特許第6285968号(P6285968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6285968(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2−カルボン酸のナトリウム塩およびその調製
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  • 特許6285968-(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2−カルボン酸のナトリウム塩およびその調製 図000022
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285968
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2−カルボン酸のナトリウム塩およびその調製
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/08 20060101AFI20180215BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180215BHJP
【FI】
   C07D471/08
   !C07B61/00 300
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-560789(P2015-560789)
(86)(22)【出願日】2013年10月10日
(65)【公表番号】特表2016-511269(P2016-511269A)
(43)【公表日】2016年4月14日
(86)【国際出願番号】IB2013059264
(87)【国際公開番号】WO2014135929
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2015年9月8日
(31)【優先権主張番号】699/MUM/2013
(32)【優先日】2013年3月8日
(33)【優先権主張国】IN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506224012
【氏名又は名称】ウォックハート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】デシュムク ヴィカス ヴィッサルラオ
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラ アミット チャンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ワニ ダッタトラヤ ヴィットホール
(72)【発明者】
【氏名】デシュパンデ プラサッド ケシャブ
(72)【発明者】
【氏名】バブサー サティシュ
(72)【発明者】
【氏名】イエオール ラヴィンドラ ダッタトラヤ
(72)【発明者】
【氏名】パテル マヘッシュ ヴィタルブハイ
【審査官】 阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/086241(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/172368(WO,A1)
【文献】 特表2004−505088(JP,A)
【文献】 特開2012−133486(JP,A)
【文献】 平山令明編著,有機化合物結晶作製ハンドブック−原理とノウハウ−,丸善株式会社,2008年 7月25日,p.17-23,37-40,45-51,57-65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)硫酸およびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムの存在下で式(II)の化合物を式(III)の化合物に還元することと、

(b)トリエチルアミン、トリホスゲンおよびN,Nジメチルアミノピリジンの存在下で式(III)の化合物を式(IV)の化合物に環化することと、
(c)LiOHおよびHClの存在下で式(IV)の化合物を式(V)の化合物に加水分解することと、
(d)2−エチルヘキサン酸ナトリウムの存在下で式(V)の化合物を式(I)の化合物に変換することと
を含む、式(I)の化合物を調製するプロセス。

【請求項2】
式(IV)の化合物の式(V)の化合物への加水分解が、約−15℃〜約−20℃の間の温度で行われる、請求項に記載のプロセス。
【請求項3】
式(III)の化合物をそのシュウ酸塩を調製することによって精製するステップをさらに含む、請求項に記載のプロセス。
【請求項4】
得られた式(I)の化合物が、HPLCによって決定される少なくとも98%の純度を有する、請求項からまでのいずれかに記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願
本出願は、2013年3月8日に出願されたインド特許出願第699/MUM/2013号の利益を主張するものであり、その開示は、本明細書において完全に書き換えられたかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書中で引用される特許、特許出願、および文献を含めたすべての参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本発明は、(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2−カルボン酸のナトリウム塩およびそれを調製するプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
化学的には(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2−カルボン酸として知られる式(V)の化合物は、PCT国際特許出願第PCT/FR01/02418号、同第PCT/US2009/031047号、同第PCT/IB2012/054290号および同第PCT/IB2012/054296号に開示されているものなどの、いくつかの抗菌性化合物の合成における中間体として使用することができる。
【化1】
【0004】
式(V)の化合物、すなわち、(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2−カルボン酸は、国際特許出願第PCT/FR01/02418号に開示されている。この化合物を調製しようとする試みにより、この化合物は本質的に不安定でシロップ状であり、貯蔵時に分解するということが示された。米国特許出願第20100197928号は、シュウ酸塩として(S)−5−ベンジルオキシアミノ−ピペリジン−2−カルボン酸ベンジルエステルのジアステレオマー混合物を50:50比で調製する手順を開示している。
式(V)の化合物はいくつかの抗菌剤の合成において重要な中間体であるため、これを安定な形態で存在させることが望まれていた。本発明者らは、この度驚くべきことに、(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2−カルボン酸のナトリウム塩(式(I)の化合物)を調製することができ、これは貯蔵時の安定性を含めたいくつかの有利な特性を有するということを発見した。
【化2】
【発明の概要】
【0005】
一般的な一態様では、式(I)の化合物が提供される。
【化3】
一般的な別の態様では、結晶形態の式(I)の化合物が提供される。
【0006】
一般的な別の態様では、
(a)硫酸およびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムの存在下で式(II)の化合物を式(III)の化合物に還元することと、
【化4】
(b)トリエチルアミン、トリホスゲンおよびN,Nジメチルアミノピリジンの存在下で式(III)の化合物を式(IV)の化合物に環化することと、
【0007】
【化5】
(c)LiOHおよびHClの存在下で式(IV)の化合物を式(V)の化合物に加水分解することと、
【化6】
(d)2−エチルヘキサン酸ナトリウムの存在下で式(V)の化合物を式(I)の化合物に変換することと
を含む、式(I)の化合物を調製するプロセスが提供される。
【0008】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細を、以下の記載中で述べる。本発明の他の特徴、目的および利点は、特許請求の範囲を含む以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】X線粉末回折パターン
【発明を実施するための形態】
【0010】
これより例示的な実施形態を参照するが、本明細書において、特定の文言がそれを記述するために使用される。それでも、これによって本発明の範囲を制限することが意図されていない点は理解するべきである。本明細書において例示される本発明の特徴の変更およびさらなる改変、ならびに、本明細書において例示される、当業者および本開示の所有権を有する者ならば想起すると考えられる本発明の原理のさらなる応用は、本発明の範囲内にあるとみなされるものとする。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈により明確に別段の指定がなされない限り、複数の指示物を包含することに留意しなければならない。本明細書中で引用される特許、特許出願、および文献を含めたすべての参考文献は、本明細書において完全に書き換えられたかのように、それらの全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0011】
一般的な一態様では、式(I)の化合物が提供される。
【化7】
【0012】
一般的な別の態様では、
(a)硫酸およびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムの存在下で式(II)の化合物を式(III)の化合物に還元することと、
【化8】
(b)トリエチルアミン、トリホスゲンおよびN,Nジメチルアミノピリジンの存在下で式(III)の化合物を式(IV)の化合物に環化することと、
【0013】
【化9】
(c)LiOHおよびHClの存在下で式(IV)の化合物を式(V)の化合物に加水分解することと、
【0014】
【化10】
(d)2−エチルヘキサン酸ナトリウムの存在下で式(V)の化合物を式(I)の化合物に変換することと
を含む、式(I)の化合物を調製するプロセスが提供される。
【0015】
式(I)の化合物を調製するプロセスは、スキーム1にも記載されている。
一部の実施形態では、本明細書において記載される式(I)の化合物を調製するプロセスにおいて、式(IV)の化合物の式(V)の化合物への加水分解は、約−15℃〜約−20℃の間の温度で行われる。
他の一部の実施形態では、本明細書において記載される式(I)の化合物を調製するプロセスは、式(III)の化合物をそのシュウ酸塩を調製することによって精製するステップをさらに含む。
【0016】
一部の実施形態では、結晶形態の式(I)の化合物が提供される。
他の一部の実施形態では、式(I)の化合物は、4.37(±0.2)、4.93(±0.2)、6.02(±0.2)、8.54(±0.2)、14.75(±0.2)、16.19(±0.2)、17.32(±0.2)、および18.39(±0.2)°2θからなる群から選択されるピークを含むX線粉末回折パターンを有する。
【0017】
他の一部の実施形態では、式(I)の化合物は、4.37(±0.2)、4.93(±0.2)、6.02(±0.2)、8.54(±0.2)、10.17(±0.2)、10.84(±0.2)、14.17(±0.2)、14.75(±0.2)、15.32(±0.2)、16.19(±0.2)、17.32(±0.2)、18.39(±0.2)、20.05(±0.2)、および21.79(±0.2)°2θからなる群から選択されるピークを含むX線粉末回折パターンを有する。
【0018】
【化11】
【0019】
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、図1に示されるものと実質的に同一のX線粉末回折パターンを有する。
一部の実施形態では、式(I)の化合物は、HPLCによって決定される少なくとも98%の純度を有する。
本発明による式(I)の化合物は、いくつかの有利な特性を有し、これには以下が含まれる。
(1)式(I)の化合物は高度に純粋な固体物質(HPLCによって決定される少なくとも約98%の純度)として単離可能であり、対応する遊離酸(式(V)の化合物であり、シロップ状物質として得られる)と比較して、非吸湿性物質である。
【0020】
(2)式(I)の化合物は貯蔵時に驚くほど安定である。例えば、典型的な安定性研究において、室温で3カ月間貯蔵したときの式(I)の化合物は、優れた安定性を示した(HPLCによって分析した純度は、初期純度が99.75%、2カ月後の純度が99.69%、3カ月後の純度が99.66%)。
(3)式(I)の化合物は、さらなる反応シーケンス中において、単離、貯蔵および取扱いが容易である。
【0021】
本明細書において開示される発明に対して、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく様々な置換および改変を行ってもよいことは、当業者にはまったく明らかであると思われる。例えば、当業者は、本発明を記述された包括的な記載内で様々な異なる化合物を使用して実施してもよいことを理解すると思われる。
【実施例】
【0022】
以下の例は、現在最もよく知られている本発明の実施形態を例示する。しかし、以下は本発明の原理の応用を例示または説明しているにすぎない点は理解されたい。数多くの改変および代替の組成、方法、および系が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく当業者によって考案されてもよい。添付の特許請求の範囲は、このような改変および取り合わせを範囲に含むことを意図している。よって、本発明は上記で具体性をもって記述されたが、以下の例は、ここでは何が本発明の最も実際的で好ましい実施形態とみなされているのかに関して、さらなる詳細を与える。
【0023】
(例1)
(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2−カルボン酸のナトリウム塩の調製
工程−1:5−ベンジルオキシアミノ−ピペリジン−2カルボン酸ベンジルエステルのシュウ酸塩(2S,5R)および(2S,5S)の調製
四つ口(10L)丸底フラスコに、水素化ホウ素ナトリウム(50.26mg、1.329mol)、続いて酢酸エチル(2.25L)を投入した。懸濁液を氷−塩混合物を使用することによって約0℃に冷却し、これに酢酸(230ml、3.98mol)を撹拌下で温度を0℃未満に維持することにより、1時間かけて滴下添加した。添加後、冷却を止め、反応混合物を徐々に約20℃〜25℃に加温した。こうして得られた白色の懸濁液(トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム)を、約20℃〜25℃で4時間撹拌した。
【0024】
もう1つの20L丸底フラスコに、(S)−5−ベンジルオキシイミノ−ピペリジン−2−カルボン酸ベンジルエステルのE/Z混合物(225g、0.665mol、米国特許出願第2010/0197928号に記載されている手順を使用して調製)、続いて酢酸エチル(1.125L)を投入した。反応混合物を撹拌下で−10℃に冷却し、濃硫酸(180ml、3.32mol)を、温度を−5℃未満に維持することによって添加した。混合物を−10℃でさらに30分間撹拌して、透明な溶液を得た。透明な溶液に、温度を−5℃未満に維持しながら、添加漏斗によって、上記で調製された白色の懸濁液(トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム)を添加した。得られた懸濁液を−10℃で1時間撹拌した。このように得られた反応混合物を、温度を約−10℃〜10℃に維持しながら、炭酸水素カリウム水溶液(837g、3.5Lの水中8.37mol)を添加することによってクエンチした。反応混合物を30分間撹拌し、25℃に加温した。有機層を分離し、水層を酢酸エチル(1L)で抽出した。合わせた有機層を水(2L)で、続いて飽和塩化ナトリウム水溶液(1L)で洗浄した。有機層を真空下で蒸発させて、204gの量の油状塊として式(III)の粗化合物を得た。
【0025】
上記で得られた油状塊(204g、0.59mol)を撹拌下で酢酸エチル(800ml)中に溶解させて、酢酸エチル(410ml)とアセトン(410ml)との混合物中のシュウ酸(83g、0.66mol)の溶液を、1時間以内で滴下添加した。沈殿した固体を25℃で4時間撹拌した。次いで、吸引下でこれを濾過し、このようにして得られた湿潤ケーキを1:1v/v酢酸エチルアセトン混合物(400ml)で洗浄した。固体を空気によって乾燥させて、表題中間体化合物(5−ベンジルオキシアミノ−ピペリジン−2−カルボン酸ベンジルエステルのシュウ酸塩)を、淡黄色固体として、210gの量、73.6%の収率で得て、以下の分析を行った。
【0026】
分析
NMR(DMSO−d6)(主要なジアステレオマーの化学シフトを述べる)
7.25-7.40 (m, 10H), 5.22 (s, 2H), 4.56 (s, 2H), 4.05 (dd, 1H), 3.38 (dd, 1H), 3.12-3.17 (m, 2H), 2.66 (t, 1H), 2.15 (dd, 1H), 1.84-1.89 (m, 2H), 1.69-1.79 (m, 1H), 1.39-1.69 (m, 1H).
質量
C20H24N2O3.C2H2O4: 遊離塩基のM+1として341.3.
HPLCによるジアステレオマー純度:75.99および20.99
工程−2:(2S,5R)および(2S,5S)の5−ベンジルオキシアミノ−ピペリジン−2−カルボン酸ベンジルエステルの遊離塩基の調製
上記の工程1で得られたベンジル5−ベンジルオキシアミノ−ピペリジン−2−カルボキシレートのシュウ酸塩(204g、0.474mol)のジアステレオマー混合物に、撹拌下、室温で、酢酸エチル(2L)と蒸留水(1L)との混合物を添加して、透明な溶液を得た。反応混合物に8%重炭酸ナトリウム水溶液(80gの重炭酸ナトリウム、0.952molおよび1Lの水から調製)を撹拌下で20分以内で添加した。得られた混合物を2.5時間撹拌した。有機層を分離し、水層を酢酸エチル(800ml×2)で抽出した。合わせた有機層を水(1L)およびブライン(1L)で連続的に洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を真空下で蒸発させて、164gの遊離塩基を粘稠な油状物として定量的収率で得た。これを次の反応にそのまま使用した。
【0027】
工程−3:(2S,5R)および(2S,5S)の7−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2−カルボン酸ベンジルエステルの調製
ベンジル5−ベンジルオキシアミノ−ピペリジン−2−カルボン酸エステル遊離塩基(164g、0.484mol)をアセトニトリル(2.5L)中に溶解させ、撹拌下で透明な溶液を得た。反応混合物にトリエチルアミン(175ml、1.26mol)を室温において撹拌下で添加した。これに、アセトニトリル(640ml)中のトリホスゲン(64g、0.212mol)の溶液を、添加中に反応混合物の温度を30℃未満に維持することによってゆっくりと添加した。得られた黄色の懸濁液を室温で30分間撹拌した。
N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(5.91g、0.0484mol)を懸濁液に添加し、反応混合物を16時間撹拌させた。
【0028】
反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(1.32L)によってクエンチした。飽和重炭酸ナトリウム水溶液の添加時に、13℃までの温度の低下が観察された。添加後、撹拌を30分間継続した。水の蒸留が始まるまで反応混合物をそのまま真空下で濃縮して、アセトニトリルを除去した。得られた混合物に、撹拌下でさらなる蒸留水(1.65L)を添加した。水層をジクロロメタン(1.7Lおよび850ml)で2回抽出した。合わせた有機層を水(850ml)、続いてブライン(850ml)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を真空下で蒸発させて、6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ{3.2.1}−オクタン−2−カルボン酸ベンジルエステル(2S,5R)および(2S,5S)のジアステレオマー混合物を、HPLCにより76.38:16.37で、粘稠な油状物として169gの量(97%)で得た。この中間体は不純物を生成する傾向があったので、終夜4℃未満で貯蔵した。
分析
質量:M+1としてC212224:367.2
HPLCによるジアステレオマー純度:76および16
【0029】
工程−4:(2S,5R)−7−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン−2−カルボン酸の調製
上記の工程−3で得られた6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ{3.2.1}オクタン−2−カルボン酸ベンジルエステルの76:16比ジアステレオマー混合物(100g、0.273mol)を、室温において撹拌下でアセトン(2L)中に溶解させた。透明な溶液を−20℃に冷却させ、撹拌下で3時間にわたって反応温度を−15℃〜−20℃の間に維持することにより、水:アセトン混合物(800ml:270ml)中の水酸化リチウム(14g、0.333mol)の溶液をこれに添加した。撹拌をさらに1.5時間継続した。この後、撹拌下で温度を−15℃〜−20℃の間に維持しながら、2N水性塩酸を添加することによって、反応混合物のpHを8に調整した。その後、反応混合物を25℃〜30℃に加温させた。ブライン(300ml)を反応混合物に添加し、水層を分離した。水層をトルエン(1Lおよび500ml×2)で抽出した。2Nの水性塩酸を添加することによって、水層のpHを2に調整した。水層をジクロロメタン(500ml×3)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を40℃未満において真空下で蒸発させて、表題中間体化合物を、51gの量、HPLCで決定された97.5:1.2の比、68%の収率で、粘稠な油状物として得た。これを即座に次の反応工程のために使用した。
【0030】
分析:
NMR (CDCl3)
7.33-7.41 (m, 5H), 5.03 (d, 1H), 5.87 (d, 1H), 4.08 (d, 1H), 3.32 (br s, 1H), 3.07 (br d, 1H), 2.91 (d, 1H), 1.82-2.76 (m, 3H), 1.59-1.70 (m, 1H).
質量: C14H16N2O4: M-1として275.2.
HPLCによるジアステレオマー純度:97.5および1.2
【0031】
工程−5:(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ{3.2.1}−オクタン−2−カルボン酸のナトリウム塩
メカニカルスターラーおよび温度計ポケットを備えた四つ口(5L)丸底フラスコに、上記の工程−4で得られた(2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ{3.2.1}−オクタン−2−カルボン酸(200g、0.725mol)を、窒素雰囲気化でアセトン(2L)と共に投入し、室温で撹拌を始めて、透明な溶液を得た。この透明な溶液に、次の30分間、添加漏斗によって1Lのアセトン中の2−エチルヘキサン酸ナトリウム(132.34g、796mmol)の溶液を添加した。反応混合物を25℃〜30℃において16時間撹拌した。
【0032】
沈殿した固体を吸引下で濾過し、湿潤ケーキを冷やしたアセトン(400ml)で洗浄した。非吸湿性固体を40℃において真空下で1時間乾燥させて、オフホワイト色の物質((2S,5R)−6−ベンジルオキシ−7−オキソ−1,6−ジアザ−ビシクロ{3.2.1}−オクタン−2−カルボン酸のナトリウム塩)を135g(89%、70%純度の遊離酸について調整された計算)の量で得た。
【0033】
分析:
NMR (DMSO-d6)
7.32-7.43 (m, 5H), 4.88 (q, 2H), 3.49 (s, 1H), 3.21 (d, 1H), 2.73 (d, 1H), 2.04-2.09 (m, 2H), 1.74-1.77 (m, 1H), 1.65-1.72 (m, 1H), 1.55-1.60 (m, 1H).
質量: C14H15N2O4.Na: M-1として275.2(酸に対して).
HPLCで決定された純度:99.8%
X線粉末回折パターン:図1に示される通り
X線粉末回折パターンは、以下の2θ値において主要なピークを呈した。
4.37(±0.2)、4.93(±0.2)、6.03(±0.2)、8.54(±0.2)、10.17(±0.2)、10.84(±0.2)、14.17(±0.2)、14.76(±0.2)、15.32(±0.2)、16.19(±0.2)、17.33(±0.2)、18.39(±0.2)、20.05(±0.2)、および21.79(±0.2)。
【0034】
典型的なX線分析は、以下のように行った。試験物質を篩#100BSSに通すか、またはこれを乳鉢および乳棒で穏やかに粉砕する。試験物質を、一方の側にキャビティー面を有する試料ホルダーに均一に置き、試料を押さえつけ、ガラススライドを使用して、試料の表面が滑らかで一様になるようなやり方で薄い均一な膜に切断する。以下の測器パラメータを使用して、X線ディフラクトグラムを記録する。
【0035】
【表1】
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕式(I)の化合物。
〔2〕結晶形態である、前記〔1〕に記載の化合物。
〔3〕4.37(±0.2)、4.93(±0.2)、6.02(±0.2)、8.54(±0.2)、14.75(±0.2)、16.19(±0.2)、17.32(±0.2)、および18.39(±0.2)°2θからなる群から選択されるピークを含むX線粉末回折パターンを有する、前記〔1〕に記載の化合物。
〔4〕4.37(±0.2)、4.93(±0.2)、6.02(±0.2)、8.54(±0.2)、10.17(±0.2)、10.84(±0.2)、14.17(±0.2)、14.75(±0.2)、15.32(±0.2)、16.19(±0.2)、17.32(±0.2)、18.39(±0.2)、20.05(±0.2)、および21.79(±0.2)°2θからなる群から選択されるピークを含むX線粉末回折パターンを有する、前記〔1〕に記載の化合物。
〔5〕図1に示されるものと実質的に同一のX線粉末回折パターンを有する、前記〔1〕に記載の化合物。
〔6〕(a)硫酸およびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムの存在下で式(II)の化合物を式(III)の化合物に還元することと、

(b)トリエチルアミン、トリホスゲンおよびN,Nジメチルアミノピリジンの存在下で式(III)の化合物を式(IV)の化合物に環化することと、
(c)LiOHおよびHClの存在下で式(IV)の化合物を式(V)の化合物に加水分解することと、
(d)2−エチルヘキサン酸ナトリウムの存在下で式(V)の化合物を式(I)の化合物に変換することと
を含む、前記〔1〕に記載の式(I)の化合物を調製するプロセス。
〔7〕式(IV)の化合物の式(V)の化合物への加水分解が、約−15℃〜約−20℃の間の温度で行われる、前記〔6〕に記載のプロセス。
〔8〕式(III)の化合物をそのシュウ酸塩を調製することによって精製するステップをさらに含む、前記〔6〕に記載のプロセス。
〔9〕HPLCによって決定される少なくとも98%の純度を有する、前記〔1〕から〔5〕までのいずれかに記載の化合物。
図1