(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286144
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】端部キャップ
(51)【国際特許分類】
E04F 15/02 20060101AFI20180215BHJP
E04F 19/02 20060101ALI20180215BHJP
E04C 2/30 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
E04F15/02 R
E04F19/02 K
E04C2/30 L
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-145071(P2013-145071)
(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公開番号】特開2015-17417(P2015-17417A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115934
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 雅也
(72)【発明者】
【氏名】輪湖 潤一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕之
【審査官】
西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−127060(JP,A)
【文献】
実開昭54−105118(JP,U)
【文献】
特開2009−091717(JP,A)
【文献】
特開平10−331262(JP,A)
【文献】
特開2013−079491(JP,A)
【文献】
特開2012−077459(JP,A)
【文献】
特開2011−069090(JP,A)
【文献】
実開昭52−005024(JP,U)
【文献】
実開昭59−096224(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/02
E04F 19/00
E04F 19/02
E04F 11/18
E04F 10/08
E04F 13/04
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木粉とプラスチックの複合材からなり、
長手方向の端面が開口する中空部材の前記端面と略同形状に構成された板状本体と、前記板状本体に立設され前記中空部材の中空部内に挿入される複数の突起部とを備えた、前記開口を覆う端部キャップであって、
前記複数の突起部は、
前記中空部材の対向する内壁面に密着可能に設けられた薄板状に構成され、前記内壁面に対向する主面にキャップの挿入方向に対し交差する方向に延びるリブ状の接着剤案内突起と、
板状本体から遠位側の面が傾斜面となる鋸歯状に構成され、前記突起部の端縁に設けられたリブを有することを特徴とする、端部キャップ。
【請求項2】
前記接着剤案内突起は、前記主面に複数設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の端部キャップ。
【請求項3】
前記接着剤案内突起は、中空部材幅方向の長さにおいて、板状本体に対して遠位側が近位側よりも短く構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の端部キャップ。
【請求項4】
前記突起部は、前記板状本体に近接した位置に水抜き孔が設けられ、前記水抜き孔が設けられている近傍位置の板状本体に周縁部まで伸びる水抜き溝が設けられていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1つに記載の端部キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向の端面が開口する中空部材の開口を覆う端部キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場や工場などから排出される木材及びプラスチックを粉砕して加熱混合した材料を押出成形にて成形した中空部材が手すりやルーバー等の建設部材として使用されている。
【0003】
上記中空部材が使用される建造物では、見栄えを良くするため、中空部材の端面を端部キャップで塞いで中空部が見えないようにすることが行われている。この端部キャップとしては、例えば、特許文献1(特開2012−127060号公報)等に開示されている。
【0004】
この端部キャップは、特許文献1の
図1及び
図2に記載されているように、中空部材の端面に沿った形状で構成され、一部を厚み方向に切り欠いた段差部を有する板状体の裏面に、中空部材内に挿入されて位置決め又は脱落防止のための突起部が並設されている。施工時は、板状体の裏面の凹部及び仕切り壁の当接位置に接着剤を塗布し、中空部材の端面に板状体を貼着して接着剤が硬化するまで仮止めする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−127060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記構成の端部キャップでは、端部キャップと中空部材との接着部分は中空部材の端面のみであって、接着面の面積が小さく、また、接着剤が硬化するまで仮止めのためにテープなどで中空部材と端部キャップとを固定しておく必要がある。
【0007】
また、突起部は、高さ寸法が中空部材の内腔の高さ寸法に合わせて形成されているため、部材の高さ方向の位置決めは容易であるが、幅方向の位置決めは難易度が高い。
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、容易に決められた位置に取り付けができると共に、十分な接着強度を有し脱落しにくい中空部材の端部キャップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の端部キャップを提供する。
【0010】
本発明の第1態様によれば、木粉とプラスチックの複合材からなり、
長手方向の端面が開口する中空部材の前記端面と略同形状に構成された板状本体と、前記板状本体に立設され前記中空部材の中空部内に挿入される複数の突起部とを備えた、前記開口を覆う端部キャップであって、
前記複数の突起部は、
前記中空部材の対向する内壁面に密着可能に設けられた薄板状に構成され、前記内壁面に対向する主面にキャップの挿入方向に対し交差する方向に延びるリブ状の接着剤案内突起と、
板状本体から遠位側の面が傾斜面となる鋸歯状に構成され、前記突起部の端縁に設けられたリブを有することを特徴とする、端部キャップを提供する。
【0011】
本発明の第2態様によれば、前記接着剤案内突起は、前記主面に複数設けられていることを特徴とする、第1態様の端部キャップを提供する。
【0012】
本発明の第3態様によれば、前記接着剤案内突起は、中空部材幅方向の長さにおいて、板状本体に対して遠位側が近位側よりも短く構成されていることを特徴とする、第2態様の端部キャップを提供する。
【0013】
本発明の第4態様によれば、前記突起部は、前記板状本体に近接した位置に水抜き孔が設けられ、前記水抜き孔が設けられている近傍位置の板状本体に周縁部まで伸びる水抜き溝が設けられていることを特徴とする、第1から第3態様のいずれか1つの端部キャップを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、板状本体に立設された突起部の主面に接着剤案内突起を設けることで、当該突起部の内壁面に対向する主面に接着剤を塗布して中空部材に端部キャップを取り付ける場合に主面に広く接着剤を行き渡らせることができる。このため、接着面積を大きくすることができ、さらに、突起部が中空部材の対向する内壁面に密着するため、中空部材への施工時にしっかりと固定することができ、仮止めが不要である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態にかかる端部キャップ及び当該端部キャップが使用される中空部材の斜視図である。
【
図2】
図1の端部キャップの他の方向から見た斜視図である。
【
図6】本発明の他の実施形態にかかる端部キャップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る中空部材の端部キャップについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、端部キャップの板状本体の表裏に関して、中空部材の端面に接する面を「裏面」、その反対側の面を「表面」という。
【0017】
図1は、本発明の実施形態にかかる中空部材の端部キャップの構成を示す斜視図である。
図2は、
図1の端部キャップの他の方向から見た斜視図である。
【0018】
端部キャップ1は、木粉とプラスチックの複合材を射出成形により成形したものであって、中空部材50の長手方向の開口する端面51を被覆する略矩形状の板状本体2と、板状本体2の裏面3から突出し、中空部材50の内腔52に挿入される複数の突起部4とを備えている。
【0019】
矩形状の断面を有する中空部材50は、木粉とプラスチックの複合材を押出成形にて成形したものが用いられる。本実施形態においては、中空部材50は、金属製の芯部材53の表面に木粉とプラスチックの複合材を被覆した外装部54から構成されており、金属製の芯部材53を押出成形機に挿入して表面に外装部54を被覆させることで製造される。なお、芯部材を構成する金属と外装部54を構成する複合材との接着力を高めるため、両者間に接着層(図示なし)を設けてもよい。接着層は外装部54の成形時に、例えば2色成形等の方法を用いることにより容易に製造することができる。
【0020】
芯部材53は、長手方向に延在する3枚の仕切り壁55により、4つの内腔52を画定している。芯部材を構成する金属としては、アルミニウム、スチール、ステンレスなど各種金属を用いることができるが、本実施形態では、高強度と軽量である点でアルミニウムが用いられている。
【0021】
外装部54は、端部キャップ1と同じ木粉とプラスチックの複合材が用いられている。木粉は木材を粒径数百μm程度にまで粉砕したものであり、プラスチックは、例えば、塩化ビニル樹脂、発泡塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂が用いられるが、中でも塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂が好適である。また、木粉の添加量は、10〜70重量%程度、好ましくは15重量%〜50重量%、さらに好ましくは、20〜40重量%とすることができる。
【0022】
板状本体2の裏面3に設けられている複数の突起部4は、裏面の上下位置に4組配置された薄板状に構成されている。それぞれの突起部の間は、芯部材53の仕切り壁55に対応して切り欠き5が設けられている。中央の間隙部分は板状本体のたわみ防止及び突起部4を補強する補強壁7が設けられている。
【0023】
突起部4は、
図3に示すように、中空部材50の内腔52の厚み方向に対向する内壁面間の間隔(すなわち、内腔52の厚み方向寸法)とほぼ同じ又はわずかに長くなるような所定の間隔をもって配置されており、突起部4は中空部材50に取り付けられたとき、若干たわむことによって中空部材50の内腔52の厚み方向に対向する内壁面52aに密着するように構成されている。このため、突起部4の内壁面52aに対する非対向面側には、施工時のたわみによる突起部4の破損を防止する補強部材8が設けられている。
【0024】
突起部4の端縁には、内腔52の内壁面側に凸になるように構成されたリブ9、10が設けられている。リブ9,10は、それぞれ板状本体2から遠位側の面9a,10aが傾斜面となる鋸歯状に構成されており、内腔52に挿入しやすく脱落しにくいように構成されている。リブ9は厚み方向の内壁面52aに当接するように突起部の主面に対して直角方向に凸に構成されており、リブ10は幅方向の内壁面52bに当接するように突起部の主面に沿った方向に凸に構成されている。
【0025】
また、突起部4の内壁面に対向する主面6は接着剤塗布面として機能し、中空部材50と端部キャップ1との接着面となる。主面6には2つのリブ状の接着剤用ガイド11,12が設けられている。接着剤用ガイド11,12は、本発明の接着剤案内突起に相当するものであり、施工時に中空部材50に挿入されたときに、接着剤をガイドの端方向へ押し出して、突起部4の主面6全体に広く案内するためのものである。板状本体2に対して遠位側の接着剤用ガイド11は、近位側のガイド12より中空部材幅方向の長さが短くなるように構成されており、矢印90,91に示すように、端部キャップ1の挿入に応じて主面6のより広い領域に接着剤を回り込ませることができる。なお、接着剤としては、接着させる材料に応じてより強い接着力を発揮できるものを用いることが好ましく、例えば、アクリル樹脂系のものなどが好適に使用される。
【0026】
図2及び
図4に示すように、一部の突起部4は、板状本体2に近接した位置に水抜き孔13が設けられている。水抜き孔13は、中空部材50の内腔52に溜まった水を外部に排出するためのものであり、突起部4の厚み方向に貫通している。本実施形態では、水抜き孔13は、中央の2つの突起部4の端部にのみ設けられているが、すべての突起部に設けてもよく、また、突起部4の中央位置に設けてもよい。
【0027】
また、板状本体2は、水抜き孔が設けられている近傍位置に、周縁部まで伸びる水抜き溝14を有している。水抜き溝14は、水抜き孔13に連通しており、突起部4の水抜き孔13を通って、突起部の主面側に流入した水を内腔52の外部に排出する。
【0028】
また、板状本体2には、補強壁7の側方から周縁まで横方向に伸びる横溝15が設けられており、内腔52と連通する間隙を形成して中空部材50の側面側から水を排出する。
【0029】
端部キャップ1は、前記の通り、射出成形によって製造されており、加熱溶融した材料を金型内に射出注入し、冷却固化させることによって成形品を得る。さらに、表面を木材のように装飾するため、板状本体2の表面側をサンドペーパー処理し、粗面とすることで木材のような外見となる。
【0030】
端部キャップ1を中空部材50に取り付けるには、端部キャップ1の突起部4の主面6先端側に接着剤を塗布し、突起部4を中空部材50の内腔52に挿入するようにして端部キャップ1を貼着する。このとき、主面6に設けられた接着剤は、中空部材の内壁面52aによって板状本体2側へ引き延ばされるが、主面6に設けられた2つの接着剤用ガイド11,12により、突起部4の横方向に送り込まれ、主面6に広く案内される。また、板状本体2に対して近位側の接着剤用ガイド12は、中空部材幅方向の長さが長く構成されているため、当該ガイド12の奥側に送り込まれる量を少なくすることができ、水抜き孔13を接着剤で塞ぐことがないように構成されている。
【0031】
また、上下に対になっている4つの突起部は、内腔52の内壁面52aに密着するように構成されているため、端部キャップを中空部材にしっかりと固定することができ、接着剤が硬化するまで仮止めする必要がない。
【0032】
以上説明したように、本実施形態にかかる端部キャップによれば、板状本体に立設された突起部の主面に接着剤用ガイド11,12を設けることで、当該突起部の内壁面に対向する主面に接着剤を塗布して中空部材に端部キャップを取り付ける場合に主面に広く接着剤を行き渡らせることができる。このため、接着面積を大きくすることができ、さらに、突起部が中空部材の対向する内壁面に密着するため、中空部材への施工時にしっかりと固定することができ、仮止めが不要である。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記の実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、板状本体の形状を矩形としているが、中空部材の端面形状に応じた形状とすることができる。
【0034】
また、
図6に示すように、板状本体の形状に応じて、突起部の設置枚数などは適宜変更することができる。さらに、接着剤用ガイド11,12の形状及び設置個数などは適宜変更することが可能であり、たとえば、端部キャップの挿入時に端部側へ接着剤を送りやすくするために、くの字型に構成することも可能である。
【符号の説明】
【0035】
1,20 端部キャップ
2 板状本体
3 裏面
4 突起部
5 切り欠き
6 主面
7 補強壁
8 補強部材
9,10 リブ
9a,10a 遠位面
11,12 接着剤用ガイド(接着剤案内突起)
13 水抜き孔
14 水抜き溝
15 横溝
50 中空部材
51 端面
52 内腔
52a,52b 内壁面
53 芯部材
54 外装部
55 仕切り壁