(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286147
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/22 20060101AFI20180215BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
B60C9/22 D
B60C5/00 H
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-156596(P2013-156596)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-24778(P2015-24778A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡一
【審査官】
細井 龍史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−278409(JP,A)
【文献】
特開2008−006890(JP,A)
【文献】
特開2006−248391(JP,A)
【文献】
特開平03−096406(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/066766(WO,A1)
【文献】
特開2009−090920(JP,A)
【文献】
特開2009−029235(JP,A)
【文献】
特開平04−039104(JP,A)
【文献】
特開2006−168595(JP,A)
【文献】
特開2009−184562(JP,A)
【文献】
特開2002−137606(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第02139575(GB,A)
【文献】
特開2006−143821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部の間に設けられたトロイド状のカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配設されたベルト層と、前記ベルト層のタイヤ径方向外側にて前記ベルト層の両端部を覆うように配設された第1繊維補強層とを備える空気入りタイヤにおいて、
タイヤ装着時に車両内側に位置する一方側のショルダー部における前記第1繊維補強層と前記ベルト層との間にのみ補強ゴム層が配設され、車両外側に位置する他方側のショルダー部における前記第1繊維補強層のタイヤ径方向外側又は内側に隣接して第2繊維補強層が配設されており、
前記ベルト層は、平行に配列された複数のベルトコードが両側からベルトトッピングゴムで被覆されており、かつ前記第1繊維補強層は、平行に配列された複数の補強コードが両側から補強トッピングゴムで被覆されており、
前記補強ゴム層を構成するゴムの剥離強度(JIS K−6256−2に準じて測定)は、前記ベルト層の前記ベルトトッピングゴム及び前記第1繊維補強層の前記補強トッピングゴムの剥離強度(JIS K−6256−2に準じて測定)より高いことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記補強ゴム層の幅は、タイヤ赤道を基準とした前記第1繊維補強層の半幅の1/3以下であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第2繊維補強層の幅は、タイヤ赤道を基準とした前記第1繊維補強層の半幅の1/3以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第2繊維補強層のエンド数は、前記第1繊維補強層のエンド数以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のビード部の間に設けられたカーカス層と、カーカス層のタイヤ径方向外側に配設されたベルト層と、ベルト層のタイヤ径方向外側にてベルト層の両端部を覆うように配設された繊維補強層とを備える空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トレッド部におけるベルト層のタイヤ径方向外側に繊維補強層を配設した空気入りタイヤが知られている。かかる繊維補強層としては、ナイロンやアラミドなどの有機繊維コードを実質的にタイヤ周方向に巻回して形成されたものが一般的である。
【0003】
繊維補強層は、ベルト層の全幅を覆うように配設される場合、又はベルト層の両端部のみを覆うように配設される場合があるが、操縦安定性と耐久性の向上を目的として、少なくともベルト層の両端部を覆うように配設される。
【0004】
下記特許文献1には、高速域の操縦安定性の向上とフラットスポット効果の抑制を目的として、車両内側に位置するショルダー部に繊維補強層を配置した空気入りタイヤが記載されている。しかし、車両内側のショルダー部にのみ繊維補強層を配置しているため、高荷重域での操縦安定性と車両外側での高速耐久性が悪化する。
【0005】
また、下記特許文献2には、乗り心地を悪化させることなく、ショルダー部における偏摩耗を防止する目的で、車両外側に位置するショルダー部にのみ繊維補強層を配置した空気入りタイヤが記載されている。しかし、車両外側のショルダー部にのみ繊維補強層を配置しているため、車両内側での高速耐久性が悪化する。
【0006】
また、下記特許文献3には、高荷重域でのベルト耐久性を向上させる目的で、繊維補強層とベルト層の両端部との間にそれぞれベルト層の端末を覆うゴムストリップを挿入した空気入りタイヤが記載されている。しかし、両側のショルダー部において、繊維補強層とベルト層の間にゴムストリップを配置しているため、操縦安定性が悪化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−96406号公報
【特許文献2】特開平11−321231号公報
【特許文献3】特開2008−6890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、操縦安定性と耐久性を両立させた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明に係る空気入りタイヤは、
一対のビード部の間に設けられたトロイド状のカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配設されたベルト層と、前記ベルト層のタイヤ径方向外側にて前記ベルト層の両端部を覆うように配設された第1繊維補強層とを備える空気入りタイヤにおいて、
タイヤ装着時に車両内側に位置する一方側のショルダー部における前記第1繊維補強層と前記ベルト層との間に補強ゴム層が配設され、車両外側に位置する他方側のショルダー部における前記第1繊維補強層のタイヤ径方向外側又は内側に隣接して第2繊維補強層が配設されており、
前記補強ゴム層の剥離強度は、前記ベルト層及び前記第1繊維補強層の剥離強度より高いことを特徴とする。
【0010】
かかる構成による空気入りタイヤの作用効果を説明する。本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ装着時に車両内側に位置する一方側のショルダー部において、第1繊維補強層とベルト層との間に、ベルト層及び第1繊維補強層より剥離強度が高い(剥離しにくい)補強ゴム層を配設しているため、車両内側のショルダー部でのセパレーションを抑制し、耐久性を向上させることができる。また、タイヤ装着時に車両外側に位置する他方側のショルダー部において、第1繊維補強層のタイヤ径方向外側又は内側に隣接して第2繊維補強層を配設しているため、特に高負荷領域での操縦安定性を向上することができる。その結果、本発明の空気入りタイヤは、操縦安定性と耐久性を両立することができる。
【0011】
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記補強ゴム層の幅は、タイヤ赤道を基準とした前記第1繊維補強層の半幅の1/3以下であることが好ましい。
【0012】
タイヤ全幅に対して補強ゴム層の幅が大きくなり過ぎると操縦安定性が悪化するが、補強ゴム層の幅がこの範囲であれば、操縦安定性を悪化させることなく、操縦安定性と耐久性を良好に両立することができる。
【0013】
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記第2繊維補強層の幅は、タイヤ赤道を基準とした前記第1繊維補強層の半幅の1/3以下であることが好ましい。
【0014】
タイヤ全幅に対して第2繊維補強層の幅が大きくなり過ぎると、車両内側と車両外側の接地圧差が大きくなり操縦安定性が悪化するが、第2繊維補強層の幅がこの範囲であれば、操縦安定性を悪化させることなく、操縦安定性及び耐久性を良好に両立することができる。
【0015】
本発明に係る空気入りタイヤにおいて、前記第2繊維補強層のエンド数は、前記第1繊維補強層のエンド数以上であることが好ましい。
【0016】
車両外側のショルダー部に配設される第2繊維補強層のエンド数を大きくすることにより、操縦安定性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線半断面図
【
図3】別実施形態に係るトレッド部を模式的に示す断面図
【
図4】別実施形態に係るトレッド部を模式的に示す断面図
【
図5】別実施形態に係るトレッド部を模式的に示す断面図
【
図6】別実施形態に係るトレッド部を模式的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る空気入りタイヤの一例を概略的に示すタイヤ子午線断面図であり、CLはタイヤ赤道を表している。
図2は、そのタイヤのトレッド部を模式的に示す断面図であるが、図中のコードは概念的に記載されており、実際の配列ピッチはもっと密なものとなる。
【0019】
空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、そのビード部1からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、そのサイドウォール部2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部3と、一対のビード部1の間に設けられたトロイド状のカーカス層4と、そのカーカス層4のタイヤ径方向外側に配設されたベルト層5と、そのベルト層5のタイヤ径方向外側にてベルト層5の両端部5a,5bを覆うように配設された第1繊維補強層6とを備える空気入りタイヤである。
【0020】
一対のビード部1には、それぞれ環状のビードコア1aと、そのビードコア1aのタイヤ径方向外側に配された硬質ゴムからなるビードフィラー1bとが設けられている。カーカス層4は、タイヤ周方向に対して略直交する方向に延びるカーカスコードを配列してなるカーカスプライにより構成され、その両端部がビードコア1aとビードフィラー1bを挟み込むようにして折り返されている。カーカスコードには、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、アラミド等の有機繊維やスチール繊維が好ましく用いられる。
【0021】
ベルト層5は、タイヤ周方向に対して傾斜して延びるベルトコード5Cを配列してなる複層の(本実施形態では2層の)ベルトプライ51,52により構成され、各ベルトプライ51,52は、ベルトコード5Cが互いに逆向きに交差するように積層されている。本実施形態では、ベルトプライ51のタイヤ幅方向の幅は、ベルトプライ52よりも広くなっている。本発明におけるベルト層5の両端部5a,5bとは、ベルト層5を構成する複数のベルトプライのうち最大幅のベルトプライの両端部のことであり、本実施形態ではベルトプライ51の両端部のことである。ベルトプライ51,52は、平行に配列した複数のベルトコード5Cを両側からベルトトッピングゴムで被覆して成形される。ベルトコード5Cには、上述した有機繊維を採用しうるが、周方向剛性を高めるうえでスチール繊維が好ましい。
【0022】
第1繊維補強層6は、タイヤ周方向に実質的に平行に延びる複数本の補強コード6Cを有する。第1繊維補強層6は、ベルト層5の両端部5a,5bも含めたベルト層5の全体を覆っている。第1繊維補強層6は、補強コード6Cを引き揃えて補強トッピングゴムで被覆された帯状部材を、成形ドラムにスパイラル状に巻き付けて成形される。補強コード6Cとしては、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、アラミド等の有機繊維が好ましく用いられる。
【0023】
本発明の空気入りタイヤTのトレッド面には、タイヤ周方向に沿って延びる少なくとも2本の主溝31,32が形成されている。本発明では、タイヤ幅方向の最外側に位置する主溝31,32よりもタイヤ幅方向外側であって、接地端E1,E2よりもタイヤ幅方向内側の領域をショルダー部S1,S2とする。なお、接地端E1,E2は、正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接触する接地面のタイヤ軸方向の最外位置を指す。
【0024】
本発明の空気入りタイヤTは、装着方向指定型のタイヤであり、車両に装着する際には、アウト側領域OUTを車両の外側、イン側領域INを車両の内側に向けるように指定されている。車両に対する装着方向の指定は、例えばタイヤのサイドウォール部2に車両内側或いは車両外側となる旨の表示を付すことにより行われる。
【0025】
本発明の空気入りタイヤTでは、タイヤ装着時に車両内側に位置する一方側のショルダー部S1における第1繊維補強層6とベルト層5との間に補強ゴム層7が配設され、車両外側に位置する他方側のショルダー部S2における第1繊維補強層6のタイヤ径方向外側又は内側に隣接して第2繊維補強層8が配設されている。本実施形態では、第2繊維補強層8が第1繊維補強層6のタイヤ径方向外側に隣接して配設されている例を示す。
【0026】
本発明に係る空気入りタイヤTは、タイヤ装着時に車両内側に位置する一方側のショルダー部S1において、第1繊維補強層6とベルト層5との間に、ベルト層5及び第1繊維補強層6より剥離強度が高い補強ゴム層7を配設しているため、車両内側のショルダー部S1でのセパレーションを抑制し、耐久性を向上させることができる。さらに、タイヤ装着時に車両外側に位置する他方側のショルダー部S2において、第1繊維補強層6のタイヤ径方向外側又は内側に隣接して第2繊維補強層8を配設しているため、特に高負荷領域での操縦安定性を向上することができる。また、本発明の空気入りタイヤTは、ネガティブキャンバーが付いた状態にて車両に装着される場合に特に有用である。
【0027】
補強ゴム層7は、テープ状或いはシート状のゴムで構成されている。補強ゴム層7は、その剥離強度がベルト層5及び第1繊維補強層6の剥離強度より高くなっている。補強ゴム層7の剥離強度が、ベルト層5及び第1繊維補強層6の剥離強度より高いため、ショルダー部S1におけるベルト層5と第1繊維補強層6との間のセパレーションを抑制することができる。
【0028】
本発明の剥離強度とは、JIS K−6256−2に準じて測定した値であり、剥離強度の値が大きいほど剥離しにくいことを示す。また、補強ゴム層7はゴムのみで構成されるため、補強ゴム層7の剥離強度は、構成するゴムの剥離強度のことである。同様に、上述のようにベルト層5と第1繊維補強層6は、コードをトッピングゴムで被覆して構成されるため、ベルト層5と第1繊維補強層6の剥離強度は、それぞれのトッピングゴムの剥離強度のことである。
【0029】
耐久性の向上の観点から、補強ゴム層7のタイヤ幅方向外側端と第1繊維補強層6のタイヤ幅方向外側端は±3mmの領域にあることが好ましく、一致していることがより好ましい。補強ゴム層7の幅D2は、耐久性の向上の観点から、少なくともショルダー部S1の幅以上であることが好ましい。また、補強ゴム層7の幅D2は、タイヤ赤道CLを基準とした第1繊維補強層6の半幅D1の1/3以下であることが好ましく、1/4以下であることがより好ましい。補強ゴム層7の幅D2が第1繊維補強層6の半幅D1の1/3より大きいと、補強ゴム層7のタイヤ全体に対する割合が大きくなり、コーナリングパワーの低下、ひいては操縦安定性の悪化を招く。
【0030】
第2繊維補強層8は、タイヤ周方向に実質的に平行に延びる複数本の補強コード8Cを有する。本実施形態の第2繊維補強層8は、第1繊維補強層6と略同じ構造をしている。
【0031】
耐久性の向上の観点から、第2繊維補強層8のタイヤ幅方向外側端と第1繊維補強層6のタイヤ幅方向外側端は±3mmの領域にあることが好ましく、一致していることがより好ましい。第2繊維補強層8の幅D3は、高負荷領域での操縦安定性の向上の観点から、少なくともショルダー部S2の幅以上であることが好ましい。また、第2繊維補強層8の幅D3は、タイヤ赤道CLを基準とした第1繊維補強層6の半幅D1の1/3以下であることが好ましく、1/4以下であることがより好ましい。第2繊維補強層8の幅D3が第1繊維補強層6の半幅D1の1/3より大きいと、補強ゴム層7の幅D2との差が大きくなって接地圧分散が悪化するため、操縦安定性が悪化する。
【0032】
ショルダー部S2の接地端E2におけるタイヤ厚みは、ショルダー部S1の接地端E1におけるタイヤ厚みの85〜115%が好ましく、90〜110%がより好ましい。これにより、接地圧分散の悪化を抑制することができる。接地端E1におけるタイヤ厚みと接地端E2におけるタイヤ厚みを可能な限り等しくする観点から、第2繊維補強層8の厚みは補強ゴム層7の厚みの85〜115%が好ましく、90〜110%がより好ましい。また、接地端E1におけるタイヤ厚みと接地端E2におけるタイヤ厚みを可能な限り等しくする観点から、本発明のように、接地端E1における積層数と接地端E2における積層数を等しくすることが好ましい。
【0033】
本発明の空気入りタイヤは、上記の如き補強ゴム層7と第2繊維補強層8を設けること以外は、通常の空気入りタイヤと同等であり、従来公知の材料、形状、構造などが何れも本発明に採用できる。
【0034】
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、第1繊維補強層6がベルト層5の全幅を覆うように配設されているが、
図3に示すように、第1繊維補強層6は、ベルト層5の両端部5a,5bのみを覆うように配設してもよい。
【0035】
(2)前述の実施形態では、第2繊維補強層8を第1繊維補強層6と分離して示されているが、
図4のように、1枚の繊維補強層を折り返して重ねることで第2繊維補強層8と第1繊維補強層6を一体に構成しても構わない。
【0036】
(3)第2繊維補強層8は、1枚だけではなく複数枚重ねて配設されてもよい。この際、接地圧分散の悪化を抑制する観点から、
図5に示すように、ショルダー部S2のみならずショルダー部S1にも第2繊維補強層8を追加するのが好ましい。両側のショルダー部S1,S2に第2繊維補強層8を追加することで、耐久性及び操縦安定性をより向上させることができる。
【0037】
(4)前述の実施形態では、第2繊維補強層8を第1繊維補強層6と略同じ構造としているが、
図6に示すように、第2繊維補強層8のエンド数(単位幅あたりのコード本数)は、第1繊維補強層6のエンド数以上であることが好ましい。車両外側のショルダー部S2に配設される第2繊維補強層8のエンド数を大きくすることにより、操縦安定性をより向上させることができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例について説明する。タイヤの各性能評価は、次のようにして行った。試験に供したタイヤのサイズは225/40R18であり、JATMA規定のリムサイズのリムに装着した。
【0039】
(1)高速耐久性
タイヤに最大負荷能力時の荷重を負荷し、キャンバー角を2°付けた状態で10分ごとに速度を10km/hずつ上げていき(室温35℃)、ベルト端の周辺でセパレーションによる故障が発生したときの速度を測定した。従来例の結果を100として指数評価し、数値が大きいほど高速耐久性に優れていることを示す。
【0040】
(2)操縦安定性
2名のドライバーにより、乾燥路面における直進安定性、レーンチェンジ性、コーナリング性などを官能評価した。従来例の結果を4として指数評価し、数値が大きいほど操縦安定性に優れていることを示す。
【0041】
従来例では、両側のショルダー部にそれぞれ第2繊維補強層を配置し、本発明に係る補強ゴム層を設けなかった。実施例1は、従来例に対し、車両内側のショルダー部に第2繊維補強層に代えて補強ゴム層を配置した(
図2参照)。実施例2は、実施例1に対し、両側に第2繊維補強層をさらに配置した(
図5参照)。実施例3は、実施例1に対し、第2繊維補強層のエンド数を大きくした(
図6参照)。比較例1は、実施例1に対し、補強ゴム層と第2繊維補強層を逆に配置した。比較例2は、実施例1に対し、補強ゴム層の剥離強度を低くした。比較例3は、実施例1に対し、補強ゴム層の幅を広くした。比較例4は、実施例1に対し、第2繊維補強層を配置しなかった。
【0042】
実施例等の各構成を評価結果とともに表1に示す。表1において、補強ゴム層の剥離強度は、JIS K−6256−2に準じて、試験片を作成して剥離試験を行なって測定された値であり、ベルト層と第1繊維補強層の剥離強度を100としたときの指数で示している。表1において、補強ゴム層の配置が「In」とは、タイヤ装着時に車両内側に位置するショルダー部に補強ゴム層を配置したことを示し、「Out」とは、タイヤ装着時に車両外側に位置するショルダー部に補強ゴム層を配置したことを示している。表1において、補強ゴム層の幅(D2)は、第1繊維補強層の半幅(D1)を100としたときの割合で示している。第2繊維補強層の配置と幅(D3)については補強ゴム層の配置と幅(D2)と同様である。第1繊維補強層及び第2繊維補強層のエンド数は、補強コードの幅方向1インチ当たりのコード本数である。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例1〜3は、従来例及び比較例に比べ、耐久性及び操縦安定性を良好に両立できた。
【符号の説明】
【0045】
1 ビード部
4 カーカス層
5 ベルト層
6 第1繊維補強層
7 補強ゴム層
8 第2繊維補強層
S1 タイヤ装着時に車両内側に位置するショルダー部
S2 タイヤ装着時に車両外側に位置するショルダー部
D1 第1繊維補強層の半幅
D2 補強ゴム層の幅
D3 第2繊維補強層の幅