(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここでの開示では、HILは正孔注入層をいい;HTLは正孔輸送層をいい;EBLは、励起子又は電子又はその両方を阻止しうる励起子/電子阻止層をいい;EMLは発光層をいい;HBLは正孔阻止層をいい;ETLは電子輸送層をいう。エレクトロルミネッセンス及び発光の用語は同じ意味で用いられる。
【0019】
ここでの開示は、ホスト物質中に分散された燐光発光ドーパントを含む有機エレクトロルミネッセンス層を有するOLEDを記載しており、そのホスト物質は第一のホスト化合物及び第二のホスト化合物を含む。第一のホスト化合物は、下記一般式H1で表される正孔輸送ホスト化合物である。
【化2】
(式中、Aは、置換又は非置換芳香族炭化水素の2価の基、置換又は非置換芳香族へテロ環の2価の基、あるいは置換又は非置換縮合多環式芳香族の2価の基を表し;Ar
1、Ar
2、及びAr
3は同じか異なり、置換又は非置換芳香族炭化水素基、置換又は非置換芳香族へテロ環基、あるいは置換又は非置換縮合多環式芳香族基であってよく、A及びAr
2、あるいはAr
2及びAr
3は、単結合を介して、あるいは置換又は非置換メチレン、酸素原子、又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよく;R
1〜R
9は同じか異なり、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ、ニトロ、置換基を有していてもよい1〜6の炭素原子の直鎖又は分枝状のアルキル、置換基を有していてもよい5〜10の炭素原子のシクロアルキル、置換基を有していてもよい2〜6の炭素原子の直鎖又は分枝状のアルケニル、置換基を有していてもよい1〜6の炭素原子の直鎖又は分枝状のアルキルオキシ、置換基を有していてもよい5〜10の炭素原子のシクロアルキルオキシ、置換又は非置換芳香族炭化水素基、置換又は非置換芳香族へテロ環基、置換又は非置換縮合多環式芳香族基、あるいは置換又は非置換アリールオキシであってよく、これらは単結合、置換又は非置換メチレン、酸素原子、又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよく;R
10及びR
11は同じか異なり、置換基を有していてもよい1〜6の炭素原子の直鎖又は分枝状のアルキル、置換基を有していてもよい5〜10の炭素原子のシクロアルキル、置換基を有していてもよい2〜6の炭素原子の直鎖又は分枝状のアルケニル、置換基を有していてもよい1〜6の炭素原子の直鎖又は分枝状のアルキルオキシ、置換基を有していてもよい5〜10の炭素原子のシクロアルキルオキシ、置換又は非置換芳香族炭化水素基、置換又は非置換芳香族へテロ環基、置換又は非置換縮合多環式芳香族基、あるいは置換又は非置換アリールオキシであってよく、これらは単結合、置換又は非置換メチレン、酸素原子、又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0020】
得られるOLEDは、発光スペクトルにおいて向上した彩度を示す。本開示の一つの側面によれば、ホスト物質は第三のホスト化合物を含むこともできる。第二及び第三のホスト化合物を以下で説明する。
【0021】
図1はOLED100を示す。OLED100は、基材110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、及び電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、及びカソード160を含んでいてよい。カソード160は、1つより多い導電層、例えば、示したように第一の導電層162及び第二の導電層164を有する複合カソードであることができる。OLED100は、記載した層を順番に堆積させることによって作製しうる。これら様々な層の特性及び機能、並びに例示物質は、米国特許第7,279,704号明細書の6〜10欄により詳細に記載されており、その開示は援用により全体を本明細書に援用する。
【0022】
具体的には説明していない構造および物質、例えばFriendらの米国特許第5,247,190号明細書(これはその全体を参照により援用する)に開示されているようなポリマー物質で構成されるOLED(PLED)、も使用することができる。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDを使用できる。OLEDは、例えば、Forrestらの米国特許第5,707,745号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているように積み重ねられてもよい。OLEDの構造は、ここでの開示中で説明されている簡単な層状構造から逸脱していてもよい。例えば、基板は、光取出し(out-coupling)を向上させるために、Forrestらの米国特許第6,091,195号明細書(これはその全体を参照により援用する)に記載されているメサ構造、および/またはBulovicらの米国特許第5,834,893号明細書(これはその全体を参照により援用する)に記載されているピット構造などの、角度の付いた反射表面を含みうる。
【0023】
特に断らないかぎり、様々な実施形態の層のいずれも、何らかの適切な方法によって堆積されうる。有機層については、好ましい方法には、熱蒸着(thermal evaporation)、インクジェット(例えば、米国特許第6,013,982号および米国特許第6,087,196号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、有機気相成長(organic vapor phase deposition、OVPD)(例えば、Forrestらの米国特許第6,337,102号(その全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびに有機気相ジェットプリンティング(organic vapor jet printing、OVJP)による堆積(例えば、米国特許第7,431,968号(これはその全体を参照により援用する)に記載されている)が含まれる。他の適切な堆積方法には、スピンコーティングおよびその他の溶液に基づく方法が含まれる。溶液に基づく方法は、好ましくは、窒素または不活性雰囲気中で実施される。その他の層については、好ましい方法には熱蒸着が含まれる。好ましいパターニング方法には、マスクを通しての蒸着、圧接(cold welding)(例えば、米国特許第6,294,398号および米国特許第6,468,819号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびにインクジェットおよびOVJDなどの堆積方法のいくつかに関連するパターニングが含まれる。その他の方法も用いることができる。堆積される物質は、それらを特定の堆積方法に適合させるために改変されてもよい。例えば、分枝した又は分枝していない、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキルおよびアリール基などの置換基を、溶液加工性を高めるために小分子に用いることができる。20個又はそれより多い炭素を有する置換基を用いてもよく、3〜20炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する物質は対称構造を有するものよりも溶液加工性により適しうるが、これは、非対称物質はより小さな再結晶化傾向を有しうるからである。デンドリマー置換基は、小分子が溶液加工を受ける能力を高めるために用いることができる。
【0024】
本発明の実施形態により製造されたデバイスは多様な消費者製品に組み込むことができ、これらの製品には、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニタ、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明灯および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明な(fully transparent)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末(personal digital assistant、PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面(large area wall)、映画館またはスタジアムのスクリーン、あるいは標識が含まれる。パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスを含めて、様々な制御機構を用いて、本発明にしたがって製造されたデバイスを制御できる。デバイスの多くは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)などの、人にとって快適な温度範囲において使用することが意図されている。
【0025】
本明細書に記載した物質及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有しうる。例えば、その他のオプトエレクトロニクスデバイス、例えば、有機太陽電池及び有機光検出器は、これらの物質及び構造を用いることができる。より一般には、有機デバイス、例えば、有機トランジスタは、これらの物質及び構造を用いることができる。
【0026】
ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、ヘテロ環基、アリール、芳香族基、及びヘテロアリールの用語は、当分野で公知であり、米国特許第7,279,704号明細書の第31〜32欄で定義されており、その開示を本明細書に参照により全体を援用する。有機発光素子中の発光層のホスト物質は、アノードとカソードから注入された電荷キャリアの輸送及び再結合のための固体媒体を提供する。ホスト物質のために用いられる化合物は、それらの電荷輸送特性にしたがって分類することができる。いくつかのホスト化合物は主に電子輸送性であり、いくつかの別のものは主に正孔輸送性である。ホスト化合物は1つのタイプの電荷を主に輸送するものとして特徴づけることができるが、この化合物は両方のタイプの電荷を輸送することもできる。
【0027】
[発光体ドーパント]
任意の好適な燐光ドーパントを発光層に用いることができる。いくつかの例は下の表5に示されている。一つの態様では、燐光ドーパントは、燐光有機金属化合物を含む燐光発光物質であり、その化合物はその物質を横切って電圧を印加したときに三重項分子励起状態から燐光放射を発する。ホスト物質の選択は、燐光発光ドーパントの選択に応じて変わる。いくつかの態様では、エレクトロルミネセンス層は追加のドーパントを含む。
【0028】
一つの態様によれば、燐光発光体物質は、燐光有機金属白金化合物、有機金属イリジウム化合物、及び有機金属オスミウム化合物からなる群から選択される有機金属化合物である。この燐光有機金属化合物は、炭素−金属結合を含むことができる。有機金属白金化合物、イリジウム化合物、及びオスミウム化合物はそれぞれ芳香族配位子を含むことができる。
【0029】
燐光有機金属化合物は、ヘテロ環上の広がった共役をもつヘテロレプティック錯体を含むことができる。そのようなヘテロレプティックイリジウム化合物の例は、2010年3月11日に刊行されたPCT国際公開第2010/028151号に記載されており、その開示はその全体を参照により本明細書に援用する。
【0030】
[正孔輸送ホスト化合物]
第一のホスト化合物は下の一般式H1によって表される。
【化3】
(式中、Aは、置換又は非置換芳香族炭化水素の2価の基、置換又は非置換芳香族へテロ環の2価の基、あるいは置換又は非置換縮合多環式芳香族の2価の基を表し;Ar
1、Ar
2、及びAr
3は同じか異なり、置換又は非置換芳香族炭化水素基、置換又は非置換芳香族へテロ環基、あるいは置換又は非置換縮合多環式芳香族基であってよく、A及びAr
2、あるいはAr
2及びAr
3は、単結合を介して、あるいは置換又は非置換メチレン、酸素原子、又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよく;R
1〜R
9は同じか異なり、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ、ニトロ、置換基を有していてよい1〜6の炭素原子の直鎖又は分枝状のアルキル、置換基を有していてもよい5〜10の炭素原子のシクロアルキル、置換基を有していてもよい2〜6の炭素原子の直鎖又は分枝状のアルケニル、置換基を有していてもよい1〜6の炭素原子の直鎖又は分枝状のアルキルオキシ、置換基を有していてもよい5〜10の炭素原子のシクロアルキルオキシ、置換又は非置換芳香族炭化水素基、置換又は非置換芳香族へテロ環基、置換又は非置換縮合多環式芳香族基、あるいは置換又は非置換アリールオキシであってよく、これらは単結合、置換又は非置換メチレン、酸素原子、又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよく;R
10及びR
11は同じか異なり、置換基を有していてもよい1〜6の炭素原子の直鎖又は分枝状のアルキル、置換基を有していてもよい5〜10の炭素原子のシクロアルキル、置換基を有していてもよい2〜6の炭素原子の直鎖又は分枝状のアルケニル、置換基を有していてもよい1〜6の炭素原子の直鎖又は分枝状のアルキルオキシ、置換基を有していてもよい5〜10の炭素原子のシクロアルキルオキシ、置換又は非置換芳香族炭化水素基、置換又は非置換芳香族へテロ環基、置換又は非置換縮合多環式芳香族基、あるいは置換又は非置換アリールオキシであってよく、これらは単結合、置換又は非置換メチレン、酸素原子、又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0031】
式H1の構造を有する具体的な化合物の例を以下に示す。第一のホスト化合物は、以下に示す化合物からなる群から選択することができ、式中、Dは重水素を表す。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【0032】
好ましくは、第一のホスト化合物のHOMO準位は、発光体ドーパントのHOMO準位に比較的近く、このことが発光体ドーパント物質から正孔輸送機能の負荷をとり除くことを可能にする。これは、OLED中での発光体ドーパント物質の寿命を長くする。第一のホスト化合物が正孔輸送型なので、第一のホスト化合物のHOMO準位は他のホスト化合物のHOMOエネルギー準位よりも高い(電気陰性度がより小さい)。この正しいエネルギー準位の整列が、デバイス発光層中で電荷と励起子が分離し、三重項−ポーラロン消滅及び非発光性消光体形成を最小にすることを可能にする。これが、発光スペクトルにおけるOLEDの彩度を向上させる。
【0033】
[第一のホスト化合物H1の例の合成]
【0034】
例1:化合物H1-1の合成
12,12-ジメチル-10-フェニル-7-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの合成
N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-2-ブロモアニリン(18.5 g)、酢酸カリウム (6.98 g)、及びDMF(95 ml)を窒素置換した反応容器に入れ、窒素ガスを1時間通気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.18 g)を添加した後、その混合物を加熱し、100℃で11時間撹拌した。その混合物を室温に冷やした後、その反応液を水(300 ml)に添加し、トルエン(300 ml)で抽出を行った。得られた有機層を水(200 ml)で2回洗い、無水硫酸マグネシウムで脱水し、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル;溶出液:トルエン/n-ヘキサン)で精製して、12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール(7.9 g;収率55.2%)の淡黄色粉末を得た。
【0035】
得られた12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール(7.8 g)、ヨードベンゼン(3.7 ml)、亜硫酸ナトリウム(0.43 g)、粉末銅(0.17 g)、3,5-ジ(tert-ブチル)サリチル酸(0.69 g)、炭酸カリウム(5.71 g)、及びドデシルベンゼン(10 ml)を窒素置換した反応容器に入れ、加熱し、170℃で10時間撹拌した。その混合物を100℃に冷やし、トルエン(100 ml)を添加して抽出し、減圧下で濃縮し、n-ヘキサン(30 ml)を用いて結晶化させて、12,12-ジメチル-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの淡黄色粉末を得た(8.73 g;収率88.3%)。
【0036】
得られた12,12-ジメチル-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール(7.5 g)及びDMF(53 ml)を反応容器に入れた。N-ブロモコハク酸イミド(3.72 g)を氷冷条件下で添加し、その混合物を9時間撹拌し、次に一晩放置した。水(260 ml)を添加し、その混合物をろ過にかけて7-ブロモ-12,12-ジメチル-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの茶色がかった白色の粉末を得た(8.67 g;収率94.6%)。
【0037】
得られた7-ブロモ-12,12-ジメチル-10-フェニル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール(2.0 g)、9-フェニル-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-9H-カルバゾール(1.68 g)、トルエン/エタノール(4/1, v/v)混合溶媒(15 ml)、及び2M炭酸カリウム水溶液(3.4 ml)を、窒素置換した反応容器に入れ、超音波照射下で、窒素ガスを30分間通気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.26 g)を添加した後、その混合物を加熱し、73℃で5時間撹拌した。その混合物を室温に冷やした後、トルエン(30 ml)及び水(20 ml)を添加し、有機層を集めるために液分離を行った。有機層を飽和食塩水で洗い、無水硫酸マグネシウムで脱水し、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。その粗生成物をクロマトグラフィー(担体:シリカゲル;溶出液:トルエン/n-ヘキサン)によって精製して、12,12-ジメチル-10-フェニル-7-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの白色粉末を得た(1.5 g;収率54.7%)。
【0038】
得られた白色粉末の構造をNMRによって特定した。
1H-NMR (THF-d
8)で検出された32の水素シグナルは以下のとおりである。δ(ppm) = 8.66(1H), 8.64(1H), 8.59(1H), 8.23-8.29(1H), 7.88-7.90(1H), 7.83-7.85(1H), 7.78-7.80(1H), 7.66-7.71(8H), 7.42-7.53(7H), 7.37-7.40(1H), 7.31-7.33(1H), 7.26-7.29(1H), 7.21-7.24(1H), 1.51(6H)。
【0039】
例2:化合物H1-118の合成
10-(ビフェニル-4-イル)-12,12-ジメチル-7-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの合成
例1で合成した12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール(35.5 g)、4-ブロモビフェニル(35.0 g)、亜硫酸水素ナトリウム(6.0 g)、粉末銅(2.4 g)、3,5-ジ(tert-ブチル)サリチル酸(9.4 g)、炭酸カリウム(31.2 g)、及びドデシルベンゼン(52 ml)を窒素置換した反応容器に入れ、加熱し、190℃で26時間撹拌した。120℃に冷やした後、トルエン(35 ml)を添加した後でその混合物を撹拌し、粗生成物をろ過によって集めた。その粗生成物にトルエン(1.6 L)を添加した後、粗生成物を加熱し、110℃にて抽出した。室温に冷やした後、粗生成物を減圧下で濃縮した。生成物をメタノール(120 ml)で結晶化させて10-(ビフェニル-4-イル)-12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの白色粉末を得た(48.5 g;収率88.1%)。
【0040】
得られた10-(ビフェニル-4-イル)-12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール(42.5 g)及びDMF(2.5 L)を反応容器に入れ、その混合物を70℃まで加熱して溶かした。室温に冷却後、N-ブロモコハク酸イミド(17.4 g)を添加し、その混合物を7時間撹拌した。水(2.5 L)を添加し、ろ過を行って、10-(ビフェニル-4-イル)-7-ブロモ-12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの白色粉末を得た(34.9 g;収率69.5%)。
【0041】
得られた10-(ビフェニル-4-イル)-7-ブロモ-12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール(16.5 g)、9-フェニル-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-9H-カルバゾール(14.2 g)、トルエン/エタノール(4/1, v/v)混合溶媒(250 ml)、及び2M炭酸カリウム水溶液(48 ml))を窒素置換した反応容器に入れ、超音波照射下で30分間、窒素ガスを通気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.9 g)を添加した後、その混合物を加熱し、73℃で5時間撹拌した。その混合物を室温まで冷やした後、沈殿した粗生成物をろ過によって集めた。その粗生成物に1,2-ジクロロベンゼン(450 ml)を添加し、加熱しながら粗生成物を溶かし、ろ過によって不溶物を除いた後、ろ液を減圧下で濃縮した。1,2-ジクロロベンゼン(150 ml)及びn-ヘキサン(300 ml)を用いる結晶化による精製を行い、10-(ビフェニル-4-イル)-12,12-ジメチル-7-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの白色粉末を得た(9.8 g;収率45.2%)。
【0042】
得られた白色粉末の構造はNMRによって特定した。
1H-NMR (THF-d
8)で検出した36の水素のシグナルは以下のとおりである。δ(ppm) = 8.69(1H), 8.64(1H), 8.59(1H), 8.28(1H), 7.99(2H), 7.89(1H), 7.85-7.78(6H), 7.66(4H), 7.56-7.49(6H), 7.44-7.37(4H), 7.32(1H), 7.27(1H), 7.23(1H), 1.52(6H)。
【0043】
例3:H1-119の合成
12,12-ジメチル-10-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-yl)-7-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの合成
例1で合成した12,12-ジメチル-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール(5.5 g)、2-ブロモ-9,9-ジメチル-9H-フルオレン(6.4 g)、亜硫酸水素ナトリウム(0.3 g)、粉末銅(0.1 g)、3,5-ジ(tert-ブチル)サリチル酸(0.5 g)、炭酸カリウム(4.0 g)、及びドデシルベンゼン(5 ml))を窒素置換した反応容器に入れ、加熱し、180℃で29時間撹拌した。その混合物を100℃に冷やし、トルエン(80 ml)を添加した後、不溶物をろ過により除去し、ろ液を濃縮した。n-ヘキサン(20 ml)を用いた結晶化を行い、12,12-ジメチル-10-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの黄褐色粉末を得た(7.4 g;収率80.0%)。
【0044】
得られた12,12-ジメチル-10-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール(7.0 g)及びDMF(140 ml)を反応容器に入れた。その混合物を100℃まで加熱して溶かし、冷やした。N-ブロモコハク酸イミド(2.6 g)を氷冷条件下で添加し、その混合物を室温で1時間撹拌した。水(500 ml)を添加し、その混合物をろ過にかけて、7-ブロモ-12,12-ジメチル-10-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの淡赤色粉末を得た(5.7 g;;収率70.3%)。
【0045】
得られた7-ブロモ-12,12-ジメチル-10-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾール(4.0 g)、9-フェニル-3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-9H-カルバゾール(3.2 g)、トルエン/エタノール(4/1, v/v))混合溶媒(50 ml)、及び2M炭酸カリウム水溶液(10 ml))を窒素置換した反応容器に入れ、超音波照射下で30分間、窒素ガスを通気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.4 g)を添加した後、その混合物を加熱し、71℃で7時間撹拌した。混合物を室温まで冷やした後、水(20 ml)を添加して、有機層を集めるために液体分離を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水し、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル;溶出液:トルエン/シクロヘキサン)で精製して、12,12-ジメチル-10-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-7-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-10,12-ジヒドロインデノ[2,1-b]カルバゾールの白色粉末を得た(3.4 g;収率65.7%)。
【0046】
得られた白色粉末の構造をNMRによって特定した。
1H-NMR (THF-d
8) で検出された40の水素のシグナルは以下のとおりである。δ(ppm) = 8.67(1H), 8.65(1H), 8.60(1H), 8.28(1H), 8.08(1H), 7.90-7.82(5H), 7.69-7.66(5H), 7.58-7.49(5H), 7.43(2H), 7.39(2H), 7.36(1H), 7.33(1H), 7.28(1H), 7.23(1H), 1.61(6H), 1.51(6H)。
【0047】
第二及び第三のホスト化合物
第二及び第三のホスト化合物のそれぞれは、化合物H1と比較してさらに電子輸送性の高いワイドバンドギャップホスト化合物であり、分子中に以下の基の少なくとも1つを含むことができる。
【化24】
式中、X
1〜X
8はC又はNから選択され;Z
1及びZ
2はS又はOである。好ましくは、第二のホスト化合物及び第三のホスト化合物は異なる化合物である。
【0048】
ここでの開示の側面によれば、第二及び第三のホスト化合物中の任意の置換基は好ましくは、C
nH
2n+1、OC
nH
2n+1、OAr
1、N(C
nH
2n+1)
2、N(Ar
1)(Ar
2)、CH=CH-C
nH
2n+1、C=CHC
nH
2n+1、Ar
1、Ar
1-Ar
2、C
nH
2n-Ar
1からなる群から独立に選択される非縮合置換基であるか、あるいは非置換であり、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10であり、Ar
1及びAr
2は独立に、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、カルバゾール、及びそれらのヘテロ芳香族類似体からなる群から選択される。
【0049】
別の態様によれば、第二のホスト化合物は、ベンゾ縮合したチオフェンを有するトリフェニレンを含む化合物であることができる。トリフェニレンは、高い三重項エネルギーと、それでもなお高い[π]共役、及び第一の一重項と第一の三重項準位の間の比較的小さなエネルギー差をもつ多環式芳香族炭化水素である。このことは、トリフェニレンが、似た三重項エネルギーをもつその他の芳香族化合物(例えば、ビフェニル)と比較して、比較的容易に利用可能なHOMO及びLUMO準位を有していることを示している。トリフェニレン及びその誘導体をホストとして用いることの利点は、それが赤、緑、及び青色燐光ドーパントでさえ適合して、エネルギー消光なしに高い効率を与えることができることである。トリフェニレンホストを用いて、高効率かつ高安定性の燐光OLED(PHOLED)をもたらすことができる。Kwong及びAlleyene, Triphenylene Hosts in Phosphorescent Light Emitting Diodes, 2006, 60頁, 米国特許出願公開第2006/0280965 A1号公報を参照されたい。ベンゾ縮合したチオフェン類は、正孔輸送性有機導体として用いることができる。さらに、ベンゾチオフェン類、すなわちジベンゾ[b,d]チオフェン(ここでは「ジベンゾチオフェン」という)、ベンゾ[b]チオフェン、及びベンゾ[c]チオフェンの三重項エネルギーは比較的高い。PHOLED中でのホストとしてのベンゾ縮合したチオフェン類とトリフェニレンの組み合わせは有利でありうる。さらに具体的には、ベンゾ縮合したチオフェン類は一般的には電子輸送性である以上に正孔輸送性であり、トリフェニレンは正孔輸送性である以上に電子輸送性である。したがって、一分子中でこれら2つの部分を組み合わせることは、改善された電荷バランスをもたらすことができ、これが寿命、効率、及び低電圧に関するデバイス性能を向上させうる。この2つの部分のさまざまな化学連結を用いて、結果として生じる化合物の特性を調節してその化合物を個別の燐光発光体、デバイス構造、及び/又は製造工程に対して最も適したようにすることができる。例えば、m-フェニレン連結基は、より高い三重項エネルギーとより大きな溶解度をもたらすことが予測されるが、一方で、p-フェニレン連結基はより低い三重項エネルギーとより小さな溶解度をもたらすことが予測される。
【0050】
ベンゾ縮合チオフェン類の特性と同様に、ベンゾ縮合フラン類も一般的に比較的高い三重項エネルギーを有する正孔輸送物質である。ベンゾ縮合フラン類の例には、ベンゾフラン及びジベンゾフランが含まれる。したがって、トリフェニレンとベンゾフランを両方とも含む物質は、PHOLED中で発光体ホスト又は正孔阻止物質として有利に用いることができる。これら2つの基の両方を含む化合物は、向上した電子安定化をもたらし、これが低電圧でのデバイスの安定性及び効率を向上させうる。トリフェニレンを有するベンゾフラン化合物の特性は、トリフェニレンとベンゾフランを結合するために異なる化学連結を用いることによって必要に応じて調節しうる。
【0051】
第二のホスト化合物のための化合物は、必ずしもトリフェニレン類、ベンゾ縮合したチオフェン類、及びベンゾ縮合したフラン類ではない基で置換されていてもよい。好ましくは、その化合物の置換基として用いられる任意の基が、トリフェニレンベンゾ縮合チオフェン類又はベンゾ縮合フラン類を有することの利点を維持するために十分高い三重項エネルギーを有する(すなわち、その置換基の三重項エネルギーが、ベンゾ縮合チオフェン類、ベンゾ縮合フラン類、及びトリフェニレン類の高い三重項エネルギーを維持する)。上記化合物の置換基として用いうるそのような基の例には、C
nH
2n+1、OC
nH
2n+1、OAr
1、N(C
nH
2n+1)
2、N(Ar
1)(Ar
2)、CH=CH-C
nH
2n+1、C=CHC
nH
2n+1、Ar
1、Ar
1-Ar
2、C
nH
2n-Ar
1からなる群から独立に選択されるいずれかの非縮合置換基、又は非置換が含まれ、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10であり、Ar
1及びAr
2は独立にベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、カルバゾール、及びそれらのヘテロ芳香族類似体からなる群から選択される。本明細書に記載したホスト物質のための化合物は、十分に高い三重項エネルギーを有し、燐光青色発光物質を有するデバイスにおいて用いるために適している。
【0052】
ここに記載した化合物の置換基は非縮合であり、したがってそれらの置換基はその化合物のトリフェニレン、ベンゾ縮合フラン、又はベンゾ縮合チオフェン部分に縮合されていない。これら置換基は任意選択により内部縮合されていてもよい(すなわち互いに縮合されていてもよい)。
【0053】
ここで提供される物質はまた、蒸着及び溶液加工法の両方により作製された場合にデバイス中での改善されたフィルムの形成をもたらしうる。特に、改善された作製をもたらす物質は、中央にあるピリジン環を有し、そのピリジン環にベンゾ縮合チオフェン及びトリフェニレン、又はベンゾフラン及びトリフェニレンが結合している。この改善されたフィルム形成は、その化合物中での極性環及び非極性環の組み合わせの結果であると考えられる。
【0054】
別の態様によれば、第二及び/又は第三のホスト化合物は、トリフェニレンを有するベンゾ縮合チオフェン類又はベンゾ縮合フラン類である。トリフェニレンを有するベンゾ縮合チオフェン類又はベンゾ縮合フラン類の例には、以下の式(H-IV)、(H-V)、及び(H-VI)の構造を有する化合物が含まれる。
【化25】
式(H-IV)中、XはS又はOであり;R
1、R
2、及びR
3は、C
nH
2n+1、OC
nH
2n+1、OAr
1、N(C
nH
2n+1)
2、N(Ar
1)(Ar
2)、CH=CH-C
nH
2n+1、C=CHC
nH
2n+1、Ar
1、Ar
1-Ar
2、C
nH
2n-Ar
1、及び水素からなる群から独立に選択される非縮合置換基であり;nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10であり;Ar
1及びAr
2は独立にベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、カルバゾール、及びそれらのヘテロ芳香族類似体からなる群から選択され;pは1、2、3、又は4であり;R
1、R
2、及びR
3のうち少なくとも1つはトリフェニレン基を含む。
【0055】
式(H-V)において、XはS又はOであり;R
1及びR
2は、C
nH
2n+1、OC
nH
2n+1、OAr
1、N(C
nH
2n+1)
2、N(Ar
1)(Ar
2)、CH=CH-C
nH
2n+1、C=CHC
nH
2n+1、Ar
1、Ar
1-Ar
2、C
nH
2n-Ar
1、及び水素からなる群から独立に選択される非縮合置換基であり;nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10であり;Ar
1及びAr
2は独立にベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、カルバゾール、及びそれらのヘテロ芳香族類似体からなる群から選択され;oは1、2、3、又は4であり;pは1又は2であり;R
1及びR
2のうち少なくとも1つはトリフェニレン基を含む。
【0056】
式(H-VI)において、XはS又はOであり;R
1及びR
2は、C
nH
2n+1、OC
nH
2n+1、OAr
1、N(C
nH
2n+1)
2、N(Ar
1)(Ar
2)、CH=CH-C
nH
2n+1、C=CHC
nH
2n+1、Ar
1、Ar
1-Ar
2、C
nH
2n-Ar
1、及び水素からなる群から独立に選択される非縮合置換基であり;nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10であり;Ar
1及びAr
2は独立にベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、カルバゾール、及びそれらのヘテロ芳香族類似体からなる群から選択され;o及びpは1、2、3、又は4であり;R
1及びR
2のうち少なくとも1つはトリフェニレン基を含む。
【0057】
式(H-IV)の構造を有する化合物の例には以下のものが含まれる。
【化26】
式中、XはS又はOである。好ましくは、XはSである。R
1〜R
nは独立に、C
nH
2n+1、OC
nH
2n+1、OAr
1、N(C
nH
2n+1)
2、N(Ar
1)(Ar
2)、CH=CH-C
nH
2n+1、C=CHC
nH
2n+1、Ar
1、Ar
1-Ar
2、C
nH
2n-Ar
1からなる群から独立に選択される非縮合置換基であるか又は非置換である。R
1〜R
nのそれぞれは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10である。Ar
1及びAr
2は独立にベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、カルバゾール、及びそれらのヘテロ芳香族類似体からなる群から選択される。R
1、R
2、及びR
3のうち少なくとも1つはトリフェニレン基を含む。
【0058】
式(H-V)の構造を有する化合物の例には以下のものが含まれる。
【化27】
【化28】
式中、XはS又はOである。好ましくは、XはSである。R
1〜R
nは独立に、C
nH
2n+1、OC
nH
2n+1、OAr
1、N(C
nH
2n+1)
2、N(Ar
1)(Ar
2)、CH=CH-C
nH
2n+1、C=CHC
nH
2n+1、Ar
1、Ar
1-Ar
2、C
nH
2n-Ar
1からなる群から独立に選択されるか又は非置換である。R
1〜R
nのそれぞれは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができ、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10である。Ar
1及びAr
2は独立にベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、カルバゾール、及びそれらのヘテロ芳香族類似体からなる群から選択される。R
1、R
2、及びR
3のうち少なくとも1つはトリフェニレン基を含む。
【0059】
式(H-VI)の構造を有する化合物の例には以下のものが含まれる。
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
上記式中、XはS又はOである。好ましい態様では、XはSである。R
1〜R
nは独立に、C
nH
2n+1、OC
nH
2n+1、OAr
1、N(C
nH
2n+1)
2、N(Ar
1)(Ar
2)、CH=CH-C
nH
2n+1、C=CHC
nH
2n+1、Ar
1、Ar
1-Ar
2、C
nH
2n-Ar
1からなる群から独立に選択されるか又は非置換である。R
1〜R
nのそれぞれは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表すことができる。nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10である。Ar
1及びAr
2は独立にベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、カルバゾール、及びそれらのヘテロ芳香族類似体からなる群から選択される。R
1、R
2、及びR
3のうち少なくとも1つはトリフェニレン基を含む。
【0060】
ここで開示したホスト化合物物質の全ては、燐光ドーパントの三重項エネルギーよりも高い三重項エネルギーを有する化合物である。このエネルギー構成が、ドーパント上での三重項励起状態の閉じ込めを可能にする。発光層における追加のホスト物質の使用は、励起子と電荷キャリアとの相互作用を低減させることでき、それによって励起子の消光を低減し、これがデバイスの効率及び/又は寿命を向上させうる。
【0061】
発光層中の第二のホスト化合物のためのワイドバンドギャップホスト化合物は、少なくとも2.0eVのHOMO−LUMOバンドギャップを有する。用いられる燐光ドーパントに応じて、いくつかの場合には、ワイドバンドギャップホスト化合物は少なくとも2.5eVの、いくつかの場合には少なくとも3.0eVのHOMO−LUMOバンドギャップを有する。いくつかの場合には、ワイドバンドギャップホスト化合物のHOMO−LUMOバンドギャップは、正孔輸送性の第一のホスト化合物のものと同じか、それより大きい。ワイドバンドギャップホスト化合物は、発光層中でいずれの種類の電荷も容易には輸送しない。特に、ワイドバンドギャップホスト化合物は、正孔輸送性の第一のホスト化合物よりも低い正孔移動度を有する。ホスト化合物は、発光層の他の成分と良く混合することができ、かつ非晶質膜の形成を促進することができることが好ましい。
【0062】
上述した第二のホスト化合物の具体例の合成の情報は、2009年2月12日に刊行されたPCT国際公開第2009/021126号(その内容を本明細書に援用する)及び2010年7月22日の刊行されたPCT国際公開第2010/083359号(その内容を本明細書に援用する)に見ることができる。
【0063】
発光層のための化合物は、任意の好適な堆積手法を用いて堆積させることができ、それには、気相堆積法、例えば、真空熱蒸着が含まれる。発光層中のさまざまな化合物は、別個に又は組み合わせて堆積させることができる。例えば、各化合物は、個々に制御された速度で堆積させてもよく、あるいはそれに代えて、2以上のホスト化合物を予め混合し、次に一緒に蒸発させてもよい。
【0064】
ここで議論した多成分発光層の成分は、全体の発光層物質のうちの質量%として定義した以下の量で用いることができる。一つの態様によれば、燐光ドーパントは0.5〜20%、より好ましくは1〜10%、最も好ましくは3〜7%で備えることができる。第一のホスト化合物は、25%以下、より好ましくは約10〜20%を構成することが好ましい。第二のホスト化合物は、好ましくは、約50〜90%、より好ましくは約60〜80%を構成する。第三のホスト化合物は、好ましくは、約10〜50%、より好ましくは約20〜40%を構成する。発光層中の発光ドーパントとホスト物質の相対量は、具体的な用途に応じて変わる。
【0065】
励起子/電子阻止層
別の側面によれば、ここで開示したOLEDは、上述した一般式H1で表される化合物である物質から形成され、発光層とアノードの間に配置された励起子/電子阻止層(EBL)をさらに含むことができる。このEBLは、励起子と電子のうち少なくとも1つ又はこれら両方をブロックする。
【0066】
EBLのための物質は、一般式H1を有する化合物の以下の例からなる群から選択することができる:化合物H1-1、化合物H1-2、化合物H1-3、化合物H1-4、化合物H1-5、化合物H1-6、化合物H1-7、化合物H1-8、化合物H1-9、化合物H1-10、化合物H1-11、化合物H1-12、化合物H1-13、化合物H1-14、化合物H1-15、化合物H1-16、化合物H1-17〜化合物H1-120(これらは本明細書に記載されている)。
【0067】
正孔輸送層
ここでの開示の別の側面によるOLEDは、発光層とアノードの間に配置された少なくとも1つの正孔輸送層をさらに含む。この少なくとも1つの正孔輸送層は、下に挙げた以下の式(HTL-I)〜(HTL-VI)から選択される式を有する化合物のうち少なくとも1つを含む物質である。
【0068】
(HTL-I)は下記式である。
【化38】
式中、R
11及びR
12は同じか異なり、独立に、水素原子、重水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、フェニル基、低級アルキル基又は重水素置換を有するフェニル基、及び重水素原子又は低級アルコキシ基置換を有するフェニル基からなる群から選択され、但し、R
11及びR
12のうち少なくとも1つは、重水素原子、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、フェニル基、低級アルキル基置換を有するフェニル基、又は低級アルコキシ基置換を有するフェニル基であり;かつ、R
13は、水素原子、重水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又は塩素原子を表す。
【0069】
(HTL-II)は下記式である。
【化39】
式中、R
21、R
22、及びR
23は同じか異なり、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、非置換フェニル基、又は低級アルキル基もしくは低級アルコキシ基を置換基(1又は複数)として有するフェニル基を表し;R
24は、水素原子、重水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又は塩素原子を表し;
A
1は以下の構造式(a1)〜(i1)のいずれか1つで表される基を表す。
【化40】
式中、R
25は、水素原子、重水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又は塩素原子を表す。
【0070】
(HTL-III)は下記式である。
【化41】
式中、R
31、R
32、及びR
33は同じか異なり、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、非置換フェニル基、又は重水素原子、低級アルキル基、もしくは低級アルコキシ基を置換基(1又は複数)として有するフェニル基を表し;R
34は、水素原子、重水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又は塩素原子を表し;
A
2は以下の構造式(j1)〜(n1)のいずれか1つで表される基を表す。
【化42】
【0071】
(HTL-IV)は下記式である。
【化43】
式中、R
41及びR
42は同じか異なり、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、非置換フェニル基、又は重水素原子、低級アルキル基、もしくは低級アルコキシ基を置換基(1又は複数)として有するフェニル基を表し;R
43は、水素原子、重水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又は塩素原子を表し;
A
3は以下の構造式(a2)〜(i2)のいずれか1つで表される基を表す。
【化44】
【化45】
式中、R
44は、水素原子、重水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又は塩素原子を表す。
【0072】
(HTL-V)は下記式である。
【化46】
式中、R
51及びR
52は同じか異なり、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、非置換フェニル基、又は重水素原子、低級アルキル基、もしくは低級アルコキシ基を置換基(1又は複数)として有するフェニル基を表し;R
53は、水素原子、重水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又は塩素原子を表し;
A
4は以下の構造式(j2)〜(n2)のいずれか1つで表される基を表す。
【化47】
【0073】
(HTL-VI)は下記式である。
【化48】
式中、R
61〜R
69は同じか異なり、独立に、水素原子、重水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、非置換芳香族炭化水素基、又は重水素原子、低級アルキル基、もしくは低級アルコキシ基を有するフェニル基を表し;r
61〜r
69は同じか異なり、0、1、又は2
を表す。
【0074】
ここで用いる「低級アルキル基」及び「低級アルコキシ基」の用語は、「C
1−4アルキル基」及び「C
1−4アルコキシ基」をそれぞれ意味する。
【0075】
式(HTL-I)〜(HTL-VI)の化合物の合成情報、及び式(HTL-I)〜(HTL-VI)の化合物の具体例は、Tomiyamaらの米国特許第5,707,747号明細書に提供されており、その内容を参照により本明細書に援用する。
【0076】
式(HTL-I)〜(HTL-VI)の構造を有する化合物の例には以下のものが含まれる。
【0080】
基材
本発明のOLEDは、OLEDを支持するための基材上に作ることができる。基材は、約400〜約700nmの可視領域内の光が少なくとも約50%の透過率を有する平坦な基板であることが好ましい。基材には、ガラス板、ポリマー板などが含まれる。特に、ガラス板には、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、バリウムボロシリケートガラス、石英などが含まれる。ポリマー板には、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフィド、ポリスルホンなどが含まれる。
【0081】
電極
本発明のOLED100のアノード3は、正孔注入層、正孔輸送層、又は発光層に正孔を注入する役割が考えられる。典型的には、アノードは4.5eV以上の仕事関数を有する。アノードとして用いるのに適した物質の具体例には、インジウムスズオキシド合金(ITO)、酸化スズ(NESA)、インジウム亜鉛酸化物、金、銀、白金、銅などが含まれる。アノードは、蒸着法、スパッタリング等などの方法によって、上で論じたものなどの電極材料から薄膜を形成することによって作成できる。
【0082】
光が発光層から発せられる場合、アノードにおける可視光領域の光の透過率は、好ましくは10%より大きい。アノードのシート抵抗は好ましくは数百Ω/□以下である。アノードの膜厚はその物質に応じて選択され、一般的には約10nm〜約1μm、好ましくは約10nm〜約200nmの範囲である。
【0083】
カソード11は、好ましくは、電子注入層、電子輸送層、又は発光層に電子を注入する目的のために、小さな仕事関数を有する物質を含む。カソードとして用いるために適した物質には、インジウム、アルミニウム、マグネシウム、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−スカンジウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金などが含まれるがこれらに限定されない。透明又は上面発光デバイスのためには、米国特許第6,548,956号明細書に開示されているものなどのTOLEDカソードが好ましい。
【0084】
カソードはアノードの場合と同様に蒸着法、スパッタリング法などの方法によって薄膜を形成することによって作成できる。さらに、発光がカソード側から取り出される態様も同様に用いることができる。
【0085】
逆構造OLED
図6は、ここで開示する別の態様に従う逆構造OLED400を示す。このデバイスは、基材410、カソード415、発光層420、正孔輸送層425、及びアノード430を含む。OLED400は、記載した層を順に堆積させることによって作製できる。最も一般的なOLEDの構成はアノードの上方に配置されたカソードを有し、デバイス400はアノード430の下方に配置されたカソード415を有するので、デバイス400を逆構造OLEDとよぶことができる。OLED400も、
図1のOLED 100に図示した層のいくつかがデバイス構造から省略されているOLEDの例を図示している。
【0086】
OLED 100、200、300、及び400の単純な層状化構造は非限定的な例として提供され、本発明の態様は、広い範囲のその他の構造と関連して用いられうることが理解される。記載されている具体的な物質および構造は事実上例示であり、その他の物質および構造も使用できる。設計、性能、およびコスト要因に基づいて、実用的なOLEDは様々なやり方で、上に記載した様々な層を組み合わせることによって実現でき、あるいは、いくつかの層は完全に省いてもよい。具体的に記載されていない他の層を含むこともできる。
【0087】
本明細書に記載されている例の多くは単一の物質を含むものとして様々な層を記載しているが、物質の組合せ、あるいはより一般的には混合物を用いてもよいことが理解される。また、層は様々な副層(sublayer)を有してもよい。本明細書において様々な層に与えられている名称は、厳格に限定することを意図するものではない。例えば、デバイス400において、正孔輸送層425は正孔を輸送し且つ発光層420に正孔を注入し、正孔輸送層として、あるいは正孔注入層として説明されうる。一つの態様において、OLEDは、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するものとして説明できる。この有機層は単一の層を含むか、または、記載したように様々な有機物質の複数の層をさらに含むことができる。
【実施例】
【0088】
本発明を、以下の実施例デバイス及び比較例デバイスを参照してさらに詳細に説明する。しかし、本発明は以下の実施例に限定されない。実施例デバイスを作製するのに用いた具体的有機化合物H1-1、H1-118、H1-119、H、E1、G1、NPD、及びAlq
3の化学構造を以下に示す。
【0089】
【化52】
【化53】
【0090】
[ホストとしての化合物H1 - 実施例デバイス#1、#2、及び#3]
四成分発光層を有し、
図2に示した構造を有する実施例の緑色PHOLEDを構築した。実施例デバイス#1、#2、及び#3はITOアノード(800Å)及びLiF/Alカソードを有していた。その2つの電極の間に以下の層を堆積させた:化合物LG-101(LG Chemical社から)で作られた100Åの厚さの正孔注入層(HIL)、NPDで作られた500Åの厚さの電子阻止層(EBL)、300Åの厚さの四成分発光層(EML)、化合物E1で作られた100Åの厚さの正孔阻止層(HBL)、及びAlq
3で作られた400Åの厚さの電子輸送層。これらの試験デバイス中の四成分EMLは、3種のホスト化合物を用いて形成された。第一のホスト化合物は一般式H1を有する正孔輸送型ホスト化合物であり、第二のホスト化合物はワイドバンドギャップマトリクスホストとしての化合物Hであり、第三のホスト化合物は電子輸送ホストとしてのE1だった。表3の試験デバイスデータのまとめに示されているとおり、デバイス#1、#2、及び#3中の具体的な正孔輸送ホスト化合物は、それぞれH1-1、H1-119、及びH1-118だった。化合物G1は緑色発光体ドーパントだった。これらの化合物のHOMO-LUMOエネルギー準位は下の表1に示されている。
【0091】
【表1】
【0092】
ここでの開示に従う例示デバイスに用いられた有機化合物の機能は下の表2に示されている。
【0093】
【表2】
【0094】
用いた発光層の各成分の量を、下の表3に示している。それらの量は、発光層中の質量%で示されている。例えば、例示デバイス#1中で、第一のホスト化合物H1-1、第二のホスト化合物H、第三のホスト化合物E1、及び発光体ドーパントG1の濃度はそれぞれ15質量%、60質量%、20質量%、及び5質量%である。
【0095】
一つの態様によるEML中のホストのうちの1つとして正孔輸送型ホストH1を組み込んだ
図2のデバイスの四成分EMLに対するエネルギー準位図が
図4に示されている。例示デバイス#4の四成分EML部分に対するエネルギー準位図が
図5に示されている。化合物H1-1のHOMO準位は5.59eVであり、これはその他のホスト化合物H及びE1のHOMO準位(これらはそれぞれ5.96及び5.73である)よりも高い(すなわち、より電気陰性度が小さい)。したがってホスト化合物H及びE1は、正孔輸送型化合物H1-1、H1-118、及びH1-119よりも電子輸送性である。化合物H1-1、H1-118、及びH1-119のHOMO準位は、発光体ドーパントG1のHOMO準位(5.1eV)に比較的近く、上で論じたように、これが、正孔輸送ホスト化合物、例えば、H1-1、H1-118、及びH1-119が、発光体ドーパントから正孔輸送機能の負荷をとり除くことを可能にし、これがその発光体ドーパント物質の寿命を延ばす。
【0096】
EML中の高い15質量%の化合物H1-1、H1-118、及びH1-119と低い5質量%のG1を備える例示デバイス#1〜#8において、正孔の大部分は正孔輸送ホスト化合物H1-1、H1-118、及びH1-119によって輸送され、これが電荷キャリアと励起子の分離を高め、濃度消光及びポーラロン-励起子相互作用を最小化すると考えられる。化合物H1-1の三重項エネルギー(2.80eV)は、G1の三重項エネルギー(2.4eV)よりも高く、発光消光を引き起こさない。
【0097】
[ホスト及びEBLとしての化合物H1 − 例示デバイス#4〜#8]
例示デバイス#4、#5、#6、#7、及び#8は、
図3に示された構造300を有していた。例示デバイス#4、#5、#6、#7、及び#8のEMLは、第一のホスト化合物として一般式H1を有する正孔輸送化合物(15質量%)、第二のホスト化合物としての化合物H(60質量%)、第三のホスト化合物としての化合物E1(20質量%)、及び発光体ドーパント化合物G1(5質量%)からなる四成分組成物を有していた。
【0098】
例示デバイスからの発光スペクトルの測定されたCIE 1931座標、λ
max、及びFWHM(半値全幅)を表3に示している。EML中の成分として化合物H1-1、H1-119、又はH1-118を備えた例示デバイス#1〜#8は、比較のための参照デバイスCEと比較してより良好な彩度(color saturation)を示した。表3に示したとおり、2つの群の例示デバイスを評価した:(1)EBLとしてのNPDとともに、発光層中のホスト化合物の1つとしてここで開示した正孔輸送型化合物を用いた第一の群(例示デバイス#1、#2、及び#4);及び(2)発光層中のホスト化合物の1つとして、さらにEBLとして、ここで開示した化合物を用いる第二の群(例示デバイス#5、#6、#8、#9、及び#14)。一般式H1によって表されるインデノカルバゾール誘導体化合物を、マトリクスホスト、H、電子輸送ホスト、E1、とともにホストとして用い、正孔輸送ホスト機能をもたらした。比較例示デバイスCEは2つのホスト化合物のみ、マトリクスホストHと電子輸送ホストE1、及びEBLとしてNPDを有していた。優れた彩度は、全ての例示デバイスで達成された。例示デバイスは、比較例デバイスよりも狭いFWHMを示した。本発明者は、これは、EMLへの正孔輸送ホストの添加によって引き起こされた、増大したミクロキャビティ効果の証拠でありうると考えている。これは、化合物H1の輸送機能に加えて、その屈折率がEML中の反射特性を改善し、それが発光のスペクトルを狭くすること及び高められた発光強度をもたらすことを示唆しているであろう。これらの有利な効果は予測できるものではなく、なぜならそのような効果は一般に化合物の化学構造に基づいては予測できないからである。
【0099】
【表3】
【0100】
HOMO、LUMO準位、及び三重項エネルギー準位を上の表1に示している。化合物H1-1、H1-118、及びH1-119の非常に浅いLUMO準位(それぞれ、2.10、2.20、及び2.33 eV)は、電子がHTLのなかへ漏れることを阻止し、化合物H1-1、H1-118、及びH1-119の高い三重項エネルギー(それぞれ、2.80、2.79、及び2.77 eV)は、励起子がHTLのなかへ漏れることを阻止する。励起子/電子阻止層としてH1-1、H1-118、又はH1-119などの化合物を用いたデバイス中の励起子及び電子は、発光層内により良く閉じ込められる。したがって、それは、発光層中での電荷−励起子分離と、励起子/電子阻止層における電子及び励起子のブロックの両方を兼ね備えている。
【0101】
全ての有機層は、高真空条件下(1×10
-7 Torr)で堆積した。PHOLEDは真空から不活性雰囲気のグローブボックスへと直接移し、グローブボックス中で水分吸収剤とともにUV硬化性エポキシ及びガラス蓋を用いてそれを密封した。
【0102】
別の定めのない限り、ここに記載した発明のさまざまな態様の層のいずれも、任意の好適な方法で堆積できる。有機層については、好ましい方法には、熱蒸着、インクジェット(例えば米国特許第6,013,982号及び同6,087,196号明細書ものなど、それら全体を参照により援用する)、有機気相蒸着(OVPD)(例えば、Forrestらへの米国特許第6,337,102号明細書に記載されているものなど、それら全体を参照により援用する)、及び有機気相ジェット印刷(OVJP)(例えば、米国特許出願番号第10/233,470号に記載されているものなど、その全体を参照により援用する)が含まれる。その他の好適な堆積法には、スピンコーティング及びその他の溶液加工法が含まれる。溶液に基づく方法は、窒素又は不活性雰囲気下で実施されることが好ましい。その他に層のためには、好ましい方法には熱蒸着が含まれる。好ましいパターン形成法には、マスクを通した堆積、米国特許第6,294,398号及び同6,468,819号明細書に記載したものなどのコールドウェルディング(その全体を参照により援用する)、及びインクジェット及びOVJDなどのいくつかの堆積法に関連するパターン形成法が含まれる。その他の方法も用いることができる。堆積される物質は、それらを具体的な堆積法と相性が良いようにするために修飾してもよい。例えば、分岐又は非分岐の、そして好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキル及びアリール基などの置換基を、小分子に用いて溶液加工を受けるそれらの能力を高めてもよい。20個以上の炭素を有する置換基を用いてもよく、3〜20個の炭素が好ましい範囲である。非対称構造をもつ物質は、対称構造を有するものよりも良好な溶液加工性を有し、なぜなら、非対称物質は再結晶化に対するより小さな傾向を有しうるからである。デンドリマー置換基を用いて、溶液加工性を受ける小分子の能力を高めてもよい。
【0103】
ここで説明した構造は例に過ぎず、開示した発明によるOLEDはその具体的な構造に限定されず、より多くの層又はより少ない層、あるいは層の別の組み合わせを含むことができる。
【0104】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】