特許第6286302号(P6286302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286302
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】ボビン
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/14 20060101AFI20180215BHJP
   B65H 75/18 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   B65H75/14
   B65H75/18 Z
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-137631(P2014-137631)
(22)【出願日】2014年7月3日
(65)【公開番号】特開2016-13911(P2016-13911A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】304002955
【氏名又は名称】ドレンシー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100103012
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 隆宣
(72)【発明者】
【氏名】高田 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】有辺 洋
(72)【発明者】
【氏名】岡田 敏英
(72)【発明者】
【氏名】乾 克彦
【審査官】 大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−513037(JP,A)
【文献】 特開昭60−137780(JP,A)
【文献】 特開2003−182939(JP,A)
【文献】 実開昭60−183767(JP,U)
【文献】 米国特許第04078741(US,A)
【文献】 特許第3814025(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/14
B65H 75/00−75/32
B65D 75/42
B65D 85/672
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状巻芯と、前記筒状巻芯の両端に設けた鍔部とからなり、前記筒状巻芯に被巻回部材を巻回するボビンであって、
前記鍔部を形成する鍔部本体が、外方に向けてすり鉢状に傾斜し、
前記筒状巻芯に巻回された被巻回部材と、前記鍔部とを保存袋内に脱気状態で密封し、
開封前に前記鍔部本体が内方に向けてすり鉢状に傾斜している一方、
開封後に前記鍔部本体が外方に向けてすり鉢状に傾斜する状態に復元可能であることを特徴とするボビン。
【請求項2】
前記鍔部本体の表裏面のうち、少なくともいずれか一方の片面に、同心円状に形成された少なくとも1本の環状リブを形成したことを特徴とする請求項1に記載のボビン。
【請求項3】
前記鍔部本体の表裏面のうち、少なくともいずれか一方の片面に、放射状に形成された少なくとも1本の線状リブを形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のボビン。
【請求項4】
前記鍔部本体の表裏面のうち、少なくともいずれか一方の片面に、エンボス加工を施したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のボビン。
【請求項5】
前記鍔部本体の傾斜角度が160ないし179度であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のボビン。
【請求項6】
前記鍔部本体の厚さ寸法が0.1ないし5mmであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のボビン。
【請求項7】
前記鍔部本体が透明性を有するプラスチック製であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のボビン。
【請求項8】
前記鍔部本体が非結晶ポリエチレンテレフタレート製であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のボビン。
【請求項9】
前記筒状巻芯の両端の開口部に、前記鍔部本体に一体成形した嵌合部を嵌合一体化したことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載のボビン。
【請求項10】
前記筒状巻芯と、前記鍔部本体と別体に形成した嵌合部材とで、鍔部本体を挟持して支持したことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のボビン。
【請求項11】
前記被巻回部材が、品質保持剤を個々に充填した連続包装体であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載のボビン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボビン、特に、酸素吸収剤、アルコール揮散剤等の品質保持剤を個々に充填した連続包装体を巻き付ける連続包装体用ボビンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、連続包装体用ボビンとしては、特許文献1の図7に示すように、連続包装体が巻き付けられる巻芯の両端に、鍔を装着した連続包装体用ボビンがある(特許文献1)。
そして、前記連続包装体用ボビンは、前記巻芯に連続包装体を巻き付けて保存袋内に収納し、かつ、脱気して密封梱包した状態で保管,出荷していた。出荷先では、前記保存袋から取り出した前記連続包装体用ボビンを巻き戻しスタンドに取り付け、切断機能付き自動連続投入機で連続包装体を引き出し、個々に切り離して得た包装体を、例えば、食品を収納した包装袋内に投入,密封していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3814025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記連続包装体用ボビンを収納した保存袋を脱気すると、大気圧で前記鍔の外周縁部が内方に撓んで湾曲した状態となる。このような状態を一定期間、維持すると、前記保存袋から前記連続包装体用ボビンを取出しても、前記鍔が元の形状に戻らず、変形したままの状態となる。そして、前記連続包装体用ボビンを前記巻き戻しスタンドに取り付け、前記自動連続投入機で前記連続包装体を引き出すと、内方に変形した鍔の外周縁部に前記連続包装体が引っ掛かり、作業途中で切れてしまうため、連続作業できないという問題点がある。
本発明は、前記問題点に鑑み、引き出された連続包装体が作業途中で切れず、連続作業できるボビンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るボビンは、前記課題を解決すべく、筒状巻芯と、前記筒状巻芯の両端に設けた鍔部とからなり、前記筒状巻芯に被巻回部材を巻回するボビンであって、
前記鍔部を形成する鍔部本体が、外方に向けてすり鉢状に傾斜し、
前記筒状巻芯に巻回された被巻回部材と、前記鍔部とを保存袋内に脱気状態で密封し、
開封前に前記鍔部本体が内方に向けてすり鉢状に傾斜している一方、
開封後に前記鍔部本体が外方に向けてすり鉢状に傾斜する状態に復元可能な構成としてある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、保存袋内に脱気状態で密封した場合であっても、前記鍔部本体が外方に向けてすり鉢状に予め傾斜しているので、湾曲しても元の形状に復帰しやすい。このため、脱気状態の保存袋の開封前に前記鍔部本体が内方に向けてすり鉢状に傾斜していても、開封後に外方に向けてすり鉢状に傾斜する状態に復元可能である。この結果、前記筒状巻芯に巻回した被巻回部材を引き出す場合であっても、前記被巻回部材が鍔部本体の外周縁部に引っ掛かりにくく、切れないので、連続作業を妨げることがない。
【0007】
本発明の実施形態としては、前記鍔部本体の表裏面のうち、少なくともいずれか一方の片面に、同心円状に形成された少なくとも1本の環状リブを形成しておいてもよい。
本実施形態によれば、前記環状リブのリブ効果により、変形しにくくなり、変形しても元の形状により一層復帰しやすい。このため、前記被巻回部材が鍔部本体の外周縁部に引っ掛かりにくく、切れないので、連続作業を妨げることがない。
【0008】
本発明の他の実施形態としては、前記鍔部本体の表裏面のうち、少なくともいずれか一方の片面に、放射状に形成された少なくとも1本の線状リブを形成しておいてもよい。
本実施形態によれば、前記線状リブのリブ効果により、変形しにくくなり、変形しても元の形状により一層復帰しやすい。このため、前記被巻回部材が鍔部本体の外周縁部に引っ掛かりにくく、切れないので、連続作業を妨げることがない。
【0009】
本発明の別の実施形態としては、前記鍔部本体の表裏面のうち、少なくともいずれか一方の片面に、エンボス加工を施しておいてもよい。
本実施形態によれば、エンボス加工を設けることにより、断面2次モーメントが増大し、変形しにくくなるので、変形しても元の形状により一層復帰しやすい。このため、前記被巻回部材が鍔部本体の外周縁部に引っ掛かりにくく、切れないので、連続作業を妨げることがない。
【0010】
本発明の異なる実施形態としては、前記鍔部本体の傾斜角度を160ないし179度とした構成としてもよい。
本実施形態によれば、保存袋内に脱気状態で密封した場合であっても、前記鍔部本体が外方に向けてすり鉢状に予め傾斜しているので、湾曲しても元の形状に復帰しやすい。このため、前記筒状巻芯に巻回した被巻回部材を引き出す場合であっても、前記被巻回部材が鍔部本体の外周縁部に引っ掛かりにくく、切れないので、連続作業を妨げることがない。
【0011】
本発明の他の実施形態としては、前記鍔部本体の厚さ寸法が0.1ないし5mmであってもよい。
本実施形態によれば、鍔部本体が所定の厚さ寸法を有しているので、保存袋内に脱気状態で密封した場合であっても、鍔部本体が湾曲しても元の形状に復帰しやすい。このため、前記被巻回部材が鍔部本体の外周縁部に引っ掛かりにくく、切れないので、連続作業を妨げることがない。
【0012】
本発明の新たな実施形態としては、前記鍔部本体が透明性を有するプラスチック製であってもよい。
本実施形態によれば、被巻回部材の残量を目視で確認できて便利である。
【0013】
本発明の別の実施形態としては、前記鍔部本体が非結晶ポリエチレンテレフタレート製であってもよい。
本実施形態によれば、弾性に優れた樹脂材料を使用しているので、鍔部本体が湾曲しても、元の形状に復帰しやすい。このため、前記被巻回部材が鍔部本体の外周縁部に引っ掛かりにくく、切れないので、連続作業を妨げることがない。
【0014】
本発明の異なる実施形態としては、前記筒状巻芯の両端の開口部に、前記鍔部本体に一体成形した嵌合部を嵌合一体化しておいてもよい。
本実施形態によれば、鍔部本体と嵌合部とを一体成形してあるので、傾斜角度を高い寸法精度で成形でき、製品特性にバラツキのないボビンが得られる。また、部品点数,組立工数が少なくなり、生産性の高いボビンが得られる。
【0015】
本発明の新たな実施形態としては、前記筒状巻芯と、前記鍔部本体と別体に形成した嵌合部材とで、前記鍔部本体を挟持して支持してもよい。
【0016】
本実施形態によれば、鍔部本体と嵌合部材とを別々に成形できるため、金型の製造が簡単になるとともに、用途に応じて選択でき、選択範囲が広がる。
【0017】
本発明の別の実施形態としては、前記被巻回部材が、品質保持剤を個々に充填した連続包装体であってもよい。
【0018】
本実施形態によれば、単なるシート状の被巻回部材に限らず、厚さ寸法が所定のピッチで変化する連続包装体であっても巻回でき、用途の広いボビンが得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図A,B,Cは本発明に係るボビンの第1実施形態を示し、図A,Bは連続包装体を巻回する前後の斜視図、図Cは保存袋で脱気包装した状態を示す斜視図である。
図2図A,B,Cは図1Aで示したボビンの右側面図、断面図および部分拡大断面図である。
図3図A,Bは本発明に係るボビンの第2,第3実施形態を示す右側面図である。
図4図A,B,Cは本発明に係るボビンの第4実施形態を示す断面図、部分拡大断面図および図Aで図示した嵌合部材の斜視図である。
図5】実施例および比較例の試験条件を示す図表である。
図6】実施例および比較例の試験結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るボビンの実施形態を図1ないし図4の添付図面に従って説明する。
第1実施形態は品質保持剤を個々に充填した連続包装体を巻回する連続包装体用ボビン10に適用した場合であり、図1および図2に示すように、巻芯20と、前記巻芯20の両端に配置した鍔部30とで形成されている。
【0021】
前記巻芯20は、巻きつける連続包装体40の重量に耐えうる円筒形状であり、その材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル等が例示される。特に、強度および重量の点ではポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のプラスチック材料を用いるのが好ましく、耐薬品性の点ではポリエチレンを用いるのがより好ましい。
特に、前記巻芯20の開口縁部21(図2B,2C)の端面に、後述する鍔部本体31を組み付けるため、すり鉢状傾斜面を形成しておくことが好ましい。
【0022】
前記鍔部30は、鍔部本体31と、前記巻芯20の開口部に着脱可能に嵌合する嵌合部35と、を一体成形してある。
【0023】
前記鍔部本体31は外方に向けてすり鉢状に傾斜している。これは、脱気包装した状態を一定期間、維持した場合に、大気圧で鍔部本体31の外周縁部が内方に湾曲しても、使用時には速やかに元の形状に復元させるためである。この結果、品質保持剤を個々に充填した連続包装体を引き出す際の破損を防止でき、連続作業を妨げることがない。
【0024】
鍔部本体31の傾斜角度Hは160度〜179度が好ましく、170度〜178度がより好ましく、172度〜177度がさらに好ましい。
傾斜角度Hが160度未満であると、連続包装体40を巻回する際に、巻回作業が進むにつれ、巻回された連続包装体40と鍔部本体31との隙間が広くなり、巻崩れの原因となるからである。
また、傾斜角度Hが179度を超えると、脱気包装した後に保存袋50から取り出しても、鍔部本体31の外周縁部が内方に湾曲した状態のままであり、鍔部本体31が元の形状に復帰しないからである。このため、連続包装体40を引き出すと、前記連続包装体40が鍔部本体31の外周縁部に引っ掛かって切れやすく、また、鍔部本体31の外周縁部が破損しやすい。
なお、ここで傾斜角度とは、図2B,2Cに示すように、軸心Pを中心として鍔部本体31の傾斜面間の開き角度をいう。
【0025】
鍔部本体31の厚さ寸法は、強度や柔軟性を考慮した場合、採用するプラスチックの種類によっても異なるが、0.1〜5mm程度が好ましく、0.3〜3mm程度がより好ましく、0.5〜1mm程度がさらに好ましい。
厚さ寸法が0.1mm未満であると、強度が不足し、連続包装体40を保持できず、ボビンとしての機能を果たせないからであり、5mmを超えると、柔軟性が不足し、脱気包装した際に鍔部本体31の外周縁部が破損しやすいからである。
【0026】
鍔部30の材質としては、透明性を有するプラスチックが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル等が例示され、その中でも柔軟性の点でポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルが好ましく、成形性及び強度の点で非結晶ポリエチレンテレフタレート(A−PET)がより好ましい。
なお、本発明において、透明性を有するプラスチックとは無色透明、着色透明および半透明の各プラスチックを含むものであり、使用時に連続包装体40の残量確認が容易である点で、無色透明または着色透明のプラスチックが好ましく、無色透明のプラスチックがより好ましい。
ただし、必ずしも透明性を有するプラスチックである必要はなく、不透明なプラスチックであってもよいことは勿論である。
【0027】
鍔部本体31の表面は、未加工状態の平坦面であっても良いが、強度および復元力の点で、図1に示すように、リブを形成するのが好ましい。また、リブの形成面は、鍔部本体31の内向面および外向面のいずれに形成しても良いが、連続包装体40の円滑な送り出しが可能となるように、凹凸部を鍔部本体31の外向面に形成するのが好ましい。
前記リブの形状には、同心円状に形成した環状リブ32、放射状に形成した線状リブ33の他、波状リブ、U字状リブ等が挙げられる。特に、前記環状リブ32または前記線状リブ33は、いずれも強度および復元力に優れているとともに、成形性にも優れているので、適宜、両者を組み合わせれば、より一層好ましい形状となる。
また、前記リブは、断面が内実のものに限らず、膨出させた突出し加工形状であってもよいことは勿論である。
【0028】
また、鍔部本体31には、エンボス加工を施してエンボス34を形成しておくことが、強度および復元力の点で好ましい。エンボス加工は、鍔部本体の表面全面に施しても良いし、部分的に施しても良い。また、エンボスの形成面についても、前記リブの場合と同様、凹凸部を鍔部本体31の内向面および外向面のいずれに形成してもよいが、連続包装体の円滑な送り出しが可能となるように、凹凸部を鍔部本体31の外向面に形成するのが好ましい。
【0029】
エンボス34の形状としては、特に限定されず、四角錐形、三角錐形、円錐形、円形、楕円形、球形、台形、波形等を例示できるが、特に、四角錐形、三角錐形が好ましく、強度の点で、四角錐形がより好ましい。
【0030】
嵌合部35は、図2B,2Cに示すように、前記巻芯20の開口部に圧入可能な断面門型形状を有するとともに、図示しない巻き戻しスタンドの金属製シャフトに装着する軸孔36を有している。そして、支持強度を高めるため、前記軸孔36の開口縁部に環状リブ37を設けてある。また、前記嵌合部35は、前記鍔部本体31と同様、その内向面および/または外向面に、補強リブ38(図2A)を放射状および/または同心円状に設けておいてもよい。さらに、前記嵌合部35には、その内向面および/または外向面にエンボス加工を必要に応じて施しておいてもよい。
【0031】
連続包装体40に個々に充填される品質保持剤としては、例えば、酸素吸収剤、アルコール揮散剤が挙げられる。
【0032】
前記酸素吸収剤としては、例えば、鉄粉等の金属粉末、アスコルビン酸、グリセリン、カテコール等の還元性有機化合物を主剤とするものであれば、いずれの酸素吸収剤であっても本発明に採用することができる。特に、隙間を少なく巻回可能な点や、巻回後の重量が軽量となる点で、アスコルビン酸、グリセリン、カテコール等の還元性有機化合物を主剤とするものが好ましく、アスコルビン酸を主剤とするものがより好ましい。
【0033】
アルコール揮散剤としては、例えば、シリカ、焼成雲母、バーミキュライト、タルク、ゼオライト、パーライト、ベントナイト、珪藻土、アルミナ、不織布、パルプ等の吸着材にアルコールを吸着させたものが挙げられる。隙間を少なく巻回可能な点や、巻回後の重量が軽量となる点で、シリカ、焼成雲母、バーミキュライト、不織布、パルプが好ましく、シリカがより好ましい。
【0034】
そして、前記連続包装体40を巻回した連続包装体用ボビン10は、図1Cに示すように、輸送中および保管中は、例えば、品質保持剤として酸素吸収剤を用いる場合には、酸素透過度10ml/m・atm・24hr以下、アルコール揮散剤を用いる場合には、エタノールガス透過度10g/m・24hr・40℃以下のプラスチックフィルム製の保存袋50内に脱気状態で密封されている。
【0035】
鍔部30の装着方法は、巻芯20の開口部に、前記巻芯20の内径より僅かに小さい外径を有する嵌合部35を挿入して装着できる。また、嵌合部35は、輸送時または使用時に脱落しないように、巻芯20の内周面に前記嵌合部35を接着しておくことが好ましい。接着方法は、巻芯20および鍔部30の材質に適した各種接着剤の他、両面テープ等を用いて接着してもよい。
【0036】
本実施形態に係る鍔部30によれば、鍔部本体31と嵌合部35とを一体成形しているので、部品精度、特に、鍔部本体31の傾斜角度Hを高い寸法精度で形成できる。また、部品点数,組立工数が少なく、生産性が高いとともに、構造が簡単であるので、リサイクル,メンテナンスが容易なボビンが得られる。
【0037】
なお、鍔部30は、図3Aに示すように、2本の同心円状の環状リブ32と、1本の同心円状の環状平坦部32aと、等ピッチで配置した6本の線状リブ33とを有するものであってもよく(第2実施形態)、また、図3Bに示すように、エンボス加工を施していないものであってもよい(第3実施形態)。
【0038】
第4実施形態は、図4に示すように、前述の第1実施形態とほぼ同様であり、異なる点は鍔部本体31と嵌合部材39とを別々に成形した後、巻芯20の開口縁部21と前記嵌合部材39の環状鍔部39aとで前記鍔部本体31を挟持一体化した場合である。
【0039】
なお、前記嵌合部材39の材質は、特に限定されるものではなく、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等が例示される。特に、強度および重量を考慮すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンが好ましく、非結晶ポリエチレンテレフタレート(A−PET)、ポリプロピレンがより好ましい。これらは必ずしも前記鍔部本体31と同一素材で形成する必要はなく、異なる素材で別々に形成してもよい。
他は前述の第1実施形態と同様であるので、同一部分に同一番号を付して説明を省略する。
【実施例1】
【0040】
図5に示すように、非結晶ポリエチレンフタレート(A−PET)で実施形態1に係る鍔部本体と嵌合部とを一体成形することにより、前記鍔部本体の直径300mm、厚さ1.0mm、傾斜角度175度を有し、図1の第1実施形態と同様な線状リブおよび環状リブを有する鍔部を得た。一方、成形樹脂としてポリエチレンで長さ200mm、外径80mm、内径75mmの円筒形状の巻芯を成形した。そして、前記巻芯の両端に鍔部を取り付けてボビンを得た。試験条件を図5に示す。
そして、アルコール揮散剤を個々に充填した連続包装体を前記巻芯に鍔部本体の直径の半分程度まで巻き付けた。ついで、前記ボビンをアルコールバリア性袋に収納して脱気包装した。このとき、鍔部本体が内方に湾曲することを目視で確認できた。
そして、3日間、室温にて静置した後、前記アルコールバリア性袋を取り出し、湾曲していた鍔部本体の復元性を目視にて観察した。観察結果を図6に示す。
【実施例2】
【0041】
鍔部の成形材料として耐衝撃性ポリスチレン(スチレン・ブタジエン共重合体)(HIPS)で一体成形した点を除き、他は前述の実施例1と同一条件で連続包装体用ボビンを得た。試験条件を図5に示す。
そして、前記実施例1と同一条件で試験し、湾曲していた鍔部本体の復元性を目視にて観察した。観察結果を図6に示す。
(比較例1)
【0042】
鍔部本体の傾斜角度を180度にした点を除き、他は前述の第1実施例と同様にして得たサンプルを、実施例1と同一条件で試験し、鍔部本体の復元性を目視にて観察した。
試験条件および観察結果を図5および図6にそれぞれ示す。
(比較例2)
【0043】
鍔部本体の傾斜角度を180度にするとともに、成形樹脂として耐衝撃性ポリスチレン(スチレン・ブタジエン共重合体)(HIPS)で一体成形した点を除き、他は前述の第1実施例と同様にして得たサンプルを、実施例1と同一条件で試験し、鍔部本体の復元性を目視にて観察した。
試験条件および観察結果を図5および図6にそれぞれ示す。
(比較例3)
【0044】
成形樹脂としてポリスチレンで一体成形し、鍔部本体の傾斜角度を180度とするとともに、線状リブおよび環状リブを設けない点を除き、他は前述の第1実施例と同様にして得たサンプルを、実施例1と同一条件で試験し、鍔部本体の復元性を目視にて観察した。
試験条件および観察結果を図5および図6にそれぞれ示す。
(比較例4)
【0045】
成形樹脂としてポリ塩化ビニルで一体成形し、鍔部本体の傾斜角度を180度とするとともに、線状リブおよび環状リブを設けない点を除き、他は前述の第1実施例と同様にして得たサンプルを、実施例1と同一条件で試験し、鍔部本体の復元性を目視にて観察した。
試験条件および観察結果を図5および図6にそれぞれ示す。
(比較例5)
【0046】
成形樹脂としてポリプロピレンで一体成形し、鍔部本体の傾斜角度を180度とするとともに、環状リブを設けない点を除き、他は前述の第1実施例と同様にして得たサンプルを、実施例1と同一条件で試験し、鍔部本体の復元性を目視にて観察した。
試験条件および観察結果を図5および図6にそれぞれ示す。
【0047】
図6から明らかなように、実施例1では脱気包装前と同程度に復元すること確認できたとともに、実施例2では僅かに湾曲が残存するものの、実用上の問題がないことを確認できた。これに対し、比較例1ないし5では、鍔部本体が湾曲したままの形状が残存することを確認した。
したがって、実施例1,2と比較例1,2とを比較することにより、鍔部本体の傾斜角度を175度とすれば、鍔部本体が所定の形状に復帰できることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係るボビンは、品質保持剤を個々に充填した連続包装体に限らず、他の連続包装体あるいはシート状の被巻回部材にも適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
10 連続包装体用ボビン
20 巻芯
21 開口縁部
30 鍔部
31 鍔部本体
32 環状リブ
32a 環状平坦部
33 線状リブ
34 エンボス
35 嵌合部
36 軸孔
37 環状リブ
38 補強リブ
39 嵌合部材
39a 環状鍔部
40 連続包装体(被巻回部材)
50 保存袋
H 傾斜角度
P 軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6