(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項2に記載の自転車用のギアシフト装置(10)において、前記第1の取付グループ(23)が、第1の端部(25a)で前記回転体(46)に係合し、第2の端部(25b)で前記ピン体(24a,24b)に拘束されている、衝撃吸収ばね(25)を含む、自転車用のギアシフト装置(10)。
【背景技術】
【0004】
通常、自転車用のギアシフト装置は、4バーのリンク機構型の運動機構(kinematic mechanism in the form of a four-bar linkage) [典型的には、平行四辺形状の関節接続型の運動機構(articulated parallelogram)]を備えている。このような4バーのリンク機構型の運動機構は、ベース体(base body)および前記ベース体の反対側に位置する可動体(mobile body)を具備する。これらベース体と可動体とは、一対のコネクティングロッドを介して互いに接続されており、前記一対のコネクティングロッドは、4つのピン要素で、4つのヒンジ接続軸心に沿って前記ベース体および可動体にヒンジ接続される。ベース体は自転車のフレームに固定され、可動体はチェーンガイドに固定される。
【0005】
4バーのリンク機構の変形により、自転車のフレームに対するチェーンガイドの軸方向(コグセットを基準とした軸方向)変位が決まり、これにより、ギアシフト(ギアチェンジ)が行われる。
【0006】
4バーのリンク機構の変形は、制御レバーを動かしてその動作をボーデンケーブルを介して4バーのリンク機構に伝達させる手動ベースの作動、あるいは、運転者が適切な指令を入力すると電気モータが適切な機構を介して4バーのリンク機構の様々な部品を相対的に運動させるモータベースの作動によって生じ、チェーンガイドを移動させる。
【0007】
例えば、特許文献1に、モータベースで作動する自転車用のギアシフト装置が記載されている。このギアシフト装置では、4バーのリンク機構の互いに反対側に位置するピン同士を近付けたり引き離したりすることにより、上記運動機構の作動を行う。
【0008】
ギアシフト装置の製造者にとっての現在の課題は、ギアシフト装置の操作の行い易さ及び信頼性を左右する、作動精度を向上させることである。
【0009】
ハイレベルな自転車競技に使用されるギアシフト装置であるほど、この要件の重要性が増す。
【0010】
既知の自転車用のギアシフト装置では、精密制御を可能にするため、自転車の初期調整で、フレームの形状および構造ならびに後輪に設けられるコグセットの形状および構造に合わせてチェーンのテンション(張り)を最適化させる。
【0011】
一部のギアシフト装置、特に、マウンテンバイクに用いられるギアシフト装置は、前述した運動機構のベース体と自転車のフレームとの相対角度位置およびその運動機構内に挿入されたチェーンテンション調整ばねを初期設定するためのインターフェース(初期設定インターフェース)を備えており、これにより、トランスミッションのチェーン(伝動チェーン)が係合した状態のチェーンガイドのセットアップを決めることができる。
【0012】
これらの種類のギアシフト装置の初期調整では、前記運動機構のベース体と自転車のフレームとの相対角度位置およびその運動機構内に挿入されたチェーンテンション調整ばね
を操作することにより、異なる走行形態にかかわらず伝動チェーンの正確なテンションが維持されるようにする。
【0013】
ベース体とフレームとの相対角度位置およびチェーンテンション調整ばねのプリロードの初期設定は、チェーンガイドを上げて、これをスプロケットにできる限り近付かせるように行われる。
【0014】
事実、チェーンガイドとスプロケットとの間の距離を短くする程、制御の感度が向上する。というのも、このような状態にすることで、チェーンガイドを変位させる際の、スプロケットの軸心に平行な変位成分が、あるスプロケットから別のスプロケットにチェーンを変位させるのに必要な前記チェーンに加えられる斜め運動(inclination)と略合致するようになるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、チェーンガイドを上げてスプロケットに近付ける調整は、最大径のスプロケットによる制限を受ける。また、最大径のスプロケットに近付け過ぎた場合、ロー側のギア(lowest gears)の隣合うギア間でギアシフトを行った際に、そのギアシフトが突発的に感じられたり、ローギア(lowest gear)の場合や後方にペダルを漕いだ際に、チェーンとチェーンガイドとの間ですべりが発生したりするなどといった障害の原因となる。
【0017】
出願人は、上記のように最大径のスプロケットの寸法に基づいてスプロケットにできる限り近付かせる調整構成では、チェーンガイドと小径側のスプロケットとの間に、上下方向に大きな間隔が開くので、トップ側のギア(highest gears)間でのギアシフトの制御の精度が、ロー側のギア間でのギアシフトの制御の精度よりも低下することに気付いた。
【0018】
以上を踏まえて、本発明の根底をなす課題は、前述した障害を回避すること、具体的には、改良された精密制御ギアシフト(ギアチェンジ)を実現可能な自転車用のギアシフト装置を提供することでそのような障害を回避することである。
【0019】
より具体的に説明すると、本発明の根底をなす課題は、チェーンガイドを最大径のスプロケットに近付け過ぎることに起因する前述した障害を伴うことなく、チェーンガイドと小径側のスプロケットとの間の位置決め距離を、既知のギアシフト装置よりも減少させることのできる自転車用のギアシフト装置を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、請求項1に記載の自転車用のギアシフト装置に関する。この自転車用のギアシフト装置の好適な構成は、従属請求項2〜12に記載されている。
【0021】
詳細には、本発明は、4バーのリンク機構型の運動機構を備える自転車用のギアシフト装置に関する。この運動機構は、ベース体および可動体を具備しており、前記ベース体と可動体とは、一対のコネクティングロッドを介して互いに接続されており、前記一対のコネクティングロッドは、4つのピン要素で、前記ベース体および前記可動体に関節接続されており、前記4つのピン要素のうちの、互いに反対側から向かい合うピン要素の各対が、前記4バーのリンク機構型の運動機構の対角線を規定している。また、自転車のフレームに対して前記ベース体を取り付けるための第1の取付グループが設けられている。前記可動体は、第2の取付グループでチェーンガイドに連結している。さらに、前記4バーのリンク機構型の運動機構には、この4バーのリンク機構型の運動機構を変形させて、前記ベース体に対する前記可動体の変位を決める結果、前記チェーンガイドの、コグセットの軸心を基準とした(with respect to the axis of a cogset)軸方向の主変位を決める、ギアシフト作動手段(ギアシフトの作動手段)が設けられている。このような自転車用のギアシフト装置は、前記第1の取付グループが、前記4バーのリンク機構型の運動機構の前記ベース体と前記フレームとの相対角度位置(relative angular position)を前記チェーンガイドの前記主変位に応じて(as a function of the primary displacement of the chain guide)変化させる運動機構を含むことを特徴とする。
【0022】
有利なことに、前記ベース体と前記自転車のフレームとの相対角度位置の上記のような変化(さらに、この結果として生じる前記チェーンガイドと前記スプロケットとの相対角度位置の変化)により、前記4バーのリンク機構の変形によって生じる前記チェーンガイドの変位時の、そのチェーンガイドの軌道の変化が決められる。
【0023】
この軌道は、チェーンガイドと、前記チェーンガイドによってチェーンが引っ掛けられるスプロケットとの間の距離が、それがどのスプロケットであるかに関わらず実質同一となるように、小径側のスプロケットになるにつれて徐々にスプロケットの方向に近付くようにして変化する。
【0024】
このように、従来の解決手段よりも小径側のスプロケットに近付けることができるので、チェーンガイドの軸方向変位を優れた感度で行うことのできるシステムを提供することができる。したがって、全体としてのギアシフトの制御の精度、特に、ロー側のギア間でのギアシフトの制御の精度が向上する。
【0025】
より具体的に説明すると、本発明の上記のような調節を行う運動機構は、前記チェーンガイドが最大径のスプロケットに向かって移動する際には、前記4バーのリンク機構型の運動機構の前記ベース体を、前記自転車のフレームに対する第1の取付グループの軸心を中心として反時計回りに回転させ、前記チェーンガイドが最小径のスプロケットに向かって移動する際には、前記4バーのリンク機構型の運動機構の前記ベース体を時計回りに回転させる。
【0026】
上記実施形態の自転車用のギアシフト装置は、所望に複数組み合わせることのできる後述の付加的構成により、さらに改良可能である。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態において、前記第1の取付グループは、前記ベース体を前記自転車のフレームに取り付けるように意図された軸心Cを有するピン体を含み、前記ベース体と前記フレームとの相対位置を変化させる前記運動機構は、−回転体;−前記回転体に形成された歯付きセクタ;および−前記歯付きセクタに係合して前記歯付きセクタに制御回転を伝達する少なくとも1つのピニオン;を有しており、前記回転体は、前記ピン体に、前記回転体の回転がそのピン体と前記ベース体との前記軸心Cを中心とした相対回転を決めるように接続しており、前記ピニオンは、前記ギアシフト作動手段によって直接または間接的に回転される。
【0028】
これにより、ギアシフト装置に印加された作動運動(actuation)を、前記ベース体と前記フレームとの相対角度位置を変化させる前記運動機構に確実に自動的に伝達させることができる。事実、このような実施形態にすることで、前記作動手段を介して加えられた前記ピニオンの回転を、容易に、高い精度で且つ高い信頼性で、前記第1の取付手段の前記ピン体に確実に伝達させることができる。
【0029】
好ましくは、前記第1の取付グループは、第1の端部で前記回転体に係合し第2の端部で前記ピン体に拘束されている、衝撃吸収ばねを含む。
【0030】
有利なことに、このような実施形態とすることにより、ギアシフト装置の破損の原因となり得る、所与の上限を超える外力が発生した場合に、特定の構成要素でそれを吸収することが可能となる。
【0031】
本発明の特に有利な一実施形態において、前記第1の取付グループは、前記ベース体と前記フレームとの相対角度位置を初期設定するためのインターフェースを含み、このインターフェースは、前記ピン体が係合する取付要素、および前記取付要素に係合し前記フレームに接せられる調節ねじを有する。
【0032】
これにより、チェーンガイドのセットアップが、自転車の実際のフレームおよび前記自転車に実際に取り付けられるコグセットに合った最適なセットアップとなるように、前記4バーのリンク機構型の運動機構の前記ベース体と前記自転車のフレームとの相対位置を初期設定することが可能となる。
【0033】
好ましくは、前記ピニオンは、前記4バーのリンク機構型の運動機構の前記4つのピン要素のうちの、前記コネクティングロッドのうちの1つに接続固定(in a fixedly connected manner)されたピン要素に、接続固定状態で取り付けられている。
【0034】
このような実施形態では、相対角度位置を変化させる前記運動機構が、前記ベース体/前記可動体とコネクティングロッドとの間の相対回転によって直接作動される。この場合、前記4バーのリンク機構の変形と前記ベース体と前記フレームとの相対位置の変化とを、構造的な観点からみて極めて簡素な構成(solution)により、高い信頼性で相関させることが可能となる。
【0035】
あるいは、前記ピニオンが、前記ギアシフト作動手段によって回転される作動ピンに接続固定状態で取り付けられており、この作動ピンは、前記ピン要素と実質的に平行であり、ギアシフト作動手段によって回転するようにセットされている。
【0036】
好ましくは、前記ギアシフト作動手段は、モータ式であり、前記4バーのリンク機構型の運動機構の対角線に沿ってシャフトの駆動変位(drive the displacement of a shaft)するモータを含む。
【0037】
このような特に有利な一実施形態では、前述した相対位置を変化させる動作を、モータで駆動することができるので、ギアシフトの精度が向上する。また、ギアシフトだけでなく、その相対位置の変化もモータ式の前記作動手段によって行うので、運転者は、最小限の作動力を加えるだけで済む。
【0038】
さらに好ましくは、前記モータは、前記4バーのリンク機構型の運動機構の内側で、前記4つのピン要素のうちの第1のピン要素に傾動可能に拘束された支持シェルを介して支持されており、前記シャフトは、前記4つのピン要素のうちの前記第1のピン要素に対して対角の位置にあるピン要素に作用する。
【0039】
この実施形態は、自転車用のギアシフト装置に求められる特徴的なコンパクト性を維持したまま、市場で広く普及している既知のものも含め幅広い種類の作動手段を採用することができるので、融通性が極めて高い。
【0040】
また、この実施形態では、有利なことに、前記第1のピン要素を、前記支持シェルのうちの互いに反対側に位置する2つの座部に自由に回転可能に係合する、一対のハーフピン(half-pin)で構成することができ、かつ、前記ピニオンを、その一対のハーフピンのうちの第1のハーフピンに接続固定状態で取り付けることができる。
【0041】
好ましくは、前記モータは、前記シャフトと直交する出力軸心を有しており、また、前記モータは、前記作動ピンを駆動回転し(drive a rotation of the actuation pin)、前記作動ピンは、前記作動ピンと一体回転可能であり且つ前記シャフトに形成されたラックと形状カップリングする、歯付きスピンドルを保持しており、これにより、前記作動ピンは、前記シャフトの並進変位を決める。
【0042】
好ましくは、前記ラックは、前記作動ピンに遊着したガイドシェルの筒部内で、並進案内され、このガイドシェルは、前記歯付きスピンドルと前記ラックとの形状カップリングを維持するように前記歯付きスピンドルを収容している。
【0043】
出願人は、このような構造とすることにより、極めてコンパクトで且つ高精度な構成(solution)が得られることに気付いた。さらに、モータにより、相対角度位置を変化させる前記運動機構を実質的に直接作動させることができる。
【0044】
一変形例において、前記ギアシフト作動手段は、メカニカルタイプであり、
−外側のシースに対して内側のケーブルコアが自由にスライドすることができる制御ケーブルを支持し、前記内側のコアがスライドできるように前記外側のシースを定位置に固定する、シース座部、
−前記内側のコアの端部の保持クリップ、および
−前記4バーのリンク機構型の運動機構を、前記制御ケーブルの前記外側のシースと前記内側のコアとの間の相対並進(relative translation)によって生じる牽引に抗して変形させるように前記ピン要素のうちの1つのピン要素に設けられた、戻しばね、
を含み、前記シース座部および前記クリップは、前記4バーのリンク機構型の運動機構の、互いに対角に位置するピン要素の略位置(近傍)に設けられている。
【0045】
上記の機械ベースの作動による変形例は、この機械ベースのような直接作動系にとって特徴的な利点である、作動指令に対する応答時間の面で有利である。
【0046】
好ましくは、前記第1の取付グループの前記ピン体は、円筒ブッシュ、および前記ベース体と係合する拡幅ヘッドが設けられた閉塞ねじ(closing screw)を具備しており、前記円筒ブッシュと前記閉塞ねじとは、前記ベース体を前記ピン体の前記軸心方向で保持するように互いにねじ連結され、前記ベース体と前記ピン体との間には、回転用スライド手段が設けられている。
【0047】
好ましくは、前記第2の取付グループは、第5のピン要素を含み、この第5のピン要素は、第1の端部で、前記チェーンガイドに連結固定しており、また、この第5のピン要素には、前記第1の端部と反対側の第2の端部に、前記可動体に対する連結インターフェースが設けられており、前記第2の取付グループは、さらに、チェーンテンション調整ばねを含み、前記第5のピン要素は、前記チェーンテンション調整ばねの支持体としての役割を果たす。
【0048】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照しながら行う、好ましい実施形態についての以下の詳細な説明から明らかになる。また、同じ態様のなかでも、異なる構成同士を、そのような組合せによって生じる利点を得たい場合に、上記の説明にならって所望に組み合わせることも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下の説明では、同じ機能を有する構成要素には、同じ符号を付している。
【0051】
図面では、自転車用のギアシフト装置の全体を、符号10で示す。
【0052】
自転車用のギアシフト装置10について言及する際には、それは、自転車100の後輪22に設けられた、軸心Aを有する複数のスプロケット33間で、伝動チェーン(トランスミッションのチェーン)27を移動させるリアギアシフト装置を指しているものと理解されたい。
【0053】
自転車用のギアシフト装置10は、4バーのリンク機構型の運動機構11を備える。この運動機構11は、ベース体12および可動体14を具備しており、これらベース体12と可動体14とは、一対のコネクティングロッド13,15を介して互いに接続されている。これらのうち、第1のコネクティングロッド13は、第1のピン要素16によって第1のヒンジ接続軸心でベース体12に関節接続されると共に、第2のピン要素17によって第2のヒンジ接続軸心で可動体14に関節接続される。他方の第2のコネクティングロッド15は、第3のピン要素18によって第3のヒンジ接続軸心でベース体12に関節接続されると共に、第4のピン要素19によって第4のヒンジ接続軸心で可動体14に関節接続される。
【0054】
ベース体12は、自転車100のフレーム20に固定されるように意図されている。
【0055】
可動体14は、4バーのリンク機構11においてベース体12の反対側に位置し、チェーンガイド21を保持する。
【0056】
チェーンガイド21は、上側のローラ38aおよび下側のローラ38bを支承するロッカーアーム37を具備している、これら上側のローラ38aおよび下側のローラ38bは、閉ループ状の伝動チェーン27を受け渡す。
【0057】
ベース体12と自転車100のフレーム20とをカップリングさせるために、第1の取付グループ23が設けられている。第1の取付グループ23は、そのベース体12を自転車100のフレーム20に取り付けるように意図された軸心Cを有するピン体24a,24bを含む。
【0058】
このピン体は、円筒ブッシュ24b、およびベース体12と接せられる拡幅ヘッドが設けられた閉塞ねじ24aを具備している。これら円筒ブッシュ24bと閉塞ねじ24aは、ベース体12を前記円筒ブッシュ24bと閉塞ねじ24aとの間に保持するように互いにねじ連結され、これにより、ベース体12が前記軸心Cに沿って軸方向に移動するのを防ぐ。
【0059】
ベース体12とピン体24a,24bとの間には、回転用スライド手段31,32が設けられている。
【0060】
一具体例において、ベース体12と閉塞ねじ24aとの間には、スライドリング31aおよび第1のガスケット31bが設けられ、ベース体12と円筒ブッシュ24bとの間には、軸受メタル32aおよび第2のガスケット32bが設けられる。
【0061】
ピン体24a,24bの円筒ブッシュ24bは、フレームに対する取付要素26に係合する。フレーム20に対する前記取付要素26の相対角度位置は、調節可能なものとされている。
【0062】
この目的のために、取付要素26に接線方向に係合する調節ねじ26aが設けられている。この調節ねじ26aはフレーム20の突起41cに接せられる。
【0063】
このようにして、フレーム20に対する取付要素26および調節ねじ26aは、ベース体12とフレーム20との相対角度位置を初期設定するためのインターフェース(初期設定インターフェース)を構成する。
【0064】
そのような4バーのリンク機構型の運動機構11のベース体12とフレーム20との初期相対角度位置の調整は、一般的には組付時に実行されるものであり、自転車用のギアシフト装置10を、異なる種類のフレーム20およびスプロケット33に順応させる目的でなされる。フレーム20およびスプロケット33の種類が異なれば、そのフレーム20に対してチェーンガイド21が取り得る位置に影響が生じ、その結果、スプロケット33に対してチェーンガイド21が取り得る位置にも影響が生じる。
【0065】
図示の実施形態において、相対角度位置の初期設定インターフェース26,26aは、中継要素(relay element)41と協働する。この中継要素41には、一対の孔41a,41bが設けられると共に、突起41cが形成されている。より具体的に説明すると、取付要素26が第1の孔41aに挿入され、第2の孔41bは締付けねじ53を挿入することでフレーム20に取り付けられる。
【0066】
好ましくは、ピン体24a,24bには、衝撃吸収ばね25が、前記ピン体24a,24bと同心となるように取り付けられている。衝撃吸収ばねとは、通常動作時には剛体であるが、衝突が起きて所与の上限を超える外力が発生した場合に介入・変形し、そのような外力を吸収するばねのことを指す。
【0067】
本発明の一具体例では、衝突が起きた場合、衝撃吸収ばね25の力(action)がベース体12に伝達されることにより、ベース体12とピン体24a,24bとの間で、一時的な相対回転(mutual rotation)が可能となる。これにより、ギアシフト装置10に損傷が生じること、特に、4バーのリンク機構型の運動機構11に損傷が生じるのを防ぐことができる。
【0068】
この目的のために、衝撃吸収ばね25の第1の端部25aはベース体12に間接的に接続され、その第2の端部25bはピン体24a,24bの孔(図示せず)に係合する。
【0069】
可動体14とチェーンガイド21のロッカーアーム37とを回転可能にカップリングさせるために、第2の取付グループ34が設けられている。第2の取付グループ34は、第5のピン要素36を含む。この第5のピン要素36は、第1の端部36aに、可動体14に対する連結インターフェースが設けられており、さらに、その第1の端部36aと反対側の第2の端部36bで、ロッカーアーム37に連結固定している。
【0070】
チェーンテンション調整ばね35が、第5のピン要素36に前記第5のピン要素36と同心になるように取り付けられている。このチェーンテンション調整ばね35が伝動チェーン27に作用することにより、均衡の取れた状態が定められる。そして、この均衡の取れた状態により、自転車のフレーム20に対してチェーンガイド21が取る位置が決まる。
【0071】
チェーンテンション調整ばね35は、可動体14とロッカーアーム37との間の相対回転に抵抗して/相対回転を制限して伝動チェーン27の緊張状態を維持するように、第1の端部35aで、可動体14に対する前記連結インターフェースに係合している。
【0072】
第5のピン要素36の第2の端部36bには、チェーンテンション調整ばね35のプリロードの調節システム39が設けられている。図示の実施形態において、この調節システム39は、歯付きリング41のように形成された-ベース(図示せず)に作用するねじ40を具備しており、そのねじ40は、底部が、第2のチェーンテンション調整ばね35の第2の端部35bで前記第2のチェーンテンション調整ばね35に拘束されている。
【0073】
このチェーンテンション調整ばね35の初期調整は、チェーン27に加わるテンションを設定する目的でなされる。
【0074】
また、ギアシフト作動手段28が設けられている。この作動手段28は、4バーのリンク機構型の運動機構11のセットアップを変化させて、可動体14とベース体12との相対変位を決める結果、フレーム20に対するチェーンガイド21の変位を決める。
【0075】
図3a及び
図3bに示す第1の好ましい実施形態、ならびに
図4a及び
図4bに示す第2の好ましい実施形態では、メカニカルタイプの作動手段28が設けられる。このメカニカルタイプの作動手段28は、4バーのリンク機構型の運動機構11にボーデン型の制御ケーブル(図示せず)を介して接続配置された、少なくとも1つの制御レバー(図示せず)を含む。そのボーデン型の制御ケーブルは、名前が指すとおり、外側のシースに対して内側のケーブルコアが自由にスライドすることができる制御ケーブルである。
【0076】
この場合の4バーのリンク機構型の運動機構11には、前記制御ケーブルを支持し、前記制御ケーブルの外側のシースを定位置に固定するシース座部42が設けられている。これにより、前記制御ケーブルの内側のコアと外側のシースとの間の相対的なスライドが可能となる。
【0077】
また、4バーのリンク機構型の運動機構11には、シース座部42に対して対角の位置に、前記制御ケーブルのコアの端部の保持クリップ43が設けられている。これにより、前記制御ケーブルのシースとコアとの間の相対運動によって生じる牽引により、4バーのリンク機構型の運動機構11の変形が決まる。
【0078】
図示の実施形態において、シース座部42は、ベース体12に形成されており、好ましくはベース体12において第3のピン要素18の略位置(近傍)に形成されている。さらに、保持クリップ43は、第1のコネクティングロッド13に設けられており、好ましくは第1のコネクティングロッド13において第2のピン要素17の略位置(近傍)に設けられている。
【0079】
前記制御ケーブルのシースとコアとの間の相対運動によって生じる牽引は、戻しばね44による抵抗を受ける。図示の実施形態の具体例において、この戻しばね44は、第4のピン要素19に設けられている。
【0080】
図5a及び
図5bに示す第3の好ましい実施形態では、モータ式の作動手段28が設けられている。
【0081】
このモータ付の作動手段28は、シャフト29を駆動変位するモータ30を含む。シャフト29は、互いに対角に位置するピン要素16,17,18,19間で動作し、可動体14とベース体12との間の相互変位を引き起こす。
【0082】
よって、モータ付の作動手段28は、4バーのリンク機構型の運動機構11の対角線に沿って配設される。つまり、この作動手段28を作動させると、互いに反対側に位置する2つのピン要素16,17,18,19間の距離が長く/短くなり、これにより、4バーのリンク機構型の運動機構11が変形する。
【0083】
好ましくは、シャフト29の自由端部(先端)は、切り離し要素(release element)54を介してピン要素16,17,18,19に拘束されている。
【0084】
図示しない好ましい一実施形態では、モータ30は、4バーのリンク機構型の運動機構11の内側で、シャフト29の自由端部に拘束されたピン要素に対して対角の位置にあるピン要素16,17,18,19に傾動可能に拘束された支持シェル(support shell)を介して支持されている。この目的のために、その支持シェルを支承するピン要素16,17,18,19は、前記支持シェルのうちの互いに反対側に位置する2つの座部に自由に回転可能に係合する、2つのハーフピンで構成される。
【0085】
好ましくは、モータ30は電気式(電気モータ)であり、シャフト29を駆動変位(drive the displacement in translation of the shaft) させて、純粋に並進させる。
【0086】
一変形例において、モータ30は、特許文献1に記載されたタイプのモータである。この場合のモータ30は、モータ軸心に沿った軸方向に配設されてモータ30によって回転されるねじ、およびモータ30の傾動シェルを支承するピン要素の反対側に位置するピン要素16,17,18,19に固定されて前記ねじに噛合係合する母ねじ(mother screw)を具備する。
【0087】
図5a及び
図5bに示す好ましい実施形態では、回転出力シャフト(図示せず)を有する電気モータ30が使用される。この第3の実施形態では、モータ30が、その回転出力軸心(図示せず)が互いに対角に位置するピン要素間に配設されたシャフト29と直交するように、4バーのリンク機構型の運動機構11の内側に設置されている。
【0088】
また、減速段(図示せず)が設けられている。この減速段は、モータ30の出力シャフトの回転動作を、第1のピン要素16と第3のピン要素18との間に略位置した作動ピン50に伝達する。また、この作動ピン50は、第1のピン要素16および第3のピン要素18と実質的に平行である。
【0089】
作動ピン50は、第1のコネクティングロッド13およびベース体12に対して自由に回転することができる。また、この作動ピン50は、前記作動ピン50と一体回転可能であり且つシャフト29によって形成されたラック51との形状カップリングによって協動する、歯付きスピンドル49を保持する。これにより、作動ピン50は、シャフト29の並進変位を決める。
【0090】
好ましくは、歯付きスピンドル49とラック51との形状カップリングは、作動ピン50に遊着(idly mounted)したガイドシェル52を介して維持される。
【0091】
ガイドシェル52には、筒部52aが設けられている。この筒部52a内で、ラック51が自由に並進することができる。
【0092】
好ましくは、作動ピン50は、互いに連結固定した2つの作動ハーフピン50a,50bで構成される。これら2つの作動ハーフピン50a,50bは、第1のコネクティングロッド13およびベース体12に対して自由に回転することができる。この目的のために、第1の作動ハーフピン(semi-actuation pin)50aは、スライドブッシュ(図示せず)を介してベース体12に挿入される。
【0093】
本発明において、第1の取付グループ23は運動機構45を含む。この運動機構45は、4バーのリンク機構型の運動機構11のベース体12とフレーム20との相対位置を、チェーンガイド21の主変位に応じて変化させることで、チェーンガイド21のセットアップの変化を決める。
【0094】
この相対位置を変化させる手段45は、少なくとも1つの歯付きセクタ46aが設けられた回転体46、および少なくとも1つのピニオン47を有する。回転体46は、ピン体24a,24bに、前記回転体46の回転によってそのピン体24a,24bとベース体12との前記軸心C(ピン体24a,24bの軸心)を中心とした相対回転が決まるように接続している。少なくとも1つのピニオン47は、歯付きセクタ46aに係合して前記歯付きセクタ46aに制御回転を伝達する。好ましくは、この少なくとも1つのピニオン47は、円錐台の形状をしている。
【0095】
より具体的に説明すると、回転体46は、ピン体24a,24bの円筒ブッシュ24bに、(任意で、衝撃吸収ばね25を介して)接続固定している。
【0096】
そのような好ましい一実施形態では、衝撃吸収ばね25が、第1の端部25aで、回転体46の歯付きセクタ46aに形成された孔46bに係合している。
【0097】
ピニオン47は、ピン要素16,50またはハーフピン50bに接続固定状態で取り付けられている。このピン要素16,50またはハーフピン50bに制御回転が印加されると、それと併行するようにして、チェーンガイド21の、少なくとも1つの軸方向成分を有する変位が決まる。
【0098】
前記制御回転は、特定の実施形態に応じた様々な方法で、ピン要素16,50またはハーフピン50bに印加することができる。
【0099】
図3a及び
図3bに示す第1の好ましい実施形態、ならびに
図4a及び
図4bに示す第2の好ましい実施形態において、初期相対位置を変化させる前記手段45は、4バーのリンク機構型の運動機構11のベース体12と第1のコネクティングロッド13との間の相対回転によって作動する。
【0100】
このようなベース体12と第1のコネクティングロッド13との間の相対回転は、さらに、4バーのリンク機構型の運動機構11の変形を決める結果、前記軸心Aに沿ったチェーンガイド21の主変位を決める。
【0101】
ベース体12とコネクティングロッド13との間の相対回転は、さらに、第1のピン要素16に接続固定されたピニオン47の回転を定める。その第1のピン要素16は、第1のコネクティングロッド13に嵌め込まれている。
【0102】
このようにして、第1のコネクティングロッド13の運動により、第1のピン要素16の運動が引き起こされ、この運動がピニオン47の回転を決める結果、回転体46の歯付きセクタ46aの回転およびピン体24a,24bの円筒ブッシュ24bの回転が決まる。
【0103】
これにより、ベース体12と第1の取付グループ23のピン体24a,24bとの間の相対回転と、チェーンガイド21の軸方向変位とを相関させることができる。
【0104】
図5a及び
図5bに示す第3の好ましい実施形態において、初期相対位置を変化させる前記手段45は、モータ30によって減速段を介して引き起こされる作動ピン50(具体例では、第1の作動ハーフピン50a)の回転により作動する。
【0105】
この場合、第1の作動ハーフピン50aに第2の作動ハーフピン50bが連結固定しており、さらに、この第2の作動ハーフピン50bにピニオン47が接続固定状態で取り付けられているので、ピニオン47の回転が生じ、前記ピニオン47が形状カップリングする回転体46の歯付きセクタ46aに回転動作が伝達される。
【0106】
歯付きセクタ46aの回転により、ベース体12と第1の取付グループ23のピン体24a,24bとの間の相対回転が決まる。
【0107】
モータ30によって引き起こされる作動ピン50の回転は、歯付きスピンドル49の回転を決める結果、その歯付きスピンドル49とラック51とのカップリングを経てシャフト29の直線並進も決める。つまり、4バーのリンク機構型の運動機構11の変形が同時に生じ、この同時に生じる変形が前記軸心Aに沿ったチェーンガイド21の主変位を決める。
【0108】
したがって、この場合も、ベース体12と第1の取付グループ23のピン体24a,24bとの初期相対位置からの変化と、チェーンガイド21の軸方向変位とを相関させることができる。
【0109】
図示の好ましい実施形態において、4バーのリンク機構型の運動機構11の変形が完了し、伝動チェーン27とスプロケット33との間で安定した係合状態が得られると、回転体46の歯付きセクタ46aとピニオン47との間で固定拘束(fixed constraint)が成立するので、この固定拘束を介して衝撃吸収ばね25の働きがベース体12に伝達されるようになる。
【0110】
事実、上記の安定した状態では、ピニオン47が、ベース体12に接続固定された状態となったピン要素16,50またはハーフピン50bに外嵌している。
【0111】
以下では、本発明にかかる自転車用のギアシフト装置10の動作を説明する。
【0112】
ギアシフト装置10が作動されると、チェーンガイド21は、少なくとも1つの軸方向成分(すなわち、スプロケット33の軸心Aと平行な成分)を有する方向に沿って、伝動チェーン27が引っ掛けられるスプロケット33に達するまで移動される。
【0113】
図6a、
図6bには、それぞれ、一番前の位置(すなわち、最小径のスプロケット33の位置)にある従来のギアシフト装置、一番前の位置にある本発明にかかるギアシフト装置が示されている。他方、
図7a、
図7bには、それぞれ、一番奥の位置(すなわち、最大径のスプロケット33の位置)にある従来のギアシフト装置、一番奥の位置にある本発明にかかるギアシフト装置が示されている。
【0114】
このような変位は、どの実施形態であるかにもよるが、メカニカルタイプの作動手段28またはモータ式の作動手段28を介して制御される4バーのリンク機構型の運動機構11の変形で決まる。
【0115】
関連手段28(the relative means)による作動が始まると、ベース体12と第1の取付グループ23のピン体24a,24bの相対角度位置を変化させる運動機構45の作動も始まる。
【0116】
これにより、新たに均衡の取れたセットアップを得ることができる。さらに、大径側のスプロケットでは、そのような新たなセットアップを、最大限に高い位置で得ることができる。この場合、そのような最大限に高い位置で、チェーンガイド21と大径側のスプロケットとの間の上下方向の距離が定められることになる。
【0117】
そのため、前側の位置で新たにセットアップを得た際にチェーンガイド21と小径側のスプロケットとの間の距離を短く維持できるように、ベース体12と第1の取付グループ23のピン体24a,24bの初期相対角度位置およびチェーンテンション調整ばね25のプリロードを、自転車100に組み付ける段階で調整することが可能となる。
【0118】
本発明にかかるギアシフト装置10で得られる形態変化効果は、
図6a及び
図6bと
図7a及び
図7bを比較すれば明らかである。
【0119】
また、以上の説明から、本発明にかかる自転車用のギアシフト装置の各種特徴および異なる特徴間での相対的な利点も明らかである。
【0120】
4バーのリンク機構型の運動機構のベース体と第1の取付グループのピン体との相対位置を上記のように初期相対位置から変化させることで得られるチェーンガイドとスプロケットとの相対的な位置により、制御の感度が、従来のギアシフト装置よりも向上し、さらに、チェーンガイドを最大径のスプロケットに近付け過ぎることに起因する障害を緩和することができる。
【0121】
前述した実施形態のほかにも、さらなる変形例が想定され得る。そして、そのような変形例は、本発明の教示内容の範囲内に含まれる。
【0122】
事実、前記ギアシフト作動手段は、前述した好ましい実施形態と異なる種類のものであってもよいし、前述した好ましい実施形態における4バーのリンク機構型の運動機構の対角線と異なる対角線に沿って動作するものであってもよい。なお、前述した好ましい実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0123】
最後に、上記した想定可能な自転車用のギアシフト装置には、様々な変更や変形が施されてもよく、かつ、そのような変更及び変形の全てが、本発明に包含されることは明らかである。また、細部を、技術的に等価な構成要素に置き換えることも想定される。事実、使用する材料や寸法等は、その時々の技術的要件に応じてどのように選択されてもよい。