(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
最初に、本発明の実施形態の内容を列記する。
【0011】
(1)本発明の実施の形態に係るポリウレタン樹脂組成物は、水酸基含有化合物(A)とイソシアネート基含有化合物(B)とを反応させることにより得られるポリウレタン樹脂組成物であって、アルキルチオ基を有する酸化防止剤(C)を含む。このような構成により、ポリウレタン樹脂組成物の耐熱性を向上させることができる。
【0012】
(2)好ましくは、前記酸化防止剤(C)は、前記アルキルチオ基を有するフェノール化合物である。このような構成により、ポリウレタン樹脂組成物の耐熱性をより向上させることができる。
【0013】
(3)好ましくは、前記ポリウレタン樹脂組成物は、さらに、無機充填剤(D)を含み、前記無機充填剤(D)のナトリウム含有量が、Na
2O換算で前記無機充填剤(D)の0.15質量%以下である。このような構成により、ポリウレタン樹脂組成物の耐熱性をさらに向上させることができる。
【0014】
(4)好ましくは、前記ポリウレタン樹脂組成物は、さらに、無機充填剤(D)を含み、前記ポリウレタン樹脂組成物は、前記ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、前記無機充填剤(D)を20質量部〜80質量部含む。このような構成により、たとえば、ポリウレタン樹脂組成に高い熱伝導性を与え、かつポリウレタン樹脂組成物の調製時における混合粘度を使用に好適な範囲に抑えることができる。
【0015】
(5)好ましくは、前記ポリウレタン樹脂組成物は、前記ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、前記酸化防止剤(C)を0.05質量部〜2.0質量部含む。このような構成により、ポリウレタン樹脂組成物の劣化を抑制しつつ、酸化防止剤のポリウレタン樹脂組成物表面への析出を防ぐことができる。
【0016】
(6)本発明の実施の形態に係る封止物は、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物により封止されている。このような構成により、耐熱性の高いポリウレタン樹脂組成物による封止対象物を適切に保護することができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
本実施の形態における水酸基含有化合物(A)としては、特に限定されないが、例えば、ヒマシ油系ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール、低分子量グリコール、ポリエステルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ダイマー酸ポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、または水添ポリイソプレンポリオールの等を使用することができる。また、これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0019】
水酸基含有化合物(A)としては、耐熱性向上の観点から、ヒマシ油系ポリオールを含むことが好ましい。ヒマシ油系ポリオールと他のポリオールとを併用する場合、ヒマシ油系ポリオールの配合量は、使用するポリオール全体の60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0020】
ヒマシ油系ポリオールとしては、特に限定されないが、ヒマシ油、水添ヒマシ油、ヒマシ油とその他の油脂のエステル交換物、ヒマシ油と多価アルコールとの反応物、ヒマシ油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物、これらにアルキレンオキサイドを付加重合したもの等を使用することができる。また、これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0021】
ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、メチルグルコジット、芳香族ジアミン、ソルビトール、ショ糖、リン酸等を開始剤として、アルキレンオキシド(以下、「AO」と記載することがある。)の開環重合により得られたものなどを使用することができる。また、これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。開始剤としては、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールを出発物質としたものが好ましく、AOとしてはエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドが好ましい。
【0022】
ポリマーポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、前記ポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等。)をラジカル重合触媒の存在下に反応させた重合体ポリオールなどを使用することができる。また、これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0023】
低分子量グリコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族ジオール類;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等の脂環族ジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上の水酸基含有化合物などを使用することができる。また、これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0024】
ポリエステルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、多価水酸基含有化合物とポリカルボン酸(芳香族ポリカルボン酸及び脂肪族ポリカルボン酸)又は無水物及びこの低級アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4)エステル等のエステル形成性誘導体(無水フタル酸及びテレフタル酸ジメチル等)との縮合反応生成物;ポリラクトンポリオール;ポリカーボネートポリオール;並びにヒマシ油誘導体[ヒマシ油脂肪酸と多価アルコールやポリオキシアルキレンポリオールとのポリエステルポリオール(ヒマシ油脂肪酸のモノ−またはジグリセライド、ヒマシ油脂肪酸とトリメチロールプロパンとのモノ−、ジ−またはトリエステル、ヒマシ油脂肪酸とポリオキシプロピレングリコールとのモノ−またはジエステルなど);ヒマシ油にアルキレンオキサイド(炭素数2〜4)を付加したもの;ヒマシ油とジフェニルメタンジイソシアネートとから誘導された水酸基末端プレポリマーなど]などを使用することができる。また、これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0025】
ダイマー酸ポリオールとしては、特に限定されないが、たとえば、ジオール、トリオール、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレントリオールとダイマー酸との反応生成物等を使用することができる。また、これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。ダイマー酸ポリオールの重量平均分子量(Mw)は、300〜50000であるものが好ましい。また、ダイマー酸ポリオールの1分子当たりの平均官能基数は2〜4であることが好ましい。ダイマー酸ポリオールの水酸基価は、2mgKOH/g以上であることが好ましく、30mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、ダイマー酸ポリオールの水酸基価は、800mgKOH/g以下であることが好ましく、500mgKOH/g以下であることがより好ましく、300mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。
【0026】
ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリブタジエンポリオールおよび水添ポリイソプレンポリオールとしては、特に限定されないが、ポリウレタン樹脂組成物に通常用いられるものを使用することができる。
【0027】
本実施の形態において、水酸基含有化合物(A)は、たとえば、水酸基含有化合物とイソシアネート基含有化合物とを反応させることにより得られる水酸基末端ウレタンプレポリマーであってもよい。
【0028】
水酸基含有化合物(A)の含有量は、成型体の成形性の観点から、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましい。また、水酸基含有化合物(A)の含有量は、成型体の成形性の観点から、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して80質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることがさらに好ましい。
【0029】
本実施の形態におけるイソシアネート基含有化合物(B)としては、特に限定されないが、たとえば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物、またはこれらイソシアネート化合物の変性体を使用することができる。また、これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。イソシアネート基含有化合物(B)としては、脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物、またはこれらイソシアネート化合物の変性体が好ましい。
【0030】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネートなどを使用することができる。また、これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0031】
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどを使用することができる。また、これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0032】
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(モノメリックMDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネートなどを使用することができる。また、これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0033】
芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、キシリレンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどを使用することができる。また、これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0034】
ポリイソシアネート化合物の変性体としては、イソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アダクト変性体、カルボジイミド変性体、二官能変性体等を使用することができる。また、これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0035】
また、本実施の形態において、イソシアネート基含有化合物(B)は、たとえば、水酸基含有化合物とイソシアネート基含有化合物とを反応させることにより得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーであってもよい。
【0036】
イソシアネート基含有化合物(B)の含有量は、成型体の成形性の観点から、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、1.5質量部以上であることがさらに好ましい。また、イソシアネート基含有化合物(B)の含有量は、成型体の成形性の観点から、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して80質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることがさらに好ましく、50質量部以下であることがさらに好ましい。
【0037】
本実施の形態において、水酸基含有化合物(A)の水酸基とイソシアネート基含有化合物(B)のイソシアネート基とのモル比(NCO/OH)は、0.6以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。当該モル比がこの範囲より小さいと硬化不良が生じる場合および得られる樹脂の耐熱性が低くなる場合がある。また、当該モル比は、1.5以下であることが好ましく、1.3以下であることがより好ましい。当該モル比がこの範囲より大きいと硬化不良が起こる場合がある。
【0038】
本実施の形態における酸化防止剤(C)は、アルキルチオ基を有する。アルキルチオ基における炭素数は、ポリウレタン樹脂組成物の耐熱性の観点から、6以上が好ましく、7以上がより好ましく、8以上がさらに好ましい。アルキルチオ基を有する酸化防止剤(C)としては、たとえば、ビス[3−(ドデシルチオ)プロピオン酸]2,2−ビス[[3−(ドデシルチオ)−1−オキソプロピルオキシ]メチル]−1,3−プロパンジイル(住友化学社製、SUMILIZER TP−D)、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール(BASF社製、IRGANOX 1520L)、4−[[4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]アミノ]−2,6−ジ−tert-ブチルフェノール(BASF社製、IRGANOX 565)等を使用することができる。また、これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0039】
酸化防止剤(C)は、耐熱性向上の観点から、フェノール化合物であることが好ましい。アルキルチオ基を有し、かつフェノール化合物である酸化防止剤(C)としては、たとえば、IRGANOX 1520L、IRGANOX 565等が挙げられる。
【0040】
また、酸化防止剤(C)は、耐熱性向上の観点から、トリアジン環を有することが好ましい。アルキルチオ基とトリアジン環とを有する酸化防止剤(C)としては、IRGANOX 565が挙げられる。酸化防止剤(C)は、耐熱性向上の観点から、アルキルチオ基とトリアジン環とを有するフェノール化合物であることがさらに好ましい。酸化防止剤(C)は、他の酸化防止剤と組み合わせて使用しても良い。
【0041】
酸化防止剤(C)の配合量は、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、2.0質量部以下が好ましく、1.5質量部以下がより好ましい。また、酸化防止剤(C)の配合量は、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。
【0042】
本実施の形態におけるポリウレタン樹脂組成物には、無機充填剤(D)を加えることができる。無機充填剤(D)は、たとえば、ポリウレタン樹脂組成物の熱伝導性ならびに放熱性を高めるために用いられる。ポリウレタン樹脂組成物による封止対象物が電気電子部品等の発熱体である場合、ポリウレタン樹脂組成物にはある程度以上の熱伝導性ならびに放熱性が要求される。無機充填剤(D)としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウム等を使用することができる。
【0043】
無機充填剤(D)のナトリウム含有量は、Na
2O換算で、無機充填剤(D)の0.3質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましく、0.15質量%以下であることがさらに好ましく、0.10質量%以下であることがさらに好ましい。無機充填剤(D)のナトリウム含有量を上記の値以下にすることにより、耐熱性をより高めることができる。
【0044】
無機充填剤(D)の配合量は、ポリウレタン樹脂組成物の熱伝導性ならびに放熱性を高める観点から、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、20質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがより好ましい。また、無機充填剤(D)の配合量は、ポリウレタン樹脂組成物の製造時の混合粘度を抑える観点から、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、90質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましい。製造時の混合粘度が高い場合、作業性が低下する傾向がある。
【0045】
本実施の形態におけるポリウレタン樹脂組成物には、可塑剤(E)を加えることができる。可塑剤(E)としては、ポリウレタン樹脂に使用される従来公知のものを使用することができ、たとえば、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジウンデシルフタレートなどのフタル酸エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル等の非フタル酸エステル化合物、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸エステル、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、アセチル化リシノール酸トリグリセリド、アセチル化ポリリシノール酸トリグリセリドなどのヒマシ油系エステル、トリオクチルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテートなどのトリメリット酸エステル、テトラオクチルピロメリテート、テトライソノニルピロメリテートなどのピロメリット酸エステル、トリクレジルフォスフェート、トリスキシレニルフォスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルホスフェート、トリフェニルフォスフェートなどリン酸エステル、等を使用することができる。
【0046】
可塑剤(E)の配合量は、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましい。可塑剤が多いと、ポリウレタン樹脂組成物の強度等の各種物性が低下する恐れがある。
【0047】
なお、本実施の形態におけるポリウレタン樹脂組成物には、触媒、酸化防止剤、吸湿剤、防黴剤、シランカップリング剤など、必要に応じて各種の添加剤を加えることができる。シランカップリング剤としては、例えばアルコキシシラン類、ビニル基含有シランカップリンク剤、エポキシ基含有シランカップリンク剤、メタクリル基含有シランカップリンク剤、アクリル基含有シランカップリンク剤などが挙げられる。
【0048】
本実施の形態におけるポリウレタン樹脂組成物の製造時の混合粘度は、たとえば25℃の原料を混合する場合において、5Pa・s以下であることが好ましく、4Pa・s以下であることがさらに好ましい。混合粘度が上記数値以下であれば作業性の点で良好である。混合粘度は実施例に記載の方法で測定される。
【0049】
本実施の形態におけるポリウレタン樹脂組成物の熱伝導率は、封止対象物が電気電子部品等の発熱体である場合、0.3W/m・K以上であることが好ましく、0.4W/m・K以上であることがより好ましい。熱伝導率は実施例に記載の方法で測定される。
【0050】
本実施の形態におけるポリウレタン樹脂組成物により、電気電子部品、医療用品、玩具、および生活用品等の物品を封止することができる。ポリウレタン樹脂組成物により封止された状態の物品を封止物とも称する。
【実施例】
【0051】
以下、実施例および比較例に基づいて、本実施の形態のポリウレタン樹脂組成物についてより詳細に説明する。本発明はこれによって制限されるものではない。なお、本明細書中に於ける「部」、「%」は、特に明示した場合を除き、「質量部」、「質量%」をそれぞれ表している。
【0052】
実施例および比較例において使用する原料を示す。
[水酸基含有化合物]
・水酸基含有化合物(A1):植物油脂肪酸‐多価アルコールエステル
(商品名:HS2T−166H、豊国製油社製)
・水酸基含有化合物(A2):ヒマシ油系ポリオール
(商品名:URIC H-57、伊藤製油社製)
・水酸基含有化合物(A3):ヒマシ油
(商品名:ヒマシ油D、伊藤製油社製)
【0053】
[イソシアネート基含有化合物]
・イソシアネート基含有化合物(B1):ポリメリックMDI
(商品名:ミリオネートMR−200、東ソー社製)
・イソシアネート基含有化合物(B2):MDIのカルボジイミド変性体
(商品名:ルプラネートMM103、BASF INOACポリウレタン社製)
・イソシアネート基含有化合物(B3):HDIのヌレート変性体
(商品名:デュラネートTLA−100、旭化成ケミカルズ社製)
【0054】
[酸化防止剤]
・酸化防止剤(C1):アルキルチオ基含有酸化防止剤(4−[[4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]アミノ]−2,6−ジ−tert-ブチルフェノール)
(商品名:IRGANOX 565、BASF社製)
・酸化防止剤(C2):アルキルチオ基含有酸化防止剤(2,4−ビス(オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール)
(商品名:IRGANOX 1520L、BASF社製)
・酸化防止剤(Cc):アルキルチオ基非含有酸化防止剤(ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート])
(商品名:アデカスタブAO−60、ADEKA社製)
【0055】
[無機充填剤]
・無機充填剤(D1):水酸化アルミニウム(ナトリウム含有量(Na
2O換算):0.02質量%)
(商品名:BE−043、日本軽金属社製)
・無機充填剤(D2):水酸化アルミニウム(ナトリウム含有量(Na
2O換算):0.07質量%)
(商品名:CL−310、住友化学社製)
・無機充填剤(D3):アルミナ(ナトリウム含有量(Na
2O換算):0.07質量%)
(商品名:LS−220、日本軽金属社製)
・無機充填剤(D4):水酸化アルミニウム(ナトリウム含有量(Na
2O換算):0.17%)
(商品名:C−305、住友化学社製)
【0056】
[可塑剤]
・可塑剤(E1):ジウンデシルフタレート
(商品名:サンソサイザーDUP、新日本理化社製)
【0057】
表1は、実施例1〜15および比較例1〜3のポリウレタン樹脂組成物を形成するために用いる各原料ならびにそれらの配合量(質量部)と、後述する各評価の結果とを示す。
【0058】
<ポリウレタン樹脂組成物の調製>
イソシアネート基含有化合物(B)を除く原料の混合物をディスパー(プライミクス(株)製、機種名:TKホモディスパー2.5型)を用いて、30分間混合した。その後、イソシアネート基含有化合物(B)をNCO/OH=1〜1.1となるよう添加し、混合及び脱泡を行った。このようにして調製したポリウレタン樹脂組成物を用いて、後述するように、耐熱性、熱伝導率および混合粘度について評価を行った。
【0059】
<耐熱性について>
1.耐熱性評価のための試験片の作成
調製した硬化前のポリウレタン樹脂組成物を直径5cmの円筒型の金型に高さが3cmとなるように流し込み、80℃の環境下において16時間静置することにより、ポリウレタン樹脂組成物を硬化させた。その後、硬化したポリウレタン樹脂組成物を脱型することにより、耐熱性評価用の試験片を得た。
【0060】
2.耐熱性の評価
室温環境下において24時間静置した試験片(以下、未加熱試験片とも称する)と、150℃の高温環境下において24時間静置した試験片(以下、加熱後試験片とも称する)とを用意した。そして、未加熱試験片および加熱後試験片の各表面の硬度(タイプA)をJIS K6253に従って測定した。未加熱試験片の硬度に対する加熱後試験片の硬度の割合を硬度保持率(%)とし、下記の評価基準に基づいて評価した。
◎:硬度保持率が70%以上、かつ加熱後試験片に溶解および外観変化が見られない
○:硬度保持率が70%未満、かつ加熱後試験片に溶解および外観変化が見られない
×:加熱後試験片に溶解または外観変化が見られる(硬度については未計測)
【0061】
<熱伝導率について>
1.熱伝導率評価のための試験片の作成
調製した硬化前のポリウレタン樹脂組成物を底面が6cm×12cmの箱型の金型に高さが1cmとなるように流し込み、80℃の環境下において16時間静置することにより、ポリウレタン樹脂組成物を硬化させた。その後、硬化したポリウレタン樹脂組成物を脱型することにより、熱伝導率価用の試験片を得た。
【0062】
2.熱伝導率の評価
試験片の熱伝導率を、熱伝導率計(京都電子工業(株)製、QTM−D3)を用いてプローブ法にて測定した。
【0063】
<混合粘度について>
ポリウレタン樹脂組成物の調製の際の混合粘度を計測した。具体的には、イソシアネート基含有化合物(B)を除く原料の混合物にイソシアネート基含有化合物(B)を添加して混合を開始し、5分後の混合粘度をBH型粘度計を用いて計測した。混合する際の各原料の温度および周囲の温度は25℃である。
【0064】
<評価結果>
表1の評価結果を参照して、実施例1〜15のポリウレタン樹脂組成物は、耐熱性が高く、熱伝導率が良好であり、さらに、混合粘度が好適に使用可能な範囲にある。また、実施例1〜13と、実施例14,15とを比較することで、アルキルチオ基を含有する酸化防止剤と、ナトリウム成分が0.10質量%(Na
2O換算)以下の無機充填剤とを併用することにより、ポリウレタン樹脂組成物の耐熱性をより高めることができることが分かる。また、比較例1〜3のように、アルキルチオ基を含有しない酸化防止剤を用いると、アルキルチオ基を含有する酸化防止剤を用いた場合に比べて、耐熱性が著しく劣ることが分かる。
【表1】
【課題】結露や汚染から保護するために、ポリウレタン樹脂組成物を用いて電気電子部品等の対象物を封止することが行われている。このようなポリウレタン樹脂組成物は、高温環境下で使用されることも多い。そこで、高い耐熱性を有するポリウレタン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリウレタン樹脂組成物は、水酸基含有化合物(A)とイソシアネート基含有化合物(B)とを反応させることにより得られるポリウレタン樹脂組成物であって、アルキルチオ基を有する酸化防止剤(C)を含む。