(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285963
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】昇華(PVT)により成長させたSiC結晶での転位を減少させる方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/36 20060101AFI20180215BHJP
C30B 23/06 20060101ALI20180215BHJP
C30B 33/00 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
C30B29/36 A
C30B23/06
C30B33/00
【請求項の数】19
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-556941(P2015-556941)
(86)(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公表番号】特表2016-507462(P2016-507462A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】US2013077189
(87)【国際公開番号】WO2014123634
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2015年10月22日
【審判番号】不服2016-14649(P2016-14649/J1)
【審判請求日】2016年9月30日
(31)【優先権主張番号】61/761,165
(32)【優先日】2013年2月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/937,149
(32)【優先日】2013年7月8日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ コーニング コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マーク ロボダ
【合議体】
【審判長】
新居田 知生
【審判官】
宮澤 尚之
【審判官】
瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−510946(JP,A)
【文献】
特表2008−522943(JP,A)
【文献】
特開2010−095397(JP,A)
【文献】
特開2008−311541(JP,A)
【文献】
特開2006−143511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B23/00
C30B29/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiC結晶インゴットであって、
種結晶と、
該種結晶に接触して形成された複数の堆積ドープ層であって、それぞれの堆積ドープ層がすぐ下の層又はすぐ上の層と異なる平均ドーパント濃度を有する複数の堆積ドープ層と、
該複数の堆積ドープ層の上に接触して堆積した、5mm〜50mmの厚さを有し、ウェハにスライスされるよう構成されたバルク層と、
を含み、
前記バルク層は1×1015/cm3〜1×1019/cm3のドーパント濃度を有し
、
前記複数の堆積ドープ層は、
該種結晶に接触して形成された、0.1μm〜1,000μmの厚さを有する第一ドープ層であって、該単結晶種のドーパント濃度と同等又は最高10倍まで高い第一ドーパント濃度を有する第一ドープ層と、
該第一ドープ層に接触して形成された、0.1μm〜1,000μmの厚さを有する第二ドープ層であって、前記第一ドーパント濃度未満の第二ドーパント濃度を有する第二ドープ層と、
該第二ドープ層に接触して形成された、0.1μm〜1,000μmの厚さを有する第三ドープ層であって、前記第二ドーパント濃度を超える第三ドーパント濃度を有する第三ドープ層と、を有し、
第二ドープ層が第三ドープ層の上に成長し、第三ドープ層が第二ドープ層の上に成長するように、前記複数の堆積ドープ層は、第二ドープ層と第三ドープ層の交互のドープ層をさらに含み、
前記種結晶、前記複数の堆積ドープ層及び前記バルク層が一体にSiC単結晶インゴットを形成する、
SiC結晶インゴット。
【請求項2】
前記ドーパントが窒素を含む、請求項1に記載のSiC結晶インゴット。
【請求項3】
前記ドーパントがホウ素(B)、リン(P)及びアルミニウム(Al)のうちの1つを含む、請求項1に記載のSiC結晶インゴット。
【請求項4】
前記第一ドープ層が、100μm〜1,000μmの厚さを有する、請求項1に記載のSiC結晶インゴット。
【請求項5】
前記第一ドープ層が、該種結晶の平均ドーパント濃度よりも高い第一平均ドーパント濃度を有する、請求項1に記載のSiC結晶インゴット。
【請求項6】
前記第三ドープ層が、該種結晶での濃度を超えないドーパント濃度を有する、請求項1に記載のSiC結晶インゴット。
【請求項7】
前記第二ドープ層が0.1μm〜1,000μmの厚さを有し、第二ドープ層が該種結晶の窒素濃度未満の平均窒素濃度を有する、請求項1に記載のSiC結晶インゴット。
【請求項8】
前記第三ドープ層が前記第一ドープ層を超えかつ該種結晶の平均窒素濃度の0.9〜100倍以下の平均窒素濃度を有する、請求項6に記載のSiC結晶インゴット。
【請求項9】
前記バルク堆積層が、4H−SiC基板上でなされた少なくとも9つの測定から決定される、1/cm2未満の平均マイクロパイプ密度を有し、5,000/cm2未満のらせん転位密度を有し、5,000/cm2未満の基底面転位密度を有する、請求項1に記載のSiC結晶インゴット。
【請求項10】
前記種結晶が(11−20)に向かって0〜4度のオフカットを有する4H−SiC結晶であり、前記種結晶の平均窒素濃度が1×1016/cm3〜8×1018/cm3である、請求項1に記載のSiC結晶インゴット。
【請求項11】
SiC結晶インゴットであって、
種結晶と、
該種結晶に接触して形成された複数の堆積ドープ層であって、それぞれの堆積ドープ層がすぐ下の層又はすぐ上の層と異なる平均窒素濃度を有する複数の堆積ドープ層と、
該複数の堆積ドープ層に接触して堆積した、5mm〜50mm厚さを有し、ウェハにスライスされるよう構成されたバルク層と、
を含み、
前記バルク層は1×1015/cm3〜1×1019/cm3の窒素濃度を有し、
前記複数の堆積ドープ層は、
該種結晶に接触して、0.1μm〜1,000μmの厚さを有する第一堆積層であって、該種結晶中と同等以上の窒素濃度である第一堆積層と、
該第一堆積層に接触して、0.1μm〜1,000μmの厚さを有する第二堆積層であって、前記第一堆積層より低い窒素濃度を有する第二堆積層と、
該第二堆積層に接触して、0.1μm〜1,000μmの厚さを有する第三堆積層であって、前記第二堆積層より高い窒素濃度を有する第三堆積層と、を含み、
前記種結晶、前記複数の堆積ドープ層及び前記バルク層が一体にSiC単結晶インゴットを形成する、
SiC結晶インゴット。
【請求項12】
前記第三堆積層が該種結晶中の窒素濃度を超えない窒素濃度を有する、請求項11に記載のSiC結晶インゴット。
【請求項13】
前記複数の堆積ドープ層が、複数回繰り返された第二堆積層と第三堆積層とを有する重層を含む、請求項11に記載のSiC結晶インゴット。
【請求項14】
前記第三堆積層が第一堆積層を超えかつ該種結晶の平均窒素濃度の0.9〜100倍以下の平均窒素濃度を有する、請求項11に記載のSiC結晶インゴット。
【請求項15】
前記バルク堆積層が、4H−SiC基板上でなされた少なくとも9つの測定から決定される、1/cm2未満の平均マイクロパイプ密度を有し、5,000/cm2未満のらせん転位密度を有し、5,000/cm2未満の基底面転位密度を有する、請求項11に記載のSiC結晶インゴット。
【請求項16】
前記種結晶が(11−20)に向かって0〜4度のオフカットを有する4H−SiC結晶であり、前記種結晶の平均窒素濃度が1×1016/cm3〜8×1018/cm3である、請求項11に記載のSiC結晶インゴット。
【請求項17】
前記種結晶が76mm以上の直径を有する、請求項1に記載のSiC結晶インゴット。
【請求項18】
前記種結晶が150mm以上の直径を有する、請求項1に記載のSiC結晶インゴット。
【請求項19】
前記種結晶が76mm以上で150mm以下の直径を有する、請求項1に記載のSiC結晶インゴット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2013年7月8日出願の米国特許出願番号第13/937,149号及び2013年2月5日出願の米国仮特許出願番号第61/761,165号の優先権利益を主張する。
(発明の分野)
【0002】
開示される本発明は炭化ケイ素(SiC)結晶及びウェハの製造に関する。
【背景技術】
【0003】
炭化ケイ素(SiC)は、結晶性半導体材料であり、材料科学、電子工学及び物理学に精通した者には、その広いバンドギャップ特性、更にまた、超高硬度、高熱伝導性及び化学的不活性といった特性に関して有利であると認識されている。これらの特性は、SiCを、パワー半導体素子の作製にとって非常に魅力的な半導体としており、ケイ素のようなより一般的な材料から生産された素子に勝るパワー密度及び性能強化が可能となる。
【0004】
最も一般的なSiCの形態は、原子の立方晶配列又は六方晶配列からなる。Si層とC層の積層は、ポリタイプとして知られる、多くの形態をとり得る。炭化ケイ素結晶の種類は、積層シーケンスにおける繰り返し単位の数を示す数字と、それに続く結晶様式を表す文字によって示される。例えば、3C−SiCポリタイプとは、繰り返し単位が3で、かつ立方(C)格子であることを指し、4H−SiCポリタイプとは、繰り返し単位が4で、かつ六方(H)格子であることを指す。
【0005】
炭化ケイ素ポリタイプが異なると、材料特性(最も顕著には電気特性)において多少のバリエーションが生じる。4H−SiCポリタイプが比較的広いバンドギャップを有する一方で、3C−SiCはより狭いバンドギャップを有し、他のほとんどのポリタイプのバンドギャップは、これらの間に収まる。高性能パワー装置用途に関して、バンドギャップがより広い場合、理論上、材料は相対的により高いパワー性能及び熱伝導性能を提供することができる。
【0006】
SiC結晶は、天然には産生されず、それ自体は合成されなければならない。SiC結晶の成長は、昇華又は化学蒸着によって行うことができる。
【0007】
昇華(物理気相輸送法−PVTともいわれる)によるSiCの成長は非常に挑戦的なことである。昇華によるSi/C化学種の蒸気流を生成するには2,000℃を超える温度が必要であり、このことが反応セルの構成部品及び炉の設計に大きな制限を課す。元来は、アチソン法のような方法により形成されたSiC研磨材が、結晶用にSi原子源及びC原子源として使用されていたが、技術が成熟し、複数のグループが特にSiC結晶成長用のSiC原料粉末を合成する方法を開発した。成長は、一般に真空チャンバ内のグラファイト容器の中で行われる。このグラファイト容器は抵抗法又は誘導法のいずれかにより加熱される。容器は、容積内に制御された温度勾配を生じるように綿密な方法で断熱される。通常板状又はディスク状の形状である、種結晶が使用される。典型的には、種結晶はその成長面が原料物質に対向するように置かれる。容器内での種結晶の位置は、容器が加熱されたとき、種が相対的により低い温度位置にあり、一方でSi−C原料物質はより高い温度位置にあるように設計される。容器が原料物質を昇華させるのに十分な温度まで加熱されたとき、この蒸気は、低温領域へ向かって移動し、種結晶上で凝結する。概念としては単純と思われるものの、実際にはSiCの成長は非常に複雑であり、実務者には、実行が非常に困難なものとして認識されている。
【0008】
歴史的には、SiCの昇華に基づいた結晶成長における初期の発展は、Lely(米国特許第2,854,364号)によって最初に記述され、彼の、種を使用しない結晶成長法は小さな六方晶SiCの板状晶をもたらした。1970年代及び1980年代では、生産装置にとって魅力的なサイズの最初の結晶を生産する技術が、ロシアにて、Tairov及びTsvetkovによって生み出された(Journal of Crystal Growth,52(1981)p.146〜50及びProgress in Controlling the Growth of Polytypic Crystals in Crystal Growth and Characterization of Polytype Structures,P.Krishna,ed.,Pergammon Press,London,p.111(1983))。彼らの手法は、Lelyの結晶を種として使用し、上述したような昇華及び輸送によって成長させた。これらの成果は、種の選択、圧力調整及び温度勾配によるポリタイプ制御法を示した。その後、Davis(米国特許第4,866,005号)は、原料物質の賢明な選択及び勾配制御による改善を発表した。Tairov、Tsvetkov、及びDavisの方法についての改良が、今日に至るまで継続して発表されている。
【0009】
より大きな結晶を生産する方法が出現すると、結晶中の欠陥を制御することにもまた焦点が移った。欠陥は、インクルージョン及び結晶転位として分類することができる。SiC結晶における主要な結晶欠陥は、らせん転位である。らせん転位の中でも、マイクロパイプ又は中空コアらせん転位として知られる、特別なケースがある。加えて、基底面転位及び貫通刃状転位がある。これらの欠陥は、多くの原料源に由来するものである。例えば、種結晶内に包含されていた欠陥が新成長結晶容積へと移行する場合がある。温度勾配及び熱膨張の不一致から生じ、種及び成長中の結晶にかかる応力が、転位の形成をもたらす場合がある。昇華での蒸気流がSiCを形成するために必要な蒸気流から化学量論的に逸脱していると、不安定なポリタイプの成長をもたらすことがあり、ひいては、成長結晶中におけるポリタイプのインクルージョンにつながり、これにより、ポリタイプの境界において転位の形成が引き起こされる。転位間の相互作用でさえ、転位を生み出したり、又は消滅させたりする場合がある。
【0010】
確認されている方法によって生産されたSiC結晶は、転位濃度が大きい。本出願の時点で一般的に報告されている、らせん転位及び基底面濃度の値は、名目上それぞれ5,000〜10,000/cm
2である。転位は、結晶の対称軸に対して垂直な平面で、結晶を薄片化することによって最も一般的に調べられる。350〜500℃の範囲の温度で、水酸化カリウムなどの溶融塩で、露出した結晶表面をエッチングすることで、転位が明らかになる。それぞれの種類の転位は、特有の形状を有しているため、区別して数えることができる。一般的に、転位は数えられて、検査面積で割った数として報告される。この評価法は、結晶平面上に形成された平面半導体素子に包含される欠陥の相関を容易にするので、有用である。文献に、転位が観測平面に均一に分布していないことを示す多くの例がある。特に、今日の検査が100mm径円以上の区画に求められる場合があるので、転位の数の多さが全ての転位の1つ1つ数えることを極めて非現実的にしている。それで、エッチングされたエリアが、転位の量を測定するためにサンプリングされる。不正確なサンプリング法は、より大きな結晶に関連する転位濃度の推定に誤差をもたらす場合がある。ほとんどの報告において、サンプリング法の詳細が提供されておらず、報告された結果の再現は、不可能でないとしても、大抵は困難である場合が多い。
【0011】
固体物理学及び半導体素子の分野で経験を有する科学者たちは、転位が材料の理論上の特性を下回る素子性能をもたらすことと知っている。それ故、近年の、半導体SiC結晶の品質改善に焦点を合わせた取組みは、結晶成長に由来する欠陥を減少させることができる因子を特定し、制御することを目指している。
【0012】
一旦十分に大きい結晶が生産されると、平面的な作製方法を使用して半導体素子を作製するに有用とするため、結晶は切断されてウェハに加工されなければならない。多くの半導体結晶(例えば、ケイ素、ヒ化ガリウムなど)の開発及びウェハ製品への商品化に成功しているため、バルク結晶からウェハを作製する方法は公知である。ウェハ作製への一般的な手法及びウェハ作製についての要件、並びに標準的な評価方法の考察は、Wolf and Tauber,Silicon Processing for the VLSI Era,Vol.1−Process Technology,Chapter 1(Lattice Press−1986)に見出すことができる。
【0013】
その硬度のために、SiCをウェハ基板に作製するには、ケイ素又はヒ化ガリウムのような他の一般的な半導体結晶の加工と比較して、特有の課題を提示する。機械に改良を加えなければならず、かつ研磨剤の選択は一般的に使用される材料の範疇を超えて変更されなければならない。実質的な表面下の損傷は、鏡面研磨したSiCウェハ上で観察可能であり、この表面下の損傷は、シリコン産業で使用されているものに類似した、化学的に増強した機械的研磨法を使用することにより、減少又は除去されることができると報告されている(Zhou,L.,et al.,Chemomechanical Polishing of Silicon Carbide,J.Electrochem.Soc.,Vol.144,no.6,June 1997,pp.L161〜L163)。
【0014】
SiCウェハ上に半導体素子を構築するためには、更なる結晶性SiC膜が、必要な導電性値及び導体の種類を有する素子活性領域を生み出すためウェハ上に堆積されなければならない。典型的には、この作業は、化学蒸着(CVD)法を使用して行われる。1970年代より、CVDエピタキシーによるSiCの成長のための技術が、ロシア、日本及び米国のグループから発表されてきた。CVDによるSiCの成長に関する、最も一般的なケミストリーは、ケイ素含有原料ガス(例えば、モノシラン類又はクロロシラン類など)と、炭素含有原料ガス(例えば、炭化水素ガスなど)との混合物である。欠陥の少ないエピタキシャル層の成長の鍵となる要素は、結晶の対称軸から遠ざかるように基板表面を傾斜させて、基板の結晶によって確立された積層順における表面に化学原子を付着させることを可能にすることである。この傾斜が適切でないときは、CVD法は表面に三次元的な欠陥を生じ、そのような欠陥は非稼働半導体素子をもたらす。表面の欠陥(クラック、表面下の損傷、ピット、粒子、傷又は汚染など)は、CVD法によるウェハの結晶構造の再現実験を妨げる(例えば、Powell and Larkin,Phys.Stat.Sol.(b)202,529(1997)を参照されたい)。ウェハを作製するのに使用される研磨及び洗浄工程が表面欠陥を最小化することが重要である。これらの表面欠陥の存在下では、基底面転位及び立方体型のSiCインクルージョンなどを含むいくつかの欠陥が、エピタキシャル膜に発生する場合がある(例えば、Powell,et.al.Transactions Third International High−Temperature Electronics Conference,Volume 1,pp.II−3〜II−8,Sandia National Laboratories,Albuquerque,NM USA,9〜14 June 1996を参照されたい)。
【0015】
SiCにおける欠陥が、その欠陥の上に形成された半導体素子の動作を制限するか、又は破壊することが知られている。Neudeck及びPowellは、中空コアらせん転位(マイクロパイプ)が、SiCダイオードの電圧阻止性能を大きく制限することを報告している(P.G.Neudeck and J.A.Powell,IEEE Electron Device Letters,vol.15,no.2,pp.63〜65(1994))。1994年、Neudeckは、パワー装置における、結晶(ウェハ)及びエピタキシー由来の欠陥の影響について考察し、らせん転位及び形態的なエピタキシー欠陥に起因するパワー装置の機能の制限に焦点を当てた(Neudeck,Mat.Sci.Forum,Vols 338〜342,pp.1161〜1166(2000))。Hullは、ダイオードがより低いらせん転位密度を有する基板上に作製されたとき、高電圧ダイオード逆バイアス漏れ電流の分布でより低い値へのシフトについて報告した(Hull,et.al.,Mat.Sci.Forum,Vol.600〜603,p.931〜934(2009))。Lendenmannは、バイポーラダイオードにおける順電圧劣化は、基板での基底面転位に由来した、エピ層における基底面転位と関連していると報告した(Lendenmann et.al.,Mat.Sci.Forum,Vols.338〜342,pp.1161〜1166(2000))。
【0016】
4H−SiC結晶成長についての近年の技術は、転位の種類全般に渡り同時制御を可能にする結晶成長法の大量生産法を開発することに成功していない。先行技術において開示された様々な方法は、結晶成長に使用される具体的工程に関して、又は欠陥濃度の評価及び再現性を示すのに使用される方法に関して、大抵詳細に欠けている。現在のところ、76mmを超える直径を有し、マイクロパイプ、らせん転位及び基底面転位の低い値を有するSiC結晶を生産する方法は開示されていない。
【発明の概要】
【0017】
以下の本発明の概要は、本発明のいくつかの態様及び特徴の基本的な理解を提供するために記載される。この概要は、本発明の広範な全体像ではなく、それ自体は本発明の鍵となる要素若しくは重要な要素を具体的に特定したり、又は本発明の範囲を詳細に記述したりすることを意図していない。その概要の唯一の目的は、以下に提示するより詳細な説明への導入部として、簡潔な形式にて本発明のいくつかの概念を提示することである。
【0018】
本明細書で開示される実施形態が、昇華結晶成長でSiC結晶のマイクロパイプ、らせん転位及び基底面転位を減少させる方法を提供する。方法は、ドーピング濃度が各層で変化している、いくつかの層を形成する結晶成長の初期の段階を制御することを含む。各層について同じドーピング元素が使用される。転位はそれら層の接触面で変形され、最終的には側壁で結晶から分離するか又は抜け出るであろう。その結果は、出発種より少ないマイクロパイプ、らせん転位及び/又は基底面転位を有する結晶である。結晶から新しい種が取り入れられ、その後の成長に使用される。この工程が繰り返されて、結晶中の全転位を所望のレベルまで減少させる。
【0019】
4H−SiC結晶は、76mmくらいの小さい径又は最高150mmまでの及びそれを超える径の種を使用して成長させることができる。
【0020】
本発明の態様はSiC結晶を形成する方法を提供し、該方法は:グラファイト容器内にSiCの種結晶を配置する工程;断熱グラファイトで容器を包囲し、断熱グラファイト容器内にケイ素原子源及び炭素原子源を配置する(ケイ素原子源及び炭素原子源はSiC結晶の成長のため種結晶へ輸送される)工程;容器を炉に配置する工程;炉を約2,000℃〜約2,500℃の温度に加熱する工程;炉を約1.3kPa〜約13kPa(約10torr〜約100torr)の圧力に排気する工程;炉を不活性ガスで充填する工程;約0.1μm〜約1,000μmの厚さを有し、種結晶の窒素濃度の約0.9〜約10倍の第一窒素濃度を有する第一堆積層と、約0.1μm〜約1,000μmの厚さを有し、種結晶の窒素濃度未満の第二窒素濃度を有する第二堆積層と、約0.1μm〜約1,000μmの厚さを有し、第一窒素濃度を超えかつ種結晶の窒素濃度の約0.9〜約100倍以下の第三窒素濃度を有する第三堆積層と、0.013kPa〜13kPa(0.1torr〜100torr)の圧力範囲で、約0.1mm〜約50mmの厚さを有し、約1×10
15/cm
3〜1×10
19/cm
3の窒素濃度を有する最終堆積層を形成するように調整された流量で窒素ガスを炉内に導入する工程;を含む。
【0021】
他の態様は、結晶配向(11〜20)に向かって0〜4度のオフカットを有する4H−SiC結晶であり、種結晶の窒素濃度が約1×10
16/cm
3〜約8×10
18/cm
3である、種結晶を提供する。
【0022】
更なる態様は、約1/cm
2未満の平均マイクロパイプ密度を有する4H−SiC基板を提供し、ここにおいて4H−SiC基板は約5,000/cm
2未満のらせん転位密度を有し、4H−SiC基板はこの4H−SiC基板上でなされた少なくとも9つの測定から決定される約5,000/cm
2未満の基底面転位密度を有する。全ての指標は同時に達成された。
【0023】
また更なる態様はSiC結晶を提供し、SiC結晶はSiCのバルク結晶から形成された種結晶と、種結晶の上に接触して形成された、約0.1μm〜約1,000μmの厚さを有し、種結晶の窒素濃度の約0.9〜約10倍の第一窒素濃度を有する第一堆積層と、第一堆積層の上に接触して形成された、約0.1μm〜約1,000μmの厚さを有し、種結晶の窒素濃度未満の第二窒素濃度を有する第二堆積層と、第二堆積層の上に接触して形成された、約0.1μm〜約1,000μmの厚さを有し、第一窒素濃度を超えかつ種結晶の窒素濃度の約0.9〜約100倍以下の第三窒素濃度を有する第三堆積層と、約0.1mm〜約50mmの厚さを有し、1×10
15/cm
3〜約1×10
19/cm
3のバルク窒素濃度を有するバルク堆積層と、を含む。
【0024】
別の態様はSiC結晶を形成するシステムを提供し、システムは:種結晶及びSiC結晶の成長のため種結晶へ輸送されるSi原子源とC原子源を支持するように構成されたグラファイト容器と;炉を約2,000℃〜約2,500℃の温度に加熱する加熱器と;炉を約0.013kPa〜約13kPa(約0.1torr〜約100torr)の圧力に排気する手段と;不活性ガスで炉を充填するガス供給システムと;コントローラーであって、約0.1μm〜約1,000μmの厚さを有し、種結晶の窒素濃度の約0.9〜約10倍の第一窒素濃度を有する第一堆積層を形成し、約0.1μm〜約1,000μmの厚さを有し、種結晶の窒素濃度未満の第二窒素濃度を有する第二堆積層を形成し、約0.1μm〜約1,000μmの厚さを有し、第一窒素濃度を超えかつ種結晶の窒素濃度の約0.9〜約100倍以下の第三窒素濃度を有する第三堆積層を形成し、約0.1mm〜約50mmの厚さを有し、約1×10
15/cm
3〜約1×10
19/cm
3の窒素濃度を有するバルク堆積層を形成するように設定された変流量で、窒素ガスを炉内に導入することを予めプログラムされているコントローラーと;を含む。
【0025】
更なる態様は、区別可能な窒素濃度の重層を有するSiC結晶を提供し、SiC結晶は、種結晶と:複数の重層であって、それぞれの層がすぐ下の層及びすぐ上の層と異なる区別可能な窒素濃度を有する複数の重層と;約1×10
15/cm
3〜約1×10
19/cm
3の窒素濃度を有するバルク層とを含む。
【0026】
更なる態様は、SiC種結晶を気相輸送炉内に配置し、ケイ素原子源及び炭素原子源を気相輸送炉内に配置する工程;種結晶に向けて原料源からSi原子及びC原子の気相輸送を引き起こすために炉を操作する工程;気相輸送炉内への窒素流を変化させて、それにより種結晶上にSiC重層の成長を形成(SiC重層は、それぞれの層がすぐ下の層及びすぐ上の層と異なる、異なる窒素濃度を有するように層状化されている)する工程を含む、転位の数が少ないSiC結晶を形成する方法を提供する。
【0027】
本発明の別の態様及び特徴は、以下の図を参照して記載される詳細な記述から明らかなことになる。詳細な記述及び図は、添付の特許請求の範囲により定義される、本発明の様々の実施形態の様々な限定されない例を提供することと認識されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本明細書に組み込まれ、かつその一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を例示するものであり、記述とともに、本発明の原理を説明し、例示する役割を果たすものである。これらの図面は、図表の方式で例示的な実施形態の主要な特徴を示すことを意図したものである。これらの図面は、実際の実施形態の全ての特徴も、示された要素の相対的な寸法も描写することを意図されておらず、また一定の縮尺で描かれていない。
【0029】
【
図1】1つの実施形態による方法を説明するフローチャートである。
【
図2】物理気相輸送法によるSiC結晶の成長装置を示し、装置は窒素源のバルブ、アルゴン源のバルブ、真空ライン及び加熱器を制御するコントローラーを含む。
【
図3】本発明の実施形態による成長を有する種を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下は本発明の実施形態による作製方法の実例を提供し、それは比較的大きな径の基板をもたらし、その上低いマイクロパイプ密度、らせん転位密度及び基底面転位密度を示す。下記の実例は窒素をドナードーパントとして使用することに関するが、同様の方法はアクセプタドーパント、例えばホウ素(B)、リン(P)及びアルミニウム(Al)などを使用して実行され得る。
【0031】
ここで留意すべきは、ここでの議論はPVTにより成長したバルク結晶中に形成される転位に関することであり、エピタキシャルCVDにより結晶ウェハの上に後で形成される薄膜層ではないことである。PVTによるバルクの成長は三次元プロセスである島で起こるが、SiC上のエピタキシャルCVD成長は二次元の、ステップフロー成長工程である。また、PVT法の反応物質は金属蒸気であり、一方で、エピタキシャルCVDでは反応物質は水素化物又は塩化物である。PVTとCVDとの違いによって、エピタキシャルCVDのマイクロパイプの閉鎖は開放コアの過形成により促進され、CVD法は1cらせん転位(閉鎖コア)の濃度を減少させることができない。PVTでは、転位減少は、結晶の成長につれて結晶内の応力分布をコントロールすることにより主として対応される。
【0032】
以下の実施形態によれば、プロセスは、一般に成長結晶と同じくらいの直径の円形ウェハの形状である、SiC種から始まる。種結晶は磨かれ、及び/又は炭素面にエッチングされて、表面に機械的損傷がないことを確実にする。種結晶は、成長温度で安定である物質で成長面の反対側にコーティングされてもよい。保護がないと種中に空隙(「熱蒸発空洞」)が形成される場合があるので、保護炭素コーティングの存在は、結晶成長工程中に種の劣化を抑えるのに役立ち得る。SiC種は種層を形成し、この上に、以下に記述するように更なる複数の層が成長する。
【0033】
次に、円筒形のグラファイト反応セルはSi蒸気とC蒸気のための固形原料源で底に充填される。原料源はSiC粉末でもSi粒と炭素粉末との混合物でもよい。SiCの種結晶はグラファイト反応セルの最上部に配置される。グラファイト容器はぴったり合ったねじ蓋で閉じられる。容器は断熱グラファイトフェルト又はフォームで包囲され、その装置は粉末よりも僅かに低い温度で種を保持するように設計されている。容器は誘導炉内に配置される。炉は排気され、アルゴンのような非酸化性気体で充填(バックフィル)される。圧力は大気圧近く(67〜93kPa(500〜700torr))に設定され、容器はおよそ1,600〜2,500℃に加熱される。
【0034】
圧力はその後下げられ、気相輸送プロセスを開始する。この方法では、圧力は最初に1.3〜13kPa(10〜100torr)の範囲に下げられる。ドーピングガス、この実施例では窒素ガスが炉に加えられる。
【0035】
種結晶上の第一堆積物の物質は、種中の窒素濃度に同程度か、最も有利にはより高い平均窒素濃度を有する層をもたらす。具体的には、窒素濃度が、種の窒素濃度と平均して同等か、又はそれより高い、また最高10倍まで高いならば、改善された結果が得られることができる。この第一層は厚さ1〜1,000ミクロン(μm)でもよい。第一層に種より高い窒素濃度を有することは、転位を減少させるメカニズムの一部である。第一層で種よりも窒素が少ないと、より多くの転位が形成されることになると実験は示している。第一層は核形成層であり、それは未加工の種表面上に成長するので、次の複数の層と異なる役割を担うことは注目される。このように、第一層の窒素濃度を調整することはマイクロパイプの核形成を減少させることに関連している。他方では、次の複数の層中の窒素濃度を調整することは、以下に述べるように応力をコントロールすることに関連している。
【0036】
窒素流はその後第二層中の窒素濃度を調整するために一定量減少させられる。つまり、窒素流は、第二層が第一より低い窒素濃度で形成されるように調整される。この第二層は厚さ1〜1,000ミクロン(μm)でもよい。
【0037】
窒素流はその後第三層中の窒素濃度を調整するために一定量増加される。つまり、窒素流は、第三層が第二層よりも高いが種結晶中の濃度を超えない窒素濃度で形成されるように調整される。窒素濃度は、成長中の結晶内応力をコントロールするために第三層で増加される。具体的には、複数の層が低ドーピングと高ドーピングを切り替えるので、界面変化での応力は特質で、低ドープ層が高ドープ層の上に成長したとき、その層内応力は圧縮であり、高ドープ層が低ドープ層の上に成長したとき、その層内応力は引張である。更に、第一層内のドーピング目標が少し外れても、第三層内への適切なドーピングで正常な状態に戻され得る。
【0038】
層二及び層三に関しての工程は、転位を消滅させるのに必要な回数繰り返されてもよい。圧力及び温度は、転位の最適な減少を達成するために必要に応じて、各層で変化させることができる。
【0039】
転位減少層複数が堆積されると、最終層が、種層の値に近い窒素濃度で形成されることになる。
【0040】
この時点で、圧力、温度及び窒素流は、結晶の残り部分を形成するのに必要な条件に変更される。成長した結晶の残りの厚さは5〜50mmの範囲で、バルク層が形成され、後にウェハにスライスされ、スライスは素子作製に使用されるかそれとも研磨され別の成長の種として使用され得る。圧力の典型的な値は0.013〜1.33kPa(0.1torr〜10.0torr)の範囲に、温度は2,000〜2,500℃の範囲である。
【0041】
成長工程の終わりに、圧力はおよそ80kPa(600torr)に上げられる。これはそれ以上の気相輸送を抑制する。炉はその後室温に冷却される。容器が開けられると、種結晶と同じポリタイプのSiC単結晶が種結晶上に形成されていた。
【0042】
新しい種が、この方法により成長させた結晶から作り出され、新たな結晶を作製するために使用され得る。成長した結晶の各世代が転位密度の減少を示すと理解される。
【0043】
上述の実施形態の特徴は、窒素重層構造を有する結晶を提供し、よって方法は大型(直径>76mm、長さ>25mm)結晶を成長させる任意の戦略に組み込まれることができる。それぞれ得られた結晶はスライスされ、それぞれに続く成長がより少ない転位を示し、所望の転位密度に達するまで再度スライスされより良い種を生産するように、工程を繰り返すためのいくつかの種を提供することができる。
【0044】
結晶中の転位を評価するため、結晶はスライスされ、全てのスライスが研磨される。マイクロパイプは、最初に溶融塩エッチングでマイクロパイプを明らかにして、手作業及び自動化法にて数えるか、又はレーザー光散乱分光計及び画像処理アルゴリズムで研磨されたスライスを走査してマイクロパイプを数えることにより検査され得る。例えばこれなどの方法は、J.Wan,et.al.,「A New Method of Mapping and Counting Micropipes in SiC Wafers」Proc.2005 Int’l Conf.On SiC and Related Materials,Materials Science Forum(2006),p.447、及びJ.Wan,et.al.,「A Comparative Study of Micropipe Docoration and Counting in Conductive and Semi−Insulating Silicon Carbide Wafers,」J.Electronic Materials,Vol.34(10),p.1342に記述されている。欠陥の全数が数えられると、この値は測定したスライスの面積で割られ、単位面積当たりの数にして欠陥密度を導き出す。
【0045】
らせん転位及び基底面転位は、上述された溶融塩エッチング又はX線トポグラフィーを必要とする。計数は、一般にスライス上のいくつかのエリアをサンプリングし、欠陥を数えることにより行われる。欠陥を報告するために典型的に使用される方法は、ウェハの中心、ウェハ半径の50%で90度離れた4箇所、及びウェハ半径の>80%で90度離れ、半径50%での箇所に対し45度回転した4箇所での測定を含む。各箇所での数が合計され、その後合計は測定面積で割られ、単位面積当たりの数にして欠陥密度を導き出す。より大きいウェハのサンプリング法はウェハを評価するのに重要であるので、測定箇所の数値も欠陥の正味数も報告することが多くの場合妥当である。
【0046】
図1は1つの実施形態による方法を説明するフローチャートである。方法は以下の工程の1つ以上を含むことができ、工程100はSiC種とストックを反応器内に配置することにより始まる。反応器は、真空排気されかつ反応温度に加熱される真空炉内に配置される。工程105で、最初のドーパント流、ここでは窒素(N
2)流が設定され、工程110で第一層が最初の窒素流を使用して形成される。工程155で、N
2流は変化させられ、成長は続き、変更された窒素流から得られる窒素濃度を有する別の層を形成する。この例では、変更された窒素流はより低い窒素濃度を第二層にもたらすように設定される。窒素流の変動及び後続層の成長はN回繰り返されてもよい。その後、工程120で、最終のN
2流が設定され、次に125でプロセスは結晶のバルクを成長させる。この実例では、成長は様々な窒素流設定間で止められない。
【0047】
図2は、1つの実施形態にしたがっての物理気相輸送法によるSiC結晶の成長装置を示す。蓋43を有するPVT反応セル40が例示され、それはSiC結晶成長用に構成されている。反応セルは好ましくはグラファイト器から形成される。粒状化SiC、又は粉砕されたシリコンと炭素粉末との混合物42がセルの底に配置される。セルの最上部の内側に備え付けられた種結晶48は器の上部の位置に置かれる。器全体がグラファイトフェルト又はフォームなどの断熱材54で包囲されている。反応セル40は真空炉70内に配置される。真空炉70はセルが抵抗加熱されるなら鋼鉄製であってよく、又はセルが誘導加熱されるならガラス製であってもよい。示された実施形態では、真空炉はガラス製であり、RF誘導コイル72によって加熱される。
【0048】
SiC結晶の成長装置は、真空炉70に接続されている窒素源84のバルブ82を制御し、これもまた真空炉70に接続されているアルゴン源88のバルブ86を制御する、コントローラー80を含むことができる。真空炉70内部の真空は真空ポンプ92につながっているバルブ90により制御される。この実施形態では、コントローラー80は、真空炉へのアルゴン及び/又は窒素流にかかわらず、炉70内部のユーザー設定の真空レベルを保持するため真空バルブ90及びポンプ92を制御するように構成されている。例えば、チャンバ内への窒素流が増加されると、コントローラー80は真空バルブ90を開いて炉から真空排気を増し設定された真空レベルを保持する。コントローラー80はまた、RF誘導コイル72に印加する電力など加熱器の動作を制御する。
【0049】
セル40に原料物質42と種48が装填されると、セルは閉じられ、RF誘導炉70内に配置される。炉はポンプ92を使用して排気され、それにより炉70の内部とセル40の内部との間で圧力差を作り出す。しかし、セル40は、蓋がセルを完全に密閉しないように構築されており、それでセル40内部から気体が炉70に漏出し、排出される。同じようにセル40の壁は気体に対しやや多孔質であり、炉70内部に漏出させる。その結果として、ポンプ92のポンプ作用は、セル40内部と炉70内部との間の圧力差を作り出すことにより、セル40内部もまた排気する。
【0050】
セル40及び炉70の内部が排気されたら、炉70の内部はアルゴン源88からのアルゴンなどの非酸化性気体で充填(バックフィル)される。圧力は真空バルブ90を制御して大気圧近く(67〜93kPa(500〜700torr))に設定され、容器はコイル72に通電することによりおよそ1,600〜2,500℃に加熱される。
【0051】
圧力はその後下げられ、気相輸送プロセスを開始する。この方法では、圧力は最初に1.3〜13kPa(10〜100torr)の範囲に下げられる。窒素ガスがその後、成長結晶の伝導度を制御するために、炉に加えられるが、窒素流にかかわらず、コントローラーは圧力を設定値、すなわち1.3〜13kPa(10〜100torr)の範囲に保持する。この段階で、圧力、温度及び窒素流が、種結晶の窒素濃度の約0.9〜約10倍の窒素濃度を有する、SiCの第一層を形成するに必要とする条件を達成するために調整される。所定の成長期間後、窒素流は、結晶成長を継続し、約0.1μm〜約1,000μmの厚さを有する第二堆積層を形成するために変更され、ここで第二堆積層は種結晶の窒素濃度未満の第二窒素濃度を有する。第二層は第一層と同じ圧力か、又は異なる圧力で堆積させることができる。この層化工程は複数回繰り返すことができる。例えば、窒素流を再度変更して結晶成長を継続させ、約0.1μm〜約1,000μmの厚さを有する第三堆積層を形成することができ、ここで第三堆積層は第一窒素濃度を超えかつ種結晶の窒素濃度の約0.9〜約100倍以下の第三窒素濃度を有する。所望の重層が成長したら、圧力は0.013〜1.3kPa(0.1〜10torr)の範囲に下げられてもよく、窒素流は約0.1mm〜約50mmの厚さを有する最終堆積層を成長させるために調節され、ここで最終堆積層は約1×10
15/cm
3〜約1×10
19/cm
3の窒素濃度を有する。この層が種上にバルクSiC結晶成長を形成させる。成長した残りの結晶の厚さは5〜50mmの範囲内である。成長工程の終わりに、圧力はおよそ80kPa(600torr)に上げられる。これはそれ以上の気相輸送を抑制する。炉はその後室温に冷却される。容器が開けられると、種結晶と同じポリタイプのSiC単結晶が種結晶上に形成されていた。コントローラー80が自動的に成長工程を実行できるように、圧力、温度、アルゴン流と窒素流、成長時間などを含めた上記の成長工程がコントローラー80に予めプログラムされてもよい。
【0052】
図3は本発明の実施形態により生産された成長を有する種を説明する概略図である。重層310は、重層のそれぞれがすぐ下の層及びすぐ上の層と異なる区別可能な平均ドーパント濃度を有するように、種300の上に成長する。しかし、成長が反応セル内部でなされるので、ドーピング濃度の変化は工程変化とは対照的に漸次的に移行される。重層310は、欠陥が最小限にされるように所望される数の層を含む。重層の成長終了後、成長工程は続けて所望のドーピングレベルを有するバルクSiC結晶320を形成する。ここで留意すべきは、全ての重層及びバルクSiC結晶中のドーパントは同じということである。いくつかの実施形態では、バルクSiC結晶320中のドーピングは種300中のドーピングと同じレベルである。
【0053】
はさみの絵図で示されるように、得られるインゴットは、バルクSiC結晶320が、通常廃棄される種300及び重層310から切り離されるように、切断される。実際には、絵図で示されるようにバルクSiC結晶320を切り離すのではなく、インゴットは単にSiCウェハにスライスされ、バルクSiC結晶320から切断されたウェハのみが使用される。また、新しい種は、この方法により成長した結晶をスライス、すなわちバルクSiC結晶320をスライスすることにより作り出され、新しい種は新しい結晶を成長させるために使用され得る。成長した結晶の各世代が転位密度の減少を示すと理解される。
【0054】
本明細書に記述したプロセス及び技術は、いずれかの特定の装置に本質的に関連するものではなく、構成要素の任意の好適な組み合わせによって実行されてもよいことが理解されるべきである。更に、様々な型の汎用装置が本明細書に記述した技術にしたがって使用され得る。本発明は、あらゆる点で限定的というよりはむしろ説明に役立つと意図された特定の例との関連で記述された。当業者は、多くの異なる組み合わせが本発明を実施するに適するであろうことを、理解されよう。
【0055】
更に、本発明の他の実行は、当業者にとって本明細書の考察及び本明細書に開示した発明の実施から明らかであろう。上述した実施形態の様々な態様及び/又は構成要素は、単独で又は任意の組み合わせで使用されてもよい。本明細書及び実例は単に例示的なものとみなされ、本発明の真の範囲及び趣旨は以下の特許請求の範囲によって示されることが意図されている。