特許第6286219号(P6286219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286219
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   G01R15/20 C
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-26335(P2014-26335)
(22)【出願日】2014年2月14日
(65)【公開番号】特開2015-152422(P2015-152422A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】蛇口 広行
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/053296(WO,A1)
【文献】 特開2008−151743(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0169328(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流が流れる方向に沿って延びる平らな表面を持った電流路と、
前記電流路の周囲を囲み、前記表面と対向する領域の少なくとも一部に開口部を有する磁性板と、
前記磁性板によって囲まれた空間内であって、前記表面と垂直な方向から見て前記開口部の一部を覆う位置に設けられた磁気調整手段と、
前記表面と垂直な方向から見て前記磁気調整手段と重なる位置に設けられた第1の磁気検出手段と、
前記表面と垂直な方向から見て前記開口部における前記磁気調整手段と前記磁性板との隙間の領域に設けられた第2の磁気検出手段とを有し、
前記第1の磁気検出手段は、前記磁気調整手段と前記電流路とで挟まれる領域に設けられ、
前記磁気調整手段は、前記電流路の平面に平行であり、前記電流が流れる向きと直交する線上で、前記磁気調整手段に対向する位置に谷の変曲点を有し、前記隙間の領域に山の変曲点を有する磁界強度分布を発生し、
前記第1の磁気検出手段は、前記線上の前記谷の変曲点が生じる位置付近に設けられ、
前記第2の磁気検出手段は、前記線上の前記山の変曲点が生じる位置付近に設けられている、
電流センサ。
【請求項2】
電流が流れる方向に沿って延びる平らな表面を持った電流路と、
前記電流路の周囲を囲み、前記表面と対向する領域の少なくとも一部に開口部を有する磁性板と、
前記磁性板によって囲まれた空間内であって、前記表面と垂直な方向から見て前記開口部の一部を覆う位置に設けられた磁気調整手段と、
前記表面と垂直な方向から見て前記磁気調整手段と重なる位置に設けられた第1の磁気検出手段と、
前記表面と垂直な方向から見て前記開口部における前記磁気調整手段と前記磁性板との隙間の領域に設けられた第2の磁気検出手段とを有し、
前記磁気調整手段は、前記電流路の表面と略平行して延びる第1の調整板と、前記第1の調整板から前記電流路に向けて延びる第2の調整板とを有する、
電流センサ。
【請求項3】
前記第1の磁気検出手段は、前記磁気調整手段と前記電流路とで挟まれる領域に設けられている
請求項2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記第1の磁気検出手段と前記第2の磁気検出手段とは、前記電流路から略同距離の位置に設けられている
請求項1〜3のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項5】
前記第1の磁気検出手段及び前記第2の磁気検出手段は、同一基板上に配置されている
請求項1〜4のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項6】
前記電流路は、横断面が長方形であり、厚みより長い幅を有している
請求項1〜5のいずれかに記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流路を流れる電流の値を、電流によって生じる磁気を検出することで検出する電流センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、磁化方向が固定された固定磁性層、非磁性層、及び磁化方向が外部磁界に対して変動するフリー磁性層の積層構造を備える磁気抵抗効果素子(GMR素子、TMR素子)を用いたセンサが提案されている。例えば、電気自動車やハイブリッドカーにおけるモータ駆動技術などの分野では比較的大きな電流が取り扱われるため、これらの用途向けに大電流を非接触で測定可能な電流センサが求められている。
【0003】
このような電流センサとして、被測定電流によって生じる磁界の変化を、磁気検出素子を用いて検出するものがある。
従来の電流センサは、1種類の測定領域での電流値の検出を行う構成のものが一般的であり、車載バッテリに用いる電流センサのように、例えば大電流と小電流との2種類(2レンジ)の電流値を同じ装置で高感度に検出するといったことは困難であった。
【0004】
このような問題を解決するために、引用文献1には、電流路が内側に位置するU型の磁気シールド内に、電流路を囲むように2つのL型の磁気シールドを設けた電流センサが開示されている。この電流センサは、電流路が延びる方向に直交する方向(Z軸方向)に磁界強度差(L型シールドのギャップからの距離に応じた磁界強度差)をつくり、Z方向の異なる位置に同種の磁気センサを配置することで、2レンジの電流値を高感度に検出することを可能にしている。
【0005】
また、引用文献2では、C型の磁気シールドの開口部(上部)のギャップに磁束を集め、ギャップからのZ方向の距離が異なる位置に2つの磁気センサを配置することで、2レンジの電流値を高感度に検出することを可能にしている。
【0006】
上述した引用文献1,2に開示された電流センサでは、レンジを2つに分けることで、測定レンジを広げたり、微少電流の測定精度を改善することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の電流センサでは、厚さ(Z方向)の薄い磁性材料に挟まれたギャップで発生する磁界を用いて、厚さ方向の距離で磁界強度差を設けているため、磁界強度勾配が大きく、電流センサに設置に非常に高い位置精度を要求される。そのため、製造が非常に困難で、高価格化するという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、大電流用と小電流用など測定電流値が広範囲の場合に、電流値を高感度で測定することが可能で、且つ、小型化及び低コスト化を図ることも可能となる電流センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した従来技術の問題を解決し、上述した目的を達成するために、第1の発明の電流センサは、電流が流れる方向に沿って延びる平らな表面を持った電流路と、前記電流路の周囲を囲み、前記表面と対向する領域の少なくとも一部に開口部を有する磁性板と、前記磁性板によって囲まれた空間内であって、前記表面と垂直な方向から見て前記開口部の一部を覆う位置に設けられた磁気調整手段と、前記表面と垂直な方向から見て前記磁気調整手段と重なる位置に設けられた第1の磁気検出手段と、前記表面と垂直な方向から見て前記開口部における前記磁気調整手段と前記磁性板との隙間の領域に設けられた第2の磁気検出手段とを有する。
【0010】
第1の発明の電流センサでは、電流路に電流が流れ、その周囲に磁界が発生する。当該発生した磁界は、磁性板で囲まれた内側領域のうち電流路の表面と垂直な方向から見て磁気調整手段と重なる領域では弱くなり、当該方向から見て前記磁気調整手段と前記磁性板との隙間の領域では強くなる。
そして、当該磁性板で囲まれた内側領域内の上記磁界が弱い領域で第1の磁気検出手段による磁気検出が行われ、上記磁界が強い領域で第2の磁気検出手段による磁気検出が行われる。
【0011】
好適には、第1の発明の電流センサでは、前記第1の磁気検出手段と前記第2の磁気検出手段とは、前記電流路から略同距離の位置に設けられている。
このようにすることで、電流路の表面と直交する方向における厚みを薄くでき、薄型化が図れる。また、当該方向における前記第1の磁気検出手段と前記第2の磁気検出手段の位置決めが容易になる。
【0012】
好適には、第1の発明の電流センサの前記第1の磁気検出手段は、前記磁気調整手段と前記電流路とで挟まれる領域に設けられている。
前記磁気調整手段と前記電流路とで挟まれる領域の磁界は低く、前記第1の磁気検出手段を配置するのに適している。
【0013】
好適には、第1の発明の電流センサの前記磁気調整手段は、前記電流路の平面に平行し、前記電流が流れる向きと直交する線上で、前記磁気調整手段に対向する位置に谷の変曲点を有し、前記隙間の領域に山の変曲点を有する磁界強度分布を発生し、前記第1の磁気検出手段は前記線上の前記谷の変曲点が生じる位置付近に設けられ、前記第2の磁気検出手段は前記線上の前記山の変曲点が生じる位置付近に設けられている。
変曲点付近では、磁界の変化が小さいため、このように変曲点付近に前記第1の磁気検出手段と前記第2の磁気検出手段を配置することで、位置決め精度の要求を緩和できる。
【0014】
好適には、第1の発明の電流センサの前記磁気調整手段は、前記電流路の表面と略平行して延びる第1の調整板と、前記第1の調整板から前記電流路に向けて延びる第2の調整とを有する。
【0015】
好適には、第1の発明の電流センサの前記第1の磁気検出手段及び前記第2の磁気検出手段は、同一基板上に配置されている
【0016】
第2の発明の電流センサは、電流路を流れる電流によって生じる磁界の強さを検出する電流センサであって、前記電流路の電流方向と直交する横断面において、前記電流路を囲む周方向の一部の第1の領域を取り囲む磁性体と、前記電流路を囲む周方向の領域のうち前記磁性体で囲まれていない第2の領域に、前記横断面において前記電流路から略同距離の第1の位置と第2の位置とに前記電流によって相互に異なる強さの磁界を生じさせる磁気調整手段と、前記第1の位置に設けられた第1の磁気検出手段と、前記第2の位置に設けられた第2の磁気検出手段とを有する。
【0017】
第2の発明の電流センサでは、電流路に電流が流れ、その周囲に磁界が発生する。
そして、前記電流路を囲む周方向の領域のうち前記磁性体で囲まれていない第2の領域において、磁気調整手段により、前記横断面において前記電流路から略同距離の第1の位置と第2の位置とに前記電流によって相互に異なる強さの磁界を生じる。
そして、上記第1の位置で第1の磁気検出手段による磁気検出が行われ、上記第2の位置で第2の磁気検出手段による磁気検出が行われる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、大電流用と小電流用など測定電流値が広範囲の場合に、電流値を高感度で測定することが可能で、且つ、小型化及び低コスト化を図ることも可能となる電流センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態の電流センサの外観斜視図である。
図2図2は、図1に示す電流センサの図1に示す断面線A−Aにおける断面構造を説明するための図である。
図3図3図1に示す電流センサの図1に示す断面線A−Aにおける断面での磁束密度を示す図である。
図4図4は、第1の磁気検出部及び第2の磁気検出部が設けられた基板が位置する図3に示すラインLX上の磁束密度を示す図である。
図5図5は、バスバーの電流値と第1の磁気検出部及び第2の磁気検出部の位置に生じる磁界の強度との関係を示す図である。
図6図6A図2に示す点P1とP2とを結ぶ直線上の磁界強度を示す図であり、図6B図2に示す点P11とP12とを結ぶ直線上の磁界強度を示す図である。
図7図7は、従来の電流センサの構造を説明するための図である
図8図8は、図7に示す電流センサの断面線A−Aにおける断面での磁束密度の高さ方向(Z方向)に沿った分布を示す図である。
図9図9A図1に示す磁気調整板の第1の変形例の断面図である。図9B図1に示す磁気調整板の第2の変形例の断面図である。図9C図1に示す磁気調整板の第3の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る電流センサについて説明する。
図1は、本発明の実施形態の電流センサ1の外観斜視図である。
図2は、図1に示す電流センサ1の図1に示す断面線A−Aにおける断面構造を説明するための図である。
【0021】
電流センサ1は、電流路となる導体部材で構成されるバスバー4を流れる電流の電流値を検出する。本実施例では、バスバー4の断面は、幅(X方向)が厚み(Z方向)より長い、略長方形をしている。バスバー4に流れる電流が、被測定電流となる。
【0022】
図1に示すように、電流センサ1では、例えば、磁性材料で形成された、所定の筐体(図示せず)の上面に磁性板15が配設されている。
磁性板15の内側には、バスバー4の平面4aに対向した面を備えた磁気調整板17が設けられている。
【0023】
また、磁性板15の内側には、第1の磁気検出部23と第2の磁気検出部25とが基板33上に設けられている。
第1の磁気検出部23は、バスバー4と磁気調整板17との隙間に配設されている。
第2の磁気検出部25は、バスバー4の平面4aと垂直な方向から見て磁性板15の開口部15Dにおける磁性板15と磁気調整板17との隙間の位置(磁気調整板17と重なり合わない位置)に設けられている。
【0024】
[磁性板15]
磁性板15は、例えば、磁性板15A,15B,15Cからなる断面略コ字形に磁性材で一体的に成形されており、所定の筐体のベース部材上に、上方(Z方向プラス側)に開口部15Dを向けた状態で設置されている。
磁性板15は、磁性板15A,15B,15Cで囲まれた領域に磁束を誘導すると共に、外乱をもたらす外部磁界に対して耐性を備えている。このため、隣接電流路などの存在による外部磁界影響が懸念される設置環境下でも、良好な検出精度での使用が可能となる。
【0025】
磁性板15の磁性板15Bは、バスバー4の平面4aに対向し、且つ近接して位置している。そして、磁性板15Aと15Bとによって、バスバー4を厚み方向(X方向)の両側から所定の距離を隔てて挟み込んでいる。磁性板15は、バスバー4と非接触である。
【0026】
[磁気調整板17] 磁気調整板17は、例えば、遮蔽板17A,17B,17Cからなる断面略コ字形に磁性材で一体的に成形されており、下方(Z軸マイナス方向、バスバー4に対向する方向)が開口する状態で設置されている。 磁気調整板17は、平面4aと直交するZ方向から見て、磁性板15の開口部15Dを一部を覆うように配置されている。 磁気調整板17の遮蔽板17Bは、バスバー4の平面4aに対向して位置している。また、遮蔽板17A,17Cは、バスバー4の平面に4a向けて延びており、遮蔽板17Bと直交している。磁気調整板17は、バスバー4および磁性板15と非接触である。
なお、磁気調整板17は、本発明の「磁気調整手段」の一例である。
遮蔽板17Bは、本発明の「第1の調整板」の一例である。 遮蔽板17A,17Cは、それぞれ本発明の「第2の調整板」の一例である。
【0027】
磁気調整板17によって、バスバー4を流れる電流によって生じる磁界(磁束密度分布)が影響を受ける。
以下、磁性板15内の磁束密度を説明する。
図3図1に示す電流センサ1の図1に示す断面線A−Aにおける断面での磁束密度を示す図である。
図4は、第1の磁気検出部23及び第2の磁気検出部25が搭載された基板33が位置する図3に示すラインLX上の磁束密度を示す図である。
図5は、バスバー4の電流値と第1の磁気検出部23及び第2の磁気検出部25の位置に生じる磁界の強度との関係を示す図である。
図6A図2に示す点P1とP2とを結ぶ直線上の磁界強度を示す図であり、図6B図2に示す点P3とP4とを結ぶ直線上の磁界強度を示す図である。
【0028】
バスバ−4に電流が流れると、そのバスバー4の回りに磁界が発生し、その磁界の強さに対応する磁束密度Bが生じる。
このとき、磁性板15内には、磁性板15と磁気調整板17との影響を受けた図3に示す磁束密度が生じる。図3において、磁束密度は色が薄くなるに従って強くなる。
【0029】
図3に示すように、磁性板15内の磁気調整板17と開口部15Dとが重なり合わない領域(X方向において磁気調整板17が存在しない領域)では、バスバー4から開口部15Dに近づくに従って磁束密度が高く(磁界が強く)なっている。 一方、磁性板15内の磁気調整板17と開口部15Dとが重なり合う領域(X方向において磁気調整板17が存在する領域)では、バスバー4と磁気調整板17とで挟まれる領域の磁束密度が非常に低くなっている。 特に、磁気調整板17の遮蔽17A,17B,17Cで囲まれた領域内では、当該領域とZ方向の座標が同じで磁気調整板17が存在しない領域に比べて、磁束密度が大幅に低くなっている。 また、磁気調整板17の外側周囲の遮蔽17A,17Cの付近では、磁束密度が非常に高くなっている。 このように、磁気調整板17の遮蔽17A,17Cは、その外側の領域で磁束密度を高める機能を果たし、その内側で磁束密度を低減する機能を果たしている。
【0030】
図2に示す基板33に沿ったラインLX上の磁束密度(X成分)は図4に示すようにX座標に応じて変化する
図4において、X=−7mmは磁性板15の磁性板15A付近の位置を示しており、X=7mmは磁性板15の磁性板15C付近の位置を示している。
【0031】
図4に示すように、図1に示すX方向における、X=−3mm付近に磁束密度の谷の変曲点があり、X=3mm付近に磁束密度の山の変曲点がある。また、X=−3mm付近とX=3mm付近では、磁束密度の変化勾配が小さい。
また、X=−3mm付近と、X=3mm付近では、バスバー4に流れる電流(一次電流)に大きさに応じて、磁束密度が図5に示すように変化する。
また、図6A図6Bに示すように、図2に示す点P1とP2とを結ぶ直線上の磁束密度、並びに点P11とP12とを結ぶ直線上の磁束密度は変化する。 図6A図6Bに示すZ座標は、バスバー4からの距離を示している。
【0032】
[第1の磁気検出部23及び第2の磁気検出部25]
第1の磁気検出部23及び第2の磁気検出部25は、Z方向におけるバスバー4と磁気調整板17との間の位置に設けられ、Z方向と直交する基板33上に配置されている。
このようにすることで、電流センサ1のZ方向の厚みを小さくでき薄型化、小規模化を図ることができる。
【0033】
第1の磁気検出部23は、図1に示すX方向におけるX=−3mm付近に配設され、第2の磁気検出部25はX=3mm付近に配設されている。
第1の磁気検出部23及び第2の磁気検出部25が配置されるX座標周辺では、図4に示すように、磁束密度の変化勾配が小さく、X方向において高い位置決め精度が要求されない。そのため、製造コストを抑えることができる。
また、電流センサ1では、基板33は、Z方向においてZ=4mm付近に配置されている。
【0034】
図6A図6Bに示すように、Z=4mm付近では、第1の磁気検出部23が位置する座標(X=−3mm)と、第2の磁気検出部25が位置する座標(X=3mm)との双方において、磁束密度の変化勾配は小さい。そのため、Z方向においても高い位置決め精度が要求されない。
【0035】
第1の磁気検出部23は、大電流に対応する磁束密度Bの大きさ(若しくは磁界の強さ)を検出可能な対象とする。
第1の磁気検出部23は、例えば、第2の磁気検出部25と同じものを用いる。
第2の磁気検出部25は、小電流に対応する磁束密度Bの大きさ(若しくは磁界の強さ)を検出可能な対象とする。
なお、磁束密度Bと磁界の強さHについては、周知のマクスウェル方程式の補助式である、B=μH(但し、μ;透磁率)の関係により、どちらを使用してもよい。
【0036】
第1の磁気検出部23及び第2の磁気検出部25としては、例えば、磁化方向が固定された固定磁性層、非磁性層、及び磁化方向が外部磁界に対して変動するフリー磁性層の積層構造を備える磁気抵抗効果素子(GMR素子、TMR素子)や、ホール素子が用いられる。第1の磁気検出部23及び第2の磁気検出部25は、バスバー4に流れる電流を、周囲の磁界の変化を介して検出する。
なお、これらは、図示しない制御部配線で接続される。これにより、第1の磁気検出部23及び第2の磁気検出部25から制御部に入力する検出信号に応じて所定の演算処理がなされることで、バスバ−4に流れる所望の電流値の検出が行われるようになっている。
【0037】
以下、電流センサ1の作用を説明する。
バスバー4に電流が流れると、そのバスバー4の回りに磁界が発生し、その磁界の強さに対応する磁束密度Bが生じる。
このとき、磁性板15内には、磁性板15と磁気調整板17との影響を受けた図2に示す磁束密度が生じる。
そして、第1の磁気検出部23及び第2の磁気検出部25で検出した磁束に応じた検出信号が制御部に出力される。
制御部では、検出信号が増幅回路で増幅され、検出した磁界の強さに比例した値の電圧値を出力する。
そして、磁気検出部からの出力に基づいて、バスバー4に流れる電流値の検出が行われる。
【0038】
ここで、バスバー4に流れる電流値Iが大電流である場合には、第1の磁気検出部23が、その大電流値に対応した磁界の強さを高感度で検出する。
一方、バスバー4に流れる電流値が小電流である場合には、第2の磁気検出部25が、その小電流値に対応した磁界の強さを高感度で検出する。
【0039】
以上説明したように、電流センサ1によれば、磁気調整板17を設けることで、磁性板15内のバスバー4から等距離(Z座標が同じ)の位置において、Y方向に沿って磁界強度が高い領域と低い領域とを形成する。そのため、従来のように電流センサ1のZ方向(厚み方向)の異なる位置ではなく、Z座標が同じでY座標が異なる位置に第1の磁気検出部23及び第2の磁気検出部25を配置し、大電流と小電流の双方を同種の2つの磁気センサを用いて検出できる。そのため、電流センサ1のZ方向の厚みを小さくでき薄型化、小規模化を図れる。
また、電流センサ1によれば、第1の磁気検出部23及び第2の磁気検出部25が同一の基板33上に設置されるため、相対的な位置精度を確保しやすくなる。
【0040】
電流センサ1によれば、磁気調整板17によって磁束密度が低くなる領域に、大電流用の第1の磁気検出部23を配置するため、第1の磁気検出部23として、比較的、小さな磁束密度を検出する安価なセンサ(例えば、第2の磁気検出部25と同じセンサ)を用いることができる。
【0041】
また、電流センサ1によれば、第1の磁気検出部23及び第2の磁気検出部25が配置されるX座標周辺では、図4に示すように、磁束密度の変化勾配が小さく、高い位置決め精度が要求されない。すなわち、設置誤差による特性劣化を抑制できる。そのため、X方向での高い位置精度が求められず、製造コストを抑えることができる。
すなわち、従来のように図7に示す形状の磁性板115を用いて、ギャップ部分に磁束を集中させると、Z方向の磁束密度の変化勾配は図8に示すように大きくなる。このような構成で従来のように異なるZ方向に2つの磁気センサを配置すると、磁気センサの設置に非常に高い位置精度が要求されることになる。電流センサ1では、このような問題を解決できる。
【0042】
また、電流センサ1によれば、磁気調整板17が外部磁場に対するシールドとしても機能し、第1の磁気検出部23及び第2の磁気検出部25の測定精度を向上できる。
【0043】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
例えば、上述した実施形態では、磁気調整板17により、磁性板15内に低磁束領域と高磁束領域とを設け、それらに第1の磁気検出部23及び第2の磁気検出部25をそれぞれ配置した場合を例示したが、磁気調整板17により、磁性板15内に3つ以上のレベルの磁束領域を設け、それぞれに磁気センサを配置してもよい。
【0044】
また、本実施形態で示した磁気調整板17の形状は一例であり、請求項に記載の範囲において改変可能である。
例えば、電流センサ1では、磁性板15と磁気調整板17とを別体として設けたが、これらを一体的に形成してもよい。
また、 例えば、磁気調整板17として、図9A図9B図9Cに示す形状のものを用いてもよい。
また、遮蔽板17A,17Cは、遮蔽板17Bに対して90度以外の角度で傾斜していてもよい。
磁気調整板17は、バスバー4の横断面方向において、開口部を備えてバスバー4の周囲を囲むものであれば特に限定されない。
【0045】
また、バスバー4の断面形状は、特に限定されないが、磁気調整板17側が扁平であることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、車載用の電流センサ等に適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…電流センサ
4…バスバー
15…外部遮蔽板
17…磁気調整板
23…第1の磁気検出部
25…第2の磁気検出部
33…基板


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9