(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
ホスゲンは、典型的には、充填層多管式反応器で生成される。ホスゲン反応器としての使用に典型的な多管式反応器は、触媒を詰めたいくつかのチューブを収容するシェル、並びにチューブ及びシェルの間を循環して反応熱を除去する冷却媒体からなる。典型的な触媒は熱伝導率が低く、反応器の多管設計は、有効な伝熱面積の観点から限定されるので、反応器のチューブは、摂氏400から800度(℃)に及ぶ範囲の高いピーク温度(ホットスポット)を有し得る。驚くべきことに、四塩化炭素の形成は、充填層におけるピーク反応温度に直接的に関連することが見出された。理論に束縛されないが、四塩化炭素の形成は、主にこうしたホットスポットで発生すると考えられる。したがって、本出願人は、四塩化炭素生成物の量を低下させ、産業規模で使用できる、新規なホスゲン反応器を開発した。例えば、ホスゲン反応は、2,000キログラム/時間(kg/hr)以上、具体的には4,000kg/hr以上、より具体的には、4,000から13,000kg/hr又は4,000から9,000kg/hr以上の生成物を生成できる。
【0013】
米国特許第6,500,984号は、複合触媒層を含む充填層管状反応器において、10ppmv未満の四塩化炭素を不純物として含有する高純度ホスゲンの合成について開示しており、複合反応器の流出口端に位置する第2の触媒層のホスゲンに対する相対活量は、注入口端に位置する第1の触媒層のものより高い。米国特許第6,500,984号は、ホスゲン合成の際に形成される四塩化炭素の量を、高い活性のみの一様な触媒層と比較して、低温で約2倍、高温で約5倍減少させることができる複合触媒層の使用について開示している。軸方向スライドチューブ中の可動式熱電対(直径0.125")に合わせた0.5"の外径を有する詰めたチューブを用いて、概念を実証した。
【0014】
本出願人は、米国特許第6,500,984号の複合触媒層の構成は、ホスゲンの産業生成に使用する際には、産業規模反応器として十分にスケールアップしなかったことを見出した。以下の実施例を参照されたい。こうした実施例により、米国特許第6,500,984号の複合触媒層が、直径2インチ及び長さ8フィートの典型的な産業規模の反応器チューブに加えられ、米国特許第6,500,984号の同等の条件(反応物比、流速、注入口温度等)下で動作する場合、生成されたホスゲンは、米国特許第6,500,984号で開示されたレベルより有意に高いホスゲン値を有することが発見された。
【0015】
理論に束縛されないが、本出願人は、米国特許第6,500,984号の複合触媒層は、充填層における熱除去の時間尺度が次第に長くなるため、スケールアップしないと考える。言い換えれば、チューブ直径が増加するにつれて、熱除去は効率的にならなくなると考えられる。熱除去の特性時間は、以下のように定義される:
【0017】
式中、C
pvは反応混合物の容積比熱であり、V
rは反応器の容積であり、A
hは伝熱面積であり、Uは触媒層の総括伝熱係数である。熱除去の特性速度は、特性時間の逆数に比例するので、熱除去の速度が、チューブ直径に反比例することは明らかである。したがって、チューブ直径が0.5インチから2インチに増加すると、反応熱を除去する際に、触媒層は効率的ではなくなることは明らかである。熱除去効率のこの低下により、チューブのピーク温度プロファイルはより高くなり、ホットスポットが形成される尤度が高くなる。
【0018】
本出願人は、チューブのより高いピーク温度は、四塩化炭素の形成が増加することに結び付くと更に見出した。具体的には、本出願者らは、実験室規模の充填層ホスゲン反応器を使用し、以下の式を通してチューブのピーク温度が、四塩化炭素の形成と関連していることを見出した:
ln(CCl
4)(ppm)=0.0049*T
max(K)-1.817
したがって、0.5インチの実験室規模のチューブ反応器と比較して、より高い2インチの産業規模の反応器におけるチューブのピーク温度は、複合触媒層が使用されたとしても、四塩化炭素を有意に多く形成する。
【0019】
したがって、本出願人は、熱除去の特性時間を短くし、ひいては、ホスゲンにおける四塩化炭素を有意な減少を達成する産業規模のホスゲン生成に使用できる、新規な反応器設計を開発した。この反応器の構成は、a)拡張した内表面積、及び/又は反応器の単位容積当たりの有効な伝熱面積をより多くすることができる挿入物を有する内部フィン付反応器、b)触媒層に高熱伝導性の不活性充填剤を使用すること、c)ペレット熱伝導性を改善する触媒修飾、並びにd)冷却媒体に対する外面伝熱を改善する、フィン付チューブにより拡張した外表面積を有するチューブ設計、e)総括伝熱を改善するために、チューブの内部又は外部に乱流を多く誘導すること、並びにf)先述の1つ若しくは複数を含む組合せを使用することによる、反応器の単位容積当たりの利用できる伝熱面積の増加を含む。
【0020】
したがって、ピーク反応温度が800℃未満、例えば、400℃以下、具体的には350℃以下、より具体的には300℃以下になるようにし、ホスゲン反応器において、ホットスポットの形成を抑制又は除去すると、ホスゲンの形成を、四塩化炭素の堆積に対して10ppm以下、9ppm以下、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1ppm以下又は0ppmにできることを驚くべきことに、見出した。したがって、本出願人は、反応器の単位容積当たりの利用できる伝熱面積を増加させることにより、ホットスポットの形成を抑制又は予防できるプロセス及び反応器を開発した。例えば、典型的な商用の多管式ホスゲン反応器は、100平方メートル/立方メートル(m
2/m
3)程度の単位容積当たりの有効な伝熱面積を有する。触媒層から反応器の壁への伝熱を上昇させるために、単位容積当たりの壁接触面積を増加させるように変更した反応器設計の使用は、下記の様々な実施形態で例示されている。そのような多管式反応器を、熱除去をより適切に促進する反応器構成に置き換える、又は変更することにより、四塩化炭素の濃度を低下できることを驚くべきことに、見出した。反応器は、100から10,000m
2/m
3、500から8,000m
2/m
3、500から5,000m
2/m
3又は1,000から5,000m
2/m
3の単位容積当たりの伝熱面積を有するチューブ反応器であってよい。
【0021】
これらの結果を達成するために、触媒を含有するチューブが、触媒を避けて熱伝導を改善するように変更する。具体的には、チューブから隔離した熱伝導性材料が、微粒子触媒の少なくとも一部に接触する。言い換えれば、従来のチューブの壁でも他の要素でもない伝導性材料を、微粒子触媒に接触させて、触媒を避けて熱伝導を改善する、又は触媒そのものの熱伝導率を増加させる。
【0022】
熱伝導性材料は、微粒子触媒の外面の少なくとも一部と接触させてよい。熱伝導性材料により、微粒子触媒及びチューブの間に熱伝導経路が設けられる。この経路は、連続していても途切れていてもよい。複数の連続した経路が存在していてもよい。
【0023】
例えば、熱伝導性材料は、微粒子触媒の外面の少なくとも一部、すなわち、触媒粒子の少なくとも一部、又は触媒粒子凝集体の外面の少なくとも一部、又はその両方に配置されたコーティングであってよい。本明細書で使用されている、微粒子触媒の「外面」は、細孔開口部、又は細孔そのものの表面を含まない。触媒粒子又は触媒粒子凝集体の外面における熱伝導性コーティングの間での接触により、粒子又は凝集体及びチューブからの熱伝導経路が設けられる。経路がチューブ壁へと連続していない場合でも、そのような粒子間又は凝集体間の接触により、触媒層内でより適切に熱を分散し、ひいては触媒層におけるホットスポットを低減又は予防できる。
【0024】
コーティングは、外面にわたって連続していても分断していてよい。熱伝導性コーティングは、使用される材料及び望ましいレベルの伝導性に応じて、0.001から1マイクロメートル、具体的には0.01から0.1マイクロメートルのコーティング厚を有し得る。コーティング厚は、一様にしても変化させてもよい。そのようなコーティングを付着する方法は、例えば、化学気相蒸着、溶射、浸漬コーティング又は粉体コーティングであってよい。触媒の細孔開口部、又は細孔面のコーティングの実質的な遮断を低減、最小化又は予防するために、具体的な方法が部分的に選択される。触媒の細孔開口部、又は細孔面のコーティングの遮断の一部は、触媒の活性に有意に悪影響を与えずに発生し得ることは理解されるべきである。
【0025】
複数の連続した経路は、充填触媒層内に配置された熱伝導性三次元メッシュ及び触媒粒子又は凝集体の外面の少なくとも一部との接触により設けられる。メッシュの開口部は、いかなる構成(円形、長円形、正方形、長方形等)も有していてよく、開口部の大きさは、接触及び熱伝導率を望ましい程度にするように選択できる。メッシュは、規則的、例えば織物であっても、不規則的、例えば不織フェルトであってもよい。一般的に、開口部は、微粒子触媒の平均直径を超える平均直径を有し得る。
【0026】
複数の連続した、熱伝導経路は、熱伝導性微粒子材料と微粒子触媒の混ぜ合わせによって設けられる。熱伝導性微粒子材料及び微粒子触媒は、反応器に充填層として配置しても、反応器の壁に配置してもよい。熱伝導性微粒子材料は、不規則的又は規則的、例えば、球形、長円形を含むいかなる形状であってもよく、平均直径は、触媒粒子又は触媒粒子凝集体の±20%又は±10%以内となることが多いであろうが、いかなる大きさであってもよい。ある実施形態において、形状及び大きさは、微粒子触媒が緊密に詰められるように選択される。熱伝導性微粒子材料は、ランダムに分布していても、又は一定のパターンで分布していてもよい。熱伝導性微粒子材料は、チューブの表面に連続した経路を設けない場合でも、触媒層内に熱を拡散する働きをし、ひいては反応器におけるホットスポットを、例えば、熱伝導性微粒子材料を用いない触媒層と比較して、低減する、最小化する、又は取り除くことができる。
【0027】
熱伝導性メッシュ1枚は、熱伝導性粒子を所定の場所で維持するように、充填層に置いても、壁に置いてもよく、メッシュの開口部の平均直径は、熱伝導性微粒子材料の平均直径より小さい。或いは、上記の熱伝導性三次元メッシュは、熱伝導経路が設けられるように、微粒子熱伝導性材料及び微粒子触媒を含有する充填触媒層内に配置してよい。
【0028】
触媒の熱伝導率を上昇させる別の方法は、触媒そのものの内部で、熱伝導性材料の水準を上昇させることである。例えば、炭素触媒は、質量に対して合計1,000ppm以下の触媒の量で、1つ又は複数の熱伝導性材料を本質的に含有し得る。熱伝導性材料の水準を、質量に対して10,000ppm以上、又は質量に対して100,000ppm以上に上昇させると、熱伝導性材料及び触媒の間における接触を増加させることがあり、それにより、触媒の熱伝導率を上昇させることができる。ドープした熱伝導性材料の量は、好ましくは、触媒活性又は生成物の純度に有意に悪影響を与える水準を下回る。ドープした熱伝導性材料が存在すると、チューブの表面に連続した経路を設けない場合でも、触媒層内に熱を拡散する働きをし、ひいては反応器におけるホットスポットを低減する、最小化する、又は取り除くことができる。
【0029】
上記の方法のいかなる組合せも使用してよく、例えば、コーティングした微粒子触媒及び微粒子熱伝導性材料の組合せを、場合により、熱伝導性ドープ触媒と共に使用してよい。
【0030】
2ワット/メートル/ケルビン温度[W/(m・K)]超、15W/(m・K)超、50W/(m・K)超又は100W/(m・K)超の熱伝導率を有する、幅広い熱伝導性材料を使用できる。熱伝導性材料は、200W/(m・K)超の熱伝導率を有することもある。そのような熱伝導性材料の例は、アルミニウム、アルミニウム黄銅、酸化アルミニウム、アンチモン、ベリリウム、酸化ベリリウム、黄銅、青銅、カドミウム、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭素鋼、銅、金、イリジウム、鉄、鉛、マグネシウム、モリブデン、ニッケル、銀、鋼鉄、ステンレス鋼及びクロムニッケル鋼(18wt%Cr、8wt%Ni)、又は、先述の少なくとも1つを含む組合せを様々な金属の合金を含めて、使用できる。熱伝導性材料は、触媒活性、反応器の機能、生成物の収率又は生成物の純度に有意に悪影響を与えないように更に選択される。
【0031】
先述の方法は、多管式反応器での使用に適合しやすく、当該技術分野で公知のように、いかなる数のチューブ、例えば、「シェル」と呼ばれることが多い外部チューブ内に位置した1から1,200本、具体的には2から250本、より具体的には3から200本、より一層具体的には、1から200本、更により具体的には、1から150本又は1から100本の内部チューブも含むことができる。冷却媒体は、シェル及びマイクロチューブの間に位置していてよい。
【0032】
各チューブは、独立して、6ミリメートル(mm)以上、例えば、8mm以上、具体的には10mm以上、より具体的には12mm以上の平均断面直径を有し得る。各チューブは、独立して、例えば、反応のスループットに応じて20mm以上、具体的には40mm以上、より具体的には80mm以上又はそれを超える平均断面直径を有し得る。各チューブは、独立して、500mm以下、例えば、250mm以下、具体的には100mm以下、より具体的には50mm以下の平均直径を有し得る。チャネルの断面形状は、長方形、正方形、円形、卵形、楕円形又は他のいかなる規則的又は不規則な幾何学的形状でもよい。形状が円形ではない場合、「マイクロチューブのチャネルの平均断面直径」は、実際の断面形状と同一の面積を有する円の直径を指す。
【0033】
反応器における触媒の位置は、反応から冷却液までの伝熱に更に有意に影響を与え得る。具体的には、触媒は反応器チューブの壁に付着させてよい(すなわち、反応器チューブの壁と直接接触させてよい)。ある実施形態において、付着した触媒は、充填層と組み合わせて使用される。しかし、より適切な伝熱は、付着した触媒が、ホスゲンを生成するための反応に使用される唯一の触媒である場合に達成される。触媒を、チューブ又はチャネル内に充填する代わりに、チューブ又はチャネルの壁に付着できるということは、閉塞の減少につながり得る。理論に束縛されないが、付着した触媒は、触媒粒子が、最初に互いに接触するのではなく反応器の壁と直接接触するため、反応器からの熱除去を促進し得ると考えられる。付着した触媒は、上の反応器及びチューブ構成のいずれを使用してもよい。
【0034】
したがって、チューブ反応器は、シェル及びシェル内に位置しているチューブを含むことができ、シェル及びチューブの間に冷却媒体を有し、チューブが、そこに配置された、一酸化炭素及び塩素をホスゲンに変換するのに有効な微粒子触媒を有し、チューブから隔離した熱伝導性材料が、微粒子触媒の少なくとも一部に接触し、場合により、微粒子触媒及びチューブの間に熱伝導経路を設けてよい。熱伝導性材料は、2W/(m・K)超、15W/(m・K)超、100W/(m・K)超、200W/(m・K)超の熱伝導率を有し得る。熱伝導性材料は、触媒粒子の外面の少なくとも一部、又は触媒粒子凝集体の外面の少なくとも一部、又はその両方に配置されるコーティングであってよく、0.001から1マイクロメートルのコーティング厚を有していてよく、コーティングは、化学気相蒸着、溶射、浸漬コーティング又は粉体コーティングにより付着されてよい。或いは、又は更に、熱伝導性微粒子材料は、熱伝導性三次元メッシュであってよく、場合により、メッシュの開口部は、微粒子触媒凝集体の平均直径を超える平均直径を有し得る;又は熱伝導性材料は、特定の触媒内に分布した、及びそれと接触した微粒子材料であってよく、場合により、熱伝導性微粒子材料及び微粒子触媒は、チューブ内に配置されたメッシュに更に接触する。熱伝導性材料は、質量に対して10,000ppm以上の触媒、質量に対して100,000ppm以上の触媒の量で、触媒にドープしてよい。
【0035】
一酸化炭素及び塩素の間における反応を促進する多様で様々な触媒は、上記方法及び反応器に使用できる。触媒は、炭素を含む触媒、例えば活性炭であってよい。炭素は、例えば、木材、泥炭、石炭、ヤシ殻、骨、褐炭、石油系残渣、砂糖、又は、先述の1つ若しくは複数を含む組合せからできていることがある。炭素触媒は、微粒子型、例えば粉末、顆粒、ペレット、又は、先述の1つ若しくは複数を含む組合せであってよい。Brunauer-Emmett-Teller(BET)測定により判定される炭素の表面積は、100平方メートル/グラム(m
2/g)以上であってよく、具体的には300m
2/g以上、より具体的には1,000m
2/g以上であってよい。BET測定により判定される炭素の表面積は、100から2,000m
2/g、具体的には550から1,000m
2/gであってよい。商用の炭素触媒の例は、Barnebey Sutcliffe(商標)、Darco(商標)、Nuchar(商標)、Columbia JXN(商標)、Columbia LCK(商標)、Calgon PCB(商標)、Calgon BPL(商標)、Westvaco(商標)、Norit(商標)及びBarnebey Cheny NB(商標)を含む。
【0036】
触媒は、酸化的に安定な触媒であってよい。「酸化的に安定」は、空気中にて以下の時間及び温度:30分間にわたり125℃、30分間にわたり200℃、30分間にわたり300℃、45分間にわたり350℃、45分間にわたり400℃、45分にわたり450℃及び最後に30分間にわたり500℃で連続して加熱した場合に、12wt%以下を失う触媒を意味する。空気中における炭素試料を加熱した効果を評価するための、時間及び温度条件のこの順序は、熱重量分析(TGA)を使用して実行される。
【0037】
触媒は、質量に対して1,000ppm以下の含有量の活性金属を含み得る。活性金属は、周期表の3から10族の遷移金属である、ホウ素、アルミニウム、ケイ素の1つ若しくは複数、又は、先述の1つ若しくは複数を含む組合せを含み得る。触媒は、鉄を含まなくてもよく、鉄を含まないということは、質量に対して100ppm以下、具体的には、質量に対して0から50ppmの鉄を含む触媒を意味し得る。同様に、触媒は、質量に対して200ppm以下、具体的には質量に対して100ppm以下の硫黄、及び/又は質量に対して200ppm以下、具体的には質量に対して100ppm以下のリンを含み得る。1,000ppm以下の活性金属を含む炭素触媒は、酸洗浄により得られる(例えば、塩酸、又は塩酸に続いてフッ化水素酸で処理した炭素)。
【0038】
触媒は、ガス状又は蒸気状炭素含有化合物(例えば、炭化水素)を多量の炭素質材料の顆粒(例えば、カーボンブラック)に導入することにより;炭素含有化合物を顆粒の表面で付着炭素に分解することにより;並びに、生じた材料を、蒸気を含む活性化物質ガスで処理して多孔炭素質材料を得ることにより得られる三次元マトリックスを有する多孔炭素質材料を含む複合炭素であってよい。したがって、炭素-炭素複合材料が形成され、これは、触媒として適切である。そのような多孔炭素-炭素複合材料は、BET測定により判定される、10m
2/g以上の表面積を有することができ、(1)3.5以下、具体的には2.0以下、より具体的には1.0以下、より一層具体的には0から1.0であるミクロ細孔対マクロ細孔の比;(2)空気中にて以下の時間及び温度:30分間にわたり125℃、30分間にわたり200℃、30分間にわたり300℃、45分間にわたり350℃、45分間にわたり400℃、45分にわたり450℃及び最後に30分間にわたり500℃で連続して加熱した場合、その質量の16%以下、具体的にはその質量の10%以下、より具体的にはその質量の5%以下の減少を含み得る。そのような触媒は、1,000ppm以上の含有量の活性金属を含み得る。空気中における炭素試料を加熱した効果を評価するための、時間及び温度条件のこの順序は、TGAを使用して実行される。「ミクロ細孔」という用語は、20オングストローム(Å)以下の大きさである細孔を意味し、「マクロ細孔」という用語は、20Å超の大きさの細孔を意味する。合計の細孔体積及び細孔体積の分布は、例えば、方法、例としてポロシメトリーにより判定され得る。ミクロ細孔体積[立方センチメートル/グラム(cc/g)]を、合計の細孔体積(cc/g)から引いて、マクロ細孔体積を判定することができる。次いで、ミクロ細孔対マクロ細孔の比が計算され得る。商用の多孔カーボンの例は、Calgon X-BCP(商標)及びCalsicat(商標)を含む。
【0039】
触媒は、炭化ケイ素触媒を含み得る。炭化ケイ素触媒は、BET測定により判定される、10平方メートル/グラム(m
2/g)以上、具体的には20m
2/g以上、より具体的には100m
2/g以上、より具体的には、300m
2/g以上の表面積を有し得る。ケイ素の含有量は、10wt%以下、具体的には5wt%以下のことがある。炭化ケイ素触媒は、例えば、一酸化ケイ素と微粉化炭素(例えば0.1wt%以下の含有量の灰を含むもの)を接触させる工程、又は、一酸化ケイ素(SiO)の蒸気と炭素を反応させる工程を含むプロセスを使用して製造できる。
【0040】
反応器の各チューブは、1つ又は複数の触媒ゾーンを含み得る。上に簡潔に記載されているように、触媒をチューブの表面に付着させる場合、チューブは、触媒をさほど含まない供給端に位置する、又は供給端側に位置する第1の触媒ゾーンを含み得る。チューブは、第1の触媒より高い濃度の、同一の又は異なる触媒を含み得る流出口端に位置する、又は流出口端側に位置する第2の触媒ゾーンを更に含み得る。熱伝導性材料は、第1の触媒ゾーン及び/又は第2の触媒ゾーンに位置し得る。2つの触媒ゾーンは連続して位置していてよい。或いは、触媒の濃度が、各触媒ゾーンに沿ったなだらかな(例えば、直線状又は非直線状グラジエント)又は段階的なグラジエントを形成するように、付着を徐々に増加させてよく、第1の触媒ゾーンでは最初により低い活性が提示され、第2の触媒ゾーンではより高い活性が示される。
【0041】
或いは、又は更に、充填層における、より低い活性触媒及びより高い活性触媒の組合せは、米国特許第6,500,984号に記載されているように使用され得る。例えば、反応器は、第1の活性を有する第1の触媒を含む供給端に位置する、又は供給端側に位置する第1の触媒ゾーンを含み得る。反応器は、第1の触媒活性より高い第2の活性を有する同一の又は異なる触媒を含み得る、流出口端に位置する、又は流出口端側に位置する第2の触媒ゾーンを更に含み得る。2つの触媒ゾーンを連続して位置させてもよい。或いは、触媒の活性が、各触媒ゾーンに沿ったなだらかな又は段階的なグラジエントを形成するように、第1の触媒の少なくとも一部は、第2の触媒と混ぜ合わせてもよく、第1の触媒ゾーンでは最初により低い活性が提示され、第2の触媒ゾーンではより高い活性が示される。
【0042】
KR1998700231Aに記載されているように、反応器は、不活性充填剤で希釈した触媒を含む供給端に位置する第1の触媒ゾーンを含むことができ、この充填剤は、それ自体は反応条件下で反応せず、触媒せず、そうでなければホスゲン合成反応が阻害されない。反応器は、第1の触媒ゾーンよりも少ない不活性充填剤で希釈した、同一の又は異なる触媒を含み得る流出口端に位置する第2の触媒ゾーンを更に含むことができる。同様に、反応器は、不活性充填剤で希釈した触媒を含有する第1の触媒ゾーン、並びに不活性充填剤では希釈されない同一の又は異なる触媒を含有する第2の触媒ゾーンを含み得る。不活性充填剤は、触媒粒子の間に均等に分布させてよく、2つの触媒ゾーンは、第1の触媒ゾーンに不活性充填剤を含有する触媒、続いて第2の触媒ゾーンに不活性充填剤を少なく含有する触媒を連続して装填していてよい。或いは、不活性充填剤は、それぞれの触媒ゾーンにおける触媒粒子の間にグラジエントで分布してよく、不活性充填剤の最高濃度が第1の触媒ゾーンで最初に提示され、不活性充填剤の最低濃度が第2の触媒ゾーンの末端で実現されるまで、不活性充填剤の濃度が徐々に低下する。不活性充填剤は、第1の触媒ゾーンにおいて、触媒粒子の間にグラジエントで分布してよく、不活性充填剤の最高濃度が第1の触媒ゾーンの最初に提示され、不活性充填剤の最低濃度が第1の触媒ゾーンの末端において達成されるまで、不活性充填剤の濃度が徐々に低下し、第2の触媒ゾーンは、不活性充填剤を含有しない。流出口又は触媒層から生成されるガスの出口点に近い一部の触媒は、不活性充填剤で希釈しなくてよいが、反応ガスと触媒の最初の接触点により近い任意の残りの部分の触媒は、不活性充填剤で希釈してよい。当業者は、いずれかの触媒ゾーンにおけるいかなる充填剤の分布も、均一であってもグラジエントであっても、およそ中間、例えば段階的なグラジエントであってもよいということを十分に理解するであろう。
【0043】
不活性充填剤は、多孔率が低い材料、例えばセラミック、グラファイト、ガラス状炭素、ガラス、石英、金属、又は、先述の1つ若しくは複数を含む組合せを含み得る。材料は、0.8細孔体積/材料の体積(vol/vol)以下、具体的には0.6vol/vol以下、より具体的には、0.1から0.5vol/vol、例えば、0.4vol/volの多孔率を有し得る。適切な金属は、反応条件下で反応性ではないもの、より具体的には、反応条件下で塩素、一酸化炭素又はホスゲンに対して反応性ではないものを含む。例えば、不活性金属充填剤は、ステンレス鋼;チタン;ニッケル;鉄及びクロムを含むニッケル合金[例えばINCONEL(商標)]、又はモリブデン及びクロムを含むニッケル合金[例えばHASTELLOY(商標)]を含むが、それらに限定されない金属合金;又は、先述の1つ若しくは複数を含む組合せを含み得る。適切な不活性充填剤は、反応条件下で、かなりの確率でそれら自体が互いに反応せず、触媒せず、そうでなければホスゲン合成反応が阻害されないという点で、少なくとも実質的に不活性である。本文脈における実質的に不活性は、充填剤が、ホスゲン生成に関する明細書の範囲外の、一定量の副産物を生成しないことを意味する。
【0044】
ホスゲンの調製に使用される一酸化炭素及び塩素ガスは、高純度グレードであってよい。一酸化炭素は、施設内作成プラントから供給してよく、微量の不純物、例えば水素、メタン、揮発性硫黄化合物及び窒素を含んでいてもよい。ホスゲン生成流から回収したリサイクル一酸化炭素も、一酸化炭素を含む供給流の一部として用いてよい。
【0045】
一酸化炭素及び塩素は、等モル量で、又は塩素をモル過剰量で反応器に導入してよい。例えば、一酸化炭素対塩素のモル比は、1.00:1から1.25:1、具体的には1.01から1.20:1、より具体的には1.01:1から1.21:1、より一層具体的には、1.02:1から1.12:1、更により具体的には、1.02:1から1.06:1であってよい。
【0046】
反応器への最初の供給は、一酸化炭素のすべて及び塩素反応物のすべてを含んでいてよい。同様に、塩素のすべてを加えてよく、第1の量の一酸化炭素は、第1段階の反応域に導入してよく、第2の量の一酸化炭素を少なくとも1つの下流反応域に導入してよい。少なくとも1つの下流反応域は、第1の反応域を有する連続した連絡関係であってよく、最初の一酸化炭素対塩素のモル比は、1未満、具体的には0.999:1から0.2:1、より具体的には、0.999:1から0.5:1、より一層具体的には0.999:1から0.8:1、より具体的には、0.999:1から0.95:1、より具体的には、0.999:1から0.98:1であってよい。
【0047】
反応器は、腐食耐性材料を含んでいても、腐食耐性材料で裏打ちしていてもよい。腐食耐性材料は、塩素、一酸化炭素及びホスゲンに本質的に不活性な材料(例えばセラミック、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、又は、鉄及びクロムを含むニッケル合金(例えばINCONEL)、又はモリブデン及びクロムを含むニッケル合金(例えばHASTELLOY)を含むが、それらに限定されない金属の合金)である。
【0048】
この方法で生成されるホスゲンは、多様な工業プロセス、例えば、ジアリールカーボネート、ジアルキルカーボネート、ポリカーボネート等の製造に使用できる。
【0049】
ジアリールカーボネートを生成する方法は、芳香族モノヒドロキシ化合物を、本明細書で開示されている方法に従って生成されたホスゲンと反応させる工程を含む。ホスゲンは、液体状態で、気体状態で又は不活化溶媒として使用できる。
【0050】
芳香族モノヒドロキシ化合物は、非置換であっても、1から3個のハロゲン、C
1〜6アルコキシ、シアノ、C
1〜6アルコキシカルボニル、C
6〜12アリールオキシカルボニル、C
1〜6アシルオキシ又はニトロ基で置換されていてもよいが、但し、いかなる置換される炭素の原子価も超えないことが条件であるC
6〜12芳香族モノヒドロキシ化合物を含む。例は、フェノール、o-、m-又はp-クレゾール、o-、m-又はp-クロロフェノール、o-、m-又はp-ブロモフェノール、2,4-ジクロロフェノール、2,4,6-トリブロモフェノール、o-、m-又はp-メトキシフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、p-n-オクチルフェノール、p-イソオクチルフェノール、p-n-ノニルフェノール、p-イソノニルフェノール、1-ナフトール、2-ナフトール及びサリチル酸メチルを含む。具体的にはフェノールを挙げることができる。
【0051】
ホスゲン及び芳香族モノヒドロキシ化合物の間における反応は、公知であり、例えば、米国特許第4,016,190号、第4,697,034号、第5,167,946号、第5,424,473号、第5,900,501号、第6,348,613号及び第8,518,231号に記載されている。
【0052】
反応条件は、特に限定されず、当分野で開示されているものを含む。例示的な方法では、ホスゲン及び芳香族モノヒドロキシ化合物の反応は、塩基、及び場合により塩基触媒の存在下でホスゲンが芳香族モノヒドロキシ化合物と反応する、相境界プロセスで実施する。
【0053】
芳香族モノヒドロキシ化合物とホスゲンの反応に対する塩基は、例えば、水酸化アルカリ金属、例として、水酸化Na、K及び/又はLiである。具体的には、水酸化ナトリウム溶液が挙げられる。塩基は、水溶液の質量に対して10から25%の濃度で使用され得る。
【0054】
使用される塩基触媒は、開鎖であっても環状であってもよく、第三級アミン、N-アルキルピペリジン及び/又はオニウム塩を含む。触媒は、水溶液の質量に対して1から55%の濃度で使用できる。加えられる触媒の量は、使用される芳香族モノヒドロキシ化合物の合計モルに対して0.0001molから0.1molであってよい。
【0055】
オニウム塩は、化合物、例えばNR
4Xを指し、式中、基Rは、互いに独立して、H及び/又はアルキル及び/又はアリール基であってよく、Xはアニオン、例えば、塩化物、臭化物又はヨウ化物である。
【0056】
具体的には、窒素触媒、例えば、トリブチルアミン、トリエチルアミン及びN-エチルピペリジンが挙げられる。
【0057】
場合により、不活性有機溶媒が存在してもよい。溶媒の例は、芳香族溶媒、ハロゲン化(具体的には塩素化)脂肪族若しくは芳香族溶媒、又は先述の少なくとも1つを含む組合せを含む。これらは、例えば、トルエン、ジクロロメタン、様々なジクロロエタン及びクロロプロパン化合物、クロロベンゼン及びクロロトルエン、又は、先述の少なくとも1つを含む組合せである。具体的には、ジクロロメタンが挙げられる。
【0058】
相境界プロセスによる反応を実行する条件は、例えば、US4,016,190、US8,518,231、EP1219589、EP1216981、EP1216982及びEP784048に記載されている。
【0059】
場合により、ホスゲン及び芳香族モノヒドロキシ化合物の反応は、不均一触媒の存在下で実施してもよい。不均一触媒は公知であり、EP483632、US5,478,961、US5,239,105及びUS5,136,077に記載されている。
【0060】
ジアルキルカーボネートを生成する方法は、アルキルモノヒドロキシ化合物をホスゲンと反応させる工程を含む。ホスゲンは、液体状態で、気体状態で又は不活化溶媒として使用できる。
【0061】
アルキルモノヒドロキシ化合物は、直鎖状及び分岐鎖状のC
1〜12脂肪族アルコール及びC
4〜8脂環式アルコールのすべての異性体を含み、そのそれぞれは、非置換であっても、1から3個のハロゲン、C
1〜6アルコキシ、シアノ、C
1〜6アルコキシカルボニル、C
6〜12アリールオキシカルボニル、C
1〜6アシルオキシ又はニトロ基で置換されていてもよいが、但し、いかなる置換される炭素の原子価も超えないことが条件である。アルカノールの例は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アリルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、3-ブテン-1-オール、アミルアルコール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール及び4-ヘプタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、3-メチルシクロペンタノール、3-エチルシクロペンタノール、3-メチルシクロヘキサノール、2-エチルシクロヘキサノール(異性体)、2,3-ジメチルシクロヘキサノール、1,3-ジエチルシクロヘキサノール、3-フェニルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、2-フェネチルアルコール及び3-フェニルプロパノールを含む。特定の実施形態では、アルカノールはメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール又は3-ブタノールである。具体的には、メタノールが挙げられる。
【0062】
反応条件は、特に限定されず、過度の実験をせずとも当業者に公知である。
【0063】
必要に応じて、ジアルキルカーボネートは、ジアリールカーボネートに変換できる。例えば、ジアルキルカーボネートは、エステル交換触媒の存在下で芳香族モノヒドロキシ化合物、例えば、フェノールを含む、本明細書に記載されているものと反応させて、アルキルアリールカーボネート[例えば、フェニルメチルカーボネート(「PMC」)]及び脂肪族一価アルコール(例えば、メタノール)を生成できる。第2の工程では、アルキルアリールカーボネートの2つの分子に不均化反応を施して、ジアリールカーボネート(例えば、DPC)の1つの分子、及び出発原料であるジアルキルカーボネート(例えば、DMC)の1つの分子を生成する。触媒の例は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム及びバリウム;アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩基性化合物、例えば水素化物、水酸化物、アルコキシド、アリールオキシド及びアミド;アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩基性化合物、例えば炭酸塩、炭酸水素塩及び有機酸塩;第三級アミン、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン及びベンジルジエチルアミン;窒素含有ヘテロ芳香族化合物、例えばN-アルキルピロール、N-アルキルインドール、オキサゾール、N-アルキルイミダゾール、N-アルキルピラゾール、オキサジアゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントロリン、ピリミジン、ピラジン及びトリアジン;環状アミジン、例えばジアザビシクロウンデセン(DBU)及びジアザビシクロノネン(DBN);スズ化合物、例えばトリブチルメトキシスズ、ジブチルジエトキシスズ、ジブチルフェノキシスズ、ジフェニルメトキシスズ、ジブチルスズアセテート、トリブチルスズクロリド及びスズ2-エチルヘキサノエート;亜鉛化合物、例えばジメトキシ亜鉛、ジエトキシ亜鉛、エチレンジオキシ亜鉛及びジブトキシ亜鉛;アルミニウム化合物、例えばアルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド及びアルミニウムトリブトキシド;チタン化合物、例えばテトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトラブトキシチタニウム、ジクロロジメトキシチタニウム、テトライソプロポキシチタニウム、酢酸チタン及びチタニウムアセチルアセトネート;リン化合物、例えばトリメ
チルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルメチルホスホニウムハライド、トリオクチルブチルホスホニウムハライド及びトリフェニルメチルホスホニウムハライド;ジルコニウム化合物、例えばジルコニウムハライド、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアルコキシド及び酢酸ジルコニウムと;鉛及び鉛含有化合物、例えば酸化鉛、例えばPbO、PbO
2及びPb
3O
4、硫化鉛、例えばPbS、Pb
2S
3及びPbS
2、並びに水酸化鉛、例えばPb(OH)
2、Pb
3O
2(OH)
2、Pb
2[PbO
2(OH)
2]及びPb
2O(OH)
2を含む。具体的には、チタン化合物、例えばチタニウムテトラフェノキシド、チタニウムイソプロピレート、チタニウムテトラクロリド、有機スズ化合物並びに銅、鉛、亜鉛、鉄及びジルコニウム化合物、並びに先述の少なくとも1つを含む組合せを含む触媒が挙げられる。具体的には、チタン化合物、例えばチタニウムテトラフェノキシド、チタニウムイソプロピレート、チタニウムテトラクロリド、有機スズ化合物並びに銅、鉛、亜鉛、鉄及びジルコニウム化合物、並びに先述の少なくとも1つを含む組合せを含む触媒が挙げられる。
【0064】
ポリカーボネートの重合において、ジヒドロキシ化合物は、カーボネート供給源としてのホスゲンとの反応物として使用できる。本明細書で使用されている「ポリカーボネート」は、式(1)の反復構造的カーボネート単位を有するホモポリマー又はコポリマーを意味し、
【0066】
式中、R
1基の合計数の少なくとも60パーセントが芳香族であり、又は各R
1が、少なくとも1個のC
6〜30芳香族基を含有する。具体的には各R
1が、ジヒドロキシ化合物、例えば式(2)の芳香族ジヒドロキシ化合物、又は式(3)のビスフェノールに由来し得る。
【0068】
式(2)では、各R
hは、独立して、ハロゲン原子、例えば臭素、C
1〜10ヒドロカルビル基、例えばC
1〜10アルキル、ハロゲンで置換されているC
1〜10アルキル、C
6〜10アリール、又はハロゲンで置換されているC
6〜10アリールであり、nが0から4である。
【0069】
式(3)では、R
a及びR
bが、それぞれ独立して、ハロゲン、C
1〜12アルコキシ又はC
1〜12アルキルであり;p及びqが、それぞれ独立して、0から4の整数であり、その結果、p又はqが4未満である場合、環の各炭素の価数は、水素により満たされる。ある実施形態において、p及びqはそれぞれ0であり、又はp及びqはそれぞれ1であり、R
a及びR
bがそれぞれC
1〜3アルキル基、具体的には、各アリーレン基のヒドロキシ基へとメタ配置されているメチルである。X
aは、2個のヒドロキシ置換芳香族基につながる橋かけ基であり、橋かけ基及びC
6アリーレン基のそれぞれのヒドロキシ置換基は、C
6アリーレン基に、互いにオルト、メタ又はパラ(特にパラ)配置されており、橋かけ基は、例えば、単結合、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)
2-、-C(O)-又はC
1〜18有機基であり、この有機基は環状であっても非環状であっても、芳香族であっても非芳香族であってもよく、ヘテロ原子、例えばハロゲン、酸素、窒素、硫黄、ケイ素又はリンを更に含み得る。例えば、X
aは、置換又は非置換C
3〜18シクロアルキリデンであり;式-C(R
c)(R
d)-のC
1〜25アルキリデンであって、式中R
c及びR
dは、それぞれ独立して水素、C
1〜12アルキル、C
1〜12シクロアルキル、C
7〜12アリールアルキル、C
1〜12ヘテロアルキル又は環状C
7〜12ヘテロアリールアルキルであり;又は式-C(=R
e)-の基であって、式中R
eは二価C
1〜12炭化水素基である。
【0070】
特定のジヒドロキシ化合物を例示する例の一部は、以下を含む:ビスフェノール化合物、例えば4,4'-ジヒドロキシビフェニル、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルメタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、1,1-ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、trans-2,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブテン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンタン、α,α'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-n-プロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-イソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-sec-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(5-フェノキシ-4-ヒドロキシフェニル)エチレン、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、1,6-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,6-ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フッ素、2,7-ジヒドロキシピレン、6,6'-ジヒドロキシ-3,3,3',3'-テトラメチルスピロ(ビス)インダン(「スピロビインダンビスフェノール」)、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミド、2,6-ジヒドロキシジベンゾ-p-ジオキシン、2,6-ジヒドロキシチアントレン、2,7-ジヒドロキシフェノキサチン、2,7-ジヒドロキシ-9,10-ジメチルフェナジン、3,6-ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6-ジヒドロキシジベンゾチオフェン、及び2,7-ジヒドロキシカルバゾール;置換レゾルシノール化合物、例えば5-メチルレゾルシノール、5-エチルレゾルシノール、5-プロピルレゾルシノール、5-ブチルレゾルシノール、5-t-ブチルレゾルシノール、5-フェニルレゾルシノール、5-クミルレゾルシノール、2,4,5,6-テトラフルオロレゾルシノール、2,4,5,6-テトラブロモレゾルシノール;カテコール;ヒドロキノン;置換ヒドロキノン、例えば2-メチルヒドロキノン、2-エチルヒドロキノン、2-プロピルヒドロキノン、2-ブチルヒドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノン、2-フェニルヒドロキノン、2-クミルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラ-t-ブチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6-テトラブロモヒドロキノン。
【0071】
特定のジヒドロキシ化合物は、レゾルシノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン[「ビスフェノールA」又は「BPA」、式(3)におけるA
1及びA
2のそれぞれはp-フェニレンであり、Y
1はイソプロピリデンである]、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、2-フェニル-3,3'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン(N-フェニルフェノールフタレインビスフェノールである「PPPBP」又は3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-フェニルイソインドリン-1-オンとしても知られている)、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン(DMBPC)及び1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンビスフェノール)を含む。
【0072】
本明細書で使用されている「ポリカーボネート」は、ホモポリカーボネート(ポリマーにおける各R
1は同一である)、カーボネートで様々なR
1部分を含むコポリマー(「コポリカーボネート」)、並びにカーボネート単位及び他の種類のポリマー単位、例えばポリシロキサン単位、エステル単位を含むコポリマーを含む。
【0073】
ポリカーボネートは、界面重合プロセスにより、又は溶融重合プロセスで作ることができ、溶融重合プロセスは、連続した溶融プロセスであってよい。界面重合の反応条件は変化し得るが、模範的なプロセスは、一般的に、NaOH又はKOH水溶液中の二価フェノール反応物に溶解又は分散させる工程、生じた混合物を水非混和性溶媒媒体に加える工程、触媒、例えば、第三級アミン又は相間移動触媒の存在下で、例えば8から10の制御pH条件下において反応物をカーボネート前駆体と、例えば、ホスゲン又はジアリールカーボネートと接触させる工程に関与する。水非混和性溶媒は、例えば、塩化メチレン、二塩化エチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエンである。
【0074】
第三級アミンのうち界面重合に使用できるのは、脂肪族第三級アミン、例えばトリエチルアミン及びトリブチルアミン、脂環式第三級アミン、例えばN,N-ジエチル-シクロヘキシルアミン及び芳香族第三級アミン、例えばN,N-ジメチルアニリンである。相間移動触媒のうち使用できるのは、式(R
3)
4Q
+Xの触媒であって、式中、各R
3が同一又は異なり、C
1〜10アルキル基であり;Qが窒素又はリン原子であり;Xがハロゲン原子であり、又はC
1〜8アルコキシ基であり、又はC
6〜18アリールオキシ基である。相間移動触媒の例は、(CH
3(CH
2)
3)
4NX、(CH
3(CH
2)
3)
4PX、(CH
3(CH
2)
5)
4NX、(CH
3(CH
2)
6)
4NX、(CH
3(CH
2)
4)
4NX、CH
3(CH
3(CH
2)
3)
3NX及びCH
3(CH
3(CH
2)
2)
3NXを含み、式中、XがCl
-、Br
-、C
1〜8アルコキシ基又はC
6〜18アリールオキシ基である。相間移動触媒の有効量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノールの質量に対して、それぞれ0.1から10質量パーセント(wt%)、又は0.5から2wt%である。
【0075】
或いは、溶融プロセスを使用して、ポリカーボネートを作ることができる。一般的に、溶融重合プロセスでは、ポリカーボネートは、エステル交換触媒の存在下で、ジヒドロキシ反応物及びジアリールカーボネートを溶融した状態で共反応させることにより調製できる。反応は、典型的な重合設備、例えば連続撹拌反応器(CSTR)、プラグフロー反応器、ワイヤー接触流下式重合器(wire wetting fall polymerizer)、自然流下式重合器(free fall polymerizer)、ワイプトフィルム重合器(wiped film polymerizer)、バンバリーミキサー、シングル若しくはツインスクリュー押出機又は先述の1つ若しくは複数の組合せで実行してよい。溶融反応物から揮発性の一価フェノールを蒸留することにより除去し、ポリマーを溶融残渣として単離する。溶融重合は、バッチプロセス又は連続プロセスとして実施してよい。いずれの例でも、使用される溶融重合条件は、2つ以上の個別の反応段階、例えば、出発ジヒドロキシ芳香族化合物及びジアリールカーボネートがオリゴマーポリカーボネートに変換される第1の反応段階、並びに、第1の反応段階で形成されたオリゴマーポリカーボネートが高分子量のポリカーボネートに変換される第2の反応段階を含み得る。そのような「段階的」重合反応条件は、とりわけ、連続した重合系における使用に適しており、出発モノマーは第1の反応容器中でオリゴマー化され、そこで形成されたオリゴマーポリカーボネートは、1つ又は複数の下流反応器に連続して移され、その下流反応器で、オリゴマーポリカーボネートが高分子量のポリカーボネートに変換される。典型的には、オリゴマー化の段階において、生成されたオリゴマーポリカーボネートは、1,000から7,500ダルトンの数平均分子量を有する。1つ又は複数の後続の重合段階では、ポリカーボネートの数平均分子量(Mn)を、8,000から25,000ダルトンの間(ポリカーボネート標準を使用)に増加させる。典型的には、溶媒はこのプロセスに使用されず、反応物であるジヒドロキシ芳香族化合物及びジアリールカーボネートは、溶融状態である。反応温度は、100℃から350℃、具体的に180℃から310℃であってよい。圧力は、反応の初期において、大気圧であっても、過圧であっても、大気圧から15トールの圧力範囲であってもよく、後の段階で減圧、例えば0.2から15トールであってもよい。反応時間は、一般的に0.1時間から10時間である。
【0076】
溶融エステル交換でのポリカーボネートの重合生成に使用される触媒は、ホスホニウム塩及びアンモニウム塩の一方又は両方を含む第1の触媒、並びにアルカリ及びアルカリ土類イオンの一方又は両方の供給源を含むアルカリ触媒の、一方又は両方を含み得る。第1の触媒は、典型的には、揮発性であり、上昇温度で分解する。したがって、第1の触媒は、低温重合の早期段階における使用に好ましい。アルカリ触媒は、典型的には、より熱的に安定であり、第1の触媒より揮発性は低い。
【0077】
アルカリ触媒は、アルカリ又はアルカリ土類イオンの一方又は両方の供給源を含み得る。これらのイオンの供給源は、水酸化アルカリ金属、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、並びにアルカリ土類水酸化物、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムを含む。アルカリ及びアルカリ土類金属イオンの他の有望な供給源は、カルボン酸の対応する塩(例えば酢酸ナトリウム)及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の誘導体の対応する塩(例えばEDTAテトラナトリウム塩、及びEDTAマグネシウム二ナトリウム塩)を含む。他のアルカリ性エステル交換触媒は、カーボネートのアルカリ又はアルカリ土類金属塩、例えば、Cs
2CO
3、NaHCO
3、Na
2CO
3、非揮発性無機酸、例えばNaH
2PO
3、NaH
2PO
4、Na
2HPO
3、KH
2PO
4、CsH
2PO
4、Cs
2HPO
4、又はリン酸の混合塩、例えばNaKHPO
4、CsNaHPO
4、CsKHPO
4を含む。先述の触媒のいずれかの少なくとも1つを含む組合せを使用してもよい。
【0078】
有望な第1の触媒は、四級アンモニウム化合物、四級ホスホニウム化合物、又は先述の少なくとも1つを含む組合せを含み得る。四級アンモニウム化合物は、構造(R
4)
4N
+X
-の化合物であってよく、式中、各R
4は同一又は異なり、C
1〜20アルキル、C
4〜20シクロアルキル又はC
4〜20アリールであり;X
-は、有機又は無機アニオン、例えば、水酸化物、ハロゲン化物、カルボキシレート、スルホネート、スルフェート、ホルメート、カルボネート又はビカルボネートである。有機四級アンモニウム化合物の例は、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、酢酸テトラメチルアンモニウム、ギ酸テトラメチルアンモニウム、酢酸テトラブチルアンモニウム、及び先述の少なくとも1つを含む組合せを含む。水酸化テトラメチルアンモニウムが使用されることが多い。四級ホスホニウム化合物は、(R
5)
4P
+X
-の構造の化合物であってよく、式中、各R
5は同一又は異なり、C
1〜20アルキル、C
4〜20シクロアルキル又はC
4〜20アリールであり;X
-が、有機又は無機アニオン、例えば、水酸化物、フェノキシド、ハロゲン化物、カルボキシレート、例えばアセテート又はホルメート、スルホネート、スルフェート、ホルメート、カルボネート又はビカルボネートである。X
-が、多価アニオン、例えばカルボネート又はスルフェートである場合、四級アンモニウム及びホスホニウム構造における正及び負電荷が適切に均衡を保つことが理解される。例えば、R
20からR
23がそれぞれメチルであり、X
-がカルボネートである場合、X
-は、2(CO
3-2)を表すことが理解される。有機四級ホスホニウム化合物の例は、水酸化テトラメチルホスホニウム、酢酸テトラメチルホスホニウム、ギ酸テトラメチルホスホニウム、水酸化テトラブチルホスホニウム、酢酸テトラブチルホスホニウム(TBPA)、酢酸テトラフェニルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウムフェノキシド及び先述の少なくとも1つを含む組合せを含む。TBPAが使用されることが多い。
【0079】
使用される第1の触媒及びアルカリ触媒の量は、重合反応に使用されるジヒドロキシ化合物の合計モル数に基づいてよい。第1の触媒の比、例えば、重合反応に使用されるホスホニウム塩対すべてのジヒドロキシ化合物を指す場合、反応混合物に存在する個別のジヒドロキシ化合物それぞれのモル数の合計で割ったホスホニウム塩1モルを意味するホスホニウム塩のモル数/ジヒドロキシ化合物1モルを指すと都合がよい。アルカリ触媒は、1×10
-2から1×10
-8モル、具体的には1×10
-4から1×10
-7モルの金属/使用されるジヒドロキシ化合物1モルを得るために十分な量で使用できる。第1の触媒(例えば、有機アンモニウム又はホスホニウム塩)の量は、1×10
-2から1×10
-5、具体的には1×10
-3から1×10
-4モル/反応混合物中のジヒドロキシ化合物の合計モルであってよい。
【0080】
重合が完了した後における、酸性化合物を用いた、エステル交換触媒及びあらゆる反応性触媒残渣のクエンチは、一部の溶融重合プロセスでも有用なことがある。重合が完了した後における溶融重合反応から、触媒残渣及び/又はクエンチ剤、並びに他の揮発性残渣を除去することは、一部の溶融重合プロセスでも有用なことがある。
【0081】
ホスゲンを作る方法の一部の実施形態、並びにこの方法における装置の使用は以下に明記されている。
【0082】
ある実施形態において、チューブ反応器においてホスゲンを生成する方法は:一酸化炭素を含む供給流及び塩素を、反応器のチューブに導入する工程であり、チューブが、そこに配置された触媒を有し、チューブが内部スキャフォールド(internal scaffold)を更に含んで、ホスゲン及び四塩化炭素を、ホスゲンの体積に対して0から10体積ppmの量で含む生成組成物を生成する工程を含む。
【0083】
先述のプロセスの特定の実施形態では、以下の条件の1つ又は複数が適用され得る:内部スキャフォールドが、内部挿入物及び内部フィンの一方又は両方を含む;内部挿入物、内部フィン又はその両方が、内部スキャフォールド構成要素を含む;内部スキャフォールド構成要素が直立構成要素、内部構成要素、傾斜構成要素、又は、先述の1つ若しくは複数を含む組合せを含む;触媒が、チューブの内壁に配置される;触媒がチューブ中に充填層として配置される;触媒の濃度、活性又はその両方が、チューブの供給端からチューブの流出口端までで変動し、その変動は、注入口では活性、濃度又はその両方が低いのに対し、流出口では相対的に濃度、活性又はその両方が高い;変動が、なだらかなグラジエントである;反応器におけるピーク温度が800℃未満である;反応器におけるピーク温度が400℃以下である;反応器が、250から10,000m
2/m
3の単位容積当たりの伝熱面積を有する;又は反応器が、500から10,000m
2/m
3の単位容積当たりの伝熱面積を有する。
【0084】
ある実施形態において、チューブ反応器は、シェル及びシェル内に位置するチューブを含み、シェル及びチューブの間に冷却媒体を有し、チューブは、内部スキャフォールドを更に含む。
【0085】
先述の反応器の特定の実施形態では、以下の条件の1つ又は複数が適用され得る:内部スキャフォールドが、内部挿入物及び内部フィンの一方又は両方を含む;内部挿入物、内部フィン又はその両方が、内部スキャフォールド構成要素を含む;内部スキャフォールド構成要素が直立構成要素、内部構成要素、傾斜構成要素、又は、先述の1つ若しくは複数を含む組合せを含む;触媒が、チューブの内壁に配置される;触媒がチューブ中に充填層として配置される;触媒の濃度、活性又はその両方が、チューブの供給端からチューブの流出口端までで変動し、注入口では活性、濃度又はその両方が低いのに対し、流出口では相対的に濃度、活性又はその両方が高いことが相違である;なだらかなグラジエントが相違である;反応器におけるピーク温度が800℃未満である;反応器におけるピーク温度が400℃以下である;反応器が、250から10,000m
2/m
3の単位容積当たりの伝熱面積を有する;又は反応器が、500から10,000m
2/m
3の単位容積当たりの伝熱面積を有する。
【0086】
以下の実施例を示して、本方法を例示する。実施例は、単なる例示であり、本開示に従って作られた装置、本開示に明記されている材料、状態又はプロセスパラメータを限定することを意図していない。
【実施例】
【0087】
本出願者らは、驚くべきことに、例えば、外径0.5インチのチューブ対外径2インチの産業用チューブで行った実験室規模の作業から、熱除去の速度はチューブ直径と反比例し、チューブのピーク温度は、チューブ直径が増加するにつれて上昇することを見出した。チューブのピーク温度及びホスゲンの合成で形成される四塩化炭素の間における、この関係を定量化するために、Aspen社Custom Modelerで1-Dモデルを展開して、プロセス性能に関する反応器寸法の効果を示す。
【0088】
モデルとした反応は
CO+Cl
2→COCl
2
のように書くことができ、式中、反応器への供給流は、CO対Cl
2のモル比が1:1であるCO及びCl
2の混合物を含む。以下を使用して、物質及びエネルギー保存の式に対し、簡潔な1-Dプラグフローモデルを書いた:
【0089】
無次元形態の支配的質量平衡式(1):
【0090】
【数2】
【0091】
反応器のプラグフローを介した無次元エネルギー収支(2)及び(3):
【0092】
【数3】
【0093】
パラメータ評価を改善するために、式(1)及び(2)を無次元形態に再公式化した。無次元形態の速度論的式は(4)、(5)及び(6)
【0094】
【数4】
【0095】
であり、式中、Aは反応速度定数であり、A
0は反応速度式中の速度論的パラメータであり、A
1は反応速度式中の速度論的パラメータであり、C
p,gはガスの比熱容量(J/kg/K)であり、fはCO対Cl
2のモル比であり、Kは反応速度定数であり、k
0は反応速度式中の速度論的パラメータであり、k
1は反応速度式中の速度論的パラメータであり、k
0modは反応速度式中の速度論的パラメータであり、Lは反応器の長さ(m)であり、Pは圧力(psig)であり、N
iはモル流量(mol/秒)であり、N*は正規化モル流量(N
i/N
total)であり(式中、N
totalは合計モル流量である)、Rは内半径(m)であり、T
cは冷却材/壁温度であり、注入口の供給流温度と同一とみなされる(すなわちT
in=T
c)、T
inは注入口温度(K)であり、T
refは参照温度(K)であり、T*は、正規化温度[(T-T
c)/(T
ref-T
c)](T
refは、現在のシミュレーション研究では十分に高く、700Kになるとみなされている参照温度である)、Uは、伝熱係数(W/m
2K)であり、p
bはバルク密度(Kg/m
3)であり、ΔH
Rは反応熱(ジュール)の変化であり、Qは容積流量(標準立方メートル/秒)であり、N
1及びN
2はモル流量(モル/秒)であり、mは質量流量(キログラム/秒)である。
【0096】
速度論的パラメータを評価し、表1に示すために、実施例1〜9の一連の実験を、米国特許第6,399,823号により、更に詳細に記載されている反応器設定で実行した。T
expは実験温度である。SCCMは標準立方センチメートル/分である。実施例では、ΔH
Rは-108,784J/molであり、Uは85.0W/m
2Kであり、T
refは700Kであり、C
p,gは659J/kgKであり、p
bは477kg/m
3である。
【0097】
【表1】
【0098】
実施例1〜9及び上に記載した速度論的式から得られるデータに基づき、シミュレーションツールであるAspen社Custom Modeler内で、最小二乗推定の手順に基づくニュートン法を使用して速度論的パラメータを評価した。判定した速度論的パラメータを表2に示し、速度論的パラメータの検証を表3に示し、100及び175SCCMの容積流量について、実験温度がモデル温度T
modelと比較されている。
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
実験及び実験室規模に展開したモデルの間における最初の検証研究の後で、モデルを用いて、大規模な産業用ユニットでの結果を予測した。スケールアップのために検討された基本事例は、300℃の注入口温度での、スケジュール160の、0.5インチ外径パイプについての250SCCMの流量に相当する。基本事例に相当する直線速度は、より大きい2インチの外径パイプにみなされている。モデルを使用して7フィートの長さの反応器に対する温度プロファイルを模倣した。温度プロファイルの比較は
図1に示され、破線は、外径が0.5インチである実験室規模のチューブ、実線は、外径が2インチである産業規模のチューブである。
【0102】
図1は、実験室規模のチューブをスケールアップすると、チューブの入口近くから許容できない、ほぼ100%の温度上昇が生じることを示す。
【0103】
これらの実験から、実験室規模にて、米国特許第6,399,823号により記載されている反応器設定で、CCl
4の生成が、反応器内で観察されたピーク温度の上昇及び後続する伝達機能と相互に関連し得ることが示され、式(7)を展開した:
ln(CCl
4[ppm])=0.0049*T
peak(K)-1.817(7)
式7から、ピーク温度であるT
peakが上昇するので、指数平均でホスゲン中の四塩化炭素の量が増加すると予測される。類似した関係が持続するとみなせば、産業上の設定で使用される場合、CCl
4の形成は実験室規模の事例より300%多く増加するであろう。言い換えれば、0.5インチ外径のチューブ反応器から、産業上の多管式反応器に一般的に使用される2インチのチューブへスケールアップすると、所定の一連の作用条件に対して、ホスゲン中の四塩化炭素が、実験室規模で観察された値より4倍多く増加する。このモデルから、産業規模の多管式反応器において、反応器の設計に、伝熱を改善するように基本設計の変化を行わない限り、ホスゲン中の四塩化炭素は、スケールアップの際に数倍に増えるという筆者らの主張が明らかに確立される。
【0104】
本明細書で開示されている方法及び反応器の更なる実施形態は、以下に明記されている。
【0105】
実施形態1:カーボネートを生成する方法であって、一酸化炭素を含む供給流及び塩素を、反応器のチューブ中で反応させて、ホスゲンを含む生成組成物を生成する工程であり、チューブが微粒子触媒を含有し、チューブから隔離した熱伝導性材料が、微粒子触媒の少なくとも一部に接触し、四塩化炭素がホスゲンの体積に対して0から10体積ppmの量で生成組成物に存在し、反応器が、1時間当たり2,000キログラム以上の第1の生成物を生成することが可能である工程;並びに、モノヒドロキシ化合物をホスゲンと反応させて、カーボネートを生成する工程を含む、方法。
【0106】
実施形態2:熱伝導性材料により、微粒子触媒及びチューブの間に熱伝導経路が設けられる、実施形態1の方法及び実施形態28の反応器。
【0107】
実施形態3:微粒子触媒の外面の少なくとも一部、又は微粒子触媒凝集体の外面の少なくとも一部、又はその両方に配置されているコーティングの形態の熱伝導性材料を含む、実施形態1〜2のいずれかの方法及び実施形態28の反応器。
【0108】
実施形態4:コーティングが0.001から1マイクロメートルのコーティング厚を有する、実施形態3の方法及び実施形態28の反応器。
【0109】
実施形態5:コーティングが、化学気相蒸着、溶射、浸漬コーティング又は粉体コーティングにより付着される、実施形態3〜4のいずれかの方法及び実施形態28の反応器。
【0110】
実施形態6:熱伝導性三次元メッシュの形態の熱伝導性材料を含む、実施形態1〜5のいずれか1つの方法及び実施形態28の反応器。
【0111】
実施形態7:メッシュの開口部が、微粒子触媒の平均直径を超える平均直径を有する、実施形態6の方法及び実施形態28の反応器。
【0112】
実施形態8:微粒子触媒内に分布し、微粒子触媒と物理的に接触している微粒子材料の形態の熱伝導性材料を含む、実施形態1〜7のいずれかの方法及び実施形態28の反応器。
【0113】
実施形態9:微粒子材料及び微粒子触媒が、チューブ内に配置されたメッシュと物理的に接触している、実施形態8の方法及び実施形態28の反応器。
【0114】
実施形態10:メッシュの開口部が、微粒子材料の平均直径より小さい平均直径を有する、実施形態9の方法及び実施形態28の反応器。
【0115】
実施形態11:微粒子触媒におけるドーパントの形態の熱伝導性材料を、微粒子触媒の質量に対して10,000ppm以上の量で含む、実施形態1〜10のいずれか1つの方法及び実施形態28の反応器。
【0116】
実施形態12:ドーパントの量が、微粒子触媒の質量に対して100,000ppm以上である、実施形態11の方法及び実施形態28の反応器。
【0117】
実施形態13:熱伝導性材料が、2W/(m・K)超、15W/(m・K)超、50W/(m・K)超又は100W/(m・K)超の熱伝導率を有する、実施形態1〜12のいずれか1つの方法及び実施形態28の反応器。
【0118】
実施形態14:熱伝導率が200W/(m・K)超である、実施形態13の方法及び実施形態28の反応器。
【0119】
実施形態15:熱伝導性材料が、アルミニウム、アルミニウム黄銅、酸化アルミニウム、アンチモン、ベリリウム、酸化ベリリウム、黄銅、青銅、カドミウム、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭素鋼、銅、金、イリジウム、鉄、鉛、マグネシウム、モリブデン、ニッケル、銀、鋼鉄、ステンレス鋼、クロムニッケル鋼(18%Cr、8%Ni)又は先述の少なくとも1つを含む組合せである、実施形態1〜14のいずれかの方法及び実施形態28の反応器。
【0120】
実施形態16:触媒の濃度、活性又はその両方が、チューブの供給端からチューブの流出口端までで変動し、注入口では活性、濃度又はその両方が低いのに対し、流出口では相対的に濃度、活性又はその両方が高いことが相違である、実施形態1〜15のいずれか1つの方法及び実施形態28の反応器。
【0121】
実施形態17:相違がなだらかなグラジエントである、実施形態16の方法及び実施形態28の反応器。
【0122】
実施形態18:反応器におけるピーク温度が800℃未満である、実施形態1〜17のいずれか1つの方法及び実施形態28の反応器。
【0123】
実施形態19:ピーク温度が400℃以下である、実施形態18の方法及び実施形態28の反応器。
【0124】
実施形態20:反応器が、250から10,000m
2/m
3の単位容積当たりの伝熱面積を有する、実施形態1〜19のいずれか1つの方法及び実施形態28の反応器。
【0125】
実施形態21:反応器が、500から10,000m
2/m
3の単位容積当たりの伝熱面積を有する、実施形態20の方法。
【0126】
実施形態22:カーボネートがジアルキルカーボネートであり、モノヒドロキシ化合物がアルキルモノヒドロキシ化合物である、実施形態1〜21のいずれかの方法。
【0127】
実施形態23:ジアルキルカーボネートがジメチルカーボネートであり、アルキルモノヒドロキシ化合物がメタノールである、実施形態22の方法。
【0128】
実施形態24:エステル交換触媒の存在下で、ジアルキルカーボネートを芳香族モノヒドロキシ化合物と反応させて、アルキルアリールカーボネートを生成する工程;並びに、不均化反応でアルキルアリールカーボネートを変換して、ジアリールカーボネートを生成する工程を更に含む、実施形態22〜23のいずれかの方法。
【0129】
実施形態25:カーボネートがジアリールカーボネートであり、モノヒドロキシ化合物が芳香族モノヒドロキシ化合物である、実施形態1〜21のいずれかの方法。
【0130】
実施形態26:ジアリールカーボネートがジフェニルカーボネートであり、芳香族モノヒドロキシ化合物がフェノールである、実施形態24〜25のいずれかの方法。
【0131】
実施形態27:芳香族ジヒドロキシ化合物を実施形態24〜26のいずれかのジアリールカーボネートと重合する工程を含む、ポリカーボネートを作る方法。
【0132】
実施形態28:シェル及びシェル内に位置しているチューブを含み:シェル及びチューブの間に冷却媒体を有し;チューブが、そこに配置された、一酸化炭素及び塩素をホスゲンに変換するのに有効な微粒子触媒を有し;チューブから隔離した熱伝導性材料が、微粒子触媒の少なくとも一部に接触する、チューブ反応器。
【0133】
実施形態29:実施形態1〜27のいずれかの方法で、実施形態28の反応器を使用する方法。
【0134】
一般に、本発明は、本明細書で開示されているあらゆる適切な要素を含み得る、それらからなり得る、又は本質的にそれからなり得るのいずれかである。或いは、本発明は、従来技術の組成物に使用される、又は他に本発明の機能及び/又は目的の達成を必要としないいかなる成分、材料、原料、アジュバント又は化学種も避けるように、又は実質的に含まないように、追加的に、又は代替的に配合してもよい。
【0135】
本明細書で開示されているすべての範囲は、終点を含み、終点は、互いに独立して組み合わせられる(例えば、「25wt%まで、又は、より具体的には5wt%から20wt%」の範囲は、終点及び「5wt%から25wt%」等範囲のすべての中間体値を含む)。更に、本明細書における「第1の」、「第2の」等という用語は、序列、量又は重要性を一切表さず、むしろ、他のものと別の1つの構成要素を表すために使用される。本明細書における「a」及び「an」及び「the」という用語は、本明細書において指示がない限り、又は文脈に明らかに反しない限り、量の限定を表さず、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈されるべきである。「又は」は、本明細書において指示がない限り、又は文脈に明らかに反しない限り、「及び/又は」を意味する。本明細書で使用されている接尾辞「(s)」は、接尾辞が修飾する語句の単数形及び複数形の両方を含み、それにより、1つ又は複数のその語句を含むよう意図されている[例えば、フィルム(複数可)は、1つ又は複数のフィルムを含む]。「一実施形態」、「別の実施形態」、「ある実施形態」等についての明細書全体の言及は、実施形態に関連して記載される特定の構成要素(例えば、特徴、構造、及び/又は特性)が、本明細書に記載されている少なくとも1つの実施形態に含まれ、他の実施形態で存在してもしなくてもよいことを意味する。更に、記載されている構成要素は、様々な実施形態で、いかなる適切な手段でも組み合わせられることは理解されるべきである。
【0136】
本明細書のすべての引用文献は、参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0137】
詳細な実施形態が記載されているが、現在想定できない、又は現在想定できないことがある代用物、変更、変化、改善及び実質等量が、出願者又は他の当業者に思い浮かぶことがある。したがって、出願されている、及び補正され得る添付の特許請求の範囲が、そのようなすべての代用物、変更、変化、改善及び実質等量を包含するよう意図されている。
【0138】
本出願は、2014年2月4日に出願された欧州特許出願14382038に対する優先権を主張し、その内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。