特許第6286329号(P6286329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286329
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】画像形成装置及び情報提供方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20180215BHJP
   G06F 3/12 20060101ALI20180215BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20180215BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   H04N1/00 C
   G06F3/12 K
   B41J29/00 Z
   B41J29/38 Z
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-191425(P2014-191425)
(22)【出願日】2014年9月19日
(65)【公開番号】特開2016-63469(P2016-63469A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2016年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】591044164
【氏名又は名称】株式会社沖データ
(74)【代理人】
【識別番号】100082740
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 恵基
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】笹川 雄二郎
【審査官】 花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−199144(JP,A)
【文献】 特開2006−221560(JP,A)
【文献】 特開2008−047960(JP,A)
【文献】 特開2003−280754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
B41J 29/00 −29/70
G06F 3/09 − 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記画像の形成に関する情報及び前記情報を隠蔽する度合を表す隠蔽度合を記憶する記憶部と、
前記情報を、前記記憶部に記憶された隠蔽度合に応じて、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換処理部と、
前記画像を表すデータ、前記情報又は前記隠蔽情報を送受信する通信部と、
前記情報の提供が制限された提供制限者に対し、前記通信部を介して前記隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供部と、
前記情報の提供が許可された提供許可者に対し、前記通信部を介して、前記情報と当該情報から変換された前記隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供処理部と
を具え、
前記記憶部は、前記隠蔽度合の一つとして完全隠蔽度合を記憶し、
前記変換処理部は、前記記憶部に記憶された前記隠蔽度合が前記完全隠蔽度合である場合、前記情報を、情報が存在しないことを表す前記隠蔽情報に変換する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記隠蔽度合の一つとして区別可能度合を記憶し、
前記変換処理部は、前記記憶部に記憶された前記隠蔽度合が前記区別可能度合である場合、前記情報を、他と区別可能な前記隠蔽情報に変換する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記隠蔽度合の一つとして非隠蔽度合を記憶し、
前記隠蔽情報提供部は、前記記憶部に記憶された前記隠蔽度合が前記非隠蔽度合である場合、前記提供制限者に対し前記情報を提供する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記記憶部は、複数種類の前記情報を記憶すると共に、当該情報を複数のグループに分け、当該グループごとに前記情報を前記隠蔽情報に変換するか否かを指定する変換当否設定を記憶し、
前記変換処理部は、前記変換当否設定により変換する旨が指定された前記グループに属する前記情報を、前記隠蔽情報にそれぞれ変換する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
画像形成部における画像の形成に関する情報及び前記情報を隠蔽する度合を表す隠蔽度合を記憶部に記憶させる記憶ステップと、
変換処理部により、前記情報を、前記記憶部に記憶された隠蔽度合に応じて、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換ステップと、
通信部により、前記画像を表すデータ、前記情報又は前記隠蔽情報を送受信する通信ステップと、
隠蔽情報提供部により、前記情報の提供が制限された提供制限者に対し、前記通信部を介して前記隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供ステップと、
対応情報提供処理部により、前記情報の提供が許可された提供許可者に対し、前記通信部を介して、前記情報と当該情報から変換された前記隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供ステップと
を有し、
前記記憶ステップでは、前記隠蔽度合の一つとして完全隠蔽度合を前記記憶部に記憶させ、
前記変換ステップでは、前記変換処理部により、前記記憶部に記憶された前記隠蔽度合が前記完全隠蔽度合である場合、前記情報を、情報が存在しないことを表す前記隠蔽情報に変換する
ことを特徴とする情報提供方法。
【請求項6】
媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記画像の形成に関する情報を記憶する記憶部と、
前記情報を、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換処理部と、
前記画像を表すデータ、前記情報又は前記隠蔽情報を送受信する通信部と、
前記情報の提供が制限された提供制限者に対し、前記通信部を介して前記隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供部と、
前記情報の提供が許可された提供許可者に対し、前記通信部を介して、前記情報と当該情報から変換された前記隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供処理部と
を具え、
前記記憶部は、前記隠蔽情報を前記提供許可者に提供するか否かを表す隠蔽情報提供当否設定をさらに記憶し、
前記対応情報提供処理部は、前記隠蔽情報提供当否設定に応じて、前記提供許可者に前記情報と前記隠蔽情報とを対応付けて提供し、又は前記提供許可者に前記情報のみを提供する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
画像形成部における画像の形成に関する情報を記憶部に記憶させる記憶ステップと、
変換処理部により、前記情報を、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換ステップと、
通信部により、前記画像を表すデータ、前記情報又は前記隠蔽情報を送受信する通信ステップと、
隠蔽情報提供部により、前記情報の提供が制限された提供制限者に対し、前記通信部を介して前記隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供ステップと、
対応情報提供処理部により、前記情報の提供が許可された提供許可者に対し、前記通信部を介して、前記情報と当該情報から変換された前記隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供ステップと
を有し、
前記記憶ステップでは、前記隠蔽情報を前記提供許可者に提供するか否かを表す隠蔽情報提供当否設定を前記記憶部にさらに記憶させ、
前記対応情報提供ステップでは、前記対応情報提供処理部により、前記隠蔽情報提供当否設定に応じて、前記提供許可者に前記情報と前記隠蔽情報とを対応付けて提供し、又は前記提供許可者に前記情報のみを提供する
ことを特徴とする情報提供方法。
【請求項8】
媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記画像の形成に関する情報を記憶する記憶部と、
前記情報を、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換処理部と、
前記画像を表すデータ、前記情報又は前記隠蔽情報を送受信する通信部と、
前記情報の提供が制限された提供制限者に対し、前記通信部を介して前記隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供部と、
前記情報の提供が許可された提供許可者に対し、前記通信部を介して、前記情報と当該情報から変換された前記隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供処理部と、
前記提供制限者から前記隠蔽情報を用いた指示を受け付ける指示受付部と、
前記指示に含まれる前記隠蔽情報を対応する前記情報に逆変換する逆変換処理部と、
前記逆変換処理部により逆変換された前記情報を含む前記指示に従った処理を実行する実行部と
を具えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
画像形成部における画像の形成に関する情報を記憶部に記憶させる記憶ステップと、
変換処理部により、前記情報を、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換ステップと、
通信部により、前記画像を表すデータ、前記情報又は前記隠蔽情報を送受信する通信ステップと、
隠蔽情報提供部により、前記情報の提供が制限された提供制限者に対し、前記通信部を介して前記隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供ステップと、
対応情報提供処理部により、前記情報の提供が許可された提供許可者に対し、前記通信部を介して、前記情報と当該情報から変換された前記隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供ステップと、
指示受付部により、前記提供制限者から前記隠蔽情報を用いた指示を受け付ける指示受付ステップと、
逆変換処理部により、前記指示に含まれる前記隠蔽情報を対応する前記情報に逆変換する逆変換ステップと、
実行部により、前記逆変換処理部により逆変換された前記情報を含む前記指示に従った処理を実行する実行ステップと
を有することを特徴とする情報提供方法。
【請求項10】
媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記画像の形成に関する情報及び前記情報を隠蔽する度合を表す隠蔽度合を記憶する記憶部と、
前記情報を、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換処理部と、
前記画像を表すデータ、前記情報又は前記隠蔽情報を送受信する通信部と、
前記情報の提供が制限された提供制限者に対し、前記通信部を介して前記隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供部と、
前記情報の提供が許可された提供許可者に対し、前記通信部を介して、前記情報と当該情報から変換された前記隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供処理部と
を具え、
前記記憶部は、前記隠蔽度合の一つとして有無度合を記憶し、
前記変換処理部は、前記記憶部に記憶された前記隠蔽度合が前記有無度合である場合、前記情報を、当該情報が存在するか否かを認識可能に表す前記隠蔽情報に変換する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
画像形成部における画像の形成に関する情報及び前記情報を隠蔽する度合を表す隠蔽度合を記憶部に記憶させる記憶ステップと、
変換処理部により、前記情報を、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換ステップと、
通信部により、前記画像を表すデータ、前記情報又は前記隠蔽情報を送受信する通信ステップと、
隠蔽情報提供部により、前記情報の提供が制限された提供制限者に対し、前記通信部を介して前記隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供ステップと、
対応情報提供処理部により、前記情報の提供が許可された提供許可者に対し、前記通信部を介して、前記情報と当該情報から変換された前記隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供ステップと
を有し、
前記記憶ステップでは、前記隠蔽度合の一つとして有無度合を前記記憶部に記憶させ、
前記変換ステップでは、前記変換処理部により、前記記憶部に記憶された前記隠蔽度合が前記有無度合である場合、前記情報を、当該情報が存在するか否かを認識可能に表す前記隠蔽情報に変換する
ことを特徴とする情報提供方法。
【請求項12】
媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記画像の形成に関する情報及び前記情報を隠蔽する度合を表す隠蔽度合を記憶する記憶部と、
前記情報を、前記記憶部に記憶された前記隠蔽度合に応じて、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換処理部と、
前記情報の提供が制限された提供制限者に対し、前記隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供部と、
前記情報の提供が許可された提供許可者に対し、前記情報と当該情報から変換された前記隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供処理部と
を具え、
前記記憶部は、前記隠蔽度合の一つとして完全隠蔽度合を記憶し、
前記変換処理部は、前記記憶部に記憶された前記隠蔽度合が前記完全隠蔽度合である場合、前記情報を、情報が存在しないことを表す前記隠蔽情報に変換する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
提供制限された情報を含む原情報及び前記情報を隠蔽する度合を表す隠蔽度合を記憶部に記憶させる記憶ステップと、
変換処理部により、前記原情報のうち前記提供制限された情報を、前記記憶部に記憶された前記隠蔽度合に応じて、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換ステップと、
隠蔽情報提供部により、前記情報の提供が制限された提供制限者に対し、前記隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供ステップと、
対応情報提供処理部により、前記情報の提供が許可された提供許可者に対し、前記情報と当該情報から変換された前記隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供ステップと
を有し、
前記記憶ステップでは、前記隠蔽度合の一つとして完全隠蔽度合を前記記憶部に記憶させ、
前記変換ステップでは、前記変換処理部により、前記記憶部に記憶された前記隠蔽度合が前記完全隠蔽度合である場合、前記情報を、情報が存在しないことを表す前記隠蔽情報に変換する
ことを特徴とする情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置及び情報提供方法に関し、例えばコンピュータから画像データをプリンタへ送信して印刷させる印刷システムに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタは、ネットワークを介してコンピュータと接続され、このコンピュータから送信される印刷命令及び画像データを基に印刷を行うものが広く普及している。またプリンタのなかには、正当な使用権限があるユーザにのみ使用させるためのユーザ情報や、動作の履歴であるログ情報等のような種々の情報を記憶しているものがある。
【0003】
さらにプリンタのなかには、印刷システムに組み込まれ、インターネット等の広域ネットワークを介して、外部の保守作業者が操作する管理装置等と接続され、この管理装置へ設定情報やログ等の情報を送信するものもある。ここでログには、例えばプリンタにおいて認証処理を行うためのユーザ名やメールアドレス等のように、外部に対し隠蔽したい情報(以下これを隠蔽対象と呼ぶ)が含まれることがある。
【0004】
そこでプリンタのなかには、隠蔽対象の各文字を所定の記号(例えば「*」等)に変換して送信することで、この隠蔽対象が外部に通知されることを防止するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−178650号公報(第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらこの場合、保守作業者が取得する設定情報やログ等、すなわち変換後の情報では、例えばユーザ名やメールアドレス等のように、複数のユーザに対しそれぞれ一意に割り当てられた情報の各文字が全て同一の記号に変換されているために、これらを区別することが困難である。
【0007】
特に保守作業者がプリンタのユーザとの間で電話や電子メールを介してやり取りをする場合、保守作業者側でユーザ名やメールアドレス等を特定することができず、互いに意思疎通を図ることが困難となる。この結果、保守作業者は、ユーザ名やメールアドレスを特定した詳細な保守作業を行うことができず、サービスレベルが低下してしまう、という問題があった。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、情報の保護と利用とを高い次元で両立させる画像形成装置及び情報提供方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明の画像形成装置においては、媒体に画像を形成する画像形成部と、画像の形成に関する情報及び情報を隠蔽する度合を表す隠蔽度合を記憶する記憶部と、情報を、記憶部に記憶された隠蔽度合に応じて、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換処理部と、画像を表すデータ、情報又は隠蔽情報を送受信する通信部と、情報の提供が制限された提供制限者に対し、通信部を介して隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供部と、情報の提供が許可された提供許可者に対し、通信部を介して、情報と当該情報から変換された隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供処理部とを設け、記憶部は、隠蔽度合の一つとして完全隠蔽度合を記憶し、変換処理部は、記憶部に記憶された隠蔽度合が完全隠蔽度合である場合、情報を、情報が存在しないことを表す隠蔽情報に変換するようにした。
また本発明の情報提供方法においては、画像形成部における画像の形成に関する情報及び情報を隠蔽する度合を表す隠蔽度合を記憶部に記憶させる記憶ステップと、変換処理部により、情報を、記憶部に記憶された隠蔽度合に応じて、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換ステップと、通信部により、画像を表すデータ、情報又は隠蔽情報を送受信する通信ステップと、隠蔽情報提供部により、情報の提供が制限された提供制限者に対し、通信部を介して隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供ステップと、対応情報提供処理部により、情報の提供が許可された提供許可者に対し、通信部を介して、情報と当該情報から変換された隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供ステップとを設け、記憶ステップでは、隠蔽度合の一つとして完全隠蔽度合を記憶部に記憶させ、変換ステップでは、変換処理部により、記憶部に記憶された隠蔽度合が完全隠蔽度合である場合、情報を、情報が存在しないことを表す隠蔽情報に変換するようにした。
さらに本発明の画像形成装置においては、媒体に画像を形成する画像形成部と、画像の形成に関する情報を記憶する記憶部と、情報を、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換処理部と、画像を表すデータ、情報又は隠蔽情報を送受信する通信部と、情報の提供が制限された提供制限者に対し、通信部を介して隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供部と、情報の提供が許可された提供許可者に対し、通信部を介して、情報と当該情報から変換された隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供処理部とを設け、記憶部は、隠蔽情報を提供許可者に提供するか否かを表す隠蔽情報提供当否設定をさらに記憶し、対応情報提供処理部は、隠蔽情報提供当否設定に応じて、提供許可者に情報と隠蔽情報とを対応付けて提供し、又は提供許可者に情報のみを提供するようにした。
さらに本発明の情報提供方法においては、画像形成部における画像の形成に関する情報を記憶部に記憶させる記憶ステップと、変換処理部により、情報を、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換ステップと、通信部により、画像を表すデータ、情報又は隠蔽情報を送受信する通信ステップと、隠蔽情報提供部により、情報の提供が制限された提供制限者に対し、通信部を介して隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供ステップと、対応情報提供処理部により、情報の提供が許可された提供許可者に対し、通信部を介して、情報と当該情報から変換された隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供ステップとを設け、記憶ステップでは、隠蔽情報を提供許可者に提供するか否かを表す隠蔽情報提供当否設定を記憶部にさらに記憶させ、対応情報提供ステップでは、対応情報提供処理部により、隠蔽情報提供当否設定に応じて、提供許可者に情報と隠蔽情報とを対応付けて提供し、又は提供許可者に情報のみを提供するようにした。
さらに本発明の画像形成装置においては、媒体に画像を形成する画像形成部と、画像の形成に関する情報を記憶する記憶部と、情報を、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換処理部と、画像を表すデータ、情報又は隠蔽情報を送受信する通信部と、情報の提供が制限された提供制限者に対し、通信部を介して隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供部と、情報の提供が許可された提供許可者に対し、通信部を介して、情報と当該情報から変換された隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供処理部と、提供制限者から隠蔽情報を用いた指示を受け付ける指示受付部と、指示に含まれる隠蔽情報を対応する情報に逆変換する逆変換処理部と、逆変換処理部により逆変換された情報を含む指示に従った処理を実行する実行部とを設けるようにした。
さらに本発明の情報提供方法においては、画像形成部における画像の形成に関する情報を記憶部に記憶させる記憶ステップと、変換処理部により、情報を、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換ステップと、通信部により、画像を表すデータ、情報又は隠蔽情報を送受信する通信ステップと、隠蔽情報提供部により、情報の提供が制限された提供制限者に対し、通信部を介して隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供ステップと、対応情報提供処理部により、情報の提供が許可された提供許可者に対し、通信部を介して、情報と当該情報から変換された隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供ステップと、指示受付部により、提供制限者から隠蔽情報を用いた指示を受け付ける指示受付ステップと、逆変換処理部により、指示に含まれる隠蔽情報を対応する情報に逆変換する逆変換ステップと、実行部により、逆変換処理部により逆変換された情報を含む指示に従った処理を実行する実行ステップとを設けるようにした。
さらに本発明の画像形成装置においては、媒体に画像を形成する画像形成部と、画像の形成に関する情報及び該情報を隠蔽する度合を表す隠蔽度合を記憶する記憶部と、情報を、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換処理部と、画像を表すデータ、情報又は隠蔽情報を送受信する通信部と、情報の提供が制限された提供制限者に対し、通信部を介して隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供部と、情報の提供が許可された提供許可者に対し、通信部を介して、情報と当該情報から変換された隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供処理部とを設け、記憶部は、隠蔽度合の一つとして有無度合を記憶し、変換処理部は、記憶部に記憶された隠蔽度合が有無度合である場合、情報を、当該情報が存在するか否かを認識可能に表す隠蔽情報に変換するようにした。
さらに本発明の情報提供方法においては、画像形成部における画像の形成に関する情報及び該情報を隠蔽する度合を表す隠蔽度合を記憶部に記憶させる記憶ステップと、変換処理部により、情報を、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換ステップと、通信部により、画像を表すデータ、情報又は隠蔽情報を送受信する通信ステップと、隠蔽情報提供部により、情報の提供が制限された提供制限者に対し、通信部を介して隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供ステップと、対応情報提供処理部により、情報の提供が許可された提供許可者に対し、通信部を介して、情報と当該情報から変換された隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供ステップとを設け、記憶ステップでは、隠蔽度合の一つとして有無度合を記憶部に記憶させ、変換ステップでは、変換処理部により、記憶部に記憶された隠蔽度合が有無度合である場合、情報を、当該情報が存在するか否かを認識可能に表す隠蔽情報に変換するようにした。
【0010】
また本発明の画像形成装置においては、媒体に画像を形成する画像形成部と、画像の形成に関する情報及び情報を隠蔽する度合を表す隠蔽度合を記憶する記憶部と、情報を、記憶部に記憶された隠蔽度合に応じて、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換処理部と、情報の提供が制限された提供制限者に対し、隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供部と、情報の提供が許可された提供許可者に対し、情報と当該情報から変換された隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供処理部とを設け、記憶部は、隠蔽度合の一つとして完全隠蔽度合を記憶し、変換処理部は、記憶部に記憶された隠蔽度合が完全隠蔽度合である場合、情報を、情報が存在しないことを表す隠蔽情報に変換するようにした。
さらに本発明の情報提供方法においては、提供制限された情報を含む原情報及び情報を隠蔽する度合を表す隠蔽度合を記憶部に記憶させる記憶ステップと、変換処理部により、原情報のうち提供制限された情報を、記憶部に記憶された隠蔽度合に応じて、当該情報の少なくとも一部を隠蔽した隠蔽情報に変換する変換ステップと、隠蔽情報提供部により、情報の提供が制限された提供制限者に対し、隠蔽情報を提供する隠蔽情報提供ステップと、対応情報提供処理部により、情報の提供が許可された提供許可者に対し、情報と当該情報から変換された隠蔽情報とを対応付けて提供する対応情報提供ステップとを設け、記憶ステップでは、隠蔽度合の一つとして完全隠蔽度合を記憶部に記憶させ、変換ステップでは、変換処理部により、記憶部に記憶された隠蔽度合が完全隠蔽度合である場合、情報を、情報が存在しないことを表す隠蔽情報に変換するようにした。
【0011】
これにより、提供許可者に元の情報と隠蔽情報との対応付けを知得させることができるので、隠蔽情報のみを知る提供制限者との間で、隠蔽情報を介した円滑な意思疎通を行わせることができる。また本発明では、完全隠蔽度合が記憶されている場合、情報が存在しないことを表す隠蔽情報に変換することにより、制限提供者に対して情報が存在すること自体を隠蔽するため、当該情報を高度に保護できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、情報の保護と利用とを高い次元で両立させる画像形成装置及び情報提供方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】印刷システムの構成を示す略線図である。
図2】MFPの構成を示す略線図である。
図3】統合情報の通知による意思疎通を示す略線図である。
図4】隠蔽情報を使用した指示の実行を示す略線図である。
図5】隠蔽設定を示す略線図である。
図6】隠蔽レベルを示す略線図である。
図7】隠蔽設定の表示を示す略線図である。
図8】隠蔽テーブルを示す略線図である。
図9】ユーザ情報の隠蔽を示す略線図である。
図10】ログ情報の隠蔽及び統合を示す略線図である。
図11】情報提供処理手順を示すフローチャートである。
図12】隠蔽テーブルへの隠蔽情報登録処理手順を示すフローチャートである。
図13】統合情報提供処理手順を示すフローチャートである。
図14】コマンド実行処理手順を示す略線図である。
図15】シード値および生成されたIDを示す略線図である。
図16】シード値リストを示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0015】
[1.第1の実施の形態]
[1−1.印刷システムの構成]
図1に示すように、第1の実施の形態による印刷システム1は、MFP(Multi Function Printer)2、コンピュータ3、及び保守装置4がネットワーク5により互いに接続された構成となっている。このうちMFP2及びコンピュータ3は、所定の企業C1内に設置されている。MFP2は、コンピュータ3等からの指示により印刷を行うプリンタ機能の他、ファクシミリ機能やスキャナ機能、及びコピー機能といった複数の機能(Multi Function)を有している。
【0016】
コンピュータ3は、表示部3D及び操作部3M等を有しており、一般的なコンピュータと同様、OS(Operation System)やウェブブラウザ等の各種プログラムを実行する。このコンピュータ3は、企業C1の社員である提供許可者としてのユーザP1により操作される。保守装置4は、表示部4D及び操作部4M等を有するコンピュータであり、MFP2に関し企業C1と保守契約を結んでいる保守会社C2に設置され、この保守会社C2の社員である提供制限者としての保守作業者P2により操作される。
【0017】
ネットワーク5は、企業C1及び保守会社C2を相互に接続するインターネット5Aと、企業C1内でMFP2、コンピュータ3及びインターネット5Aを互いに接続するネットワーク機器5Bとにより構成されている。ネットワーク機器5Bは、例えばルータやハブ等であり、複数のコンピュータ3や各種情報機器(図示せず)が接続されている。このネットワーク5は、例えばコンピュータ3からMFP2へ印刷命令及び印刷データを伝達し、保守装置4からMFP2へのログ(詳しくは後述する)の取得要求を伝達し、MFP2から保守装置4へログを伝達する。
【0018】
因みにMFP2は、コンピュータ3及び保守装置4の何れに対してもネットワーク5を介して接続されている。このためMFP2は、ユーザP1又は保守作業者P2がネットワーク5を介してアクセスする際に、例えばユーザ名及びパスワードによる認証処理や、ネットワーク上のアドレス等により、アクセスしてきた相手がユーザP1及び保守作業者P2の何れであるかを認識する。
【0019】
MFP2は、図2に示すように、コントロール部10により全体を統括制御するようになっている。コントロール部10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、印刷処理や情報隠蔽処理等の種々の処理を行う。コントロール部10の内部には、各種情報を管理する情報管理部11が設けられている。この情報管理部11には、さらに変換処理部12及び統合処理部13(詳しくは後述する)が設けられている。
【0020】
またコントロール部10には、データストレージ部14、プリントエンジン部15、スキャナ部16、操作パネル部17及び通信部18がそれぞれ接続されている。データストレージ部14は、例えばハードディスクドライブでなり、印刷処理に必要な情報の他、ユーザに関するユーザ情報や、動作の履歴であるログ情報など、種々の情報を記憶する。プリントエンジン部15は、印刷媒体である紙に対し、印刷データに応じた画像を印刷する。スキャナ部16は、紙などに印刷された画像を撮像して画像データを生成する。
【0021】
操作パネル部17は、例えば液晶パネルとタッチセンサが一体化されたタッチパネルでなり、種々の情報を表示し、またユーザの操作入力を受け付ける。また操作パネル部17には、タッチパネルの近傍に、数字キーや方向キー等でなる操作キーも併設されている。通信部18は、例えばIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.3u/abやIEEE802.11a/b/g/n等の規格に準じた有線又は無線のLAN(Local Area Network)のインタフェースを有しており、ネットワーク5(図1)を介して種々の情報を送受信する。
【0022】
このように印刷システム1では、コンピュータ3からの印刷命令に従ってMFP2が印刷等の各処理を実行する他、企業C1の外部に設けられた保守装置4とMFP2との間で情報を送受信するようになっている。
【0023】
[1−2.情報の通知に関する基本概念]
次に、印刷システム1における情報の処理及び通知に関する基本概念を説明する。MFP2は、使用するユーザの名前やメールアドレス等、当該ユーザに関する情報(以下これをユーザ情報と呼ぶ)が予め登録されており、このユーザ情報をデータストレージ部14に記憶している。
【0024】
また企業C1は、このユーザ情報のような外部に提供すべきでない情報に関し、取り扱いの方針を定めている。具体的には、当該企業C1に属する者、例えばコンピュータ3のユーザP1に対しては、提供が許可される一方、当該企業C1に属しない者、例えば保守会社C2の社員である保守作業者P2に対しては、提供が制限されている。
【0025】
そこでMFP2は、図3に示すように、保守装置4から各種情報の要求を受け付けると、この情報のうち外部に提供すべきで無いものを、変換処理部12により元の情報から隠蔽された情報に変換して保守装置4へ送信する。以下、外部に提供すべきで無い情報を隠蔽対象と呼び、また元の情報および隠蔽された情報をそれぞれ原情報及び隠蔽情報と呼ぶ。またMFP2は、統合処理部13により、原情報と隠蔽情報とを互いに対応付けた統合情報を生成し、この統合情報をコンピュータ3のユーザP1に通知する。
【0026】
これにより保守装置4を操作する保守作業者P2及びコンピュータ3のユーザP1は、何れも隠蔽情報を知ることになる。このため保守作業者P2及びユーザP1は、電話や電子メール等の連絡手段を利用しながら、この隠蔽情報を介して互いに意思疎通を図ることが可能となる。
【0027】
またMFP2は、図4に示すように、保守装置4から隠蔽情報に対する指示(コマンド)を受け付けると、その変換処理部12により隠蔽情報を原情報に逆変換し、この原情報に対する指示を実行する。これにより保守作業者P2は、原情報そのものを知ること無く、当該原情報に関する処理をMFP2に実行させることができる。
【0028】
[1−3.情報の隠蔽に関する設定]
次に、MFP2における隠蔽対象の原情報から隠蔽情報への変換について説明する。MFP2のデータストレージ部14(図2)には、隠蔽設定S1が予め記憶されている。この隠蔽設定S1は、情報の隠蔽に関する設定を表すものであり、図5(A)、(B)及び(C)に示すように、隠蔽設定S1A、S1B及びS1Cといった3種類の設定により構成されている。
【0029】
隠蔽設定S1Aは、データストレージ部14に記憶されている情報の種類と対応付けて、隠蔽処理を実施するか否かの設定を格納している。具体的に隠蔽設定S1Aには、情報の種類として「ユーザ情報」や「ログ情報」等が格納され、それぞれについて隠蔽処理を実施するか否かを表す設定情報として「有効」又は「無効」が格納されている。
【0030】
隠蔽設定S1Bは、データストレージ部14に記憶されている情報の具体的な要素ごとに、処理を施すべき隠蔽レベルを格納している。ここで隠蔽設定S1Bに格納されている隠蔽レベルとは、情報を隠蔽する度合、換言すれば情報を開示する度合を表すものである。具体的に隠蔽レベルは、図6に示すように、「完全隠蔽」、「有無のみ」、「区別可能」及び「隠蔽無し」といった4段階が用意されている。
【0031】
完全隠蔽度合としての「完全隠蔽」は、情報を全く提供しない隠蔽処理であり、変換後の情報を「空欄」とするものである。この空欄は、保守作業者P2に提示し得る情報が存在しないことを表している。この場合、変換後の情報(すなわち空欄)を参照した保守作業者P2は、情報の具体的内容はもとより、情報の有無すら知ることができない。
【0032】
有無度合としての「有無のみ」は、何らかの情報が存在するか否か、換言すれば空欄であるか否かを情報として提供するものである。この「有無のみ」の場合、例えば情報が存在すれば「*」に、存在しなければ空欄に、それぞれ変換する。この場合、変換後の情報を参照した保守作業者P2は、原情報そのものを知ることや、当該情報と他の情報とを区別することはでき無いものの、情報の有無を知ることができる。
【0033】
区別可能度合としての「区別可能」は、変換前の情報を、同一種別の他の情報と区別可能な情報に変換するものである。この「区別可能」の場合、例えば変換前の「加藤」及び「松元」といったユーザ名を、「U1」及び「U2」といったID(Identifier)にそれぞれ変換する。この場合、変換後の情報(すなわちID)を参照した保守作業者P2は、原情報そのものを知ることはできないものの、情報の有無を知ること及び当該情報を他の情報と区別することができる。また非隠蔽度合としての「隠蔽無し」は、文字通り情報を隠蔽せずに、原情報のまま提供するものである。
【0034】
また隠蔽設定S1を他の観点から見ると、隠蔽設定S1Aに格納されている情報の種類は、隠蔽設定S1Bに格納されている情報の要素をグループ化して分類したものであり、いわば「大項目」と呼べるものである。これに対し、隠蔽設定S1Bに格納されている情報の要素は、各グループにそれぞれ属する「小項目」と呼べるものである。
【0035】
隠蔽設定S1Cは、隠蔽処理の対象となっている情報(以下これを隠蔽対象と呼ぶ)をコンピュータ3のユーザP1に提供する際に、原情報と併せて隠蔽情報も提供するか否かの設定(以下これを隠蔽情報の提供設定と呼ぶ)として、「有効」又は「無効」が格納されている。
【0036】
このような隠蔽設定S1は、例えば操作パネル部17(図2)によりその内容を表示し、また設定を変更することが可能となっている。例えばMFP2は、図7に示す表示画面D1を操作パネル部17に表示することにより、隠蔽設定S1の内容をユーザP1に提示する。またMFP2は、この表示画面D1を表示した状態において、ユーザP1によるタッチ操作やキー入力操作等を受け付けることにより、その設定内容を変更して記憶する。
【0037】
さらにMFP2は、隠蔽設定S1B(図5(B))の隠蔽レベルが「区別可能」である場合、図8に示すように、変換前の情報である原情報と変換後の情報である隠蔽情報とを対応付けた隠蔽テーブルT1を生成し、データストレージ部14に記憶させる。
【0038】
例えば、図9(A)に示すようなユーザ情報F1をデータストレージ部14に記憶しており、且つこのユーザ情報の各要素に関する隠蔽設定S1B(図5(B))の設定情報が「区別可能」であるとする。この場合、コントロール部10(図2)の情報管理部11における変換処理部12は、各要素を原情報から一意の隠蔽情報に変換し、要素名、原情報及び隠蔽情報を互いに対応付けて隠蔽テーブルT1(図8)に格納し、データストレージ部14(図2)に記憶させる。
【0039】
このとき変換処理部12は、例えば隠蔽情報を英文字及び数字列の組み合わせによる一意のIDとしており、要素ごとに英文字部分のみ共通化している。具体的には、例えば要素「ユーザ名」であれば英文字「U」を採用し、「ドメイン」であれば英文字「D」を採用し、メールアドレスであれば記号「@」よりも前のメールアカウントに英文字「E」を、記号「@」よりも後のメールドメインに英文字「D」を、それぞれ採用する。
【0040】
ここで、例えば図9(A)に示したユーザ情報F1の各要素を、隠蔽設定S1(図5)及び隠蔽テーブルT1(図8)に従って原情報から隠蔽情報へ変換すると、図9(B)に示すユーザ情報F2となる。すなわちユーザ情報F1は、隠蔽設定S1A(図5(A))において「ユーザ情報」の「隠蔽の実施」が「有効」であるため、各要素が隠蔽設定S1B(図5(B))の各設定に従って変換される。
【0041】
具体的にユーザ情報F2は、ユーザ名が「区別可能」な隠蔽情報である「U1」等に、電話番号が「有無のみ」を表す隠蔽情報である「*」又は「空欄」に、それぞれ変換される。またユーザ情報F2は、メールアドレスのメールアカウントが「区別可能」な隠蔽情報である「E1」等に、メールドメインが「区別可能」な隠蔽情報である「D1」等に、それぞれ変換される。
【0042】
また、例えば図10(A)に示すようなログ情報L1を、隠蔽設定S1(図5)及び隠蔽テーブルT1(図8)に従って原情報から隠蔽情報へ変換すると、図10(B)に示すログ情報L2となる。この場合、ログ情報L1は、隠蔽設定S1A(図5(A))において「ログ情報」の「隠蔽の実施」が「無効」であるため、「時刻」や「機能」等の各要素は原則として変換されないことになる。しかしながら、ログ情報L1に含まれる「ユーザ名」や「宛先」には、「ユーザ情報」の各要素が含まれており、当該「ユーザ情報」の「隠蔽の実施」が「有効」となっている。このためログ情報L1は、これらの要素のみ、隠蔽設定S1B(図5(B))の各設定に従って変換される。
【0043】
このようにMFP2は、隠蔽設定S1(図5)及び隠蔽テーブルT1(図8)に従い、隠蔽対象を原情報から隠蔽情報へ変換するようになっている。
【0044】
[1−4.情報の送受信及び隠蔽に関する処理]
次に、MFP2における情報の送受信及び隠蔽に関する種々の処理手順について、それぞれ詳細に説明する。
【0045】
[1−4−1.情報の提供処理]
まず、MFP2が保守装置4からの要求に応じて情報を提供する情報提供処理について説明する。MFP2のコントロール部10は、電源が投入されると、図11に示す情報提供処理手順RT1を開始してステップSP1へ移る。ステップSP1においてコントロール部10は、保守装置4(図1)からネットワーク5を介して情報(例えばユーザ情報)の取得要求を受け付け、次のステップSP2へ移る。
【0046】
ステップSP2においてコントロール部10は、情報管理部11(図2)により、ユーザ情報F1(図9(A))に隠蔽対象が含まれるか否かを判定する。具体的に情報管理部11は、隠蔽設定S1A(図5(A))において、要求された情報である「ユーザ情報」における「隠蔽の実施」が「有効」であるか否かを判断する。また情報管理部11は、ユーザ情報F1に含まれる各要素が隠蔽設定S1B(図5(B))において「完全隠蔽」、「区別可能」又は「有無のみ」の何れかに設定されているか否かについても判断する。
【0047】
ここで肯定結果が得られると、このことは隠蔽情報に変換して提供すべき情報(すなわち隠蔽対象)がユーザ情報F1に含まれており、保守装置4に対しそのまま提供するべきでは無いことを表している。このときコントロール部10は、次のステップSP3へ移り、ユーザ情報F1に含まれる隠蔽対象の情報のうち1つを選定して着目情報として、次のステップSP4へ移る。ステップSP4においてコントロール部10は、情報管理部11に対して着目情報の隠蔽情報を要求し、次のステップSP5へ移る。
【0048】
ステップSP5においてコントロール部10は、情報管理部11により、着目情報について、隠蔽設定S1B(図5(B))において設定された隠蔽レベルが「区別可能」であり、且つ隠蔽テーブルT1(図8)に未登録であるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは着目情報を隠蔽情報に変換すると共に隠蔽テーブルT1に登録する必要があることを表している。このときコントロール部10は、次のステップSP6へ移り、後述する隠蔽情報登録処理手順をサブルーチンとして実行することにより、着目情報を隠蔽情報に変換すると共にこの隠蔽情報を原情報と対応付けて隠蔽テーブルT1(図8)に登録し、次のステップSP7へ移る。
【0049】
一方、ステップSP5において否定結果が得られると、このことは着目情報の隠蔽設定S1B(図5(B))が「完全隠蔽」又は「有無のみ」であり、隠蔽テーブルT1を用いること無く隠蔽情報に変換できることを表している。このときコントロール部10は、次のステップSP7へ移り、情報管理部11の変換処理部12により、隠蔽設定S1(図5)及び隠蔽テーブルT1(図8)に基づき、ユーザ情報中の着目情報を原情報から隠蔽情報に変換し、次のステップSP8へ移る。
【0050】
ステップSP8においてコントロール部10は、ユーザ情報に未変換の隠蔽対象が含まれているか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、コントロール部10は、ステップSP3へ戻って一連の処理を繰り返すことにより、ユーザ情報F1中に含まれる残りの隠蔽対象を原情報から隠蔽情報へ変換していく。
【0051】
一方、ステップSP8において否定結果が得られると、このことはユーザ情報F1に含まれていた隠蔽対象を全て隠蔽情報に変換してユーザ情報F2(図9(B))を生成したことを表している。このときコントロール部10は、次のステップSP9へ移り、このユーザ情報F2をネットワーク5経由で保守装置4へ送信し、次のステップSP11へ移って情報提供処理手順RT1を終了する。
【0052】
一方、ステップSP2において否定結果が得られると、このことはユーザ情報F1に隠蔽対象が含まれていないことを表している。このときコントロール部10は、次のステップSP10へ移り、ユーザ情報F1(図9(A))を何ら変更せずにネットワーク5経由で保守装置4へ送信し、次のステップSP11へ移って情報提供処理手順RT1を終了する。
【0053】
[1−4−2.隠蔽テーブルへの隠蔽情報の登録]
次に、MFP2が隠蔽テーブルT1(図8)に隠蔽情報を登録する隠蔽情報登録処理について説明する。MFP2のコントロール部10に設けられた情報管理部11(図2)は、電源が投入されると、図12に示す隠蔽情報登録処理手順RT2を開始してステップSP21へ移る。ステップSP21において情報管理部11は、情報提供処理手順RT1(図11)のステップSP6等において、隠蔽テーブルT1に対し情報(以下これを着目情報と呼ぶ)を隠蔽情報に変換して登録する要求を受け付け、次のステップSP22へ移る。ステップSP22において情報管理部11は、隠蔽設定S1(図5)を参照して着目情報の隠蔽レベルを取得し、次のステップSP23へ移る。
【0054】
ステップSP23において情報管理部11は、着目情報について取得した隠蔽レベルが「区別可能」であるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは一意のIDを生成して隠蔽情報とし、これを着目情報に割り当てる必要があることを表している。このとき情報管理部11は、次のステップSP24へ移る。
【0055】
ステップSP24において情報管理部11の変換処理部12は、着目情報の種類(すなわち「ユーザ名」や「メールアカウント」等)に応じた英文字と、既存の他の隠蔽情報と異なる数字とを組み合わせることにより、新たな一意のIDを生成し、これを着目情報の隠蔽情報として、次のステップSP25へ移る。ステップSP25において情報管理部11は、着目情報の原情報と隠蔽情報とを互いに対応付けて隠蔽テーブルT1に登録し、次のステップSP26へ移って隠蔽情報登録処理手順RT2を終了する。
【0056】
一方、ステップSP23において否定結果が得られると、このことは着目情報の隠蔽レベルが「区別可能」では無いために、当該着目情報を隠蔽テーブルT1に登録する必要が無いことを表している。このとき情報管理部11は、ステップSP26へ移って隠蔽情報登録処理手順RT2を終了する。
【0057】
[1−4−3.ユーザへの原情報及び隠蔽情報の提供]
次に、MFP2がコンピュータ3のユーザP1に対し原情報及び隠蔽情報を統合して提供する情報統合提供処理について説明する。ここでは、ユーザP1にログ情報を提供する場合を想定する。MFP2のコントロール部10は、電源が投入されると、図13に示す情報統合提供処理手順RT3を開始してステップSP31へ移る。
【0058】
ステップSP31においてコントロール部10は、ネットワーク5を介してコンピュータ3からログ情報を参照する要求を受け付け、次のステップSP32へ移る。ステップSP32においてコントロール部10は、情報管理部11によりデータストレージ部14からログ情報L1を読み出し、次のステップSP33へ移る。ステップSP33においてコントロール部10は、情報管理部11によって隠蔽設定S1(図5)を参照することにより、ログ情報L1(図10(A))に含まれる各要素の隠蔽実施が「有効」であり、且つ隠蔽情報の表示設定、すなわち隠蔽設定S1Cの項目「隠蔽情報提供中は隠蔽情報も提供する」が「有効」であるか否かを判定する。
【0059】
ステップSP33において肯定結果が得られると、このことはログ情報中に含まれる情報が原情報から隠蔽情報へ変換されて保守装置4(図1)へ提供された可能性があり、且つユーザP1に原情報及び隠蔽情報の双方を提示すべきであることを表している。このときコントロール部10は、次のステップSP34へ移る。ステップSP34においてコントロール部10は、情報管理部11により、ログ情報L1に含まれる隠蔽対象の一つを選定して着目情報とし、次のステップSP35へ移る。
【0060】
ステップSP35においてコントロール部10は、情報管理部11により、隠蔽設定S1B(図5(B))を参照して着目情報の隠蔽レベルが「区別可能」であるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは隠蔽テーブルT1に着目情報の隠蔽情報が登録されていることを表している。このときコントロール部10は、次のステップSP36へ移り、情報管理部11により隠蔽テーブルT1から着目情報の隠蔽情報を読み出し、次のステップSP38へ移る。
【0061】
一方、ステップSP35において否定結果が得られると、このことは着目情報の隠蔽設定が「完全隠蔽」又は「有無のみ」の何れかであることを表している。このときコントロール部10は、次のステップSP37へ移り、情報管理部11の変換処理部12により、着目情報の隠蔽設定に従って隠蔽情報を取得し、次のステップSP38へ移る。因みにこの場合、隠蔽情報は記号「*」又は「空欄」の何れかとなる。
【0062】
ステップSP38においてコントロール部10は、情報管理部11の統合処理部13(図2)により、ログ情報内の着目情報について原情報と隠蔽情報とを統合し、次のステップSP39へ移る。このとき統合処理部13は、例えば原情報がユーザ名「加藤」であり、その隠蔽情報が「U1」である場合、「加藤(U1)」のように、原情報に隠蔽情報を併記した統合情報を生成する。因みに統合処理部13は、隠蔽情報が「空欄」である場合、「加藤()」のような統合情報を生成する。この統合情報は、原情報と隠蔽情報との対応付けを表す情報となる。
【0063】
ステップSP39においてコントロール部10は、隠蔽対象のうち原情報と隠蔽情報とが未統合であるものがログ情報中に残っているか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、コントロール部10は、再びステップSP34へ戻ることにより、残りの隠蔽対象について原情報と隠蔽情報とを順次統合していく。
【0064】
一方、ステップSP39において否定結果が得られると、このことはログ情報中の全ての隠蔽対象について原情報と隠蔽情報とを統合し終えたことを表している。このときコントロール部10は、次のステップSP40へ移り、図10(C)に示すように、全ての隠蔽対象について原情報と隠蔽情報とを統合したログ情報L3をコンピュータ3へ送信することにより、表示部3D(図1)に表示させる。これによりユーザP1は、ログ情報L3を視認すること、すなわちログ情報L3の提供を受けることができる。その後コントロール部10は、次のステップSP42へ移って情報統合提供処理手順RT3を終了する。
【0065】
また、ステップSP33において否定結果が得られると、このことは、原情報のままログ情報が保守装置4(図1)へ提供された可能性があり、或いは隠蔽情報に変換されたログ情報L2(図10(B))が保守装置4へ提供された可能性があるものの、ユーザP1に隠蔽情報を提示する必要が無いことを表している。このときコントロール部10は、次のステップSP41へ移り、各情報が隠蔽情報に変換されていないログ情報L1(図10(A))をコンピュータ3へ送信し、表示部3Dに表示させる。これによりユーザP1は、ログ情報L1を視認することができる。その後コントロール部10は、次のステップSP42へ移って情報統合提供処理手順RT3を終了する。
【0066】
[1−4−4.コマンド実行処理手順]
次に、MFP2が保守装置4からコマンド(指示)を受け付けて実行するコマンド実行処理について説明する。ここでは、例えばユーザ情報としてアクセス権の設定、具体的には印刷処理の許否やコピー処理の許否等の設定を変更する場合を想定する。MFP2のコントロール部10は、電源が投入されると、図14に示すコマンド実行処理手順RT4を開始してステップSP51へ移る。
【0067】
ステップSP51においてコントロール部10は、保守装置4からコマンドを実行する要求を受け付け、次のステップSP52へ移る。ステップSP52においてコントロール部10は、受け付けたコマンドを解釈し、次のステップSP53へ移る。このときコントロール部10は、コマンドの種類や実行対象等を認識することにより、例えばコマンドの種類を「アクセス権の設定変更」、実行対象をユーザ「U1」、実行内容を「印刷処理の許可」のように認識する。
【0068】
ステップSP53においてコントロール部10は、コマンドに隠蔽情報が含まれているか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、コントロール部10は次のステップSP54へ移り、隠蔽情報の隠蔽レベルが区別可能であるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは、受け付けたコマンドのままでは正しく実行できないものの、隠蔽情報を原情報に逆変換すれば実行可能であることを表している。このときコントロール部10は、次のステップSP55へ移る。
【0069】
ステップSP55においてコントロール部10は、情報管理部11によって隠蔽テーブルT1を参照することにより、隠蔽情報と対応付けられた原情報を読み出して取得し、次のステップSP56へ移る。ステップSP56においてコントロール部10は、ステップSP52において、解釈したコマンド中の隠蔽情報を情報管理部11の変換処理部12により原情報に置換した上で、当該コマンドに従った処理を実行する。その後コントロール部10は、次のステップSP58へ移ってコマンド実行処理手順RT4を終了する。
【0070】
一方、ステップSP53において否定結果が得られると、このことはコマンドをそのまま実行できることを表している。このときコントロール部10は、次のステップSP57へ移ってコマンドを実行した後、次のステップSP58へ移ってコマンド実行処理手順RT4を終了する。
【0071】
また、ステップSP54において否定結果が得られると、このことはコマンド中に隠蔽情報として記号「*」や「空欄」が含まれているために、この隠蔽情報を原情報に復元できないこと、すなわち当該コマンドを正しく実行できないことを表している。このときコントロール部10は、当該コマンドを実行すること無く、ステップSP58へ移ってコマンド実行処理手順RT4を終了する。因みにこのときコントロール部10は、保守装置4に対し所定のエラーメッセージを送信することにより、コマンドを実行できなかったことを保守作業者P2へ通知する。
【0072】
[1−5.動作及び効果]
以上の構成において、第1の実施の形態による印刷システム1のMFP2は、隠蔽設定S1(図5)に従い、隠蔽対象を原情報から隠蔽情報に変換して保守装置4に提供する。これによりMFP2は、保守装置4を操作する保守作業者P2のような外部の者に原情報を提供することが無いため、当該原情報を外部へ漏洩させずに済む。
【0073】
またMFP2は、隠蔽レベルが「区別可能」であれば、各情報に対し、一意のIDを生成し隠蔽情報として割り当てる。これにより保守作業者P2は、隠蔽情報を他の隠蔽情報と区別することができるので、原情報を直接知ること無く、各情報を区別しながら、比較的高いレベルの保守作業を行うことができる。
【0074】
さらにMFP2は、コンピュータ3に情報を提供する際、原情報と隠蔽情報とを統合した統合情報を表示部3Dに表示する。これによりMFP2は、ユーザP1に対し、原情報と隠蔽情報との対応付けを認識させることができる。これに伴い、隠蔽情報のみを知っている保守作業者P2は、ユーザP1との間で隠蔽情報を用いた意思疎通を図ることができ、格段にレベルの高い保守作業を行うことができる。
【0075】
特にMFP2は、コンピュータ3にログ情報を提供する場合に、ユーザ名やメールアドレス等の情報(すなわち隠蔽対象)について、それぞれ原情報と対応付ける形で隠蔽情報を統合し、ログ情報L3(図10(C))を提供する。このログ情報L3は、保守作業者P2が視認しているログ情報L2(図10(B))と比較して、各隠蔽情報の表示順序やレイアウト等が同一で、且つ原情報が追加された表示内容となる。このためユーザP1は、このログ情報L3を視認することにより、隠蔽情報のみを知る保守作業者P2との間で円滑な意思疎通を行いながら、当該保守作業者P2に対し必要な情報を提供できる。
【0076】
またMFP2は、隠蔽情報の表示設定、すなわち隠蔽設定S1C(図5(C))の項目「隠蔽情報提供中は隠蔽情報も提供する」が「有効」であるか否かに応じて、ユーザP1に通知する情報を、統合情報又は原情報のみに切り替える。このためMFP2は、例えば保守作業を保守作業者P2に全て依頼しており、問い合わせ等を受けることが無い場合に、ユーザP1に必要な原情報のみを通知でき、不要な情報を知らせることによる混乱を未然に回避できる。
【0077】
さらにMFP2は、隠蔽情報が「空欄」であった場合、原情報のみとするのでは無く、原情報に「()」を併記する。これによりMFP2は、隠蔽設定が「隠蔽無し」であり原情報がそのまま通知された場合に例えば「加藤」とし、隠蔽情報が「空欄」であった場合に例えば「加藤()」とするため、ユーザP1に両者を容易に区別させることができる。
【0078】
またMFP2は、隠蔽設定S1A(図5(A))により、「ユーザ情報」や「ログ情報」といった情報の種類ごとに、隠蔽処理を実施するか否かを設定できる。このためMFP2は、例えば保守作業の内容等に応じて一時的に全てのユーザ情報を開示したい場合等に、各情報の隠蔽設定を個別に変更させること無く、ユーザ情報の隠蔽処理を「無効」に設定させれば良い。さらには、作業の完了後等に再びユーザ情報を隠蔽したい場合、すなわち元の設定に戻したい場合、ユーザ情報の隠蔽処理を「有効」に設定するだけで良く、やはり各情報の隠蔽設定を個別に変更する必要が無い。
【0079】
さらにMFP2は、隠蔽の度合として「完全隠蔽」、「有無のみ」、「区別可能」及び「隠蔽なし」といった4段階の隠蔽レベルを設定することができる(図6)。このためMFP2は、保守作業者P2等に対し、各情報について開示可能な程度に応じてきめ細かく隠蔽レベルを設定することで、保守作業に必要な最小限の情報のみを通知しながら、開示するべきで無い情報を確実に隠蔽できる。
【0080】
またMFP2は、隠蔽レベルが「区別可能」である情報については、隠蔽テーブルT1に原情報と隠蔽情報とを対応付けて格納しておき、原情報から隠蔽情報に変換する際、当該隠蔽テーブルT1に原情報及び隠蔽情報が未登録の場合のみ、隠蔽情報を生成して登録する。このためMFP2は、隠蔽情報の生成処理を必要最小限に抑えることができ、またユーザP1に統合情報を通知する場合にも、隠蔽テーブルT1を利用することができる。
【0081】
そのうえMFP2は、保守装置4から隠蔽情報を含む指示(コマンド)を受け付けた場合、当該隠蔽情報が区別可能であれば、隠蔽テーブルT1を参照して原情報に置換した上で実行する。このためMFP2は、保守作業者P2に対し原情報を通知すること無く、隠蔽情報を含むコマンドに従った処理を実行することができ、これにより保守作業者P2による高いレベルの保守作業を実現できる。
【0082】
以上の構成によれば、MFP2は、外部の保守装置4に情報を提供する場合、隠蔽設定S1に従い、隠蔽レベルが「区別可能」であれば、各情報を互いに区別可能な一意の隠蔽情報に変換してから提供する。またMFP2は、コンピュータ3に情報を提供する際、原情報と隠蔽情報とを統合した統合情報を表示部3Dに表示する。これによりMFP2は、ユーザP1に対し、原情報と隠蔽情報との対応付けを認識させることができる。これに伴い、隠蔽情報のみを知っている保守作業者P2は、ユーザP1との間で隠蔽情報を用いた意思疎通を図ることができ、格段にレベルの高い保守作業を行うことができる。
【0083】
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態においては、隠蔽レベルが「区別可能」である場合に隠蔽情報として生成するIDが、第1の実施の形態と相違している。具体的にMFP2のコントロール部10は、情報管理部11の変換処理部12において、IDの先頭にある英文字としては、第1の実施の形態と同様に、情報の種類に応じて「U」や「E」等を共通に用いる。その一方で変換処理部12は、この英文字に続く数字については、ランダムな数字を発生させて割り当てる。具体的に変換処理部12は、このランダムな数字を発生させる場合、ユーザP1により指定された値をシード値とし、所定のハッシュ関数により、例えば4桁の数字を順次発生させていく。
【0084】
例えば変換処理部12は、図15(A)に示すように、ユーザP1によりシード値「1111」が指定された場合、このシード値に所定のハッシュ関数を適用することで、数値「3994」、「6107」及び「2350」等を順次算出する。続いて変換処理部12は、この数字をユーザ名と対応する英文字「U」と組み合わせることにより、ID「U3994」、「U6107」及び「U2350」等を順次生成し、これらを隠蔽情報とする。
【0085】
これによりMFP2は、数字部分が非連続であるIDを隠蔽情報として順次生成することができるので、保守作業者P2に対し、数字部分の順序性からユーザを推定する、といった情報漏洩に繋がる行為を困難なものとすることができる。
【0086】
また変換処理部12は、図15(B)に示すように、ユーザP1により「1111」と異なるシード値である「3456」が指定された場合、このシード値に所定のハッシュ関数を適用することで、以前と異なる数値「1182」、「5468」及び「7003」等を順次算出する。続いて変換処理部12は、これらを用いてID「U1182」、「U5468」及び「U7003」等を順次生成し、隠蔽情報とする。
【0087】
これによりMFP2は、数字部分が非連続であり、且つ以前とは異なるIDを隠蔽情報として順次生成することができるので、繰り返し保守作業を行う保守作業者P2に対し、以前との数字部分の同一性からユーザを推定する、といった情報漏洩に繋がる行為を困難なものとすることができる。
【0088】
さらにMFP2の情報管理部11は、図16に示すように、ユーザP1により指定されたシード値をシード値リストLSに履歴として記録していく。また変換処理部12は、ユーザP1にシード値を指定させる際、任意の値を指定させる他、シード値リストLSの日付や時刻を参照させながら過去のシード値を選択させることも可能となっている。
【0089】
ここでハッシュ関数は、その性質上、シード値が同一であれば、同一のパターンで値を順次算出することができる。例えば図15(A)の場合、シード値が「1111」であれば、算出される数値は必ず「3994」、「6107」及び「2350」のといったパターンとなる。
【0090】
このためMFP2は、例えばユーザP1により、敢えて以前と同一のシード値を指定させることで、以前と同一の隠蔽情報(すなわちID)を生成できる。これによりMFP2は、保守作業者P2に対し、以前に提供されたログ情報L2と今回のログ情報L2とを容易に比較させることができ、保守作業のレベルを高めることができる。
【0091】
このように第2の実施の形態によるMFP2は、隠蔽設定が「区別可能」である場合、シード値に基づいたハッシュ関数によりランダムな値を算出してIDに用いる。これによりMFP2は、第1の実施の形態と比較して、外部の者に隠蔽対象の情報が知られるおそれを格段に低減でき、また必要な場合には値のパターンを固定して保守作業の効率や精度を高めることもできる。
【0092】
[3.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、統合情報を生成してコンピュータ3に提供し、当該コンピュータ3が表示部3D(図1)にこの統合情報を表示することにより、ユーザP1に原情報と隠蔽情報との対応付けを通知する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばユーザP1にMFP2の操作パネル部17(図2)を操作させることにより、当該操作パネル部17に統合情報を表示しても良く、或いは統合情報を紙に印刷してユーザP1に通知するようにしても良い。
【0093】
また上述した実施の形態においては、原情報と隠蔽情報とを併記した統合情報を生成し、この統合情報をコンピュータ3の表示部3D(図1)に表示させることで、ユーザP1に原情報と隠蔽情報との対応付けを通知する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばログ情報L1及びL2を同一画面内に並べて表示することや、隠蔽テーブルT1をそのまま表示することで、ユーザP1に原情報と隠蔽情報との対応付けを通知しても良い。或いは、例えばコンピュータ3の表示部3Dに原情報のみを強調表示(着色、下線、太字等)しておき、ユーザP1の操作によりカーソル等を当該原情報に重ねた場合やクリック操作を受け付けた場合に、ポップアップ表示、ステータスバーへの表示、トースト表示や別ウィンドウの表示等により隠蔽情報を表示して、両者の対応付けを通知しても良い。
【0094】
さらに上述した実施の形態においては、情報統合提供処理手順RT3(図13)のステップSP38において統合情報を生成する際に、隠蔽情報が「空欄」である場合、原情報に「()」を併記する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば隠蔽情報が「空欄」である場合、原情報に「(−)」のような所定の記号を併記しても良く、或いは「(空欄)」のように文字により空欄であることを通知するようにしても良い。
【0095】
さらに上述した実施の形態においては、情報提供処理手順RT1(図11)によりユーザ情報F1(図9(A))の隠蔽対象を隠蔽情報に変換してユーザ情報F2(図9(B))とし、これを保守装置4へ提供する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばログ情報L1(図10(A))の隠蔽対象を隠蔽情報に変換してログ情報L2(図10(B))とし、これを保守装置4へ提供しても良い。
【0096】
さらに上述した実施の形態においては、隠蔽設定S1C(図5(C))における隠蔽情報の提供設定に応じて、コンピュータ3のユーザP1に対し、例えば図10(A)のログ情報L1のように原情報のみを提供し、或いは図10(C)のログ情報L3のように統合情報を提供する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば隠蔽情報の提供設定を省略し、ユーザP1に対しては無条件に統合情報のみを提供するようにしても良い。
【0097】
さらに上述した実施の形態においては、保守会社C2(図1)に設けられた保守装置4の表示部4Dに隠蔽情報を表示する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば保守作業者P2が企業C1(図1)に出向き、MFP2を直接操作して保守作業を行う場合に、所定の認証処理を経た上で、MFP2の操作パネル部17(図2)に隠蔽情報を表示しても良い。
【0098】
さらに上述した実施の形態においては、隠蔽レベルを「完全隠蔽」、「有無のみ」、「区別可能」及び「隠蔽なし」の4段階とする場合について述べた(図6)。しかしながら本発明はこれに限らず、隠蔽レベルを3段階以下や5段階以上としても良い。また他の隠蔽レベルとして、例えば情報の一部分のみを記号「*」等に置き換える「一部隠蔽」や、情報を構成する全ての文字を記号「*」等に置き換えて文字数のみを認識可能とする「全文字置換」等を設定しても良い。或いは、隠蔽レベルを1段階のみとし、各情報について隠蔽するか否かのみを設定できるようにしても良い。
【0099】
また上述した実施の形態においては、隠蔽レベルが「区別可能」であった場合、原情報及び隠蔽情報を対応付けて隠蔽テーブルT1に登録する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、隠蔽テーブルT1を生成せず、その都度隠蔽情報を生成しても良い。
【0100】
さらに上述した実施の形態においては、情報提供処理手順RT1(図11)のステップSP6のように、隠蔽レベルが「区別可能」である情報(隠蔽対象)を外部へ提供する必要が生じてから、隠蔽情報を生成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばプリンタ機能やファクシミリ機能等を実行していない待機状態である時に、隠蔽情報登録処理手順RT2(図12)を実行して隠蔽情報を順次生成し、隠蔽テーブルT1に登録しても良い。これによりMFP2は、保守装置4から情報の提供要求を受け付けた際に必要な処理を軽減でき、提供するまでの時間を短縮できる。
【0101】
さらに上述した実施の形態においては、隠蔽設定S1A(図5(A))により、情報の種類ごとに隠蔽処理を実施するか否かを設定する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば隠蔽設定S1Aを省略し、隠蔽設定S1B(図5(B))により、情報の具体的な要素ごとに隠蔽レベルを設定するのみとしても良い。
【0102】
さらに上述した実施の形態においては、MFP2のデータストレージ部14(図2)に記憶している情報を外部の保守装置4や社内のコンピュータ3に提供する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば種々の情報を内部に保有するサーバ装置等の情報処理装置から外部又は社内(すなわち情報を隠蔽せずに開示し得る者)に対し情報を提供する場合に適用しても良い。
【0103】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0104】
さらに上述した実施の形態においては、画像形成部としてのプリントエンジン部15と、記憶部としてのデータストレージ部14と、変換処理部としての変換処理部12と、通信部としての通信部18と、隠蔽情報提供部としての情報管理部11と、対応情報提供処理部としての情報管理部11及び統合処理部13とによって画像形成装置としてのMFP2を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる画像形成部と、記憶部と、変換処理部と、通信部と、隠蔽情報提供部と、対応情報提供処理部とによって画像形成装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、種々の情報を記憶し、要求に応じてこの情報を提供する種々の情報処理装置でも利用できる。
【符号の説明】
【0106】
1……印刷システム、2……MFP、3……コンピュータ、4……保守装置、5……ネットワーク、10……コントロール部、11……情報管理部、12……変換処理部、13……統合処理部、14……データストレージ部、15……プリントエンジン部、17……操作パネル部、18……通信部、C1……企業、C2……保守会社、D1……表示画面、F1、F2……ユーザ情報、L1、L2、L3……ログ情報、LS……シード値リスト、P1……ユーザ、P2……保守作業者、S1、S1A、S1B、S1C……隠蔽設定、T1……隠蔽テーブル。
図1
図2
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