特許第6286005号(P6286005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286005
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】電子又は電気機械式腕時計用押釦装置
(51)【国際特許分類】
   G04G 21/00 20100101AFI20180215BHJP
   G04B 3/04 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   G04G21/00 304B
   G04B3/04 G
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-200674(P2016-200674)
(22)【出願日】2016年10月12日
(65)【公開番号】特開2017-116526(P2017-116526A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2016年10月12日
(31)【優先権主張番号】15201722.4
(32)【優先日】2015年12月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ラゴルゲット
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・バルメ
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−099023(JP,A)
【文献】 特開2005−121646(JP,A)
【文献】 特開2013−134256(JP,A)
【文献】 特開昭49−046171(JP,A)
【文献】 特開2012−189521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 21/00
G04B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子プレート(18)を含む押釦装置であって、押釦(30)は、フレキシブルプリント回路シート(26)の自由な部分(28)の表面に扁平に溶着され、前記フレキシブルプリント回路シート(26)は前記電子プレート(18)に部分的に固定され、前記フレキシブルプリント回路シート(26)の前記自由な部分(28)は、前記押釦(30)が、前記電子プレート(18)に対して略垂直に、前記電子プレート(18)の垂直面に配置され、そして前記電子プレート(18)の外側面(22)に当接するように、前記電子プレート(18)の周縁部(20)周りに延在することを特徴とする押釦装置。
【請求項2】
前記押釦(30)を、前記電子プレート(18)に配設したハウジング(36)に配置し、前記ハウジング(36)は、前記押釦(30)に関する水平方向前方及び後方へ、及び垂直方向下方への変位を限定することを特徴とする、請求項1に記載の押釦装置。
【請求項3】
前記電子プレート(18)に設けた前記ハウジング(36)を、前記押釦(30)の垂直方向上方への変位を限定する付加プレート(44)で被覆することを特徴とする、請求項2に記載の押釦装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の押釦装置を中に収容するケース(46)から成る携帯物であって、該携帯物の前記ケース(46)を、貫通孔(50)で穿孔し、前記貫通孔内で、外部押釦(54)のステム(52)を摺動させ、前記ステム(52)を、該ステム(52)を外方に押す弾性手段(56)によって休止位置に保持し、前記ステムに印加した圧力によって、前記ステムが表面実装型押釦(30)を押圧する動作位置に移動させる携帯物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子腕時計用押釦装置に関する。特に、本発明は、よりコンパクトで、より良好な耐疲労性を有するかかる押釦装置に関する。
【背景技術】
【0002】
押釦は、大まかにはステムから成る極めて単純な制御手段であり、該ステムは、ステムの頭部を外方に押す弾性手段によって休止位置に保持する、及びユーザが頭部を押圧することによって動作位置に移動する間に、装置のフレームを通過して摺動する。弾性手段を、例えば、貫通路内に収容し、フレームと押釦頭部との間に支持する螺旋状バネによって形成する。
【0003】
チャンバを照明する又は音源を作動させる等、ユーザが、装置が正しく動作しているか否かを確認し易い用途では、上述した種類の制御装置は、最も単純な形式でも、満足できるかも知れない。しかしながら、他の場合では、特に、ユーザが視覚的に又は聴覚的に確認できる位置に存在しないときには、押釦を押圧するユーザが、選択した機能が実際に作動したことを確信することが必要である。クロノグラフ時計では、機械式又は電子式であるかに関わらず、これは、特に、そうである。確かに、適切な押釦を押圧することによる開始/停止タイミング命令を、イベント、例えばスポーツ競技と同期させなければならないが、そうしたイベントでは、ユーザが観察する必要がある、即ち、ユーザがクロノグラフが正しく動作しているかを同時に視覚的に確認できない。
【0004】
この欠点を解消するために、ユーザが押釦を押圧すると、ユーザが感知できるカチッとした音を立てるようにした様々な装置が、提案されている。単に一例として、押釦を静止して保持するのに使用する弾性手段は、弾性片から成ることができ、該弾性片の第1自由端をプレートに固定し、休止位置に押釦を保持するのに使用する第2自由端を、実質的に押釦の軸に湾曲したU字型部分だけ延伸させる。この湾曲部分も弾性であり、プレートに圧入するスタッドに当接し、該湾曲部分の端部には、肥厚部又は切欠きが存在し、肥厚部又は切欠きがスタッドを通過すると、押釦を押圧する際にカチッという音を立てる。
【0005】
クロノグラフ時計が機械式又は電子式であるかに応じて、押釦を作動すると、タイマ機構を始動させる、又はカチッという音を感知した直後に電気接点を閉じる。しかしながら、かかる押釦装置の欠点は、その大きさにあり、弾性片が平面に延伸し、弾性状態を保った状態でユーザが印加した力を押釦に伝達可能にする程度に長くしなければならないことを考慮すると、比較的大型となる。
【0006】
また、本発明は、表面実装型デバイス又はSMDとしても知られる所謂表面実装型押釦の第2の種類に関する。この種の押釦のアクチュエータ要素は、典型的には、ドーム型の可撓性金属シートから成り、ドームには、第1接点を圧迫する周縁部、及びユーザが押釦を押圧すると、変形して、第2接点を圧迫し、電気接点を閉じて電気制御信号を送る頂部がある。圧力を、押釦に印加すると、ドームは、休止位置から圧入位置へと変化して、ユーザが感知するカチッとした音を立てる。表面実装型押釦の利点の1つは、占領する空間が少なく、そのために小型の装置に組み込める点である。
【0007】
しかし、当然ながら、本特許出願に添付した図1について検討すると、かかる押釦1を電子又は電気機械式腕時計等の携帯物のケース4内に収容する電子プレート2に実装する場合、ケース4の側面を通り作動する、即ちケースから径方向の線に沿って作動することが多い。しかしながら、図1で示したように、略L字型の押釦1用支持体6を、その分岐部6aの1つを介して、電子プレート2の上面8に、数個の溶着箇所10によって、片持ち支持で実装する。溶着箇所10の品質がどれ程良いかに応じて、第2分岐部6bには、電子プレート2の側面14との間に略必然的に若干の遊び12ができ、それにより押釦1への繰返し加圧による剪断力の影響を受ける中、疲労によって生じる溶着箇所10の危険性が高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、電子又は電気機械式腕時計等、小型の携帯物用に、殆ど空間を占領せずに、且つ機械的疲労に耐性がある押釦装置を提供することによって、他の欠点に加えて、前述の欠点も解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明は、水平方向に延伸する電子プレートを収容するケースから成る携帯物用押釦装置であって、押釦は、電子プレートにそれ自体を部分的に固定するフレキシブルプリント回路シートを有する表面実装型のものであり、フレキシブルプリント回路シートを、押釦が、電子プレートと垂直に延在し、電子プレートの側面に当接するように、電子プレートの縁部周りに折曲げる、押釦装置に関する。
【0010】
こうした特徴の結果、本発明は、時計型の押釦より遥かにコンパクトで、そのため腕時計等小型の携帯物に組み込み易い表面実装型押釦装置を提供する。また、表面実装型押釦は、大量生産される標準部品であり、それほど高価でない。更に、押釦を溶着するプリント回路シートは、押釦下に延在する。その結果、押釦を押圧した際に、溶着部は、加圧されるが、剪断応力は受けず、それにより溶着部に生じる危険性をほぼ完全に排除できる。また、押釦が、電子プレートの側面に当接するため、これが、圧力に対する良好な機械抵抗を提供すると共に、良好な位置決め公差を、垂直面で得られることを可能にする点も注目される。最後に、押釦を、プリント回路シートに偏平に溶着できるため、これにより、製造作業がかなり容易になる。
【0011】
本発明の補足的な特徴によると、押釦を、電子プレート内に配設したハウジングに配置し、このハウジングは、押釦に関する水平方向前方及び後方、及び垂直方向下方への変位を限定する。
【0012】
本発明の別の特徴によると、電子プレートに配設したハウジングを、押釦の垂直方向上方への変位を限定する付加プレートで被覆する。
【0013】
本発明の更に別の特徴によると、携帯物のケースを、貫通孔で穿孔し、貫通孔内で、外部押釦のステムを、摺動させ、該ステムを外方に押す弾性手段によって休止位置に保持し、ステムに印加した圧力によって、ステムが表面実装型押釦を押圧する動作位置に移動させる。
【0014】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明による押釦装置の例示的実施形態に関する以下の詳細な説明から、より明確になるであろう。この実施例は、添付図を参照して、非限定的な実例としてのみ提示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】上述した、従来技術による電子プレートに表面実装した押釦装置を示している。
図2】フレキシブルプリント回路シートを固定する電子プレートの縦断面図であり、フレキシブルプリント回路シートの一部は、自由のままとし、押釦を伴い(carry)、押釦が垂直方向に延在し、プレートの側面に当接するように、折曲げている。
図3】フレキシブルプリント回路シートを固定する電子プレートの上面図であり、押釦を配置するハウジングを被覆する付加プレートを除去してある。
図4図2に示した電子プレートの縦断面図であり、この電子プレートを、携帯物のケース内に収容し、該ケースを、貫通孔で穿孔し、貫通孔内に外部押釦のステムを、休止位置と、該ステムが表面実装型押釦を押圧する動作位置との間で摺動するように配設する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、表面実装型押釦を、フレキシブルプリント回路シートに固定し、該シート自体を、電子又は電気機械式腕時計等の携帯物のケース内に収容する電子プレートに部分的に固定することから成る一般的な創意に由来する。押釦を伴うプリント回路シートの部分を、自由のままにし、且つ電子プレートの縁部周りに折曲げて、押釦を、押釦が電子プレートの側面に当接する垂直面に移動できるように、プリント回路シートを電子プレートに配設する。
【0017】
本発明による押釦装置について、本特許出願に添付した図2で説明する。全体として、一般的な参照番号16で指すが、この押釦装置は、周縁部20及び外側面又は側面22で画成する電子プレート18を含む。かかる電子プレート18は、該プレートの上面24に、導電経路によって互いに接続し、電子プレート18を組み込む腕時計等の携帯物を動作するのに必要な電子部品セットを受容するものとする。
【0018】
図2の検討によって明らかなように、フレキシブルプリント回路シート26を、電子プレート18の上面24に部分的に固定する一方で、表面実装型押釦30を伴うフレキシブルプリント回路シート26の部分28を、自由にしておく。フレキシブルプリント回路シート26の自由部分28を、電子プレート18の周縁部20周りに折曲げ、それにより押釦30を、電子プレート18の側面22に当接する垂直面に存在させるようにする。図2から分かるように、押釦30を伴うフレキシブルプリント回路シート26の自由部分28を、電子プレート18の周縁部20周りに下方に、その後上方に折曲げて、V字型の折目32とできるように十分長くする。しかしながら、言うまでもなく、この実施形態は、単に非限定的な実例として示しただけであり、フレキシブルプリント回路シート26の自由部分28は、電子プレート18の周縁部20周りに下方に折曲げられ、且つ押釦30を、電子プレート18の側面22に圧接する垂直面に持って来られる程度に長ければ十分である。
【0019】
本発明の利点によると、押釦30を、フレキシブルプリント回路シート26に偏平に溶着する。その結果、フレキシブルプリント回路シート26を、電子プレート18の上面24に固定し、次に、下方に折曲げて、押釦30を、電子プレート18の側面22に当接する垂直面に設置すると、押釦30を押圧した際に、押釦30をフレキシブルプリント回路シート26に固着した溶着部34は、加圧されるが、剪断応力は受けなくなり、それによりこれら溶着部34に生じる危険性を、ほぼ完全に排除できる。また、押釦30は、電子プレート18の側面22に当接するため、これが、圧力に対する良好な機械抵抗を提供し、良好な位置決め公差が垂直面で得られる点も注目すべきである。最後に、押釦30を、フレキシブルプリント回路シート26に偏平に溶着できるため、これにより、製造作業がかなり容易になる。
【0020】
また、図2及び図3に関して慎重に検討すると、押釦30を、電子プレート18の外側面22に配設したハウジング36内に配置することが好ましいことが分かるが、それに限定されない。このハウジング36を、押釦30を囲み、水平面40だけ前方で延伸する垂直側壁38によって画定する。縁部42によって画定するこの水平面40は、押釦30用座面として機能する。その結果、ハウジング36は、押釦30に関する水平方向に前方及び後方、垂直方向に下方への変位を、限定する。
【0021】
また、押釦30の変位を、上方にも限定するように、付加プレート44でハウジング36を被覆することもできる(図2参照)。
【0022】
図4に表したように、本発明による押釦装置16を、腕時計等の携帯物のケース46内に収容するものとする。このケース46は、貫通孔50を穿孔したケース中間部48を含み、該貫通孔に外部押釦54のステム52を配設して、ステム52を、該ステムを外方に押す弾性手段56によって保持する休止位置と、ステム52への圧力によって該ステムが押釦30を押圧する動作位置との間で、摺動させる。
【0023】
言うまでもなく、本発明は、記述した実施形態に限定されず、また様々な単純な変形例及び変更例を、付記するクレームで規定する本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって想定できる。
【符号の説明】
【0024】
1 押釦
2 電子プレート
4 ケース
6 支持体
6a、6b 分岐部
8 上面
10 溶着箇所
12 遊び
14 外側面
16 押釦装置
18 電子プレート
20 周縁部
22 外側面又は側面
24 上面
26 フレキシブルプリント回路シート
28 自由部分
30 押釦
32 V字形折目
34 溶着部
36 ハウジング
38 垂直側壁
40 水平面
42 縁部
44 付加プレート
46 ケース
48 ケース中間部
50 貫通孔
52 ステム
54 外部押釦
56 弾性手段
図1
図2
図3
図4