(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、SOFC内部は、数百度の高温であり、また温度分布があるため、インターコネクタに熱応力が印加され易い。例えば、導電性セラミックを用いたインターコネクタの場合、熱応力によってインターコネクタが割れる畏れがある。金属を用いたインターコネクタの場合、クロム蒸気によって単セルを被毒しないよう導電性セラミックをコーティングしたものを通常用いるが、熱応力によってコーティングが破損し、クロム蒸気抑制効果が損失する畏れがある。また、ガス流路を遮断するための金属製のセパレータが単セルに接合されるが、このセパレータは熱変形を起こし、インターコネクタと接触して短絡(ショート)する畏れがある。
【0006】
本発明は,熱応力の影響を緩和した燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様に係る燃料電池スタックは、
第1貫通孔を有し、可撓性を有する金属板からなる第1セパレータと、
前記第1セパレータと接合され、前記第1貫通孔から一部が露出するインターコネクタ本体と、
第2貫通孔を有し、可撓性を有する金属板からなる第2セパレータと、
燃料極と、空気極と、固体電解質と、を含み、前記第2セパレータに接合部を介し接合され、前記第2貫通孔から一部が露出する単セルと、
を順に複数組積層し、
前記インターコネクタ本体と前記単セルとを電気的に接続する集電部と、を具備する燃料電池スタックであって、
前記第1セパレータは前記インターコネクタ本体と電気的に接続され、
前記第2セパレータは前記単セルの前記空気極又は前記燃料極の何れかの電極と電気的に接続されており、
前記第1セパレータは電気的に接続された前記第2セパレータ側に突出する第1屈曲部を有することを特徴とする。
【0008】
インターコネクタ本体と第1セパレータとを接合して、インターコネクタが構成される。さらに、単セルには第2セパレータが接合されている。第1セパレータ及び第2セパレータが可撓性を有することで、インターコネクタ本体及び単セルに応力が印加された場合に、第1セパレータ及び第2セパレータが変形することで印加される応力が緩和され、その割れや変形を防止できる。
【0009】
また、燃料電池において、アノードとカソードの電位は異なっており、この異なる電位を有する電極同士が電気的に接続されると短絡してしまい発電が出来なくなってしまう。
単セルと接合部を介して接合されている第2セパレータは、カソード又はアノードの電位と同じ電位を有している。この第2セパレータと異なる電極と電気的に接続するインターコネクタ本体又は第1セパレータは、第2セパレータと絶縁されている。
したがって、前記第1セパレータを介して前記インターコネクタ本体を、前記第2セパレータを介して前記単セルを交互に複数積層した場合に、前記第1セパレータは電気的に接続された前記第2セパレータ側に突出する第1屈曲部を有することで(第1屈曲部が電気的に接続しているセパレータ側に突出している)、インターコネクタ本体に応力が印加され第1セパレータが変形した場合であっても、第1屈曲部が突出方向にセパレータの変形を促すので、燃料電池スタックにおいて、熱変形に起因する電気的に絶縁されている側の第1セパレータと第2セパレータ間の電気的接続(ショート)が防止される。
【0010】
(2)前記2セパレータは電気的に接続された前記第1セパレータ側に突出する第2屈曲部を有することで(第1屈曲部と第2屈曲部が互いに電気的に接続している側に突出している)、インターコネクタ本体又は単セルに応力が印加され第1セパレータ又は第2セパレータ、若しくはその両方が変形した場合であっても、第1屈曲部及び第2屈曲部が突出方向にセパレータの変形を促すので、燃料電池スタックにおいて、熱変形に起因する電気的に絶縁されている側の第1セパレータと第2セパレータ間の電気的接続(ショート)が防止される。
【0011】
(3)前記燃料電池の積層方向において、前記第1セパレータを前記第2セパレータ上に投影したとき、前記第1屈曲部と前記第2屈曲部が平面視で異なる位置に配置されることが好ましい。
第1屈曲部と第2屈曲部が前記燃料電池の積層方向において、前記第1セパレータを前記第2セパレータ上に投影したとき、平面視で異なる位置に配置されることで、これらの間での接触が防止される。
【0012】
前記第1セパレータを介して前記インターコネクタ本体を、前記第2セパレータを介して前記単セルを交互に複数積層した燃料電池スタックにおいて、電気的に接続されている側の第1セパレータと第2セパレータは接触しても短絡(ショート)することはないが、第1セパレータと第2セパレータとの間は、発電に必要な燃料ガス又は酸化剤ガス(例えば、空気(詳しくは空気中の酸素))の流路としての役割を果たしているため、第1屈曲部と第2屈曲部との接触を抑制することで、上記ガスの流通を妨害することが抑制できる。したがって、発電効率の低下の抑制効果をももたらすことが可能である。
【0013】
(3)前記第1セパレータが、前記インターコネクタ本体よりも薄い、0.05mm以上の厚さを有することが好ましい。
前記第1セパレータを前記インターコネクタ本体よりも薄くすることで、インターコネクタ本体に印加される応力を逃がし、緩和することができる。また、前記第1セパレータが、0.05mm以上の厚さを有することで、その耐久性を確保できる。
【0014】
(4)前記第1セパレータが、1質量%以上10質量%以下のアルミニウムを含むことが好ましい。
第1セパレータが、アルミニウムを含むことで、その表面に耐酸化性の高いアルミナの被膜を形成できる。アルミニウムの含有量が1質量%に満たないと、アルミナの被膜形成が不十分になるため、長期に渡って耐久性が得られない。また、アルミニウムの含有量が10重量%を超えると、常温で第1セパレータが硬くなり過ぎ、応力緩和に支障を来す可能性がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,熱応力の影響を緩和した燃料電池スタックを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,本発明に係る固体酸化物形燃料電池について図面を用いて説明する。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1は,本発明の第1実施形態に係る固体酸化物形燃料電池スタック10を表す斜視図である。固体酸化物形燃料電池スタック10は,反応ガス(燃料ガス(例えば,水素)と酸化剤ガス(例えば,空気(詳しくは空気中の酸素)))の供給を受けて発電する。
【0019】
固体酸化物形燃料電池スタック10は,エンドプレート11,12,燃料電池セル40(1)〜40(4)が積層され,ボルト21,22(22a,22b),23(23a,23b)およびナット35で固定される。
【0020】
図2は,固体酸化物形燃料電池スタック10の模式断面図である。
固体酸化物形燃料電池スタック10は,燃料電池セル40(1)〜40(4)を積層して構成される燃料電池スタックである。ここでは,判り易さのために,4つの燃料電池セル40(1)〜40(4)を積層しているが,一般には,20〜60個程度の燃料電池セル40を積層することが多い。
【0021】
エンドプレート11,12,燃料電池セル40(1)〜40(4)は,ボルト21,22(22a,22b),23(23a,23b)に対応する貫通孔31,32(32a,32b),33(33a,33b)を有する。
エンドプレート11,12は,積層される燃料電池セル40(1)〜40(4)を押圧,保持する保持板であり,かつ燃料電池セル40(1)〜40(4)からの電流の出力端子でもある。
【0022】
図3は,燃料電池セル40の分解断面図である。
図4は,燃料電池セル40の一部拡大断面図である。
図5は,燃料電池セル40の上面図である。
なお、
図3において、図中Z方向を上側とし、Z方向に位置する面を上面とする。
図3に示すように,燃料電池セル40は,金属製セパレータ53(本実施形態における「第2セパレータ」に対応する)と単セル44を有し,インターコネクタ41,45,集電部42,49,枠部43を備える。
【0023】
単セル(狭義の燃料電池セル)44は,固体電解質層56を空気極(カソード,空気極層ともいう)55,および,燃料極(アノード,燃料極層ともいう)57で挟んで構成される。固体電解質層56は,2つの主面を有する。これらの主面は,酸化剤ガス流路47側,燃料ガス流路48側それぞれに面し,空気極55,燃料極57が配置される。
【0024】
空気極55としては,ペロブスカイト系酸化物(例えば,LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物),LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物))等が使用できる。
【0025】
固体電解質層56としては,YSZ(イットリア安定化ジルコニア),ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア),SDC(サマリウムドープセリア),GDC(ガドリニウムドープセリア),ペロブスカイト系酸化物等の材料が使用できる。
【0026】
燃料極57としては,金属が好ましく,Ni及びNiとセラミックとのサーメットやNi基合金が使用できる。
【0027】
インターコネクタ41,45は,複数の単セル44間の導通を確保し,かつこれらの間での燃料ガスと酸化剤ガスの混合を防止し得る,導電性を有する略板状の部材である。なお、この詳細は後述する。
【0028】
単セル44間には,1個のインターコネクタ(41若しくは45)のみが配置される(直列に接続される二つの単セル44の間に一つのインターコネクタを共有しているため)。また,最上層および最下層の単セル44それぞれでは,インターコネクタ41,45に替えて,導電性を有するエンドプレート11,12が配置される。
【0029】
集電部42は,酸化剤ガス流路47の内部に配置され,単セル44の空気極55とインターコネクタ41との間の導通を確保するためのものであり,例えば,インターコネクタ41に形成された凸部である。
集電部49は,燃料ガス流路48の内部に配置され,単セル44の燃料極57とインターコネクタ45(インターコネクタ本体451)との間の導通を確保するためのものであり,導電性部材491,スペーサ492を有する。
【0030】
導電性部材491は、U字形状をなし、インターコネクタ45(インターコネクタ本体451)および単セル44の燃料極57に当接する。
【0031】
スペーサ492は,導電性部材491の間に配置される。スペーサ492の材料として,マイカ,アルミナ,バーミキュライト,カーボン繊維,炭化珪素繊維,シリカの何れか自体,或は少なくとも何れか1種を主成分とするものを利用できる。
【0032】
なお,集電部49は,導電性部材491,スペーサ492に替えて,例えばNi製の多孔質金属又は金網又はワイヤーで形成するようにしてもよい。また,集電部49は,Niの他,Ni合金やステンレス鋼など酸化に強い金属で形成してもよい。
【0033】
枠部43は,酸化剤ガス,燃料ガスが流れる開口46を有する。この開口46は,気密に保持され,かつ酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス流路47,燃料ガスが流れる燃料ガス流路48に区分される。また,本実施形態の枠部43は,空気極フレーム51,絶縁フレーム52,金属製セパレータ53,燃料極フレーム54で構成される。
【0034】
空気極フレーム51は,空気極55側に配置される金属製の枠体で,中央部には開口46を有する。該開口46によって,酸化剤ガス流路47が区画される。
【0035】
絶縁フレーム52は,インターコネクタ41,45の間とインターコネクタ41と金属製セパレータ53との間を電気的に絶縁する枠体で,例えば,Al
2O
3などのセラミックスやマイカ,バーミキュライトなどが使用でき,中央部には開口46を有する。該開口46によって,酸化剤ガス流路47が区画される。具体的には,絶縁フレーム52は,インターコネクタ41,45の間において,一方の面が空気極フレーム51に,他方の面が金属製セパレータ53に接触して配置されている。この結果,絶縁フレーム52により,インターコネクタ41,45の間と、インターコネクタ41と金属製セパレータ53との間が電気的に絶縁されている。
【0036】
金属製セパレータ53は,開口部58(本実施の形態における「第2貫通孔」に対応する)を有する枠状の金属製の薄板(例えば,厚さ:0.1mm)であり,単セル44の固体電解質層56と接合部61を介して接合され,かつ酸化剤ガスと燃料ガスとの混合を防止する金属製の枠体である。金属製セパレータ53によって,枠部43の開口46内の空間が,酸化剤ガス流路47と燃料ガス流路48に区切られ,酸化剤ガスと燃料ガスとの混合が防止される。
【0037】
金属製セパレータ53には,金属製セパレータ53の上面と下面の間を貫通する貫通孔によって開口部58が形成され,この開口部58内に,単セル44の空気極55が配置される。
【0038】
燃料極フレーム54は,燃料極441側に配置されるフレームであり,例えば,Al
2O
3などのセラミックスやマイカ,バーミキュライトなどの絶縁材料や金属板などが使用でき,中央部には開口46を有する。該開口46によって,燃料ガス流路48を区画する。
【0039】
空気極フレーム51,絶縁フレーム52,金属製セパレータ53,燃料極フレーム54は,ボルト21,22(22a,22b),23(23a,23b)が挿入されるか,もしくは酸化剤ガスか燃料ガスが流通する貫通孔31,32(32a,32b),33(33a,33b)をそれぞれの周辺部に有する。
【0040】
単セル44と金属製セパレータ53の間に接合部61が配置され,燃料電池セル40を構成する。開口部58に沿って,金属製セパレータ53の下面と固体電解質層56の上面が接合部61で接合される。
【0041】
接合部61は,Agを含むロウ材から構成され,開口部58に沿って,全周にわたって配置され,単セル44と金属製セパレータ53とを接合する。
【0042】
本実施形態では,
図3に示すように、インターコネクタ41は、インターコネクタ本体411、インターコネクタ用セパレータ412、接合部414を有する。
【0043】
インターコネクタ本体411は、上面、下面を有する略板状の導電性部材である。インターコネクタ本体411は、インターコネクタ用セパレータ412の下面に接合され、インターコネクタ用セパレータ412(本実施の形態における「第1セパレータ」に対応する)の貫通孔413(本実施の形態における「第1貫通孔」に対応する)から上面の一部が露出する。
【0044】
インターコネクタ本体411は、SOFC使用温度領域において高い導電性と酸化剤ガス雰囲気及び燃料ガス雰囲気において化学的安定性とを備えた材料であればよい。例えば、LaCrO
3(ランタンクロマイト)系のセラミック材料を主成分とする材料や第1主面にMnCoスピネル酸化物のような導電性セラミックをコートしたフェライト系ステンレスの金属材料等を用いることができる。LaCrO
3(ランタンクロマイト)系のセラミック材料を主成分とする材料を用いる場合、特に高温の領域(例えば、700〜1000℃)で使用する場合に高い導電性を確保することができる。その結果、インターコネクタ本体411の電気抵抗による損失を低減し、燃料電池スタック10の発電性能の向上に寄与する。
【0045】
インターコネクタ用セパレータ412は、上面、下面と、これらの間を貫通する貫通孔413(第1貫通孔)を有し、可撓性を有する金属板から構成される。貫通孔413は、インターコネクタ用セパレータ412の中央に配置される。
【0046】
インターコネクタ用セパレータ412は、可撓性を有する金属製の薄板であるため、積層方向や面方向の応力を逃がす程度の厚さに形成する必要がある。具体的には、インターコネクタ用セパレータ412を0.05mm以上でインターコネクタ本体411よりも薄い範囲内の厚さ(例えば、0.1mmの厚さ)に形成することが望ましい。インターコネクタ用セパレータ412の厚さがインターコネクタ本体411の厚さを超えると、複数の単セル44を積層した状態で各々のインターコネクタ本体411に印加される応力を逃がすことが困難になる結果、応力に起因する割れ等の不具合を招く恐れがある。インターコネクタ用セパレータ412の厚さが0.05mmに満たないと、耐酸化性や耐食性が劣化して十分な耐久性を確保できなくなる。
なお、
図3に示すように、インターコネクタ用セパレータ412には、ボルト21,22(22a,22b),23(23a,23b)に対応して、貫通孔が形成されている。
【0047】
インターコネクタ用セパレータ412は、例えば、主成分が鉄(Fe)であり、かつ1〜10重量%程度のアルミニウムを含有する金属材料を用いて形成することが望ましい。すなわち、インターコネクタ用セパレータ412の表面にアルミナの被膜を形成することにより、耐酸化耐久性を向上させることができる。ただし、アルミニウムの含有量が1重量%に満たない程度の金属材料を用いる場合は、被膜形成が不十分となって上述の効果が弱くなる。一方、アルミニウムの含有量が10重量%を超える程度の金属材料を用いる場合は、インターコネクタ用セパレータ412が常温で硬くなり過ぎ、応力の緩和が困難になる。
【0048】
接合部414は、インターコネクタ本体411の上面とインターコネクタ用セパレータ412の下面を接合する。接合部414は、インターコネクタ用セパレータ412の貫通孔413を取り囲んで全周に配置されている。よって、接合部414によりインターコネクタ本体411とインターコネクタ用セパレータ412との間を気密に封止できる。
【0049】
接合部414を形成する材料の例としては、ロウ材を採用することができる。具体的には、接合部414を形成するロウ材として、Agと酸化物の混合体を用いることができる。Agと混合される酸化物としては、例えば、Al
2O
3(アルミナ)、CuO、TiO
2、Cr
2O
3、SiO
2を挙げることができる。また,接合部414を形成するロウ材として、Agと他の金属との合金(例えば、Ag−Ge−Cr、Ag−Ti、Ag−Al)を用いてもよい。
【0050】
また、接合部414を形成する材料の他の例としては、ガラスを採用することができる。ガラスを用いて接合部414を形成する場合は、熱膨張率の差による応力印加時の割れを防止するため、インターコネクタ本体411及びインターコネクタ用セパレータ412と比較的近い熱膨張率を有するガラスを採用することが望ましい。
【0051】
接合部414は、材料の選択によっても異なるが、例えば、20〜100μm程度の厚さと、2〜6mm程度の横幅で形成される。
【0052】
このように、インターコネクタ本体411と、可撓性を有する金属板からなるインターコネクタ用セパレータ412を接合して、インターコネクタ41が構成される。インターコネクタ用セパレータ412が可撓性を有することで、インターコネクタ本体411に印加される応力が緩和され、その割れや変形を防止できる。
【0053】
インターコネクタ45は、インターコネクタ本体451、インターコネクタ用セパレータ452、接合部454を有する。これらはそれぞれ、インターコネクタ本体411、インターコネクタ用セパレータ412、接合部414と対応する形状、材質であるので、詳細な説明を省略する。
【0054】
本実施形態において、金属製セパレータ53と、この金属製セパレータ53が接合部61を介して接合している単セル44の燃料極57と電気的に接続しているインターコネクタ用セパレータ452の間は、電気的に接続されている(つまりはセパレータ同士が接触してもショートしない)。
【0055】
上述した様に、金属製セパレータ53と単セル44とをAgを含むロウ材からなる接合部61により接合している。本実施形態では、単セル44は燃料極支持形の単セル44であり、固体電解質層56は厚みが薄い。この場合、接合部61により、金属製セパレータ53と燃料極57が電気的に接続しやすく、金属製セパレータ53と燃料極57とが同じ電位を有することとなる。即ち、インターコネクタ用セパレータ452は集電部49を介して燃料極57と電気的に接続しているため、金属製セパレータ53とインターコネクタ用セパレータ452とは燃料極57と同じ電位を有することとなる。
【0056】
なお、接合部61による電気的接続を上述したが、この他にも、金属製セパレータ53とインターコネクタ用セパレータ452が電気的に接続し、同じ電位を持つ場合としては、燃料極フレーム54が金属等の導電性材料である等が考えられる。
このため、本実施形態では金属製セパレータ53と、この金属製セパレータ53が接合部を介して接合している単セル44の燃料極57と電気的に接続しているインターコネクタ用セパレータ452の間の電気的接続は問題とはならない。
【0057】
ここで、燃料電池セル40は、インターコネクタ用セパレータ412、金属製セパレータ53、インターコネクタ用セパレータ452がそれぞれ、屈曲部415,531,455を有する。
屈曲部415,531,455はそれぞれ、板状のインターコネクタ用セパレータ412、金属製セパレータ53、インターコネクタ用セパレータ452の一部を屈曲させた部位である。インターコネクタ本体412,452又は単セル44に応力が印加された場合に、屈曲部415,531,455のそれぞれが突出方向に、インターコネクタ用セパレータ412,452又は金属製セパレータ53、若しくはその両方の変形を促す。
【0058】
屈曲部415,531,455はいずれも、燃料ガス流路48側に突出し、酸化剤ガス流路47側では引っ込んでいる(凹んでいる)。インターコネクタ用セパレータ412と金属製セパレータ53が互いに逆方向に突出している(電気的に接続されている方向に突出している)ことから、これら間(酸化剤ガス流路47内)での接触が防止される。つまり、電気的に絶縁されている側での接触による短絡(ショート)を防止することができる。
【0059】
屈曲部415,531,455は、下記の方法により規定される形状であることが好ましい。
【0060】
(屈曲部の形状規定方法)
屈曲部の形状規定方法について、
図4を用いて説明する。
図4は、屈曲部415,531,455の断面形状の一例を表す図である。ここでは、
図3に示すXZ平面で屈曲部415,531,または455を切断した状態を表す。即ち、何れかのセパレータについて、屈曲部と屈曲部以外のセパレータの部分を含むように積層方向で断面をとり、断面方向からの画像を取得する。
取得した画像から、セパレータの上面Sa(屈曲部により凹んでいる側の面)を基準とする。
以下、特にことわらない限りは断面方向から取得した画像をもとに規定する。
【0061】
上面Saの屈曲部以外の平坦な面を基準面Sbとする。なお、上面Saの屈曲部を除く面が平坦ではない場合は、十点平均法により、仮想平坦面を基準面Sbとすることができる。
【0062】
基準面Sb上に引かれ、屈曲部の始点Mから終点Nまでを繋ぐ直線を線分Ldとする。さらに、高さが異なり、線分Ldと平行な線分を複数引く。即ち、基準面Sbから屈曲部の底面又は底部(屈曲部内のセパレータの上面Saの最深面又は最深部であり、面が無い場合は最深の点でもかまわない)に向けて、基準面Sbにより引いた直線と平行な直線を複数本に引き、屈曲部内の上面Saとの交点2点間を線分とする。
【0063】
直線の本数は、任意の本数でかまわないが、少なくとも当業者が画像から屈曲部内で最も長さか短いと判断できる箇所は線分とする。
図4では、任意の線分を4本とし、基準面Sb側から順に屈曲部の底面I側に向け、線分Le、線分Lf、線分Lg、線分Lhとした。
【0064】
上記各線分が、「線分Ld≧線分Le又は線分Lf又は線分Lg又は線分Lh」の何れかの関係を満たすことが、セパレータの変形方向を促す屈曲部としては好ましい。さらに好ましくは、線分Ldが他の何れの線分よりも大きいことが好ましい。
【0065】
前者は、「基準面Sbでの屈曲部の幅(線分Ldの長さ)が、少なくとも屈曲部内部何れかでの幅(線分Le、Lf、Lg、またはLhの長さ)より大きい」ことを意味する。また、後者は、「基準面Sbでの屈曲部の幅(線分Ldの長さ)が、屈曲部の内部何れの幅(線分Le、Lf、Lg、およびLhの長さ)より大きい」ことを意味する。なお、理想的には、高さに伴って屈曲部の幅が順次小さくなることが好ましい(Ld>Le>Lf>Lg>Lh)。
【0066】
また、屈曲部の突出長Lは、0.05mm以上であれば、セパレータの変形方向を促す屈曲部としての効果を奏する。突出長Lの上限値は、積層するインターコネクタ用セパレータ412と金属製セパレータ53との間隔によって適宜変更することができるが、常温時においてインターコネクタ用セパレータ412と金属製セパレータ53が接触しないように設定する必要がある。
【0067】
なお、突出長Lは上記の形状規定方法と同様に、燃料電池スタックの積層方向で断面をとり、断面方向から屈曲部の画像を取得し、この画像に基づき、上面Saの反対の下面Scを基準とし、屈曲部の頂点(下面Sc側の頂点)から下面Scまでの長さである。
【0068】
下面Scが平坦でなかった場合は、十点平均法により、下面Scの屈曲部ではない部分を平坦面とし、突出長Lを算出することができる。また屈曲部の頂点が存在せず、面であった場合は最深面(下面Sc側の面)から下面Scまでの長さが突出長Lである。
【0069】
本実施形態において、これら屈曲部415,531,455は、単セル44の外周を囲むように周回している。但し、屈曲部415,531,455が不連続、例えば、ドット状でも良く、単セル44の外周を一周しなくとも良い。例えば、単セル44の対向する2辺に沿って、屈曲部415,531,455が配置されても良い。
【0070】
なお、前述のように、金属製セパレータ53とインターコネクタ用セパレータ452間は、元来、電気的に接続されているので、屈曲部415,531,455が、燃料ガス流路48側に突出し、場合により接触したとしても問題とはならない。
【0071】
(第2の実施の形態)
図5、
図6はそれぞれ、第2の実施の形態に係る燃料電池セル40aの一部拡大断面図および上面図である。
第1の実施の形態と同一の部位は同一の符号を用いて説明する。
【0072】
燃料電池スタックの積層方向において、インターコネクタ用セパレータ412を金属製セパレータ53上に投影したときに、インターコネクタ用セパレータ412の屈曲部415およびインターコネクタ用セパレータ452の屈曲部455と、金属製セパレータ53の屈曲部531が平面視で異なる位置に配置される。
【0073】
上記の様に、インターコネクタ用セパレータ412の屈曲部415とインターコネクタ用セパレータ452の屈曲部455が異なる位置に配置されることで、これら屈曲部間での接触が防止される。
つまりは、インターコネクタ用セパレータ412と金属製セパレータ53との間、又は、インターコネクタ用セパレータ452と金属製セパレータ53との間は、発電に必要な燃料ガス又は酸化剤ガス(例えば、空気(詳しくは空気中の酸素))の流路としての役割を果たしているため、電気的に接続している側の屈曲部同士であっても、接触を抑制することで、上記ガスの流通を妨害することが抑制できる。したがって、発電効率の低下の抑制効果をももたらすことが可能である。
第2の実施形態は上述した以外は、第1の実施形態と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0074】
(第3の実施の形態)
図7は、第3の実施の形態に係る燃料電池セル40bを二枚分の一部拡大断面図である。
図8は、第3の実施の形態に係る燃料電池セル40bの上面図である。
第1の実施の形態と同一の部位は同一の符号を用いて説明する。
【0075】
燃料電池セル40bの一枚を見たときに、また、燃料電池スタック10を積層方向から見た場合に、インターコネクタ本体411の外周は、単セル44と金属製セパレータ53の接合部61の外周により囲まれた領域の内側に存在するように配置されていることで、次に示すように、金属製セパレータ53の変形に起因するインターコネクタ本体411との間の電気的接続(ショート)が防止される。
【0076】
図7に示す燃料電池セル40b(1)において、インターコネクタ用セパレータ412と金属製セパレータ53間にインターコネクタ本体411が配置される。このため、インターコネクタ用セパレータ412と金属製セパレータ53間を絶縁状態とするには、インターコネクタ本体411と金属製セパレータ53の接触を防止する必要がある。ここで、単セル44と金属製セパレータ53の接合部61の外周に囲まれた領域の内側では、接合部61によって金属製セパレータ53の変形が抑制される。即ち、金属製セパレータ53で変形し易い箇所は、単セル44と金属製セパレータ53の接合部61の外周に囲まれた領域より外側であり、接合部61の外周とインターコネクタ411の外周とは間隔Dを有する。このため、接合部61の外周に囲まれた領域の内側にインターコネクタ本体411を配置することで、インターコネクタ本体411と金属製セパレータ53が接触することを防止できる。
【0077】
さらに、
図7に示す本実施形態では、インターコネクタ本体411はインターコネクタ用セパレータ412と接合するときに、インターコネクタ用セパレータ412と電気的に接続された側の金属製セパレータ53と対向する面と反対側の面に接合されていることが好ましい。この結果、インターコネクタ本体451が、インターコネクタ用セパレータ452と電気的に接続された側の金属製セパレータ53と対向する面)に接合されている場合と比べて、インターコネクタ用セパレータ412と単セル44間の距離が確保される。このため、インターコネクタ用セパレータ412と金属製セパレータ53間の絶縁状態の確保が容易である。
【0078】
第3の実施形態は上述した以外は、第1の実施形態と同様の構成であるため説明を省略する。
また、第3の実施の形態は第1の実施の形態の効果も同様に備えていることで、燃料電池スタックにおいて、インターコネクタと絶縁部との電気的接触による短絡をより効果的に抑制することが可能である。
【0079】
第3の実施の形態の屈曲部415,455,515,531,631を第2の実施の形態のように、燃料電池スタックの積層方向において、インターコネクタ用セパレータ412を金属製セパレータ53上に投影したときに、インターコネクタ用セパレータ412の屈曲部415およびインターコネクタ用セパレータ452の屈曲部455と、金属製セパレータ53の屈曲部531が平面視で異なる位置に配置するようにしてもよい。
これにより、第3の実施の形態と第2の実施の形態との両方の効果を奏することが可能である。
【0080】
(その他の実施形態)
本発明の実施形態は上記の実施形態に限られず拡張、変更可能であり、拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。