特許第6286054号(P6286054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286054
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】歯車対
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/17 20060101AFI20180226BHJP
   F16H 1/04 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   F16H55/17 Z
   F16H1/04
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-545008(P2016-545008)
(86)(22)【出願日】2015年6月12日
(86)【国際出願番号】JP2015066996
(87)【国際公開番号】WO2016031347
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2017年2月13日
(31)【優先権主張番号】特願2014-174014(P2014-174014)
(32)【優先日】2014年8月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390009896
【氏名又は名称】愛知機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(72)【発明者】
【氏名】山下 武道
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 豊
(72)【発明者】
【氏名】刈屋 武
(72)【発明者】
【氏名】森 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正
(72)【発明者】
【氏名】永見 浩康
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−061610(JP,A)
【文献】 特開2014−137082(JP,A)
【文献】 特開平07−293668(JP,A)
【文献】 特開2008−074947(JP,A)
【文献】 特開2002−070988(JP,A)
【文献】 特開2013−241961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/17
F16H 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に噛み合って対を成す第1歯車と第2歯車とを備えた歯車対であって、第1歯車の歯面の算術平均粗さがRa0.10未満であり、第2歯車の歯面の算術平均粗さがRa0.15以上であり、
第1歯車の歯数が、第2歯車の歯数よりも少ないことを特徴とする歯車対。
【請求項2】
第1歯車の歯面の算術平均粗さがRa0.05以下であることを特徴とする請求項1に記載の歯車対。
【請求項3】
第2歯車の歯面の算術平均粗さがRa0.30以上であることを特徴とする請求項1又はに記載の歯車対。
【請求項4】
第1歯車及び第2歯車の歯面の表面粗さにおいて、算術平均粗さをRaとし、最大高さをRyとし、スキューネスをRskとしたときに、第1歯車及び第2歯車のいずれのRskも負であり、且つRaに対するRyの比(Ry/Ra)が、いずれも6以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯車対。
【請求項5】
第1歯車が、ヘリカル歯車、平歯車、及びはすば歯車のうちのいずれかの歯車であり、第2歯車が、ヘリカル歯車、平歯車、及びはすば歯車のうちのいずれかの歯車であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の歯車対。
【請求項6】
第1歯車及び第2歯車の歯面の二乗平均平方根高さRq1及びRq2において、双方を組み合わせた二乗平均粗さRrmsを、Rrms=√(Rq1+Rq2)とした場合、Rrms<0.4であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯車対。
【請求項7】
第1歯車の歯面の表面硬さが、第2歯車の歯面の表面硬さよりも小さいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の歯車対。
【請求項8】
第1歯車及び第2歯車のうちの少なくとも第2歯車の表面に、硬質な表面処理を施したことを特徴とする請求項に記載の歯車対。
【請求項9】
硬質な表面処理が、ダイヤモンドライクカーボン膜の成膜処理であることを特徴とする請求項に記載の歯車対。
【請求項10】
ダイヤモンドライクカーボン膜の水素量が1at%以下であることを特徴とする請求項に記載の歯車対。
【請求項11】
第1歯車及び第2歯車の少なくとも一方の歯車の歯面の表面を平滑化する研磨方法が、バレル式研磨方法であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の歯車対。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に噛み合って対を成す第1歯車と第2歯車とを備えた歯車対に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の歯車対としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載の歯車対は、相互に噛み合って対を成す第1歯車及び第2歯車を備え、各歯車の歯面の算術平均粗さRa、最大高さRy、スキューネスRsk、及び算術平均粗さと最大高さの比Ry/Raを規定したものである。これにより、歯面間の油溜まり量を多くして歯面相互の摩擦係数を小さくし、歯面の耐焼き付き性と耐摩耗性の向上とともに歯車の動力伝達効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2004−308817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような従来の歯車対にあっては、歯車の歯面の表面粗さを規定することにより、歯車の伝達性能の向上を実現するのであるが、その一方で、両歯車の歯面の表面粗さが異なる場合、不可避的に生じる歯先・歯元間の接触時の片当たりがピッチング疲労寿命に大きく影響し、歯車の伝達性能向上と歯面のピッチング疲労寿命の向上とがトレードオフの関係にあることから、これらを両立させることが困難であった。
【0005】
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたもので、一対の歯車の合成粗さ向上による伝達効率の向上を実現し、歯車の伝達効率の向上と歯面のピッチング疲労寿命の向上とを安価に両立させることができる歯車対を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係わる歯車対は、相互に噛み合って対を成す第1歯車と第2歯車とを備えた歯車対であって、第1歯車の歯面の算術平均粗さがRa0.10未満であり、第2歯車の歯面の算術平均粗さがRa0.15以上であり、第1歯車の歯数が、第2歯車の歯数よりも少ないことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係わる歯車対は、上記構成を採用したことにより、一対の歯車の合成粗さ向上による伝達効率の向上を実現し、歯車の伝達効率の向上と歯面のピッチング疲労寿命の向上とを安価に両立させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係わる歯車対は、相互に噛み合って対を成す第1歯車と第2歯車とを備えている。第1歯車は、ヘリカル歯車、平歯車、及びはすば歯車のうちのいずれかの歯車を用いることができる。他方、第2歯車は、同様に、ヘリカル歯車、平歯車、及びはすば歯車のうちのいずれかの歯車を用いることができる。
【0009】
そして、歯車対は、第1歯車の歯面の算術平均粗さがRa0.10未満であり、第2歯車の歯面の算術平均粗さがRa0.15以上であるものとしている。また、歯車対は、より望ましい実施形態として、第1歯車の歯面の算術平均粗さをRa0.05以下とし、また、第2歯車の歯面の算術平均粗さをRa0.30以上としている。
【0010】
このように、歯車対は、第1歯車の歯面の算術平均粗さRaを小さくし、これに対して、第2歯車の歯面を少し粗いものにする。この種の歯車対では、歯面の算術平均粗さの小さい方が、力の伝達効率は良くなるのであるが、双方の歯面の算術平均粗さを小さくするとピッチング特性の低下が認められる。そこで、歯車対では、第1歯車に対して第2歯車の歯面を粗くすることで、いわゆる初期馴染みを与えている。そして、第1歯車の歯面の算術平均粗さをRa0.10未満とし、第2歯車の歯面の算術平均粗さをRa0.15以上とすることで、コーティング無しでも耐ピッチング性を改善することができる。これにより、歯車対は、歯車の伝達効率向上と歯面のピッチング疲労寿命の向上を安価に両立させることができる。
【0011】
また、歯車対は、第1歯車の歯数が、第2歯車の歯数よりも少ないものとしている。つまり、歯車対は、第1歯車と第2歯車とで回転伝達を行った場合、歯数が少ない第1歯車の方が歯面の摺動回数が多くなる。これにより、歯車対は、歯数の少ない第1歯車の歯面の算術平均粗さRaを小さくし、これに対して、第2歯車の歯面が粗いものとなり、応力負荷回数の多い第1歯車に歯先・歯元の片当たりによる摩耗を生じさせて、結果的にピッチング疲労寿命を軽減させる。
【0012】
さらに、歯車対は、第1歯車及び第2歯車の歯面の表面粗さにおいて、算術平均粗さをRaとし、最大高さをRyとし、スキューネスをRskとしたときに、第1歯車及び第2歯車のいずれのRskも負であり、且つRaに対するRyの比(Ry/Ra)が、いずれも6以上である構成としている。このように、歯面のRskを負にすることで、回転伝達の際に局所的な接触が回避されるとともに面圧が低減され、ピッチングが発生し難くなる。
【0013】
さらに、歯車対は、第1歯車及び第2歯車の歯面の二乗平均平方根高さRq1及びRq2において、双方を組み合わせた二乗平均粗さ(合成粗さ)Rrmsを、Rrms=√(Rq1+Rq2)とした場合、Rrms<0.4である構成としている。
【0014】
歯車対は、より好ましい実施形態として、第1歯車の歯面の表面硬さが、第2歯車の歯面の表面硬さよりも小さいものとしており、第1歯車及び第2歯車のうちの少なくとも第2歯車の表面に、硬質な表面処理を施すことで表面硬さの差異を設けている。
【0015】
また、歯車対は、上記の硬質な表面処理が、ダイヤモンドライクカーボン膜(以下、「DLC膜」と記載する)の成膜処理とすることができ、より望ましくは、DLC膜の水素量を1at%以下としている。さらに、歯車対は、第1歯車及び第2歯車の少なくとも一方の歯車の歯面の表面を平滑化する研磨方法が、バレル式研磨方法である。
【0016】
ここで、歯車対について、粗さの異なる多数の組合せで試験し、損傷した歯車の歯面を詳細に観察して分析した結果、不可避的に生じる歯先・歯元間の接触時の片当たりが、ピッチング疲労寿命に大きく影響することが判明した。
【0017】
具体的には、上記第1歯車のように、歯数が少なくて摺動回数が多い歯車の歯面において、片当たり時に発生する摩耗量と、ピッチング疲労寿命との間に正の相関関係のあることが判明し、摩耗が多いほど片当たり時の応力集中が軽減され、結果的にピッチングに繋がる亀裂進展の減速に繋がることを見出した。
【0018】
このため、歯車対は、歯面の粗さ低減によるメタルコンタクトの低減には、歯車双方の歯面の表面粗さ低減が有効ではあるが、歯先・歯元の片当たりを緩和するためには、片当たりにより生じる摩耗を考慮し、歯車の歯面の表面粗さと摩耗の生じやすい組合せとすることが重要である。
【0019】
歯車対は、上記の考えに基づくと、歯先・歯元の片当たりにより摩耗の生じる側と反対側の歯車の表面粗さが大、又は表面硬さが大であることが必須条件となる。また、歯車対は、基材の硬さのみでなく、歯面への熱処理やコーティングを付加することで、歯先・歯元の片当たりにより摩耗を促進する方法も有効である。
【0020】
さらに、歯車対は、第1歯車及び第2歯車の双方の歯面の硬さがほぼ等しい場合、歯先・歯元の片当たりにより加速される歯面のピッチング疲労寿命が、応力負荷回数に大きく依存するため、歯数の大小によって疲労の生じる側がおおよそ決まる。応力負荷回数の多い側は、相対的に歯数の少ない歯車(主として第1歯車)であり、歯数の少ない歯車側に歯先・歯元の片当たりによる摩耗が生じることが、結果的にピッチング疲労寿命の軽減に繋がる。
【0021】
さらに、歯車対は、力の伝達効率を向上させるには、歯面の表面粗さの向上のみでなく、歯形の端部の角部が平滑加工時に付帯的に研磨され、エッジ部が優先的に研磨によりダレが発生するような加工、例えばバレル研摩のような加工法が、結果的に歯先・歯元の片当たりを軽減することとなるため有効である。
【0022】
さらに、歯車対は、各歯車の歯面へのコーティングにおいて、DLC膜の成膜は、メタルコンタクトが生じる際の接点の摩擦低減に有効である。とくに、水素を含まないDLC膜は、潤滑油中の油性剤を優先的に表面に物理吸着し、2面間のメタルコンタクトを妨げることとなり、摩擦低減に有効である。また、DLC膜は、水素を含まない方が一般的に硬度が高く、歯先・歯元の片当たりにより生じる摩耗を促す点においても有効である。
【0023】
歯車対について、歯面の表面粗さの異なる多数の組合せで試験し、損傷した歯車の歯面を詳細に観察して分析した。その結果を表1及び表2に示す。なお、実施例(表1)及び比較例(表2)の歯車は、いずれもヘリカル歯である。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
表1,2における左下の数字1〜12は、以下の構成(1)〜(12)に相当する。
(1)第1歯車の歯面の算術平均粗さがRa0.10未満であり、第2歯車の歯面の算術平均粗さがRa0.15以上である。
(2)第1歯車の歯数が、第2歯車の歯数よりも少ない。
(3)第1歯車の歯面の算術平均粗さがRa0.05以下である。
(4)第2歯車の歯面の算術平均粗さがRa0.30以上である。
(5)第1歯車及び第2歯車のいずれのRskも負であり、且つRaに対するRyの比(Ry/Ra)が、いずれも6以上である。
(6)歯車の種類
(7)第1歯車及び第2歯車を組み合わせた二乗平均粗さ(合成粗さ)Rrmsが、Rrms<0.4である。
(8)第1歯車の歯面の表面硬さが、第2歯車の歯面の表面硬さよりも小さい。
(9)少なくとも第2歯車の表面に硬質な表面処理を施した。
(10)硬質な表面処理がDLC膜である。
(11)DLC膜の水素量が1at%以下である。
(12)少なくとも一方の歯車の歯面を平滑化する研磨方法がバレル式研磨方法である。
【0027】
表1に示すように、実施例1及び実施例2は、上記構成(1)〜(3)を満足するもので、合成粗さRrmsも小さいことから、高い伝達効率と長いピッチング疲労寿命を示すものとなった。
【0028】
実施例3は、上記構成(1)〜(3)及び(9)〜(12)を満足するもので、水素フリーのDLC膜の効果と相まって、最も伝達効率の高い仕様の一つとなった。しかしながら、第1歯車の歯面に耐摩耗性の高いDLC膜を成膜したことで、実施例1及び2に比べてピッチング疲労寿命は短かいものの、標準的な仕様である比較例4よりもピッチング疲労寿命は長いものとなった。
【0029】
実施例4は、上記構成(1)及び(2)を満たすもので、高い伝達効率と長いピッチング疲労寿命を示すものとなった。
【0030】
実施例5は、歯数が多い側の歯車(実施例5では第1歯車)の歯面を平滑化し、歯数が少ない側の歯車(実施例5では第2歯車)の歯面を粗いままにした例であって、合成粗さRrmsが小さいために伝達効率が高い値を示す一方、歯数が少ない側の歯車の馴染み性が劣ることから、実施例1及び2に比べてピッチング疲労寿命が短いものの、比較例4に対してはピッチング疲労寿命が長いものとなった。
【0031】
実施例6は、上記構成(3)及び(4)を満たすもので、これにより馴染み性が著しく向上し、高い伝達効率を示しつつ、実施例の中で最も長いピッチング疲労寿命を示すものとなった。
【0032】
実施例7は、第1歯車と第2歯車の合成粗さRrmsが上記構成(4)の0.4以下を満足しないため、実施例の中で最も低い伝達効率を示したが、比較例4に対しては高い値を示すものとなった。
【0033】
実施例8は、第1歯車と第2歯車の表面硬さの差が最も大きく、このために馴染み性が向上し、比較的長いピッチング疲労寿命を示すものとなった。
【0034】
実施例9は、上記構成(9)に規定したように、歯数の多い歯車の歯面に硬質の表面処理を行った例であって、上記構成(10)及び(11)の水素フリーのDLC膜を有しており、実施例の中で最も高い伝達効率を示し、また、比較的長いピッチング疲労寿命を示すものとなった。
【0035】
実施例10は、第2歯車の歯面の表面処理が、プラズマCVD方式による水素含有DLC膜であるため、上記構成(10)を満たしておらず、実施例9に対し伝達効率が劣るものの、比較例4に対しては著しく高い伝達効率を示すものとなった。
【0036】
実施例11は、第1歯車の平滑仕上げ方法が、他の実施例がバレル研摩方法であるのに対して、歯車用の研削砥石による加工である。そのため、その他の実施例に比べて低い伝達効率を示したが、比較例4に対しては高い伝達効率を示すものとなった。
【0037】
上記の実施例に対して、表2に示す比較例1及び2は、第1歯車及び第2歯車を共に平滑に仕上げたもので、上記構成(1)を満たしていない例である。そのため、合成粗さRrmsが非常に小さく、その結果、伝達効率も約96%と高い値を示す一方で、ピッチング疲労寿命が比較例4に対して大幅に低下する結果となった。試験後の歯車の形状を確認した結果、ピッチングの発生していない歯面においては、いずれも軽微な摩耗しか生じておらず、第1歯車と第2歯車の間での馴染みが十分進んでいなかったことが、ピッチング疲労寿命を低下させた原因と考えられる。
【0038】
比較例3は、比較例1及び2と同様に、第1歯車と第2歯車をともに平滑に仕上げ、その後、DLC膜を成膜した仕様の組み合わせであり、上記構成(1)を満たさないものである。試験の結果、合成粗さRrmsが最も小さく、第1歯車及び第2歯車に水素フリーのDLC膜を成膜したので、伝達効率は最も高い値を示したが、比較例4に対してもピッチング疲労寿命は大幅に低下した。
【0039】
比較例4及び5は、第1歯車及び第2歯車の表面粗さが共に粗く、合成粗さRrmsが高いために、伝達効率は低かった。比較例6は、第2歯車のスキューネスRskが正の値であり、試験中、表面粗さの突起先端の摩耗により多量の摩耗粉が発生し、その結果、ピッチング疲労寿命の低下につながった可能性が考えられる。
【0040】
以上のように、歯車対は、実施例1〜11の組み合わせで評価を行ったところ、いずれも一対の歯車の合成粗さ向上による伝達効率向上を実現し、歯車の伝達効率の向上と歯面のピッチング疲労寿命の向上とを安価に両立させるものとなった。しかも、各実施例の歯車対は、歯面の温度計測の結果、伝達効率とほぼ対応する温度低減効果を示しており、歯車接点での摩擦係数が低下していることを間接的に裏付けた結果となった。
【0041】
本発明に係わる歯車対は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成を適宜変更したり組み合わせたりすることが可能である。