(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上端開口のトレイ本体と、トレイ本体の内部に配設する仕切体とを備えるトレイが記載されている。トレイ本体は、底壁の4辺に連設する各一対の端壁および側壁が、底壁の側から外端板と頂板と内端板とを連設した二重壁構造をなすように形成されている。
【0003】
特許文献2のトレイは、トレイ本体の対向する一対の端壁を二重壁構造とし、他の対向する一対の側壁を単一の板からなる一重壁構造としている。仕切体には、トレイ本体の側壁の内側に重畳配置される側板部が連設され、組立状態で側壁が二重壁構造をなすように構成している。
【0004】
特許文献1,2のトレイは、外周壁を構成する各一対の端壁および側壁を二重壁構造とし、トレイを積み重ねた際の耐圧強度の向上を図っている。しかしながら、この種のトレイの外周壁の強度(剛性)の向上については、未だ改良の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、トレイ本体の側壁を補強できるトレイを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のトレイは
、底壁と、前記底壁の外周縁部から立ち上がる外周壁とを有し、上端が開口したトレイ本体と
、前記トレイ本体の内部に挿入された基部壁と、前記基部壁の少なくとも1辺から立ち上がり前記トレイ本体の前記外周壁を構成する縦壁の内側面に沿って延びる内壁と前記縦壁の外側面に沿って延びる外壁とを含む補強壁部とを有するカバー部材と
、前記トレイ本体の前記縦壁と、前記カバー部材の前記外壁とを係止する係止部と
、を備え
、前記トレイ本体の前記縦壁は、単一の板からなる一重壁で構成された側壁を有し、前記トレイ本体の前記側壁に、前記カバー部材の前記補強壁部が装着されており、前記カバー部材の前記外壁の上下方向の寸法は、前記トレイ本体の前記側壁の上下方向の寸法に一致するように形成され、前記係止部は、前記カバー部材の前記外壁の下端に設けられた係止片と、前記トレイ本体の前記側壁と前記底壁の境界部分に形成された係止孔とで構成され、前記係止孔に前記係止片が挿入されている。
【0008】
上記構成により、カバー部材の補強壁部を縦壁に沿って配置するだけで、縦壁と外壁と内壁との間で三重壁構造を形成できる。そのため三重壁構造の部分で縦壁を補強し屈曲するのを防止して、トレイの当該壁部の剛性を高めることができる。
【0009】
また目的に応じてカバー部材に異なる印刷を施すことで、同じ形式のトレイを異なる商品の収納に使用できる。更にカバー部材をトレイ本体に組み立てる前に予めトレイ本体の内部に印刷を施すことができるので、トレイの美粧性が向上する。
【0011】
係止部を係止片と係止孔とで構成することで、縦壁と外壁とを容易に係止でき、また係止状態を確実に維持できる。
【0012】
前記カバー部材の前記基部壁は、前記トレイ本体の前記底壁と前記
側壁の上端との間に位置し、物品を位置決めする位置決め孔
を備えていることが好ましい。
【0013】
位置決め孔が基部壁に物品を位置決めするので、物品の輸送中に振動や外力が加わっても、物品同士が衝突するのを防止できる。また位置決めした物品がトレイの上端から突出しないため、トレイを積み重ねても物品を傷つけることがない。
【0014】
前記トレイ本体の前記縦壁は、
対向する一対の前記側壁と、前記側壁と異なる方向に対向する一対の端壁とを有し、前記端壁は内端板と外端板とからなる二重壁
であることが好ましい。
【0015】
カバー部材を側壁に装着するだけで簡単に側壁を補強できる。
【0016】
前記カバー部材は段ボールシート製であり、前記段ボールシートの段方向は、組立状態で上下方向に延びる前記外壁の突出方向であることが好ましい。ここで段方向とは、段ボールシートの表紙および裏紙の間に波状をなすように延びる中しんの延び方向である。
【0017】
上記構成により、内壁、外壁および縦壁からなる三重壁に圧縮荷重が負荷されても、圧縮が掛かる方向と段ボールシートの段方向とが一致しているので、三重壁構造の圧縮強度を高くできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のトレイによれば、トレイ本体の縦壁を補強できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態のトレイ10は、段ボールシート(紙)を打ち抜いた各1個のトレイ本体11およびカバー部材40から構成されている。このトレイ10は、例えばいちごパックを10個収納する。なお、段ボールシートは、
図4に示すように、表紙1および裏紙2の間に波状をなすように中しん3が延びている。この中しん3の延び方向を段方向という。
【0022】
図2および
図3に示すように、トレイ本体11は、矩形の底壁13と、底壁13の長辺に連設された側壁(縦壁)15と、底壁13の短辺に連設された端壁(縦壁)25とを備えている。これら側壁15と端壁25とが外周壁を構成している。トレイ本体11では、一対の端壁25,25の間にかける方向が段方向である。
【0023】
側壁15は1枚(単一)の矩形板からなる一重壁であり、その両端縁には折込片16が連設されている。側壁15の
図3中、上下(横)方向の寸法をL1とする。底壁13と側壁15との境界部分には第1折曲線18が設けられ、側壁15と折込片16との境界部分には第2折曲線19が設けられている。第1折曲線18上の中央部には、矩形の第1係止孔(係止部)21が形成されている。第1係止孔21の両外側には第1折曲線18上に、六角形状の第2係止孔22が形成されている。なお折曲線とは、段ボールに対して裏側から肉厚を圧縮するように罫を入れることにより設けられた線である。
【0024】
端壁25は、底壁13から外方に向かって順次連設された外端板26、頂板27および内端板28からなり、二重壁に形成される。内端板28の、頂板27と反対側の端縁には一対の係止突起29,29が形成されている。底壁13と外端板26との境界部分には第3折曲線32が設けられている。底壁13には第3折曲線32に沿って係止突起29と対応する一対の第3係止孔33が形成されている。頂板27と外端板26との境界部分および頂板27と内端板28との境界部分にはそれぞれ、第4折曲線34,35が設けられている。
【0025】
図5および
図6に示すように、カバー部材40は基部壁である枠板41と、端壁25の内側面に沿って配置される端脚板45と、側壁15に沿って配置される補強壁部60とを備えている。なおカバー部材40では、一対の補強壁部60の間にかけて中しん3が延びている。
【0026】
矩形の枠板41は、底壁13の外形輪郭の形状と寸法が同じであり、いちごパック(図示せず)が挿入される6個の第1パック挿入口(位置決め孔)43および4個の第2パック挿入口(位置決め孔)44が形成されている。
【0027】
第1パック挿入口43と第2パック挿入口44とは、一対の端脚板45,45の間にかけて交互に配置されている。第1パック挿入口43および第2パック挿入口44の長い開口辺の中央部には、対向する開口辺に向かって延びる保持片48が連設されている。保持片48の長さは、第1パック挿入口43および第2パック挿入口44の短い開口辺の長さの約半分である。枠板41と保持片48との境界部分には第2リード罫49が設けられている。枠板41の長手方向と直交する方向に隣り合う第2パック挿入口44の開口辺のうち、近接する短い開口辺には、中脚板51が連設されている。一方の中脚板51の先端縁には係合突片52が、他方の中脚板51の先端縁には係合凹部53がそれぞれ形成されている。枠板41と中脚板51の根元との境界部分には第3リード罫55が設けられている。枠板41と中脚板51の両端縁との境界部分には第1切断線56が設けられている。
【0028】
端脚板45は、先端が底壁13上に載置されて端壁25に沿って延びる。端脚板45は枠板41の両側縁に連接された矩形の板状であり、枠板41と端脚板45との境界部分には第1リード罫47が設けられている。なおリード罫とは、折曲線と、この折曲線に沿って所定間隔をもって設けた不連続の切断線とからなる罫線である。
【0029】
補強壁部60は、枠板41から外方に向かって順次連設された内壁61,頂板62および外壁63からなる。
【0030】
内壁61は、トレイ本体11への組付状態で側壁15の内側面に沿って延びる。枠板41と内壁61との境界部分には、第4リード罫65と第2切断線66とが交互に設けられている。第4リード罫65により内壁61を折り曲げるときに、内壁61は折り曲げやすくなる。第2切断線66は両端に直交方向に延びる切断部69,69を備え、第2切断線66が内壁61の内面に当接することにより、内壁61が折り曲げられた状態を維持し易くなる。内壁61の後述する第5折曲線67と直交する方向の寸法をL2とする。寸法L2は寸法L1よりも小さい。
【0031】
頂板62は、トレイ本体11への組付状態で側壁15の上端部を覆う。頂板62には、内壁61から外壁63にわたる3辺からなる第3切断線70の内側に、段積突起71となる部分が形成されている。段積突起71は第2係止孔22に対応する位置に形成されている。頂板62と内壁61との境界部分および頂板62と外壁63との境界部分にはそれぞれ、第5折曲線67,68が設けられている。
【0032】
外壁63は、トレイ本体11への組付状態で側壁15の外側面に沿って延びる。外壁63の第5折曲線68と直交する方向の寸法をL3とする。寸法L3は寸法L1に一致する。外壁63の外端縁には中央部に、トレイ本体11の第1係止孔21に係止する係止片(係止部)73が形成されている。外壁63と係止片73との境界部分には第6折曲線75が設けられている。係止片73の両端部には、外端縁から外壁63に向かって互いに広がるように傾斜する一対の第7折曲線76が設けられている。
【0033】
上述のブランクを組み立てるために、まずトレイ本体11の底壁13から第1折曲線18に沿って側壁15を起こすように折り曲げ、折込片16を第2折曲線19に沿って内方に折り曲げる。そして外端板26を第3折曲線32に沿って起こすように折り曲げ、頂板27を第4折曲線34に沿って内側水平方向に、内端板28を第4折曲線35に沿って下方に順次折り曲げ、折込片16を外端板26と内端板28との間に挟み込む。この後、係止突起29を第3係止孔33に挿入して係止することで、内端板28の反発による折り曲げの戻りを阻止し、端壁25を起立状態に保持してトレイ本体11が完成する。
【0034】
次に、カバー部材40の内壁61を第4リード罫65と第2切断線66とに沿って起こすように折り曲げ、頂板27を第5折曲線67に沿って外側水平方向に、外壁63を第5折曲線68に沿って下方に折り曲げる。また一対の端脚板45を第1リード罫47に沿って下方に折り曲げる。更に、隣り合う第2パック挿入口44の中脚板51を第3リード罫55に沿って下方に折り曲げると、第1切断線56に沿って中脚板51が枠板41から分離し、係合突片52と係合凹部53とを交差することで係止する。そして、第1パック挿入口43および第2パック挿入口44の保持片48を第2リード罫49に沿って下方に折り曲げる。
【0035】
この後、内壁61と外壁63との間にトレイ本体11の側壁15を挟み込むように枠板41をトレイ本体11に挿入すると、端脚板45の先端と中脚板51の先端とがトレイ本体11の底壁13に接地する。そしてカバー部材40の係止片73を第6折曲線75に沿って内方に折り曲げ、第1係止孔21内に挿入して係止することで、外壁63を側壁15に係止してトレイ10が完成する。
【0036】
トレイ10が完成した状態では
図7に示すように、側壁15の寸法L1が内壁61の寸法L2よりも大きいので、枠板41はトレイ本体11の底壁13と側壁15の上端との間に位置し、底壁13から浮いた状態で水平に配設されている。カバー部材40の外壁63はトレイ本体11の側壁15の外側面に沿ってその上端から下端にかけて配置されるので、外壁63が上下(圧縮)方向に側壁15を補強する。また側壁15の下部は外壁63と側壁15とにより二重壁構造に形成され、側壁15の上部は外壁63と側壁15と内壁61とにより三重壁構造に形成されるので、トレイ10の当該壁部の剛性を高めることができる。更に、外壁63を側壁15の外側面に沿って配置するだけなので、組み立て時の作業性を向上できる。外壁63と側壁15とで少なくとも二重壁構造を形成するので、側壁15自体を二重壁にする必要がない。これにより隣り合う端壁25と側壁15とを折り曲げて二重壁にする作業の困難性を排除し、組み立て時の作業性を向上できる。
【0037】
また、目的に応じてカバー部材40に異なる印刷を施すことができ、同じ形式のトレイを異なる商品の収納に使用できる。更にカバー部材40をトレイ本体11に組み立てる前に予めトレイ本体11の内部に印刷を施すことができるので、トレイ10の美粧性が向上する。
【0038】
側壁15は段方向が横向きであるため、トレイ10を積み重ねた際の耐圧強度が低い。しかし外壁63の段方向は、組立状態で上下方向に延びる外壁63の突出方向である。従って、外壁63および側壁15からなる二重壁に圧縮荷重が負荷されても、圧縮が掛かる方向と段ボールシートの段方向とが一致しているので二重壁構造の圧縮強度を高くできる。
【0039】
(第2実施形態)
図8は第2実施形態のトレイ10を示す。この第2実施形態では、枠板83を底壁13と側壁15の上端との間で斜めに設けた点で第1実施形態と相違する。これにより、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0040】
(第3実施形態)
図9は第3実施形態のトレイ10を示す。この第3実施形態では、枠板85を底壁13に重ね合わせた点で第1実施形態と相違する。これによりトレイ10の側部を三重壁構造にし、より剛性を高めると共に、底部を二重壁構造にして剛性を向上できる。
【0041】
(第4実施形態)
図10は第4実施形態のトレイ10を示す。この第4実施形態では、鉛直方向に延びる仕切板87を枠板88から切り起こす点で第1実施形態と相違する。これにより、いちごパックに限らず種々の物をトレイ10内に収容できる。
【0042】
(第5実施形態)
図11は第5実施形態のトレイ10を示す。この第5実施形態では、側壁90と補強壁部91とを外方に傾斜させた点で第1実施形態と相違する。これにより、トレイ10の設計の自由度を高めることができる。
【0043】
(第6実施形態)
図12は第6実施形態のカバー部材を示す。この第6実施形態では、枠板93の4辺全てに補強壁部60,94を連設した点で第1実施形態と相違する。この構成により枠板93を4つの補強壁部60,94でトレイ本体に保持できるので、枠板93の剛性を向上できる。
【0044】
(第7実施形態)
第6実施形態のカバー部材を用いるとき、トレイ本体65は
図13に示す第7実施形態のように、側壁96および端壁97のいずれもが一重壁構造に構成されている。なお、トレイ本体65の側壁96および端壁97は一重壁構造に限定されず、二重壁構造など多重壁構造であってもよい。
【0045】
(第8実施形態)
図14に第8実施形態のカバー部材を示す。この第8実施形態では、枠板99を六角形状に形成し、その1辺ないし6辺に補強壁部100を連設する点で第1実施形態と相違する。このとき、トレイ本体の底壁は枠板99と同じ寸法の六角形状に形成され(図示せず)、トレイ本体の側壁は一重壁または二重壁のいずれに形成されてもよいが、枠板99の補強壁部100が連設されない辺に対向する側壁は二重壁であることが好ましい。
【0046】
(第9実施形態)
図15に第9実施形態の補強部材104を示す。この第9実施形態では、頂板を設けず内壁102および外壁103のみから補強壁部104を構成する点で第1実施形態と相違する。このときトレイ本体は、第1実施形態で採用されたトレイ本体11と同じである。
【0047】
(第10実施形態)
図16に第10実施形態のトレイ本体108を示す。この第10実施形態では、側壁106の上端縁に開口を覆う蓋板107が連設された点で第1実施形態と相違する。このトレイ本体108に装着されるカバー部材の枠板には、側壁106に対向して配置される辺に補強壁部が連設されず、その他の3辺のいずれか、または3辺の全てに補強壁部が連設される。
【0048】
(第11実施形態)
図17に第11実施形態のトレイ本体112を示す。この第11実施形態では、対向する側壁110のそれぞれの上端縁に蓋板111が連設された点で第1実施形態と相違する。このトレイ本体112に装着されるカバー部材の枠板には、側壁110に対向して配置される2辺に補強壁部が連設されず、その他の1辺、または2辺に補強壁部が連設される。
【0049】
(第12実施形態)
図18に第12実施形態のトレイ本体を示す。この第12実施形態では、トレイ本体が樹脂(プラスチック)製のコンテナ114である点で第1実施形態と相違する。このコンテナ114は、矩形状をなす底壁(図示せず)と、底壁の外周縁に立設された側壁115A〜115Dとを備えている。このコンテナ114に装着されるカバー部材の枠板には、少なくとも1辺に補強壁部が連設される。コンテナ114に、印刷が施されたカバー部材を装着することで美粧性を向上できる。また、コンテナ114は繰り返し使用するので、使用の度に洗浄が必要である。しかし、カバー部材を装着して使用することでコンテナ114の内側が汚れるのを防止し、洗浄作業を減らすことができる。コンテナ114にカバー部材を装着し、第1実施形態と同様にカバー部材の位置決め孔に物品を位置決めできるので、物品の輸送中に振動や外力が加わっても、物品同士が衝突するのを防止できる。
【0050】
なお本発明は前記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0051】
第1実施形態では、枠板41の対向する2辺に補強壁部60を連設したが、枠板41の1辺のみに補強壁部60を連設する構成を採用してもよい
。
【0052】
第1実施形態では1つのトレイ本体11に1つのカバー部材40を組み合わせたが、1つのトレイ本体に、底壁よりも寸法が小さい枠板を有する複数のカバー部材を組み合わせてトレイを構成してもよい。
【0053】
トレイ本体11に関しては、第1実施形態では側壁15を一重壁構造に、端壁25を二重壁構造にそれぞれ構成したが、カバー部材40の外壁63と組み合わされて二重壁構造など多重壁構造をなす限りこれに限定されない。
【0054】
第1実施形態では係止片73を第1係止孔21に挿入して係止したが、外壁63を側壁15に係止できる限り特に限定されない。
【0055】
そして前記実施形態では、トレイ本体11およびカバー部材40を段ボール紙によって形成したが、樹脂段ボールを打ち抜いて形成してもよい。また段ボールに限られず、単一の厚紙や樹脂シートにより形成してもよい。