための第2のワイヤレスネットワーク構成を示している。第2のワイヤレスネットワーク構成は、それぞれ同一の参照符号によって示され、第1のワイヤレスネットワーク構成にも含まれる、ほとんどのネットワークデバイスを備えている。しかしながら、第1のステーションSTA1は、図1で示される状況とは異なり、構成可変アンテナを含むとここでは仮定され、それゆえ、参照符号209によって示される。一般性を失うこと無く、第1のステーション209の構成可変アンテナは、ここでは、それぞれ、使用されるかまたは使用されていない、8つの角度のセクタをここでは仮定的に備え、それによって、構成可変アンテナの各方向の特性が生じる。8つの角度のセクタは、記号によって図2内に示され、そこでは第1のステーションの可視性の範囲104は、セクタ201、202、203、204、205、206、207、および208に分割される。第2のワイヤレスネットワーク構成は、第3のステーションSTA3もまた備えている。
【0026】
図2に示された例の場合、第1のアクセスポイント101は第1のネットワークデバイスの実施形態であり、第1のステーション209は、構成可変アンテナを有する第2のデバイスの実施形態である。
【0027】
本発明の方法によれば、通信パスすなわちデータ接続は、第1のネットワークデバイス101と第2のネットワークデバイス209との間に最初に確立される。
【0028】
このデータ接続はワイヤレスネットワークを介して確立されることが可能であるが、代替的に、ワイヤレスまたは有線、独自に開発されたかまたは標準化された、他の手段によって確立されることも可能である。それは、第1のネットワークデバイスによって見られるネットワークデバイスのリストを第2のネットワークデバイスに送信する単一のステップのためだけに使用される。
【0029】
図2に描かれた例示的な場合では、第1のアクセスポイント101には第1のステーション209及び第3のステーション210が見える。それゆえ、第1のデバイスシーンリストはこれらの2つのネットワークデバイスについてのユニークな識別からなり、第1のステーション209に送られる。
【0030】
次に、第1のステーション209は、それ自体第2のネットワークデバイスとしての役割において、任意のエクストラネットワークデバイスが「見える」かどうかテストするステップを開始することができる。方法の最初の部分であるため、構成可変アンテナは好ましくは無指向性モードで操作される。したがって、図2に示された例示的状況において、第1のステーション209には、全体として、第1のアクセスポイント101と、第3のステーション210と、第2のアクセスポイント105と、第2のステーション107とが見えている。もちろん、第1のアクセスポイント101は、第1のローカルネットワークの参加者のうちの1つであるために、第3のネットワークデバイスではなく、第3のステーション210は第1のデバイスシーンリストに含まれる。それゆえ、第2のアクセスポイント105および第2のステーション107だけが2つのエクストラネットワークデバイスとして残る。
【0031】
エクストラネットワークデバイスの数を最小化するように構成可変アンテナを修正するために、アンテナセクタのそれぞれは、直ちに、シーケンシャルに調査され、およびエクストラネットワークデバイスの数が減少した場合にだけパッシブに設定される。
【0032】
図2に示された例示的状況において、第3のステーション210は、いまだに作動中でないと仮定すると、
−第1のアンテナセクタ201をパッシブに設定することは、エクストラネットワークデバイスの可視性を減少させず、ゆえに実行されない;
−同じことが、第2のアンテナセクタ202と第3のアンテナセクタ203とに適用される;
−第4のアンテナセクタ204をパッシブに設定することは、第2のアクセスポイント105の可視性を取り除き、かくして、エクストラネットワークデバイスの数を1つ減らす。ゆえに実行される;
−第5のアンテナセクタ205をパッシブに設定することは、第2のステーション107の可視性を取り除き、かくして、エクストラネットワークデバイスの数を1つ減らす。ゆえに実行される;
−第6のアンテナセクタ206をパッシブに設定することは、エクストラネットワークデバイスの可視性を減少させず、ゆえに実行されない;
−同じことが、第7のアンテナセクタ207と第8のアンテナセクタ208とに適用される。
【0033】
構成可変アンテナのこのシーケンシャルな修正の最後において、生じた方向特性は、協働して270度の角度をカバーする、セクタ201−203およびセクタ206−208を含んでいる。セクタ204、205の90度の角度はカバーされず、これらの2つのセクタに配置されたエクストラネットワークデバイスはもはや可視ではない。
【0034】
この状況において、第3のステーションSTA3がワイヤレスネットワークに入った場合は、それはアクティブアンテナセクタ202によってカバーされており、それゆえ、第1のアクセスポイント101と第1のステーション209に可視であり、結果としてその第1のローカルネットワークへの進入は妨害されないことがたちまち明白に分かる。
【0035】
以上の記述では、方法の最初の時点におけるアンテナ構成は無指向性のものである。しかしながら、本方法は、任意の最初のアンテナ構成で採用することができ、それによって、規則的なまたは不規則な間隔で繰り返しそれを適用可能にする。これは、実行ベースで、ワイヤレス構成における緩やかな変更を考慮することを可能にするという利点がある。この場合、構成可変アンテナを修正するステップは、有利には、エクストラネットワークデバイスの数を増加させない限りは、任意のアンテナセクタをアクティブに設定することをも含む。
【0036】
以上の記述では、本発明に従った構成方法は、静的にセクション分けされたアンテナに関与する実施形態で記述される。しかしながら、構成可変アンテナがデジタルビーム形成を採用した場合にも採用可能である。
【0037】
本発明の方法が、セクタがわずかしかないアンテナにおけるシステムにおいて採用される場合、セクタのうちの1つをパッシブに設定する方法のステップが、エクストラネットワークデバイスの可視性を実際に取り除くが、同時に、第1および第2のデバイスの間のネットワーク接続を劣化させるかまたは妨害するという事態が発生するかもしれないことに留意されたい。これらの場合において、ネットワーク接続が損なわれないという追加の条件下でのみ、セクタをパッシブに設定することが好都合となる。
【0038】
言い換えると、本発明は、少なくとも1つのデバイスが構成可変アンテナを備える場合に、ワイヤレスネットワーク接続を最適化する方法を提案する。隠れノード問題を回避するために、構成可変アンテナを備えるネットワークデバイスによってのみ見られる第3のネットワークデバイスの数が最小化されるように、構成可変アンテナを修正することが提案される。
(付記1)
構成可変アンテナを備えた第2のネットワークデバイス(209)において、第2のネットワークデバイス(209)と第1のネットワークデバイス(101)との間のワイヤレスネットワーク接続を最適化する方法であって、
−前記第2のネットワークデバイス(209)と前記第1のネットワークデバイス(101)との間のデータ接続を確立するステップと、
−前記第1のネットワークデバイス(101)から、前記データ接続を介して、前記第1のネットワークデバイス(101)が、ワイヤレスネットワークを使用して、データを受信することができる全ての第3のネットワークデバイス(210)の識別を含む第1のデバイスシーンリストを受信するステップと、
−前記第2のネットワークデバイス(209)において、前記第2のネットワークデバイス(209)が、前記ワイヤレスネットワークおよび前記構成可変アンテナを使用して、前記第1のデバイスシーンリストに含まれるもの以外の第3のネットワークデバイス(105、107)である任意のエクストラネットワークデバイスからデータを受信することができるかどうかをテストするステップと、
−前記第2のネットワークデバイス(209)が任意のエクストラネットワークデバイスからデータを受信することができる場合、エクストラネットワークデバイスの数が減少するように前記構成可変アンテナを修正するステップと、
を含む、前記方法。
(付記2)
第1のネットワークデバイス(101)と、構成可変アンテナを備えた第2のネットワークデバイス(209)との間のワイヤレスネットワーク接続を最適化する方法であって、
−前記第1のネットワークデバイス(101)と前記第2のネットワークデバイス(209)との間のデータ接続を確立するステップと、
−前記第1のネットワークデバイス(101)から、前記データ接続を介して、前記第2のネットワークデバイス(209)へ、前記第1のネットワークデバイス(101)が、前記ワイヤレスネットワークを使用して、データを受信することができる全ての第3のネットワークデバイス(210)の識別を含む第1のデバイスシーンリストを送信するステップと、
−前記第2のネットワークデバイス(209)において、前記第2のネットワークデバイス(209)が、前記ワイヤレスネットワークおよび前記構成可変アンテナを使用して、前記第1のデバイスシーンリストに含まれるもの以外の第3のネットワークデバイス(105、107)である任意のエクストラネットワークデバイスからデータを受信することができるかどうかをテストするステップと、
−前記第2のネットワークデバイス(209)が任意のエクストラネットワークデバイスからデータを受信することができる場合、エクストラネットワークデバイスの数が減少するように前記構成可変アンテナを修正するステップと、
を含む、前記方法。
(付記3)
前記テストするステップは、
−前記第2のネットワークデバイス(209)が、前記構成可変アンテナを使用した場合に、データを受信することができる全ての第3のネットワークデバイス(105、107、210)の識別を含む第2のデバイスシーンリストをコンパイルするステップと、
−前記第1のデバイスシーンリストを前記第2のデバイスシーンリストと比較するステップであって、前記第2のデバイスシーンリストが前記第1のデバイスシーンリスト内に含まれない第3のネットワークデバイスの識別を含む場合に、前記第2のネットワークデバイス(209)が、任意のエクストラネットワークデバイスからデータを受信することができるとみなす、前記比較するステップを含む、付記1または2に記載の方法。
(付記4)
構成可変アンテナが個々にアクティブまたはパッシブになることができる区別可能なアンテナセクタ(201、202、203、204、205、206、207、208)を有する第2のネットワークデバイス(209)において使用され、前記修正するステップは、前記アンテナセクタの各々について、パッシブに設定するとエクストラネットワークデバイスの数が減少する場合に、パッシブに設定することを含む、付記1に記載の方法。
(付記5)
最初に、全てのアンテナセクタをアクティブに設定する、付記4に記載の方法。
(付記6)
前記修正するステップは、前記アンテナセクタの各々について、アクティブに設定するとエクストラネットワークデバイスの数が増加しない場合に、アクティブに設定することを含む、付記4に記載の方法。
(付記7)
前記ワイヤレスネットワーク接続を使用して、前記データ接続が確立される、付記1から6のいずれかに記載の方法。
(付記8)
前記データ接続に対して、前記構成可変アンテナは無指向性モードで動作する、付記7に記載の方法。
(付記9)
前記データ接続は、前記ワイヤレスネットワーク接続とは異なる手段で確立される、付記1から6のいずれかに記載の方法。
(付記10)
構成可変アンテナを有し、付記1に記載の方法を実行するように装備されかつ構成されたネットワークデバイス(209)。
(付記11)
ワイヤレスネットワーク接続を最適化するシステムであって、第1のネットワークデバイス(101)と構成可変アンテナを有する第2のネットワークデバイス(209)とを備え、前記第1のネットワークデバイス(101)は、前記第2のネットワークデバイス(209)とのデータ接続を確立して、前記データ接続を介して前記第2のネットワークデバイス(209)に、前記第1のネットワークデバイス(101)が、ワイヤレスネットワークを使用して、データを受信することができる全ての第3のネットワークデバイス(210)の識別を有する第1のデバイスシーンリストを送信するように装備されかつ構成され、前記第2のネットワークデバイス(209)は、付記1に記載の方法を実行するように装備されかつ構成された、前記システム。


図1
図2