(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286269
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】シャープペンシル
(51)【国際特許分類】
B43K 21/22 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
B43K21/22
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-85923(P2014-85923)
(22)【出願日】2014年4月17日
(65)【公開番号】特開2015-205416(P2015-205416A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2017年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛
【審査官】
青山 玲理
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−049085(JP,U)
【文献】
実開平03−103785(JP,U)
【文献】
特開2001−039082(JP,A)
【文献】
特開2002−301894(JP,A)
【文献】
実開昭55−144087(JP,U)
【文献】
特開昭50−078418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00−27/12
B43L 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に2つの弾性片を形成した樹脂製のチャックと該チャックの外側に配設した締具とを有し、前記弾性片の中央に軸方向に延びる溝状の芯保持部を形成し、前記締具で前記弾性片を互いに接近するよう軸心方向に向かって締め付けることにより前記芯保持部で芯を保持し、前記チャックを前進させることで前記芯を繰り出す芯繰り出し機構を備え、前記チャックが前記芯保持部の両端部に該芯保持部に沿った膨出部と、前記弾性片が前記芯を挟持する方向に対して直交する方向に前記膨出部の基端部から前記弾性片の外縁を結ぶよう形成した平坦部とを有し、前記チャックで前記芯を保持した際、前記平坦部同士の間に隙間を設け、前記平坦部同士の隙間が前記膨出部同士の隙間より大きく、且つ芯径より小さくなることを特徴としたシャープペンシル。
【請求項2】
前記チャックを前進させて芯を繰り出す際、前記チャックの2つの弾性片同士が最大に離間した状態でも該チャック先端部における前記弾性片の膨出部同士の隙間が芯径より小さくなることを特徴とした請求項1に記載のシャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックを前進させることで芯を繰り出す構造のシャープペンシルに関する。
【背景技術】
【0002】
シャープペンシルに用いられるチャックは、先端を複数に分割して弾性片を形成し、弾性片の外周を締具で締め付けることにより、弾性片の内側に設けた芯保持部で芯を保持する構造になっており、チャックは金属や樹脂が素材として用いられているが、樹脂製のチャックは射出成形により成形して金属製に比べてコストを下げることができることから、近年、低価格品を中心に広く採用されている。しかしながらチャックに樹脂を用いた場合、成形時の寸法安定性が低く、さらに芯の保持力が弱くなる傾向があり、芯径が細くなればなるほど、その傾向が強くなるという問題があった。
そこで、樹脂製チャックにおいて芯の保持力を向上させる手段として、特許文献1ではチャック先端の咬持部から後端近傍にかけて軸線方向に3分割し、咬持部はその一片の分割面のなす角度が120°以下か、もしくは分割面の外周部が切り欠かれ、締具がチャックの外周面に係合したときに、外周面と締具との間に軸線方向の隙間を形成することで、締具の締め付け力を中心部に強く作用させ、芯の保持力を強くさせる構成が開示されている。
また、特許文献2では樹脂製のチャック要素(弾性片)同士の円周方向の隙間を0.15mm以下とすることで、チャック要素に保持された芯がチャック要素と接触する面積を大きくして、芯の保持力を向上させる構成が開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の構成では、樹脂製でありながらチャック先端を3分割して形成することから、射出成形により成形する際、成形樹脂の流動性が悪化することで、3つの分割片を均等な状態に成形することが難しいという問題点があった。
また、特許文献2の構成では、樹脂製であるチャック要素同士の隙間を0.15mm以下としていることから、チャック要素の成形時の寸法ばらつきによって、締具でチャックを締付けた際に、チャック要素の外縁同士が接触し易く、芯を保持する芯保持部を軸心方向に締め付ける力が弱くなり、芯の保持力低下を招く恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−122684号公報
【特許文献2】実開昭63−124185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記問題を鑑みて、樹脂製チャックであっても芯保持力に優れたシャープペンシルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
「1.前方に2つの弾性片を形成した樹脂製のチャックと該チャックの外側に配設した締具とを有し、前記弾性片の中央に軸方向に延びる溝状の芯保持部を形成し、前記締具で前記弾性片を互いに接近するよう軸心方向に向かって締め付けることにより前記芯保持部で芯を保持し、前記チャックを前進させることで前記芯を繰り出す芯繰り出し機構を備え、前記チャックが前記芯保持部の両端部に該芯保持部に沿った膨出部と、前記弾性片が前記芯を挟持する方向に対して直交する方向に前記膨出部の基端部から前記弾性片の外縁を結ぶよう形成した平坦部とを有し、前記チャックで前記芯を保持した際、前記平坦部同士の間に隙間を設け、前記平坦部同士の隙間が前記膨出部同士の隙間より大きく、且つ芯径より小さくなることを特徴としたシャープペンシル。
2.前記チャックを前進させて芯を繰り出す際、前記チャックの2つの弾性片同士が最大に離間した状態でも該チャック先端部における前記弾性片の膨出部同士の隙間が芯径より小さくなることを特徴とした1項に記載のシャープペンシル。」である。
【0007】
本発明のシャープペンシルは、弾性片を締具で締め付けて該弾性片で芯を保持した際、
芯保持部のほか、芯保持部の両側に設けた膨出部でも芯を保持しているため、芯保持力を向上させることができる。
尚、一般的に、シャープペンシルで使用されるチャックと締具との関係は、互いの方向性を考慮せずに組み立てが行えるように、締具を円環形状とし、その中に入るチャックの外側面は締具の内孔に当接するよう円弧状に形成して、チャックの周りで締具が回動できるようにしてあることから、チャックの断面形状は芯保持部の部分が厚くなり、端に行くにしたがって薄くなっている。したがって、チャックを射出成形で形成した際に、肉厚が大きい芯保持部が成形収縮で薄くなり、その結果、チャックが芯を保持保持した際に平坦部同士が近づく場合もあるが、本発明では平坦部の間に隙間を設けたことにより、平坦部同士の接触を防止することが、締具による締め付け力が基点である芯保持部に対して確実に働くため、芯の保持力を安定させることができる。
【0008】
更に、芯保持部で芯を保持した際の弾性片の平坦部同士の隙間を芯径より小さくすることで、チャックと芯ホルダーの間で芯折れが発生しても折れた芯が前部からチャックの弾性片の平坦部同士の隙間に入ることを防止でき、芯の保持力の低下や動作不良を防止できる。
【0009】
また、芯を繰り出すためにチャックを前進させ、チャックの弾性片を締具の締め付けから解放して弾性片同士が最大に離間した状態においても、相対する弾性片の膨出部同士の隙間を芯径より小さくすることで、芯保持部内で芯が折れた場合や芯タンクより折れた芯がチャックに供給された場合でも、折れ芯が芯保持部から弾性片の平坦部同士の隙間に移動して挟まって、芯の繰り出しを阻害してしまうような状況を防止でき、折れ芯をチャック先端から先口を通して外部へ排出させることができるものとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、チャックを樹脂で形成しても、芯保持力が優れたシャープペンシルを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施例のシャープペンシルにおける要部を示す断面図である。
【
図4】本実施例のチャックの前端を示す端面図である。
【
図5】
図2におけるA−A断面を示す断面図である。
【
図6】本実施例のシャープペンシルを示す断面図である。
【
図7】
図6におけるチャックと締具と芯との関係をB−B線間において矢視方向から視た図である。
【
図8】本実施例のシャープペンシルにおけるチャックを前方に移動させた状態を示す断面図である。
【
図9】
図8におけるチャックと芯との関係をC−C線間において矢視方向から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0012】
次に
図1から
図9を参照しながら、本実施例のシャープペンシルの説明をするが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、
図1におけるシャープペンシル1の先口2がある方を前方と表現し、その反対を後方と表現する。
【0013】
樹脂製のチャック3は、
図2、3に示すように、チャック3の前部に2つの弾性片3aを形成し、弾性片3aの前端に形成した頭部は、
図4及び
図5に示すようにチャック3の先端に形成される略半円形の最大径部3bと隆起部3cとで構成してある。また、最大径部3bの曲率半径は、先口2の内部の摺動孔2aの半径よりわずかに小さく、且つ、円環形状の締具4の内孔4aの半径より大きく形成してある。更に隆起部3cの断面形状は両側がカットされた半円形状で形成され、隆起部3cの外周面3dの曲率半径は長手方向で変化しないように形成してある。(
図1参照)
【0014】
また、弾性片3aの内側に設けられた芯保持部3eは軸方向に延びる円弧状に形成してあり、芯保持部3eの曲率半径は芯保持部3eで保持される芯5の半径と同じかわずかに小さく形成してある。更に、芯保持部3eの両側には該芯保持部3eに沿って軸方向に延びる膨出部3fを形成してある。また、膨出部3fの側壁の基端部3gから、弾性片の外縁3hまで延びる平坦部3iを膨出部3fに沿ってが形成してある。
【0015】
また、チャック3は、ポリアセタール中にグラスファイバーを入れた成形樹脂により射出成形で形成してあり、チャックの前端の弾性片が拡かれた状態で成形してある。
【0016】
次に、
図1及び
図6を用いて、本実施例のシャープペンシル全体の構成を説明する。軸筒6は後端部から前方に向かってクリップ部6aを形成してある。また、前端部6bの外側に雄螺子部6cを形成し、先口2の後部内側に形成した雌螺子部2bと螺合してある。
【0017】
また、筒体7を軸筒6の前部内孔6dから挿入し、筒体7の鍔部7aを軸筒6の前端6eと先口2の後方段部2cとで挟持して固定してある。更に筒体7の先端内孔7bから締具4を外嵌したチャック3を挿入し、チャック3の後部に形成した突状部3jを芯タンク8の内孔8aに圧入して固着してある。尚、締具4は先口2の中間部内段2dと筒体7の前端7dとの間に遊嵌される。また、芯タンク8の前端8bと筒体7の内段7cとの間にスプリング9を配設することでチャック3と芯タンク8とを後方に弾発してある。
【0018】
更に、芯タンク8の後方外周部8cを押棒10の前部内孔10aに圧入して固着し、押棒10の後方内孔10bには消しゴム11が取り外し可能に取り付け、消しゴム11を覆うノブ12が押棒10の後方外周部10cに取り外し可能に外嵌してある。
【0019】
先口2の外形は先端が先細りとなるよう円錐状に形成してあり、先口2の内孔は段状に形成してある。また、先口2の前部内孔2eには芯5を適度な力で保持するゴム製の芯ホルダー13が圧入固着してあり、先口2の先端内孔2fは芯5の外径よりわずかに大きく形成してある。
【0020】
次に
図6から
図9を用いてチャック3で芯5を保持した状態とノブ12を押動してチャック3を前進させ芯を繰り出す状態について説明する。
【0021】
図6は実施例のシャープペンシル1において、チャック3で芯5を保持した状態を示している。
芯5をチャック3の芯保持部3eで保持している状態では、
図7に示すように、チャック3の平坦部3i同士の隙間L1を芯5の外径Dより小さく構成するとともに、L1を膨出部3f同士の隙間L2よりも大きく構成してある。
更に、本実施例のチャック3は、相対する平坦部3iがチャック3で芯5を保持した際に軸心に沿って平行になるようにしてあり、芯保持部3eで芯5を保持している状態では平坦部3i同士の隙間L1に芯5が入ることを防止できる。
また、
図4や
図5で示したように本実施例の弾性片3aは芯保持部3e付近における芯挟持方向の肉厚が最も厚くなり、平坦部3iの外縁3h付近の肉厚が最も薄くなる。このため、成形時に芯保持部3e付近にヒケが発生して薄くなり易く、その結果、チャック3が芯5を保持した際に平坦部3i同士が近づくことがあるが、平坦部3i同士の間には隙間L1が形成されていることから、弾性片3aの平坦部3i同士が接触することを防ぎ、芯保持部3eに対して締具4で締め付けられたチャック3の挟持力が集中するため、芯保持力を向上させることができた。
【0022】
次に、ノブ12を前方側に押動することで
図8に示すように芯タンク8とチャック3とが前進し、チャック3の弾性片3に外嵌されていた締具4の前端が先口2の中間部内段2dに当接してチャック3から外れ、弾性片3aは解放状態になり先口2の摺動孔2aの内面に当接するまで拡開する。更にノブ12を押動することでチャック3の前端面3kと先口2の前部内段2gとが当接してチャック3の前進は停止する。この際、
図9に示すようにチャック2の2つの弾性片3aが最大に離間した状態となるが、この状態において膨出部3f同士の隙間L3を芯の直径Dよりも小さくなるよう構成してあるため、たとえ芯が折れて短い状態であっても芯保持部3eから弾性片3aの平坦部3i同士の隙間に芯が入り込むことはない。また、チャック3の前端面3kは芯ホルダー13の後端部13aに近接状態にあるため、折れた芯は芯保持部3eから芯ホルダー13の内孔13bにスムーズに移動し、更に先口2の先端内孔2fを通して外部に排出される。
【0023】
尚、ノブ12を押動してチャックを前進させる際、チャック3の最大径部3bの曲率半径が先口2の摺動孔2aの半径よりわずかに小さく形成されているので、チャック3が拡開した時に先口2の摺動孔2aと軸心が一致し、チャック3の芯保持部3eが中心に位置するために、芯タンク8の芯5が確実にチャック3の芯保持部3e内に到達することができる。
【0024】
また、チャック3の最大径部3bの曲率半径が締具4の内孔4aの半径より大きく形成され、最大径部3bの幅が締具4の内孔4aより大きく設定されているで、チャック3の頭部がスプリング9によって締具4に圧接され、チャック3が閉じられた時でもチャック3の頭部が円環形状の締具4から抜けてしまうことがなかった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によるシャープペンシルの構造は、ノック式や振出式のシャープペンシルのほか、棒状物の繰り出し容器にも利用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1…シャープペンシル、
2…先口、2a…摺動孔、2b…雌螺子部、2c…後方段部、2d…中間部内段、
2e…前部内孔、2f…先端内孔、2g…前部内段、
3…チャック、3a…弾性片、3b…最大径部、3c…隆起部、3d…外周面、
3e…芯保持部、3f…膨出部、3g…基端部、3h…外縁、3i…平坦部、
3j…突状部、3k…前端面、
4…締具、4a…内孔、
5…芯、
6…軸筒、6a…クリップ部、6b…前端部、6c…雄螺子部、6d…前部内孔、
6e…前端、
7…筒体、7a…鍔部、7b…先端内孔、7c…内段、7d…前端、
8…芯タンク、8a…内孔、8b…先端、8c…後方外周部、
9…スプリング、
10…押棒、10a…前端内孔、10b…後方内孔、10c…後方外周部、
11…消しゴム、
12…ノブ、
13…芯ホルダー、13a…後端部、13b…内孔。