(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インキ壺を構成するインキ壺ローラに近接して、インキ壺ローラの長さ方向に分割された複数のインキ呼び出しローラが配置され、各インキ呼び出しローラが、インキ壺ローラに接触する呼び出し位置とインキ壺ローラから離れる非呼び出し位置とに個別に切り換えられるようになされており、制御装置によって、印刷物の絵柄面積に応じて設定されたグラフ値に基づいて、所定の間隔をおいた呼び出しタイミングごとに、所要のインキ呼び出しローラの位置を切り換えてインキを呼び出し、インキ呼び出しローラごとに、インキ壺ローラに接触してから離れるまでのインキ壺ローラの回転角度を制御することにより、インキ壺ローラからインキ呼び出しローラに呼び出すインキの周長を制御するようになされている印刷機のインキ供給装置において、
制御装置は、所定数の印刷物の濃度測定値から濃度が安定した際の濃度予想値を求める濃度予想値演算手段と、濃度予想値および濃度目標値を用いてグラフ変動値を求めるグラフ変動値演算手段と、予め設定されている設定グラフ値とグラフ変動値とから回転角度を制御するための制御用グラフ値を求める制御用グラフ値演算手段とを備えており、
制御用グラフ値は、以下の式で求められていることを特徴とする印刷機のインキ供給装置。
n回測定時点の予想値Yは、n回目の測定値をXn、n回分の平均値をXa、n回分の標準偏差をσ、n回目の測定値の偏差値をT、濃度予想係数をα、濃度目標値をK、インキの過不足の比率をL、グラフ変動値をGs、グラフ値補正係数をβとして、
Y=Xn+{T×|Xn−Xa|×α}、T={10×(Xn−Xa)/σ}、σ2={(X1−Xa)2+(X2−Xa)2+……+(Xn−Xa)2}/n、ただし、n=1の場合およびn回とも同じ測定値の場合には、Y=Xn
L=(Y−K)×100/K(%)
Gs=Gb×L×β÷100(%)
Ga=Gb+Gs
【背景技術】
【0002】
この種のインキ供給装置として、インキ壺を構成するインキ壺ローラに近接して、インキ壺ローラの長さ方向に分割された複数のインキ呼び出しローラが配置され、各インキ呼び出しローラが、インキ壺ローラに接触する呼び出し位置とインキ壺ローラから離れる非呼び出し位置とに個別に切り換えられるようになされており、制御装置によって、所定の間隔をおいた呼び出しタイミングごとに、所要のインキ呼び出しローラの位置を切り換えてインキを呼び出し、インキ呼び出しローラごとに、インキ壺ローラに接触してから離れるまでのインキ壺ローラの回転角度を制御することにより、インキ壺ローラからインキ呼び出しローラに呼び出すインキの周長を制御するようになされているものが知られている(特許文献1)。上記のインキ壺ローラの回転角度の制御は、インキ呼び出しローラに対する呼び出し位置への切り換え指令を出力してから非呼び出し位置への切り換え指令を出力するまでの時間を制御することにより行われる。
【0003】
この装置において、インキ壺内からインキ壺ローラの表面に出たインキは、インキ呼び出しローラが呼び出し位置に切り換えられている間に、そのインキ呼び出しローラに移され、各インキ呼び出しローラに移されたインキは、インキ呼び出しローラが非呼び出し位置に切り換えられている間に、インキ練りローラに移される。そして、インキ呼び出しローラごとに呼び出すインキの周長を制御することにより、インキ呼び出しローラごとにインキ練りローラすなわち印刷面に供給されるインキ量が制御される。
【0004】
このようにインキ呼び出しローラごとにインキ量が制御されるのは、印刷物の絵柄により幅方向の位置によって最適なインキ量が異なるからであり、各インキ呼び出しローラに対するインキ量は、印刷物の絵柄面積率に応じて設定される。
【0005】
インキ量の目標値は、各色ごとかつ各インキ呼び出しローラごとの「グラフ値」として、%で表示され、印刷物の絵柄面積率に応じて予め設定された「グラフ値」に基づいて、インキ壺ローラからインキ呼び出しローラに呼び出すインキの周長(具体的には、各インキ呼び出しローラを移動させる切換弁のオン・オフ時間)が制御される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の印刷機のインキ供給装置では、印刷物や印刷条件で最適な出力で動作させるようになされているが、実際には様々な印刷物や印刷条件があり、それを全て現状の制御だけでは、カバーできておらず、最終的にオペレータによる微調整が必要になっている。
【0008】
ここで、オペレータの経験や技量の差等で、微調整の時間にバラツキがあり、最終的な濃度に差が出るという問題があり、また、微調整しても適正な濃度が得られないために、頻繁に微調整が繰り返されるという問題もあった。
【0009】
この発明の目的は、上記の問題を解決し、オペレータによる濃度の微調整を不要として、所望の濃度を得るための量のインキを正確に供給できる印刷機のインキ供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による印刷機のインキ供給装置は、インキ壺を構成するインキ壺ローラに近接して、インキ壺ローラの長さ方向に分割された複数のインキ呼び出しローラが配置され、各インキ呼び出しローラが、インキ壺ローラに接触する呼び出し位置とインキ壺ローラから離れる非呼び出し位置とに個別に切り換えられるようになされており、制御装置によって、印刷物の絵柄面積に応じて設定されたグラフ値に基づいて、所定の間隔をおいた呼び出しタイミングごとに、所要のインキ呼び出しローラの位置を切り換えてインキを呼び出し、インキ呼び出しローラごとに、インキ壺ローラに接触してから離れるまでのインキ壺ローラの回転角度を制御することにより、インキ壺ローラからインキ呼び出しローラに呼び出すインキの周長を制御するようになされている印刷機のインキ供給装置において、制御装置は、所定数の印刷物の濃度測定値から濃度が安定した際の濃度予想値を求める濃度予想値演算手段と、濃度予想値および濃度目標値を用いてグラフ変動値を求めるグラフ変動値演算手段と、予め設定されている設定グラフ値とグラフ変動値とから回転角度を制御するための制御用グラフ値を求める制御用グラフ値演算手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0011】
従来のインキ供給装置では、予め設定されている設定グラフ値に応じた制御が行われ、得られた濃度値が目標値からずれている場合には、濃度値を修正するように、オペレータがインキ量の増減を行っていた。この発明においては、オペレータ作業に代えて、制御装置によって自動的に濃度が修正される。
【0012】
濃度値は、全てのインキ呼び出しローラユニットの全てのインキ呼び出しローラのそれぞれについて測定される。得られた濃度値は、印刷された順に、インキ供給装置の制御装置に設けられた濃度予想値演算手段に入力される。濃度予想値演算手段では、濃度が安定した際の濃度予想値が求められる。グラフ変動値演算手段では、濃度予想値と濃度目標値との差から濃度値差が求められ、さらに、この濃度値差に対応するグラフ変動値が求められる。制御用グラフ値演算手段では、予め設定されている設定グラフ値とグラフ変動値との差として変更後のグラフ値を求め、この変更後のグラフ値が回転角度を制御するための制御用グラフ値として使用される。
【0013】
こうして、制御装置によって、濃度測定およびグラフ値の変更が各インキ呼び出しローラユニットの全てのインキ呼び出しローラに対して行われ、これにより、インキ呼び出しローラユニットの各インキ呼び出しローラ間のバラツキが小さいものとなるとともに、濃度が短い時間で目標値に到達する。したがって、オペレータによる濃度の微調整を不要として、所望の濃度を得るための量のインキを正確に供給できる。
【0014】
制御用グラフ値は、以下の式で求められていることが好ましい。
【0015】
n回測定時点の予想値Yは、n回目の測定値をXn、n回分の平均値をXa、n回分の標準偏差をσ、n回目の測定値の偏差値をT、濃度予想係数をα、濃度目標値をK、インキの過不足の比率をL、グラフ変動値をGs、グラフ値補正係数をβとして、
Y=Xn+{T×|Xn−Xa|×α}、T={10×(Xn−Xa)/σ}、σ
2={(X
1−Xa)
2+(X
2−Xa)
2+……+(Xn−Xa)
2}/n、ただし、n=1の場合およびn回とも同じ測定値の場合には、Y=Xn
L=(Y−K)×100/K(%)
Gs=Gb×L×β÷100(%)
Ga=Gb+Gs
αおよびβは、例えば1または1に近い値とすればよく、αの値を変えることで、予想値が調整でき、βの値を変えることで、グラフ変動値が調整できる。
【発明の効果】
【0016】
この発明の印刷機のインキ供給装置によれば、上記のように、各インキ呼び出しローラに対応する濃度値が測定されて、各インキ呼び出しローラの制御にフィードバックされるので、オペレータによる濃度の微調整を不要として、所望の濃度を得るための量のインキを正確に供給できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は印刷機のインキ供給装置の一部を概略的に示す左側面図、
図2は
図1の一部を拡大して示した部分切り欠き平面図、
図3は
図2の拡大横断面図である。以下の説明において、
図1および
図3の右側(
図2の下側)を前、
図1および
図3の左側(
図2の上側)を後とし、前から見たときの左右を左右とする。
【0020】
図1に示すように、インキ壺部材(40)の後端部に近接するようにインキ壺ローラ(41)が配置されており、これらによりインキ壺(42)が構成され、インキ壺部材(40)の後端部とインキ壺ローラ(41)の表面との間に所定の隙間を有するインキ通路(43)が形成されている。
【0021】
インキ壺ローラ(41)の後方に、複数のインキ練りローラ(44)(46)のうちの最初のインキ練りローラ(44)が配置され、インキ壺ローラ(41)とこのインキ練りローラ(44)との間に、両者に近接して、インキ呼び出しローラユニット(45)が配置されている。ローラユニット(45)は、
図2に示すように、ローラ(41)(44)の軸方向に分割された複数(図示は7つ)のインキ呼び出しローラ(15)の集合体であり、これらのインキ呼び出しローラ(15)が軸方向に小さい間隔をおいて配置されている。これらのローラ(15)(41)(44)の軸は互いに平行で、左右方向にのびている。インキ壺ローラ(41)とインキ練りローラ(44)は、印刷機のフレーム(7)に回転自在に支持され、図示しない駆動装置により、互いに同期した所定の回転速度で
図1の矢印方向に連続回転させられる。たとえば、インキ壺ローラ(41)の回転速度は、インキ練りローラ(44)のそれの1/10程度である。
【0022】
ローラ(41)(44)と平行な直線状の支持部材(6)の左右両端部がフレーム(7)に固定され、支持部材(6)の周囲に複数の可動部材(8)が取り付けられている。支持部材(6)は、上下幅より前後幅が少し大きい角柱状をなす。可動部材(8)は短円柱状をなし、可動部材(8)にはこれを軸方向に貫通する比較的大きな角状の穴(9)が形成されている。フレーム(7)に対向状に固定されて支持部材(6)に貫かれた1対の短円柱状の固定部材(10)の間に複数の可動部材(8)が軸方向に並べられ、これらの可動部材(8)の穴(9)に支持部材(6)が通されている。可動部材(8)の穴(9)の上下幅は支持部材(6)の上下幅とほぼ等しく、穴(9)の上下両面が支持部材(6)の上下両面に摺接している。また、穴(9)の前後幅は支持部材(6)の前後幅より少し大きく、可動部材(8)は、支持部材(6)に対して、穴(9)の後面が支持部材(6)の後面に接する前端位置と、穴(9)の前面が支持部材(6)の前面に接する後端位置との間を前後に移動しうるようになっている。支持部材(6)と摺接する可動部材(8)の穴(9)の上面に、可動部材(8)の全長にわたる角みぞ(11)が形成されている。
【0023】
各可動部材(8)は、後述するように、支持部材(6)に対して軸方向に位置決めされており、可動部材(8)相互間および両端の固定部材(10)との間には、軸方向にわずかな隙間が設けられている。このため、各可動部材(8)は、支持部材(6)に対して個別に前後方向に移動しうる。
【0024】
各可動部材(8)の外周に、転がり軸受である玉軸受(12)の内輪が固定されている。各玉軸受(12)の外輪の外周に金属製スリーブ(14)が固定され、スリーブ(14)の外周にゴム製厚肉円筒状のインキ呼び出しローラ(15)が固定されている。
【0025】
隣接する可動部材(6)の外周相互間に、短円柱状の防塵部材(16)がはめ被せられている。防塵部材(16)は、たとえば天然ゴム、合成ゴム、合成樹脂などの適当なゴム状弾性材料よりなり、その両端部に内側に少し張り出したフランジ部(16a)が一体に形成されている。そして、これらのフランジ部(16a)が可動部材(8)の左右両端寄りの部分の外周面に形成された環状みぞ(17)にはめられることにより、防塵部材(16)が可動部材(8)に固定されている。左右両端の可動部材(8)とこれらに隣接する固定部材(10)との外周相互間にも、同様の防塵部材(16)がはめ被せられている。
【0026】
各可動部材(8)と支持部材(6)の間の支持部材(6)側に、次のように、インキ呼び出しローラ(15)の位置を切り換えるローラ位置切換装置(19)が設けられている。
【0027】
可動部材(8)の軸方向中央部に対応する支持部材(6)の部分に、前面から少し後方までのびた穴を形成することによりシリンダ部(20)が形成されるとともに、後面から少し前方までのびたばね収容穴(21)が形成されている。シリンダ部(20)の中心とばね収容穴(21)の中心は、可動部材(8)の上下方向の中心近傍にある前後方向の1つの直線上にある。シリンダ部(20)内に、短円柱状のピストン(22)がOリング(23)を介して前後摺動自在に挿入されている。ばね収容穴(21)内に、付勢部材としてのボール(24)が前後摺動自在に挿入されるとともに、これを後向きに付勢する圧縮コイルばね(25)が挿入されている。
【0028】
ピストン(22)の中心に対向する可動部材(8)の穴(9)の前面およびボール(24)の中心に対向する穴(9)の後面に、それぞれ、凹所(26)(27)が形成されている。各凹所(26)(27)の可動部材(8)軸方向の幅は一定である。可動部材(8)の軸線と直交する断面における各凹所(26)(27)の断面形状は一様であり、上記軸線と平行な直線を中心とする円弧状をなす。凹所(26)に対向するピストン(22)の端面の中心に先細テーパ状の突起(22a)が形成され、この突起(22a)が凹所(26)にはめられている。なお、ピストン(22)の突起(22a)を除く部分の長さはシリンダ部(20)の長さよりわずかに短く、ピストン(22)がシリンダ部(20)内に最も退入した状態でも、突起(22a)の大部分が支持部材(6)の前面より突出するようになっている。一方、ボール(24)の外周の一部が、凹所(27)にはめられている。
【0029】
支持部材(6)の後部において、ボール(24)は、常時、ばね(25)の弾性力により可動部材(8)の穴(9)の後面に圧接させられ、ボール(24)の外周の一部が、凹所(27)にはまって、凹所(27)の前後の縁部に圧接させられている。一方、支持部材(6)の前部においては、支持部材(6)の前面あるいはピストン(22)が可動部材(8)の穴(9)の前面に圧接させられ、ピストン(22)の突起(22a)の大部分が凹所(26)にはまっている。そして、このようにピストン(22)の突起(22a)の大部分とボール(24)の一部が、常時、凹所(26)(27)にはまっていることにより、支持部材(6)に対する可動部材(8)の軸方向の位置決めがなされている。
【0030】
支持部材(6)に、その左端から軸方向にのびて右端付近で閉じた横断面円形の給気穴(28)が形成され、この穴(28)の左端開口端が適当な配管を介して圧縮空気源(29)に接続されている。
【0031】
可動部材(8)のみぞ(11)に面している支持部材(6)の上面に切換弁(ソレノイド弁)(30)が取り付けられ、この切換弁(30)の2つのポートが支持部材(6)に形成された連通穴(31)(32)を介して給気穴(28)とシリンダ部(20)にそれぞれ連通させられている。また、切換弁(30)の電線(33)がみぞ(11)の部分を通して外部に引き出され、制御装置(34)に接続されている。
【0032】
切換弁(30)に通電された状態(オン状態)ではシリンダ部(20)が切換弁(30)を介して給気穴(28)に連通させられ、通電を停止した状態(オフ状態)ではシリンダ部(20)が切換弁(30)を介して大気と連通させられる。そして、制御装置(34)で各切換装置(19)の切換弁(30)の通電状態を個別に切り換えることにより、各インキ呼び出しローラ(15)の前後方向の位置が個別に切り換えられる。
【0033】
切換弁(30)がオフ状態に切り換えられると、シリンダ部(20)が大気と連通させられるため、ピストン(22)はシリンダ部(20)内を自由に移動できる状態になる。このため、可動部材(8)はばね(25)によりボール(24)を介して後側に移動させられる。その結果、可動部材(8)およびインキ呼び出しローラ(15)は後端位置(非呼び出し位置)に切り換えられ、インキ呼び出しローラ(15)がインキ壺元ローラ(41)から離れてインキ練りローラ(44)に圧接する。
【0034】
切換弁(30)がオン状態に切り換えられると、シリンダ部(20)が給気穴(28)およびさらにこれを介して圧縮空気源(29)に連通させられるため、シリンダ部(20)に圧縮空気が供給される。このため、ばね(25)の力に抗して、ピストン(22)が支持部材(6)から前方に突出し、これによって可動部材(8)が前側に移動させられる。その結果、可動部材(8)およびインキ呼び出しローラ(15)は前端位置(呼び出し位置)に切り換えられ、インキ呼び出しローラ(15)がインキ練りローラ(44)から離れてインキ壺ローラ(41)に圧接する。
【0035】
可動部材(8)の穴(9)の底壁と摺接する支持部材(6)の下面に、磁気センサよりなる位置切換検知センサ(35)が埋め込み式に固定され、これに対向する可動部材(8)の穴(9)の底壁に、永久磁石(36)が埋め込み式に固定されている。センサ(35)の下面は、支持部材(6)の下面と面一であるか、それより少し内側(上側)に位置している。永久磁石(36)の上面は、可動部材(8)の穴(9)の底壁面と面一であるか、それより少し内側(下側)に位置している。可動部材(8)が後端位置に切り換えられた状態では、センサ(35)は永久磁石(36)の前後方向中央部に対向し、可動部材(8)が前端位置に切り換えられた状態では、センサ(35)は永久磁石(36)から後方に外れる。したがって、可動部材(8)の位置によってセンサ(35)の出力が変化し、センサ(35)の出力により、可動部材(8)すなわちインキ呼び出しローラ(15)がいずれの位置にあるかがわかる。
【0036】
インキ壺(42)内のインキは、インキ通路(43)を通ってインキ壺ローラ(41)の外周表面に出る。インキ壺ローラ(41)の表面に出るインキの膜厚はインキ通路(43)の隙間の大きさに対応し、インキ通路(43)の隙間の大きさを調節することにより、インキ壺ローラ(41)の表面に出るインキの膜厚が調節される。通常は、全てのインキ呼び出しローラ(15)についてインキの膜厚が等しくなるように、インキ通路(43)の隙間の大きさが調節される。インキ壺ローラ(41)の外周表面に出たインキは、インキ呼び出しローラ(15)が前端位置に切り換えられている間に、そのインキ呼び出しローラ(15)に移され、各インキ呼び出しローラ(15)に移されたインキは、インキ呼び出しローラ(15)が後端位置に切り換えられている間にインキ練りローラ(44)に移される。インキ練りローラ(44)に移されたインキは、さらに、
図3に示すように、他の複数のインキ練りローラ(46)を経て、印刷面に供給される。また、センサ(35)の出力により、インキ呼び出しローラ(15)の位置の切り換えが正常であるかどうかが検知され、インキ呼び出しローラ(15)が正常に切り換えられなかった場合には、警報が発せられる。
【0037】
上記の印刷機では、制御装置(34)により、所定の間隔をおいた呼び出しタイミングごとに、所要のインキ呼び出しローラ(15)の位置を切り換えてインキを呼び出し、インキ呼び出しローラ(15)ごとに、インキ壺ローラ(41)に接触してから離れるまでのインキ壺ローラ(41)の回転角度(接触回転角度)を制御することにより、インキ壺ローラ(41)からインキ呼び出しローラ(15)に呼び出すインキの周長を制御するようになっており、その結果、印刷面に供給されるインキ量がその幅方向の位置によって調節される。
【0038】
接触回転角度の制御は、インキ呼び出しローラ(15)に対する呼び出し位置への切り換え指令(接触指令)を出力してから非呼び出し位置への切り換え指令(非接触指令)を出力するまでの時間(接触指令時間)を制御することにより行われる。
【0039】
印刷される絵柄が示されると、絵柄面積読取り装置を使用して絵柄面積率を読み取ることで、インキ供給量に対応するグラフ値が算出され、このグラフ値がインキ呼び出しローラ(15)とインキ壺ローラ(41)との接触長に換算されて、上記のインキ供給の制御に使用される。グラフ値は、各インキ呼び出しローラ(15)ごとに所定の色のインキをどの程度使用するかを示すインキ量の目標値となっており、所定の色を使用しない場合には0%、最大限使用する場合を100%として、%で表示される。したがって、各インキ呼び出しローラ(15)が対応する箇所の絵柄面積に応じて30%、40%、10%などと設定される。この%表示のグラフ値に基づいて、インキ呼び出しローラ(15)の呼び出し時間(インキ壺ローラ(41)とインキ呼び出しローラ(15)との接触時間すなわち切換弁(30)をオンする時間)が制御される。使用される色が8色であれば、8つの版胴(8つのインキ呼び出しローラユニット(45))が使用され、グラフ値は、各色(各版胴=インキ呼び出しローラユニット(45))ごと各インキ呼び出しローラ(15)ごとに設定される。
【0040】
こうした制御を行うことによって、各色の濃度はどの位置でも一定となるはずであるが、実際には、濃度値は、各インキ呼び出しローラ(15)ごとに違った値となる。そこで、濃度が薄い箇所では、この箇所にインキを供給している各インキ呼び出しローラ(15)のグラフ値を上げ、濃度が濃い箇所では、この箇所にインキを供給している各インキ呼び出しローラのグラフ値を下げることが好ましい。
【0041】
この実施形態では、以下のようにして、インキ供給装置の制御装置(34)によって、濃度値がフィードバックされることで、濃度値が適正な値に維持される。
【0042】
図4は、インキ供給装置の制御装置(34)をブロック図で示している。
図4において、印刷機には、濃度測定装置(50)が設けられて、印刷物の濃度が測定されるようになされている。
【0043】
濃度を測定するには、印刷の版に濃度測定用のパッチを設置し、このパッチに対応した部分の濃度を測定すればよい。濃度測定装置(50)は、公知のものを使用すればよく、濃度値は、濃度測定箇所とされた部分のRGB成分の相加平均値として求めることができる。上記のインキ供給装置では、複数の色に対応して、複数の版胴が使用され、各版胴に対応して、複数のインキ呼び出しローラ(15)の集合体としてのインキ呼び出しローラユニット(45)がそれぞれ設置されていることから、濃度値は、全てのインキ呼び出しローラユニット(45)の全てのインキ呼び出しローラ(15)のそれぞれについて測定される。濃度測定は、オンラインで測定されることが好ましいが、オフラインで測定してもよい。いずれにしろ、得られた濃度値は、印刷された順に、インキ供給装置の制御装置にフィードバックされる。
【0044】
インキ供給装置の制御装置(34)は、濃度目標値設定手段(51)と、グラフ値設定手段(52)と、濃度予想値演算手段(53)と、グラフ変動値演算手段(54)と、制御用グラフ値演算手段(55)と、切換弁オン・オフ手段(56)とを備えている。
【0045】
グラフ値設定手段(52)および切換弁オン・オフ手段(56)は、従来からある部分で、グラフ値設定手段(52)には、インキ呼び出しローラ(15)ごと各色ごとのグラフ値が設定され、切換弁オン・オフ手段(56)は、グラフ値に基づいて切換弁(30)(
図2および
図3参照)のオンの時間を制御する。
【0046】
従来では、グラフ値設定手段(52)に蓄えられているグラフ値Gbに基づいて、このグラフ値Gbとなるように、切換弁オン・オフ手段(56)における切換弁(30)のオン時間が決められ、このオン・オフ信号が切換弁(30)に出力されるようになされていた。
【0047】
この実施形態では、グラフ値設定手段(52)に蓄えられているグラフ値Gbは、制御用グラフ値演算手段(55)で変更され、この変動後のグラフ値Gaによって、切換弁オン・オフ手段(56)における切換弁(30)のオン時間が決められている。
【0048】
変動後のグラフ値Gaは、濃度測定装置(50)によって求められた濃度測定値Xnに基づいて次のようにして求められている。
【0049】
まず、濃度予想値演算手段(53)においては、複数個の濃度測定値に基づいて、濃度予想値Yが求められる。濃度は、例えば、
図5に示すように変化する。図示した例では、1回目、2回目、3回目と徐々に濃度が小さくなっている途中であり、この段階では、1.85で収束するのか、1.80で収束するのか、1.75で収束するのかは不明である。目標値が1.80の場合、n回目(最終)の濃度予想値Yが1.85であれば、濃度が薄くなるようにグラフ値を下げればよく、濃度予想値Yが1.75であれば、濃度が濃くなるようにグラフ値を上げればよい。
【0050】
濃度予想値は、1または複数個の測定値を取得して、これらの複数個の測定値を使用した演算により求められる。
【0051】
濃度を2回以上(n回)測定する場合、濃度予想値は次のようにして求める。
【0052】
まず、n回測定の全ての測定値(X
1,X
2,……,Xn)を用い、標準偏差σを求める。n回分の平均値をXaとする。
【0053】
σ
2={(X
1−Xa)
2+(X
2−Xa)
2+……+(Xn−Xa)
2}/n
次に、標準偏差σから、n回測定測定のうちの最終(n回目)の測定値の偏差値Tを算出する。
【0054】
T={10×(Xn−Xa)/σ}
このTを計算することで、最終(n回目)に測定した濃度がn回測定した全体の中でどの程度の濃度であるかが判別できる。
【0055】
次に、濃度予想係数αを使って、濃度予想値Yを算出する。
【0056】
Y=Xn+{T×|Xn−Xa|×α
なお、n回とも同じ測定値の場合には、Y=X
1=(X
2=Xn)とする。また、1回測定の場合も、Y=X
1とする。
【0057】
グラフ変動値演算手段(54)では、濃度予想値Yを使用して、グラフ値を次のようにして求める。
【0058】
インキの濃度目標値(基準値)をKとすると、インキの過不足の比率Lが、次の式から算出される。
【0059】
L=(Y−K)×100/K(%)
ここで、グラフ値補正係数βを用いて、グラフ変動値Gsを算出する。変更前のグラフ値をGbとする。
【0060】
Gs=Gb×L×β÷100(%)
となる。
【0061】
制御用グラフ値演算手段(55)においては、変更後のグラフ値GaがGa=Gb+Gsで求められる。この変更後のグラフ値Gaは、予め設定されていたグラフ値Gbに代えて、制御用グラフ値として使用され、この制御用グラフ値Gaに基づいて、切換弁(30)のオンの時間が制御される。
【0062】
濃度予想係数αおよびグラフ値補正係数βは、例えば1としておいて、経験的に適正な値に設定すればよい。αの値を変えることで、予想値が調整でき、βの値を変えることで、グラフ変動値が調整できる。βについては、濃度予想値Y>濃度目標値Kのときと濃度予想値Y<濃度目標値Kのときとで異なる値としてもよい。
【0063】
なお、上記において、印刷物は、紙以外のもの例えば缶であってもよい。