(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のカスケード高調波発生器において、前記光路の光路長が、前記レーザ光源に関連したラウンドトリップ光路の光路長と整合するカスケード高調波発生器。
請求項8に記載の高調波発生器において、前記低次高調波発生器は第2高調波結晶及び第3高調波結晶を含み、前記高次高調波発生器は第4高調波結晶である高調波発生器。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本教示をさまざまな実施形態及び例と共に説明するが、本教示をそのような実施形態に限定することは意図されない。それとは逆に、当業者には理解されるように、本教示はさまざまな代替形態及び等価物を包含する。
【0010】
図2を参照すると、第3高調波発生器20が、第2高調波光ビームを発生する第2高調波結晶26、第3高調波光ビームを発生する第3高調波結晶28、第1ビームコンバイナ25、及び第1ビームスプリッタ27を含み得る。第1ビームコンバイナ26は、2つのダイクロイックミラー25Aを含み得る。ダイクロイックミラー25Aは、
図2に「1T2Rフィルタ」で示されており、これは便宜上、基本(「1」)光周波数ωを透過させ(「T」)且つ2倍(「2」)光周波数2ωを反射する(「R」)ことを表す。第1ビームスプリッタ27は、上側ダイクロイックミラー27A及び下側ダイクロイックミラー27Bを含み得る。同様に、上側ダイクロイックミラー27Aは、「1R2R3Tフィルタ」で示されており、これは、基本(「1」)光周波数ωを反射し(「R」)、2倍(「2」)光周波数2ωを反射し(「R」)、且つ3倍(「3」)光周波数3ωを透過させる(「T」)ことを表す。下側ダイクロイックミラー27Bは、「1R2Tフィルタ」で示されており、これは、基本(「1」)光周波数ωを反射し(「R」)且つ2倍(「2」)光周波数2ωを透過させる(「T」)ことを表す。明細書及び図面の残りの部分全体にわたって、上記ミラー表記法に従う。
【0011】
第1ビームコンバイナ25では、2つの同様のダイクロイックミラー25Aである上側及び下側ダイクロイックミラー25Aを用いて、基本光周波数ωの第1基本光ビーム21を2倍光周波数2ωの第2高調波光ビーム22と合成することができる。第3高調波結晶28を第1ビームコンバイナ25の上側ダイクロイックミラー25Aに結合して、基本光周波数ωの第1基本光ビーム21及び2倍光周波数2ωの第2高調波光ビーム22から3倍光周波数3ωの第3高調波光ビーム23を発生することができる。3倍光周波数3ωの第3高調波光ビーム23の発生時に、基本光周波数ωの残留基本光ビーム21Aが第3高調波結晶28から出て、第1ビームスプリッタ27の上側フィルタ27Aを介して第1ビームスプリッタ27の下側フィルタ27Bへ、またさらに第2高調波結晶26を通して指向されることができ、第2高調波結晶26において、残留基本光ビーム21Aを用いて第2高調波光ビーム22を発生することができる。残留基本光ビーム21Aの残留ビーム21Bを、第1ビームコンバイナ25の下側ダイクロイックミラー25Aを通して指向させ、任意の光ビームダンプ29A(
図2の左下)により吸収させることができる。2倍光周波数2ωの第3高調波結晶28からの残留第2高調波ビーム22Aを上側ダイクロイックミラー27Aにより反射させて、下側ダイクロイックミラー27Bを通して別の任意の光ビームダンプ29B(
図2の右下)へ伝播させることができる。第2高調波結晶26の左の第2高調波光ビーム22を第1ビームコンバイナ25に結合し、本段落の最初で述べたように、第1ビームコンバイナ25を用いて、第1基本光ビーム21を第2高調波光ビーム22と合成して第3高調波光ビーム23を発生することができる。
【0012】
基本光周波数ωの第1基本光ビーム21、2倍光周波数2ωの第2高調波光ビーム22、及び3倍光周波数3ωの第3高調波光ビーム23の光路は、
図3A〜
図3Cを参照することによってより容易に辿ることができる。
図3Aにおいて、基本光周波数ωの第1基本光ビーム21が順に、第3高調波結晶28を伝播し、続いて残留基本光ビーム21Aとして第2高調波結晶26を伝播し、続いて残留基本光ビーム21Aの残留ビーム21Bとして左側の光ビームダンプ29Aへ指向される。
図3Bにおいて、2倍光周波数2ωの第2高調波光ビーム22が、第2高調波結晶26で発生し、第3高調波結晶28を伝播し、残留第2高調波光ビーム22Aとして右側の光ビームダンプ29Bへ指向される。
図3Cにおいて、第3高調波光ビーム23が、第3高調波結晶28で発生し、第3高調波発生器20の出力へ指向される。
【0013】
基本的に、上記プロセスは、少なくとも以下の理由で
図1の従来技術の周波数3倍器10よりも高い変換効率を提供することができる。第3高調波変換効率は、基本光周波数ω及び2倍光周波数2ωの入力パワー密度の積にほぼ依存する。
図1の従来技術の周波数3倍器10では、第3高調波結晶13に対する全パワー入力が第3高調波発生器に対する全パワー入力Pに限定されるが、その理由は、第2高調波結晶12がωの入力パワーPの一部を2ωに変換するが、全パワーは実質的に不変のままだからである。通常、ω及び2ωから3ωへの最適変換を行うことができるのは、ωのパワーが約0.4P、2ωのパワーが約0.6P、且つ積が0.24P
2の場合である。
図2の第3高調波発生器20では、第3高調波結晶28における入力がωでの1.0Pと通常は2ωでの約0.6Pとからなることにより、積は約0.6P
2となることができ、これは従来技術の第3高調波3倍器10よりも2.5倍大きい。ωのパワーの大半を2回、つまり第1にTHGプロセスで、第2にSHGプロセスで用いることができるので、第3高調波結晶28に対する全光パワー入力は実際にはPよりも大きい。その結果、パワー密度、したがって変換効率を従来技術の第3高調波3倍器10よりもはるかに高くすることができる。
【0014】
図3A〜
図3Cを一時的に再度参照すると、例えば下側ダイクロイックミラー25Aの使用により、又は何らかの他の適当なフィルタにより、残留基本光ビーム21Bが第3高調波結晶28に再進入するのを防止して、潜在的な光干渉効果を回避することができる。同様に、例えば下側フィルタ27Bの使用により、又は何等かの他の適当なフィルタにより、残留第2高調波光ビーム22Aが第2高調波結晶26に再進入するのを防止することができる。換言すれば、基本光ビーム21及び第2高調波光ビーム22の光路は、個々の光周波数で閉ループを形成しないように、すなわち開ループを形成する(an open loop)ように、又は個々の光周波数で光学キャビティを形成しないように構成することができる。個々の光周波数での閉ループ又は光学キャビティの回避により、第2及び第3高調波発生プロセスの安定性を促進することができる。
【0015】
第2高調波結晶26及び第3高調波結晶28は、波長、パワーレベル、又は他のパラメータに応じて異なる材料を含むことができる。SHG及びTHGに関する位相整合には、多くの種類、タイプI又はタイプII、臨界又は非臨界、コリニア又はノンコリニアがあり得る。例えば周期的分極材料を用いた擬似位相整合も選択肢であり得る。ダイクロイック又はトリクロイック薄膜フィルタ、偏光フィルタ、吸収フィルタ、プリズム、格子、又は他のフィルタ若しくはミラーといった、各種ミラー又は光学フィルタを用いて、ビーム21、22、及び23を分離又は合成することができる。フィルタ、結晶、ミラー等のさまざまな順序及び組み合わせを用いることができる。波長板、非平面ビーム経路、又はレンズを適当な場所に含めて、変換構成の詳細に応じて所望の偏光状態又はビームサイズ若しくはプロファイルを提供することができる。反射防止コーティング又はブリュースター角表面を第2高調波結晶26又は第3高調波結晶28上に実装して、表面反射に起因したパワー損失を低減することができる。
【0016】
図2の第3高調波発生器20の1つの魅力的な特徴は、基本光周波数ωの第1基本光ビーム21及び2倍光周波数2ωの第2高調波光ビーム22が第3高調波結晶28へ別個に送り出されるので、個々のダイクロイックミラー25Aの単純な調整によりビーム21及び22の位置及び角度を特定の変換構成に最適化できることである。したがって、例えば、複屈折又は分散ウォークオフ板がウォーフオフ補償に必要なくなり得る。同様に、ノンコリニア位相整合に関して、基本光周波数ωの第1基本光ビーム21と2倍光周波数2ωの第2高調波光ビーム22との間に所望の角度を形成するのに、プリズム又は他の分散素子が不要となり得る。
【0017】
ダイクロイックミラー25A、27A、及び27Bにより形成され且つ第2高調波結晶26及び第3高調波結晶28を含むループ(
図2)を巡って光が進むのに要する時間により、第2高調波光ビーム22は、第1基本光ビーム21に対して遅れて第3高調波結晶28に到達する。したがって、概してこの構成は、光がループを巡って進むのに要する時間よりも持続時間が長い入力パルスでの動作に適合可能であり得る。第2高調波結晶26及び第3高調波結晶28を含むこうしたループの通常の最小寸法は、数センチメートル、例えば3cmとなり、これは約100ピコ秒の最小有効パルス持続時間に対応する。したがって、上述の逆順高調波変換技法は、ナノ秒以上のパルスを発生するレーザシステム、例えばQスイッチ固体レーザ及び連続発振(CW)レーザに適するものであり得る。ミリメートル以下のサイズのマイクロオプティクスを用いて、例えばモードロックレーザからのピコ秒パルスを扱うより小さなループを構築することができる。
【0018】
ループラウンドトリップタイムがパルス分離時間とほぼ等しいか又はパルス分離時間の倍数となるように選択される場合、
図2の第3高調波発生器20の構成を、それぞれがループラウンドトリップタイムよりも短い複数のパルスと共に用いることもできる。後者の場合、第3高調波結晶28に対する入力は、新たなIRパルスと以前のIRパルスから生成された第2高調波パルスとを含む。例えば、CWモードロックレーザが、数十MHz〜1GHzの範囲の繰返し率で約10ピコ秒以下の持続時間のパルスを継続的に送出することができる。例えば200MHzモードロックレーザでは、第3高調波発生器20と同様の逆順第3高調波発生器が、150cmの全光路長に対応する5ナノ秒のラウンドトリップタイムのループで、先行パルスからのSGH光を用いた各パルスの3倍化を可能にする。この構成は、単一のより長いパルスの場合と同じ変換効率の改善という利益をもたらす。2つのパルスのみからなるパルスバーストに関しても、2つの入力パルスが効果的に合成されて1つのTHGパルスとなり、所与のピーク入力パワーに対してより大きな出力ピークパワーが生成され得るので利益がある。
【0019】
次に、
図2をさらに参照しつつ
図4を参照すると、第4高調波発生器40が、
図2の第3高調波発生器20を含むことができる。ダイクロイックミラー45A及び3つの折返しミラー(turning mirrors)45Bを含む第2ビームコンバイナ45を設けて、第2基本光ビーム41を第3高調波結晶28が発生した第3高調波光ビーム23と合成することができる。第4高調波結晶46(「FHG」又は第4高調波発生)を第2ビームコンバイナ45に結合して、第2基本光ビーム41及び第3高調波光ビーム23から4倍光周波数4ωの第4高調波光ビーム24を発生することができる。第4高調波光ビーム24の発生時に、第1基本光ビーム21が第4高調波結晶46を出ると共に第3高調波光ビーム23の残留ビーム23Aが第4高調波結晶46を出て、残留ビーム23Aは、上側ダイクロイックミラー25A又は別の適切なスプリッタにより上部光ビームダンプ49へ指向させることができる。本質的に、この実施形態では、第1基本光ビーム21は、第2基本光ビーム41の残留基本光ビームである。
図2の第3高調波発生器20と同様に、第1基本光ビーム21は、第3高調波光ビーム23及び第2高調波光ビーム22を発生するために第4高調波発生器40で用いられる。第2高調波スプリッタ(1T3T4Rダイクロイックミラー)47を第4高調波結晶46に結合して、第1基本光ビーム21を第4高調波光ビーム24から分離し、且つ第1基本光ビーム21を第3高調波発生器20の第1ビームコンバイナ25に結合することができる。
【0020】
第1基本光ビーム21、第2基本光ビーム41、第2高調波光ビーム22、及び第3高調波光ビーム23の光路は、
図5A〜
図5Dを参照することによってより容易に辿ることができる。
図5Aにおいて、第2基本光ビーム41が第4高調波結晶46を伝播する。上述のように第2基本光ビーム41の残留基本ビームである第1基本光ビーム21が順に、第3高調波結晶28を伝播し、残留基本光ビーム21Aとして第2高調波結晶26を伝播し、残留基本光ビーム21Aの残留ビーム21Bとして左側の光ビームダンプ29Aへ指向され得る。
図5Bにおいて、第2高調波光ビーム22が第2高調波結晶26で発生し、第3高調波結晶28を伝播し、残留第2高調波光ビーム22Aとして右側の光ビームダンプ29Bへ指向される。
図5Cにおいて、第3高調波光ビーム23が第3高調波結晶28で発生し、第4高調波結晶46へ指向され、続いて残留第3高調波光ビーム23Aとして上部光ビームダンプ49へ指向される。最後に、
図5Dにおいて、第4高調波ビーム24が発生して第4高調波発生器40の出力へ指向される。
【0021】
1つ又は複数の逆順ステージを組み込んだ同様のカスケード構成を、第5高調波発生以降で実施することができる。
図2及び
図4をさらに参照しつつ
図6を参照すると、主光ビーム61、例えば第1基本光ビーム21(
図2)又は第2基本光ビーム41(
図4)からのカスケード光高調波発生用のカスケード高調波発生器60(
図6)が、主光ビーム61の経路内に配置された「高次高調波光ビーム」63を発生する「高次高調波発生器」68を含むことができる。「低次高調波発生器」66を、主光ビーム61の経路内、すなわち高次高調波発生器68の下流の残留主光ビーム61Aの経路内に配置して、残留主光ビーム61Aから「低次高調波光ビーム」62を発生することができる。「高次」高調波発生器68及び「低次」高調波発生器66は、例えば、
図2の第3高調波発生器20の第3高調波結晶28及び第2高調波結晶26それぞれであり得る。別の例は、
図4の第4高調波発生器40の第4高調波結晶46を「高次高調波発生器」68として、また第3高調波発生器20全体を「低次高調波発生器」66として含むことができる。
【0022】
高調波分離器67を高次高調波発生器68と低次高調波発生器66との間の主光ビーム61の経路内に配置して、高次高調波発生器68を伝播した残留主光ビーム61Aから高次高調波光ビーム63を分割することができる。
図6に示すように、高調波コンバイナ65を低次高調波発生器66の下流の残留主光ビーム61Aの残留ビーム61Bの経路内に配置して、低次高調波発生器66が発生した低次高調波光ビーム62及び主光ビーム61を、高調波光ビーム63を発生する高次高調波発生器68に結合する一方で、残留ビーム61Bを任意に処分することができる。したがって、カスケード高調波発生器60内の主光ビーム61又は低次高調波光ビーム62の経路が光学的閉ループにないようにビームコンバイナ25、45、及び/又は高調波スプリッタ47を構成して、正の光帰還に起因した不安定性を回避することができる。
【0023】
次に
図6をさらに参照しつつ
図7を参照すると、カスケード高調波発生器70が、
図6のカスケード高調波発生器60と、主光ビーム61を供給するパルス光源71とを含む。
図2の第3高調波発生器20の場合と同様に、低次高調波発生器66及び高次高調波発生器68を含む光ループ69での光ラウンドトリップタイムが実質的にパルス分離時間の整数倍であるように、カスケード高調波発生器60の主光ビーム61をパルス化することができる。
【0024】
次に、
図2及び
図6をさらに参照しつつ
図8を参照すると、第3高調波発生器80が
図2の第3高調波発生器20の変形形態であり、これを
図6のカスケード高調波発生器60の一例として見ることができる。
図8の第3高調波発生器80は、第2高調波結晶86を低次高調波発生器66として含み、第3高調波結晶88を高次高調波発生器68として含むことができる。
図8の第3高調波発生器80の1つの目立った特徴は、第3高調波結晶88が、基本光ビーム21の入力に対して好ましくはブリュースター角だけ傾斜した入力光学面88A及び出力光学面88Bを含むことができることである。別の特徴は、第1ビームコンバイナ85が上側及び下側折返しミラー85Aを含むことができ、第1ビームスプリッタ87が上側及び下側折返しミラー87Aを含むことができることである。上側及び下側折返しミラー85A、87Aはダイクロイックミラーでなくてもよく、すなわち上側及び下側折返しミラー85A、87Aは通常のミラーとすることができ、その場合、ビーム合成及び分割機能が空間多重により提供され、すなわち1つのビームがミラーにより反射される一方で第2ビームは空間的にミラーを迂回する。代替的に、ビーム合成及び分割機能を偏光合波により提供することができ、その場合、ビームの偏光がそれぞれ異なり、ミラーは一方の偏光を透過し他方の偏光を反射する。
【0025】
第3高調波結晶88は、第1基本光ビーム21及び第2高調波光ビーム22が非垂直(鋭角)の入射角で第3高調波結晶88の入力光学面88Aに入射するような向きであることが好ましい。さらに、第1基本光ビーム21及び第2高調波光ビーム22は、相互に対して非ゼロの角度(鋭角)を形成することができる。第1基本光ビーム21は
図8の平面内で偏光させることができる。第2高調波結晶26のSHGはタイプIとすることができ、
図8に対して垂直に偏光された2倍周波数2ωの第2高調波光ビーム22を発生する。第3高調波結晶88のTHGはタイプIIとすることができ、平面内で偏光された第1基本光ビーム21と
図8の平面に対して垂直に偏光された第2高調波光ビーム22とを合成して、
図8の平面内で偏光された3倍周波数3ωの第3高調波光ビーム23を発生する。
【0026】
マイクロメートル波長域及び約1kWを超えるピーク入力パワーでは、第2高調波結晶86(
図8)は、好ましくは約150℃で非臨界位相整合するホウ酸リチウムバリウム(lithium barium borate)(LBO)とすることができ、第3高調波結晶88(
図8)は、
図8に対して垂直に偏光された臨界及びコリニア又はノンコリニア位相整合するLBOとすることができる。第3高調波結晶88はブリュースター入射角及び出射角を有するので、第3高調波結晶88の分光、すなわち屈折率の波長依存性は、第3高調波結晶88の入力面88A及び出力面88Bでの光ビームの角度分離をもたらすことができる。
【0027】
この構成の1つの利点は、第3高調波光ビーム23から残留出力ビーム21B及び22Aを分離し且つ偏光を回転させるのに波長板もダイクロイックミラーも不要なことである。実際に、第1ビームコンバイナ85の上側折返しミラー85Aは、第2高調波光ビーム22及び残留光ビーム21Bを第3高調波結晶88に結合することができる。第1ビームスプリッタ87Aの上側折返しミラー87Aは、残留基本光ビーム21Aを分割することができる。第1基本光ビーム21及び第2高調波光ビーム22が第3高調波結晶88の入力面88Aに対して異なる入射角を有する場合、第1基本光ビーム21及び第2高調波光ビーム22は、第3高調波結晶88内で実質的に同一直線上にあり得る。1mm範囲のタイプII LBO THG長の例では、ビーム21及び22の角度分離は約1°〜3°であり、これはミラーエッジ又はビームブロックを用いた直接的な(straightforward)ビーム分離には十分であり得る。ブリュースター面の使用が有益であり得る理由は、残留基本光ビーム21A及び第3高調波光ビーム23の両方が低損失ブリュースター透過(Brewster transmission)のためにp偏光されるので、第3高調波結晶88の出力面88B上に反射防止(AR)コーティングが不要であり得るからである。垂直入射面に対する面88A、88Bの表面積の増大と共に、これは面88A、88BのUV損傷耐性を著しく改善する。入力面88Aは、s偏光第2高調波ビーム22及びp偏光第1基本光ビーム21のためにAR被覆され得ることが好ましい。この構成の別の利点は、基本周波数ωの残留ビーム21Bを直ちにダンプする必要がないことであるが、その理由は、基本周波数ωの残留ビーム21Bが第3高調波結晶88内で第2高調波ビーム22と同一直線上にあり、したがって第1基本光ビーム21と同一直線上にはないので、THGプロセスに干渉する可能性が低く、残留第2高調波ビーム22Aと同一直線上に出射し、それから両方を第3高調波光ビーム23から分離し且つ図示されていない1つの共通の光ビームダンプ内に射出することができるからである。
図2におけるように、結晶で適当なビームサイズ及び空間プロファイルを生成するためにレンズ又は他の光学系を追加することができる。
【0028】
図1及び
図2をさらに参照しつつ
図9A及び9Bを参照すると、
図2の第3高調波発生器20の計算光変換効率(
図9B)が、
図1の従来の光周波数3倍器10のもの(
図9A)と比較されている。
図9A及び9Bの両方において、光変換効率は、kW単位の入力光パワーの関数として、25kWの入力光パワーレベルまでプロットされている。
【0029】
図1をさらに参照しつつ特に
図9Aを参照すると、直径70マイクロメートルの第2高調波ビーム14(91)、直径200マイクロメートルの第2高調波ビーム14(92)、及び直径350マイクロメートルの第2高調波ビーム14(93)に関して、光変換効率がプロットされている。入力波長は1064nmであり、パルス持続時間は通常は数十ナノ秒である。SHG結晶12及びTHG結晶13の両方がLBOである。第2高調波結晶12は長さ15mmであり、基本ビーム11の140マイクロメートル直径スポットで約150℃でタイプI非臨界位相整合する。第3高調波結晶13は長さ20mmであり、位相整合はタイプII臨界、ノンコリニア位相整合である。最高の変換効率91は、70マイクロメートルの第2高調波ビーム14のスポット径に対応し、これは20kWの入力パワーで最良の変換をもたらすことができる。中間変換効率92及び最低変換効率93は、それぞれ200マイクロメートル及び350マイクロメートルの第2高調波ビーム14のスポット径に対応する。これらのスポット径は効率92及び93をもたらし、これらは、より大きなスポットサイズ、したがってビーム品質並びに結晶12及び13の寿命の改善とレードオフされる。従来技術の周波数3倍器10に対する25kWの入力パワーレベルでは、70マイクロメートルの入力スポットサイズからは63%の変換効率91が得られ、200マイクロメートルのスポットサイズからは37%の変換効率92が得られ、350マイクロメートルのスポットサイズからは20%をわずかに下回る変換効率93が得られる。
【0030】
次に、
図2をさらに参照しつつ特に
図9Bを参照すると、最高の光変換効率94は、
図2の光高調波発生器20内の第2高調波ビーム22の200マイクロメートルのビーム直径に対応する。2番目に高い変換効率95は、
図2の光高調波発生器20内の第2高調波ビーム22の350マイクロメートルのビーム直径に対応する。
【0031】
図9Aと
図9Bとの比較により、
図1の従来技術の光周波数3倍器10と比べて
図2の光高調波発生器20の変換効率がはるかに高いことが明らかとなる。例えば、
図2の第3高調波発生器20に対する25kWの入力パワーレベルでは、200マイクロメートルのスポットサイズからは81%の変換効率が得られ、350マイクロメートルのスポットサイズからは65%の変換効率が得られる。したがって、本開示の第3高調波発生器20は、直径70マイクロメートルの第2高調波ビーム14での従来の周波数3倍器10よりも高い変換効率を直径200マイクロメートルの第2高調波ビーム22でもたらすことができる。
【0032】
図2及び
図6をさらに参照しつつ
図10を参照すると、主光ビーム61(
図6)からのカスケード光高調波発生の方法100(
図10)が、低次高調波光ビーム62を発生する低次光高調波発生器66と、高調波光ビーム63を発生する高次光高調波発生器68とを用意するステップ101を含むことができる。次のステップ102において、主光ビーム61を順に、高次高調波発生器68に伝播させ、続いて低次高調波発生器66に伝播させることにより低次高調波光ビーム62を発生するように低次高調波発生器66に伝播させて、低次高調波発生器66で低次高調波光ビーム62が主光ビーム61と重なるようにすることができる。次のステップ103において、低次高調波発生器66が発生した低次高調波光ビーム62を高次高調波発生器68に伝播させて、高次高調波発生器68で低次高調波光ビーム62が主光ビーム61と重なるようにすることで、高次高調波光ビーム63を発生するようにする。さらに、任意のステップ104において、低次高調波発生器66から出る残留主光ビーム62A及び/又は他の残留ビームを低次高調波光ビームから分離し且つ光ダンプ29A、29B内にダンプすることができる。
【0033】
図8の光高調波発生器80と同様に、高次高調波発生器68に入射する低次高調波光ビーム62は、高次高調波発生器68において同一直線上で伝播するように、高次高調波発生器68に入射する主光ビーム61と鋭角を形成することができる。さらに、低次高調波発生器66及び高次高調波発生器68を含む光ループ69での光ラウンドトリップタイムが実質的にパルス分離時間の整数倍であるように、主光ビームをパルス化することができる。
【0034】
図10の方法100は、高次カスケードの高次高調波発生、例えば第4高調波発生(
図4)、第5高調波発生等に関して一般化することができる。
図11を参照すると、主光ビームからのカスケード光高調波発生の方法110は、少なくとも1つの第m高調波発生器を含む複数の高調波発生器を用意するステップ111を含み、ここでm=2、…、Mであり、Mは3以上の整数である。次のステップ112において、第M高調波発生器から開始して第2高調波発生器で終了するmの降順で複数の高調波発生器に主光ビームを伝播させることができる。例として、
図5Aを一時的に再度参照すると、第4高調波光ビーム41は、第4高調波結晶46、第3高調波結晶28、及び第2高調波結晶26を伝播する。
【0035】
次のステップ113において、各第n高調波光ビームを主光ビームと重なるように第(n+1)高調波発生器に伝播させることができ、ここでn=2、…、M−1とする。例えば、
図5B及び
図5Cを再度参照すると、第2高調波光ビーム22が第3高調波結晶28(
図5B)を伝播し、第3高調波光ビーム23が第4高調波結晶46(
図5C)を伝播する。最後に、ステップ114において、第M高調波光ビームを出力させる。例として、
図5Dを再度参照すると、第4高調波結晶46から第4高調波ビーム24を出力することができる。一実施形態では、主光ビームの光路が閉光ループを形成しないように、すなわち開ループになるように主光ビームを伝播させる。
【0036】
いくつかの実施態様では、カスケード高調波発生器の遅延時間(本明細書では高調波発生器遅延時間と称する)を、レーザ光源のラウンドトリップタイム(本明細書ではレーザ光源ラウンドトリップタイムと称する)とほぼ等しいか又はそのほぼ整数倍であるように設計することができる。例えば、第3高調波発生器20の遅延時間は、第1基本光ビーム21を供給するレーザ光源のレーザ光源ラウンドトリップタイムとほぼ等しいか又はその整数倍であるように設計することができる。特に、遅延時間設計に関連した以下の技法は第3高調波発生器20及び第1基本光ビーム21のレーザ光源の状況で説明されているが、これらの技法は、第4高調波発生器40、カスケード高調波発生器60、カスケード高調波発生器70、第3高調波発生器80、及びそれらの各レーザ光源にも等しく当てはめることができる。
【0037】
高調波発生器の遅延時間は、ビームが高調波発生器内を進む時間量として定義することができる。遅延時間は、高調波発生器内でビームが進む光路長と考えることもできる。進む光路長は、第3高調波発生器20のコンポーネントの物理的分離と、ビームが通過する材料の屈折率とに関係する。ラウンドトリップタイムは、遅延時間に対して始点及び終点が同じ点であるようなより具体的な場合である。
図2を例として用いると、第3高調波発生器20を通るビームのラウンドトリップタイムは、ビーム21が上側1T2Rフィルタ25Aを通過したときから、このビーム21から生じた第2高調波光ビーム22が同じ上側1T2Rフィルタ25Aに到達したときまでの時間量として定義することができる。第2高調波光ビーム22(又は22A)が基本光ビーム21(又は21A)に重なる光路内の他の点を用いて、システム内のビームのラウンドトリップタイムを定義することができる。
【0038】
レーザ光源ラウンドトリップタイムは、最初と同じ方向に進むことになるように光ビームがレーザ光源のキャビティを完全に横断する時間量として定義することができる。例えば、リニアキャビティでは、レーザ光源ラウンドトリップタイムは、レーザ利得媒質を同じく2回横断するプロセスにおいて、ビームがキャビティ内の特定の点から進み、一方のキャビティ端ミラーから反射し、他方のキャビティ端ミラーから反射し、キャビティ内の同じ特定の点に戻る時間量となる。典型的な場合には、レーザ光源の変動がレーザ光源に関連した連続ラウンドトリップでほぼ繰り返す。
【0039】
いくつかの実施態様では、第1基本光ビーム21のレーザ光源はマルチ縦モード(multiple longitudinal modes:縦多モード)で動作することができる。このような場合、レーザ光源のパワーはモードビーティングに起因して変動し得る。概して、固体レーザ光源では、こうした変動はピコ秒時間スケールで起こり、ピコ秒時間スケールでパワー出力がゼロ近傍から平均パワー出力の数倍まで変わり得る。レーザ光源ラウンドトリップタイムは数ナノ秒であり得るので、レーザ光源の所与のラウンドトリップ中に、レーザ光源による光ビーム出力にノイズを導入する数千回の変動があり得る。
【0040】
標準的な非線形変換方式(例えば、
図1の従来技術のカスケード高調波3倍器10に関連して説明したようなもの)は、特に変換下限でこれらの変動から利益を得ることができる。例えば、基本光ビーム11の高パワー変動は、第2高調波ビーム14に強く変わり、高パワーの基本光ビーム11及び高パワーの第2高調波ビーム14の変動は、第3高調波ビーム19に強く変わる。ここで、第2高調波ビーム14は、第3高調波結晶13で第2高調波ビーム14と混合されるのと同じ基本光ビーム11から生じるので、第3高調波結晶13に入る基本光ビーム11及び第2高調波ビーム14は同期した(すなわち時間的に整列した)変動を有する。第2高調波発生器12で基本光ビーム11が第2高調波ビーム14を発生させるので、基本光ビーム11及び第2高調波ビーム14の変動は同期し、これらは同じ光路を進んでまとめて第3高調波発生器13に入る。この結合の非線形性は、平均パワー変換の高パワー変動による増加が、比較的低パワーの変動による減少よりも大きいことを意味する。
【0041】
例えば
図2の第3高調波発生器20に関連して説明した逆順方式では、第3高調波結晶28は、1T2Rフィルタ25Aから受け取った第1基本光ビーム21及び第2高調波光ビーム22の合成に基づく第3高調波光ビーム23を発生する。ここで、第2高調波光ビーム22は第3高調波結晶28に入る前に基本光ビーム21とは異なる光路を進むので、第1基本光ビーム21の変動及び第2高調波光ビーム22の変動は第3高調波結晶28に入る際に同期し得ない(すなわち、時間的に非整列であり得る)ことで、変動からのパワー変換の向上が阻止される。換言すれば、第3高調波発生器28は、第1基本光ビーム21をレーザ光源から直接受け取り、第2高調波結晶26から発生した第2高調波光ビーム22を受け取る。したがって、第3高調波発生器28が受け取った基本光ビーム21及び第2高調波ビーム22は非同期であり得る可能性があり、これにより第3高調波ビーム23の発生を減らすことができる。
【0042】
しかしながら、上記のように、レーザ光源の変動は、レーザ光源に関連した連続ラウンドトリップでほぼ繰り返す。ここで、変動の波形が(例えば、数十〜数百のラウンドトリップのタイムスケールで)徐々に変化し得る一方で、1つのレーザ光源ラウンドトリップ(例えば、第1ラウンドトリップ)から時間的に近いラウンドトリップ(例えば、第2ラウンドトリップ、第3ラウンドトリップ、又は第4ラウンドトリップ)までの変動の波形の変化は小さく、これが波形をほぼ周期的にする。したがって、第3高調波発生器20の遅延時間(例えば、T
HG)をレーザ光源ラウンドトリップタイム(例えば、T
source)とほぼ等しいか又はそのほぼ整数倍となるように設計することにより、パワー変換向上を得ることができる。ここで、第1基本光ビーム21及び第2高調波光ビーム22は、第3高調波結晶28に入る際に正確に揃うことができないが、変動波形の近周期性に起因して変動はほぼ同期し得る。
【0043】
図12Aは、レーザ光源ラウンドトリップタイムとほぼ等しくなくそのほぼ整数倍でもない遅延時間を有するカスケード光高調波発生器の、光信号の時間的に非整列な波形の一例を示すグラフ図である。これに対して、
図12Bは、レーザ光源のラウンドトリップタイムとほぼ等しいか又はそのほぼ整数倍である遅延時間を有するカスケード光高調波発生器の、光信号の整列波形の一例を示すグラフ図である。
図12A及び
図12Bの縦目盛は同一の大きさである。
図12A及び
図12Bに示すように、第1基本光ビーム21、第2高調波光ビーム22、及び第3高調波光ビーム23の変動の波形は、ノイズが多いが(例えば、
図12A及び
図21Bに示す3つの例示的な周期内で)ほぼ周期的であり得る。
【0044】
図12Aに示すように、非整列の場合(例えば、T
HGがT
sourceとほぼ等しくなくT
sourceのほぼ整数倍でもない場合)、第2高調波光ビーム22の変動は、第1基本光ビーム21の変動からずれていることで、
図12A内の最下部の点線で示すように、(例えば、第1基本光ビーム21及び第2高調波光ビーム22を用いて形成された)第3高調波光ビーム23の平均パワーを(例えば、後述する整列の場合と比べて)比較的低くし得る。
【0045】
しかしながら、
図12Bに示すように、整列の場合(例えば、T
HGがT
sourceとほぼ等しいか又はT
sourceのほぼ整数倍である場合)、第2高調波光ビーム22の変動及び第1基本光ビーム21の変動は、変動の1つ又は複数の周期だけ相互に変位し得る。換言すれば、第2高調波光ビーム22の変動は、第1基本光ビーム21の変動とほぼ整列(すなわち、同期)することができる。結果として、
図12Bの最下部の点線で示すように、第3高調波光ビーム23は、正の変動が起こるピークを含むことで、(例えば上述した非整列の場合と比べて)高い平均出力パワーをもたらすことができる。
【0046】
特に、
図12Aと
図12Bとを比較すると、第3高調波光ビーム23が比較的高い平均パワーを有するように第2高調波光ビーム22の変動と整列するための、第1基本光ビーム21の変動のシフトが示されている。しかしながら、実際には、本明細書に記載の技法を用いて、第3高調波光ビーム23が比較的高い平均パワーを有するように基本光ビーム21の変動と整列するために、第2高調波光ビーム22の変動をシフトさせる。換言すれば、第2光ビーム22の変動を第1基本光ビーム21の変動と整列させるために、第3高調波発生器20の遅延時間が設計される。
図12Bは、遅延時間の設計に起因して、第3高調波光ビーム23が平均パワーを増加させつつ基本光ビーム21及び第2高調波光ビーム22のものと同様の波形を維持し得ることを示すための、単なる例である。
【0047】
上記のように、
図12A及び
図12Bは単に例として提供されたものである。他の例も可能であり、
図12A及び
図12Bに関して説明したものと異なっていてもよい。
【0048】
いくつかの実施態様では、第3高調波発生器20の遅延時間は、第3高調波発生器20のレイアウトに基づいて設計することができる。例えば、第3高調波発生器20の1つ又は複数のコンポーネント(例えば、第1ビームコンバイナ25、ダイクロイックミラー25A、第3高調波結晶28、第1ビームスプリッタ27、上側フィルタ27A、下側フィルタ27B、又は第2高調波結晶26)は、第3高調波発生器20のコンポーネントに関連した非線形光ループから得られた遅延時間がレーザ光源ラウンドトリップタイムとほぼ等しいか又はそのほぼ整数倍であるように配置することができる。特定の例として、第3高調波発生器20の1つ又は複数のコンポーネントは、1つ又は複数のコンポーネント間の距離が非線形光ループ長をレーザ光源のラウンドトリップ光路長と整合させる(すなわち、レーザ光源のラウンドトリップ光路長とほぼ等しいか又はそのほぼ整数倍であるようにする)ことにより、第3高調波発生器20の遅延時間をレーザ光源ラウンドトリップタイムと略等しいか又はそのほぼ整数倍にするように配置(例えば、接着、はんだ付け、ボルト締め)することができる。換言すれば、第3高調波発生器20の遅延時間は、第3高調波発生器20の1つ又は複数のコンポーネントの位置決めに基づいて設計することができる。
【0049】
いくつかの実施態様では、第3高調波発生器20の遅延時間設計は、直線的構築プロセス(linear build process)を用いて実施することができる。直線的構築プロセスは、レーザ光源を製造した後に(例えば、レーザ光源及び第3高調波発生器20を収容するパッケージ内に)第3高調波発生器20のコンポーネントを配置することを含み得る。例えば、レーザ光源の製造後に(例えば、レーザ光源の寿命を通して)レーザ光源のモードビーティング周期をロックすることができる一方で、(例えば、別の時点で製造された)別のレーザ光源のモードビーティング周期をそのレーザ光源のものと異ならせることができる。換言すれば、レーザ光源毎にモードビーティング周期がわずかに異なり得る。したがって、レーザ光源のラウンドトリップ光路長は、レーザ光源毎に異なり得る。
【0050】
ここで、レーザ光源を一旦製造したら、直線状構築プロセスは、レーザ光源のラウンドトリップ光路長を求めること、(例えば、第3高調波発生器20のコンポーネントの材料の回折率(indices of diffraction)を考慮に入れた場合に)レーザ光源のラウンドトリップ光路長と整合する非線形光路長を求めること、及び第3高調波発生器20の非線形光路長がレーザ光源のラウンドトリップ光路長と整合するように第3高調波発生器20のコンポーネントを配置及び/又は製造することにより、第3高調波発生器20の遅延時間をレーザ光源ラウンドトリップタイムとほぼ等しくするか又はそのほぼ整数倍にすることをさらに含むことができる。この場合、第3高調波発生器20のコンポーネントは、第3高調波発生器20の非線形光路及び遅延時間が調整不可能である(すなわち固定である)ように所定位置に固定される(例えば、コンポーネントを所定位置に接着、所定位置にはんだ付け、所定位置にボルト締めすること等ができる)。
【0051】
付加的又は代替的に、第3高調波発生器20の遅延時間設計は、マイクロメータ、回転ステージ、又は調整可能なミラーマウント等の調整可能な機械コンポーネントを用いて実施することができ、調整可能なミラーマウントは、非線形光路内の1つ又は複数の光学コンポーネント、例えばミラー又はプリズムを移動させることにより非線形光路の遅延時間の調整を可能にする。調整可能なコンポーネントを含めることで、レーザ光源及び第3高調波発生器20を収容するパッケージ内での組立後に非線形光路長を変更することが可能となり得る。こうした場合、レーザ光源及び第3高調波発生器20は、レーザ光源のラウンドトリップ光路長を求める前にパッケージ内で組み立てることができる。ここで、組立て後に、レーザ光源のラウンドトリップ光路長を求めることができ、レーザ光源のラウンドトリップ光路長と整合する非線形光路長を求めることができ、且つ調整可能なコンポーネントを用いて第3高調波発生器の非線形光路長を適宜調整することができる。
【0052】
図13は、特定のモードビーティング周期を有する特定のレーザ光源に関する例示的な第3高調波発生器20に関連した、ある範囲内の非線形光ループ長の変換パワー量のグラフ図である。特に、
図13は例示的な第3高調波発生器20に関連したものだが、別のタイプのカスケード光高調波発生器(例えば、第4高調波発生器40、カスケード高調波発生器60、カスケード高調波発生器70、第3高調波発生器80等)が、
図13に関連した例示的な第3高調波発生器20に関して説明したのと同様の効果を示す結果をもたらすことができる。
【0053】
図13において、基本光ビームのレーザ光源は、レーザ光源ラウンドトリップタイムが4.23ナノ秒(ns)であるQスイッチマルチ縦モードネオジムイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)レーザ光源である。したがって、レーザ光源のラウンドトリップ光路長は、約1268ミリメートル(mm)(例えば、2.99792458×10
8メートル(m)/秒(s)×1000mm/m×1.00×10
−9s/ns×4.23ns≒1268mm)である。
図13において、レーザ光源の光路長と整合するカスケード光高調波発生器の非線形光ループ長が、(例えばレーザ光源に関連した1つ又は複数の材料の屈折率に起因して)1212mmであると仮定する。非線形光路長は、ビームが経る光路長を増加させる第3高調波発生器20の光学素子の屈折率を考慮に入れないので、光路長よりも短い場合がある。
【0054】
図13に示すように、非線形光ループの長さが1212mmと等しいとき、カスケード光高調波発生器により変換されるパワー量が約22ワット(W)のピークにある。さらに図示するように、非線形光ループの長さが1212mmから離れると(すなわち、非線形光ループの長さが1212mmよりも短いか又は長いとき)、変換パワー量が減少する。例えば、非線形光ループ長が1198mmと等しい場合、変換パワー量は約15Wである。換言すれば、カスケード光高調波発生器の非線形光ループ長が1212mmである場合、カスケード光高調波発生器により変換されるパワー量は、1198mmのループ長と比べて約47%向上する(例えば、(22W−15W)/15W×100%=47%)。
【0055】
ここで、変換の増加に関連した向上は、幅約8mmであり(例えば、
図13に点線で示すように、約1207mmのループ長から約1215mmのループ長まで)、レーザ光源のモードビーティングピークが約30ピコ秒(ps)の持続時間である(例えば、(1s/2.99792458×10
8m)×1×10
12ps/s×0.001m/mm×8mm=30ps)であることを意味する。これは、1064nmのNd:YAGレーザ光源に特有である約0.1ナノメートル(nm)波長のレーザ線幅に対応する。したがって、変換向上は、理論予想と一貫した挙動をする。
【0056】
上記のように、
図13は単に一例として提供されている。他の例も可能であり、
図13に関して説明したものと異なっていてもよい。
【0057】
本明細書に記載の実施態様は、カスケード高調波発生器の遅延時間がカスケード光高調波発生器に結合されたレーザ光源のレーザ光源ラウンドトリップタイプとほぼ等しいか又はそのほぼ整数倍であるように、カスケード光高調波発生器の遅延時間を設計することに関連する。これにより、レーザ光源の大きなパワー変動に起因してカスケード光高調波発生器により達成されるパワー変換の向上を得ることが可能となり、それによりカスケード光高調波発生器の変換効率が改善される。
【0058】
上記開示は、図示及び説明を提供するものであるが、網羅的であることも開示された通りの形態に実施態様を限定することも意図していない。変更及び変形は、上記開示に照らして可能であるか又は実施態様の実施から得ることができる。例えば、カスケード光高調波発生器の遅延時間の設計に関連した例示的な技法は、Nd:YAGレーザ光源の状況で説明したが、これらの技法は、ネオジムドープオルトバナジン酸イットリウムレーザ光源等の別のタイプのレーザ光源、別のタイプの固体レーザ光源、ファイバレーザ光源、又は別のタイプのレーザ光源に適用することができる。ファイバレーザは特に、2つの偏光状態で同時にレーザ発光する能力に関して並外れたモードビーティング特性を有することができる。二重偏光ファイバレーザ共振器を備えたレーザシステムで本発明を実施するために、ファイバレーザは、安定した不変偏光軸で動作するよう設計されるべきであり、カスケード高調波発生器は、ファイバレーザ共振器の実質的に1つの偏光状態のみで動作するよう設計されるべきである。
【0059】
特徴の特定の組み合わせが特許請求の範囲に記載され且つ/又は明細書に開示されているが、これらの組み合わせは、可能な実施態様の開示を限定するためのものではない。実際には、これらの特徴の多くを具体的に特許請求の範囲に記載され且つ/又は明細書に開示されていない方法で組み合わせることができる。以下に記載の各従属請求項は、1つの請求項のみに直接従属し得るが、可能な実施態様の開示は、その請求項の組の他の全請求項と組み合わせた各従属請求項を含む。
【0060】
本明細書で用いられるいかなる要素、行為、又は指示も、その旨の明記がない限り重要又は必須であると解釈されるべきではない。また、本明細書で用いられる場合、冠詞「a」及び「an」は、1つ又は複数の事項を含むことを意図したものであり、「1つ又は複数」と交換可能に用いることができる。さらに、本明細書で用いられる場合、「組」という用語は、1つ又は複数の事項(例えば、関連事項、非関連事項、関連事項及び非関連事項の組み合わせ等)を含むことを意図したものであり、「1つ又は複数」と交換可能に用いることができる。1つの事項のみが意図される場合、「1つの」という用語又は同様の文言が用いられる。また、本明細書で用いられる場合、「有する」等という用語は、オープンエンドな用語であることが意図される。さらに、「基づく」という語句は、別段の明記のない限り、「少なくとも部分的に基づく」ことを意味することを意図したものである。