特許第6286095号(P6286095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6286095
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】シート巻取軸
(51)【国際特許分類】
   B65H 18/04 20060101AFI20180215BHJP
   B65H 18/10 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   B65H18/04
   B65H18/10
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-136185(P2017-136185)
(22)【出願日】2017年7月12日
【審査請求日】2017年10月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000234122
【氏名又は名称】萩原工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】有角 幸三
【審査官】 藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−015170(JP,A)
【文献】 特開2000−016642(JP,A)
【文献】 特開平08−282881(JP,A)
【文献】 特開2002−240989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H16/00−16/10
B65H18/00−18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯にシートを巻き取るためのシート巻取軸であって、
圧縮流体を流通させる第1流体路及び第2流体路を有する基軸と、
前記基軸と相対回転可能な状態で前記基軸に外嵌させた巻取部と、
前記基軸に固定した状態で前記基軸に外嵌させたシリンダリングと、
前記シリンダリングに内蔵され、前記第1流体路から流入した圧縮流体によりスライドする巻芯着脱ピストンと、
前記シリンダリングに内蔵され、前記第2流体路から流入した圧縮流体によりスライドする回転トルク調節ピストンとを備え、
前記巻取部は、
前記巻芯着脱ピストンのスライドにより、前記巻芯の前記巻取部への固定及び固定の解除を行うチャック機構と、
前記回転トルク調節ピストンと対向する摩擦部とを備えており、
前記回転トルク調節ピストンのスライド方向は、前記基軸の軸方向であり、
前記回転トルク調節ピストンが前記摩擦部を押圧して、前記回転トルク調節ピストンと前記摩擦部の摩擦により前記基軸の回転が前記巻取部に伝えられることを特徴とするシート巻取軸。
【請求項2】
前記シリンダリングは、前記基軸を囲む環状体であり、前記シリンダリングの周方向において、前記回転トルク調節ピストンと前記巻芯着脱ピストンとが混在して配置されている請求項1に記載のシート巻取軸。
【請求項3】
前記シリンダリングは、前記巻取部によって覆われ、前記巻取部に内蔵されている請求項1又は2に記載のシート巻取軸。
【請求項4】
ベアリングにより前記基軸と前記巻取部とが相対回転可能とし、前記ベアリングは、前記基軸の軸方向において、前記シリンダリングを挟む位置に配置されている請求項1から3のいずれかに記載のシート巻取軸。
【請求項5】
前記チャック機構にはスライドリングが備えられ、前記巻芯着脱ピストンが前記スライドリングを押圧することによって、巻芯の固定の解除がなされる請求項1から4のいずれかに記載のシート巻取軸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻芯にシートを巻き取るためのシート巻取軸に関する。
【背景技術】
【0002】
細幅にスリットした紙やフィルム等のシートを巻き取るためにシート巻取軸が用いられており、例えばエアフリクション巻取軸と呼ばれる巻取軸が知られている。エアフリクション巻取軸は、基軸に複数の巻取部を外嵌し、これらを相対回転可能にし、基軸の回転を回転トルク調節部材を介して巻取部に伝える構造である。巻取部には巻芯(例えば紙管)が固定され、巻取部にスリットしたシートが巻き取られる。
【0003】
この回転トルクを巻取部に伝える構造を備えず、基軸上に複数の巻芯を固定し、同一回転させてシートを巻き取ると、シートの厚みムラ等に起因して僅かに外径が大きくなった巻取製品に張力が集中し、各製品毎の巻取張力に大きな差異が生じ、巻取製品の巻き不良の原因になる。
【0004】
これに対し、エアフリクション巻取軸は、シートの厚みムラ等に起因して生じる僅かに外径が異なる巻取製品に対しても同じ回転トルクを伝えることができ、僅かに外径の大きい巻取製品に張力が集中することを避けることができる。また、回転トルク調節部材に流入する空気圧を制御することで巻取製品の巻取径に応じた回転トルクを巻芯にかけることができ、結果として外径に応じた最適な巻取張力をシートに与えることができる。
【0005】
エアフリクション巻取軸は、フィルムの高機能化や量産に対応することが求められており、利便性を持たせつつ、巻取張力の調整がより精密に行えるものが要望されている。
【0006】
エアフリクション巻取軸の一例として、特許文献1に開示されたシート巻取軸装置が挙げられる。同シート巻取軸装置は、巻取回転軸部材に巻取部を外嵌し、巻取回転軸部材の内部に受圧部材を備えている。受圧部材に空気圧を付勢することにより、受圧部材が巻取部を押圧し、巻取回転軸部材の回転が巻取部に伝えられる。また、同シート巻取軸装置は、巻芯の固定及び固定の解除の切替にも空気圧を利用しており、巻芯の交換を容易に行なうことができる。なお、この巻芯の固定及び固定の解除に利用する空気圧は、受圧部材を押圧する空気路とは別の空気路を通じて発生させるため、それぞれの空気圧はその役割に応じて、個別に調節できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−15170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のシート巻取軸装置において、巻取張力の調整をより厳密にし、かつ巻取張力のバラツキをより少なくすることを検討したとき、巻取回転軸部材の内部に受圧部材を備えた構造では、構造に起因する課題があることが分かってきた。
【0009】
特許文献1のシート巻取軸装置では、巻取張力の調整を、受圧部材と巻取部の摩擦を調節することで行っている。そのため、当該摩擦のムラをより少なくすれば、巻取張力の調整がより精密になり、巻取張力のバラツキを少なくすることにつながるといえる。しかしながら、このシート巻取装置は、受圧部材が押圧する面が円筒をなす巻取部の内面を押圧することで摩擦を生じさせているために、受圧部材の先端形状と巻取部内面の形状とが合わせにくい形状になっている上に、受圧部材の回転や摩耗により、接触状態が安定せず、摩擦にムラが生じ、巻取張力を安定させることが困難であった。
【0010】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、巻芯の固定及び固定の解除が容易であることに加え、巻取張力の調整をより厳密にし、かつ巻取張力のバラツキをより少なくすることができるシート巻取軸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明のシート巻取軸は、巻芯にシートを巻き取るためのシート巻取軸であって、圧縮流体を流通させる第1流体路及び第2流体路を有する基軸と、前記基軸と相対回転可能な状態で前記基軸に外嵌させた巻取部と、前記基軸に固定した状態で前記基軸に外嵌させたシリンダリングと、前記シリンダリングに内蔵され、前記第1流体路から流入した圧縮流体によりスライドする巻芯着脱ピストンと、前記シリンダリングに内蔵され、前記第2流体路から流入した圧縮流体によりスライドする回転トルク調節ピストンとを備え、前記巻取部は、前記巻芯着脱ピストンのスライドにより、前記巻芯の前記巻取部への固定及び固定の解除を行うチャック機構と、前記回転トルク調節ピストンと対向する摩擦部とを備えており、前記回転トルク調節ピストンのスライド方向は、前記基軸の軸方向であり、前記回転トルク調節ピストンが前記摩擦部を押圧して、前記回転トルク調節ピストンと前記摩擦部の摩擦により前記基軸の回転が前記巻取部に伝えられることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、回転トルク調節ピストンは基軸の軸方向に摩擦部を押圧するので、摩擦部を平面で形成することができるため、摩擦部と回転トルク調節ピストンの先端における接触状態のバラツキが抑えやすい。このため、巻芯へシートを巻き取るときの巻取張力の調整をより厳密にすることができ、かつ巻取張力バラツキをより少なくすることができる。その上、同じ巻取軸に複数の巻芯を装着して巻き取るときに、各巻芯間の巻取張力差が小さくなるので、均一にシートを巻き取ることができる。また、回転トルク調節ピストンと巻芯着脱ピストンとは別々の流体路を利用するため、回転トルク調節ピストンの押圧力の強弱が巻芯の把持力に影響することはない。
【0013】
前記本発明のシート巻取軸においては、以下の各構成とすることが好ましい。前記シリンダリングは、前記基軸を囲む環状体であり、前記シリンダリングの周方向において、前記回転トルク調節ピストンと前記巻芯着脱ピストンとが混在して配置されていることが好ましい。この構成によれば、回転トルク調節ピストンと巻芯着脱ピストンとが、基軸の軸方向に延在しないので、巻取部の幅をより小さく抑えることができる。巻取部の幅が大きくなると巻取軸の強度に対しては有利であるが、狭い幅のシートの巻き取りに対応できない上に、1つの巻芯に割り当てられる巻取部の数が少なくなり、同じ巻取軸に複数の巻芯を装着したとき、個々の巻芯に割り当てられた巻取部の数の比率の違いが大きくなることで、各巻芯ごとに巻取張力の差が生じることになる。すなわち、シート巻取軸において、より精密な巻き取りを行う上では、巻取部の幅は小さい方が有利であり、この幅をいかに小さく保つかが重要といえる。
【0014】
前記シリンダリングは、前記巻取部によって覆われ、前記巻取部に内蔵されていることが好ましい。この構成によれば、巻芯の変形によって、巻芯の内面が巻取部外周面に接することがあっても、巻芯がシリンダリングに接しないので、擦れによる粉等の発生を防止でき、巻取部の機構に異物が混入することを防止できる。また、巻芯の内面がシリンダリングに接することなく、巻芯を巻取部に装着できるので、巻芯が大幅に傾いた状態で装着されることが防止できる。さらに、シリンダリングが巻取部で覆われていれば、巻芯がシリンダリングに接することもない上、巻取部には設定された回転トルクしかからないため、安全上有利になる。仮に、シリンダリングの一部が露出している場合、その露出部分は基軸の駆動トルクで回転していることにより、これに触れると巻き込み事故が生じかねないため、安全上、好ましくない。
【0015】
ベアリングにより前記基軸と前記巻取部とが相対回転可能とし、前記ベアリングは、前記基軸の軸方向において、前記シリンダリングを挟む位置に配置されていることが好ましい。この構成によれば、巻取部がより高い精度をもって基軸の周りを回転するため、巻取張力のバラツキが軽減できる。
【0016】
前記チャック機構にはスライドリングが備えられ、前記巻芯着脱ピストンが前記スライドリングを押圧することによって、巻芯の固定の解除がなされることが好ましい。この構成によれば、シートを巻き取っている間、巻芯着脱ピストンがチャック機構を押圧する必要がなく、シートを巻き取る際に余分な摩擦がほとんど掛からないため、回転トルク調節ピストンと摩擦部の摩擦に応じて巻取部を回転させることができる。また、この構成では、巻き取りを行っている最中に圧縮流体の供給が何らかの理由で停止することがあってもシートが巻取部からずれない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果は前記のとおりであり、本発明によれば、回転トルク調節ピストンは基軸の軸方向に摩擦部を押圧するので、回転トルク調節ピストンの先端と摩擦部の接触状態が安定しやすく、摩擦が安定するため、巻取張力を精密に調整することができる上に、同じ巻取軸で複数の巻芯を装着して巻き取る場合でも巻芯間の巻取張力差が少なく、均一にシートを巻き取れる。また、巻取部の幅もより小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るシート巻取軸を備えたスリッタの一例についての概略構成を示す模式図。
図2】本発明の一実施形態に係るシート巻取軸の外観斜視図。
図3図2に示したシート巻取軸の正面図。
図4図3のAA線における断面図であり、巻芯の固定状態を示す断面図。
図5図3のAA線における断面図であり、巻芯の固定解除状態を示す断面図。
図6図3のBB線における断面図であり、巻取部に基軸の回転が伝わる状態を示す断面図。
図7図3のBA線における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るシート巻取軸を備えたスリッタの一例についての概略構成を示す模式図である。スリッタ40には、広幅シート41が巻回されたロール42が装着されている。広幅シート41は、繰り出されながらローラ44等を経て、所定の細幅シート43にスリットされ、シート巻取軸1に装着された紙管等の巻芯(詳細は図示せず)に巻き取られる。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態に係るシート巻取軸1の外観斜視図である。図3図2に示したシート巻取軸1の正面図であり、図2のA矢視図である。円柱状の基軸2に円環状の巻取部3がベアリング20を介して外嵌されており、基軸2と巻取部3は相対回転可能になっている。図示の便宜のため、1本の基軸2に1つの巻取部3が外嵌されたものを示しているが、1本の基軸2に複数の巻取部3を直列的に取り付けてもよい。巻取部3からは爪5が突出しており、爪5による係合により巻取部3に巻芯(図4の符号10参照)が固定される。巻芯にはスリットしたシートが巻き取られる。
【0021】
以下、図4〜7を参照しながら、シート巻取軸1について具体的に説明する。図4はシート巻取軸1の内部構造を示す断面図であり、図4のAA線における断面図である。本図において、基軸2に巻取部3がベアリング20を介して外嵌されている。巻取部3は、回転トルク調節ピストン24(図6参照)と対向する対向部材31、環体32及びこれらに固定されたカラー4とで外観を構成し、内部にチャック機構9を備えている。
【0022】
チャック機構9は、爪5が一体になったチャックチップ6、スライドリング7及び付勢手段であるスプリング8を備えている。チャック機構9は、開口30内に埋設されており、図2に示したように、巻取部3の周方向において所定間隔をあけて配置されている。
【0023】
図4において、基軸2の外周を囲むように、環状のシリンダリング13がシールリング28を介して基軸2に固定されている。詳細は後に説明するとおり、巻芯着脱ピストン17の往復運動により、チャック機構9が作動し、爪5が開口30の内部に退避した状態と、爪5が開口30から突出した状態とに切り換えることができ、巻芯10の固定及び固定解除を行うことができる。
【0024】
以下、図4及び図5を参照しながら、巻芯10の固定及び固定解除について説明する。図4に示したシート巻取軸1の内部部品の配置は、巻芯10を固定するときの状態を示している。図4の状態ではスプリング8の伸長により、スライドリング7は巻芯着脱ピストン17側に移動している。チャックチップ6とスライドリング7は、傾斜面同士が磁力で当接しており、スライドリング7が巻芯着脱ピストン17側へ移動したことにより、チャックチップ6が持ち上がり、チャックチップ6と一体の爪5がカラー4の外周面から突出している。したがって、巻取部3に装着した巻芯10の内周面に爪5が係合し、巻取部3に巻芯10が固定される。この状態では、巻取部3の回転と一体に巻芯10が回転するので、巻芯10にシートを巻回することができる。
【0025】
図4において、基軸2には圧縮流体を流通させる第1流体路11が形成されており、第1流体路11の途中に接続孔12が分岐している。シリンダリング13には、巻芯着脱ピストン17を収納する第1シリンダ室16が形成されている。第1シリンダ室16は巻芯着脱ピストン17により、ボトム側空間14とロッド側空間15とに区画される。また、シリンダリング13には、流体給排路18が形成されている。流体給排路18は、一端が基軸2側に開口しており、他端はボトム側空間14と繋がっている。
【0026】
図4の状態では、第1流体路11と流体給排路18とが接続孔12を介して繋がっている。この状態で、第1流体路11に空気等の圧縮流体を流通させると、圧縮流体は接続孔12を経て流体給排路18に流入し、続いてボトム側空間14に流入する。このことにより、巻芯着脱ピストン17は第1シリンダ室16内を前進し、巻芯着脱ピストン17の先端がスライドリング7に当接する。
【0027】
図5は、巻芯10の固定解除状態を示すシート巻取軸1の断面図である。本図は、図4の状態から第1流体路11に空気等の圧縮流体を流通させた状態を示している。前記のとおり、第1流体路11に圧縮流体を流通させると、巻芯着脱ピストン17の先端がスライドリング7に当接する。この当接状態において、圧縮流体の流通が継続していると、巻芯着脱ピストン17がスプリング6の反発力に抗して前進し、スライドリング7が巻芯着脱ピストン17の反対側へ移動する。図5は巻芯着脱ピストン17が前進し切った状態を示している。
【0028】
チャックチップ6とスライドリング7は、傾斜面同士が磁力で当接しており、スライドリング7が巻芯着脱ピストン17の反対側へ移動したことにより、チャックチップ6が沈降し、チャックチップ6と一体の爪5が開口30内に退避する。この状態では、爪5と巻芯10の内周面との係合が解除されるので、巻芯10を巻取部3から取り外すことができる。
【0029】
図4及び図5で示した構造は、巻芯10の固定の解除をするときに第1流体路11に圧縮流体を流通させ、巻芯着脱ピストン17でスライドリング7を押圧する構造であるが、本発明では、巻芯10の固定及び固定解除のうち少なくとも一方に圧縮流体が利用されていればよい。本発明では巻芯10を固定する場合に巻芯着脱ピストン17がスライドリング7を押圧する構造も採り得るが、シートを巻き取るときに巻芯着脱ピストン17がスライドリング7を押圧していると、これにより余分な摩擦が生じることに加え、巻芯10の内径にムラがあること等を考慮すると、巻芯10毎に摩擦状態に差が生じやすく、その差が後述の巻取部3の回転に影響する可能性がある。そのため、図4及び図5で示すように、巻芯10の固定の解除をするときに巻芯着脱ピストン17がスライドリング7を押圧する構造である方が好ましい。
【0030】
また、シートを巻き取っているときに、巻芯着脱ピストン17とスライドリング7が接触すると巻取張力のバラツキきにつながる可能性があるため、シートを巻き取る直前に第1流体路11内を真空吸引して減圧状態とし、巻芯着脱ピストン17とスライドリング7を完全に離隔させることがより好ましい。
【0031】
なお、本発明のチャック機構は、圧縮流体を利用してスライドリング7を移動させることで、チャックチップ6の上げ下げができればよく、図4及び図5の例では、傾斜面を利用しているが、これに限るものではない。例えば、チャックチップ6とスライドリング7を連結ロッド等で連結してチャックチップ6を上げ下げしてもよい。また、傾斜面を利用する場合でも、図4及び図5の例では傾斜面同士を磁力で当接させているが、ゴムリングやコイルバネ等の付勢手段を用いてチャックチップ6を押さえることで当接させてもよい。
【0032】
以上、巻芯10の固定及び固定解除について説明したが、シート巻取軸1で巻芯10にシートを巻き取るときは、基軸2の回転を巻取部3に伝達させて巻き取るために、その機構が必要となる。シート巻取軸1においては、基軸2の回転を巻取部3に伝達する上で、摩擦を利用し、その摩擦状態を制御することで巻取張力を調節する。例えば、低い巻取張力でシートを巻き取るときは、その摩擦状態を弱めることになる。他方、巻取張力が不要なとき、具体的には巻取部3に巻芯10を装着するときや巻取部3から巻芯10を取り外すとき等は、摩擦が働いていない状態にし、基軸2と巻取部3とが相対的に回転可能な状態にしてもよい。
【0033】
以下、図6を参照しながら、基軸2の回転を巻取部3に伝える機構について説明する。図6図3のBB線における断面図である。図6において、基軸2の外周を囲むように、環状のシリンダリング13がシールリング28を介して基軸2に固定されている。シリンダリング13は、図4図5におけるシリンダリング13と同一物であるが、図6に示したシリンダリング13の断面構造は、図4図5に示したシリンダリング13の断面構造とは異なっている。詳細は後に説明するとおり、回転トルク調節ピストン24の押圧力を変化させることにより、回転トルクを調節する。
【0034】
対向部材31は巻取部3を構成する部材であり、回転トルク調節ピストン24と対向しており、回転トルク調節ピストン24の先端と対向する摩擦部19を備えている。図6では摩擦部19は、基軸2の直径方向の断面と平行な平面をなしている。回転トルク調節ピストン24の先端と摩擦部19が共に平面をなし、これらの平面同士が対向していることで、回転トルク調節ピストン24の先端と摩擦部19が当接したときに、均一かつ安定した接触が可能になる。
【0035】
なお、本実施形態では、回転トルク調節ピストン24の先端が当接する摩擦部19は、当該回転トルク調節ピストン24を内蔵する巻取部3内に設けている例で説明したが、これに限るものではなく、当該巻取部3と隣接する巻取部3の隣接面を摩擦部19としてもよい。この場合、回転トルク調節ピストン24の先端と摩擦部19の間に異物が挟まりやすくなるため、図6のように、摩擦部19は同じ巻取部3内に設ける方が好ましいが、いずれの構成にするかは、設計上の制約等に応じて適宜選択すればよい。
【0036】
本発明においては、回転トルク調節ピストン24の先端と摩擦部19の面同士が対向していればよく、摩擦部19が直径方向の断面と平行である構成に限らないが、回転トルク調節ピストン24がシリンダリング13内で回転した場合でも安定して摩擦部19に接触することと、多少の摩耗が生じても平行が保たれることの観点では、摩擦部19が直径方向の断面と平行であることが好ましい。
【0037】
回転トルク調節ピストン24や摩擦部19の材質は適宜選択されるものであるが、後述の通り、シートの巻き取りを行っているときは、その間ほぼ摩擦が発生しているため、摩耗が生じにくい材質であることが好ましく、回転トルク調節ピストン24又は摩擦部19のいずれか一方は、グラファイトや摩擦材に適した合成樹脂等の複合材から選択し、他方を金属で形成することが好ましい。また、摩擦部19が摩耗すると平面に溝が形成される観点では、摩擦部19を金属で形成し、一層摩耗しにくくすることがより好ましい。
【0038】
図6において、基軸2が回転すると、基軸2に固定されているシリンダリング13も一体に回転する。他方、基軸2はベアリング20の内輪に固定されており、対向部材31及び環体32はベアリング20の外輪に固定されており、対向部材31及び環体32を含む巻取部3と基軸2とは独立して相対的に回転可能になっている。
【0039】
図6の状態は、回転トルク調節ピストン24の先端が摩擦部19を押圧している状態であるが、回転トルク調節ピストン24に摩擦部19を押圧する力がほとんど働いていない状態ならば、基軸2の回転は巻取部3にほとんど伝わらないため、基軸2の回転を巻取部3に伝えないときに、回転トルク調節ピストン24の先端と摩擦部19の間は必ずしも離隔させることは必要ない。
【0040】
以下、巻取部3に基軸2の回転を伝える状態について具体的に説明する。図6において、基軸2には圧縮流体を流通させる第2流体路25が形成されており、第2流体路25の途中に接続孔26が分岐している。シリンダリング13には、回転トルク調節ピストン24を収納する第2シリンダ室21が形成されている。第2シリンダ室21は回転トルク調節ピストン24により、ボトム側空間22とロッド側空間23とに区画される。また、シリンダリング13には、流体給排路26が形成されている。流体給排路26は、一端が基軸2側に開口しており、他端はボトム側空間22と繋がっている。
【0041】
この状態で、第2流体路25に空気等の圧縮流体を流通させると、圧縮流体は接続孔12を経て流体給排路26に流入し、続いてボトム側空間22に流入する。このことにより、回転トルク調節ピストン24の先端が摩擦部19を押圧する。本実施形態において、基軸2の軸方向とは、基軸2の軸と完全一致する方向だけでなく、略一致する方向も含んでいる。
【0042】
回転トルク調節ピストン24の先端が摩擦部19を押圧したことにより、回転トルク調節ピストン24を介してシリンダリング13と対向部材31とが接続される。この状態で、基軸2及びこれと一体のシリンダリング13が回転すると、回転トルク調節ピストン24と摩擦部19の間で摩擦が生じているので、巻取部3が回転する。この場合、巻取部3に固定した巻芯10も回転するので、巻芯10にシートが巻き取られる。
【0043】
回転トルク調節ピストン24が摩擦部19を押圧する力を制御することによって、回転トルク調節ピストン24と摩擦部19との間で生じる摩擦力が制御されることになり、その結果、巻き取りに係る回転トルクが制御され、巻取張力が調整されることになる。一般に、巻芯10にシートを巻き取るときの巻取張力は、巻き取られたシートの巻取径の大きさに応じて変更することが適切であり、巻き取りにおける回転トルクをシートの巻取張力と巻取径に対応して制御する。
【0044】
図6において、回転トルクを高めるには、基軸2内の第2流体路25に圧縮流体を流入させていく量を増やし、回転トルク調節ピストン24が摩擦部19を押圧する力を高め、回転トルク調節ピストン24と摩擦部19の間で発生する摩擦力を高める。逆に回転トルクを弱めるには、圧縮流体量を制御し、回転トルク調節ピストン24が摩擦部19を押圧する力を弱め、回転トルク調節ピストン24と摩擦部19の間で発生する摩擦力を弱める。すなわち、図6における回転トルクの制御は、回転トルク調節ピストン24と摩擦部19との間の摩擦力の制御によるものであることに加え、巻き取りが行われている間は摩擦が制御されるものにつき、回転トルクを精密に制御するには、摩擦のムラが発生しにくいことが肝要である。
【0045】
本実施形態においては、回転トルク調節ピストン24は基軸2の軸方向に摩擦部19を押圧するので、回転トルク調節ピストン24の先端と摩擦部19の接触状態が安定しやすく、摩擦が安定するため、巻取張力を精密に調整することができる。その上、同じシート巻取軸1で複数の巻芯10を装着してシートを巻き取る場合でも、巻芯10間の巻取張力差が少なくなり、複数の巻芯10に均一にシートを巻き取れる。回転トルク調節ピストン24の先端と摩擦部19の接触状態だけでなく、両者の接触面の摩擦係数のバラツキを少なくすることでも摩擦のバラツキ防止に寄与する観点では、回転トルク調節ピストン24の先端や摩擦部19に潤滑油を塗布又は含漬させる等して、回転トルク調節ピストン24の先端と摩擦部19の接触面に潤滑油を配置してもよい。
【0046】
以下、図7を参照しながら、巻芯着脱ピストン17及び回転トルク調節ピストン24の基軸2回りの配置について説明する。図7は、図3のBA線における断面図である。図7の基軸2よりも上側の構成(回転トルク調節ピストン24の配置部分)は、図3のBB線における断面図である図6における基軸2よりも上側の構成(回転トルク調節ピストン24の配置部分)と同じであり、図7の基軸2よりも下側の構成(巻芯着脱ピストン17の配置部分)は、図3のAA線における断面図である図4における基軸2よりも下側の構成(巻芯着脱ピストン17)の配置部分と同じである。
【0047】
すなわち、環状体であるシリンダリング13の周方向において、回転トルク調節ピストン24と巻芯着脱ピストン17とが混在して配置されている。この構成によれば、回転トルク調節ピストン24と巻芯着脱ピストン17とが、基軸2の軸方向に延在しないので、巻取部3の幅を小さく抑えることができる。このことにより、狭い幅のシートを巻き取ることもでき、巻取部3の幅に起因する巻取張力差も抑えられることができる。
【0048】
前記実施形態においては、シリンダリング13は、巻取部3によって覆われ、巻取部3に内蔵されている。より具体的には、シリンダリング13はカラー4の内側に配置されており、シリンダリング13はカラー4から露出していない。この構成によれば、巻芯10の変形によって、巻芯10の内面がカラー4の外周面に接することがあっても、巻芯10がシリンダリング13に接しないので、擦れによる粉等の発生を防止でき、巻取部3の機構に異物が混入することを防止できる。また、巻芯10の内面がシリンダリング13に接することなく、巻芯10をカラー4に装着できるので、巻芯10が大幅に傾いた状態で装着されることが防止できる。さらに、シリンダリング13がカラー4で覆われていれば、巻芯10がシリンダリング13に接することもない上、カラー4には設定された回転トルクしかからないため、安全上有利になる。仮に、シリンダリングの13一部が露出している場合、その露出部分は基軸2の駆動トルクで回転していることにより、これに触れると巻き込み事故が生じかねないため、安全上、好ましくない。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらは一例であり、適宜変更したものであってもよい。例えば、1本の基軸2に取り付ける巻取部3の個数は適宜設定すればよく、巻芯着脱ピストン17及び回転トルク調節ピストン24の個数についても適宜設定すればよい。
【符号の説明】
【0050】
1 シート巻取軸
2 基軸
3 巻取部
5 爪
6 チャックチップ
7 スライドリング
8 スプリング
9 チャック機構
10 巻芯
11 第1流体路
13 シリンダリング
17 巻芯着脱ピストン
19 摩擦部
24 回転トルク調節ピストン
【要約】
【課題】巻芯の固定及び固定の解除が容易であることに加え、巻取張力の調整をより厳密にし、かつ巻取張力のバラツキをより少なくすることができるシート巻取軸を提供する。
【解決手段】基軸2と相対回転可能な状態で外嵌させた巻取部3と、基軸2に固定した状態で外嵌させたシリンダリング13と、第1流体路11からの圧縮流体によりスライドする巻芯着脱ピストン17と、第2流体路25からの圧縮流体によりスライドする回転トルク調節ピストン24とを備え、巻取部3は、巻芯10の巻取部3への固定及び固定の解除を行うチャック機構9と、摩擦部19とを備えており、回転トルク調節ピストン24のスライド方向は、基軸2の軸方向であり、回転トルク調節ピストン24が摩擦部19を押圧して、回転トルク調節ピストン24と摩擦部19の摩擦により基軸2の回転が巻取部3に伝えられる。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7