(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本記載は、本開示の原理を指し示すものである。従って、明示的な開示や図示がなくても、当業者が、本開示並びにその精神及び範囲内に含まれる原理を実施した種々の変形を考案することが可能であろうことは、玩味されるであろう。
【0018】
ここに記載された全ての例示や条件的な言葉は、技術を進展するために本件発明者によって寄与された本開示の原理や概念を理解する上で読者を支援するための教育学的な目的を意図するものであり、そのように詳細に記述された例や条件に限定されることなく解釈されるべきである。
【0019】
さらに、本開示の原理、側面、及び実施形態を記載している全ての説明は、これらの特定の例示と同様に、構造上及び機能上、均等なものを含むことが意図されている。加えて、そのような均等物は、現在知られている均等物と、これと同様に将来開発される均等物の双方、すなわち、構造如何に拘わらず、同じ機能を奏するあらゆる要素を含むことが意図されている。
【0020】
図1は、ラウドスピーカドライバ10の一実施形態の側面図である。本開示の種々の実施態様によれば、ラウドスピーカドライバ10は、孔14又は開口を有するフレーム12を具備している。フレーム12は、ラウドスピーカドライバ10の内部構成品、特に音を生成する構成品を囲繞し、保護するので、孔14は、種々の方向に音波が逃れることを許容する。この場合において、本開示に記載されたラウドスピーカドライバ10は、全方向スピーカとすることもできる。図示のように、フレーム12は、例えば、円錐台部のような、二つの対称セクション13、15を具備していてもよい。これら二つのセクション13、15は、図示のように、バリア21に沿って、それぞれの広角端17、19を互いに臨ませて接合させるように配置されていてもよい。他の実施形態では、フレーム12は、他のあらゆる好適な形状を含んでいてもよい。また、フレーム12は、寸法上の制限、及び/又は望まれる周波数特性に基づいて、好適なサイズに構成される。ラウドスピーカドライバ10は、また、第1磁石アセンブリ16と第2磁石アセンブリ18とを含む。各磁石アセンブリ16及び18は、磁場を生成するための永久磁石を少なくとも一つ含んでいてもよい。第1及び第2磁石アセンブリ16及び18によって生成される磁場は、そのN極にS極が向かう(引き合う)ように配置されていてもよく、或いは、別の実施形態では、磁場は、そのN極とS極とが反対向きになる(反発し合う)ように配置されていてもよい。
【0021】
図2は、
図1のラウドスピーカドライバ10の破断図である。本開示の種々の実施態様によれば、ラウドスピーカドライバ10は、さらに、振動板20又は他の形式の膜を具備している。振動板20は、あらゆる好適な材質を具備していることに着目すべきである。振動板20は、図示のように、平らで実質的に縦置きにしてもよい。振動板20は、サスペンション22によって、フレーム12に接続されていてもよい。いくつかの実施形態において、サスペンション22は、省略してもよく、その代わり振動板20は、直接フレーム12に接続されていてもよい。サスペンション22は、種々の実施形態に存在するとき、振動板20の外縁を囲繞するリングサスペンションであってもよい。サスペンション22は、振動板20を適切に保持し、音波を生成する目的のため、振動板20が振動することを許容する。従来のコーン形状の膜の代わりに、実質的に平らな振動板20の固有の構成のため、サスペンション22は、「スパイダ」サスペンション要素のような付加的なサスペンション機構を必要とすることなく、充分に振動板20を支持し得ることに、着目すべきである。
【0022】
ラウドスピーカドライバ10は、また、接続チューブ24を備えている。接続チューブ24は、第1磁石アセンブリ16から第2磁石アセンブリ18へ延びている。接続チューブ24は、紙、アルミニウム、樹脂等のような材質で作られていてもよい。いくつかの実施形態では、接続チューブ24は、中空の端部を含んでいてもよい。このようにして、接続チューブ24は、各磁石アセンブリ16、18からそれぞれ突出するポスト25、27によって適切に保持される。接続チューブ24は、ポスト25、27に沿って摺動するように構成されていてもよい。ポストの側部と接続チューブ24の内側には、中空端にエアポケットが形成されるのを防止するスリットが形成されていてもよい。
【0023】
接続チューブ24が、例えば、接続部材、中実のシリンダ部材、ロッド等、他の形状とされてもよいことが玩味されるべきである。
【0024】
接続チューブ24は、振動板20の孔に挿通されている。いくつかの実施形態において、接続チューブ24の半分が振動板20の一方の側に位置決めされ、他の半分が他方の側に位置決めされていてもよい。また、接続チューブ24は、その軸が振動板20の平面に対して直角になるように構成されていてもよい。加えて、接続チューブ24は、振動板20の中心を挿通又は交差していてもよい。接続チューブ24は、また、振動板20に対し、交差しているエリアで接合されるように構成されていてもよく、あらゆる好適な種類の接着剤26によって、交差しているエリアが接着されていてもよい。いくつかの実施形態によれば、接着剤26は、接続チューブ24の外側の周囲にリングを形成し得る糊粒、又は他の好適な接着剤であってもよい。
【0025】
加えて、ラウドスピーカドライバ10は、第1ボイスコイル28と第2ボイスコイル30とを具備している。第1及び第2ボイスコイル28及び30は、芯線を被覆する被覆材を備えた電線を具備している。第1ボイスコイル28は、接続チューブ24の第1端に巻回され、第2ボイスコイル30は、接続チューブ24の第2端に巻回されている。ボイスコイル28及び30は、接続チューブ24に巻回されているだけではなく、磁力によるボイスコイル28及び30の移動により接続チューブ24が逐次動くように、これらは接続チューブ24に接続されてもいる。
【0026】
図示のように、ボイスコイル28及び30は、同じ方向に巻回されていてもよい。しかしながら、他の実施形態においては、ボイスコイル28及び30は、互いに逆向きに巻回されていてもよい。各ボイスコイル28及び30の一端は、正(「+」)のリード線として示されている第1オーディオリード線32に接合されている。各ボイスコイル28及び30の他端は、負(「−」)のリード線として示されている第2オーディオリード線34に接合されている。第2オーディオリード線34は、正負のリード線は、黒や赤といったカラーの電線とされていてもよい。図示のように、一方のボイスコイルからのオーディオリード線は、他方のボイスコイルからの特定のオーディオリード線に接続されている。しかしながら、いくつかの実施形態によれば、一方のボイスコイルからのオーディオリード線は、他方のボイスコイルからの別のオーディオリード線に接続されていてもよい。個別のデザインは、第1及び第2磁石アセンブリ16及び18の永久磁石によって生成される二つの磁場の極(すなわち、N極及びS極)の指向性に主として依存する。
【0027】
磁石アセンブリ16及び18は、それぞれ接続チューブ24の終端に対して、一般的な方向に永久磁場を生成するように構成されている、1又は2以上の永久磁石を具備していてもよい。例えば、いくつかの実施形態によれば、永久磁石は、ボイスコイル28及び30を囲繞するリング磁石であってもよい。他の実施形態では、永久磁石は、別の形状を含んでいてもよく、接続チューブ24の軸方向に沿って位置決めされていてもよい。これらの或いは別の構成は、ボイスコイル28及び30の中心点に関し、一般的な方向に永久磁場を生成するために用いてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、ラウドスピーカドライバ10は、
図2に示すように、アコースティカル振動板20と接続チューブ24とを単に具備していてもよい。接続チューブ24は、接続チューブ24の第1端に近接した第1セクションと、接続チューブ24の第2端に近接した第2セクションと、第1セクションと第2セクションとの間にある中間セクションとを有していてもよい。ラウドスピーカドライバ10は、また、第1ボイスコイル28を含んでいる。この第1ボイスコイル28は、接続チューブ24の第1セクションの少なくとも一部に接続されてこれを囲繞している。第1ボイスコイル28は、第1オーディオリード線と第2オーディオリード線とを有する。ラウドスピーカドライバ10は、また、第2ボイスコイル30を含んでいる。この第2ボイスコイル30は、接続チューブ24の第2セクションの少なくとも一部に接続されてこれを囲繞している。第2ボイスコイル30は、第1オーディオリード線と第2オーディオリード線とを有する。ラウドスピーカドライバ10は、また、第1ボイスコイル28を第1磁場内に懸架するように構成された第1磁石アセンブリ16と、第2ボイスコイル30を第2磁場内に懸架するように構成された第2磁石アセンブリ18とを含む。接続チューブ24は、アコースティカル振動板20と交差し、接続チューブ24の中間セクションは、アコースティカル振動板20に接続されている。
【0029】
付加的な実施形態によれば、上述したラウドスピーカドライバ10は、さらに、第1磁石アセンブリ16が第1永久磁石を具備し、第2磁石アセンブリ18が第2永久磁石を具備するように構成されていてもよい。例えば、第1永久磁石は、第1ボイスコイル28の周囲に位置決めされたリング磁石であってもよく、第2永久磁石は、第2ボイスコイル30の周囲に位置決めされたリング磁石であってもよい。第1磁石アセンブリ16と第2磁石アセンブリ18は、接続チューブ24を実質的に軸方向に移動可能に構成されたアラインメント構造を具備していてもよい。例えば、軸方向は、接続チューブ24の軸方向であると規定されていてもよい。ラウドスピーカドライバ10は、さらに、第1ボイスコイル28及び第2ボイスコイル30が同時に電気信号を受けることによって、これら第1ボイスコイル28と第2ボイスコイル30とが協同して力を接続チューブ24に加え、接続チューブ24が実質的に軸方向に前後するように構成されるように、規定されていてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、上述したラウドスピーカドライバ10は、さらに、アコースティカル振動板20が静止しているときに実質的に平らであるように規定されている。例えば、アコースティカル振動板20は、電気信号がラウドスピーカドライバ10に供給されていないときに静止していてもよい。電気信号(例えばオーディオ信号)を受けたとき、振動板20は、ラウドスピーカドライバ10から音波が放射されるように振動することになる。いくつかの実施態様において、アコースティカル振動板20は、円形状を有していてもよいが、別の実施態様によれば、振動板は、正方形、長方形、又は別の適切な形状であってもよい。
【0031】
さらに、ラウドスピーカドライバ10は、また、フレーム12を具備している。フレーム12は、第1磁石アセンブリ16と第2磁石アセンブリ18とを支持するように構成されていてもよく、これらの間に予め設定された間隔を維持するように構成されていてもよい。また、ラウドスピーカドライバ10は、アコースティカル振動板20のエッジをフレーム12に接続するように構成されたサスペンション22(例えば、リングサスペンション)を具備していてもよい。サスペンション22は、対応する振動板20の形状やエッジ寸法に基づいて、何らかの好適な形状を有していてもよい。また、サスペンション22の形状は、フレーム12の内寸法や形状に基づいていてもよい。フレーム12は、好適には、アコースティカル振動板20を周囲に露出する少なくとも1つの孔14を具備している。孔14は、フレーム12の内側から、音を聴衆が聞くことのできる周りのエリアに、音を出すことを許容する。
【0032】
加えて、ラウドスピーカドライバは、さらに、第1ボイスコイル28の第1オーディオリード線が第2ボイスコイル30の第1オーディオリード線に接続し、第1ボイスコイル28の第2オーディオリード線が第2ボイスコイル30の第2オーディオリード線に接続されるように規定される。この場合において、第1磁場の極は、第2磁場の極と実質的に揃うことになる。従って、第2ボイスコイル30が引く力を加えている間、第1ボイスコイル28は、振動板20を押す力を加えることになる一方、第2ボイスコイル30が押す力を加えている間、第1ボイスコイル28は、引く力を加えることになる。この場合の力は、ボイスコイル28及び30が対立的に作用することなく、接続チューブ24を同じ方向に動かす加勢的なものである。
【0033】
他の実施形態において、第1ボイスコイル28と第2ボイスコイル30は、接続チューブ24の周囲に同一方向に巻回され、第1磁場の極が実質的に第2磁場の極と反対になっていてもよい。換言すれば、N極が両者とも内側(又は外側)となりS極が外側(又は内側)となる。この場合、第1ボイスコイル28と第2ボイスコイル30は、接続チューブの周囲に逆向きに巻回されることになる。この構成でもまた、ボイスコイル28及び30が対立的に作用せずに接続チューブ24を同じ方向に動かす加勢的なものとなる。
【0034】
ここに記載したように二つの電磁構造によって、振動板20に作用する力は、基本的には二倍になり得る。例えば、何れの電気信号においても、他方のボイスコイルが引く力を(すなわち、フレーム12の中央から遠ざかるように)接続チューブ24に加えている間、一方のボイスコイルは、押す力を(すなわち、フレーム12の中央に向かい)接続チューブ24に与える。その結果は、振動板20の迅速な反応であり、迅速な動きである。それは、ラウドスピーカドライバ10のダイナミックレンジを増加する。振動板が引く力と押す力の双方によって高加速で動くので、振動板は、音を生成する際により効果的に力を伝達する。すなわち、音エネルギーへの電気のパワー変換において、高効率である。また、デュアルで押したり、引いたりするボイスコイルは、ラウドスピーカドライバ10の高周波数応答および低周波数応答の双方を拡張することが可能となる。
【0035】
さらにまた、本開示に記載されたラウドスピーカドライバ10の対称的な側面は、振動板20のより好適な制御を許容し、それによって、より正確なオーディオ信号の再生をもたらす。振動板に押す力と引く力とを加えることにより、振動板の振動は、より正確に音響電気信号に追従し、従来の装置に比べ、サウンド再生のより高い鮮明度をもたらす。
【0036】
本開示の教示や原理は、ダイナミックランジを増加したラウドスピーカを達成する種々の実施態様を構成し得る。ある実施形態において、二つの従来スピーカを開口部同士、つまり、振動板と振動板同士で接合し、二つの振動板が一斉に振動するように極を逆向きに配線してもよい。そのような実施形態において、二つの振動板は、一つの信号振動板であるかのように一斉に振動する。そのような実施態様を
図3に図示する。
【0037】
図3を参照して、スピーカアセンブリ100は、第1及び第2スピーカ112−1、112−2を含む。第1スピーカ112−1は、サスペンション122によって、フレーム部113に接合されたコーン形状又は円錐台状の振動板120−1を有する円錐台フレーム部113を含む。第1スピーカ112−1は、さらに、上述したような磁石アセンブリ116とボイスコイル128とを含む。同様に、第2スピーカ112−2は、サスペンション122によってフレーム部115に接合されたコーン形状又は円錐台状の振動板120−2を有する円錐台フレーム部115と、磁石アセンブリ118と、ボイスコイル130とを含む。第1及び第2スピーカは、フレーム部113、115の広角端117、119がそれぞれ互いに対向し、その状態で振動板120−1、120−2の少なくとも一部、例えば、部位123が互いに接続されるように構成されている。各振動板120−1、120−2は、コーン形状又は円錐台形状を有するので、部位123は、円形であり、従って、振動板120−1、120−2は、円形に接続される、ということが玩味されるべきである。他の実施形態では、振動板120−1、120−2は、互いに接触していない。
【0038】
スピーカアセンブリ100は、さらに、オーディオ信号ドライバ150を含む。オーディオ信号ドライバ150は、正の出力部152と負の出力部154とを含むボイスコイル128、130を電気的に駆動するためのものである。例示的に、オーディオ信号ドライバは、オーディオアンプ、レシーバ、等、或いは、オーディオ信号を示す電気信号を与える他のあらゆる既知の機器を含む。各ボイスコイル128、130は、正のオーディオリード線132と負のオーディオリード線134とを含む。この実施形態において、ボイスコイル128、132は、二つの振動板が一斉に振動するように、逆向きの極に結線される。例えば、ボイスコイル128の正のオーディオリード線132−1は、ドライバ150の正の出力152に接続されている一方、ボイスコイル130の正のオーディオリード線132−2は、ドライバ150の負の出力154に接続されている。同様に、ボイスコイル128の負のオーディオリード線134−1は、ドライバ150の負の出力154に接続されている一方、ボイスコイル130の負のオーディオリード線134−2は、ドライバ150の正の出力152に接続されている。この場合において、第2ボイスコイル130が振動板120−2に対して引く力を加える間、第1ボイスコイル128は、振動板120−1に対して押す力を加えることになるとともに、第2ボイスコイル130が押す力を加える間、第1ボイスコイル128は、引く力を加えることになる。このようにして、二つの振動板120−1、120−2は、一つの信号振動板であるかのように一斉に振動する。
【0039】
別の実施形態においては、複数のドライバとドライバ配置方法とを含むウーハレス、ボックスレスラウドスピーカシステムが提供される。この実施形態において、ラウドスピーカシステムは、上述したようなマルチドライバを使用して、低周波が他のツィータドライバの出力によって強化されつつ、等角に配設されたドライバによって、高周波が均等に按配された音波のスペースを生成する。ドライバの配置は、その角度が重要である他は、どこにでも配置することができる。すなわち、配置は、同心状であり、等角配分である。ドライバの構成は、三次元的であり、したがって、結果として生じる形状ないし形態は、立方状、平板状、球状、円筒状、その他の形状となり得る。
【0040】
図4を参照して、同図には、本開示に基づく三次元(3D)で見たスピーカシステム200が図示されている。スピーカシステム200は、
図1〜
図3に関連して上述したような複数のドライバ10を備えており、三次元的な球状の構成に構成されている。
【0041】
図5Aを参照して、各ドライバ10に対して、幾何学的に対称的な仮想軸線214がある。各ドライバ10は、前面、すなわち面216と、裏面、すなわち背面218とを含む。仮想軸線214は、ドライバ10の裏面218から前面216を通って両方向に延びている。ドライバの振動板は、軸線214に沿って動くので、この軸線は、また、一般的にこの軸214に沿ってドライバの前面216から伝播する、音波の伝播する方向を示すものでもある。
図5Bは、ドライバ212での軸線214に沿う高周波の伝播パターンを図示し、
図5Cは、ドライバ212での軸線214に沿う低周波の伝播パターンを図示する。この実施形態では、前に放出される周波と後に放出される周波とが互いに干渉するのを防止するため、シール材又はマフラ224がドライバ10の後部又は背側に付加されている。
【0042】
マルチドライバ10を支持するため、種々の支持機構を構成することが可能である。ドライバの前面から延びている対称軸が支持構造の内部(inner volume)の中心に位置する一点のところで交差するように、ドライバ10は、互いに間隔を隔てて配置されてもよい。いくつかの実施形態では、対称軸は、内部の中心又は中心近傍の比較的少ない体積を通過するものであってもよい。ドライバ10は、ドライバ10の各面が指向された方向に向いている内部の周囲に等しく拡がるものであってもよい。ドライバ10が均等に配設されているとき、それらの対称軸がなす角度は、実質的に等しくてもよい。この構成では、ドライバ10から生じる音波は、支持構造の中心に向かって内向きに指向する。
【0043】
図6は、
図4に示すスピーカシステム200の断面図を示す。
図6に示すように、各ドライバ10の軸線214が空間220の一点に対し、前方に収束するように、ドライバ10が支持機構230上に配置されていてもよい。この実施形態では、ドライバは、収束点220から等間隔になっている。全てのドライバが、好適に、原点であり軸線の収束する一つの点を共有しているが、この点に対するドライバの距離は、同一である必要はなく、すなわち、種々のドライバが収束点から異なる距離を隔てて配置されていてもよい。その結果、ドライバの配置は、平板状、筒状、方形状、スパイラル状、又は球状の形状を構成するのにフレキシブルとなる。例えば、ある実施形態では、ドライバが卵形又は突形の形状に配置された構成が提供されるものであってもよい。この実施形態では、ある単一点220に対して収束する、各ドライバの軸線214の前方への収束を確保しつつ、各ドライバは、他のドライバに対して相対的に異なる角度で配置される。
【0044】
図6に戻って、ドライバ10は、各ドライバ10の対称軸214が空間内の単一点220に収束するように配置されている。いくつかの実施形態では、ドライバは、単一点220から実質的に等距離を隔てて配置されていてもよい。そのような構成では、ドライバ10から生成される音波が伝播する一般的な線は、共通の点220に集約される。共通の点220から、ドライバ10間に形成されるギャップを通して、音波が伝播し続ける。このようにして、音波は、支持機構230の内部の外側のエリアに等しく分配され、リスニング空間には、偏るところがない。このような構成を設けることにより、ドライバが聴者に標準を定めているかどうかに拘わらず、ドライバは、聴者に届き得る低周波を強化する。
【0045】
上述のように構成されたラウドスピーカシステムは、ミッドランジドライバがなく、ウーハドライバがないものからなる。さらに、上述のように構成されたラウドスピーカシステムは、従来のスピーカにおいて共通に採用されているボックス及び/又はエンクロージャのないものからなる。通常のスピーカドライバは、閉じたボックスに装着されるので、そのような構成は、実際上、その特徴的な共振をサウンド素材に与える「ドラム」となる。ドライバ10は、いくつかの形式の支持機構230に組み付けられるが、該構造230は、ドライバを支えるのに最小のものであって、スピーカシステムの音質を改変したり、影響したりはしない。ある実施形態では、支持機構230は、ワイヤフレームで構成されている。ワイヤフレームは、スピーカシステムによって生成された音には、何等、音色への影響(coloration)を生じることなく、ドライバを支持する。ドライバを配置するために、本開示の教示に基づいて種々の公知の材料から構成される他の支持機構を採用してもよいことが、玩味されるであろう。例えば、支持機構は、ツリー状構造、中空コアを有するハチの巣構造等に構成されてもよい。本開示の原理に基づくスピーカシステムにおいて、ボックスやエンクロージャの共振による音色への影響は、従って完全に除去される。
【0046】
加えて、共振を低減するために支持機構の内部に不活性マフラ又はバッフルボール221を配置してもよい。好ましくは、ボール221は、音周波に対して不活性な材料、例えば、石膏、スチレン・フォーム、セメント又はあらゆる音周波に対して共振しない別のあらゆる材料からできたものである。
【0047】
本開示の原理を採用することにより、数々の利点を達成することができる。
1.本発明のスピーカシステムは、ボール形、コラム、ピラミッド、薄いパネル、卵形等に構成することが可能である。
2.スピーカシステムは、置き場所の制約がない。例えば、
図4に示すように、スピーカシステムは、空間内の全方向に、何れの方向にも均等に、音波を放出する三次元球状オブジェクトとして構成されており、従って、全方向指向と呼称される。スピーカシステムに対する聴者の相対的な関係には何等制約がなく、逆も又然りである。
3.スピーカシステムは、聴者の相対的な位置、座っているか、立っているか、動いているか、に拘わらず、同じく聞こえる。
4.スピーカシステムは、ウーハや、ボックスの音色への影響を受けない。
5.スピーカシステムは、コンパクトであり、僅かな設置スペースで足りるから、車のように狭いスペースに設置するのには理想的である。さらなる例において、
図4に示したスピーカシステムは、置き台の上に設置することができる。置き台は、比較的小さな設置スペースとすることができ、この置き台の載置部にシステムの設置スペースが設けられる。
【0048】
理想的なスピーカシステムは、三次元のドライバ集積体であるが、いくつかの実施形態においては、
図7に図示したように、集積体の後ろ半分を取り除いて、前半分だけを残してもよい。
図7は、半球構成250を示す。その結果は、音質、特に低周波数部分、すなわちバス音が、妥協的なものとなる。集積体の後ろ半分が寄与するバス音が、もはや利用できなくなるからである。集積体の前半分が面しているリスニングエリアにおいては、低周波数の強度が低減するので、音の高周波数部分が相対的に強くなりすぎるであろう。これを修正するため、不活性マフラボール221がいくつかのドライバ10の前部に配置され、音の高周波部分の強さを低減するようにしている。音の高周波部分が後ろ側に反射するからである。好ましくは、ボール221は、石膏、スチレン・フォーム、セメント、又は何れの音周波に対しても共振することのない別のあらゆる材料のように、音周波に不活性な材料で製造される。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、正面からみたドライバ10の一般的な形状は、円形又は卵形である。三次元の内部周りにドライバ10を円形又は卵形に構成することにより、どのようにドライバ10を近接させていようとも、ドライバ10間にギャップが形成されることが認識されるべきである。内部に向かって指向する音波の多くは、従って、ギャップを通してドライバ10の配置の外側にある空間に対して放出され得る。よって、リスニングエリアがラウドスピーカシステムの外側にあるようにすることで、オーディオ信号は、中心点220のところ、又はその近傍である単一の原点から発せられるかのような様相となる。
【0050】
ドライバ10は、
図6の実施形態による単一の原点と対称軸への収束を共有するが、点220に対するドライバ10の距離は、同一である必要はない。つまり、種々のドライバ10は、収束点220から異なる距離に配置されていてもよい。その結果、ドライバ配置は、平面状、円筒状、立方状、螺旋状、球面形状等々、いくつかの実施形態において柔軟なものにすることができる。例えば、ドライバ10は、卵形又は突出形に配置してもよい。そのような実施形態では、各ドライバの対称軸が共通点に対して交差することを確保しつつ、各ドライバは、他のドライバに対し、異なる角度で配置される。いくつかの実施形態では、対称軸214は、ドライバ10と支持機構の構成の中心に位置する点220のところ又は近傍にある、比較的小さな体積部分、細長い部分、又は線分と交差していてもよい。
【0051】
図4及び
図7のスピーカシステム200及び250は、ツイータのみを含み、ミッドランジドライバやウーファドライバを含まない構成であってもよい。さらにまた、スピーカシステム200及び250は、一般に、従来のスピーカシステムに採用されているボックスやエンクロージャなしで構成されていてもよい。従来のスピーカドライバは、上述したように、一般に、音波を直線状に投射するために外部に面している振動板を有する閉じたボックスの表面に通常は装着されている。このため、従来のスピーカボックスは、相当に音質を変えてしまう特徴的な共振を音波に与えるものである。本開示の種々の実施態様によれば、ドライバ10は、スピーカシステム200、250の音質に、あったとしても殆ど影響しない支持構造に装着される。支持機構は、ドライバ10を支持するに際し、ボックス又はエンクロージャの共振による音色への影響を低減、或いは完全に消去さえするように、最小限の素材を含んでいてもよい。
【0052】
ある実施形態において、支持構造は、ワイヤフレームで構成されていてもよい。ワイヤフレームは、スピーカシステムによって生成された音には、何等、影響や音色への影響を生じることなく、ドライバを支持することになる。ドライバを配置するために、本開示の教示に基づいて種々の公知の材料から構成される他の支持機構を採用してもよいことが、玩味されるであろう。例えば、支持機構は、ツリー状構造、中空コアを有するハチの巣構造等に構成されてもよい。
【0053】
他の実施形態において、ラウドスピーカシステムのバスパフォーマンスを拡張するために、ラウドスピーカシステムは、球状のドライバ周りに球状のウーファドライバが同心に配置されたウーファドライバを採用することになるであろう。
図8を参照して、同図には、本開示に基づく実施形態としてのスピーカシステム300の三次元図が図示される。この実施形態において、ドライバ集積体は、内向き且つ球状構造に構成されるとともに、同じく内向きにされ、且つ低音周波、典型的には40ヘルツから1Kヘルツ以上の低音周波を生成するために公知のように構成されたウーファドライバによって補われている。各球状の集積体は、個別に給電されてもよく、スピーカシステム300は、2wayスピーカシステムとして稼働してもよい。
【0054】
図8において、ツイータ球は、複数のドライバ10を含んでおり、内側のドライバ球を囲繞する複数のウーファ302からなる外側の球内に破線で示されている。内側のツイータ球と外側のウーファ球は、同心であり、空間内の共通の終点を共有する。ウーファドライバ302は、内側のドライバ10に対し、相対的に種々の構成に配置し得ることが玩味されるべきである。例えば、ある実施形態では、ウーファドライバ302は、放出される音波をそらせるために、ツイータドライバ10の真後ろに配置されていてもよい。他の実施形態において、各ウーファドライバ302は、対称軸がツイータドライバ10のギャップを経由して中心を通るように配置されていてもよい。
【0055】
これまで図示し、記載した種々の特徴は、置換可能であり、ある実施形態に示された特徴は、別の実施形態に含み得るものである。
【0056】
本開示は、具体的に図示された実施形態を参照して記載されてきたが、これらの実施形態は、単に本開示の原理や応用の図示に過ぎない、と理解されるべきである。従って、添付の特許請求の範囲によって規定された本開示の精神と範囲から逸脱しない範囲で、図示された実施形態に数々の変形を加えることが可能であり、別の構成を考案することが可能である。