(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タングが前記バックルに結合された後、前記距離センサが定期的に前記距離を検出し、前記リトラクタ制御機構が、該距離に基づいて前記リトラクタが前記ウェビングを巻き取るように前記リトラクタを制御することを特徴とする請求項1に記載のシートベルト装置。
前記距離センサは、送信部と受信部を備え、該送信部から前記乗員に向かって超音波パルスを発信し、該受信部で前記超音波パルスの反射波を受信することによって前記距離を検出することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシートベルト装置。
前記距離センサは、電極を備え、該電極と前記乗員との間の静電容量を検出することによって、前記距離を検出することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシートベルト装置。
前記距離センサは、発光部と受光部を備え、前記発光部からの赤外線の反射波を前記受光部で受光することによって前記距離を検出することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシートベルト装置。
【背景技術】
【0002】
現在のほぼすべての車両には、乗員を座席に拘束するシートベルト装置が設置されている。一般に広く普及している三点式のシートベルト装置は、ウェビング上に設けられたタングを座席横のバックルに挿入することで、乗員の肩から腰にかけての領域と、腰の両脇にかけての領域を拘束する構成となっている。
【0003】
従来、乗員の着座状態等を検出するセンサを設けたシートベルト装置が開発されている。また、シートベルト装置の装着性の向上および乗員の乗降車を妨げないようにするためにベルトリーチャを傾倒させる機構等が開発されている。
【0004】
例えば特許文献1は、シートベルト装置のバックルに乗員検出センサを設けた構成を開示している。この乗員検出センサは、赤外線を放出する発光素子と、その赤外線の反射光を受光する受光素子とを備えている。特許文献1によれば、この乗員検出センサが赤外線の反射光の変化を検出することで、座席上に物体(乗員や荷物)が存在するかどうかを検出できるとしている。
【0005】
特許文献2は、シートベルトのラップ部に可撓性を有するエア袋を設け、エア袋の内圧を制御する構成を開示している。特許文献2によれば、エア袋の内圧を上げるとラップ部が前傾位置に移動し、エア袋の内圧を下げるとラップ部が格納位置に移動するため、シートベルトの装着、格納が容易で、乗降の妨げにもならないとしている。
【0006】
特許文献3は、乗員検出器を備えたシートベルト装置について開示している。このシートベルト装置では、乗員検出器等の検出信号に基づいてECU(Engine Control Unit)が遊星歯車機構を制御し、リトラクタのウェビングの巻き取りの強弱を制御している。
【0007】
特許文献3によれば、このような制御によって、車両下部に配置されウェビングの端部を固定しているアンカを車両前後方向に傾倒または摺動させ、ウェビングの前端部を乗員の乗降車を妨げない格納位置または乗員がシートベルトを装着しやすい位置に変化させることができるとしている。また、ウェビングの巻き取りの強弱を制御して、ウェビングに所定の張力を与えることによって、乗員に対するウェビングの弛みも除去できるとしている。
【0008】
特許文献4は、車両左右方向の剛性を車両前後方向の剛性より小さくしたベルトガイドを備えたシートベルト装置について開示している。また、このシートベルト装置は、着座した乗員を検出するシートセンサと、ドア開閉を検出するドアセンサと、バックルとタングの離脱を検出するバックルセンサとからの信号に基づいてリトラクタを制御している。
【0009】
特許文献4によれば、ベルトガイドを車両左右方向に変形しやすくしたことにより、乗員の体に倣ってベルトガイドを変形させて乗員のシートベルト装着性を向上させることができるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1〜4のシートベルト装置では、乗員のシートベルト装着状態において、ベルトリーチャは車両前方に傾倒した状態となっている。この状態においてベルトリーチャはある程度の剛性を有しているため、ウェビングが巻き取られてもベルトリーチャの先端部分と乗員との間に間隙が残ってしまう。そのため、ウェビングはその間隙の周辺部分において乗員と密着せず、ウェビングの弛みが生じてしまう。
【0012】
このようなウェビングの弛みは、ベルトリーチャが長尺である場合やベルトリーチャに対して乗員が小柄な場合に顕著となる。一方、ベルトリーチャが短尺である場合には、ベルトリーチャの先端に位置するタングの前方移動量が確保できないため、シートベルトを装着しにくくなってしまう。
【0013】
しかし、特許文献4のように、ベルトガイドを車両左右方向に変形しやすくして、屈曲箇所を増やすことは構造が複雑となり、費用や強度面で難がある。ベルトリーチャの柔軟性を増やすと、ベルトリーチャの前方回動は、ウェビングの巻き取りに抗して回動させるため、途中で折れ曲がって捩れたり、タングの前方移動量が確保できなくなったりしてしまう。
【0014】
本発明は、このような課題に鑑み、ベルトリーチャ本来の利便性を損なうことなくウェビングの弛みを防止することができ、乗員の安全性を向上させることができるシートベルト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、車両の座席の側方で上下方向に差し渡され座席に乗員を拘束するウェビングを備えたシートベルト装置において、当該シートベルト装置はさらに、ウェビングの一端に結合され、ウエビングを巻き取り繰り出し可能なリトラクタと、ウェビングの他端近傍を保持し、車両前方に傾倒することでウェビングの他端近傍を前方に移動させる、可撓性を有するベルトリーチャと、ウェビングに摺動可能に取り付けられ、座席の反対側の側方に配置されたバックルに結合されるタングと、ベルトリーチャに設けられ乗員との距離を検出する距離センサと、リトラクタの巻き取り動作を制御するリトラクタ制御機構とを備え、リトラクタ制御機構は、タングがバックルに結合されると、距離センサによって検出された距離が所定の閾値以下となるまでリトラクタがウェビングを巻き取り、傾倒したベルトリーチャを乗員側に撓ませるように、リトラクタを制御することを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、タングがバックルに結合されると、リトラクタ制御機構は、ベルトリーチャに設けられた距離センサが検出する乗員との距離が所定の閾値を超える場合、リトラクタを制御し、ウェビングを巻き取らせる。この巻き取りは、タングがバックルに結合した状態で行われるため、ウェビングの弛みがなくなるだけでなく、可撓性を有するベルトリーチャが乗員側に引っ張られて撓む。
【0017】
したがって、上記構成によれば、乗員が着座しタングがバックルに結合されると、ウェビングがリトラクタによって巻き取られ、乗員の姿勢の変化や体格差によって生じるウェビング自体の弛みが解消される。それだけでなく、ベルトリーチャまでもが撓むことで、ウェビングのとりわけ腰ベルト部分と乗員との間に生じる間隙が小さくなる。これにより、腰ベルト部分の弛みが解消され、乗員の安全性をより向上させることができる。
【0018】
タングがバックルに結合された後、距離センサが定期的に乗員との距離を検出し、リトラクタ制御機構が、その距離に基づいてリトラクタがウェビングを巻き取るようにリトラクタを制御するとよい。
【0019】
上記構成によれば、乗員がシートベルト装着後も距離センサが定期的に乗員との距離を検出し、リトラクタ制御機構がその距離に応じてリトラクタにウェビングを巻き取らせる。したがって、乗員がシートベルト装着後に姿勢を変えたり、座席をスライドさせたりしてウェビングの弛みが生じた場合にも、ウェビングの弛みやウェビングと乗員との間隙を解消することができる。
【0020】
上記ベルトリーチャは、傾倒したときに、座席に着座した平均的米国人成人男性のダミーの大腿部よりベルトリーチャの先端部が上方に突出する長さを有し、上記距離センサは、ベルトリーチャが傾倒したときに距離センサが座席に着座したダミーの大腿部より上方に位置し、ベルトリーチャが乗員側に撓んだとき距離センサがダミーの大腿部の上部に近接するように、ベルトリーチャに設けられているとよい。
【0021】
ベルトリーチャが上述のような長さを有すれば、リトラクタによってウェビングが巻き取られると、ベルトリーチャは、乗員の体格が広範囲にわたって変動しても、乗員の大腿部に上方から接近または接触するように撓むことができる。ベルトリーチャのうち、撓むことでこのように乗員に接近する部分に距離センサを設ければ、距離センサも同様に、乗員の大腿部に上方から接近または接触する。したがって、距離センサは乗員と確実に接近または接触し、乗員との距離も正確に検出可能となる。そのため、ウェビングの弛み防止効果を向上させることができる。
【0022】
当該シートベルト装置はさらに、ベルトリーチャを車両前方に傾倒させるように付勢する付勢部材と、乗員が座席に着座したことを検出する着座センサとを備え、リトラクタ制御機構は、着座センサが着座を検出すると、リトラクタによるウェビングの巻き取り状態を緩めて付勢部材の付勢力によってベルトリーチャを傾倒させ、タングがバックルから解除されると、付勢部材の付勢力に逆らってリトラクタがウェビングを巻き取ることによって、ベルトリーチャを傾倒状態から起立させ、ベルトリーチャを格納状態にするとよい。
【0023】
既に述べたように、タングがバックルへ結合された後にリトラクタがウェビングを巻き取れば、ベルトリーチャが乗員側に撓み、ウェビングのとりわけ腰ベルト部分の弛みが解消される。しかし、乗車した乗員が着座したことを着座センサが検出するのは、未だタングがバックルに結合されていない時点である。その時点でリトラクタ制御機構がリトラクタによるウェビングの巻き取り状態を緩めれば、付勢部材の付勢力によってベルトリーチャは車両前方に傾倒した状態となる。したがってベルトリーチャは、ウェビングに取り付けられたタングを乗員が把持しやすい位置まで移動させるという、ベルトリーチャ本来の機能を損なうことがない。
【0024】
一方、シートベルトを装着した乗員がタングをバックルから解除すると、リトラクタ制御機構は、リトラクタによるウェビングの巻き取りを行う。これによりベルトリーチャは付勢部材の付勢力に逆らってリトラクタ側に引っ張られ、傾倒状態から再び起立して格納状態となる。そのためベルトリーチャは、乗員の降車を妨げることもない。
【0025】
当該シートベルト装置はさらに、タングおよびバックルの結合および解除を検出する結合センサを備え、リトラクタ制御機構は、結合センサが検出する結合または解除によってリトラクタの巻き取り動作を制御するとよい。
【0026】
上記構成では、距離センサはタングおよびバックルの結合が検出されている間にのみ作動し、リトラクタ制御機構はその距離が閾値以下となるまでリトラクタにウェビングを巻き取らせる。そのため、距離センサおよびリトラクタ制御機構の不要な動作を避けることができる。
【0027】
上記距離センサは、送信部と受信部を備え、送信部から乗員に向かって超音波パルスを発信し、受信部で超音波パルスの反射波を受信することによって距離を検出するとよい。
【0028】
上記距離センサは、電極を備え、電極と乗員との間の静電容量を検出することによって、距離を検出するとよい。
【0029】
上記距離センサは、発光部と受光部を備え、発光部からの赤外線の反射光を受光部で受光することによって距離を検出するとよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、構造が単純で、ベルトリーチャ本来の利便性を損なうことなくウェビングの弛みを防止することができ、乗員の安全性を向上させることができるシートベルト装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0033】
図1は、本発明の実施形態にかかるシートベルト装置100を例示する図である。この
図1は、シートベルト装置100を車両の左側前部座席(例えば助手席)に適用した図であり、便宜上、車体の構成要素を図示省略している。
【0034】
シートベルト装置100は、3点式のシートベルト装置であり、車両の座席の側方で上下方向に差し渡され座席に乗員を拘束するウェビング110を備えている。ウェビング110は、一端112がリトラクタ114によって巻き取られ、他端116がベルトリーチャ118の先端部118aに設けられた回転支持部120に回転可能に保持されている。
【0035】
リトラクタ114は、図示を省略するセンタピラー下方などの車室側面下部に取り付けられ、ウェビング110の一端を内部のモータ駆動によって巻き取る。ウェビング110は、リトラクタ114から引き出され、センタピラー上方などの車室側面上部に取り付けられたスルーアンカ122に挿通されて下方へ折り返されている。
【0036】
さらに、スルーアンカ122で折り返されたウェビング110は、タング124に挿通されている。タング124は、ウェビング110に摺動可能に取り付けられ、ベルトリーチャ118と干渉する。また、座席126の車室中央側には、バックル128が配置されている。
【0037】
このような3点式のシートベルト装置100では、座席126に着座した乗員がタング124を把持し、タング124を座席126の反対側の側方に配置されたバックル128に結合させることで、乗員の肩および腰の両脇の3点で固定されたウェビング110によって、乗員の身体が拘束される。
【0038】
図1(b)は、
図1(a)の部分拡大図である。ベルトリーチャ118は、例えば、先端部118aに設けられた回転支持部120と、回動機構130によって車室下部に回動可能に支持された基端部118bと、基端部118bと回転支持部120との間に設けられたブーツ132とを有する。
【0039】
なお、本発明のシートベルト装置は、
図1に例示した回転支持部120を有するベルトリーチャ118を備えた構成に限られない。例えば、ベルトリーチャが、回転支持部の代わりに先端に開口部を有する筒状として、その開口部からウェビングの一部を収納してベルトリーチャ内部に固定するようなものであってもよい。
【0040】
ベルトリーチャ118の先端部118aの乗員側の側面には、乗員との距離を検出する距離センサ140が設けられている。距離センサ140は、ベルトリーチャ118の回転支持部120の乗員側の側面に設けてもよいし、ブーツ132の乗員側の側面に設けてもよい。ベルトリーチャ118は、回動機構130により前方に傾倒した際、回転支持部120に保持されたウェビング110の位置を前方に押し出して移動させる機能を有する。
【0041】
ベルトリーチャ118のブーツ132の材質は可撓性を有するものとしている。ブーツ132は、例えば長手方向に所定の長さを有する扁平な長尺状で車幅方向の厚みが薄くなっている。このため、ベルトリーチャ118は、ある程度の剛性によってブーツ132の長尺状の形状を維持しながら、基端部118bの近傍を中心として車両前後方向に傾倒することが可能である。一方、ブーツ132が車幅方向の厚みが薄く可撓性を有しているため、ベルトリーチャ118は、車幅方向には撓みやすい。
【0042】
本実施形態では、ベルトリーチャ118の一部であるブーツ132に可撓性を持たせることでベルトリーチャ118が全体として可撓性を有する構成となっている。しかし、本発明はこのような構成に限定されず、ベルトリーチャが全部または少なくとも一部に可撓性を有し、ベルトリーチャ全体として撓む構成となっていればよい。
【0043】
なお、
図1では、便宜上、ベルトリーチャ118が傾倒している状態を例示しているが、実際には、
図1のように乗員が着座していない状態では、ベルトリーチャ118は、ほぼ垂直に起立した格納状態になっている。
【0044】
回動機構130は、ベースプレート134と、アンカブラケット136と、基端部側アンカプレート138とを含む。ベースプレート134は、座席126の側面下部に固着されている。アンカブラケット136は、ベースプレート134上に回転可能に取り付けられている。基端部側アンカプレート138は、リーチャー118の基端部118b付近に位置し、アンカブラケット136に連結されている。
【0045】
回動機構130はさらに、ベルトリーチャ118を車両前方に傾倒させるように付勢する付勢部材として機能するリターンスプリング139なども含む。リターンスプリング139は、ベースプレート134とアンカブラケット136の両方に取り付けられ、固定されているベースプレート134に対してアンカブラケット136を反時計回りに回転させる力を付与する。このため、例えばアンカブラケット136がリターンスプリング139によって反時計回りに回転すると、ベルトリーチャ118には、アンカブラケット136に連結された基端部側アンカプレート138を介して、ベルトリーチャ118が車両前方に傾倒するような付勢力が付与される。
【0046】
図2は、
図1のシートベルト装置100の制御ブロック図を例示する図である。
図2に例示するように、シートベルト装置100は、さらに着座センサ150と、結合センサ160と、リトラクタ制御機構200とを備えている。
【0047】
着座センサ150は、乗員330が座席126に着座したことを検出し、結合センサ160は、タング124のバックル128に対する結合および解除を検出する。着座センサ150にはシートウェイトセンサを使用している。
【0048】
距離センサ140、着座センサ150および結合センサ160の出力信号は、
図2に例示するように、リトラクタ制御機構200に入力される。リトラクタ制御機構200は、リトラクタ114のウェビング110の巻き取り動作を制御する。リトラクタ制御機構200は、リトラクタ114と一体として設けてもよいし、別体として設けてもよい。
【0049】
リトラクタ制御機構200は、結合センサ160によってタング124がバックル128に結合されたことが検出されると、距離センサ140によって検出された乗員との距離を参照する。この距離が所定の閾値を超える場合、リトラクタ制御機構200は、同距離が所定の閾値以下となるまでリトラクタ114にウェビング110を巻き取らせて、傾倒したベルトリーチャ118を乗員側に撓ませる。
【0050】
ここで、ベルトリーチャ118の長さについて説明する。
図3は、
図1のベルトリーチャ118付近を車両側方から見た概略図である。
【0051】
図3では、平均的米国人成人男性のダミー300を座席126に着座させた状態を例示している。なお、この
図3は、主にベルトリーチャ118とダミー300の相対的な位置関係を説明するための図であるため、シートベルト装置100のベルトリーチャ118以外の構成要素(例えばリトラクタ144等)や、座席126およびダミー300の一部については図示省略している。
【0052】
ダミー300には、各国で自動車の安全規格として定められた前面衝突用ダミーAM50を使用している。
図3では、ベルトリーチャ118が撓んでいない状態を例示している。また、両矢印で示すように、ベルトリーチャ118は車両前後方向に回動するが、
図3では車両前方に傾倒した状態を例示している。
図3に例示するようにベルトリーチャ118は、座席126に着座したダミー300の大腿部302より上方に先端部118aが突出する長さL1を有している。
【0053】
ベルトリーチャ118は、かかる長さL1を有し、既に述べたように可撓性を有するため、座席126に着座した乗員(
図3ではダミー300)側に撓むときは、乗員の大腿部302に上方から接近または接触する。
【0054】
ここで、
図3および
図4を参照しながら、距離センサ140の配置について説明する。ただし
図4において距離センサ140は図示省略している。
【0055】
図4は、
図1のベルトリーチャ118付近を車両前方から見た概略図である。
図4(a)は、大柄な乗員310を座席126に着座させた状態を例示し、
図4(b)は、小柄な乗員320を座席126に着座させた状態を例示している。
図4において、便宜上、説明と関係ない構成要素(リトラクタ114やウェビング110等)は、図示省略している。
【0056】
図4のベルトリーチャ118は、前方に傾倒した状態から乗員310または320の側に撓む。二点鎖線および実線はそれぞれ、ベルトリーチャ118の撓んでいない状態および撓んだ状態を例示している。ベルトリーチャ118の撓みは、リトラクタ114によるウェビング110の巻き取りによって生じる。
【0057】
図3では、両矢印によって領域A,領域B,領域Cを定義している。領域Aは、ベルトリーチャ118の回動機構130に対する固定点の高さから座席126の座面高さまでの領域である。領域Bは、座席126の座面高さからダミー300の大腿部302上面高さまでの領域である。領域Cは、ダミー300の大腿部302上面高さからベルトリーチャ118の先端の高さまでの領域である。
【0058】
図3に示すベルトリーチャ118の長さL1に対し、長さL2は、ベルトリーチャ118の回動機構130に対する固定点(傾倒の中心となる位置)からダミー300の大腿部302までの長さを示している。
【0059】
図3において、距離センサ140は、ベルトリーチャ118のうち、長さL2の先端から長さL1の先端までの範囲に相当する領域Cに配置される。すなわち、距離センサ140は、ベルトリーチャ118が傾倒したときに座席126に着座したダミー300の大腿部302より上方に位置するよう、ベルトリーチャ118に設けられている。
【0060】
ベルトリーチャ118のうち、撓むことで乗員に接近するのは、
図4に示したようにダミー300の大腿部より上方、すなわち
図3に示す領域Cに位置する部分である。したがって、距離センサ140を上記のように領域Cに設ければ、ベルトリーチャ118の撓みによって、距離センサ140は乗員と確実に接近または接触し、乗員との距離も正確に検出可能となる。
【0061】
これに対し、領域Aおよび領域B、すなわちベルトリーチャの長さL2で示す領域に距離センサ140を配置することは不適切である。
【0062】
例えば、領域Aに距離センサ140を配置すると、距離センサ140は乗員ではなく座面との距離を検出してしまう。また、領域Bに距離センサ140を配置しても、距離センサ140は
図4に例示するように、ベルトリーチャ118が撓んだ状態でも乗員310,320と接近または接触できない可能性がある。
【0063】
図4(a)と
図4(b)を比較すると、大柄な乗員310の場合は距離センサ140を設置できない領域Dが大きく、小柄な乗員310,320の場合は距離センサ140を設置できない領域D’が小さくなっていることがわかる。このように乗員の体格によって距離センサ140の設置できない領域は変化するが、平均的には領域Aと領域Bを合わせた領域となる。したがって、比較的大柄な乗員を基準に距離センサ140の配置する領域Cを決定し、その領域Cに距離センサ140を設ければ、乗員の体格によって領域Dや領域D‘の小柄な乗員においても距離センサ140が乗員と接近または接触させることが可能な位置となる。
【0064】
そこで本実施形態では、
図3に例示するように、平均的米国人成人男性のダミー300(AM50)を基準として距離センサ140を配置する領域Cを決定している。これにより広範囲にわたる乗員の体格に適用可能となる。
【0065】
図5は、
図1の距離センサ140の出力特性を例示する図である。この
図5は、ウェビング110の弛みの大きさに対する距離センサ140のセンサ出力を示している。センサ出力はウェビング110の弛みの大きさに比例して大きくなる。
図5において一点鎖線で示しているのは閾値である。本実施形態では、センサ出力値がこの閾値以下であれば、距離センサ140と乗員とが十分に接近しまたは接触している、すなわちウェビング110の弛みなしと判定する。
【0066】
以下、本実施形態にかかるシートベルト装置100の動作および作用効果について説明する。
図6は、
図1のシートベルト装置100を乗員330が装着する様子を例示する図である。
図6(a)は、乗員330が着座していない状態を例示し、ウェビング110等については便宜上図示省略している。
【0067】
図1および
図6(a)に例示するように、乗員330が着座していないとき、リトラクタ114によってウェビング110が巻き取られている。そのため、ベルトリーチャ118は、起立した格納状態になっていて、乗員330側への撓みもない。そのため、乗員330の乗車を妨げない。
【0068】
ウェビング110に取り付けられたタング124は、ベルトリーチャ118に干渉するため、バックル128に結合される前はベルトリーチャ118の先端部118aに位置している。なお、
図1ではタング124が上方に位置しているが、実際には重力によってベルトリーチャ118の先端部118aまで摺動している。
【0069】
乗員330が座席126に着座すると、着座センサ150が乗員330の着座を検出し、リトラクタ制御機構200がウェビング110の巻き取り状態を緩めるのでリターンスプリング139の付勢力によってベルトリーチャ118が前方に傾倒する。
【0070】
ベルトリーチャ118が前方に傾倒すると、ベルトリーチャ118の先端にあるタング124も前方に移動する。ベルトリーチャ118は、傾倒したときであっても、平均的米国人成人男性のダミー300の大腿部302の上方に先端部118aが突出する長さを有している。そのため、傾倒したベルトリーチャ118の先端部118aに位置するタング124も、乗員330の大腿部の上方という比較的高い位置で前方に移動する。この際、ベルトリーチャ118の先端にあるタング124は乗員330よりも前方に移動している。したがって、着座した乗員330は体をひねることなくタング124を容易に把持することができる。
【0071】
図6(b)は、乗員330が座席126に着座してシートベルト装置100を装着した時点の状態を例示している。このようにシートベルト装置100を装着すると、ウェビング110は、肩ベルト部分110aと腰ベルト部分110bとに区分される。この状態では、ベルトリーチャ118は乗員330側に撓んでいるが、距離センサ140は、乗員330に対して接近または接触していない状態にある。
【0072】
図7は、リトラクタ制御機構200の動作を例示するフローチャートを例示する図である。以下、
図6および
図7を参照しながら説明する。
【0073】
図6(b)に例示するように、乗員330が着座してバックル128をタング124に結合等すると、リトラクタ制御機構200は、
図7に例示するリトラクタ114の巻き取り動作の制御を開始する(ステップS100)。
【0074】
次に、ベルトリーチャ118に設けられた距離センサ140が乗員330との距離を検出し、出力信号をリトラクタ制御機構200に入力する。リトラクタ制御機構200は、その検出した距離が所定の閾値を超える場合、ウェビング110に弛みありと判定し、閾値以下の場合には弛みなしと判定する(ステップS102)。
【0075】
判定結果が弛みなしの場合には、リトラクタ制御機構200は、リトラクタ114のモータ駆動を終了する(ステップS104)。
【0076】
判定結果が弛みありの場合には、リトラクタ制御機構200は、リトラクタ114にウェビング110を巻き取らせる(ステップS106)。
【0077】
図6(c)は、乗員330が座席126に着座してシートベルト装置100を装着した後にリトラクタ制御機構200の制御によってリトラクタ114がウェビング110を巻き取った状態を例示している。
図6(c)に例示するように、タング124がバックル128に結合した状態でウェビング110が巻き取られるため、ウェビング110の弛みがなくなるとともに、可撓性を有するベルトリーチャ118が乗員330側に引っ張られて撓む。これにより、ウェビング110の、とりわけ腰ベルト部分110bと乗員330との間に生じる間隙450が小さくなる。この間隙450は、乗員の姿勢や体格の変化によっても生じるが、元来、ベルトリーチャ118自体によっても生じるものである。すなわち、可撓性は有するもののある程度の剛性を有するベルトリーチャ118が、ウェビング110のうち腰ベルト110bとなる他端116近傍を保持しているために、必然的に腰ベルト110bは乗員330から離れ、上記の間隙450が生じている。しかし本実施形態によれば、
図6(c)に例示するように、ベルトリーチャ118が撓むことで間隙450が小さくなり、腰ベルト部分110bの弛みが解消され、乗員330の安全性をより向上させることができる。
【0078】
その後、リトラクタ制御機構200は、再び距離センサ140が検出した距離によってウェビング110の弛み量が変化したかどうかを確認する(ステップS108)。確認した結果、弛み量の変化があった場合には再びステップS102に戻る。弛み量に変化がなかった場合には、ウェビング110を巻き取るトルクが足りていない可能性があるため、リトラクタ114のモータ駆動の駆動電流値を増加させてウェビング110の巻き取りを行ったうえで再びステップS102に戻る(ステップS110)。
【0079】
リトラクタ制御機構200がこのような制御を行うことによって、乗員との距離が閾値以下となるまでウェビング110が巻き取られる。ベルトリーチャ118は撓んでいない状態で平均的米国人成人男性のダミー300の大腿部の上方に先端部118aが突出する長さを有している。そのため、乗員330の体格が広範囲にわたって変動しても、体格差によって生じるウェビング110自体の弛みが解消される。
【0080】
ベルトリーチャ118の先端部118aは、乗員330の大腿部302に上方から接近または接触するように撓む。これによりベルトリーチャ118の先端(距離センサ140)と乗員330との距離が小さくなり、ベルトリーチャ118によって生じるウェビング110と乗員330との間隙450も解消することができ、乗員330の安全性をより向上させることができる。
【0081】
次に、シートベルトを装着した乗員がタング124をバックル128から解除すると、結合センサ160がその解除を検出する。リトラクタ制御機構200は、着座している乗員330の降車を想定し、リターンスプリング139の付勢力に逆らってリトラクタ114によるウェビング110の巻き取りを行う。これによりベルトリーチャ118はリトラクタ114側に引っ張られ、
図6(a)の傾倒状態から再び起立し、格納状態となる。そのため、乗員330の降車を妨げない。
【0082】
なお、本実施形態のように結合センサ160の解除の検出をきっかけとするのではなく、別途ドアスイッチの操作を検出するセンサを設けて、そのセンサ出力に基づいてリトラクタ制御機構がリターンスプリングの付勢力に逆らってリトラクタにウェビングを巻き取らせてベルトリーチャを傾倒状態から起立させてもよい。
【0083】
距離センサ140はタング124およびバックル128の結合が検出されている間にのみ作動し、リトラクタ制御機構200はその距離が閾値以下となるまでリトラクタ114にウェビング110を巻き取らせる。そのため、距離センサ140およびリトラクタ制御機構200の不要な動作を避けることができる。
【0084】
図8は、
図1のシートベルト装置100を装着した乗員330が前方に移動する様子を例示する図である。
図8(a)は、乗員330が、シートベルト装置100を装着して、
図7に例示したリトラクタ制御機構200の制御によってウェビング110の弛みがなくなるまでウェビング110が巻き取られた状態を例示している。
【0085】
図7に例示したフローチャートの場合、一度、距離センサ140が検出した距離が閾値以下になると、リトラクタ制御機構200はリトラクタ114の巻き取り動作の制御を終了させてしまう。
【0086】
しかし、この状態から、
図8(b)のように乗員330が前方に移動すると、ウェビング110が伸びてしまい、乗員330が再び元の位置に戻っても、ウェビング110の弛みが残ってしまうことが考えられる。
【0087】
そのため、タング124がバックル128に結合された後も距離センサ140が定期的に距離を検出し、リトラクタ制御機構200がその距離に基づいてモータを駆動させてウェビング110を巻き取らせることが好ましい。すなわち、リトラクタ制御機構200が
図7に例示した制御を定期的に繰り返し実行することが好ましい。
【0088】
この場合、乗員330がシートベルト装着後も距離センサ140が定期的に乗員330との距離を検出し、リトラクタ制御機構200がその距離に応じてウェビング110を巻き取る。したがって、乗員330がシートベルト装着後に姿勢を変えたり、座席126をスライドさせたりして
図8(c)のようにウェビング110の弛みが生じた場合にも、ウェビング110の弛みやウェビング110と乗員330との間隙450を解消することができる。
【0089】
(距離センサの具体例)
次に、上記距離センサ140の具体例について説明する。なお、第1実施形態または第2実施形態と共通する構成要素には同一の符合を付して説明を省略する。
【0090】
図9は、超音波パルスによって乗員330との距離を検出する距離センサ240を例示する図である。この距離センサ240は、送信部242と受信部244と超音波生成等を行う本体部246とを備えている。
【0091】
図9に一点鎖線矢印で例示するように、距離センサ240は、送信部242から乗員330に向かって超音波パルスを発信し、受信部244で超音波パルスの反射波を受信する。本体部246は、超音波の送信波形と受信波形のピーク間の時間差によって乗員との距離を検出する。
【0092】
図10は、静電容量を検出することによって乗員との距離を検出する距離センサ340を例示する図である。
図10(a)は、距離センサ340の概略図を例示し、
図10(b)は、乗員330と距離センサ340とで形成される等価回路を例示している。
【0093】
図10(a)に例示するように、距離センサ340は、高周波パルス電圧を印加する電極342と、高周波パルス電圧を生成する電源を有し内部で接地されている本体部344を備えている。
【0094】
距離センサ340が電極342に高周波パルス電圧を印加すると、高周波パルス電圧は、乗員330との間の空気を介して乗員330側と電気的に接続される。空気は、絶縁物であるため、
図10(a)には、静電容量C1として例示している。乗員330は、その体内を介して接地されているものとする。厳密には乗員330は、車両構造物などに接触して間接的に接地されていると考えられるが、そのような細かい部分については無視して考える。
【0095】
図10(b)において、乗員330は電気抵抗Rと静電容量C2と等価であるものと考えて等価回路を構成している。距離センサ340の本体部344の高周波パルス電圧を生成する電源は、交流の電源Vとして例示している。そうすると、高周波パルス信号は、電源Vの正極から、直列接続されている空気の静電容量C1と、乗員330すなわち電気抵抗Rおよび静電容量C2とを経て、大地を介して電源Vの負極まで戻ることとなる。
【0096】
図10(b)に例示している等価回路において、空気の静電容量C1は、乗員330との距離が大きくなるほど小さくなり、高周波パルス信号の大きさが小さくなる。したがって、伝搬される高周波パルス信号の大きさに基づいて、乗員330との距離を検出することができる。なお、電源Vの周波数掃引を行って静電容量C1を推定することにより、より正確に乗員330との距離を検出してもよい。
【0097】
図11は、赤外線によって乗員330との距離を検出する距離センサ440を例示する図である。距離センサ440は、発光部442と受光部444と赤外線等を行う本体部446とを備えている。発光部442は例えば発光ダイオードであり、受光部444は例えばフォトダイオードである。
【0098】
図11に一点鎖線矢印で例示するように、距離センサ440は、発光部442から乗員330に向かって赤外線を照射し、受光部444でその赤外線の反射光を受光する。例えば、発光部442が断続的に点灯消灯を繰り返し、本体部446は、発光部442の発光タイミングと受光部444の受光タイミングの時間差によって乗員との距離を検出する。
【0099】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。