(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方の面および他方の面に受ける圧力差に応じた信号を出力するセンサダイアフラムと、前記センサダイアフラムの一方の面にその周縁部を対面させて接合され当該センサダイアフラムの一方の面へ第1の流体圧力を導く第1の導圧孔を有する第1の保持部材と、前記センサダイアフラムの他方の面にその周縁部を対面させて接合され当該センサダイアフラムの他方の面へ第2の流体圧力を導く第2の導圧孔を有する第2の保持部材とを備えたセンサチップと、
前記センサチップを収容するセンサ室と、前記センサ室の第1の内壁面まで前記第1の流体圧力を導く第1の導圧路と、前記センサ室の前記第1の内壁面と対向する第2の内壁面まで前記第2の流体圧力を導く第2の導圧路とを有するセンサハウジングとを備えた差圧センサにおいて、
前記センサチップは、
前記センサ室の第1の内壁面と第2の内壁面との間に、前記センサチップの一方の面と前記センサ室の第1の内壁面との間に第1の接着剤の層を介して接合され、前記センサチップの他方の面と前記センサ室の第2の内壁面との間に第2の接着剤の層を介して接合され、
前記第1の接着剤の層は、
前記センサダイアフラムを構成する材料のヤング率よりも小さいヤング率を有する接着剤の層とされ、
前記第2の接着剤の層は、
前記センサダイアフラムを構成する材料のヤング率よりも小さく且つ前記第1の接着剤の層のヤング率よりも大きいヤング率を有する接着剤の層とされている
ことを特徴とする差圧センサ。
一方の面および他方の面に受ける圧力差に応じた信号を出力するセンサダイアフラムと、前記センサダイアフラムの一方の面にその周縁部を対面させて接合され当該センサダイアフラムの一方の面へ第1の流体圧力を導く第1の導圧孔を有する第1の保持部材と、前記センサダイアフラムの他方の面にその周縁部を対面させて接合され当該センサダイアフラムの他方の面へ第2の流体圧力を導く第2の導圧孔を有する第2の保持部材とを備えたセンサチップと、
前記センサチップを収容するセンサ室と、前記センサ室の第1の内壁面まで前記第1の流体圧力を導く第1の導圧路と、前記センサ室の前記第1の内壁面と対向する第2の内壁面まで前記第2の流体圧力を導く第2の導圧路とを有し、前記センサ室の第1の内壁面とされる第1の壁面を有する第1のハウジングと前記センサ室の第2の内壁面とされる第2の壁面を有する第2のハウジングとの2分割構造とされたセンサハウジングとを備え、
第1の接着剤の層を前記センサダイアフラムを構成する材料のヤング率よりも小さいヤング率を有する接着剤の層とし、第2の接着剤の層を前記センサダイアフラムを構成する材料のヤング率よりも小さく且つ前記第1の接着剤の層のヤング率よりも大きいヤング率を有する接着剤の層とし、前記第1のハウジングの第1の壁面と前記第2のハウジングの第2の壁面との間に、前記センサチップの一方の面を前記第1のハウジングの第1の壁面に前記第1の接着剤の層を介して接合し、前記センサチップの他方の面を前記第2のハウジングの第2の壁面に前記第2の接着剤の層を介して接合する差圧センサの製造方法であって、
前記第2のハウジングの第2の壁面に前記センサチップの他方の面として第2の台座の底面を前記第2の接着剤を塗布し硬化させて接合する第1工程と、
前記第2のハウジングの第2の壁面に接合された第2の台座の上面にセンサダイアフラムとストッパとガラス台座との組立体を前記センサチップのセンサ部として接合する第2工程と、
前記第2のハウジングの第2の壁面にプリント基板を固定する第3工程と、
前記第2のハウジングの第2の壁面に固定されたプリント基板と前記第2の台座の上面に接合されたセンサ部との間の電気的な接続を図る第4工程と、
前記第2の台座の上面に接合されたセンサ部の上面に第1の台座の底面を接合する第5工程と、
前記第1のハウジングの第1の壁面にワッシャを固定する第6工程と、
前記プリント基板と前記センサ部との間の電気的な接続が図られた前記第2のハウジングの第2の壁面に筒状のスペーサを設置する第7工程と、
前記センサ部の上面に接合された第1の台座の上面に前記第1の接着剤を塗布する第8工程と、
前記ワッシャが固定された第1のハウジングと前記筒状のスペーサが設置され前記第1の台座の上面に第1の接着剤が塗布された第2のハウジングとを組み合わせ、前記第1の台座の上面を前記ワッシャの内周面で囲まれた空間内に位置させる第9工程と、
前記組み合わされた第1のハウジングと第2のハウジングとを前記筒状のスペーサにボルトを通して締結固定する第10工程と、
前記第1のハウジングと第2のハウジングとを締結固定した状態で前記第1の接着剤を硬化させて前記第1のハウジングの第1の壁面に前記第1の台座の上面を前記センサチップの一方の面として接合する第11工程と
を備えることを特徴とする差圧センサの製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来より、工業用の差圧センサとして、一方の面および他方の面に受ける圧力差に応じた信号を出力するセンサダイアフラムを用いた差圧センサが用いられている。この差圧センサは、高圧側および低圧側の受圧ダイアフラムに加えられる流体圧力を、シリコーンオイル等の圧力伝達媒体(封入液)によってセンサダイアフラムの一方の面および他方の面に導き、そのセンサダイアフラムの歪みを例えば歪抵抗ゲージの抵抗値変化として検出し、この抵抗値変化を電気信号に変換して取り出すように構成されている。
【0003】
このような差圧センサは、例えば石油精製プラントにおける高温反応塔等の被測定流体を貯蔵する密閉タンク内の上下2位置の差圧を検出することにより、液面高さを測定するときなどに用いられる。
【0004】
図24に従来の差圧センサの要部の構成を示す(例えば、特許文献1参照)。同図において、1−1はセンサダイアフラム、1−2および1−3はセンサダイアフラム1−1を挟んで接合された第1および第2のストッパ、1−4および1−5はストッパ1−2および1−3に接合された第1および第2のガラス台座であり、ストッパ1−2とガラス台座1−4とを第1の保持部材として、ストッパ1−3とガラス台座1−5とを第2の保持部材としてセンサチップ1が構成されている。センサダイアフラム1−1は、シリコンによって構成され、薄板状に形成されたダイアフラムの表面に歪抵抗ゲージが形成されている。ストッパ1−2,1−3もシリコンによって構成されている。
【0005】
このセンサチップ1において、ストッパ1−2には凹部1−2aが形成され、この凹部1−2aの周縁部1−2bをセンサダイアフラム1−1の一方の面1−1aに対面させて、ストッパ1−2がセンサダイアフラム1−1の一方の面1−1aに接合されている。ストッパ1−3には凹部1−3aが形成され、この凹部1−3aの周縁部1−3bをセンサダイアフラム1−1の他方の面1−1bに対面させて、ストッパ1−3がセンサダイアフラム1−1の他方の面1−1bに接合されている。
【0006】
ストッパ1−2,1−3の凹部1−2a,1−3aは、センサダイアフラム1−1の変位に沿った曲面(非球面)とされており、その頂部に圧力導入孔(導圧孔)1−2c,1−3cが形成されている。また、ガラス台座1−4,1−5にも、ストッパ1−2,1−3の導圧孔1−2c,1−3cに対応する位置に、圧力導入孔(導圧孔)1−4a,1−5aが形成されている。
【0007】
このセンサチップ1はセンサハウジング(金属製のパッケージボディ)2の内部空間として形成されたセンサ室3に収容されている。この例では、センサチップ1の上面(ガラス台座1−4の上面)を開放状態とし、すなわちセンサチップ1の上面をセンサ室3の上面側の内壁面3aには接合せずに、センサチップ1の底面(ガラス台座1−5の下面)をエポキシ系接着剤を塗布してセンサ室3の下面側の内壁面3bに接合している。センサハウジング2には、ガラス台座1−5の導圧孔1−5aに対応する位置に、圧力導入路(導圧路)2bが形成されている。
【0008】
この差圧センサ100では、流体圧力Paがシリコーンオイル等の圧力伝達媒体を介して、ガラス台座1−4の導圧孔1−4aおよびストッパ1−2の導圧孔1−2cを通り、センサダイアフラム1−1の一方の面1−1aに印加される。また、流体圧力Pbがシリコーンオイル等の圧力伝達媒体を介して、センサハウジング2の導圧路2b、ガラス台座1−5の導圧孔1−5aおよびストッパ1−3の導圧孔1−3cを通り、センサダイアフラム1−1の他方の面1−1bに印加される。
【0009】
この場合、センサダイアフラム1−1の一方の面1−1aに過大圧が印加されてセンサダイアフラム1−1が変位したとき、その変位面の全体がストッパ1−3の凹部1−3aの曲面によって受け止められる。また、センサダイアフラム1−1の他方の面1−1bに過大圧が印加されてセンサダイアフラム1−1が変位したとき、その変位面の全体がストッパ1−2の凹部1−2aの曲面によって受け止められる。
【0010】
これにより、センサダイアフラム1−1に過大圧が印加された時の過度な変位が阻止され、センサダイアフラム1−1の周縁部に応力集中が生じないようにして、過大圧の印加によるセンサダイアフラム1−1の不本意な破壊を効果的に防ぎ、その過大圧保護動作圧力(耐圧)を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る差圧センサの第1の実施の形態(実施の形態1)の要部の構成を示す断面図である。
【
図2】この差圧センサに用いるスペーサの外観斜視図である。
【
図3】本発明に係る差圧センサの第2の実施の形態(実施の形態2)の要部の構成を示す断面図である。
【
図4】本発明に係る差圧センサの第3の実施の形態(実施の形態3)の要部の構成を示す断面図である。
【
図5】実施の形態2の差圧センサに用いるワッシャの内周面に突起を設けるようにした例を示す平面図および断面図(A−A線断面図)である。
【
図6】実施の形態2の差圧センサに用いるコバール台座の外周面に切欠を設けるようにした例を示す平面図および断面図(B−B線断面図)である。
【
図7】内周面に突起を設けたワッシャと外周面に切欠を設けたコバール台座とを組み合わせた状態を示す平面断面図(D−D線断面図)および縦断面図(C−C線断面図)である。
【
図8】実施の形態2の差圧センサを製造する際の第1工程を説明する図である。
【
図9】実施の形態2の差圧センサを製造する際の第2工程を説明する図である。
【
図10】実施の形態2の差圧センサを製造する際の第3工程を説明する図である。
【
図11】実施の形態2の差圧センサを製造する際の第4工程を説明する図である。
【
図12】実施の形態2の差圧センサを製造する際の第5工程を説明する図である。
【
図13】実施の形態2の差圧センサを製造する際の第6工程を説明する図である。
【
図14】実施の形態2の差圧センサを製造する際の第7工程を説明する図である。
【
図15】実施の形態2の差圧センサを製造する際の第8工程を説明する図である。
【
図16】実施の形態2の差圧センサを製造する際の第9工程を説明する図である。
【
図17】実施の形態2の差圧センサを製造する際の第10工程を説明する図である。
【
図18】実施の形態2の差圧センサを製造する際の第11工程を説明する図である。
【
図19】実施の形態2の差圧センサにおいてスペーサを第1のハウジングと第2のハウジングとの間に接着剤により固定するようにした例を示す図である。
【
図20】実施の形態2の差圧センサにおいてスペーサを第1のハウジングと第2のハウジングとの間に溶接により固定するようにした例を示す図である。
【
図21】実施の形態2の差圧センサにおいてスペーサを第1のハウジングと第2のハウジングとの間に嵌め合いによる圧入によって固定するようにした例を示す図である。
【
図22】実施の形態2の差圧センサにおいてスペーサを用いずに第2のハウジングの内壁面の周囲を高くして第1のハウジングと第2のハウジングとをボルトによって締結固定するようにした例を示す図である。
【
図23】実施の形態1の差圧センサにおいてセンサチップの上下のストッパに非球面の凹部を設けるようにした例を示す図である。
【
図24】従来の差圧センサの要部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
〔実施の形態1〕
図1はこの発明に係る差圧センサの第1の実施の形態(実施の形態1)の要部の構成を示す断面図である。同図において、
図24と同一符号は
図24を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0022】
この実施の形態1の差圧センサ200Aでは、センサハウジング2を第1のハウジング2−1と第2のハウジング2−2との2分割構造とし、この第1のハウジング2−1と第2のハウジング2−2とを2本のスペーサ5(5−1,5−2)を間に挟んで組み合わせている。
【0023】
図2にスペーサ5の外観斜視図を示す。スペーサ5は円筒状とされ、その中央部に中空部5aを備えており、センサハウジング2と同様、金属製(ステンレス製)とされている。
【0024】
この例において、第1のハウジング2−1には段差孔2c,2dが、第2のハウジング2−2にはネジ孔2e,2fが形成されており、第1のハウジング2−1の段差孔2c,2dからスペーサ5−1,5−2の中空部5−1a,5−2aにボルト6−1,6−2を通し、このスペーサ5−1,5−2の中空部5−1a,5−2aを通したボルト6−1,6−2の先端を第2のハウジング2−2のネジ孔2e,2fに螺合することによって、第1のハウジング2−1と第2のハウジング2−2とを締結固定している。
【0025】
また、この差圧センサ200Aでは、第1のハウジング2−1と第2のハウジング2−2との間の空間を、すなわち2本のスペーサ5−1,5−2を柱としてその周囲が開放された第1のハウジング2−1と第2のハウジング2−2との間の空間をセンサ室3とし、このセンサ室3にセンサチップ1を設けている。
【0026】
本実施の形態において、センサチップ1は、センサダイアフラム1−1とストッパ1−2,1−3とガラス台座1−4,1−5との組立体をセンサ部Sとし、このセンサ部Sの上面と下面に台座1−6と台座1−7とを接合した構造とされている。
【0027】
本実施の形態において、台座1−6および1−7はコバール(鉄にニッケル,コバルトを配合した合金)とされており、台座1−6および1−7はセンサ部Sの上面(ガラス台座1−4の上面)および下面(ガラス台座1−5の下面)にエポキシ系接着剤により接着されている。1a,1bはガラス台座1−4,1−5とコバールの台座1−6,1−7との間のエポキシ系接着剤の層である。以下、コバールの台座1−6および1−7をコバール台座と呼ぶ。
【0028】
このセンサチップ1において、ストッパ1−2とガラス台座1−4とコバール台座1−6とが本発明でいう第1の保持部材に相当し、ストッパ1−3とガラス台座1−5とコバール台座1−7とが第2の保持部材に相当する。コバール台座1−6,1−7にも、ガラス台座1−4,1−5の導圧孔1−4a,1−5aに対応する位置に、圧力導入孔(導圧孔)1−6a,1−7aが形成されている。
【0029】
なお、この実施の形態では、センサダイアフラム1−1の一方の面1−1a側が高圧側、他方の面1−1b側が低圧側とされ、ストッパ1−3側にしか凹部1−3aを設けていないが、ストッパ1−2側にも同様の凹部を設けるようにしてもよいことは言うまでもない。また、その凹部の形状は、センサダイアフラム1−1の変位に沿った曲面(非球面)とすることが望ましい。
図23に、差圧センサ200Aにおいて、ストッパ1−2,1−3に非球面の凹部1−2a,1−3aを設けるようにした例を示す。
【0030】
この差圧センサ200Aでは、第1のハウジング2−1と第2のハウジング2−2とがセンサ室3を挾んで対向しており、この対向する第1のハウジング2−1の内壁面がセンサ室3の上面側の内壁面3aとされ、第2のハウジング2−2の内壁面がセンサ室3の下面側の内壁面3bとされている。以下、センサ室3の上面側の内壁面3aを第1のハウジング2−1の内壁面、センサ室2−2の下面側の内壁面3bを第2のハウジング2−2の内壁面とも呼ぶ。
【0031】
本実施の形態において、第1のハウジング2−1の内壁面3aは平坦な面とされており、第2のハウジング2−2の内壁面3bにはその中央部に大径の段差孔2gが設けられている。センサチップ1は、一方の面(コバール台座1−6の上面)が第1のハウジング2−1の内壁面3aに第1の接着剤の層7−1を介して接合され、他方の面(コバール台座1−7の底面)が第2のハウジング2−2の内壁面3bの大径の段差孔2gの底面3b1に第2の接着剤の層7−2を介して接合されている。
【0032】
本実施の形態において、第1の接着剤の層7−1は、センサダイアフラム1−1を構成する材料のヤング率に対して1/1000以下のヤング率を有する接着剤の層とされている。また、第2の接着剤の層7−2は、第1の接着剤の層7−1のヤング率に対して100倍以上のヤング率を有する接着剤の層とされている。この例では、センサダイアフラム1−1を構成する材料をシリコンとし、第1の接着剤の層7−1をフッ素系接着剤を硬化させた層とし、第2の接着剤の層7−2をエポキシ系接着剤を硬化させた層としている。
【0033】
シリコンのヤング率は190GPa、フッ素樹脂を硬化させた時のヤング率は10MPaであり、フッ素樹脂を硬化させた時のヤング率はシリコンのヤング率のほゞ1/19000となる。なお、フッ素系(シリコン系)の接着剤は、エポキシ系の接着剤に比べ、線膨張率で数倍、硬化時ヤング率は100〜1000分の1という物性を持つ。換言すれば、エポキシ系の接着剤は、フッ素系(シリコン系)の接着剤に比べ、線膨張率で数分の1、硬化時ヤング率は100〜1000倍という物性を持つ。以下、第1の接着剤の層7−1を軟接着層と呼び、第2の接着剤の層7−2をエポキシ接着層と呼ぶ。
【0034】
第1のハウジング2−1には、コバール台座1−6の導圧孔1−6aに対向する位置に圧力導入路(導圧路)2aが形成されており、第2のハウジング2−2には、コバール台座1−7の導圧孔1−7aに対向する位置に圧力導入路(導圧路)2bが形成されている。また、軟接着層7−1には、導圧孔1−6aと導圧路2aとを連通させる連通孔7−1aが形成されており、エポキシ接着層7−2には、導圧孔1−7aと導圧路2bとを連通させる連通孔7−2aが形成されている。
【0035】
導圧路2a、連通孔7−1aおよび導圧孔1−6a,1−4a,1−2cは、高圧側の流体圧力Paをセンサダイアフラム1−1の一方の面1−1aに導く連通路とされ、この連通路にシリコーンオイル等の圧力伝達媒体が封入されている。また、導圧路2b、連通孔7−2aおよび導圧孔1−7a,1−5a,1−3cは、低圧側の流体圧力Pbをセンサダイアフラム1−1の他方の面1−1bに導く連通路とされ、この連通路にシリコーンオイル等の圧力伝達媒体が封入されている。
【0036】
なお、8はプリント基板であり、第2のハウジング2−2の内壁面3bの中央部に形成された段差孔2gの周縁面3b2にエポキシ系接着剤によって接着されている。7−3はプリント基板8と第2のハウジング2−2の内壁面3b(段差孔2gの周縁面3b2)との間のエポキシ系接着剤の層である。また、シリコンチップ1のセンサ部Sとプリント基板8との間は、ワイヤボンド9によって電気的な接続が図られている。
【0037】
この差圧センサ200Aでは、高圧側の流体圧力Paが第1のハウジング2−1の導圧路2a、軟接着層7−1の連通孔7−1a、コバール台座1−6の導圧孔1−6a、ガラス台座1−4の導圧孔1−4aおよびストッパ1−2の導圧孔1−2cを通り、センサダイアフラム1−1の一方の面1−1aに印加される。また、低圧側の流体圧力Pbが第2のハウジン2−2の導圧路2b、エポキシ接着層7−2の連通孔7−2a、コバール台座1−7の導圧孔1−7a、ガラス台座1−5の導圧孔1−5aおよびストッパ1−3の導圧孔1−3cを通り、センサダイアフラム1−1の他方の面1−1bに印加される。
【0038】
この差圧センサ200Aにおいて、センサチップ1は、センサ室3の上面側の内壁面3aと下面側の内壁面3bとの間に、軟接着層7−1およびエポキシ接着層7−2を介して接合されている。すなわち、センサチップ1の一方の面(コバール台座1−6の上面)が軟接着層7−1を介して第1のハウジング2−1の内壁面3aに接合され、センサチップ1の他方の面(コバール台座1−7の底面)がエポキシ接着層7−2を介して第2のハウジング2−2の内壁面3b(段差孔2gの底面3b1)に接合されている。
【0039】
この場合、センサチップ1は、センサ室3の上面側の内壁面3aと下面側の内壁面3bとの間に挟まれ、流体圧力PaとPbとの圧力の高低関係がどうであれ、軟接着層7−1を介して内壁面3aに、又はエポキシ接着層7−2を介して内壁面3bに押し付けられる。これにより、流体圧力PaとPbとの圧力の高低関係が逆転しても、センサチップ1のセンサダイアフラム1−1とストッパ1−2との接合部4−1およびセンサダイアフラム1−1とストッパ1−3との接合部4−2の剥離が避けられるものとなる。
【0040】
また、この差圧センサ200Aにおいて、軟接着層7−1は、センサダイアフラム1を構成する材料のヤング率に対して1/1000以下のヤング率を有する接着剤の層とされ、エポキシ接着層7−2は軟接着層7−1のヤング率に対して100倍以上のヤング率を有する接着剤の層とされている。このため、外部の熱がセンサ室3の内壁面3aや3bからセンサチップ1へ伝導してきたような場合、軟接着層7−1が引っ張り(圧縮)方向の熱応力を緩和する層の役割を果たし、熱膨張係数の違いによって生じるセンサチップ1の接合面への引っ張り(圧縮)方向の熱応力を緩和する。これにより、高圧時だけではなく、周囲温度が変化したような場合でも、センサチップ1の接合部4−1,4−2の剥離が避けられるものとなり、センサチップ1の耐圧性能の向上と熱応力緩和とを同時に実現することができるようになる。
【0041】
仮に、接着層7−1と7−2を両方軟接着層とした場合には、圧力PaとPbとの差圧により、センサチップ1が全体として、ハウジング2−1もしくは2−2の側に移動してしまい、センサ室3の内壁面3bもしくは3aへの押し付けが不十分となり、センサダイアフラム1−1とストッパ1−2,1−3間の剥離が生じる場合がある。また、接着層7−1と7−2を両方エポキシ接着層とすると、温度変化時の熱応力の影響を強く受けることとなるため、接着層7−1と7−2を軟接着層とエポキシ接着層の組み合わせとすることが重要である。
【0042】
〔実施の形態2〕
図3に本発明に係る差圧センサの第2の実施の形態(実施の形態2)の要部を示す。
【0043】
上述した実施の形態1の差圧センサ200Aでは、軟接着層7−1の接着面が一面であるため、硬化後の気密性が低く、内部からの圧力印加でリークパスを形成してしまう虞がある。また、軟接着層7−1の硬化後の引っ張り強度が小さいため、十分な強度を得るための接着面積が大きくなってしまう。すなわち、構造体、形成部品の小型化が困難である、というような問題が生じる虞がある。
【0044】
そこで、
図3に示した差圧センサ200Bでは、軟接着層7−1の接合部にワッシャ10を用いるようにし、軟接着層7−1の接着面を複数面として、接着面積を増やすと共に、リーク経路を折り曲げるようにしている。
【0045】
すなわち、この差圧センサ200Bでは、第1のハウジング2−1の内壁面3aにワッシャ10をエポキシ系接着剤によって接着し、センサチップ1の一方の面(コバール台座1−6の上面)をワッシャ10の内周面で囲まれた空間内に位置させ、このワッシャ10の内周面で囲まれた空間内をフッ素系接着剤で満たし、熱硬化させるようにしている。なお、
図3において、7−4は、第1のハウジング2−1の内壁面3aとワッシャ10との間のエポキシ系接着剤の層である。
【0046】
これにより、軟接着層7−1が、ワッシャ10の内周面で囲まれた空間内に、センサチップ1の一方の面(コバール台座1−6の上面)、センサ室3の内壁面(第1のハウジング2−1の内壁面)3a、ワッシャ10の内周面およびセンサチップ1の一方の面に連なる外周面(コバール台座1−6の外周面)を接着面として形成されるものとなり、軟接着層7−1の接着面積が増大する。また、リーク経路が折り曲げられ、リークパスの伸展が阻害され、気密性の高い構造となり、耐圧強度が飛躍的に向上する。
【0047】
〔実施の形態3〕
図4に本発明に係る差圧センサの第3の実施の形態(実施の形態3)の要部を示す。
【0048】
上述した実施の形態2の差圧センサ200Bでは、軟接着層7−1の接合部に上下面が開放されたリング状のワッシャ10を使用しているが、実施の形態3の差圧センサ200Cでは、軟接着層7−1の接合部にざぐりワッシャ11を使用する。
【0049】
すなわち、この差圧センサ200Cでは、第1のハウジング2−1の内壁面3aにざぐりワッシャ11の底面をエポキシ系接着剤によって接着し、センサチップ1の一方の面(コバール台座1−6の上面)をざぐりワッシャ11の内周面で囲まれた空間内に位置させ、このざぐりワッシャ11の内周面で囲まれた空間内をフッ素系接着剤で満たし、熱硬化させるようにしている。
【0050】
これにより、軟接着層7−1が、ざぐりワッシャ11の内周面で囲まれた空間内に、センサチップ1の一方の面(コバール台座1−6の上面)、センサ室3の内壁面(第1のハウジング2−1の内壁面)3a、ざぐりワッシャ11の内周面、ざぐりワッシャ11の内底面およびセンサチップ1の一方の面に連なる外周面(コバール台座1−6の外周面)を接着面として形成されるものとなり、軟接着層7−1の接着面積が増大すると共に、リーク経路の折り曲げ箇所が増大し、気密性がさらに向上するものとなる。
【0051】
なお、例えば、実施の形態2の差圧センサ200B(
図3)において、
図5に示すようにワッシャ10の内周面に突起10a,10aを設け、
図6に示すようにコバール台座1−6の外周面に切欠1−6b,1−6bを設け、
図7に示すようにワッシャ10とコバール台座1−6とを突起10a,10aと切欠1−6b,1−6bとを係合させて組み合わせ、ワッシャ10の内周面で囲まれた空間内に軟接着層7−1を形成するようにしてもよい。このような構造とすることにより、軟接着層7−1の接着面積がさらに増大し、硬化後の引っ張り強度が大きくなる。これと同様の構造を実施の形態3の差圧センサ200C(
図4)でも採用するようにしてもよい。
【0052】
また、実施の形態2の差圧センサ200Bにおいて、ワッシャ10の材料として、その線膨張係数がセンサチップ1の一方の面(コバール台座1−6の上面)の線膨張係数とセンサ室3の内壁面(第1のハウジング2−1の内壁面)3aの線膨張係数との中間値となるような材質を用いると、より熱緩和効果が高まるものとなる。例えば、SUS303または304とコバールの場合、ワッシャ10の材料をSUS430などとする。実施の形態3の差圧センサ200Cにおけるざぐりワッシャ11についても、同様のことが言える。
【0053】
〔差圧センサの製造方法〕
次に、実施の形態2の差圧センサ200Bを例にとって、この差圧センサ200Bの製造方法について説明する。
【0054】
〔第1工程〕
まず、
図8に示すように、第2のハウジング2−2の内壁面3b(段差孔2gの底面3b1)に、コバール台座1−7の底面(センサチップ1の他方の面)をエポキシ系接着剤を塗布し熱硬化させて接合する。これにより、第2のハウジング2−2の内壁面3b(段差孔2gの底面3b1)とセンサチップ1−1の他方の面(コバール台座1−7の底面)との間にエポキシ接着層7−2が形成される。
【0055】
〔第2工程〕
次に、
図9に示すように、第2のハウジング2−2の内壁面3b(段差孔2gの底面3b1)に接合されたコバール台座1−7の上面にセンサダイアフラム1−1とストッパ1−2,1−3とガラス台座1−4,1−5との組立体であるセンサ部Sの下面(ガラス台座1−5の下面)をエポキシ系接着剤を塗布し熱硬化させて接合する。これにより、センサ部Sの下面(ガラス台座1−5の下面)とコバール台座1−7の上面との間にエポキシ系接着剤の層1bが形成される。
【0056】
〔第3工程〕
次に、
図10に示すように、第2のハウジング2−2の内壁面3b(段差孔2gの周縁面3b2)にプリント基板8をエポキシ系接着剤を塗布し熱硬化させて接合する。これにより、プリント基板8と第2のハウジング2−2の内壁面3b(段差孔2gの周縁面3b2)との間にエポキシ系接着剤の層7−3が形成され、プリント基板8が第2のハウジング2−2の内壁面3b(段差孔2gの周縁面3b2)に固定される。
【0057】
〔第4工程〕
次に、
図11に示すように、ワイヤボンド9によって、第2のハウジングの内壁面3b(段差孔2gの周縁面3b2)に固定されたプリント基板8とコバール台座1−7の上面に接合されたセンサ部Sとの間の電気的な接続を図る。
【0058】
〔第5工程〕
次に、
図12に示すように、コバール台座1−7の上面に接合されたセンサ部Sの上面(ガラス台座1−4の上面)にコバール台座1−6の底面をエポキシ系接着剤を塗布し熱硬化させて接合する。これにより、センサ部Sの上面(ガラス台座1−4の上面)とコバール台座1−6の底面との間にエポキシ系接着剤の層1aが形成される。
【0059】
〔第6工程〕
次に、
図13に示すように、第1のハウジング2−1の内壁面3aにワッシャ10をエポキシ系接着剤を塗布し熱硬化させて接合する。これにより、第1のハウジング2−1の内壁面3aとワッシャ10との間にエポキシ系接着剤の層7−4が形成される。なお、この第6工程の作業は、必ずしも第5工程の後でなくてもよく、後述する第9工程の前であれば、どの段階で行うようにしてもよい。
【0060】
〔第7工程〕
次に、
図14に示すように、プリント基板8とセンサ部Sとの間の電気的な接続が図られた第2のハウジング2−2の内壁面3b(段差孔2gの周縁面3b2)に筒状のスペーサ5−1,5−2を設置する。
【0061】
〔第8工程〕
次に、
図15に示すように、センサ部Sの上面(ガラス台座1−4の上面)に接合されたコバール台座1−6の上面にフッ素系接着剤7−1’を塗布する。
【0062】
〔第9工程〕
次に、
図16に示すように、ワッシャ10が固定された第1のハウジング2−1(
図13)と筒状のスペーサ5−1,5−2が設置されコバール台座1−6の上面にフッ素系接着剤7−1’が塗布された第2のハウジング2−2(
図15)とを組み合わせ、コバール台座1−6の上面をワッシャ10の内周面で囲まれた空間内に位置させる。
【0063】
この場合、コバール台座1−6の上面のフッ素系接着剤7−1’は熱硬化させる前の状態なので、ワッシャ10の内周面で囲まれた空間内でつぶれて、コバール台座1−6の上面に連なる外周面との間の空間にも流れ込む。また、この時のフッ素系接着剤7−1’のコバール台座1−6の上面と第1のハウジング2−1の内壁面3aとの間の厚みtは、スペーサ5−1,5−2の長さLで規定され、設計上の厚みtが確保される。
【0064】
〔第10工程〕
次に、
図17に示すように、第9工程で組み合わされた第1のハウジング2−1と第2のハウジング2−2とを、筒状のスペーサ5−1,5−2にボルト6−1,6−2を通して締結固定する。
【0065】
〔第11工程〕
次に、第1のハウジング2−1と第2のハウジング2−2とを締結固定した状態でフッ素系接着剤7−1’を熱硬化させて、第1のハウジング2−1の内壁面3bにコバール台座1−6の上面(センサチップ1の一方の面)を接合する。これにより、
図18に示すように、ワッシャ10の内周面で囲まれた空間内に、センサチップ1の一方の面(コバール台座1−6の上面)、センサ室3の内壁面(第1のハウジング2−1の内壁面)3a、ワッシャ10の内周面およびセンサチップ1の一方の面に連なる外周面(コバール台座1−6の外周面)を接着面として、軟接着層7−1が形成される。
【0066】
なお、上述した実施の形態では、第1のハウジング2−1と第2のハウジング2−2とを筒状のスペーサ5−1,5−2にボルト6−1,6−2を通して締結固定するようにしたが、例えば、
図19に示すように、スペーサ5−1,5−2を第1のハウジング2−1と第2のハウジング2−2との間に接着剤を用いて固定するようにしたり、
図20に示すように、スペーサ5−1,5−2を溶接によって接合するようにしてもよい。
【0067】
なお、スペーサ5−1,5−2を接着剤を用いて固定する場合、スペーサ5−1,5−2を固定する接着剤は、フッ素系接着剤7−1’を熱硬化させる前にスペーサ5−1,5−2が固定されている必要があることから、フッ素系接着剤7−1’よりも硬化温度の低い接着剤(例えば、常温硬化する硬化時間が短い接着剤)を用いるようにする。また、
図19,
図20に示した例では、スペーサ5−1,5−2を筒状としているが、ボルトを通す必要がないので、スペーサ5−1,5−2は筒状としなくてもよい。
【0068】
また、
図21に示すように、上下に凸部を設けたピン型のスペーサ5−1’,5−2’を用い、このピン型のスペーサ5−1’,5−2’の凸部の嵌め合いによる圧入によって、第1のハウジング2−1と第2のハウジング2−2とをスペーサ5−1’,5−2’を間に挾んで固定するようにしてもよい。
【0069】
また、上述した実施の形態では、第1のハウジング2−1と第2のハウジング2−2との間に設けるスペーサを2本としているが、必ずしも2本に限られるものではない。また、必ずしもスペーサを用いなくてもよく、
図22に示すように、例えば第2のハウジング2−2の内壁面3bのセンサ室3を囲む周囲を高くし、この高くした周囲の壁2−2a,2−2bにネジ孔2e,2fを設け、このネジ孔2e,2fにボルト6−1,6−2を通して、第1のハウジング2−1と第2のハウジング2−2とを締結固定するようにしてもよい。この場合、ハウジング2−2の内壁面3bのセンサ室3を囲む周囲の壁2−2a,2−2bの高さHによって、軟接着層7−1の厚みtが規定される。
【0070】
なお、第2のハウジング2−2の内壁面3bのセンサ室3の周囲を囲む壁2−2a,2−2bをリング状につながった1つの壁とするような場合には、この壁に配線を通す切欠を設けるようにする。第1のハウジング2−1と第2のハウジング2−2との間にスペーサ5−1,5−2を設けるタイプでは、スペーサ5−1,5−2を柱として第1のハウジング2−1と第2のハウジング2−2との間に作られるセンサ室3が外部へ大きく開いており、この開かれた空間が配線を通す切欠の役割を果たす。したがって、配線を通す切欠をわざわざ設ける必要がなく、配線作業も容易となる。
【0071】
また、上述した実施の形態では、センサダイアフラム1−1を圧力変化に応じて抵抗値が変化する歪抵抗ゲージを形成したタイプとしているが、静電容量式のセンサチップとしてもよい。静電容量式のセンサチップは、所定の空間(容量室)を備えた基板と、その基板の空間上に配置されたダイアフラムと、基板に形成された固定電極と、ダイアフラムに形成された可動電極とを備えている。ダイアフラムが圧力を受けて変形することで、可動電極と固定電極との間隔が変化してその間の静電容量が変化する。
【0072】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、各実施の形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。