【実施例】
【0011】
実施例に係る搬送台車につき、
図1から
図8を参照して説明する。
【0012】
図1及び
図2に示されるように、搬送台車1は、複数の間口2aを上下左右に備えた収納ラック2,2,…が複数配置された大型倉庫等において、指定された物品3を収納ラック2の所定の間口2aに対して搬入もしくは搬出を行う際に用いられる。
図3に示されるように、収納ラック2の各間口2aは、正面視L字状、逆L字状で一対に対向し間口2aの奥行方向に延びる走行レール4,4と、収納ラック2,2,…を構成する枠体2b,2bと、により主に構成されている。走行レール4の上部の載置部4aには、物品3が載置されたパレット5が走行レール4の奥行方向に沿って複数支持されている。また、走行レール4の載置部4aにおける外方側部には、反し部4cが設けられており、パレット5の落下を防止するようになっている。
【0013】
図1及び
図2に示されるように、搬送台車1は走行レール4,4の走行部4b,4bを奥行方向に走行可能な車体6と、物品3を載置支持し車体6に対し昇降可能に設けられた載置台7と、該載置台7を昇降させる昇降駆動部8と、搬送台車1を走行レール4上で走行可能とする走行装置12とを主に備えている。
【0014】
搬送台車1は、載置台7がパレット5の下面から離間する最下降状態で走行レール4,4の走行部4b,4bを走行してパレット5の下方に進入した後、載置台7を上昇させることでパレット5ごと物品3を持ち上げ、パレット5及び物品3を走行レール4,4の載置部4a,4aから所定高さ浮かせて運搬するようになっている。尚、本実施例では、載置台7は、物品3を載せるためのパレット5を載置しているが、これに限らず、載置台7が直接に物品3を載置してもよい。
【0015】
図3及び
図4に示されるように、車体6は、金属板の前後を屈曲して断面コ字状に形成された底板10aと前後の側板部10b,10cを有する基部材10と、基部材10の左右に取付けられる側板11,11と、を備え、側板11,11は、図示しないボルト・ナット等により基部材10に対して着脱可能に固定されている。そして、車体6内部には、走行用の走行駆動部12、図示しない昇降用の昇降装置8、制御装置、電源装置としてのバッテリ44,44を備えている。制御装置は、走行用の駆動モータ12a,12aを駆動制御する駆動モータ制御部、昇降用の昇降モータ17を駆動制御する昇降モータ制御部、記憶部、受信手段及び送信手段としての通信部を備えている。記憶部は、制御装置の駆動信号の履歴、搬送台車1の運転履歴等を記憶する機能を有する。また、通信部は無線LANの送受信装置を有しており、外部からの駆動指令等の受信や記憶部に記憶されたデータ及び後述する操作指示手段等の送信等を行う。
【0016】
走行駆動部12,12は、駆動モータ12a,12a、走行車輪13,13、複数個の従動車輪14,14,…により主に構成される。駆動モータ12a,12aは図示しないケーブルにより駆動モータ制御部と接続されており、更に駆動モータ制御部は車体6内に内蔵されたバッテリ44,44に接続される。そして、駆動モータ制御部は、指令信号に基づき、駆動モータ12a,12aに電力を供給して、駆動モータ12a,12aを回転駆動し、駆動モータ12a,12aにより駆動した走行車輪13,13が、
図1及び
図2に示す走行レール4の走行面4b,4bを走行することにより、従動車輪14,14,…が従動して車体6が安定的に走行するようになっている。
【0017】
また、載置台7の昇降用の昇降装置8についても、昇降モータ制御部が、指令信号に基づき、昇降用モータ17に電力を供給して、昇降用モータ17を昇降駆動して、載置台7を昇降させている。
【0018】
尚、搬送台車1の駆動等によって、バッテリ44,44の電圧が低下した場合には、車体6からバッテリ44,44を取外して、後述のコントロール盤の充電手段によって充電することができる。そして、充電後、搬送台車1の車体6に取付け、搬送台車1のバッテリ44,44として繰返し使用することができる。
【0019】
また、
図3及び
図4に示されるように、搬送台車1の前後両方の走行方向における側板部10b,10cには、ゴム等の緩衝材により形成されたバンパー60,60が取り付けられており、搬送台車1が走行時に対象物に衝突した際の緩衝作用を奏している。それぞれのバンパー60は、中空のチューブ形状であり、内部に接触感知式のセンサーであるスイッチ61が設けられている。バンパー60は、搬送台車1が走行時に対象物に衝突した際に弾性変形し、この弾性変形によりバンパー60の内面がスイッチ61に接触し、スイッチ61をオンとするようになっている。
【0020】
このスイッチ61は、ここでは図示しないが制御装置と接続されており、搬送台車1が走行時に対象物に衝突した際に、スイッチ61がオンとなった信号が制御装置に送信される。即ち衝突したこと制御装置に対して検知させる検知手段である。制御装置はこの信号に基づき駆動モータ制御部に対して走行装置12における駆動モータのブレーキング及び停止等を行う信号を送信し、搬送台車1を停止状態とする機能を有している。
【0021】
更に、
図2及び
図4に示されるように、側板部10cにはLED等の発光装置62が固定され、車体6内にはスピーカー63が内蔵されており、それぞれ制御装置と接続されている。そして、制御装置は前記スイッチ61がオンとなった信号を受け取った場合、発光装置62を点灯させるとともに、スピーカー63から所定の音を出力させる。即ち、発光装置62及びスピーカー63は、外部にスイッチ61がオンとなったことを報知する報知手段を構成している。この報知手段を利用することで、どの搬送台車1が収容棚2内のどこで対象物に衝突し、停止状態となっているのかを作業員に対して報知することができるため、復旧作業を円滑に行うことができる。
【0022】
更に、
図2及び
図3に示すように、搬送台車1の車体6の前方側、後方側にはそれぞれ、コントロールパネル30が備えられている。後述するように、コントロールパネル30は、前記制御装置と接続されたタッチパネルとなっており、搬送台車1の運転、運転監視、操作するための操作指示手段画面(図示せず)が表示され、この操作指示手段画面をタッチ操作して、搬送台車1を駆動できるようになっている。後述するが、前記コントロールパネル30に表示される操作指示手段画面は、後述する搬送台車の制御システムにより搬送台車1と接続された操作端末40に表示可能であり、操作端末40に表示された操作指示手段画面51(
図8参照)を操作して搬送台車1を遠隔で操作できるようになっている。
【0023】
つぎに、入庫動作を説明する。
図1に示すように、物品3は、
図1の収容棚2の間口2aから鎖線矢印の方向に順次搬入される。より詳しくはパレット5に載置された物品3は、フォークリフト等を使用して収容棚2の間口2aに搬入される。搬送台車1は、物品3に向かって移動し、この搬送台車1に備えられたセンサー(図示せず)によって物品3の位置を検出して、物品3の真下で停止する。つぎに、物品載置部材7を昇移動させて物品3をパレット5ごと持ち上げ、その状態で収納部1aの走行路4bを走行し、この搬送台車1に備えられたセンサーによって、先詰めされた物品3の位置を検出して、先詰めされた別の物品3の手前で停止し、搬送台車1は、物品載置部材7を降移動させて物品3をパレット5ごと荷載置面4aに載置し、入庫を完了する。
【0024】
図5に示すように、搬送台車の制御システムは、複数の搬送台車1、…を選択的または一括して遠隔操作するための操作端末40、搬送台車の制御信号及び運転履歴を受信して記憶するとともに、搬送台車及び本発明のコントロール盤としての地上盤50、アクセスポイント55を備え、操作端末40と複数の搬送台車1,1,…はアクセスポイント55を介して無線LANで接続することができる。更に、操作端末40と地上盤50はアクセスポイント55を介して無線LANで接続することができる。
【0025】
ここで、操作端末40について説明する。操作端末40は、タッチパネルPC(パーソナルコンピュータ)となっており、ここでは図示しないが、操作端末40には搬送台車接続あるいは地上盤接続を選択する搬送台車接続ボタンと地上盤接続ボタンが表示され、搬送台車接続ボタンをタッチすると、
図6に示すような搬送台車選択画面52が表示される。搬送台車選択画面52には複数の搬送台車1,1,…に固有の識別番号(例えば1号機、2号機、‥等)が付された選択ボタン53a,53b,…が表示され、例えば1号機の選択ボタン53aをタッチすると、操作端末40から1号機搬送台車と接続するためのパスワード,操作端末40のMACアドレス等の識別情報が1号機搬送台車のIDとともにアクセスポイント55を介して1号機搬送台車に送信され、駆動制御対象となる1号機搬送台車の制御部は、受信した識別情報に基づき正規の操作端末からの接続であるか否かを照会し、正規の操作端末からの接続である場合、操作端末40と1対1にリンクされることを許可するとともに、操作端末40からの遠隔操作を受け入れる状態となる。
【0026】
操作端末40と選択された特定の搬送台車1とが1対1にリンクされると、操作端末40に操作指示手段画面51(
図7参照)が表示され、作業者はこの操作指示手段画面51を操作して、搬送台車1の駆動操作及び搬送台車1の状態確認を行えるようになる。尚、特に図示しないが、当該搬送台車1のコントロールパネル30にも操作指示手段画面51と同様の操作指示手段画面が表示される。このように、操作端末40に表示された操作指示手段画面51を操作して所望の搬送台車1を操作できるので、あたかも搬送台車1の傍らで操作する状況を得ることができるようになる。更に尚、
図5では1台の操作端末40から複数の搬送台車1,1,…を操作するように説明されているが、複数台の操作端末40,40,…と複数の搬送台車1,1,…とからなる搬送台車の制御システムとしてもよい。更に、操作端末40と搬送台車1とを1対1で使用できることは言うまでもない。
【0027】
尚、通常は、複数の搬送台車は、同一の仕様で製作されたものを一か所の倉庫で使用される。しかしながら、他の倉庫で使用している仕様の異なる搬送台車を混在して1つの倉庫で使用したいという要望もある。このような場合であっても、搬送台車から、操作指示手段が1つの操作端末40に送信され表示されるので、仕様の異なる複数の搬送台車であっても、表示された操作指示手段を操作端末40で操作して、搬送台車を駆動できる。
【0028】
また、
図7に示されるように、操作指示手段画面51には、コールボタン54が表示されている。このコールボタン54が選択されると、コントロールパネル30と1対1にリンクされた特定の搬送台車1の制御装置に対して位置確認信号が送信され、この位置確認信号を受信した制御装置は、前記した報知手段である発光装置62を発光させるとともにスピーカー63から所定の音を出力させる。尚、この位置確認信号を受信した場合の発光装置62の発光色及びスピーカー63から出力される音は、前記バンパー60内のスイッチ61がオンとなったとき、即ち衝突時の発光色及び音と区別されている。このように、作業者は、コールボタン54を選択することで、収納ラック2が薄暗い倉庫内に配置されることが多いことに加えて、収納された物品3に隠れて搬送台車1を視認できない場合においても、報知手段により収納ラック2内における任意の搬送台車1の位置を視覚的に、かつ聴覚的に確認することができるため、収納ラック2内において所定の物品の搬出入作業等を正確に行うことができる。
【0029】
また、
図8に示されるように、発光装置62は、その指向性が搬送台車1の走行方向と平行となるように側板部10cに固定されており、スピーカー63も同様に搬送台車1の走行方向に向けて音が出力されるように設置されている。そのため、搬送台車1の走行方向、即ち収納ラック2の間口2a側に向けて光及び音が発せられることから、間口2a側にて作業を行う作業者は確実に搬送台車1の位置を確認することができる。尚、収納ラック2によっては、搬入側と搬出側とを収納ラック2の奥行方向両端に設けたものもあり、この場合には、発光装置とスピーカーを一方の側板部10cに限らず、他方の側板部10bにも設けることで、作業者は搬入側と搬出側のいずれの間口側にいても搬送台車1の位置を確実に確認することができる。
【0030】
また、
図6に示されるように、搬送台車選択画面52には、オールコールボタン56が表示されるようになっており、このオールコールボタン56が選択されると、操作端末40からアクセスポイント55に接続された全ての搬送台車1,1,…に対して位置確認信号が送信される。この位置確認信号は、所定のリクエスト信号等であり、操作端末40と搬送台車1,1,…とのリンク確立に関わらず送信可能である。尚、全ての搬送台車に対して位置確認信号を送る手段としてオールコールボタン56を例に説明したが、これに限らず、搬送台車選択画面52上における各搬送台車の選択ボタン53a,53b,…の近傍にそれぞれコールボタンを配置し、個々に位置確認信号を送信可能としてもよい。
【0031】
このオールコールボタン56の選択により、位置確認信号を受信した各搬送台車1,1,…は、報知手段である発光装置62を発光させるとともにスピーカー63から所定の音を出力させるため、作業者は、その時点で作業者から1番近い搬送台車を視覚的に、かつ聴覚的に判別でき、物品の搬出入作業の効率が高い。
【0032】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0033】
例えば、位置確認信号を受信した場合における報知と、バンパー60内のスイッチ61がオンとなった場合における報知と、が同じ報知手段である発光装置62及びスピーカー63を兼用する構成となっているが、これに限らず、各報知に対し個別に報知手段を設けてもよい。
【0034】
また、報知手段は発光装置62及びスピーカー63のいずれも構成するものに限らず、発光装置62のみ、若しくはスピーカー63のみを構成するものであってもよい。
【0035】
また、発光装置62は、上記した位置確認信号を受信した場合及びバンパー60内のスイッチ61がオンとなった場合に限らず、搬送台車1の運転時には常に点灯するようにしてもよく、この通常運転時には例えば3段階に3色の光を表示する等してバッテリ44,44の充電残量を識別可能としてもよい。尚、このように通常運転時に点灯させる場合の発光色は、位置確認信号を受信した場合及びバンパー60内のスイッチ61がオンとなった場合と異なる色となるように設定するとともに、通常運転時の光量が比較的小さくなるように設定されることが望ましい。
【0036】
また、搬送台車の制御システムは、操作端末40と搬送台車1,1,…とは、アクセスポイント55を介して接続される態様に限らず、操作端末40と搬送台車1,1,…とがアドホック通信により直接接続可能な構成であってもよい。更に、アクセスポイント55をインターネットに接続することで、倉庫内のネットワークの外部から搬送台車1,1,…の操作及び状態確認を行えるようにしてもよい。
【0037】
また、操作端末40と搬送台車1,1,…とは、1台の操作端末40と1台の搬送台車1とを接続する構成に限らず、1台の操作端末40に対し複数台の搬送台車1,1,…を接続することも可能であり、この場合、操作端末40上に表示される操作指示手段画面を分割し、複数台分の操作指示手段画面を同時に表示することで、1台の操作端末40で複数台の搬送台車1,1,…の操作及び状態確認を行うことができる。
【0038】
また、操作端末40及びコントロールパネル30は、タッチパネルに限らず、例えば、操作指示手段画面等を表示する表示部と操作用の物理的なボタンとから構成されていてもよい。更に、操作端末40はタッチパネルPCに限らず、アクセスポイント55に接続可能な端末であればノートPC等であっても構わない。
【0039】
また、コールボタン54及びオールコールボタン56は、その報知手段として、発光装置62を発光させるとともにスピーカー63から所定の音を出力させる用途に限らず、例えばコールボタン54を長押しすることで、コントロールパネル30と1対1にリンクされた特定の搬送台車1の制御装置に対して呼び戻し命令信号が送信され、この信号を受信した制御装置が搬出及び搬入等の実行中のタスクを中断させるとともに、駆動モータ制御部により搬送台車1を走行させ、間口2aの端部で停止させるように機能してもよい。これによれば、作業者が見失った搬送台車1を確実に目視可能な位置に移動させ、確実にその位置を報知可能となる。尚、このとき発光装置62を発光させるとともにスピーカー63から所定の音を出力させてもよい。