特許第6286063号(P6286063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286063
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20180215BHJP
   A61M 5/158 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   A61M5/32 510K
   A61M5/158 500H
   A61M5/32 500
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-562951(P2016-562951)
(86)(22)【出願日】2015年4月1日
(65)【公表番号】特表2017-525397(P2017-525397A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】CN2015075658
(87)【国際公開番号】WO2016062016
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2016年10月14日
(31)【優先権主張番号】201410577644.7
(32)【優先日】2014年10月24日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201420621938.0
(32)【優先日】2014年10月24日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】316015800
【氏名又は名称】上海金塔医用器材有限公司
【氏名又は名称原語表記】Gemtier Medical(Shanghai) Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】毛 亜凌
【審査官】 芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表平06−500482(JP,A)
【文献】 特開2000−254225(JP,A)
【文献】 特開2001−259029(JP,A)
【文献】 特開2003−164525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針基、針鞘、チューブ、および針管を含み、使用前は前記針鞘で前記針管を被覆し、前記チューブが前記針基に連通する使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針であって、
複数のスライダおよび複数の位置留めをさらに含み、前記針基は筒状であり、前記針基の一端が前記針管に連通するように固定され、他端が前記チューブに接続され、
前記複数のスライダは両端が開口した筒状で、互いに嵌挿され、最内層に位置する前記スライダが前記針基に移動可能に被さり、前記複数のスライダの移動方向における全長が前記針管の長さより長く、
前記位置留めは、前記複数のスライダおよび前記針基に設けられ、前記使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針の使用後は、前記複数のスライダがスライドして前記針管を完全に遮蔽するように展開した後に、最内層の前記スライダを前記針基に固定し、かつ前記複数のスライダ同士を互いに固定させ、
前記針基の外側に移動可能に嵌挿された第1のスライダと、前記第1のスライダの外側に移動可能に嵌挿された第2のスライダとを含み、
前記位置留めは、2つの弾性係止部および4つの係止溝を含み、
2つの前記係止溝が前記針基に設けられ、1つの前記弾性係止部が前記第1のスライダに設けられ、前記第1のスライダの外周にも2つの前記係止溝が設けられ、前記第2のスライダにも一つの前記弾性係止部が設けられ、前記弾性係止部と前記係止溝は、前記第1のスライダと前記第2のスライダがスライドして前記針管を完全に遮蔽するかまたは前記針管が完全に露出した場合に、互いに係合して前記第1のスライダと前記第2のスライダの移動を抑止し、
前記第2のスライダの前記チューブ側の一端に滑らかな突出部が円周状に設けられること
を特徴とする使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針。
【請求項2】
前記第1のスライダにさらに弾性ストッパが設けられ、前記弾性ストッパは、前記第1のスライダおよび前記第2のスライダがスライドして前記針管を完全に遮蔽した場合に、弾き出て前記第2のスライダが前記チューブの方向へ後退することを抑止することを特徴とする請求項1に記載の使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針。
【請求項3】
前記第2のスライダの側面に平滑面が設けられ、前記平滑面と前記針管の軸心線は5°〜20°の角度をなすこと
を特徴とする請求項1に記載の使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針。
【請求項4】
前記第2のスライダの前記平滑面側に切り欠きが設けられ、前記切り欠きが含まれる平面は前記針管の軸心線と平行であり、
前記切り欠きの一端が前記第2のスライダの前記チューブから遠い方の開口まで延伸し、他端が前記平滑面と交差するまで延伸すること
を特徴とする請求項3に記載の使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針。
【請求項5】
前記切り欠きが含まれる平面と前記針管の軸心線との距離は約0.5mmであること
を特徴とする請求項4に記載の使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針。
【請求項6】
ハンドルをさらに具備し、前記第2のスライダに少なくとも1つの滑り止め領域が設けられ、
前記スライダは弾性材料でできており、前記スライダと前記弾性係止部は一体成形され、前記針基と前記係止溝は一体成形され、
前記ハンドルは、前記針基の前記チューブに接続される方の端に固定され、
前記位置留めは、前記第1のスライダまたは前記針基に円周状に設けられた少なくとも1つのストッパをさらに含み、前記ストッパは、前記係止溝と前記弾性係止部が係合した後、前記第1のスライダ、前記第2のスライダが、引張力の作用が働いたときに離脱することを防止する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、出願日が2014年10月24日の中国特許出願番号201410577644.7の優先権を主張する。本願は上記中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
本発明は静脈針に関し、特に使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、一般的な使い捨て静脈針は、使用前に、例えば針管の曲がりまたは衝撃などを防止するために、針管を針鞘で被覆することにより針管を保護する必要がある。使用時には、この針鞘を抜き取る時に針を刺しやすいが、真の危険は、輸液完了後の後処理段階にあり、輸液を受けた患者の体内から抜いた後、廃棄処理を行う時、専用の処理箱に入れたり針鞘で被覆したりしていても針を刺しやすく、医療従事者に感染するなどの深刻な結果をもたらす危険がある。
【0004】
この欠点に対処して、ある静脈針は伸縮式針管と言う技術的手段を用いて、輸液完了後、バネ等の弾性体の構造を利用して、針管を針管保護用の保護針鞘等の構造内に収縮させる。このようにすると、針管を効果的に保護し、医療従事者が刺されることを回避できるが、針管が収縮する機械的動きにより患者に多大な苦痛を与える場合がある。
【0005】
一方、伸縮式針管が収縮する時、伸縮可能な機械的構造に常に隙間が存在しているので、この隙間に皮膚を挟んで患者にさらなる苦痛を与えるおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決しようとする技術的課題は、従来の技術における静脈針の安全上の問題と、機械的動きが患者に苦痛を与えるという欠点とを解消し、安全性がより高く、機械的動きによる苦痛がより小さい使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記技術手段により上記技術的課題を解決する。
【0008】
使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針は、針基、針鞘、チューブ、および針管を含み、前記針鞘で前記針管を被覆し、前記チューブが前記針基に連通する使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針であって、複数のスライダおよび複数の位置留めをさらに含み、前記針基は筒状であり、前記針基の一端が前記針管に連通するように固定され、他端が前記チューブに接続され、
前記複数のスライダは両端が開口した筒状であり、前記複数のスライダが互いに嵌挿され、最内層に位置する前記スライダが前記針基に移動可能に被さり、前記複数のスライダの移動方向における全長が前記針管の長さより長く、
前記位置留めは、前記複数のスライダおよび前記針基に設けられ、前記複数のスライダがスライドして前記針管を完全に遮蔽するように展開した後に、最内層の前記スライダを前記針基に固定し、かつ前記複数のスライダ同士を互いに固定する。
【0009】
ここで、前記チューブは、当分野で輸血、輸液などに用いられる一般的な柔軟性のある管である。すなわち、使用前に、複数のスライダは針基の外側に積層して被さり収縮状態にある。このとき、針管が外部に露出しているが、針鞘で針管を被覆することにより針管を遮蔽することができる。使用時に、針鞘を取り外して輸血などの作業を行い、作業の完了後、針管を抜く過程で、複数の筒状のスライダをスライドして展開した後、スライダおよび針基に設けられた位置留めにより端と端を接続するように固定するとともに、針管を遮蔽して針管による操作者または患者の受傷を回避する。このように、針管を抜く時に、安全性を保証するとともに、従来の技術における針管の急な跳ね返りによる苦痛を回避する。
【0010】
また、静脈針の操作部位の長さ(つまりチューブ部分を除いた針基などの部品の長さ)は、少なくとも針基に針管を加えた長さであるべきであるが、針管の長さは、一般的に標準的で変更できないものであるので、針基の長さの設計は静脈針の操作部位の長さを決めるキーポイントとなる。本発明において、複数のスライダが多重に嵌挿する構造を採用するので、収縮状態の場合(つまり針管が完全に露出した場合)、1つだけのスライダを採用することに比べて、複数のスライダの多重嵌挿構造は、針基の設計長さを明らかに短縮することができる。
【0011】
好ましくは、前記使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針は、前記針基の外側に移動可能に嵌挿された第1のスライダと、前記第1のスライダの外側に移動可能に嵌挿された第2のスライダとを含む。
【0012】
好ましくは、前記位置留めは、1つの第1の弾性ワッシャと、2つの第2の弾性ワッシャと、2つの第3の弾性ワッシャとを含み、
前記第1の弾性ワッシャは、前記第1のスライダの前記チューブ側の一端の内周に貼設され、かつその縁部が前記第1のスライダの内壁と滑らかに貼合され、
2つの前記第2の弾性ワッシャは、前記針基に嵌合され、かつ貼設され、前記第1のスライダおよび前記第2のスライダがスライドして、前記針管を完全に遮蔽するか、または前記針管が完全に露出したときに、前記第1の弾性ワッシャと係合して前記第1のスライダの移動を抑止し、
前記2つの第3の弾性ワッシャは、それぞれ前記第1のスライダの前記チューブから遠い方の一端の外周と前記第2のスライダの前記チューブ側の内周に設けられ、前記第1のスライダおよび前記第2のスライダがスライドして、前記針管を完全に遮蔽するか、または前記針管が完全に露出したときに、互いに係合して前記第2のスライダの移動を抑止する。
【0013】
好ましくは、前記位置留めは、2つの弾性係止部及び4つの係止溝を含み、
2つの前記係止溝が前記針基に設けられ、1つの前記弾性係止部が前記第1のスライダに設けられ、前記第1のスライダの外周にも2つの前記係止溝が設けられ、前記第2のスライダにも1つの前記弾性係止部が設けられ、前記弾性係止部と前記係止溝は、前記第1のスライダと前記第2のスライダが前記針管を完全に遮蔽するかまたは前記針管が完全に露出するようにスライドした場合に、互いに係合して前記第1のスライダと前記第2のスライダの移動を抑止する。
【0014】
好ましくは、前記第1のスライダにさらに弾性ストッパが設けられ、前記弾性ストッパは、前記第1のスライダおよび前記第2のスライダがスライドして前記針管を完全に遮蔽した場合に、弾き出て前記第2のスライダが前記チューブの方向へ後退することを抑止する。
【0015】
ここで、第1のスライダおよび第2のスライダを展開した後、針管が露出しないように遮蔽されることを保証する必要があるので、それらの間の係合の安定性は静脈針の使用上の安全性に直結する。そのため、第1のスライダの外周に、外に弾き出る弾性ストッパが設けられ、第2のスライダが第1のスライダに沿って所定の位置まで展開した後、弾性ストッパが外に弾き出て、第2のスライダがスライドして戻ろうとしても、弾性ストッパは、第2のスライダの縁部などの部位に当接することにより、第2のスライダは、スライドして戻ることができない。
【0016】
好ましくは、前記第2のスライダの前記チューブ側の一端に滑らかな突出部が環状に設けられる。該突出部は、前記針管を人体に差し込む場合に、皮膚が前記第1のスライダと前記第2のスライダとの隙間に挟まれることを防止する。
【0017】
ここで、スライダと針基はスライド可能に嵌合されるので、スライダ同士の間、スライダと針基との間に必ず隙間が存在する。これらの隙間は、操作過程でよく患者の皮膚を挟んで、患者に苦痛を与える。突出部が設けられると、突出部は操作中に患者の皮膚に当接して、皮膚に僅かな窪みを形成するので、突出部に接触する部位の回りの皮膚が第1のスライダと第2のスライダと針基との隙間付き接合部に接触することを回避して、皮膚が隙間に挟まれにくくなる。
【0018】
好ましくは、前記第2のスライダの側面に平滑面が設けられ、前記平滑面と前記針管の軸心線は5°〜20°の角度をなす。
【0019】
好ましくは、前記第2のスライダの前記平滑面側に切り欠きが設けられ、前記切り欠きが存在する平面は前記針管の軸心線と平行であり、
前記切り欠きの一端が前記第2のスライダの前記チューブから遠い方の開口まで延伸し、他端が前記平滑面と交差するまで延伸する。
【0020】
ここで、第1のスライダ、第2のスライダを展開する過程で、針管をできるだけ患者の皮膚へ接近させる必要があるので、第1のスライダ、第2のスライダの直径が大きすぎると、要件を満たすことができない。そのため、第2のスライダに平滑面を設けることにより、第1のスライダ、第2のスライダの展開しているときでも針管を皮膚に接近させることができる。該平滑面の針管の軸心線近傍の位置に切り欠きを開設することにより、針管が皮膚に接近するという要件をさらに満たし、患者の苦痛を軽減することができる。また、操作完了時または完了後に、針管による操作者等の刺し誤りを防止するためには、針管と切り欠きとの距離が近すぎてはいけない。
【0021】
好ましくは、前記切り欠きと前記針管の軸心線との距離は所定の距離である。
【0022】
好ましくは、前記使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針は、さらにハンドルを具備し、前記第2のスライダに少なくとも1つの滑り止め領域が設けられ、
前記スライダは弾性材料でできており、前記スライダと前記弾性係止部は一体成形され、前記針基と前記係止溝は一体成形され、
前記ハンドルは、前記針基の前記チューブに接続される方の端に固定され、
前記位置留めは、前記第1のスライダまたは前記針基に円周状に設けられた少なくとも1つのストッパをさらに含み、前記ストッパは、前記係止溝と前記弾性係止部が係合した後、前記第1のスライダ、前記第2のスライダが引張力の作用下で離脱することを防止する。
【0023】
ここで、ストッパは、さらにスライダ、針基の直接的な離脱を防止できる、任意のストッパ構造でよい。例えば、針基と第1のスライダの針管側の一端の外壁に環状留め輪が設けられ、第1のスライダと第2のスライダのチューブ側の一端の内壁に2つの突起が設けられ、引っ張られると、第1、第2のスライダの内壁にある2つの突起により環状留め輪に係止される。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、複数のスライダを設置して針基に多重に嵌挿することにより、本発明の使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針の操作部位の長さがより短くなり、かつ各層のスライダの展開により、使用中および使用後に針管を遮蔽し、安全性を向上させ、患者の苦痛を軽減するという積極的な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の好ましい実施例の使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針の展開したときの平面図である。
図2】本発明の好ましい実施例の使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針の縮み込んだときの平面図である。
図3】本発明の好ましい実施例の使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針の概略構成図である。
図4】本発明の好ましい実施例の使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針の概略構成図である。
図5図1のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに説明するが、本発明は下記実施例の範囲内に限定されるものではない。
【0027】
図1は本実施例の針刺し防止静脈輸液用穿刺針を展開したときの平面図であり、図2は本実施例の使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針が収縮したときの平面図である。図1〜2に示すように、本実施例に係る使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針は、針基3、針鞘、チューブ6および針管4を含み、針鞘で針管4を被覆し、チューブ6が針基3に連通し、針基3が筒状であり、針基3の一端が針管4に連通するように固定され、他端がチューブ6に接続される。
【0028】
図3〜4は本発明の好ましい実施例の使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針の概略構成図であり、図5図1のA−A線断面図であり、図3〜5に示すように、本実施例に係る使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針は、針基3の外側に移動可能に被さったスライダ1と、スライダ1の外側に移動可能に被さったスライダ2とをさらに含む。
【0029】
スライダ1とスライダ2は、互いに嵌挿され、両端が開口した筒状であり、最内層に位置するスライダ1が針基3に移動可能に被さり、スライダ1とスライダ2の移動方向における全長が針管4の長さより長い。
【0030】
弾性係止部13、弾性係止部21、係止溝31、係止溝32、係止溝11、および係止溝12は、位置留めとして針基3、スライダ1およびスライダ2に設けられ、スライダ1とスライダ2の展開後または収縮状態で、スライダ1、スライダ2および針基3を互いに係合させるように固定する。
【0031】
係止溝31と係止溝32とが針基3に設けられ、弾性係止部13がスライダ1に設けられ、係止溝11と係止溝12とがスライダ1の外周に設けられ、弾性係止部21がスライダ2に設けられ、弾性係止部13、弾性係止部21、係止溝31、係止溝32、係止溝11、係止溝12は、スライダ1とスライダ2がスライドして針管4を完全に遮蔽するかまたは針管が完全に露出した場合に、互いに係合してスライダ1とスライダ2の移動を抑止する。
【0032】
スライダ1に弾性ストッパ14がさらに設けられ、弾性ストッパ14は、スライダ1とスライダ2がスライドして針管4を完全に遮蔽した際に、スライダ2が弾き出されてチューブ6の方向へ後退することを抑止する。
【0033】
スライダ2のチューブ6側の一端に、滑らかな突出部22が環状に設けられ、突出部22は、針管4を人体に差し込む時に、皮膚がスライダ1とスライダ2との隙間に挟まることを防止する。
【0034】
スライダ1とスライダ2と針基3はスライド可能に嵌合されるので、スライダ1とスライダ2との間、スライダ1と針基3との間に、必ず隙間が存在する。これらの隙間は、操作過程で患者の皮膚を挟んで、患者に苦痛を与えることがよくある。突出部22が設けられると、突出部22は操作中に患者の皮膚に当接して、皮膚に僅かな窪みを形成するので、突出部22に接触する部位の回りの皮膚がスライダ1とスライダ2と針基との隙間付き接合部に接触することを抑止して、皮膚が隙間に挟まれにくくなる。
【0035】
スライダ2の側面に平滑面23が設けられ、平滑面23と針管4の軸心線は5°の角度をなす。スライダ2の平滑面23側に切り欠きが設けられ、この切り欠きがある平面は針管4の軸心線と平行である。切り欠きの一端がスライダ2のチューブ6から離れた側の開口まで延伸し、他端が平滑面23と交差するまで延伸する。切り欠きと針管4の軸心線との距離は0.5mmである。
【0036】
本実施例に係る使い捨て針刺し防止静脈輸液用穿刺針は、さらにハンドル5を具備し、スライダ2に少なくとも一つの滑り止め領域24(図4参照)が設けられる。スライダ1とスライダ2は弾性材料で作られ、かつ、弾性係止部と一体成形され、針基3は係止溝32と一体成形され、ハンドル5は針基3のチューブ6に接続された一端に固定される。
【0037】
使用前、スライダ1、スライダ2は針基の外側に積層して被さり、収縮状態にある。このとき、針管4が外部に露出しているが、針鞘で針管を被覆することにより針管を遮蔽することができる。使用時には、針鞘を取り外して輸血などの作業を行い、作業の完了後、針管を抜く過程で、筒状のスライダ1、スライダ2をスライドして展開した後、スライダ1、スライダ2および針基に設けられた位置留め(弾性ストッパ、弾性係止部等)により端と端を接続するように固定するとともに、針管4を遮蔽して針管4による操作者または患者の受傷を回避する。このように、針管を抜く時に、安全性を保証するとともに、従来の技術における針管の急な跳ね返りによる患者の苦痛を回避する。
【0038】
また、スライダ1、スライダ2が展開する過程で、針管4をできるだけ患者の皮膚へ接近させる必要があるので、スライダ1、スライダ2の直径が大きすぎると、要件を満たすことができない。このため、スライダ2に平滑面3を設けることにより、スライダ1、スライダ2の展開過程でも針管4が皮膚に接近できる。平滑面23の針管の軸心線近傍の位置に切り欠きを開設することにより、針管が皮膚に接近するという要件をさらに満たし、患者の苦痛を軽減することができる。
【0039】
また、スライダ1と針基に、いずれもストッパとしての突起と環状留め輪構造(図示せず)が環状に設けられ、針基とスライダ1の針管側の一端の外壁に環状留め輪が設けられ、スライダ1とスライダ2は、チューブ側の端部の内壁に2つの突起を有し、牽引されると、内壁にある2つの突起により環状留め輪に係止され、係止溝と弾性係止部が係合した後、引張力が作用して、スライダ1、スライダ2が外れないようにする。
【0040】
以上、本発明の具体的な実施形態を記載したが、これは、例を挙げて本発明を説明したものに過ぎず、当業者は、本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲によって限定されると理解すべきである。当業者であれば、本発明の原理および主旨から逸脱しない範囲で、これらの実施形態に対して、例えば、弾性係止部と係止溝のような係止構造の代わりに、弾性ワッシャの相互係合などの方式でスライダを針基に締め付けるなど、多様な変形または修正を行うことができるが、このような変形および修正はいずれも本発明の保護範囲内に属する。
図1
図2
図3
図4
図5