(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工具移動方向測定手段は、前記所定の姿勢にある前記ロボットに前記作業動作を行わせた際の、前記工具または前記工具に代えて前記ロボットに装着された計測治具の移動軌跡または通過点に基づいて前記工具移動方向を測定するように構成されている、請求項1記載の作業動作調整システム。
前記工具軸線方向測定手段は、前記工具または計測治具を前記工具動作装置によって動作させた際の前記工具または計測治具の動きを仮想円筒で近似し、前記仮想円筒の中心軸線の方向を前記基準軸線方向として認定するように構成されている、請求項3記載の作業動作調整システム。
前記工具軸線方向測定手段は、前記ロボットに短尺の計測治具を取り付けた場合の計測治具代表点と、前記ロボットに長尺の計測治具を取り付けた場合の計測治具代表点とに基づいて前記基準軸線を測定するように構成されている、請求項1または2に記載の作業動作調整システム。
前記方向関係較正手段は、前記ロボットの動作を修正することにより前記基準軸線方向と前記工具移動方向との関係を較正するように構成されている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の作業動作調整システム。
前記工具軸線方向測定手段および前記工具移動方向測定手段の少なくとも一方は、3次元計測器からの計測データを用いるように構成されている、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の作業動作調整システム。
前記工具軸線方向測定手段および前記工具移動方向測定手段の少なくとも一方は、2次元計測器からの計測データを用いるように構成されている、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の作業動作調整システム。
前記工具移動方向測定工程は、前記所定の姿勢にある前記ロボットに前記作業動作を行わせた際の、前記工具または前記工具に代えて前記ロボットに装着された計測治具の移動軌跡または通過点に基づいて前記工具移動方向を測定する、請求項14記載の作業動作調整方法。
前記工具軸線方向測定工程は、前記工具または計測治具を前記工具動作装置によって動作させた際の前記工具または計測治具の動きを仮想円筒で近似し、前記仮想円筒の中心軸線の方向を前記基準軸線方向として認定する、請求項16記載の作業動作調整方法。
前記工具軸線方向測定工程は、前記ロボットに短尺の計測治具を取り付けた場合の計測治具代表点と、前記ロボットに長尺の計測治具を取り付けた場合の計測治具代表点とに基づいて前記基準軸線を測定する、請求項14または15に記載の作業動作調整方法。
前記方向関係較正工程は、前記ロボットの動作を修正することにより前記基準軸線方向と前記工具移動方向との関係を較正する、請求項14乃至19のいずれか一項に記載の作業動作調整方法。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転軸線などの基準軸線を持つ工具を、前記基準軸線が前記ロボットに対して所定の位置関係となるようにロボットに装着し、穿孔作業などの所定の作業を実施する際に、工具の位置決めや穿孔動作などにロボットを利用する技術が用いられている。
【0003】
例えば、ロボットにドリルフィーダを装着し、このドリルフィーダによって進退駆動されるドリルを用いて穿孔作業を行う場合、ドリルフィーダによるドリル前進動作とロボットの動作とを組み合わせた作業動作によって穿孔作業を実施することがある。
【0004】
ところが、ドリルフィーダによるドリル前進動作方向、即ちドリルの回転軸線方向と、ロボットの動作方向とを正確に合わせておかないと、適切な穿孔作業を行えない場合がある。つまり、穿孔作業に際してはドリルのドリリング方向を、対象となるワークの表面に対して垂直な方向からアプローチしないと、ドリルを折損してしまう可能性がある。
【0005】
このような事態を未然に防ぐためには、上述したようにドリルフィーダによるドリル前進動作方向(回転軸線方向)とロボット動作方向とを正確に合わせておく必要があるが、ドリルフィーダもロボットも、組立誤差などの影響により設計通りの装着状態とはなっていない場合がある。
【0006】
このため、ドリル前進動作方向(回転軸線方向)とロボット動作方向とが正確に一致していない場合があり、このような状態で穿孔作業を行うと、ドリルに対して無理な力が加わり、上記の通りドリルを折損してしまう可能性がある。
【0007】
また、ドリルなどの工具が正確に装着されたロボットを現場に一式納入した後、周囲構造物などに工具を衝突させてしまった場合や、ロボットに装着していた工具を他の工具に交換したような場合には、ロボットへの工具の装着状態を改めて確認する必要がある。
【0008】
このとき、例えばドリルフィーダとドリルとを含む工具装置の全体を計測して装着状態を確認するような方法をとると、そのために必要となる計測装置が大掛かりになり、場合によっては現場に計測装置を持ち込むことができない。
【0009】
なお、ドリルフィーダを用いずにドリルをロボットに装着する場合もあるが、この場合でも、ドリルの基準軸線(即ち、回転軸線)がロボットに対して設計通りに配向されていないと、やはり穿孔作業時にドリルに無理な力が加わり、ドリルを折損してしまう可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みて成されたものであり、ロボットに装着された工具の基準軸線方向と、ロボットに所定の作業動作を行わせた際の工具移動方向との関係を、比較的簡単な計測機構を用いて較正することにより、所望の作業を支障なく行えるようにするための作業動作調整システム、同システムを備えたロボットシステム、および作業動作調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、基準軸線を持つ工具をロボットに装着して所定の作業を行う際の作業動作を調整するための作業動作調整システムであって、前記ロボットが所定の姿勢にあるときの前記工具の基準軸線方向を測定するための工具軸線方向測定手段と、前記所定の姿勢にある前記ロボットに前記作業動作を行わせた際の工具移動方向を測定するための工具移動方向測定手段と、前記工具軸線方向測定手段により測定された前記基準軸線方向と、前記工具移動方向測定手段により測定された前記工具移動方向との関係を較正するための方向関係較正手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、好ましくは、前記工具移動方向測定手段は、前記所定の姿勢にある前記ロボットに前記作業動作を行わせた際の、前記工具または前記工具に代えて前記ロボットに装着された計測治具の移動軌跡または通過点に基づいて前記工具移動方向を測定するように構成されている。
【0014】
また、好ましくは、前記工具は、前記基準軸線に沿って前記工具を進退駆動するための工具動作装置を介して前記ロボットに装着されるものであり、前記工具軸線方向測定手段は、前記工具動作装置に取り付けられた前記工具または計測治具を前記工具動作装置によって動作させた際の移動軌跡または通過点に基づいて前記基準軸線方向を測定するように構成されている。
【0015】
また、好ましくは、前記工具軸線方向測定手段は、前記工具または計測治具を前記工具動作装置によって動作させた際の前記工具または計測治具の動きを仮想円筒で近似し、前記仮想円筒の中心軸線の方向を前記基準軸線方向として認定するように構成されている。
【0016】
また、好ましくは、前記工具軸線方向測定手段は、前記ロボットに短尺の計測治具を取り付けた場合の計測治具代表点と、前記ロボットに長尺の計測治具を取り付けた場合の計測治具代表点とに基づいて前記基準軸線を測定するように構成されている。
【0017】
また、好ましくは、前記工具または前記工具に代えて前記ロボットに装着される計測治具は球体を含み、前記工具軸線方向測定手段および前記工具移動方向測定手段の少なくとも一方は、前記球体の中心を代表点として測定するように構成されている。
【0018】
また、好ましくは、前記工具または前記工具に代えて前記ロボットに装着される計測治具は針形状を有し、前記工具軸線方向測定手段および前記工具移動方向測定手段の少なくとも一方は、前記針形状の先端を代表点として測定するように構成されている。
【0019】
また、好ましくは、前記工具は、前記ロボットに対する前記工具の向きを修正するための修正機構を介して前記ロボットに装着されており、前記方向関係較正手段は、前記修正機構を用いて前記ロボットに対する前記工具の向きを修正することにより前記基準軸線方向と前記工具移動方向との関係を較正するように構成されている。
【0020】
また、好ましくは、前記方向関係較正手段は、前記ロボットの動作を修正することにより前記基準軸線方向と前記工具移動方向との関係を較正するように構成されている。
【0021】
また、好ましくは、前記工具軸線方向測定手段および前記工具移動方向測定手段の少なくとも一方は、3次元計測器からの計測データを用いるように構成されている。
【0022】
また、好ましくは、前記工具軸線方向測定手段および前記工具移動方向測定手段の少なくとも一方は、2次元計測器からの計測データを用いるように構成されている。
【0023】
また、好ましくは、前記工具は、前記基準軸線を回転軸線として回転する回転工具である。
【0024】
上記課題を解決するために、本発明によるロボットシステムは、上記いずれかの作業動作調整システムと、前記工具が装着されるロボットと、を備えたことを特徴とする。
【0025】
上記課題を解決するために、本発明は、基準軸線を持つ工具をロボットに装着して所定の作業を行う際の作業動作を調整するための作業動作調整方法であって、前記ロボットが所定の姿勢にあるときの前記工具の基準軸線方向を測定する工具軸線方向測定工程と、前記所定の姿勢にある前記ロボットに前記作業動作を行わせた際の工具移動方向を測定する工具移動方向測定工程と、前記工具軸線方向測定手段により測定された前記基準軸線方向と、前記工具移動方向測定手段により測定された前記工具移動方向との関係を較正する方向関係較正工程と、を備えたことを特徴とする。
【0026】
また、好ましくは、前記工具移動方向測定工程は、前記所定の姿勢にある前記ロボットに前記作業動作を行わせた際の、前記工具または前記工具に代えて前記ロボットに装着された計測治具の移動軌跡または通過点に基づいて前記工具移動方向を測定する。
【0027】
また、好ましくは、前記工具は、前記基準軸線に沿って前記工具を進退駆動するための工具動作装置を介して前記ロボットに装着されるものであり、前記工具軸線方向測定工程は、前記工具動作装置に取り付けられた前記工具または計測治具を前記工具動作装置によって動作させた際の移動軌跡または通過点に基づいて前記基準軸線方向を測定する。
【0028】
また、好ましくは、前記工具軸線方向測定工程は、前記工具または計測治具を前記工具動作装置によって動作させた際の前記工具または計測治具の動きを仮想円筒で近似し、前記仮想円筒の中心軸線の方向を前記基準軸線方向として認定する。
【0029】
また、好ましくは、前記工具軸線方向測定工程は、前記ロボットに短尺の計測治具を取り付けた場合の計測治具代表点と、前記ロボットに長尺の計測治具を取り付けた場合の計測治具代表点とに基づいて前記基準軸線を測定する。
【0030】
また、好ましくは、前記工具は、前記ロボットに対する前記工具の向きを修正するための修正機構を介して前記ロボットに装着されており、前記方向関係較正工程は、前記修正機構を用いて前記ロボットに対する前記工具の向きを修正することにより前記基準軸線方向と前記工具移動方向との関係を較正する。
【0031】
また、好ましくは、前記方向関係較正工程は、前記ロボットの動作を修正することにより前記基準軸線方向と前記工具移動方向との関係を較正する。
【発明の効果】
【0032】
上記構成を備えた本発明によれば、ロボットに装着された工具の基準軸線方向と、ロボットに所定の作業動作を行わせた際の工具移動方向との関係を、比較的簡単な計測機構を用いて較正することにより、所望の作業を支障なく行うことができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態による作業動作調整システム、同システムを備えたロボットシステム、および作業動作調整方法について図面を参照して説明する。
【0035】
図1に示したように、本実施形態による作業動作調整システム1は、回転軸線(基準軸線)2を持つ回転工具であるドリル(工具)3を、ドリルフィーダ(工具動作装置)4を介してロボット5に装着して所定の作業を行う際の作業動作を調整するためのシステムである。
【0036】
本実施形態による作業動作調整システム1は、ロボット5が所定の姿勢にあるときのドリル3の回転軸線(基準軸線)2の方向(基準軸線方向)を測定するための工具軸線方向測定手段6を有する。
【0037】
また、作業動作調整システム1は、所定の姿勢にあるロボット5に作業動作を行わせた際のドリル(工具)3の移動方向(工具移動方向)を測定するための工具移動方向測定手段7を有する。
【0038】
さらに、作業動作調整システム1は、工具軸線方向測定手段6により測定された基準軸線方向と、工具移動方向測定手段7により測定された工具移動方向との関係を較正するための方向関係較正手段8を有する。
【0039】
工具軸線方向測定手段6、工具移動方向測定手段7、および方向関係較正手段8は、すべて、記憶手段9に接続されている。記憶手段9には、3次元計測器10からの計測データが送信され、ここに記憶される。
【0040】
図2に示したように、ドリル(工具)3は、回転軸線(基準軸線)2に沿ってドリルフィーダ(工具動作装置)4により進退駆動される。即ち、ドリル3は、回転軸線周りに回転しながら、回転軸線2に沿って進退駆動される。
【0041】
工具軸線方向測定手段6は、ドリルフィーダ4に取り付けられたドリル3またはダミーの計測治具をドリルフィーダ4によって動作させた際(即ち、ドリリングする際)の移動軌跡または通過点に基づいて基準軸線方向を測定するように構成されている。
【0042】
工具移動方向測定手段7は、所定の姿勢にあるロボット5に所定の作業動作を行わせた際のドリル3または計測治具11の移動軌跡または通過点に基づいて工具移動方向を測定するように構成されている。
【0043】
具体的には、
図3および
図4に示したように、ドリルフィーダ4に、工具としてのドリル3に代えてダミードリル(計測治具)11を取り付ける。このダミードリル11の先端には球体12が設けられている。また、事前にロボットフランジ座標系と計測器座標系との姿勢関係を導出しておく。
【0044】
そして、ダミードリル11によるドリリング動作を開始するときのロボット5の姿勢(各軸値)を記憶部9に保存しておき、後の作業でロボット動作方向ベクトルを計測する際に、記憶部9に保存されたロボット5の姿勢に基づいてロボット5の開始姿勢を合わせる。
【0045】
次に、ドリルフィーダ4を駆動して、ダミードリル11を回転させながら前進させて、ドリリング動作を行う。このときのダミードリル先端の球体12の中心を代表点として、その移動軌跡または通過点を、3次元計測器10によって測定して、その測定データを記憶部9に記憶させる。球体12の中心を代表点とすることにより、ダミードリル11を回転させても同じ点を認識することが可能となる。
【0046】
工具軸線方向測定手段6は、記憶部9に保存されたダミードリル先端の球体12の中心(代表点)の移動軌跡または通過点の測定データに基づいて、ドリリング動作方向ベクトル(s(Xdi, Ydi, Zdi))を算出する。ここで、ドリリング動作方向ベクトルの方向は、ドリル3の回転軸線(基準軸線)2の方向と一致している。
【0047】
次に、記憶部9に記憶されたロボット5の開始姿勢(各軸値)を動作開始点として、ロボット5の工具姿勢が想定しているドリリング方向にロボット5を動作させる。このときのダミードリル先端の球体12の中心(代表点)の移動軌跡または通過点を、3次元計測器10によって測定して、その測定データを記憶部9に記憶させる。
【0048】
工具移動方向測定手段7は、記憶部9に保存されたダミードリル先端の球体12の中心(代表点)の移動軌跡または通過点の測定データに基づいて、ロボット動作方向ベクトル(s(Xti, Yti, Zti))を算出する。ここで、ロボット動作方向ベクトルの方向は、ロボット5と一体に移動するダミードリル11の移動方向、即ちドリル3の移動方向と一致している。
【0049】
さらに、工具軸線方向測定手段6および工具移動方向測定手段7は、それぞれの計測で得られたドリリング動作方向ベクトルおよびロボット動作方向ベクトルから、ロボットフランジ座標系表現での各動作方向ベクトルを導き出す(下記式a1、a2)。
【0050】
btXd = btRs_33 * s(Xdi, Ydi, Zdi) ・・・式a1
btXt = btRs_33 * s(Xti, Yti, Zti) ・・・式a2
ここで、「*」は、行列とベクトルの積を表す。
【0051】
s(Xdi, Ydi, Zdi):計測器座標系から見たドリリング動作方向ベクトル(iは計測番号)
s(Xti, Yti, Zti):計測器座標系から見たロボット動作方向ベクトル(iは計測番号)
btRs_33:ロボットフランジ座標系から見た計測器座標系の回転行列
btXd:ロボットフランジ座標系から見たドリリング動作方向ベクトル
btXt:ロボットフランジ座標系から見たロボット動作方向ベクトル
ドリリング動作方向とロボット動作方向を仮にそれぞれ動作Z方向とし、ロボットフランジ座標系のX軸方向との外積からY方向を求め、求めたY方向とZ方向の外積からX方向を導き出し、正規化する。
【0052】
btRd_33:上記正規化して作成したドリリング動作方向をZ方向とした座標系
btRt_33:上記正規化して作成したロボット動作方向をZ方向とした座標系
なお、上記の説明では、動作方向をZとした座標系を作成したが、表現方法はX、Yでも良い。
【0053】
また、動作Z方向がロボットフランジ座標系のX軸方向とほぼ一致する場合は、Y軸方向を用いて、外積からX方向を求めることができる。
【0054】
また、本実施形態は、動作方向のみを合わせるものなので、座標系は仮に設定するだけで良い。
【0055】
次に、方向関係較正手段8によって、ドリリング動作方向にロボット動作方向を合わせる。
【0056】
dRt_33 = inv(btRd_33) * btRt_33 ・・・式a3
ここで、「inv」は逆行列を表す。
【0057】
一方、ロボット動作方向にドリルフィーダ4のドリリング動作方向を合わせる場合は、下記式a4による。
【0058】
tRd_33 = inv(btRt_33) * btRd_33 ・・・式a4
式a3でdRt_33の座標変換行列(回転行列)が求まったので、動作時のロボット工具姿勢値にズレ量の回転成分を足し込むことで、ドリリング動作方向にロボット動作方向を合わせることができる。
【0059】
なお、本実施形態においては、方向関係較正手段8によって、式a4のロボット動作方向にドリリング動作方向を合わせる場合も同様で、例えばドリルフィーダ4に2軸もしくは3軸の回転機構(修正機構)が付いている場合、ドリル3側をロボット5に合わせてズレ量を調整しても良い。
【0060】
また、上記実施形態においては、先端に球体12を備えたダミードリル(計測治具)11を用いているが、これに代えて、針形状を有するドリルまたはダミードリルを用いて、針形状の先端を代表点として測定することもできる。或いは、ダミーのドリルでなくても、例えばボールエンドミルのような形状で、球体形状の中心位置や先端位置を計測できるならば、そのまま用いても良い。
【0061】
以上述べたように本実施形態によれば、ロボット5に装着されたドリル(工具)3の基準軸線方向と、ロボット5に所定の作業動作を行わせた際の工具移動方向との関係を、比較的簡単な計測機構を用いて較正することにより、ワークの穿孔作業などの所望の作業を支障なく行うことができるようになる。
【0062】
また、本実施形態においては、ロボット5にドリルフィーダ4を取り付けたまま計測を行えるので、両者間の取付け誤差の影響も含んだ形で、ドリリング動作方向(即ちドリルの回転軸線方向)とロボット動作方向とを正確に合わせることができる。
【0063】
また、本実施形態においては、ドリルフィーダ4とドリル3とを含む工具装置の全体を計測する必要がなく、ダミードリル先端の球体12もしくは針形状部の動作のみを検出できれば良いので、小型の3次元計測器10を用いることができる。このため、現場での作業や再計測も、大掛かりな計測装置を用いる場合に比べて容易となる。
【0064】
また、本実施形態においては、3次元計測器10を用いることで、ロボット5を操作できる作業者であれば、安定して一定の精度で計測を行うことができる。
【0065】
次に、上記実施形態の一変形例について、
図5を参照して説明する。
【0066】
本変形例においては、工具軸線方向測定手段6は、ドリル(工具)3またはダミードリル(計測治具)11をドリルフィーダ(工具動作装置)4によって動作させた際のドリル3またはダミードリル11の代表点の動きを仮想円筒で近似し、この仮想円筒の中心軸線13の方向を基準軸線方向として認定するように構成されている。
【0067】
本変形例は、ドリリング時のドリル3の代表点の軌跡が、偏心によって渦(螺旋)を描くような場合に適している。
【0068】
上述した実施形態(
図3、
図4)では、代表点の移動軌跡または通過点からドリリング動作方向ベクトルを算出した。これに対して本変形例では、代表点の移動軌跡が偏心により渦を描くような場合に、代表点の移動軌跡または通過点の情報から、最小二乗法を用いて線形近似することで、回転軸線2のベクトルs(Xdi, Ydi, Zdi)を算出することができる。
【0069】
それ以外の手順は、上述した実施形態(
図3、
図4)と同様である。
【0070】
このように本変形例によれば、ドリル(工具)3が偏心している場合でも、ドリリング動作方向(即ち、ドリルの回転軸線方向)を導き出すことができる。
【0071】
次に、上記実施形態の他の変形例について、
図6を参照して説明する。
【0072】
本変形例は、ドリルフィーダ4を備えておらず、ドリル回転駆動部14を介してドリル(工具)3がロボット5に装着される場合でも適用可能である。なお、本変形例においても、事前にロボットフランジ座標系と計測器座標系の姿勢関係を導き出しておく。
【0073】
本変形例においても、工具としてのドリル3に代えて、球体12をその先端に備えたダミードリルをロボットに装着するが、ダミードリルとして、短尺のダミードリル15と長尺のダミードリル16の2本を用意する。そして、短尺のダミードリル15を取り付けた状態と、長尺のダミードリル16を取り付けた状態とのそれぞれにおいて計測を行う。
【0074】
次に、短尺のダミードリル15の代表点と長尺のダミードリル16の代表点とからドリルの基準軸線方向を測定すると共に、ロボット5を動作させてロボット動作方向を測定する。そして、ドリルの基準軸線方向とロボット動作方向とのズレ量を補正量として、ロボット動作方向に足しこむ。
【0075】
なお、上述した実施形態(
図3、
図4)では代表点の移動軌跡または通過点からドリリング動作方向ベクトルを算出したが、ドリルフィーダ4がない場合にはこの方法が適用できない。これに対して本変形例によれば、長短のダミードリル15、16の代表点から、ドリリングの方向ベクトルを測定することができる。
【0076】
次に、上述した実施形態の他の変形例について
図7乃至
図9を参照して説明する。
【0077】
上述した実施形態および変形例においては、3次元計測器10を用いる場合を述べたが、本変形例では、2次元計測器(投影型計測器)17を用いる場合について説明する。
【0078】
本変形例においては、さらに、ドリリング動作時とロボット動作時の移動前後の距離を取得できるものとする。なお、ドリルフィーダ4がない場合には、長短のダミードリル15、16の長さの差分が分かるものとする。
【0079】
本変形例では、XY平面座標で計測すると仮定する。
【0080】
そして、ダミードリル11によるドリリング動作を開始するときのロボット5の姿勢(各軸値)を記憶部9に保存しておき、後の作業でロボット動作方向ベクトルを計測する際に、記憶部9に保存されたロボット5の姿勢に基づいてロボット5の開始姿勢を合わせる。
【0081】
次に、ドリリング動作開始時のダミードリル11の球体12の中心(代表点)の位置を測定して記憶部9に記憶させる(s(Xd1, Yd1))。
【0082】
続いて、ドリルフィーダ4を駆動して、ダミードリル11を回転させながら前進させて、ドリリング動作を行う。そして、ドリリング動作終了時のダミードリル11の球体12の中心(代表点)の位置を記憶部9に記憶させる(s(Xd2, Yd2)。
【0083】
また、本変形例においては、別途、ドリリング動作距離を取得する(Ldxyz)。
【0084】
次に、記憶部9に保存されたロボット5の開始姿勢(各軸値)を動作開始点として、ロボット動作開始時のダミードリル11の球体12の中心(代表点)の位置を記憶部9に記憶させる(s(Xt1, Yt1))。
【0085】
次に、距離Ltxyz分だけロボット5を動作させる。そして、ロボット動作終了時のダミードリル11の球体12の中心(代表点)の位置を記憶部9に記憶させる(s(Xt2, Yt2))。
【0086】
次に、2次元平面内のそれぞれの計測で得られた動作開始点、動作終了点から、2次元の動作方向ベクトルを導き出す(下記式d1、d2)。
【0087】
Ldxy = |s(Xd2, Yd2) - s(Xd1, Yd1)| ・・・式d1
Ltxy = |s(Xt2, Yt2) - s(Xt1, Yt1)| ・・・式d2
ここで、「||」は距離を表す。
【0088】
Ldxy:XY平面に投影したドリリング動作開始点から終了点までの距離
Ltxy:XY平面に投影したロボット動作開始点から終了点までの距離
また、ドリリング動作とロボット動作の開始点から終了点までの距離より、下記式d3、d4が成立する。
【0089】
θd = ACOS(Ldxy/Ldxyz) ・・・式d3
θt = ACOS(Ltxy/Ltxyz) ・・・式d4
ここで、「ACOS」は逆余弦を表す。
【0090】
θd:ドリリング動作の動作ベクトルとXY平面に投影した動作ベクトルのなす角
θt:ロボット動作の動作ベクトルとXY平面に投影した動作ベクトルのなす角
ドリリング動作時とロボット動作時の開始点を合わせておけば、多くても2種類の工具方向ベクトルが導き出される(計測平面上を動作した場合は1種類)。
【0091】
この計測を、姿勢を変えて計測または目視による確認から、どの方向に動作しているかを導き出すことができる。また、開始点はドリリング動作時もロボット動作時も同じ位置でかつ相対移動が分かれば良いので、その情報を用いて、開始点からそれぞれ相対移動したZ位置を導き出すことができる(下記式d5、d6)。
【0092】
Zdi = Zd2 - Zd1 = Ldxyz * SINθd ・・・式d5
Zti = Zt2 - Zt1 = Ltxyz * SINθt ・・・式d6
上記より、ドリリングの動作方向ベクトルs(Xdi, Ydi, Zdi)とロボットの動作方向ベクトルs(Xti, Yti, Zti)が得られるので、それ以外は上記実施形態および変形例と同様に行うことができる。
【0093】
図9に、投影型計測器(2次元計測器)17を用いた場合の実施例を示す。Z位置を導き出す際には、投影型計測器17の座標系平面に対して、できる限り斜め方向に動作させることにより、動作方向と座標系平面とのなす角度が大きくなるので、導出精度が向上する。
【0094】
次に、上記実施形態の他の変形例について、
図10を参照して説明する。
【0095】
図7乃至
図9に示した上述の変形例では、2次元座標系で移動前後を計測できる場合について述べたが、本変形例では、例えばCCDカメラ18のような2次元計測器による2次元平面を用いた場合について述べる。
【0096】
前提条件として、ドリリング動作とロボット動作の移動前の位置を合わせる。
【0097】
本変形例では、XY平面座標で計測すると仮定する。
【0098】
そして、ダミードリル11によるドリリング動作を開始するときのロボット5の姿勢(各軸値)を記憶部9に保存しておき、後の作業でロボット動作方向ベクトルを計測する際に、記憶部9に保存されたロボット5の姿勢に基づいてロボット5の開始姿勢を合わせる。
【0099】
次に、ドリルフィーダ4を駆動して、ダミードリル11を回転させながら前進させて、ドリリング動作を行い、2次元平面にダミードリル11の球体12の中心(代表点)の位置を移動させる。そして、2次元平面上でのダミードリル11の球体12の中心(代表点)の位置を記憶部9に記憶させる(s(Xd, Yd))。
【0100】
次に、前述のドリリング動作時に保存したロボット5の開始姿勢(各軸値)を動作開始点として、ロボット5を動作させ、2次元平面にダミードリル11の球体12の中心(代表点)の位置を移動させる。そして、2次元平面上でのダミードリル11の球体12の中心(代表点)の位置を記憶部9に記憶させる(s(Xt, Yt))。
【0101】
上記計測により取得したドリリング動作時の2次元平面上の位置s(Xd, Yd)にロボット5の動作方向が合うように姿勢を調整し、繰り返しロボット5を動作させ、下記のように値が一致するまで行う。
【0102】
s(Xd, Yd) = s(Xt, Yt) ・・・式e1
式e1の通り値が一致したとき、ドリリング方向とロボット動作方向が一致したと言える。