特許第6286207号(P6286207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286207
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】二酸化チタン顔料および製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/00 20060101AFI20180215BHJP
   C01G 23/047 20060101ALI20180215BHJP
   C09C 1/36 20060101ALI20180215BHJP
   C09C 3/06 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   C09C1/00
   C01G23/047
   C09C1/36
   C09C3/06
【請求項の数】16
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-557714(P2013-557714)
(86)(22)【出願日】2012年1月10日
(65)【公表番号】特表2014-511429(P2014-511429A)
(43)【公表日】2014年5月15日
(86)【国際出願番号】US2012020823
(87)【国際公開番号】WO2012121801
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2014年8月25日
【審判番号】不服2016-17634(P2016-17634/J1)
【審判請求日】2016年11月25日
(31)【優先権主張番号】13/044,297
(32)【優先日】2011年3月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500002799
【氏名又は名称】トロノックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ゴパラジュ、 ヴェンカタ ラマ ラオ
(72)【発明者】
【氏名】アシュリー、 マイケル エル.
【合議体】
【審判長】 國島 明弘
【審判官】 日比野 隆治
【審判官】 天野 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−143026(JP,A)
【文献】 特開昭51−2733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C1/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸化物ベース顔料と、
ベース顔料上に直接形成されている多孔性無機コーティングであって、前記多孔性無機コーティングがシリカから成る、多孔性無機コーティングと、
前記多孔性無機コーティングの上でベース顔料上に形成されている高密度無機コーティングであって、前記高密度無機コーティングがアルミナから成る、高密度無機コーティング
とを含む、コーティングされた無機酸化物顔料。
【請求項2】
前記無機酸化物ベース顔料が二酸化チタン顔料である、請求項1に記載のコーティングされた無機酸化物顔料。
【請求項3】
前記二酸化チタン顔料が、ルチル二酸化チタン顔料である、請求項2に記載のコーティングされた無機酸化物顔料。
【請求項4】
前記多孔性無機シリカコーティングが、前記ベース顔料の重量に基づき5重量%〜14重量%の範囲の量で、前記ベース顔料上に形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティングされた無機酸化物顔料。
【請求項5】
前記多孔性無機シリカコーティングが、前記ベース顔料の重量に基づき5重量%〜10重量%の範囲の量で、前記ベース顔料上に形成されている、請求項4に記載のコーティングされた無機酸化物顔料。
【請求項6】
前記高密度アルミナ無機コーティングが、前記ベース顔料の重量に基づき2重量%〜14重量%の範囲の量で、前記ベース顔料上に形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコーティングされた無機酸化物顔料。
【請求項7】
前記高密度アルミナ無機コーティングが、前記ベース顔料の重量に基づき3重量%〜9重量%の範囲の量で、前記ベース顔料上に形成されている、請求項6に記載のコーティングされた無機酸化物顔料。
【請求項8】
無機酸化物ベース顔料と、
ベース顔料上に形成されている多孔性無機コーティングであって、前記多孔性無機コーティングがシリカから成り、前記ベース顔料の重量に基づき5重量%〜14重量%の範囲の量で前記ベース顔料上に形成されている、多孔性無機コーティングと、
ベース顔料上に形成されている高密度無機コーティングであって、前記高密度無機コーティングがアルミナから成り、前記ベース顔料の重量に基づき2重量%〜14重量%の範囲の量で、前記ベース顔料上に形成されている、高密度無機コーティングと、
アルミナから成る追加の多孔性無機コーティングであって、前記ベース顔料の重量に基づき2重量%〜14重量%の範囲の量で前記ベース顔料上に形成されている、追加の多孔性無機コーティング
とを含む、コーティングされた無機酸化物顔料であって、
前記多孔性アルミナコーティングが前記ベース顔料上に直接形成されており、
前記多孔性シリカコーティングが、前記多孔性アルミナコーティングの上で前記ベース顔料上に形成されており、
前記高密度アルミナコーティングが、前記多孔性シリカコーティングの上で前記ベース顔料上に形成されている、
コーティングされた無機酸化物顔料。
【請求項9】
アルミナおよびシリカから成る群より選択される材料から成る追加の多孔性無機コーティングまたは高密度無機コーティングをさらに含み、
前記追加の多孔性無機コーティングまたは高密度無機コーティングが、前記高密度アルミナコーティングの上で前記ベース顔料上に形成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のコーティングされた無機酸化物顔料。
【請求項10】
前記追加の多孔性無機コーティングまたは高密度無機コーティングが、高密度無機コーティングである、請求項9に記載のコーティングされた無機酸化物顔料。
【請求項11】
前記追加の多孔性無機コーティングまたは高密度無機コーティングが、多孔性無機コーティングである、請求項9に記載のコーティングされた無機酸化物顔料。
【請求項12】
前記追加の多孔性無機コーティングまたは高密度無機コーティングが、アルミナから成る、請求項9に記載のコーティングされた無機酸化物顔料。
【請求項13】
前記追加の多孔性無機コーティングまたは高密度無機コーティングが、シリカから成る、請求項9に記載のコーティングされた無機酸化物顔料。
【請求項14】
無機酸化物ベース顔料と、
ベース顔料上に形成されている多孔性無機コーティングであって、前記多孔性無機コーティングがシリカから成り、前記ベース顔料の重量に基づき5重量%〜14重量%の範囲の量で前記ベース顔料上に形成されている、多孔性無機コーティングと、
ベース顔料上に形成されている高密度無機コーティングであって、前記高密度無機コーティングがアルミナから成り、前記ベース顔料の重量に基づき2重量%〜14重量%の範囲の量で、前記ベース顔料上に形成されている、高密度無機コーティングと、
アルミナから成る追加の多孔性無機コーティングであって、前記ベース顔料の重量に基づき2重量%〜14重量%の範囲の量で前記ベース顔料上に形成されている、追加の多孔性無機コーティングと、
アルミナから成る追加の高密度無機コーティングであって、前記ベース顔料の重量に基づき2重量%〜14重量%の範囲の量で前記ベース顔料上に形成されている、追加の高密度無機コーティングと、
シリカから成る追加の高密度無機コーティングであって、前記ベース顔料の重量に基づき5重量%〜14重量%の範囲の量で前記ベース顔料上に形成されている、追加の高密度無機コーティング
とを含み、
前記高密度アルミナコーティングのうちの一方が、前記ベース顔料上に直接形成されており、前記多孔性シリカコーティングが、前記高密度アルミナコーティングの上で前記ベース顔料上に形成されており、前記高密度アルミナコーティングのうちの他方が、前記多孔性シリカコーティングの上で前記ベース顔料上に形成されており、前記高密度シリカコーティングが、前記高密度アルミナコーティングの上で前記ベース顔料上に形成されており、前記多孔性アルミナコーティングが、前記高密度シリカコーティングの上で前記ベース顔料上に形成されている、
コーティングされた無機酸化物顔料。
【請求項15】
前記多孔性無機コーティングおよび前記高密度無機コーティングが、前記ベース顔料の重量に基づいて26重量%以下を構成する、請求項1〜14のいずれか1項に記載のコーティングされた無機酸化物顔料。
【請求項16】
前記多孔性無機コーティングおよび前記高密度無機コーティングが、前記ベース顔料の重量に基づいて15重量%〜18重量%を構成する、請求項15に記載のコーティングされた無機酸化物顔料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
無機酸化物、例えば二酸化チタンは、塗料、紙、ポリマー組成物、および他の製品と関連して、顔料として使用される。そのような顔料は一般に、特定の性質および特徴(例えば、特定の粒径、形、および格子構造)を有する粉末形態で製造される。顔料粒子は典型的には、1種以上の材料でコーティングされて、特定の用途のために顔料の性質および特徴を変更または向上させられる。例えば、顔料粒子はしばしば、顔料の不透明度、明度、光安定性、耐久性、および光散乱特性または色強度(隠蔽力)を改善するように機能する化合物でコーティングされる。
【0002】
白色顔料としての使用のために非常に一般的である無機酸化物は、二酸化チタンである。二酸化チタンは、硫酸法または塩素化法によって製造することができる。
【0003】
二酸化チタンを製造するための硫酸法においては、チタンスラグ鉱石、通常チタン鉄鉱を硫酸に溶かして、硫酸チタニルを含むサルフェートの混合物を形成する。鉄が溶液から除去される。その後、硫酸チタニルは溶液中で加水分解されて、不溶性の水和二酸化チタンを生じる。水和二酸化チタンはか焼器中で加熱されて、水を蒸発させ、固体中の硫酸を分解する。固体は次に、種結晶に転化され、これは、所望の大きさに粉砕することができる。
【0004】
二酸化チタンを製造するための塩素化法においては、乾燥二酸化チタン鉱石が、コークスおよび塩素と一緒に塩素処理器へ供給されて、ハロゲン化チタン(例えば四塩化チタン)を作る。気体状ハロゲン化チタン(例えば四塩化チタン)および酸素の流れが加熱され、高い流速で長い蒸気相酸化反応器導管へと導入される。高温(約2000°F〜2800°F)の酸化反応が反応器導管中で起こり、それによって粒状固体二酸化チタンおよび気体状反応生成物が製造される。二酸化チタンおよび気体状反応生成物はその後冷却され、二酸化チタン粒子が回収される。
【0005】
無機酸化物顔料、例えば二酸化チタン顔料に関連する潜在的問題は、ベース媒体(すなわち、顔料が組み込まれる塗料、紙、ポリマー組成物、または他の材料のスラリー)中で顔料粒子が凝集するかまたは塊になる傾向である。顔料粒子の凝集または塊状集積は、顔料の望ましい特性(顔料の不透明度、明度、および光散乱効率を包含する)に有害な影響を与え得る。
【0006】
ベース媒体中の高濃度の顔料から生じ得る関連する問題は、オプティカルクラウディング(optical crowding)と称されるものである。例えば、オプティカルクラウディングは、高濃度の顔料がポリマー組成物中に組み込まれるときに生じ得る。ベース媒体中の顔料の濃度がある水準まで増加するとき、顔料の光散乱効率または色強度が実質的に低下し得る。無機酸化物顔料粒子の光散乱断面は、顔料粒子の実際の断面(積)より有意に大きい。高い顔料濃度では、顔料粒子は互いにより近くなり、このことは、粒子のそれぞれの光散乱断面の重複を生じ、それによって、分散される顔料の光散乱効率を低下させる。顔料の光散乱効率の他に、オプティカルクラウディング効果はまた、顔料の光安定性、明度、および不透明度を低下させ得る。
【0007】
無機酸化物顔料粒子の凝集および集塊集積を防止し、オプティカルクラウディング効果を減らすための試みに、種々の技術が使用されてきた。例えば、粒子の表面電荷を変更し、他の特性を粒子に与えるように機能する種々の無機化合物で、顔料粒子がコーティングされてきた。また、スペーサー、充填剤、および増量剤が使用されて、隣接粒子を互いから離して隣接粒子の間隔があけられた。例えば、顔料粒子を含む水性スラリー中で、in situで、スペーサー粒子を、顔料粒子の表面に形成することができる。使用されてきたスペーサー、充填剤、および増量剤の例は、クレー、炭酸カルシウム、アルミナ、シリカ、および他の金属酸化物化合物を包含する。金属酸化物粒子、例えばジルコニアおよびチタニアもまた使用することができるが、そのような物質は、商業的規模での使用には費用がひどく高くなり得る。
【0008】
種々の成功の程度でそのような技術を使用してきたが、なお改善の余地がある。例えば、スペーサー粒子はベース媒体中に分散しにくいことがあり、実際に、使用され得る二酸化チタン粒子の濃度を減少させ得る。また、改善された光散乱特性を有するように加工処理された、多くの乾燥した隠蔽等級(hide grade)の顔料は、比較的低いかさ密度を有し、ふわふわしており、これは、顔料を取り扱いし難く、袋詰めし難く、輸送し難くする。例えば、処理された二酸化チタン顔料を最大限に袋または他の容器に詰めることを、顔料をまず脱気することなしに効率的なやり方で達成するのは困難であり得る。連続した製造および包装プロセスにおいて、最大限に容器を充填し、各袋に一貫した所定量の顔料を与えるのに必要とされる追加的な時間および取り扱いは、プロセスを非効率にし得る。
【0009】
顔料の低いかさ密度に関連した問題を克服するために、幾らかの乾燥した隠蔽等級の顔料が、高い(65〜75%)固形分濃度を有するスラリーの形態で供給される。しかしながら、スラリーの使用は、幾つかの用途においては問題となり得る。
【発明の概要】
【0010】
発明の簡単な概要
1つの態様において、本発明は、コーティングされた無機酸化物顔料を提供する。本発明のコーティングされた無機酸化物顔料は、無機酸化物ベース顔料、ベース顔料上に形成される多孔性無機コーティング、およびベース顔料上に形成される高密度無機コーティングを含む。多孔性無機コーティングおよび高密度無機コーティングはそれぞれ本質的に、シリカおよびアルミナからなる群より選択される材料から成る。
別の態様において、本発明は、コーティングされた無機酸化物顔料を製造する方法を提供する。本発明の方法は以下のステップ:
a)無機酸化物ベース顔料を含む水性スラリーを形成するステップと;
b)水性スラリー中で、in situで、少なくとも1種の多孔性無機コーティングを無機酸化物ベース顔料粒子上に形成するステップであって、多孔性無機コーティングは本質的に、アルミナおよびシリカからなる群より選択される材料から成る、ステップと;
c)水性スラリー中で、in situで、少なくとも1種の高密度無機コーティングを無機酸化物ベース顔料粒子上に形成するステップであって、高密度無機コーティングは本質的に、アルミナおよびシリカからなる群より選択される材料から成る、ステップ
とを含む。
【0011】
本発明の方法のステップb)およびc)の順序は変化し得る。例えば、高密度無機コーティングがまずベース顔料粒子上に形成されるなら、ステップc)は、ステップb)の前に行われる。
【0012】
なお別の態様において、本発明はポリマー組成物を提供する。ポリマー組成物は、ベースポリマー、および、ベースポリマーと混合されたコーティングされた無機酸化物顔料を含む。コーティングされた無機酸化物顔料は、無機酸化物ベース顔料、ベース顔料上に形成される多孔性無機コーティング、およびベース顔料上に形成される高密度無機コーティングを含む。多孔性無機コーティングおよび高密度無機コーティングはそれぞれ本質的に、アルミナおよびシリカからなる群より選択される材料から成る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、その上に形成された種々の多孔性および高密度コーティングを有する本発明のコーティングされた無機酸化物顔料の例を説明する。
図2図2は、その上に形成された種々の多孔性および高密度コーティングを有する本発明のコーティングされた無機酸化物顔料の例を説明する。
図3図3は、その上に形成された種々の多孔性および高密度コーティングを有する本発明のコーティングされた無機酸化物顔料の例を説明する。
図4図4は、その上に形成された種々の多孔性および高密度コーティングを有する本発明のコーティングされた無機酸化物顔料の例を説明する。
図5図5は、その上に形成された種々の多孔性および高密度コーティングを有する本発明のコーティングされた無機酸化物顔料の例を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の好ましい実施態様の詳細な説明
本発明は、コーティングされた無機酸化物顔料、コーティングされた無機酸化物顔料を製造する方法、およびポリマー組成物を包含する。本発明の各態様に従えば、無機ベース顔料粒子は、少なくとも1種の多孔性無機コーティングおよび少なくとも1種の高密度無機コーティングでコーティングされる。
【0015】
本発明の種々の態様の無機酸化物ベース顔料は、例えば二酸化チタン顔料であり得る。二酸化チタンベース顔料は、目下商業的に製造される二酸化チタンの2種の結晶多形成形態、すなわちルチル形態(二酸化チタンを製造するための塩素化法もしくは硫酸法によって製造することができる)またはアナターゼ形態(主として、二酸化チタンを製造するための硫酸法によって製造される)のいずれをも包含する任意の形態であることができる。例えば、本発明のコーティングされた無機酸化物顔料と関連して使用される無機酸化物ベース顔料は、二酸化チタンを製造するための塩素化法によって製造されるルチル二酸化チタン顔料であることができる。
【0016】
本発明の種々の態様の無機酸化物ベース顔料は、結晶格子に与えられる添加物を含むことができる。例えば、顔料のルチル化を促進するために、二酸化チタン顔料を製造するための塩素化法の酸化段階において、塩化アルミニウムを反応物に添加することができる。本発明の種々の態様のコーティングされた無機酸化物顔料および無機酸化物ベース顔料は、粉末の形態で製造される。かくして、本明細書において、および添付の特許請求の範囲において使用されるように、「顔料」(例えば「無機酸化物ベース顔料」または「二酸化チタンベース顔料」)は、複数の顔料の粒子を含む。
【0017】
反対の記載がなければ、本明細書において使用されるように、ベース顔料または他の材料、例えば粒子もしくはコーティングの「上に形成される」、「上に堆積される」、および「上に沈殿される」は、ベース顔料または他の材料の上に(場合によって)直接または間接に形成、堆積、または沈殿されることを意味する。例えば、他に記載がなければ、無機酸化物ベース顔料上に形成される少なくとも1種の多孔性無機コーティングは、多孔性無機コーティングが、無機酸化物ベース顔料上に、または、無機酸化物ベース顔料上に直接または間接に形成される1つ以上のコーティング上に、直接形成されることを意味する。本明細書において、および添付の特許請求の範囲において使用されるように、「本質的に成る」とは、当該コーティングが、コーティングの基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼす他の化合物もしくは成分を含まないことを意味する。
【0018】
本発明のコーティングされた無機酸化物顔料の無機酸化物ベース顔料上に、本発明の方法に従って形成される多孔性無機コーティングおよび高密度無機コーティングはそれぞれ本質的に、アルミナおよびシリカからなる群より選択される材料から成る。当業者によって理解されるように、アルミナおよびシリカから選択される材料から本質的に成る多孔性無機酸化物コーティング、ならびに、アルミナおよびシリカから選択される材料から本質的に成る高密度無機酸化物コーティングの形態は、有意に異なる。例えば、下記で説明されるように、そのような材料から本質的に成る多孔性コーティングでコーティングされたベース顔料粒子の表面積は一般に、同じ材料から本質的に成る高密度コーティングでコーティングされたベース顔料粒子の表面積より大きい。多孔性アルミナコーティングは、水和した水酸化アルミニウムで形成される。高密度アルミナコーティングは、含水アルミナで形成される。多孔性シリカコーティングは、水和した無定形シリカで形成される。高密度シリカコーティングもまた、水和した無定形シリカで形成される。下記で説明されるように、多孔性コーティングまたは高密度コーティングが、水性スラリー中で、in situでベース顔料粒子上に形成されるかどうかは、例えば、沈殿プロセス中のスラリーのpHに依存する。
【0019】
本発明のコーティングされた無機酸化物顔料は、無機酸化物ベース顔料、ベース顔料上に形成される多孔性無機コーティング、およびベース顔料上に形成される高密度無機コーティングを含む。少なくとも1種の多孔性無機コーティングおよび少なくとも1種の高密度無機コーティングを含む限り、本発明のコーティングされた無機酸化物顔料は、追加の多孔性および/または高密度無機コーティングをなお含むことができる。多孔性無機コーティングおよび高密度無機コーティングがベース顔料上に形成される順序は変化し得る。例えば、多孔性無機コーティングをまずベース顔料上に形成することができ、その後、高密度無機コーティングを、多孔性無機コーティングの上でベース顔料上に形成することができる。あるいは、例えば、高密度無機コーティングをまずベース顔料上に形成することができ、その後、多孔性無機コーティングを高密度無機コーティングの上でベース顔料上に形成することができる。さらなる例として、2種の多孔性無機コーティングおよび1種の高密度無機コーティングを、その順序で、ベース顔料上に形成することができる。多孔性無機コーティングおよび高密度無機コーティングはそれぞれ本質的に、アルミナおよびシリカからなる群より選択される材料から成る。
【0020】
多孔性無機コーティングおよび高密度無機コーティングは、約40℃〜約90℃の範囲の温度で、水性スラリー中でin situで、ベース顔料上に形成される。多孔性無機コーティングおよび高密度無機コーティングは好ましくは、約40〜約80℃の範囲の温度で、ベース顔料上に形成される。
【0021】
多孔性無機コーティングがベース顔料上に形成されるpHは、多孔性無機コーティングの性質に依存して変化する。多孔性無機コーティングがベース顔料上に形成される量もまた、コーティングの性質に依存して変化する。
【0022】
例えば、多孔性無機コーティングは本質的にアルミナから成ることができる。多孔性無機コーティングが本質的にアルミナから成るとき、約8〜約11、好ましくは約8〜約10、より好ましくは約8〜約9の範囲のpHでベース顔料上に形成される。多孔性アルミナコーティングがベース顔料上に形成される量は、ベース顔料の重量に基づき、好ましくは約2〜約14重量%の範囲、より好ましくは約2〜約10重量%の範囲、なおさらに好ましくは約2〜約6重量%の範囲である。
【0023】
多孔性無機コーティングはまた本質的にシリカから成ることができる。多孔性無機コーティングが本質的にシリカから成るとき、約3〜約7、好ましくは約3〜約6、より好ましくは約3〜約5の範囲のpHでベース顔料上に形成される。多孔性シリカコーティングがベース顔料上に形成される量は、ベース顔料の重量に基づき、好ましくは約5〜約14重量%の範囲、より好ましくは約5〜約10重量%の範囲、なおさらに好ましくは約5〜約7重量%の範囲である。
【0024】
高密度無機コーティングがベース顔料上に形成されるpHはまた、高密度無機コーティングの性質に依存して変化する。高密度無機コーティングがベース顔料上に形成される量もまた、コーティングの性質に依存して変化する。
【0025】
例えば、高密度無機コーティングは本質的にシリカから成ることができる。高密度無機コーティングが本質的にシリカから成るとき、約8〜約11、好ましくは約8〜約10、より好ましくは約9〜約10の範囲のpHでベース顔料上に形成される。高密度シリカコーティングがベース顔料上に形成される量は、ベース顔料の重量に基づき、好ましくは約5〜約14重量%の範囲、より好ましくは約5〜約10重量%の範囲、なおさらに好ましくは約5〜約7重量%の範囲である。
【0026】
高密度無機コーティングはまた本質的にアルミナから成ることができる。高密度無機コーティングが本質的にアルミナから成るとき、約4〜約7、好ましくは約5〜約7、より好ましくは約5〜約6の範囲のpHでベース顔料上に形成される。高密度アルミナコーティングがベース顔料上に形成される量は、ベース顔料の重量に基づき、好ましくは約2〜約14重量%の範囲、より好ましくは約3〜約9重量%の範囲、なおさらに好ましくは約3〜約6重量%の範囲である。
【0027】
先に記載したように、本発明のコーティングされた無機酸化物顔料が少なくとも1種の多孔性無機コーティングおよび少なくとも1種の高密度無機コーティングを含む限り、コーティングの組成(アルミナまたはシリカ)、コーティングの数、および、コーティングがベース顔料上に形成される順序は、互いに、用途に依存して変化し得る。例えば、1種の多孔性コーティングおよび1種の高密度コーティング(両方が本質的にシリカまたはアルミナから成る)がベース顔料上に形成され得る。さらなる例として、本質的にアルミナから成る単一の多孔性コーティングおよび本質的にシリカから成る単一の高密度コーティング(または逆も同様である)をベース顔料上に形成することができる。高密度無機コーティングを多孔性無機コーティングの上に形成することができ、逆も同様である。
【0028】
1つの実施態様において、例えば、本発明のコーティングされた無機酸化物顔料は:(a)本質的にアルミナから成り、約8〜約11の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約2〜約14重量%の範囲の量でベース顔料上に形成される、多孔性無機コーティング;(b)本質的にシリカから成り、約8〜約11の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約5〜約14重量%の範囲の量でベース顔料上に形成される、高密度無機コーティング;および(c)本質的にシリカから成り、約3〜約7の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約5〜約14重量%の範囲の量でベース顔料上に形成される、追加の多孔性無機コーティングを含むことができる。多孔性シリカコーティングはベース顔料上に直接形成され、高密度シリカコーティングは多孔性シリカコーティングの上でベース顔料上に形成され、かつ多孔性アルミナコーティングは高密度シリカコーティングの上でベース顔料上に形成される。
【0029】
別の実施態様において、例えば、本発明のコーティングされた無機酸化物顔料は:(a)本質的にシリカから成り、約3〜約7の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約5〜約14重量%の範囲の量でベース顔料上に形成される、多孔性無機コーティング;(b)本質的にアルミナから成り、約4〜約7の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約2〜約14重量%の範囲の量でベース顔料上に形成される、高密度無機コーティング;および(c)本質的にアルミナから成り、約8〜約11の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約2〜約14重量%の範囲の量でベース顔料上に形成される、追加の多孔性無機コーティングを含むことができる。多孔性アルミナコーティングはベース顔料上に直接形成され、多孔性シリカコーティングは多孔性アルミナコーティングの上でベース顔料上に形成され、かつ高密度アルミナコーティングは多孔性シリカコーティングの上でベース顔料上に形成される。
【0030】
なお別の実施態様において、例えば、本発明のコーティングされた無機酸化物顔料は:(a)本質的にシリカから成り、約3〜約7の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約5〜約14重量%の範囲の量でベース顔料上に形成される、多孔性無機コーティング;(b)本質的にアルミナから成り、約4〜約7の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約2〜約14重量%の範囲の量でベース顔料上に形成される、高密度無機コーティング;(c)本質的にアルミナから成り、約8〜約11の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約2〜約14重量%の範囲の量でベース顔料上に形成される、追加の多孔性無機コーティング;(d)本質的にアルミナから成り、約4〜約7の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約2〜約14重量%の範囲の量でベース顔料上に形成される、追加の高密度無機コーティング;および(e)本質的にシリカから成り、約8〜約11の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約5〜約14重量%の範囲の量でベース顔料上に形成される、追加の高密度無機コーティングを含むことができる。高密度アルミナコーティングのうちの1つはベース顔料上に直接形成され、多孔性シリカコーティングは高密度アルミナコーティングの上でベース顔料上に形成され、高密度アルミナコーティングのもう一方は、多孔性シリカコーティングの上でベース顔料上に形成され、高密度シリカコーティングは高密度アルミナコーティングの上でベース顔料上に形成され、多孔性アルミナコーティングは高密度シリカコーティングの上でベース顔料上に形成される。
【0031】
本発明のコーティングされた無機酸化物顔料のベース顔料上に形成される、多孔性および高密度コーティングの合計量は、好ましくは、ベース顔料の重量に基づき約26重量%以下である。より好ましくは、発明のコーティングされた無機酸化物顔料のベース顔料上に形成される、多孔性および高密度コーティングの合計量は、ベース顔料の重量に基づき約15〜約18重量%の範囲にある。
【0032】
本発明のコーティングされた無機酸化物顔料は、高濃度で使用されるときでさえ、良好な光散乱効率および色強度(隠蔽力)を有し、また比較的高いかさ密度および良好な加工処理特性を有する。本発明の顔料は、乾燥形態およびスラリー形態の両方で顧客に提供することができる。少なくとも1種の高密度無機コーティングと一緒に少なくとも1種の多孔性無機コーティングを使用することは、良好な光学特性を有し、また比較的加工処理しやすい顔料を結果として生じる。例えば、多孔性コーティングは、ベース顔料の、隠蔽力を含む光学特性を高める。高密度コーティングは、コーティングされた顔料の加工適性を高め、顔料の特性、例えばオイル吸着、表面積、およびかさ密度(これらは、ベース顔料上の高濃度の多孔性金属酸化物コーティングによって悪影響を及ぼされ得る)を制御する。例えば、本発明の顔料は、良好な光学特性、例えば光強度、および改善された加工適性を有する良好な乾燥隠蔽等級品質の顔料を作る。さらなる例として、その光散乱効率および高い屈折率のために、本発明の顔料は、漂白剤、着色剤、もしくは乳白剤としてその中で働くように、ポリマー中で高濃度で使用するのに非常に適当である。
【0033】
本発明の、コーティングされた無機酸化物顔料の製造方法は、以下のステップを含む:
a)無機酸化物ベース顔料を含む水性スラリーを形成するステップと;
b)水性スラリー中で、in situで、少なくとも1種の多孔性無機コーティングを無機酸化物ベース顔料粒子上に形成するステップであって、多孔性無機コーティングは本質的に、アルミナおよびシリカからなる群より選択される材料から成る、ステップと;
c)水性スラリー中で、in situで、少なくとも1種の高密度無機コーティングを無機酸化物ベース顔料粒子上に形成するステップであって、高密度無機コーティングは本質的に、アルミナおよびシリカからなる群より選択される材料から成る、ステップ。
【0034】
水性スラリーは、所望量のベース無機酸化物顔料と水を混合することによって、上記のステップa)に従って形成される。例えば、1ミリリットル当たり約1.35グラムのスラリー密度を達成するのに十分な水の量を使用することができる。本発明の方法において使用されるルチル二酸化チタンの水性スラリーは典型的には、スラリーの全重量に基づき約45重量%未満、好ましくは約35重量%未満の二酸化チタン固形分濃度を有する。
【0035】
ベース顔料上にコーティングを形成する前に、水性スラリーは好ましくは粉砕されて、スラリー中少なくとも約50重量%のベース顔料粒子が0.7ミクロン未満の粒径を有するようにされる。水性スラリーは好ましくは粉砕されて、スラリー中少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約70%のベース顔料粒子が0.5ミクロン未満の粒径を有するようにされる。スラリーを粉砕することは一般に、得られるコーティングされた顔料の色強度をより低くする。
【0036】
水性スラリーは、ケージ粉砕、ビーズ粉砕、およびジェット粉砕、ならびに当業者に既知の他の技術を包含する種々の方法によって粉砕することができる。水性スラリーは好ましくは、スラリーを砂粉砕することによって粉砕される。
【0037】
ベース無機酸化物粒子上に無機コーティングを形成する前に、水性スラリーの温度は、約40〜約90℃の範囲、好ましくは約40〜約80℃の範囲の温度に加熱される。水性スラリーの温度は好ましくは、無機酸化物ベース顔料が水と混合されてスラリーを形成した後、コーティングプロセス中一定の水準に維持されるように、所望の水準に上げられる。
【0038】
水性スラリーのpHは好ましくは、約1.0〜約3.0の範囲、好ましくは約1.5の水準に初期に調整され、スラリーは、ベース顔料粒子の表面上に固定部位を作ってその中での固定部位の形成を助けるのに十分な時間消化させられる。典型的にはスラリーは、この段階で約15分間消化される。消化段階なしでは、顔料粒子の表面は、沈殿された無機酸化物のすべてを受け入れることができず、より低い色強度を生じ得る。
【0039】
水性スラリーのpHは、本発明の方法において、必要なときは、例えば硫酸を用いて下げることができる。水性スラリーのpHは、本発明の方法において、必要なときは、例えば水酸化ナトリウムを用いて上げることができる。
【0040】
種々の無機コーティング前駆体を水性スラリーに添加して、ベース顔料粒子上に多孔性無機コーティングおよび高密度無機コーティングを形成する。無機コーティング前駆体の性質は、形成されるべきコーティングの組成に依存する。例えば、多孔性もしくは高密度のアルミナコーティングが形成されるべきであるなら、使用される無機コーティング前駆体は、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、および硫酸アルミニウムであり得る。アルミン酸ナトリウムが好ましい。多孔性もしくは高密度のシリカコーティングが形成されるべきであるなら、使用される前駆体は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、およびケイ酸であり得る。ケイ酸ナトリウムが好ましい。
【0041】
水性スラリーのpHを、多孔性無機コーティングをベース顔料粒子上に沈殿させるのに十分な水準に調整し、かつ多孔性無機コーティングの必要な前駆体を水性スラリーに添加することによって、多孔性無機コーティングがベース顔料粒子上に形成される。好ましくは、水性スラリーのpHは所望の水準に調整され、スラリーは、多孔性無機コーティング前駆体をそれに添加する前に消化させられる。水性スラリーは、その上に少なくとも1種の多孔性無機コーティングを受け取るための、ベース顔料粒子の表面上における固定部位を形成させるのに十分な時間消化させられる。典型的には、スラリーは、約15分間この段階で消化させられる。消化段階なしでは、顔料粒子の表面は、沈殿された無機酸化物のすべてを受け入れることができず、減少された色強度を生じ得る。
【0042】
多孔性無機コーティングをベース顔料粒子上に沈殿させるのに使用されるpHは、形成されるべきコーティングの組成(アルミナまたはシリカ)に依存する。多孔性無機コーティングを形成するのに使用される前駆体の量はまた、形成されるべきコーティングの組成に依存する。
【0043】
例えば、本質的にアルミナから成る多孔性コーティングをベース顔料粒子上に形成することができる。多孔性コーティングが本質的にアルミナから成るべきとき、この多孔性アルミナコーティングは、約8〜約11、好ましくは約8〜約10、なおさらに好ましくは約8〜約9の範囲のpHでベース顔料粒子上に形成される。ベース顔料の重量に基づき約2〜約14重量%の範囲、好ましくは約2〜約10重量%の範囲、より好ましくは約2〜約6重量%の範囲の量で多孔性アルミナコーティングをベース顔料粒子上に形成させるのに十分な量のアルミナ前駆体が添加される。
【0044】
例えば、本質的にシリカから成る多孔性コーティングもまた、ベース顔料粒子上に形成することができる。多孔性コーティングが本質的にシリカから成るべきとき、この多孔性シリカコーティングは、約3〜約7、好ましくは約3〜約6、なおさらに好ましくは約3〜約5の範囲のpHでベース顔料粒子上に形成される。ベース顔料の重量に基づき約5〜約14重量%の範囲、好ましくは約5〜約10重量%の範囲、より好ましくは約5〜約7重量%の範囲の量で多孔性シリカコーティングをベース顔料粒子上に形成さるのに十分な量のシリカ前駆体が添加される。
【0045】
所望の多孔性無機コーティング前駆体が水性スラリーに添加されたなら、多孔性無機コーティングはベース顔料粒子上に沈殿する。水性スラリーのpHは、コーティングプロセス中、所望の水準に維持される。
【0046】
水性スラリーのpHを、高密度無機コーティングをベース顔料粒子上に沈殿させるのに十分な水準に調整し、かつ高密度無機コーティングの必要な前駆体を水性スラリーに添加することによって、高密度無機コーティングがベース顔料粒子上に形成される。好ましくは、水性スラリーのpHは所望の水準に調整され、スラリーは、高密度無機コーティング前駆体をそれに添加する前に消化させられる。水性スラリーは、その上に少なくとも1種の高密度無機コーティングを受け取るための、ベース顔料粒子の表面における固定部位を形成させるのに十分な時間消化させられる。典型的には、スラリーは、約15分間この段階で消化させられる。消化段階なしでは、顔料粒子の表面は、沈殿された無機酸化物のすべてを受け入れることができず、減少された色強度を生じ得る。
【0047】
高密度無機コーティングをベース顔料粒子上に沈殿させるのに使用されるpHは、形成されるべきコーティングの組成に依存する。高密度無機コーティングを形成するのに使用される前駆体の量はまた、形成されるべきコーティングの組成に依存する。
【0048】
例えば、本質的にシリカから成る高密度コーティングをベース顔料粒子上に形成することができる。高密度コーティングが本質的にシリカから成るべきとき、このシリカコーティングは、約8〜約11、好ましくは約8〜約10、なおさらに好ましくは約9〜約10の範囲のpHでベース顔料粒子上に形成される。ベース顔料の重量に基づき約5〜約14重量%の範囲、好ましくは約5〜約10重量%の範囲、より好ましくは約5〜約7重量%の範囲の量で高密度シリカコーティングをベース顔料粒子上に形成させるのに十分な量のシリカ前駆体が添加される。
【0049】
例えば、本質的にアルミナから成る高密度コーティングをまたベース顔料粒子上に形成することができる。高密度コーティングが本質的にアルミナから成るべきとき、この高密度アルミナコーティングは、約4〜約7、好ましくは約5〜約7、なおさらに好ましくは約5〜約6の範囲のpHでベース顔料粒子上に形成される。ベース顔料の重量に基づき約2〜約14重量%の範囲、好ましくは約3〜約9重量%の範囲、より好ましくは約3〜約6重量%の範囲の量で高密度アルミナコーティングをベース顔料粒子上に形成させるのに十分な量のアルミナ前駆体が添加される。
【0050】
所望の高密度無機コーティング前駆体が水性スラリーに添加されたなら、高密度無機コーティングはベース顔料粒子上に沈殿する。水性スラリーのpHは、コーティングプロセス中、所望の水準に維持される。
【0051】
所望の多孔性無機コーティングおよび高密度無機コーティングがベース顔料粒子上に形成されたなら、スラリーのpHは、必要なときは、約4.5〜約6.0の範囲のpHに調整され、スラリーは、溶液を安定化させ、かつコーティングの硬化および安定化を助けるのに十分な時間消化させられる。スラリーは典型的には、約15分間この段階で消化させられる。
【0052】
水性スラリーは次にろ過されて、コーティングされた顔料が水性スラリーから除かれ、コーティングされた顔料は洗浄されて、可溶性の塩がコーティングされた顔料から除かれる。例えば、スラリーは、ブフナーロートを用いた減圧ろ過によってろ過されることができる。コーティングされた顔料は、減圧を用いて、顔料のろ過ケーキを通して脱イオン水を吸引することによって洗浄されることができる。
【0053】
得られたろ過ケーキを次に乾燥させ、微粉にして、コーティングされた無機酸化物顔料を本発明に従い回収する。
【0054】
少なくとも1種の多孔性無機コーティングおよび少なくとも1種の高密度無機コーティングがベース顔料粒子上に形成される限り、ベース顔料粒子上に形成される多孔性無機コーティングおよび高密度無機コーティングの数ならびにコーティングの組成(アルミナまたはシリカ)、ならびに、本発明の方法に従いコーティングがベース顔料粒子上に形成される順序は変化し得る。例えば、1種の多孔性コーティングおよび1種の高密度コーティング(両方とも、本質的にシリカまたはアルミナから成る)をベース顔料上に堆積させることができる。さらなる例として、本質的にアルミナから成る単一の多孔性コーティングおよび本質的にシリカから成る単一の高密度コーティング(または逆も同様である)をベース顔料粒子上に堆積させることができる。高密度無機コーティングは、多孔性無機コーティングの上に堆積させることができ、その逆もまた同様である。
【0055】
例えば、1つの実施態様において、本質的にシリカから成る多孔性無機コーティングが、約3〜約7の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約5〜約14重量%の範囲の量で、ベース顔料上に直接形成される。本質的にシリカから成る高密度無機コーティングが、約8〜約11の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約5〜約14重量%の範囲の量で、多孔性シリカコーティングの上でベース顔料上に形成される。本質的にアルミナから成る多孔性無機コーティングが、約8〜約11の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約2〜約14重量%の範囲の量で、高密度シリカコーティングの上でベース顔料上に形成される。
【0056】
別の実施態様において、例えば、本質的にアルミナから成る多孔性無機コーティングが、約8〜約11の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約2〜約14重量%の範囲の量で、ベース顔料上に直接形成される。本質的にシリカから成る多孔性無機コーティングが、約3〜約7の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約5〜約14重量%の範囲の量で、多孔性アルミナコーティングの上でベース顔料上に形成される。本質的にアルミナから成る高密度無機コーティングが、約4〜約7の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約2〜約14重量%の範囲の量で、多孔性シリカコーティングの上でベース顔料上に形成される。
【0057】
本発明の方法のなお別の実施態様において、例えば、本質的にアルミナから成る高密度無機コーティングが、約4〜約7の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約2〜約14重量%の範囲の量で、ベース顔料上に直接形成される。本質的にシリカから成る多孔性無機コーティングが、約3〜約7の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約5〜約14重量%の範囲の量で、高密度アルミナコーティングの上でベース顔料上に形成される。本質的にアルミナから成る高密度無機コーティングが、約4〜約7の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約2〜約14重量%の範囲の量で、多孔性シリカコーティングの上でベース顔料上に形成される。本質的にシリカから成る高密度無機コーティングが、約8〜約11の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約5〜約14重量%の範囲の量で、第2の高密度アルミナコーティングの上でベース顔料上に形成される。本質的にアルミナから成る多孔性無機コーティングが、約8〜約11の範囲のpHで、ベース顔料の重量に基づき約2〜約14重量%の範囲の量で、高密度シリカコーティングの上でベース顔料上に形成される。
【0058】
多孔性無機コーティングおよび高密度無機コーティングは好ましくは、ベース顔料の重量に基づき約26重量%以下を構成する。より好ましくは、多孔性無機コーティングおよび高密度無機コーティングは、ベース顔料の重量に基づき約15〜約18重量%の範囲を構成する。
【0059】
本発明の方法にしたがって形成されるコーティングされた無機酸化物顔料は、高濃度で使用されるときでさえ、良好な光散乱効率および色強度(隠蔽力)を有し、また比較的高いかさ密度および良好な加工処理特性を有する。本発明の方法にしたがって形成されるコーティングされた無機酸化物顔料は、乾燥形態およびスラリー形態の両方で顧客に提供することができる。少なくとも1種の高密度無機コーティングと一緒に少なくとも1種の多孔性無機コーティングを使用することは、良好な光学特性を有し、また比較的加工処理しやすい顔料を結果として生じる。例えば、多孔性コーティングは、ベース顔料の、隠蔽力を含む光学特性を高める。高密度コーティングは、コーティングされた顔料の加工適性を高め、顔料の特性、例えばオイル吸着、表面積、およびかさ密度(これらは、ベース顔料上の高濃度の多孔性金属酸化物コーティングによって悪影響を及ぼされ得る)を制御する。例えば、発明の方法にしたがって形成されるコーティングされた無機酸化物顔料は、良好な光学特性、例えば光強度、および改善された加工適性の両方を有する良好な乾燥隠蔽等級品質の顔料を作る。さらなる例として、その光散乱効率および高い屈折率のために、発明の方法にしたがって形成されるコーティングされた無機酸化物顔料は、漂白剤、着色剤、もしくは乳白剤としてその中で働くように、ポリマー中で高濃度で使用するのに非常に適当である。本発明のコーティングされた無機酸化物顔料は、本発明の方法にしたがって製造することができる。
【0060】
先に述べたように、本発明に従い多孔性コーティングでコーティングされた、コーティングされた無機酸化物顔料粒子の表面積は一般に、同じ材料で形成される高密度コーティングでコーティングされた、コーティングされた無機酸化物顔料粒子の表面積より大きい。比表面積値は、コーティングの量ならびにコーティングの組成(多孔性であるか、または高密度であるか)に依存する。一般に、無機材料(アルミナ、シリカ、またはその混合物)が多く使用されればされるほど、コーティングされた顔料粒子の表面積は大きくなる。シリカコーティングの微孔性の性質のために、シリカでコーティングされたベース顔料粒子は(多孔性シリカコーティングであろうと高密度シリカコーティングであろうと)、相当する量のアルミナでコーティングされたベース顔料粒子の表面積値より有意に高い表面積値を有する。例を以下の表に示す。
【表1】
【0061】
BET表面積は、ASTM D4567-03(2008)に従って決定した。
【0062】
ここで図1〜5に言及すると、本発明のコーティングされた無機酸化物顔料、および本発明の方法にしたがって形成されるコーティングされた無機酸化物顔料の種々の例が説明される。すべての例において、説明された多孔性無機コーティングおよび高密度無機コーティングは、アルミナ、シリカ、またはそれらの混合物で形成される。
【0063】
図1は、ベース顔料粒子の外表面16上に堆積された多孔性無機コーティング14を有する無機酸化物ベース顔料粒子12を説明する。高密度無機コーティング18が、多孔性無機コーティング14の上でベース顔料粒子12の上に堆積される。多孔性無機コーティング20が、高密度無機コーティング18の上でベース顔料粒子12の上に堆積される。最後に、高密度無機コーティング22が、多孔性無機コーティング20の上でベース顔料粒子12の上に堆積される。
【0064】
図2は、ベース顔料粒子の外表面28上に堆積された多孔性無機コーティング26を有する無機酸化物ベース顔料粒子24を説明する。第2の多孔性無機コーティング30が、第1の多孔性無機コーティング26の上でベース顔料粒子24上に堆積される。高密度コーティング32が、多孔性無機コーティング30の上でベース顔料粒子24上に堆積される。最後に、高密度無機コーティング34が、高密度無機コーティング32の上でベース顔料粒子24上に堆積される。
【0065】
図3は、ベース顔料粒子の外表面40上に堆積された多孔性無機コーティング38を有する無機酸化物ベース顔料粒子36を説明する。高密度無機コーティング42が、多孔性無機コーティング38の上でベース顔料粒子36上に堆積される。多孔性無機コーティング44が、高密度無機コーティング42の上でベース顔料粒子36上に堆積される。最後に、多孔性無機コーティング46が、多孔性無機コーティング44上でベース顔料粒子36上に堆積される。
【0066】
図4は、ベース顔料粒子の外表面54上に堆積された高密度無機コーティング52を有する無機酸化物ベース顔料粒子50を説明する。多孔性無機コーティング56が、高密度無機コーティング52の上でベース顔料粒子50上に堆積される。高密度無機コーティング58が、多孔性無機コーティング56の上でベース顔料粒子50上に堆積される。最後に、多孔性無機コーティング60が、高密度無機コーティング58の上でベース顔料粒子50上に堆積される。
【0067】
図5は、ベース顔料粒子の外表面72上に堆積された高密度無機コーティング70を有する無機酸化物ベース顔料粒子68を説明する。第2の高密度無機コーティング74が、第1の高密度無機コーティング70の上でベース顔料粒子68上に堆積される。多孔性無機コーティング76が、高密度無機コーティング74の上でベース顔料粒子68上に堆積される。最後に、第2の多孔性無機コーティング78が、第1の多孔性無機コーティング76の上でベース顔料粒子68上に堆積される。
【0068】
本発明のポリマー組成物は、ベースポリマー、および、ベースポリマーと混合された、コーティングされた無機酸化物顔料を含む。
【0069】
例えば、ベースポリマーはラテックスポリマーであることができる。追加の成分、例えば、増量剤、分散剤、およびレオロジー変更剤もまた、特定の用途に依存して、本発明のポリマー組成物に含むことができる。
【0070】
コーティングされた無機酸化物顔料は、先に記載した本発明のコーティングされた無機酸化物顔料であり、先に記載した本発明の方法に従って形成することができる。
【0071】
コーティングされた無機酸化物顔料は、ポリマー組成物中に、ポリマー組成物の全重量に基づき少なくとも約12重量%の量で存在する。さらに好ましくは、コーティングされた無機酸化物顔料は、ポリマー組成物中に、ポリマー組成物の全重量に基づき約12〜約75重量%の範囲の量で存在する。
【実施例】
【0072】
本発明は下記の実施例によって例示され、下記の実施例は、例としてのみ記載されるものであって、本発明をいかなるように限定するものとしても受けとられるべきではない。
【0073】
下記の実施例のそれぞれにおいて、使用された二酸化チタンベース顔料は、塩素化法に従ってTronox LLCにより製造されたルチル二酸化チタンであった。多孔性シリカコーティングおよび高密度シリカコーティングをベース顔料粒子上に形成するための前駆体として使用されたケイ酸ナトリウムは、密度が1.25 g/ccであって、二酸化ケイ素に対する一酸化ナトリウムの比が0.31である、ケイ酸ナトリウムであった。多孔性アルミナコーティングおよび高密度アルミナコーティングをベース顔料粒子上に形成するための前駆体として使用されたアルミン酸ナトリウムは、密度が1.31 g/ccであって、酸化アルミニウムに対する一酸化ナトリウムの比が0.97である、アルミン酸ナトリウムであった。他に記載がなければ、水性スラリーのpHは、5規定の水酸化ナトリウム溶液を用いることによってより高いpHに調整された。他に記載がなければ、水溶液のpHは、95重量%の硫酸溶液を用いることによってより低いpHに調整された。
【0074】
下記の試験法は、実施例に従って製造された本発明のコーティングされた二酸化チタン顔料を評価するために使用された。
【0075】
[比抵抗]
比抵抗(単位:Ω・cm)は、本発明の場合には溶液をろ過して顔料を溶液から除去することなく比抵抗が計測されたことを除いて、ASTM E-2448に従う方法を用いて計測された。pHは、使用されたpHプローブがエポキシ化合物を充填されたゲル充填プローブであったことを除いて、ASTM E70-07Mに従う方法を用いて、同じ溶液で計測された。
【0076】
[色強度および色調]
色強度および色調は、カーボンブラックで着色され、かつエマルションの体積に基づいて60体積%の試験される本発明のコーティングされた二酸化チタン顔料を含む、ラテックスエマルション調製物を用いて計測された。塗料におけるこのような体積の本発明のコーティングされた二酸化チタン顔料は、このような系についての臨界顔料体積濃度を超えるものであった。サンプルおよび標準顔料は、同一の処方で調製された。両方の塗料はその後、レネタカード(Leneta card)上に並行してドローダウンを作製した(drawn down)。乾燥した塗料のCIE-L*値およびb*値は、積分球分光光度計を用いて計測し、これらの値は、色強度および色調を計算するのに用いられた。
【0077】
色強度は、クベルカ‐ムンクの式(Kubelka Munk Equation)を用いて計算した。
【数1】
式中:
K=カーボンブラック顔料の吸収
S=二酸化チタン顔料の散乱
【0078】
色調は下記のように計算された。
色調=b*サンプル-b*標準+代入値
【0079】
[インク着色性]
インク着色性は、上述した色強度試験において用いられたのと同じ塗料の着色されていないドローダウンを用いて計測した。乾燥したフィルムのCIE-L*値は、積分球分光光度計を用いて計測した。1.0ミリリットルのインクのドローダウンを塗料フィルムに塗布し、2分間浸透させた。インクはその後、ナフサ系溶剤を用いて激しくこすることにより除去し、CIE-L*値を再び計測した。
【0080】
インク着色性の値はその後、下記のように計算された。
インク着色性=L*インク塗布前- L*インク塗布後
【0081】
[油分吸収性]
試験された本発明のコーティングされた二酸化チタン顔料の油分吸収性は、ASTM D281-95の方法に類似する、スパーテル擦り取り法(a spatula rub-out method)を用いて計測した。ASTM D281-95の方法からの唯一の変更点は、試験および計算の両方において5グラムの顔料を用い、その結果が、100グラムの顔料を湿らせるのに必要とされる油分を依然としてグラムで報告することができるようにしたことである。
【0082】
[BET表面積]
コーティングされた無機酸化物顔料のBET表面積は、ASTM D4567-03(2008)に従って計測された。
【0083】
[実施例1]
二酸化チタンベース顔料と、ベース顔料上に沈殿された多孔性シリカコーティングと、多孔性シリカコーティングの上でベース顔料上に沈殿された高密度シリカコーティングと、高密度シリカコーティングの上でベース顔料上に沈殿された多孔性アルミナコーティングとを含有する、コーティングされた無機酸化物顔料を、本発明の方法に従って調製した。
【0084】
二酸化チタンベース顔料を含む水性スラリーは、800 gの二酸化チタンベース顔料を2100 mlの水と混合することにより調製した。水性スラリーはその後十分に粉砕されて、スラリー中70%の二酸化チタンベース顔料粒子が0.5 μm未満の粒径を有するようにした。スラリーはその後、70° Cに加熱された。
【0085】
スラリーのpHは1.5に調整され、スラリーは、顔料粒子上に固定部位を形成して顔料粒子上に無機コーティングを形成するのを助けるために、15分間消化された。
【0086】
pHはその後4.5まで上げられ、このレベルで維持された。水性スラリーが15分間消化された後、200 mlのケイ酸ナトリウムを水性スラリーに加え、多孔性シリカ粒子のコーティングをベース顔料粒子上に沈殿させた。
【0087】
この後、水性スラリーのpHは11まで上げられた。スラリーのpHを11の値に維持しながら、200 mlの追加のケイ酸ナトリウムをスラリーに加え、二酸化チタンベース顔料上の多孔性シリカコーティングの上で二酸化チタンベース顔料上に高密度シリカコーティングを形成した。
【0088】
次に、水性スラリーのpHを11の値に維持し続けながら、90 mlのアルミン酸ナトリウムを水性スラリーに加え、二酸化チタンベース顔料上に形成された高密度シリカコーティングの上で二酸化チタンベース顔料上に多孔性アルミナコーティングを形成した。追加のケイ酸ナトリウムおよびアルミン酸ナトリウムを水性スラリーに15分間に亘って加えた。
【0089】
その後、スラリーのpHを5未満に調整し、スラリーは、スラリーのpHを安定化させ、かつコーティングの硬化と安定化を助けるために、さらに15分間消化された。スラリーはその後ろ過され、コーティングされた顔料をスラリーから除去し、コーティングされた顔料は洗浄され、コーティングされた顔料から可溶性塩を除去した。得られたろ過ケーキを乾燥させ、微粉にして、コーティングされた無機酸化物顔料を本発明に従い回収した。
【0090】
上述の方法に従って測定された、コーティングされた顔料の特性は、下記に示される。
【表2】
【0091】
したがって、本発明の方法に従って形成された本発明のコーティングされた無機酸化物顔料は、良好な光学特性(色強度を含む)および良好なインク着色性の値を有した。この結果は、顔料粒子上への高密度コーティングの沈殿が、粒子の表面積の制御の助けとなることを示す。粒子のより小さい表面積は、粒子のより高いかさ密度を反映する。
【0092】
[実施例2]
二酸化チタンベース顔料と、ベース顔料上に沈殿された多孔性シリカコーティングと、多孔性シリカコーティングの上でベース顔料上に沈殿された高密度アルミナコーティングと、高密度アルミナコーティングの上でベース顔料上に沈殿された高密度シリカコーティングと、高密度シリカコーティングの上でベース顔料上に沈殿された多孔性アルミナコーティングとを含有する、コーティングされた無機酸化物顔料を、本発明の方法に従って調製した。
【0093】
二酸化チタンベース顔料を含む水性スラリーは、800 gの二酸化チタンベース顔料を2100 mlの水と混合することにより調製した。水性スラリーはその後十分に粉砕されて、スラリー中70%の二酸化チタンベース顔料粒子が0.5 μm未満の粒径を有するようにした。スラリーはその後、70° Cに加熱された。
【0094】
スラリーのpHは1.5に調整され、スラリーは、顔料粒子上に固定部位を形成して顔料粒子上に無機コーティングを形成するのを助けるために、15分間消化された。
【0095】
pHはその後4.5まで上げられ、このレベルで維持された。その後、12 mlのアルミン酸ナトリウムと210 mlのケイ酸ナトリウムとをそれぞれ水性スラリーに加え、多孔性シリカ粒子のコーティングをベース顔料粒子上に沈殿させた。
【0096】
その後、水性スラリーのpHを6〜7に上げた。スラリーのpHを6〜7の値に維持しながら、75 mlのアルミン酸ナトリウムをスラリーに加え、ベース顔料粒子上に形成された多孔性シリカコーティングの上でベース顔料粒子上に高密度アルミナコーティングを形成した。
【0097】
次に、水性スラリーのpHを9〜10に調整した。pHを9〜10のレベルに維持しながら、200 mlの追加のケイ酸ナトリウムを水性スラリーに加え、ベース顔料上に形成された高密度アルミナコーティングの上でベース顔料上に高密度シリカコーティングを形成した。
【0098】
次に、水性スラリーのpHを9〜10のレベルに維持し続けながら、50 mlのアルミン酸ナトリウムを水性スラリーに加え、二酸化チタンベース顔料上に形成された高密度シリカコーティングの上で二酸化チタンベース顔料上に多孔性アルミナコーティングを形成した。
【0099】
その後、スラリーのpHを5未満に調整し、スラリーは、スラリーのpHを安定化させ、かつコーティングの硬化と安定化を助けるために、さらに15分間消化された。スラリーはその後ろ過され、コーティングされた顔料をスラリーから除去し、コーティングされた顔料は洗浄され、コーティングされた顔料から可溶性塩を除去した。得られたろ過ケーキを乾燥させ、微粉にして、コーティングされた無機酸化物顔料を本発明に従い回収した。
【0100】
上述の方法に従って測定された、コーティングされた顔料の特性は、下記に示される。
【表3】
【0101】
したがって、本発明の方法に従って形成された本発明のコーティングされた無機酸化物顔料は、良好な光学特性(色強度を含む)および色調を有した。この結果はまた、高密度シリカコーティングもまたpH 9でベース顔料粒子上に形成されること、および、油分吸収性はコーティングの結果として比較的低いままであることを示す。この結果は、顔料粒子上への高密度コーティングの沈殿が、粒子の表面積の制御の助けとなることを示す。粒子のより小さい表面積は、粒子のより高いかさ密度を反映する。
【0102】
[実施例3]
二酸化チタンベース顔料と、ベース顔料上に沈殿された多孔性シリカコーティングと、多孔性シリカコーティングの上でベース顔料上に沈殿された高密度シリカコーティングと、高密度シリカコーティングの上でベース顔料上に沈殿された多孔性アルミナコーティングとを含有する、コーティングされた無機酸化物顔料を、本発明の方法に従って調製した。
【0103】
二酸化チタンベース顔料を含む水性スラリーは、800 gの二酸化チタンベース顔料を2100 mlの水と混合することにより調製した。水性スラリーはその後十分に粉砕されて、スラリー中70%の二酸化チタンベース顔料粒子が0.5 μm未満の粒径を有するようにした。スラリーはその後、70° Cに加熱された。
【0104】
スラリーのpHは1.5に調整され、スラリーは、顔料粒子上に固定部位を形成して顔料粒子上に無機コーティングを形成するのを助けるために、15分間消化された。
【0105】
水性スラリーのpHはその後4.5まで上げられ、このレベルで維持された。水性スラリーが15分間消化された後、200 mlのケイ酸ナトリウムを水性スラリーに加え、多孔性シリカ粒子のコーティングをベース顔料粒子上に沈殿させた。
【0106】
その後、45 mlのアルミン酸ナトリウムを水性スラリーに加え、水性スラリーのpHを10に上げた。スラリーのpHを10の値に維持しながら、200 mlのケイ酸ナトリウムを水性スラリーに加え、ベース顔料粒子上に沈殿した多孔性シリカ粒子の上でベース顔料粒子上に高密度シリカ粒子のコーティングを沈殿させた。
【0107】
次に、水性スラリーのpHを10の値に維持しながら、45 mlの追加のアルミン酸ナトリウムを水性スラリーに加え、二酸化チタンベース顔料上に形成された高密度シリカコーティングの上で二酸化チタンベース顔料上に多孔性アルミナコーティングを形成した。
【0108】
その後、スラリーのpHを5未満に調整し、スラリーは、スラリーのpHを安定化させるために、さらに15分間消化された。スラリーはその後ろ過され、コーティングされた顔料をスラリーから除去し、コーティングされた顔料は洗浄され、コーティングされた顔料から可溶性塩を除去した。得られたろ過ケーキを乾燥させ、微粉にして、コーティングされた無機酸化物顔料を本発明に従い回収した。
【0109】
上述の方法に従って測定された、コーティングされた顔料の特性は、下記に示される。
【表4】
【0110】
したがって、本発明の方法に従って形成された本発明のコーティングされた無機酸化物顔料は、良好な光学特性(色強度を含む)および色調、ならびに良好なインク着色性の値を有した。この結果は、顔料粒子上への高密度コーティングの沈殿が、粒子の表面積の制御の助けとなることを示す。粒子のより小さい表面積は、粒子のより高いかさ密度を反映する。
【0111】
[実施例4]
二酸化チタンベース顔料と、ベース顔料上に沈殿された多孔性アルミナコーティングと、多孔性アルミナコーティングの上でベース顔料上に沈殿された多孔性シリカコーティングと、多孔性シリカコーティングの上でベース顔料上に沈殿された高密度アルミナコーティングとを含有する、コーティングされた無機酸化物顔料を、本発明の方法に従って調製した。
【0112】
二酸化チタンベース顔料を含む水性スラリーは、800 gの二酸化チタンベース顔料を2100 mlの水と混合することにより調製した。水性スラリーはその後十分に粉砕されて、スラリー中70%の二酸化チタンベース顔料粒子が0.5 μm未満の粒径を有するようにした。スラリーはその後、70° Cに加熱された。
【0113】
次に、スラリーのpHは9〜10に調整され、スラリーは、顔料粒子上に固定部位を形成して顔料粒子上に無機コーティングを形成するのを助けるために、15分間消化された。pHを9〜10のレベルに維持しながら、90 mlのアルミン酸ナトリウムをスラリーに加え、得られるスラリーを15分間消化して、多孔性アルミナコーティングが二酸化チタンベース顔料粒子上に形成されるようにした。
【0114】
水性スラリーのpHをその後6〜7のレベルに下げた。水性スラリーのpHをこのレベルに維持しながら、250 mlのケイ酸ナトリウムを水性スラリーに加え、ベース顔料上に形成された多孔性アルミナコーティングの上でベース顔料上に多孔性シリカコーティングを沈殿させた。
【0115】
次に、水性スラリーのpHを6のレベルに調整し、90 mlのアルミン酸ナトリウムを水性スラリーに加え、二酸化チタンベース顔料上に形成された多孔性シリカコーティングの上で二酸化チタンベース顔料上に高密度アルミナコーティングを形成した。
【0116】
その後、スラリーのpHを5未満に調整し、スラリーは、スラリーのpHを安定化させるために、さらに15分間消化された。スラリーはその後ろ過され、コーティングされた顔料をスラリーから除去し、コーティングされた顔料は洗浄され、コーティングされた顔料から可溶性塩を除去した。得られたろ過ケーキを乾燥させ、微粉にして、コーティングされた無機酸化物顔料を本発明に従い回収した。
【0117】
上述の方法に従って測定された、コーティングされた顔料の特性は、下記に示される。
【表5】
【0118】
したがって、本発明の方法に従って形成された本発明のコーティングされた無機酸化物顔料は、良好な光学特性(色強度を含む)および良好なインク着色性の値を有した。この結果は、顔料粒子上への高密度コーティングの沈殿が、粒子の表面積の制御の助けとなることを示す。粒子のより小さい表面積は、粒子のより高いかさ密度を反映する。
【0119】
[実施例5]
二酸化チタンベース顔料と、ベース顔料上に沈殿された高密度アルミナコーティングと、高密度アルミナコーティングの上でベース顔料上に沈殿された多孔性シリカコーティングと、多孔性シリカコーティングの上でベース顔料上に沈殿された第2の高密度アルミナコーティングと、高密度アルミナコーティングの上でベース顔料上に沈殿された高密度シリカコーティングと、高密度シリカコーティングの上でベース顔料上に沈殿された多孔性アルミナコーティングとを含有する、コーティングされた無機酸化物顔料を、本発明の方法に従って調製した。
【0120】
二酸化チタンベース顔料を含む水性スラリーは、800 gの二酸化チタンベース顔料を2100 mlの水と混合することにより調製した。水性スラリーはその後十分に粉砕されて、スラリー中70%の二酸化チタンベース顔料粒子が0.5 μm未満の粒径を有するようにした。スラリーはその後、50° Cに加熱された。
【0121】
スラリーのpHは1.5に調整され、スラリーは、顔料粒子上に固定部位を形成して顔料粒子上に無機コーティングを形成するのを助けるために、15分間消化された。
【0122】
その後、水溶液のpHを5.0に調整し、スラリーをさらに15分間消化させた。pHを5〜6のレベルに維持しながら、6 mlのアルミン酸ナトリウムを水性スラリーに加え、ベース顔料粒子上に高密度アルミナコーティングを形成した。
【0123】
次に、水性スラリーのpHを5.5に調整し、スラリーを15分間消化させた。pHを5.5のレベルに維持しながら、200 mlのケイ酸ナトリウムを水性スラリーに加え、ベース顔料粒子上に多孔性シリカコーティングを形成した。
【0124】
次に、水性スラリーのpHを6〜7のレベルに調整し、スラリーを15分間消化させた。スラリーのpHを6〜7のレベルに維持しながら、45 mlのアルミン酸ナトリウムを水性スラリーに加え、多孔性シリカコーティングの上でベース顔料粒子上に高密度アルミナコーティングを形成した。
【0125】
次に、水性スラリーのpHを9〜10に調整し、スラリーを15分間消化させた。スラリーのpHを9〜10のレベルに維持しながら、200 mlのケイ酸ナトリウムを水性スラリーに加え、高密度アルミナコーティングの上でベース顔料粒子上に高密度シリカコーティングを形成した。
【0126】
最後に、水性スラリーのpHを9〜10に維持しながら、39 mlのアルミン酸ナトリウムを水性スラリーに加え、高密度シリカコーティングの上でベース顔料粒子上に多孔性アルミナコーティングを形成した。
【0127】
その後、スラリーのpHを5未満に調整し、スラリーは、スラリーのpHを安定化させ、かつコーティングの硬化と安定化を助けるために、さらに15分間消化された。スラリーはその後ろ過され、コーティングされた顔料をスラリーから除去し、コーティングされた顔料は洗浄され、コーティングされた顔料から可溶性塩を除去した。得られたろ過ケーキを乾燥させ、微粉にして、コーティングされた無機酸化物顔料を本発明に従い回収した。
【0128】
上述の方法に従って測定された、コーティングされた顔料の特性は、下記に示される。
【表6】
【0129】
したがって、本発明の方法に従って形成された本発明のコーティングされた無機酸化物顔料は、良好な光学特性(色強度を含む)および色調を有した。この結果は、顔料粒子上への高密度コーティングの沈殿が、粒子の表面積の制御の助けとなることを示す。粒子のより小さい表面積は、粒子のより高いかさ密度を反映する。
【0130】
以上の通り、本発明は、本発明の対象を実施し、言及された目的や利点ならびに本発明に内在する目的や利点を達成するのに十分に適している。
図1
図2
図3
図4
図5