(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マーカ部分候補抽出部は、前記複数方向にて同時撮像した放射線画像の1つである第1画像における前記マーカ部分の候補の位置に基づいて、他の方向にて撮像した放射線画像である第2画像においてマーカ部分の候補があるべき範囲を設定し、設定した範囲にマーカ部分の候補が無い場合、前記第1画像における前記マーカ部分の候補を候補から除外する、ことを特徴とする請求項2に記載の放射線画像解析装置。
前記マーカ部分候補抽出部は、前記複数方向にて同時撮像した放射線画像の1つである第1画像における前記マーカ部分の候補の位置に基づいて、他の方向にて撮像した放射線画像である第2画像においてマーカ部分の候補があるべき範囲を設定し、設定した範囲にマーカ部分の候補が無い場合、前記第1画像における前記マーカ部分の候補を候補から除外する、ことを特徴とする請求項4に記載の放射線画像解析装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態における放射線治療システムの機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、放射線治療システム1は、放射線治療装置制御装置2と、放射線治療装置3とを具備する。放射線治療装置制御装置2は、放射線画像解析装置21を具備する。
放射線治療システム1は、放射線治療を行うためのシステムであり、具体的には、治療用放射線(重粒子線でもよい)の照射や、患部位置特定のための放射線画像(X線透視画像)の撮像を行う。
【0017】
放射線治療装置制御装置2は、放射線治療装置3を制御して、放射線の照射や放射線画像の撮像を行わせる。放射線治療装置制御装置2において放射線画像解析装置21は、放射線治療装置3が撮像した放射線画像を解析して、患部位置特定のために患部付近に埋め込まれたマーカの像(放射線画像のマーカ部分)を検出する。例えば、X線透過率の低い金球がマーカとして用いられ、放射線画像解析装置21は、X線照射における当該金球の影をマーカ部分として検出する。
放射線治療装置3は、放射線治療装置制御装置2の制御に従って、治療用放射線の照射や放射線画像の撮像を実行する。
【0018】
図2は、放射線治療装置3の装置構成を示す概略構成図である。同図において、放射線治療装置3は、旋回駆動装置311と、Oリング312と、走行ガントリ313と、首振り機構321と、照射部330と、センサアレイ351、361および362と、カウチ381とを具備する。照射部330は、治療用放射線照射装置331と、マルチリーフコリメータ(Multi Leaf Collimator;MLC)332と、撮像用放射線源341および342とを具備する。
【0019】
旋回駆動装置311は、回転軸A11を中心に回転可能にOリング312を土台に支持し、放射線治療装置制御装置2の制御に従ってOリング312を回転させる。回転軸A11は、鉛直方向の軸である。
Oリング312は、回転軸A12を中心とするリング状に形成され、回転軸A12を中心に回転可能に走行ガントリ313を支持している。回転軸A12は、水平方向の軸(すなわち、鉛直方向に直角な軸)であり、アイソセンタP11にて回転軸A11と直交する。回転軸A12は、Oリング312に対して固定されている。すなわち、回転軸A12は、Oリング312の回転に伴って回転軸A11を中心に回転する。
【0020】
走行ガントリ313は、回転軸A12を中心とするリング状に形成され、Oリング312の内側にOリング312と同心円になるように配置されている。放射線治療装置3は、さらに、図示されていない走行駆動装置を備えており、走行ガントリ313は、走行駆動装置からの動力にて回転軸A12を中心に回転する。
走行ガントリ313は、自らが回転することで、撮像用放射線源341およびセンサアレイ361や撮像用放射線源342およびセンサアレイ362など、走行ガントリ313に設置されている各部を一体的に回転させる。
【0021】
首振り機構321は、走行ガントリ313のリングの内側に固定され、照射部330を走行ガントリ313に支持している。首振り機構321は、放射線治療装置制御装置2の制御に従って照射部330の向きを変化させる。
照射部330は、走行ガントリ313の内側に、首振り機構321に支持されて配置されており、治療用放射線や撮像用放射線を照射する。
治療用放射線照射装置331は、放射線治療装置制御装置2の制御に従って、患者T11の患部へ向けて治療用放射線を照射する。
マルチリーフコリメータ332は、放射線治療装置制御装置2の制御に従って治療用放射線の一部を遮蔽することで、治療用放射線が患者T11に照射される際の照射野の形状を患部の形状に合わせる。
【0022】
撮像用放射線源341は、放射線治療装置制御装置2の制御に従って、センサアレイ361へ向けて撮像用放射線(X線)を照射する。撮像用放射線源342は、放射線治療装置制御装置2の制御に従って、センサアレイ362へ向けて撮像用放射線を照射する。撮像用放射線源341と342とは、照射する放射線が直交する向きで照射部330(例えばマルチリーフコリメータ332の筐体)に固定されている。
【0023】
センサアレイ351は、治療用放射線照射装置331からの治療用放射線が当たる位置に、治療用放射線照射装置331の方を向いて配置されて、走行ガントリ313のリングの内側に固定されている。センサアレイ351は、患者T11等を透過した治療用放射線を、照射位置の確認や治療の記録用に受光する。なお、ここでいう受光とは、放射線を受けることである。
【0024】
センサアレイ361は、撮像用放射線源341からの撮像用放射線が当たる位置に、撮像用放射線源341の方を向いて配置されて、走行ガントリ313のリングの内側に固定されている。センサアレイ361は、撮像用放射線源341から照射されて患者T11等を透過した撮像用放射線を、患部位置特定用に受光する。
センサアレイ362は、撮像用放射線源342からの撮像用放射線が当たる位置に、撮像用放射線源342の方を向いて配置されて、走行ガントリ313のリングの内側に固定されている。センサアレイ362は、撮像用放射線源342から照射されて患者T11等を透過した撮像用放射線を、患部位置特定用に受光する。
カウチ381は、治療される患者T11が横臥することに利用される。
【0025】
図3は、放射線画像解析装置21の機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、放射線画像解析装置21は、入出力部110と、参照輝度取得部120と、輝度関係情報取得部130と、マーカ部分検出部200とを具備する。入出力部110は、放射線画像取得部111と、管球条件取得部112と、検出結果出力部113とを具備する。マーカ部分検出部200は、係数値設定部210と、マーカ部分候補抽出部220と、終了判定部230とを具備する。マーカ部分候補抽出部220は、候補画素判定部221と、テンプレート適用部222と、候補絞込部223とを具備する。
【0026】
入出力部110は、各種データの入出力を行う。
放射線画像取得部111は、マーカを埋め込まれた検体を撮像した放射線画像を取得する。具体的には、放射線画像取得部111は、センサアレイ361が受光した撮像用放射線に基づく放射線画像や、センサアレイ362が受光した撮像用放射線に基づく放射線画像を、画像データにて取得する。特に、放射線画像取得部111は、撮像用放射線源341と342とが同時に放射線を照射して検体(患者T11の患部付近)を複数方向にて同時撮像した放射線画像を取得する。
【0027】
管球条件取得部112は、撮像用放射線源341や342からの放射線の放射量に関する情報を取得する。具体的には、管球条件取得部112は、撮像用放射線源341や342が撮像用放射線を照射した際のX線管球条件として、管電圧およびmAs値(管電流と照射時間との積)を取得する。
検出結果出力部113は、放射線画像解析装置21の検出結果を出力する。例えば、検出結果出力部113は、放射線画像解析装置21が検出したマーカの座標情報を出力する。
【0028】
参照輝度取得部120は、参照部分の輝度を取得する。ここでいう参照輝度とは、放射線画像においてマーカ以外の部分として想定された参照部分の輝度である。例えば、参照輝度取得部120は、マーカ部分の画素の候補の判定に際して、判定対象画素から所定の距離(例えば画素数)離れた画素の輝度を、判定対象画素の上下左右の4方向について比較する。そして、参照輝度取得部120は、最も輝度の大きい画素をマーカ以外の部分と想定して参照部分に設定し、当該参照部分の輝度を参照輝度として取得する。
【0029】
輝度関係情報取得部130は、輝度関係情報を取得する。ここでいう輝度関係情報は、マーカ部分の輝度と参照部分の輝度との関係を示す情報であり、撮像用放射線の放射量に関する情報(具体的には、管球条件取得部112が取得したX線管球条件)に基づいて生成される。
より具体的には、輝度関係情報取得部130は、管電圧とmAs値と参照部分の輝度とを引数としてマーカ部分の輝度の判定閾値を出力する関数を予め記憶している。そして、管球条件取得部112が取得した管電圧とmAs値とを当該関数に代入して、前記参照部分の輝度に基づいて前記マーカ部分の輝度の判定閾値を示す関数を、輝度関係情報として取得する。
【0030】
さらには、輝度関係情報取得部130は、他の方向の撮像から混入する放射線の影響を示す係数を含む輝度関係情報を取得する。具体的には、輝度関係情報取得部130は、管電圧とmAs値と参照部分の輝度とに加えて、他の方向の撮像から混入する放射線の影響を示す係数を引数としてマーカ部分の輝度の判定閾値を出力する関数を予め記憶している。そして、管球条件取得部112が取得した管電圧とmAs値とを当該関数に代入して、前記参照部分の輝度と他の方向の撮像から混入する放射線の影響を示す係数とに基づいて前記マーカ部分の輝度の判定閾値を示す関数を、輝度関係情報として取得する。
なお、以下では、他の方向の撮像から混入する放射線の影響を示す係数を、「推定散乱線係数」と称し、当該係数の値を、「推定散乱線係数値」と称する。
【0031】
ここで、
図4〜9を参照して、輝度関係情報取得部130が取得する輝度関係情報について説明する。
放射線画像からマーカ部分を検出する際、輝度の絶対値を閾値として検出を行ったのでは、放射線が人体等を透過する透過長の変化に対応できずに誤検出が生じるおそれがある。すなわち、透過長が短く放射線の減衰が比較的少ない場合には、放射線画像全体的に輝度が大きくなり、マーカ部分をマーカ部分として検出できないおそれがある。逆に、透過長が長く放射線の減衰が比較的多い場合には、放射線画像全体的に輝度が小さくなり、マーカ以外の部分をマーカ部分として検出してしまうおそれがある。
【0032】
そこで、放射線画像からマーカ以外の部分の輝度を検出し、判定対象部分とマーカ以外の部分との比に基づいて、マーカ部分か否かの判定を行うことが考えられる。例えば、判定対象部分の周囲において最も輝度の大きい部分をマーカ以外の部分と想定して参照部分とし、式(1)を満たす場合にマーカ部分と判定することが考えられる。
【0034】
但し、I
oは、判定対象部分の輝度を示し、I
rは参照部分の輝度を示す。また、A
convは判定閾値であり、例えば1.3程度の定数に設定される。
マーカ部分に照射される放射線も、マーカ以外の部分に照射される放射線も、人体を透過する際に同じ割合で減衰すれば、マーカ部分やマーカ以外の部分における輝度は透過長に応じて変化しても、輝度の比は一定となることが期待される。そうすると、式(1)を用いることで精度よくマーカ部分を検出できることが期待される。
【0035】
しかしながら、実際には、マーカ部分やマーカ以外の部分のいずれも、人体にて散乱した放射線により輝度が大きくなっている。この人体にて散乱した放射線の影響により、マーカ部分に照射される放射線と、マーカ以外の部分に照射される放射線とが、人体を透過する際に同じ割合で減衰する関係にはなく、マーカ周囲の透過長によって、マーカ部分とマーカ以外の部分との輝度比が変化する。
【0036】
そこで、本発明者は、より高精度な判定方法の確立を目指して実験を行った。
図4は、本発明者が行った実験の環境の概略を示す説明図である。同図おいて、放射線源TUBとセンサアレイFPDとの間に、人体相当の散乱体PHAと、散乱体PHAに付されたマーカMKとが配置されている。
当該実験環境において、本発明者は、散乱体PHAの透過長やX線管球条件を変化させて、マーカ部分の輝度(以下、「マーカ輝度」と称する)やマーカ以外の部分の輝度(以下、「周囲輝度」と称する)を測定した。
【0037】
図5は、散乱体PHAの透過長の逆数と周囲輝度との関係の例を示すグラフである。同図において、点P211〜P213は、管電圧を比較的小さくした場合の測定値に基づく、透過長の逆数と周囲輝度との関係を示し、線L11は、点P211〜P213の直線近似の例を示す。また、点P221〜P223は、管電圧を比較的大きくした場合の測定値に基づく、透過長の逆数と周囲輝度との関係を示し、線L12は、点P221〜P223の直線近似の例を示す。
線L11とL12とのいずれも、透過長の逆数と周囲輝度との関係を直線近似できることを示している。このように、本発明者は、透過長の逆数と周囲輝度との関係を直線近似できることを見出した。従って、透過長tと周囲輝度I
sとの関係は、式(2)にて近似することができる。
【0039】
但し、係数cは、X線管球条件に基づいて、例えば式(3)にて算出される。
【0041】
但し、vは、X線管球の管電圧を示し、Dは、当該X線管球のmAs値を示す。また、v
0は、当該X線管球の管電圧の基準値を示す定数であり、D
0は、当該X線管球のmAs値の基準値を示す定数である。また、c
1およびc
2は、所定の定数である。
また、式(2)における係数dは、X線管球条件に基づいて、例えば式(4)にて算出される。
【0043】
但し、d
1およびd
2は、いずれも定数を示す。d
1やd
2の値は、例えば実験にて取得する。
式(2)は、式(5)のように変形することができる。
【0045】
一方、
図6は、散乱体PHAの透過長と、周辺輝度をマーカ輝度で除算した輝度比との関係の例を示すグラフである。
同図において、透過長と輝度比との関係を直線近似できることが示されている。このように、本発明者は、透過長と輝度比との関係を直線近似できることを見出した。従って、透過長tと周囲輝度I
sマーカ輝度I
mとの関係は、式(6)にて近似することができる。
【0047】
但し、aおよびbは、いずれも定数を示す。aやbの値は、例えば実験にて取得する。
式(6)に式(5)を代入して、式(7)を得られる。
【0049】
式(7)は、透過長tを含んでいない。式(5)および式(6)のように、透過長tの一次式を複数取得することで、透過長の項を消去することができる。透過長を含まない式を用いることで、放射線画像解析装置21は、マーカ部分の検出を行う際に、透過長の情報を必要としない。従って、放射線画像解析装置21のユーザは、透過長(検体の厚さ)を測定する必要が無い。
式(7)をI
mについて整理して、式(8)を得られる。
【0051】
1方向のみからの撮像の場合、式(8)に基づいてマーカ部分検出用の判定閾値を設定することが考えられる。例えば、式(9)に示すように、式(8)におけるマーカ輝度I
mに定数I
constを加えた値を、判定閾値I
thrとすることが考えられる。
【0053】
例えば、撮像用放射線源342およびセンサアレイ362が撮像を行わず、撮像用放射線源341およびセンサアレイ361のみが撮像を行った場合、管球条件取得部112が、撮像用放射線源341の管電圧およびmAs値を取得する。そして、輝度関係情報取得部130は、当該管電圧およびmAs値を式(3)および式(4)に代入して係数cおよびdの値を算出し、得られた係数値を式(9)に代入する。この係数値代入後の式(9)は、周辺輝度I
sを引数として判定閾値I
thrを出力する関数になっている。
そこで、候補画素判定部221は、係数値代入後の式(9)の周辺輝度I
sに、参照輝度取得部120の取得した参照輝度を代入して、マーカ部分検出用の判定閾値I
thrを算出する。
【0054】
なお、式(2)や式(6)は近似式の一例であり、これに限らない。
透過長tと周囲輝度I
sとの関係の近似式の、他の一例を式(10)に示す。
【0056】
また、透過長tと周囲輝度I
sマーカ輝度I
mとの関係の近似式の、他の一例を式(11)に示す。
【0058】
例えば、式(11)に式(5)を代入して、式(12)を得られる。
【0060】
式(12)をI
mについて整理して、式(13)を得られる。
【0062】
式(8)の場合と同様、例えば、式(13)におけるマーカ輝度I
mに定数を加えた値を、判定閾値I
thrとすることが考えられる。
ここで、
図7は、周囲輝度とマーカ輝度との関係の例を示すグラフである。同図において、点P311〜P313は、管電圧を比較的小さくした場合の、測定値に基づく周囲輝度とマーカ輝度との関係を示し、線L21は、当該管電圧における式(13)の計算値を示す。また、点P321〜P323は、管電圧を比較的大きくした場合の、測定値に基づく周囲輝度とマーカ輝度との関係を示し、線L22は、当該管電圧における式(13)の計算値を示す。
【0063】
点P311〜P313と線L21とは、ほぼ一致している。また、点P321〜P323と線L22とは、ほぼ一致している。このように、式(13)を用いてマーカ輝度を高精度に算出することができる。すなわち、参照部分の輝度に基づいてマーカ輝度を高精度に推定することができる。そこで、マーカ部分検出用の判定閾値を、例えば、マーカ輝度の推定値に定数を加えた値、または、マーカ輝度の推定値とマーカ以外の部分の輝度の下限値との中間の値(例えば平均値ないし重み付け平均値)に設定することで、マーカ部分の検出を高精度に行い得る。
【0064】
次に、直交する放射線源からの放射線の散乱がある場合の判定閾値について説明する。
図8は、直交する放射線源からの放射線の散乱がある場合における、マーカ輝度および周囲輝度の例を示す説明図である。なお、
図8は、センサアレイ361の場合を例に示しているが、センサアレイ362についても同様である。
図8(A)は、患者T11が位置せずにマーカMKのみがある状態で、1方向の撮像を行った場合(
図8の例では、撮像用放射線源342は放射線を照射せず、撮像用放射線源341のみが放射線を照射した場合)の例を示す。また、
図8(B)は、患者T11およびマーカMKがある状態で、1方向の撮像を行った場合の例を示す。また、
図8(C)は、患者T11およびマーカMKがある状態で、2方向にて同時撮像を行った場合(より具体的には、撮像用放射線源341と342とが同時に放射線を照射した場合)の例を示す。
【0065】
図8(A)の例では、撮像用放射線源341からの放射線X11により、マーカ以外の部分は輝度A0となっている。一方、マーカ部分では、マーカMKにより放射線X11が減衰して、輝度A1となっている。従って、周囲輝度をマーカ輝度で除算した輝度比はA0/A1となっている。
【0066】
一方、
図8(B)の例では、撮像用放射線源341からの放射線X11が患者T11の人体にて減衰している。一方で、放射線X11が患者T11の体内にて散乱した放射線X21もセンサアレイ361へ到達している。これにより、マーカ以外の部分は輝度(A0’+B)となっている。また、マーカ部分は輝度(A1’+B)となっている。従って、周囲輝度をマーカ輝度で除算した輝度比は(A0’+B)/(A1’+B)となっている。
【0067】
また、
図8(C)の例では、
図8(B)の場合の放射線に加えて、撮像用放射線源342からの放射線X12が患者T11の体内にて散乱した放射線X22もセンサアレイ361へ到達している。これにより、マーカ以外の部分は輝度(A0’+B+C)となっている。また、マーカ部分は輝度(A1’+B+C)となっている。従って、周囲輝度をマーカ輝度で除算した輝度比は(A0’+B+C)/(A1’+B+C)となっている。特に、撮像用放射線源342からの放射線X12が患者T11の体内にて散乱した放射線X22の量は、マーカ部分とマーカ以外の部分とでほぼ同じであり、従って、周囲輝度をマーカ輝度で除算した輝度比は、
図8(B)の場合よりも小さくなっている。
そこで、式(14)のように、1方向のみの撮像の場合のマーカ輝度I
mに、他の方向の撮像から混入する放射線(
図8の例では、撮像用放射線源342からの放射線X12が患者T11の体内にて散乱した放射線)の影響を示す係数(推定散乱線係数)eを加えたマーカ輝度をI’
mとする。
【0069】
いわば、I
mは、センサアレイ361に対応する撮像用放射線源341からの放射線に基づく輝度を示し、eは、直交する撮像用放射線源342からの放射線に基づく輝度を示し、I’
mは、I
mとeとを合計した輝度を示す。
式(14)をI’
mについて整理して、式(15)を得られる。
【0071】
また、式(16)のように、1方向のみの撮像の場合の周囲輝度I
sに、推定散乱線係数eを加えた周囲輝度をI’
sとする。
【0073】
いわば、I
sは、センサアレイ361に対応する撮像用放射線源341からの放射線に基づく輝度を示し、eは、直交する撮像用放射線源342からの放射線に基づく輝度を示し、I’
sは、I
sとeとを合計した輝度を示す。
式(16)をI’
sについて整理して、式(17)を得られる。
【0075】
例えば、式(8)に式(15)および式(17)を代入して、式(18)を得られる。
【0077】
この式(18)の右辺を、マーカ部分検出用の判定閾値として用いることが考えられる。この場合、判定閾値I
thrは、式(19)のようになる。
【0079】
例えば、撮像用放射線源341およびセンサアレイ361と、撮像用放射線源342およびセンサアレイ362とが同時に撮像を行った場合、撮像用放射線源341およびセンサアレイ361の撮像した放射線画像について、管球条件取得部112が、撮像用放射線源341の管電圧およびmAs値を取得する。そして、輝度関係情報取得部130は、当該管電圧およびmAs値を式(3)および式(4)に代入して係数cおよびdの値を算出し、得られた係数値を式(19)に代入する。この係数値代入後の式(19)は、周辺輝度I’
sおよび推定散乱線係数eを引数として判定閾値I
thrを出力する関数になっている。
【0080】
そこで、候補画素判定部221は、係数値代入後の式(19)の周辺輝度I’
sに、参照輝度取得部120の取得した参照輝度を代入して、マーカ部分検出用の判定閾値I
thrを、推定散乱線係数eを引数とする関数にて取得する。
式(19)では、マーカ輝度の計算値を判定閾値I
thrとしている。このため、放射線画像において、散乱光等の影響によりマーカ部分の輝度が大きくなっていると、候補画素判定部221が、当該マーカ部分を抽出できない場合がある。しかしながら、この場合でも、後述するように、係数値設定部210が推定散乱線係数eの値を大きくすることで、候補画素判定部221は当該マーカ部分を抽出し得る。
【0081】
なお、式(19)は、直交する放射線源からの放射線の散乱がある場合の判定閾値の一例であり、これに限らない。例えば、式(13)に式(15)および式(17)を代入して、式(20)を得られる。
【0083】
式(18)の場合と同様、例えば、式(20)の右辺を、判定閾値I
thrとしてもよい。
【0084】
マーカ部分検出部200は、輝度関係情報取得部130が取得した輝度関係情報と、参照輝度取得部120が取得した参照部分の輝度とに基づいて、マーカ部分を検出する。具体的には、マーカ部分検出部200は、輝度関係情報取得部130が取得した関数に、参照輝度取得部120が取得した参照部分の輝度を代入して得られる判定閾値に基づいて、当該判定閾値以下の輝度の部分を、マーカ部分として検出する。
【0085】
係数値設定部210は、輝度関係情報取得部130が取得した輝度関係情報における、推定散乱線係数の値を設定する。そして、係数値設定部210は、終了判定部230が、マーカ部分の検出を終了しないと判定すると、当該係数の値を変更する。
図9は、係数値設定部210が設定する推定散乱線係数値と、式(20)にて算出されるマーカ輝度との関係の例を示すグラフである。同図において、線L31は、係数値設定部210が推定散乱線係数値を0に設定した際に、式(20)にて算出されるマーカ輝度を示す。また、線L32は、係数値設定部210が、推定散乱線係数値に所定の値を加えて0から更新した際に、式(20)にて算出されるマーカ輝度を示す。線L32は、係数値設定部210が、推定散乱線係数値にさらに所定の値を加えた際に、式(20)にて算出されるマーカ輝度を示す。
【0086】
図9に示すように、係数値設定部210が推定散乱線係数値を大きく設定するにつれて、算出されるマーカ輝度が大きくなり、候補画素判定部221が設定する判定閾値も大きくなる。判定閾値が大きいほど、マーカ部分と判定され易くなり、従って、マーカ部分候補抽出部220が抽出するマーカ部分の候補の数が増大する。
そこで、係数値設定部210は、まず、推定散乱線係数値を0に設定し、マーカ部分候補抽出部220が予め設定されているマーカの個数と同数以上のマーカ部分の候補を抽出するまで、推定散乱線係数値を徐々に大きくしていく。
【0087】
マーカ部分候補抽出部220は、係数値設定部210が推定散乱線係数値を設定した輝度関係情報と、参照輝度取得部120が取得した参照部分の輝度とに基づいて、マーカ部分の候補を抽出する。また、マーカ部分候補抽出部220は、係数値設定部210が推定散乱線係数値を変更すると、変更後の推定散乱線係数値に基づいて、マーカ部分の候補の抽出を再度行う。
候補画素判定部221は、放射線画像の画素毎に、輝度関係情報取得部130が取得した輝度関係情報と、参照輝度取得部が取得した参照部分の輝度とに基づいて、マーカ部分の画素の候補か否かを判定する。
【0088】
テンプレート適用部222は、マーカの領域とマーカ以外の領域とを含むテンプレートを、候補画素判定部221の判定結果に適用してマーカ部分の候補を抽出する。
図10は、テンプレート適用部222が用いるテンプレートの例を示す説明図である。同図に示すテンプレートは、マーカの形状および大きさに応じて設定されたマーカの領域F11と、マーカの領域F11の周囲に設定されたマーカ以外の領域F12とを含んでいる。
【0089】
テンプレート適用部222は、まず、領域F11に含まれる画素の輝度の平均A11と、領域F12に含まれる画素の輝度の平均A12とを算出する。次に、テンプレート適用部222は、算出した平均A11とA12との平均Aを算出し、領域F11に含まれる画素のうち輝度がA以下である画素の数N
dを算出する。N
dが閾値以上である場合、すなわち、領域F12と比較して暗い領域が円形に存在する場合、テンプレート適用部222は、領域F11の中央の画素(
図10において太線にて示す画素)をマーカ部分の候補の中心位置として検出する。
【0090】
候補絞込部223は、複数方向にて同時撮像した放射線画像の1つである第1画像におけるマーカ部分の候補の位置に基づいて、他の方向にて撮像した放射線画像である第2画像においてマーカ部分の候補があるべき範囲を設定する。そして、設定した範囲にマーカ部分の候補が無い場合、候補絞込部223は、第1画像におけるマーカ部分の候補を候補から除外する。
【0091】
図11は、候補絞込部223が設定するマーカ部分の候補があるべき範囲の例を示す説明図である。同図(A)は、第1画像(例えば、センサアレイ361にて得られた放射線画像)におけるマーカ部分の候補の例を示しており、点P21が、マーカ部分の候補を示している。また、同図(B)は、第2画像(例えば、センサアレイ362にて得られた放射線画像)において候補絞込部223が設定する、マーカ部分の候補があるべき範囲の例を示しており、領域F21が、マーカ部分の候補があるべき範囲を示している。
【0092】
第1画像にマーカの像が写っている場合、当該マーカの位置を、第1画像における縦方向および横方向については特定できるが、奥行き方向については、第1画像のみからは特定できない。従って、第1画像から特定できるマーカの位置は、3次元空間においては、放射線源とセンサアレイとを結ぶ、例えば円柱状の領域となる。当該領域を第2画像に射影すると、
図11(B)の領域F21のように、例えば帯状の領域となる。
【0093】
候補絞込部223は、撮像用放射線源341、342各々の位置と、センサアレイ361、362各々の位置と、第1画像(例えば、センサアレイ361にて得られた放射線画像)におけるマーカ部分の候補の位置とに基づいて、第2画像(例えば、センサアレイ362にて得られた放射線画像)においてマーカ部分の候補があるべき範囲を算出する。
そして、候補絞込部223は、第2画像において算出した範囲にマーカ部分の候補があるか否かを判定する。
【0094】
第2画像の該当範囲にマーカ部分の候補がない場合、第1画像におけるマーカ部分の候補は、実際にはマーカの像ではない可能性が高い。そこで、候補絞込部223は、第1画像における当該マーカ部分の候補を、候補から除外する。
一方、第2画像の該当範囲にマーカ部分の候補がある場合、第1画像におけるマーカ部分の候補は、実際にマーカの像である可能性が高い。そこで、候補絞込部223は、第1画像における当該マーカ部分の候補を、候補として残す。すなわち、当該マーカ部分の候補に対して特に処理を行わない。
【0095】
終了判定部230は、予め設定されたマーカの個数と、マーカ部分候補抽出部220が抽出したマーカ部分の候補の個数とを比較して、マーカ部分の検出を終了するか否かを判定(決定)する。
具体的には、終了判定部230は、患部付近に予め埋め込まれたマーカの個数(放射線画像に写るはずのマーカの個数)のユーザ入力を受けて予め記憶している。そして、終了判定部230は、マーカ部分候補抽出部220がマーカ部分の候補を抽出すると、当該マーカ部分の候補の個数と、予め記憶しているマーカの個数とを比較する。
【0096】
マーカ部分の候補の個数が、マーカの個数と同数以上の場合、終了判定部230は、マーカ部分の検出を終了すると判定する。
一方、マーカ部分の候補の個数が、マーカの個数よりも少ない場合、終了判定部230は、マーカ部分の検出を終了しないと判定する。この場合、上述したように、係数値設定部210が、推定散乱線係数の値を大きく設定し直し、マーカ部分候補抽出部220が、マーカ部分の候補の抽出を再度行う。
【0097】
次に、
図12を参照して、放射線画像解析装置21の動作について説明する。
図12は、放射線画像解析装置21が放射線画像におけるマーカ部分を検出する処理の手順を示すフローチャートである。放射線画像解析装置21は、例えば、センサアレイ361にて得られた放射線画像データと、センサアレイ362にて得られた放射線画像データとを取得すると、同図の処理を開始する。
【0098】
図12の処理において、まず、管球条件取得部112がX線管球条件を取得する(ステップS101)。具体的には、管球条件取得部112は、放射線画像を撮像した際の、撮像用放射線源341、342それぞれの、管電圧およびmAs値を取得する。
次に、輝度関係情報取得部130は、輝度関係情報として、マーカ部分検出用の判定閾値を設定する(ステップS102)。具体的には、輝度関係情報取得部130は、ステップS101で得られたX線管球条件に基づいて、マーカ部分検出用の判定閾値を、参照輝度と係数値設定部210の設定する推定散乱線係数値とを引数とする関数にて取得する。
そして、係数値設定部210は、推定散乱線係数値を「0」に初期設定し、設定した推定散乱線係数値を、輝度関係情報取得部130の設定した判定閾値に代入する(ステップS103)。
【0099】
次に、マーカ部分候補抽出部220は、撮像方向の各々について処理を行うループL11を開始する(ステップS111)。すなわち、ループL11では、センサアレイ361が受光した撮像用放射線に基づく放射線画像と、センサアレイ362が受光した撮像用放射線に基づく放射線画像との各々に対して処理を行う。
さらに、マーカ部分候補抽出部220は、放射線画像に含まれる画素の各々に対して処理を行うループL12を開始する(ステップS121)。
【0100】
そして、参照輝度取得部120が、ループL12において処理対象となっている画素に対する参照輝度を取得する(ステップS122)。具体的には、参照輝度取得部120は、マーカ部分の画素の候補の判定に際して、判定対象画素から所定の距離(例えば画素数)離れた画素の輝度を、判定対象画素の上下左右の4方向について比較し、最も大きい輝度を参照輝度として取得する。
【0101】
次に、候補画素判定部221が、ループL12において処理対象となっている画素について、当該画素がマーカ部分の画素の候補か否かの判定を行う(ステップS123)。
具体的には、候補画素判定部221は、ステップS102で輝度関係情報取得部130が設定し、ステップS103で係数値設定部210が推定散乱線係数値を代入した判定閾値の関数に、ステップS122で参照輝度取得部120が検出した参照輝度を代入して判定閾値を決定(設定)する。そして、候補画素判定部221は、ループL12において処理対象となっている画素の輝度が、判定閾値以下か否かを判定する。判定閾値以下であると判定した場合、候補画素判定部221は、当該画素がマーカ部分の画素の候補であると判定する。一方、処理対象となっている画素の輝度が判定閾値より大きいと判定した場合、候補画素判定部221は、当該画素がマーカ部分の画素の候補ではないと判定する。
【0102】
そして、マーカ部分候補抽出部220は、ループL11で処理対象となっている放射線画像の全ての画素についてループL12の処理を行ったか否かを判定する(ステップS124)。未だループL12の処理を行っていない画素があると判定した場合は、引き続き、未処理の画素に対してループL12の処理を行う。一方、全ての画素についてループL12の処理を行ったと判定した場合、ループL12を終了する。
【0103】
ループL12を終了すると、テンプレート適用部222がマーカ部分の候補の領域を抽出する(ステップS131)。例えば、テンプレート適用部222は、ループL11で処理対象となっている放射線画像に対して、
図10を参照して説明したテンプレートを適用して、当該テンプレートに適合する部分を全て抽出する。
【0104】
そして、マーカ部分候補抽出部220は、全ての撮像方向についてループL11の処理を行ったか否かを判定する(ステップS132)。未だ処理を行っていない撮像方向があると判定した場合は、引き続き、未処理の撮像方向に対してループL11の処理を行う。一方、全ての撮像方向についてループL11の処理を行ったと判定した場合、ループL11を終了する。
【0105】
ループL11を終了すると、候補絞込部223が、マーカ部分の候補の絞込を行う(ステップS141)。具体的には、
図11を参照して説明したように、候補絞込部223は、センサアレイ361にて得られた放射線画像と、センサアレイ362にて得られた放射線画像とについて、一方の画像におけるマーカ部分の候補について、他方の画像において対応するマーカ部分の候補があるか否かを判定する。そして、対応するマーカ部分の候補が無いと判定すると、候補絞込部223は、判定対象となっているマーカ部分の候補を候補から除外する。
【0106】
次に、終了判定部230は、マーカ部分候補抽出部220が抽出したマーカ部分の候補の数を計数し(ステップS142)、マーカ部分の候補の数が、予め記憶しているマーカ数と同数以上か否かを判定する(ステップS143)。マーカ部分の候補の数がマーカ数よりも少ないと判定した場合(ステップS143:NO)、係数値設定部210が、推定散乱線係数値を更新する(ステップS151)。具体的には、係数値設定部210は、推定散乱線係数の現在の値に、所定の増分値を加算する。その後、ステップS111へ戻る。
【0107】
一方、ステップS143において、マーカ部分の候補の数がマーカ数と同数以上であると判定した場合(ステップS143:YES)、検出結果出力部113が、マーカ部分検出部200の検出結果を出力する(ステップS161)。例えば、検出結果出力部113は、マーカ部分候補抽出部220が抽出したマーカ部分の候補を、マーカ部分検出部200の検出結果のマーカ部分として、各マーカ部分の座標情報を出力する。
ステップS161の後、
図12の処理を終了する。
【0108】
以上のように、輝度関係情報取得部130は、撮像用放射線源341や342が照射する放射線の放射量に関する情報に基づいて生成され、マーカ部分の輝度とマーカ以外の部分として想定された参照部分の輝度との関係を示す輝度関係情報を取得する。また、参照輝度取得部120は、マーカ以外の部分と想定される参照部分の輝度を取得する。そして、マーカ部分検出部200は、輝度関係情報取得部130が取得した輝度関係情報と、参照輝度取得部120が取得した参照部分の輝度とに基づいて、マーカ部分を検出する。
これにより、放射線画像解析装置21は、マーカ以外の部分の輝度を反映させた判定閾値を用いて、マーカ部分の検出を行うことができる。従って、放射線画像解析装置21は、マーカ候補部分の画像輝度と他の部分の画像輝度との差を、より正確に反映させることができ、マーカ部分をより高精度に検出することができる。
【0109】
また、輝度関係情報取得部130は、輝度関係情報として、放射線源の管電圧と管電流と照射時間とに基づいて設定され、参照部分の輝度に基づいてマーカ部分の輝度の判定閾値を示す関数を取得する。そして、マーカ部分検出部200は、輝度関係情報取得部130が取得した関数に、参照輝度取得部120が取得した参照部分の輝度を代入して得られる判定閾値に基づいて、当該判定閾値以下の輝度の部分を、マーカ部分として検出する。
このように、輝度関係情報取得部130が、放射線源の管電圧と管電流と照射時間とに基づく輝度関係情報を取得することで、例えば式(19)に示したように、検体における放射線の透過長を引数に含まない輝度関係情報を取得し得る。これにより、放射線画像解析装置21は、マーカ部分の検出を行う際に、透過長の情報を必要としない。従って、放射線画像解析装置21のユーザは、透過長(検体の厚さ)を測定する必要が無い。
【0110】
また、撮像用放射線源341と342とは、同時に放射線を照射して検体を複数方向にて同時撮像した放射線画像を取得し、輝度関係情報取得部130は、他の方向の撮像から混入する放射線の影響を示す係数を含む前記輝度関係情報を取得する。そして、マーカ数と同数以上のマーカ部分を検出するまで、係数値設定部210が推定散乱線係数値を徐々に大きくしながら、マーカ部分候補抽出部220がマーカ部分の候補を抽出する。
これにより、他の方向の撮像から混入する放射線の影響を受ける場合でも、放射線画像解析装置21は、マーカ以外の部分の輝度を反映させた判定閾値を用いて、マーカ部分の検出を行うことができる。従って、放射線画像解析装置21は、マーカ候補部分の画像輝度と他の部分の画像輝度との差を、より正確に反映させることができ、マーカ部分をより高精度に検出することができる。
【0111】
また、候補絞込部223は、複数方向にて同時撮像した放射線画像の1つである第1画像におけるマーカ部分の候補の位置に基づいて、他の方向にて撮像した放射線画像である第2画像においてマーカ部分の候補があるべき範囲を設定する。そして、候補絞込部223は、設定した範囲にマーカ部分の候補が無い場合、第1画像における前記マーカ部分の候補を候補から除外する。
このように、候補絞込部223が、複数の画像間の関係に基づいてマーカ部分の候補の絞込を行うことで、マーカ部分検出部200が行うマーカ部分の検出の精度をより高めることができる。
【0112】
また、候補画素判定部221は、放射線画像の画素毎に、輝度関係情報取得部130が取得した輝度関係情報と、参照輝度取得部120が取得した参照部分の輝度とに基づいて、マーカ部分の画素の候補か否かを判定する。そして、テンプレート適用部222は、マーカの領域とマーカ以外の領域とを含むテンプレートを、候補画素判定部221の判定結果に適用して、マーカ部分の候補を抽出する。これにより、マーカの形状や大きさをテンプレートに反映させることができ、マーカ部分検出部200が行うマーカ部分の検出の精度をより高めることができる。
【0113】
なお、本発明者は、実際の放射線治療に際して、本発明を用いてマーカ部分の検出を試みた。その結果、99.5%という高い精度でマーカ部分を検出することができた。また、検出したマーカの位置誤差についても、0.1ミリメートル(mm)〜0.2ミリメートルと、高い精度でマーカの位置を特定することができた。
【0114】
なお、以上では、放射線治療システムに本発明を適用する場合を例に説明したが、本発明の適用範囲は放射線治療システムに限らない。例えば、放射線画像解析装置21が、治療用放射線の照射を伴わない患部観察用システムに適用されていてもよい。
なお、候補絞込部223が行うマーカ部分の候補の絞込は、本発明において必須の要素ではない。従って、放射線画像解析装置21が候補絞込部223を具備していなくてもよい。
【0115】
また、テンプレート適用部222が使用するテンプレートは、
図10を参照して説明した、マーカ領域とマーカ以外の領域とを含むものに限らない。例えば、テンプレート適用部222が、マーカ領域のみを含んでマーカ以外の領域を含まないテンプレートを用いるようにしてもよい。
また、参照輝度取得部120が行う参照輝度の取得は、上述した判定対象画素の上下左右の4方向について輝度を比較する方法に限らない。例えば、参照輝度取得部120が、放射線画像においてマーカの像の含まれない領域を予め記憶しておき、当該領域において参照輝度を検出するようにしてもよい。
【0116】
なお、撮像用放射線源341と342とが同時に放射線を照射して検体を複数方向にて同時撮像する場合、撮像用放射線源341が照射する放射線と、撮像用放射線源342が照射する放射線とのなす角度は、典型的には直角であるが、これに限らず任意の角度とすることができる。また、撮像用放射線源の数は2つに限らず、3方向以上から同時に撮像するようにしてもよい。
【0117】
あるいは、1方向からの撮像においても、本発明を適用可能である。この場合、マーカ部分検出部200が、式(9)のように推定散乱線係数を含まない判定閾値を用いるようにしてもよい。この場合、放射線画像解析装置21が、係数値設定部210や終了判定部230を具備していなくてもよい。
あるいは、1方向からの撮像においても、複数方向にて同時撮像する場合と同様、マーカ部分検出部200(マーカ部分候補抽出部220)が、式(19)のように推定散乱線係数を含む閾値を用いるようにしてもよい。この場合、複数方向にて同時撮像する場合と同様、マーカ数と同数以上のマーカ部分を検出するまで、係数値設定部210が推定散乱線係数値を徐々に大きくしながら、マーカ部分候補抽出部220がマーカ部分の候補を抽出することで、マーカ部分を高精度に検出し得る。
【0118】
なお、放射線画像解析装置21が、マーカの位置を限定する情報を取得して、放射線画像においてマーカ部分を検出する領域を限定するようにしてもよい。例えば、放射線画像解析装置21のユーザがマーカの位置を予め登録しておき、放射線画像解析装置21が、登録されたマーカの位置から一定の範囲(例えば、患者の呼吸等によってマーカの移動が想定される範囲)のみにおいて、マーカ部分を検出するようにしてもよい。
【0119】
なお、放射線画像解析装置21の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0120】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。