(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも一の正孔阻止層が、ナフタレン−テトラカルボン酸無水物(NTCDA)、p−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH2)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)および7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)から選択される少なくとも一の有機半導体物質を含む、請求項2に記載のデバイス。
可視スペクトルにおいて分光感度を有するために、前記少なくとも一のドナー物質および前記少なくとも一のアクセプター物質が選択される、請求項1に記載のデバイス。
前記少なくとも一のドナー物質および前記少なくとも一のアクセプター物質が混合へテロ接合、平面ヘテロ接合、バルクヘテロ接合、ナノ結晶−バルク接合、およびハイブリッド平面−混合ヘテロ接合の少なくとも一を形成する、請求項1に記載のデバイス。
前記少なくとも一の正孔阻止層が、ナフタレン−テトラカルボン酸無水物(NTCDA)、p−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH2)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)および7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)から選択される少なくとも一の有機半導体物質を含む、請求項18に記載の積層型有機感光性光電子デバイス。
前記少なくとも一の正孔阻止層が、ナフタレン−テトラカルボン酸無水物(NTCDA)、p−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH2)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)および7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)から選択される少なくとも一の有機半導体物質を含む、請求項22に記載の方法。
【背景技術】
【0005】
背景
光電子デバイスは、電子的に電磁放射を生産するか、検出する、または周囲の電磁放射
線から電気を生産するための、材料の光学的、および電子的特性に依存する。
【0006】
感光性光電子デバイスは、電磁放射線を電気に変換する。光起電(PV)デバイスとも
呼ばれる太陽電池(Solar cells)は、電力を産生するために特に用いられる
感光性光電子デバイスの一タイプである。太陽光以外の光源から電気エネルギーを発生し
得るPVデバイスは、例えば、照明、暖房装置を提供するための、または、電子回路に電
力を供給するための電力消費機器、あるいは、計算機、ラジオ、コンピューターまたは遠
隔監視もしくは遠隔通信装置のようなデバイスを駆動するために用いることができる。こ
れらの発電用途にはまた、操作が太陽または他の光源からの直接照明が利用できない場合
に操作が続行できるように、または、特定の用途が求められるPV装置の出力のバランス
を保つために、バッテリーまたは他のエネルギー保存装置の充電もしばしば含まれる。「
負荷抵抗(resistive load)」との語は、本明細書に使用される場合、電
力消費または貯蔵回路(storing circuit)、デバイス、設備もしくはシ
ステムを意味する。
【0007】
感光性光電子デバイスの他のタイプは、光伝導性電池(photoconductor
cell)である。この機構において、信号検出回路は前記デバイスの抵抗を観測し、
光吸収によって変化を検出する。
【0008】
他の感光性光電子デバイスの他のタイプは、光検出器である。操作の際、光検出器は、
光検出器が電磁放射にさらされたときに発生する電流を測定し、また、応用的にバイアス
電圧を有していてもよい電流検出回路と接合して使用される。本願に記載されている検出
回路はバイアス電圧を光検出器に供給することができ、光検出器の電磁放射への電子応答
を測定することができる。
【0009】
これらの3つのクラスの感光性光電子デバイスは、以下に定義される整流の接合点が存
在するか否かによって特徴付けられ、また前記デバイスがバイアスまたはバイアス電圧と
しても知られている外部印加電圧で操作されるか否かによっても特徴付けられる。光伝導
性電池は、整流接合点を有しておらず、通常はバイアスを用いて操作される。PVデバイ
スは少なくも一つの整流接合点を有しており、バイアスなしで操作される。光検出器は、
少なくとも一つの整流接合点を有し、通常は、常ではないが、バイアスを用いて操作され
る。典型的には、光起電電池は、回路、デバイスまたは装置に電力を供給するが、検出回
路または検出回路からの情報出力を制御するための信号または電流を供給しない。対照的
に、光検出器または光伝導体は、検出回路または検出回路からの情報の出力を制御するた
めの信号または電流を供給するが、回路、デバイスまたは装置に電力を供給しない。
【0010】
伝統的に、感光性光電子デバイスは、たとえば、結晶性、多結晶性、および非晶質(ア
モルファス)のシリコン、ヒ化ガリウム、テルル化カドミウムなどの多くの無機半導体か
ら構成される。本明細書において、「半導体」との語は、電荷キャリアが熱または電磁励
起により誘導されたときに、電気を伝導することができる物質を示している。「光伝導」
との語は、一般的に、電磁放射エネルギーが吸収され、それによりキャリアが物質内で電
荷を伝導する(すなわち、輸送する)ことができるように電荷キャリアの励起エネルギー
に変換される工程に関連する。「光伝導体」および「光伝導体物質」との語は、本明細書
において、電荷キャリアを発生させる電磁放射を吸収する性質を目的として選択される半
導体物質を指す。
【0011】
PVデバイスは、入射するソーラーパワーを有用な電力に変換させる効率によって特徴
づけられる。結晶性または非晶質のシリコンを利用しているデバイスは、商用製品を占め
ていて、23%以上の効率を達成しているものもある。しかしながら、効率的な結晶性型
デバイス、特に、表面積の大きなものは、効率を悪化するような重大な欠陥のない、大き
な結晶を製造する点に本質的な問題があるため、製造するのが困難であり、かつ高価であ
る。一方、高効率の非晶質シリコンデバイスは未だ安定性の問題を抱えている。現在購入
可能な非晶質シリコン電池は4〜8%の間で安定した効率をもつ。より最近は、経済的な
製造コストの面で許容されうる光起電力変化効率を達成することのできる有機光起電電池
の使用に注目が集まっている。
【0012】
PVデバイスは、標準の照明条件(standard illumination c
ondition)(すなわち、1000W/m
2、AM1.5のスペクトル照明である
標準試験条件)下、最大の光電流×光起電力(photovoltage)を発生させる
ため、最大の発電をするように最適化される。標準照明条件下、そのような電池の電力変
換効率は以下の3つのパラメータによる:(1)アンペアにおいて、ゼロバイアス下での
電流、すなわち、短絡回路電流(short−circuit current)I
SC、
(2)ボルトにおいて、開路状態での光起電力、すなわち、開路電圧V
OC、ならびに(3
)曲線因子(fill factor)ff。
【0013】
PVデバイスは、抵抗(load)を横断して接続され、光を照射されたとき、光生成
電流を生成する。無限抵抗の下、光を照射されたとき、PVデバイスは最大限の電圧(m
aximum possible voltage)、V開路、またはV
OCを発生させる
。その電気接触を短くして光を照射されたとき、PVデバイスは最大限の電流、I短回路
、またはI
SCを発生させる。実際に電力を発生させるために使用されたとき、PVデバイ
スは有限の負荷抵抗(finite resistive load)に接続され、電力
出力は電流と電圧、I×Vの積によって得られる。PVデバイスによって発生した当該最
大全電力は、本質的に積、I
SC×V
OCを超えることはできない。抵抗値(load va
lue)は最大の電力抽出をするように最適化されたとき、電流および電圧は、それぞれ
I
maxとV
maxの値を有する。
【0014】
PVデバイスの性能の指数は曲線因子ff、であり、次のように定義されている:
【0015】
【数1】
【0016】
式中、ffは常に1未満であり、I
SCとV
OCは実用的に同時に得られることはない。そ
れにもかかわらず、ffが1に近づくにつれて、前記デバイスはより小さい直列(ser
ies)または内部抵抗となり、I
SC及びV
OCの積のより大きな割合を最適な条件下で抵
抗(load)へと運搬する。式中、P
incはデバイスの電力入射(power inc
ident)であり、デバイスの電力効率、η
p、は、
【0017】
【数2】
【0018】
によって計算されうる。
【0019】
適当なエネルギーの電磁放射が半導体有機材料(たとえば有機分子結晶(OMC)材料
、または高分子)上に入射したとき、光子は吸収されて励起した分子状態を生み出す。こ
れは、
【0020】
【数3】
【0021】
のようにシンボル的に示される。ここで、S
0とS
0*は、それぞれ基底および励起分子状
態を示す。このエネルギー吸収は、B−結合である最高占有分子軌道(HOMO)エネル
ギー順位における束縛状態(bound state)から、B
*結合である最低非占有
分子軌道(LUMO)エネルギー順位への電子の移動(promotion)、または同
等に、正孔をLUMOエネルギー順位からHOMOエネルギー順位へ移動させることに関
連している。有機薄膜光伝導体において、生成した分子状態は一般的に励起子、すなわち
準粒子(quasi−particle)として輸送される束縛状態における電子−正孔
の対であると考えられている。当該励起子は対再結合(geminate recomb
ination)(つまり、他の対からの正孔または電子と再結合することに対して、も
との電子および正孔が、お互いに再結合する過程を意味する)をする前に適当な寿命を有
することができる。光電流を生み出すため、電子−正孔の対は、典型的には、二つの異接
触の有機薄膜間のドナー−アクセプターの界面(interface)で分離されるよう
になる。もし、電荷が分離しない場合、それらは、入射光よりもより低いエネルギーの光
を放出することにより放射的に、または発熱することにより非放射的に、クエンチングと
しても知られている対再結合過程で再結合できる。これらの出力はどちらも、感光性光電
子デバイスにおいて望ましくない。
【0022】
電界または接触における不均等性は、励起子がドナー−アクセプターの界面で解離する
よりもクエンチする原因となり、結果的に電流への正味の貢献はない。したがって、光生
成励起子を接触点から遠ざけるのが好ましい。これは励起子の接合点の近傍領域への拡散
を限定するという効果を有し、関連した電界において、接合点近くの励起子の解離によっ
て遊離した電荷キャリアを分離する機会が増加するようになる。
【0023】
内部で発生した電界(この電界が実質的な体積を占める)を作るための通常の方法とし
ては、特に分子量子エネルギー状態の分配に関連して、適当に選択された導電性を有する
物質の二つの層を並置することである。これらの二つの物質の界面はPV接合点(PV
ヘテロ接合)と呼ばれる。伝統的な半導体理論において、PV接合点を形成する材料は一
般的にnまたはp型であることを意味する。ここで、n型は主なキャリアの型が電子であ
る。これは、比較的自由なエネルギー状態にある電子を多く有している材料であると見ら
れている。p型は、主なキャリアが正孔である。そのような材料は比較的自由なエネルギ
ー状態において多くの正孔を持っている。バックグラウンドのタイプの、すなわち、光生
成されたものではない、主なキャリアの濃度は、主に、欠陥または不純物による意図的で
ないドープに依存する。その型および不純物の濃度により、最高占有分子軌道(HOMO
)エネルギー準位と最低非占有分子軌道(LUMO)エネルギー準位の間のギャップ、い
わゆるHOMO−LUMOギャップ内に、フェルミエネルギー値または準位が決定される
。前記フェルミエネルギーは、占有確率が1/2であるエネルギーとされる分子量子エネ
ルギー状態の統計的な占有を特徴付ける。LUMOエネルギー準位に近いフェルミエネル
ギーは正孔が重要なキャリアであることを示す。HOMOエネルギー準位に近いフェルミ
エネルギーは電子が重要なキャリアであることを示す。したがって、フェルミエネルギー
は、伝統的な半導体を第一に特徴づける特性であり、原型的なPV接合点は伝統的にp−
n界面(interface)である。
【0024】
「整流」との語は、とりわけ、界面が非対称の導電性を有していること、すなわち、界
面が好ましくは一つの方向への電荷輸送を補助することを意味する。整流は通常、適当に
選択された材料間のヘテロ接合点で発生する内蔵された電場に関係している。
【0025】
本明細書に使用される場合、当業者に一般的に理解されるように、第1エネルギー準位
が真空エネルギー準位に近い場合、第1「最高占有分子軌道」(HOMO)または「最低
非占有分子軌道」(LUMO)エネルギー準位は、第2HOMOまたはLUMOエネルギ
ー準位「より大きい」または「より高い」。イオン化ポテンシャル(IP)が真空準位と
比較して負のエネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位はより
小さい絶対値(より負であるIP)を有しているIPに対応している。同様に、より高い
LUMOエネルギー準位はより小さい絶対値(より負であるEA)を有している電子親和
力(EA)に対応している。従来のエネルギー準位図(最上位に真空準位がある)におい
て、物質のLUMOエネルギー準位は同じ物質のHOMOエネルギー準位より高い。「よ
り高い」HOMOまたはLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMOまたはLUM
Oエネルギー準位より、そのような図の最上位に近いところにある。
【0026】
有機物質との関係において、「ドナー」および「アクセプター」との語は二つの接して
はいるが異なる有機物質のHOMOおよびLUMOエネルギー準位の相対的な位置を意味
する。これは、「ドナー」および「アクセプター」が無機n−およびp−型層をそれぞれ
形成するために使用されうるドーパントの型を指す無機系との関係におけるこれらの語の
使用と対比するものである。有機系の関係において、仮に、他の物質と接している一つの
物質のLUMOエネルギー準位が低ければ、その物質はアクセプターである。そうでなけ
れば、その物質はドナーである。外部バイアスが無い場合、ドナー−アクセプター接合点
において電子はアクセプター物質に移動し、正孔はドナー物質に移動することがエネルギ
ー的に好ましい。
【0027】
有機半導体において重要な性質はキャリア移動度である。移動度は、電荷キャリアが電
場に応じて伝導性物質を通って移動する容易さを評価する。有機感光性デバイスにおいて
、高い電子移動度の結果、電子をより優先的に伝導する物質を含む層は電子輸送層、また
はELTと称される。高い正孔移動度により正孔をより優先的に伝導する物質を含む層は
正孔輸送層、またはHTLと称される。好適には、必須ではないが、アクセプター物質は
ETLであり、ドナー物質はHTLである。
【0028】
従来の無機半導体PV電池はp−n接合を採用し、内部場(internal fie
ld)を構築する。Tang,Appl.Phys Lett. 48,183(198
6)によって報告されているように、初期の有機薄層電池は従来の無機PV電池で用いら
れているものと類似したヘテロ接合を含む。しかしながら、p−n型接合の構築に加えて
、ヘテロ接合のエネルギー準位の補正(offset)はまた、重要である。有機D−A
ヘテロ接合におけるエネルギー準位の補正は、有機物質において光生成工程の基本的な性
質のため有機PV電池の操作に重要であると考えられている。有機物質の光学的励起にお
いて、局在化(localized)Frenkelまたは電荷移動励起子が生成される
。電気検出または電流発生のため、束縛励起子はそれらの構成電子および正孔に分離され
る。そのような工程は内部の電場で誘起され、有機デバイス(F〜10
6V/cm)に通
常見出される電場での効率は低い。有機物質においてドナー−アクセプター(D−A)接
合で起こる励起子分離の効率は最も高い。そのような接合において、低いイオン化ポテン
シャルを有するドナー物質は、高い電子親和力を有するアクセプター物質を伴ったヘテロ
接合を形成する。ドナーおよびアクセプター物質のエネルギー準位の配列次第で、励起子
の解離はそのような接合においてエネルギー的に好ましくなり、アクセプター物質におけ
る自由電子ポラロン(polaron)およびドナー物質内における自由正孔ポラロンに
導入される。
【0029】
伝統的なシリコンを用いたデバイスと比べたとき、有機PV電池は多くの潜在的な利点
を有している。有機PV電池は軽量であり、物質の利用において経済的であり、柔らかい
プラスチック箔のような低価格の基板に蒸着することができる。しかしながら、有機PV
デバイスは通常、相対的に低い量子収率(電気変換効率に対する電磁放射)を有しており
、1%またはそれ以下である。これは、部分的に、本質的な光伝導過程の二次的な性質の
ためであると考えられている。つまり、キャリア発生は励起子生成、拡散およびイオン化
または収集を必要とする。これらの工程それぞれに関連した効率ηがある。下付き文字は
以下のように使用される:Pは電力効率を表し、EXTは外部量子効率を表し、Aは光子
吸収を表し、EDは拡散を表し、CCは収集を表し、およびINTは内部量子効率を表す
。この表記を用いると:
【0030】
【数4】
【0031】
である。
【0032】
励起子の拡散距離(L
D)は、通常、光吸収長(〜500Å)より小さく(L
D〜50Å
)、複数または高保持される界面を伴う電池または低光吸収効率を伴った薄い電池での厚
さの使用とそれによる抵抗との間での相殺(trade off)を必要とする。
【0033】
電力変換効率は、
【0034】
【数5】
【0035】
として表わすことができ、ここで、V
ocは開路電圧であり、FFは曲線因子であり、J
sc
短絡電流であり、P
0は電力屈折力(input optical power)である
。η
pを向上させる一つの方法は、多くの有機PV電池における典型的な吸収光子エネル
ギーのせいぜい3〜4倍未満であるV
ocの向上によるものである。暗電流およびV
ocの間
の関係は:
【0036】
【数6】
【0037】
この際、Jは総電流であり、J
sは逆暗飽和電流であり、nは理想係数(ideali
ty factor)であり、R
sは直列抵抗であり、R
pは並列抵抗であり、Vはバイア
ス電圧であり、J
Phは光電流である(Rand et al.,Phys.Rev.B,
vol.75,115327(2007));
から推測することができる。J=0とすると、
【0038】
【数7】
【0039】
J
ph/J
s>>1のとき、V
ocはIn(J
ph/J
s)に比例し、これは、大きな暗電流、
J
s、によりV
ocが減少することを示唆する。
【0040】
本明細書で述べたように、PV電池中の高い暗電流により、電力変換効率の顕著な減少
となる。有機PV電池における暗電流は、数種の発生源に由来する。順方向バイアスでは
、暗電流は(1)ドナー/アクセプター界面での電子−正孔再結合による発生電流/再結
合電流I
gr、(2)外部源からではなく、電池の活性ドナー−アクセプター領域からアノ
ードへ移動する電子による電子漏れ電流I
e、および(3)カソードへと移動する電池の
ドナーアクセプター領域において形成される正孔による正孔漏れ電流I
hから構成される
。
図2は、暗電流の種々の構成成分および関連するエネルギー準位を示す。これらの電流
構成成分の大きさは、エネルギー準位に強く依存する。アクセプターの最低非占有分子軌
道(LUMO)およびドナーの最高非占有分子軌道(HOMO)の差(ΔEg)である、
ドナー−アクセプターの界面エネルギーギャップの減少に伴い、I
grは増加する。ドナー
およびアクセプターの最低非占有分子軌道(LUMO)エネルギーの差である、ΔE
Lの
減少に伴い、I
eは増加する。これらの3つの電流のいずれもが、ドナーおよびアクセプ
ター物質のエネルギーレベルに依存して支配的な暗電流となりうる。
【0041】
例えば、スズフタロシアニン(SnPC)/C
60 PV電池において、ΔE
Lは0.2
eVである。アクセプターからドナーへと移動する電子に対するエネルギー障壁は低く、
これにより暗所での(at dark)支配的な電子漏れ電流I
eへと導かれる。銅フタ
ロシアニン(CuPc)/C
60電池において、ΔE
Lは0.8eVであり、これにより発
生/再結合電流I
grが支配的な暗電流源であるようなごくわずかな電子漏れ電流I
eとな
る。最も一般的に使用されるドナー/アクセプター対における比較的大きなΔE
Hにより
、正孔漏れ電流I
hは通常は小さい。
【0042】
低分子有機材料の中で、スズ(II)フタロシアニン(SnPc)はλ=1000nm
はカットし、λ=600nmから900nmの波長で顕著な吸収を示す。実際、全太陽光
子幅の約50%が、λ=600nmから100nmの波長での赤および近赤外(NIR)
スペクトル中に存在する。しかしながら、SnPcのような長波長吸収物質により、一般
的には低いVocである電池となる。短波長(λ<700nm)感受性光起電電池の吸収
スペクトル範囲を拡大するために、50Å厚さのSnPcの不連続層をCuPc/C
60ヘ
テロ接合点の間に含むことが行われてきた(Rand et al.,Appl.Phy
s.Lett.,87,233508(2005))。あるいは、長波長感受性を達成す
るために、CuPcおよびC
60の間の不連続島(discontinuous isla
nds)中にSnPcを成長させることが行われてきた(Yang et al.,Ap
pl.Phys.Lett.92,053310(2008))。アクセプター物質とし
てC
70を用いたSnPc多層セルもまた報告されてきた(Inoue et al.,J
.Cryst.Growth,298,782−786(2007)。
【0043】
電子阻止層(electron blocking layer)としても機能する励
起子阻止層がポリマーバルクへテロ接合型(Bulk Heterojunction(
BHJ)PV電池用に開発されてきた(Hains et al.,Appl.Phys
.Lett,vol.92,023504(2008))。ポリマーBHJ PV電池に
おいて、ドナーおよびアクセプター物質の混合高分子は、活性領域として用いられる。こ
れらの混合物は、一の電極から他の電極へと広がるドナーまたはアクセプター物質領域を
有することができる。したがって、一タイプの高分子分子によって電極間の電子または正
孔導電パスが存在しうる。
【0044】
高分子BHJ PV電池の他に、仮にフィルムが2つの電極間で単一物質(ドナーまた
はアクセプター)パスを有していないとしても、ΔE
LまたはΔE
Hが小さいとき、ドナ
ー/アクセプターへテロ接合を介して平面PVデバイスを含む他のアーキテクチャもまた
顕著な電子または正孔漏れ電流を示す。
【0045】
本明細書は、電子を阻止する電子阻止層および/または正孔を阻止する正孔阻止層を用
いることによって感光性光電子デバイスの電力変換効率を上昇させることに関連する。本
明細書はさらにPV電池の暗電流成分および、これらが平面フィルムを含むPV電池のエ
ネルギー準位アライメント(energy level alignment)に依存す
ることに関する。電子阻止および/または正孔阻止層を用いることによって感光性光電子
デバイスの電力変換効率を上昇させる方法も開示する。
【0046】
開示の要約
本開示は、積層関係にあるアノードおよびカソードを含む2つの電極;少なくとも一の
ドナー物質および少なくとも一のアクセプター物質、この際、前記ドナー物質およびアク
セプター物質は2つの電極間で光活性領域(photo−active region)
を形成する;2つの電極間に配置された少なくとも一の電子阻止層または正孔阻止層、こ
の際、電子阻止層および正孔阻止層は有機半導体、無機半導体、高分子、金属酸化物、ま
たはこれらの組み合わせから選択される少なくとも一の物質を含む:を含む、有機感光性
光電子デバイスに関連する。
【0047】
本明細書で用いられる電子阻止層の非限定的例としては、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(III)(Alq3)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4’−ジアミン(TPD)、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(NPD)、サブフタロシアニン(SubPc)、ペンタセン、スクアレイン、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、クロロア
ルミニウムフタロシアニン(ClAlPc)、トリス(2−フェニルピリジン)
イリジウム(Ir(ppy)
3)から選択されるような少なくとも一の有機半導体物質が挙げられる。
【0048】
電子阻止層として用いられうる少なくとも一の金属酸化物の非限定的例としては、Cu
、Al、Sn、Ni、W、Ti、Mg、In、Mo、Znの酸化物およびNiO、MoO
3、CuAlO
2のようなこれらの組み合わせが挙げられる。電子阻止層として用いること
ができる他の無機物質としては、ダイアモンドおよびカーボンナノチューブのような炭素
同素体ならびにMgTeが挙げられる。
【0049】
電子阻止層として用いることができる少なくとも一の無機半導体物質の非限定的例とし
ては、Si、II−VI、およびIII−Vの半導体物質が挙げられる。
【0050】
少なくとも一の正孔阻止層の非限定的例は、ナフタレン−テトラカルボン酸無水物(N
TCDA)、p−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH2)、3,4,9,10
−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)および7,7,8,8,−テトラシ
アノキノジメタン(TCNQ)から選択される少なくとも一の有機半導体物質を含む。
【0051】
正孔阻止層は、また無機物質を含むことができ、その非限定的例としては、TiO
2、
GaN、ZnS、ZnO、ZnSe、SrTiO
3、KaTiO
3、BaTiO
3、MnT
iO
3、PbO、WO
3、SnO
2が挙げられる。
【0052】
本開示はまた、積層関係にあるアノードおよびカソードを含む2つの電極;CuPc、
SnPc、およびスクアレインから選択される少なくとも一の物質のような少なくとも一
のドナー物質、およびC
60および/またはPTCBIのような少なくとも一のアクセプタ
ー物質、この際、前記ドナー物質およびアクセプター物質は2つの電極間で光活性領域を
形成する;2つの電極間に配置された少なくとも一の電子阻止EBLまたは正孔阻止EB
L:を含む、有機感光性光電子デバイスに関連する。
【0053】
一実施形態において、少なくとも一の電子阻止EBLが、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(III)(Alq3)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4’−ジアミン(TPD)、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(NPD)、サブフタロシアニン(SubPc)、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、クロロア
ルミニウムフタロシアニン(ClAlPc)、トリス(2−フェニルピリジン)
イリジウム(Ir(ppy)
3)およびMnO
3から選択される少なくとも一の物質を含み、少なくとも一の正孔阻止EBLが、ナフタレン−テトラカルボン酸無水物(NTCDA)、p−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH2)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、および7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)から選択される少なくとも一の物質を含む、有機感光性光電子デバイスが開示される。
【0054】
開示された阻止層の配置について、電子阻止EBLはドナー領域に隣接することができ
、正孔阻止EBLはアクセプター領域に隣接することができる。電子阻止EBLおよび正
孔阻止EBLの双方を含むデバイスを組み立てることが可能であることも理解される。
【0055】
一実施形態において、可視スペクトルにおいて分光感度を有するために第一の光伝導性
有機半導体物質および第二の光伝導性有機半導体が選択される。第一の光伝導性有機半導
体物質および第二の光伝導性有機半導体物質は少なくとも部分的には混合されていてもよ
いと理解される。
【0056】
一実施形態において、ドナー領域がCuPc、およびSnPcから選択される少なくと
も一の物質を含み、アクセプター領域がC
60を含み、電子阻止EBLがM
OO
3を含む。
【0057】
本明細書で開示されているデバイスは、有機光検出器または有機太陽電池となりうる。
【0058】
本開示は、さらに、複数の感光性光電子サブセルを含み、この際、少なくとも一のサブ
セルが、積層関係にあるアノードおよびカソードを含む2つの電極;CuPc、SnPc
、およびスクアレインから選択される少なくとも一の物質のような、少なくとも一のドナ
ー物質ならびにC
60および/またはPTCBIのような少なくとも一のアクセプター物質
、この際、ドナー物質およびアクセプター物質は2つの電極間で光活性領域を形成する;
2つの電極間に配置された少なくとも一の電子阻止EBLまたは正孔阻止EBL:を含む
積層型有機感光性光電子デバイスに関連する。
【0059】
上述のように、本明細書で開示されている積層型有機感光性デバイスにおいて、少なくとも一の電子阻止EBLが、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(III)(Alq3)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4’−ジアミン(TPD)、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(NPD)、サブフタロシアニン(SubPc)、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、クロロア
ルミニウムフタロシアニン(ClAlPc)、トリス(2−フェニルピリジン)
イリジウム(Ir(ppy)
3)およびMoO
3から選択される少なくとも一の物質を含み、少なくとも一の正孔阻止EBLが、ナフタレン−テトラカルボン酸無水物(NTCDA)、p−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH2)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)および7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)から選択される少なくとも一の物質を含む。
【0060】
本開示はさらに、暗電流を抑制し、デバイスの開路電圧を増加させるために、本明細書
で開示されている電子阻止EBLおよび正孔阻止EBLの少なくとも一を組み込むことを
含む、感光性光電子デバイスの電力変換効率を増加させる方法に関連する。
【0061】
上述の主題とは別に、本開示は後に説明するような多数の他の例示的特徴を含む。前述
のおよびこれからの開示はともに単に例示に過ぎないことが理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
示されるように、本明細書で開示される阻止層は、少なくとも一の有機または無機物質
を含む。どちらの場合においても、阻止層の要件は同じである。用いられる用語によって
多少の相違が生じる場合がある。例えば、有機物質のエネルギー準位は、HOMOおよび
LUMOの用語で通常は記述されるが、無機物質においてはエネルギー準位は価電子帯(
HOMO準位に対応)および伝導帯(LUMO準位に対応)の用語で通常記述される。
【0064】
本開示は、電子阻止または正孔阻止層のような少なくとも一の阻止層を含む感光性光電
子デバイスに関連する。電子阻止または正孔阻止層はまた励起子を阻止し、励起子阻止層
(EBL)として作用すると理解される。本明細書で用いられる場合、「電子阻止」また
は「正孔阻止」という用語は、単独でまたは「EBL」と組み合わせて相互に用いられる
。
【0065】
一実施形態において、本開示は、積層関係にあるアノードおよびカソードを含む2つの
電極;2つの電極間のドナー領域、第一の光伝導性有機半導体物質から形成される該ドナ
ー領域;2つの電極間でドナー領域に隣接するアクセプター領域、第二の光伝導性有機半
導体物質から形成される該アクセプター領域;ならびに2つの電極間でドナー領域および
アクセプター領域の少なくとも一に隣接している電子阻止EBLおよび正孔阻止HBLの
少なくとも一:を有する有機感光性光電子デバイスに関する。PV電池構造において電子
阻止EBLおよび/または正孔阻止EBLを挿入することによって、電池の暗電流が抑制
され、同時にV
ocの増加につながる。PV電池の電力変換効率はこのようにして向上する
。
【0066】
本開示は一般的にはヘテロ接合PV電池における電子阻止EBLおよび/または正孔阻
止EBLの使用に関すると理解されるべきである。少なくとも一実施形態において、PV
電池は平面ヘテロ接合電池である。他の実施形態において、PV電池は平面−混合ヘテロ
接合電池である。本開示の他の実施形態において、PV電池は非平面である。例えば、光
活性領域は少なくとも一のヘテロ接合、平面ヘテロ接合、バルクヘテロ接合、ナノ結晶−
バルク接合、およびハイブリッド面−混合ヘテロ接合の少なくとも一を形成しうる。
【0067】
ここで開示されるデバイスは、アノードおよびカソードを含む2つの電極を有する。電
極または端子(contacts)は、通常「金属」または「金属置換体」である。ここ
で「金属」の語は、単体の金属で構成される物質(たとえば、Al)および二以上の元素
単体金属で構成される物質である金属合金をも包含して用いられる。ここで、「金属置換
体」の語は、通常の定義の金属ではなく、ある適切な適用において望まれる金属様の特性
を有する物質を意味する。電極および電荷輸送層に対して通常用いられる金属置換体とし
ては、ドープされたバンドギャップが広い半導体、たとえば、インジウムスズ酸化物(I
TO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)、および亜鉛インジウムスズ酸化物
(ZITO)などの透明導電性酸化物が挙げられる。特に、ITOは、約3.2eVの光
学バンドキャップを有する、ドープされた縮退n+半導体(a highly dope
d degenerate n+ semiconductor)であり、約3900Å
よりも大きな波長で透過することができる。
【0068】
他の好適な金属置換体は、透明導電性ポリマーポリアニリン(PANI)およびその化
学的関連物質(chemical relative)である。金属置換体は、さらに、
広範囲の非金属物質から選択されうる。ここで、「非金属」という語は、物質が化学的非
結合体(chemically uncombined form)中に金属を有しない
限り、広範囲の物質を包含することを意味する。単独で、または合金として1以上の他の
金属と組み合わされて、金属が化学的非結合体で存在する場合、金属は、その金属形態(
metallic form)中または「遊離金属(free metal)」として存
在することを意味する。したがって、本開示の金属置換体電極は、しばしば、「無金属(
metal free)」を意味し、このとき、「無金属」との語は、化学的非結合体に
おいて金属フリーの物質も表現的に含まれる。遊離金属は、通常、金属格子内の大量の価
電子から得られる金属結合の形態として考えられうる金属結合の形態を有する。一方、金
属置換体は、様々な塩基上の「非金属性」である金属成分を含みうる。それらは純粋な遊
離金属でも遊離金属の合金でもない。金属が金属形態にあるとき、その電子伝導バンドは
、他の金属特性の中でも、光学的放射の高反射性を与えるとともに、高い電気伝導性を与
える。
【0069】
ここで、「カソード」という語は、以下の様に用いられる。自然放射下(under
ambient irradiation)、負荷抵抗および外部印加電圧がないもの(
例えば、太陽電池)と接続される非積層PVデバイス(non−stacked PV
device)または積層PVデバイスの一ユニットにおいて、電子は隣接した光伝導物
質からカソードに移動する。同様に、「アノード」という語は、本明細書では、照明下(
under illumination)の太陽電池において、電子の移動と反対の形式
で等価である、正孔が隣接した光伝導性物質からアノードに移動するというように用いら
れる。なお、本明細書において、アノードおよびカソードは、電極または電荷輸送領域で
あることを意味する。
【0070】
少なくとも一の実施形態において、有機感光性光電子デバイスは、光を吸収して励起状
態または「励起子」を形成し、続いて、電子および正孔に解離する、少なくとも一の光活
性領域(photoactive region)を含む。励起子の解離は、通常、光活
性領域を含むアクセプター層およびドナー層の並置により形成されるヘテロ接合を引き起
こす。
【0071】
図2は、二重層ドナー/アクセプターPV電池のエネルギー準位図を示す。
【0072】
可視スペクトルにおいて分光感度を有するように第一の光伝導性有機半導体物質および
第二の光伝導性有機半導体物質は選択される。
【0073】
本開示による光伝導性有機半導体物質は、例えば、C
60、4,9,10−ぺリレンテト
ラカルボン酸ビス−ベンズイミダゾール(PTCBI)、スクアレイン、銅フタロシアニ
ン(CuPc)、スズフタロシアニン(SnPc)、またはホウ素サブフタロシアニン(
SubPc)を含む。当業者であれば、本開示に適した他の光伝導性有機半導体物質を把
握するであろう。ある実施形態において、第一の光伝導性有機半導体物質および第二の光
伝導性有機半導体物質は少なくとも部分的に混合され、混合、バルク、ナノ結晶−バルク
もしくは平面−混合ハイブリッド、またはバルクへテロ接合を形成する。
【0074】
PV電池を照明下で操作すると、カソード側で光によって生成した電子およびアノード
側で光によって生成した正孔を集めることによって、光電流が生成する。誘発された電位
降下および電場により暗電流は反対方向に流れる。電子および正孔はそれぞれカソードお
よびアノードへ流れ、著しいエネルギー障壁に遭遇しなければ反対の電極へと移行するこ
とができる。これらはまた、再結合電流を形成するために界面で再結合することもできる
。活性領域内で熱によって生成した電子および正孔は、また暗電流に寄与することもある
。この最後の成分は太陽電池に逆バイアスをかけると支配的になるが、順バイアス条件下
ではごくわずかである。
【0075】
上述したように、作動しているPV電池の暗電流は、主として以下に起因する:(1)
ドナー/アクセプター界面での電子−正孔再結合による生成/再結合電流I
gr、(2)ド
ナー/アクセプター界面を通じてカソードからアノードへと流れる電子による電子漏れ電
流I
e、および(3)ドナー/アクセプター界面を通じてアノードからカソードへと流れ
る正孔による正孔漏れ電流I
h。作動において太陽電池は外部印加バイアスを持たない。
これらの電流成分の大きさはエネルギー準位に依存する。I
grは界面ギャップΔE
gが減
少するにつれて増加する。I
eは、ドナーおよびアクセプターの最低非占有分子軌道(L
UMO)エネルギーの差であるΔE
Lが減少するにつれて増加する。I
hは、ドナーおよ
びアクセプターの最高占有分子軌道(HOMO)エネルギーの差である、ΔE
Hが減少す
るにつれて増加する。これら3つの電流成分のいずれも、ドナーおよびアクセプター物質
のエネルギー準位に依存する支配的暗電流となりうる。
【0076】
電子阻止EBL
本開示の一実施形態による電子阻止EBLは、有機または無機物質を含むことができる
。少なくとも一実施形態において、電子阻止EBLはアノードに隣接する。他の実施形態
において、PV電池においてポリマー分子を用いることができる。例えば、一実施形態に
おいて、アノード側の電子阻止EBLはPV電池および両電極に含まれるポリマー分子の
接触を阻害する。したがって、用いる場合には、電子伝導パスを減じないようにPV電池
に含まれるポリマーが両電極と接触しないようにする。本開示のある実施形態において、
電池は低い暗電流および高いV
OCを有する。
【0077】
一実施形態において、電子活性領域は、混合ヘテロ接合、バルクヘテロ接合、ナノ結晶
−バルクヘテロ接合、および平面−混合ハイブリッドヘテロ接合の少なくとも一を形成す
る。
【0078】
電子漏れ電流I
eがPV電池において優勢である場合、電池暗電流を抑制し、V
OCを増
加させるために電子阻止層が用いられる。
図3(a)は、電子阻止EBLを含む構造のエ
ネルギー準位図を示す。正孔収集効率に影響を与えることなく電子漏れ電流I
eを効率的
に抑制するために、電子阻止EBLは次の基準を満たす必要がある:1)電子阻止EBL
は、ドナー物質よりも高い(例えば、少なくとも0.2eV高い)LUMOエネルギー準
位を有する;2)電子阻止EBLが、電子阻止EBL/ドナー界面で正孔収集に対する大
きなエネルギー障壁をもたらさない;そして3)電子阻止EBLが、ドナーおよびアクセ
プター間での生成/再結合電流よりも小さい生成/再結合電流によって示されるような、
ドナー物質との界面で大きな界面ギャップを維持し、一方、電子阻止EBL/ドナー界面
での生成/再結合電流はデバイス暗電流に顕著に寄与しうる。
【0079】
例えば、SnPcは真空準位下で3.8eVのLUMOエネルギー、および5.2eVのHOMOエネルギーを有する。SnPC/C
60における適切な電子阻止EBL物質としては、限定されるものではないが、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(III)(Alq3)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4’−ジアミン(TPD)、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(NPD)、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、サブフタロシアニン(SubPc)、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、クロロア
ルミニウムフタロシアニン(ClAlPc)、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)
3)、およびMoO
3が挙げられる。これらの物質のエネルギー準位を
図3(b)に示す。
【0080】
さらに、例えば、2,4−ビス[4−(N,N−ジイソブチルアミノ)−2,6−ジヒ
ドロキシフェニル](スクアレイン)は、3.7eVのLUMOエネルギー、および5.
4eVのHOMOエネルギーを有する。
図3(b)に列挙された物質は、スクアレイン/
C
60電池における電子阻止EBLも含みうる。
【0081】
本開示のある実施形態において、電子阻止EBLの厚さは、約10Å〜約1000Å、
例えば、約20Å〜約500Åまたは約30Å〜約100Åの範囲である。ある実施形態
においては、電子阻止EBLの厚さは、10Å〜約100Åにまで、10Åから増大する
範囲となる。
【0082】
正孔阻止EBL
本開示の少なくとも一実施形態において、正孔阻止EBLはアクセプター領域に隣接し
ている。通常用いられるドナー/アクセプター対における比較的大きなΔE
Hにより、通
常正孔漏れ電流I
hは小さい。しかしながら、正孔漏れ電流I
hがPV電池において優勢で
ある場合、電池暗電流を減らし、V
ocを増加させるために正孔阻止EBLを用いることが
できる。本開示にしたがった正孔阻止EBLを含む構造のエネルギー準位図を
図4(a)
に示す。電子収集過程に影響を与えることなく、正孔漏れ電流I
hを効果的に抑制するた
めに正孔阻止EBLは次の基準を満たす必要がある:1)正孔阻止EBLは、アクセプタ
ー物質よりも低いHOMOエネルギー準位を有する;2)正孔阻止EBLが、アクセプタ
ー/正孔阻止EBL界面で電子収集に対する大きなエネルギー障壁をもたらさない、例え
ば、阻止層のLUMOがアクセプターのLUMOと等しいまたはLUMOより低い;そし
て3)正孔阻止EBLが、ドナーおよびアクセプター間での生成/再結合電流よりも小さ
い生成/再結合電流によって示されるような、アクセプター物質との界面で大きな界面ギ
ャップを維持し、一方、アクセプター/正孔阻止EBL界面での生成/再結合電流はデバ
イス暗電流に顕著に寄与しうる。
【0083】
本開示によるアクセプター物質としては、限定されるものではないが、C
60および4,
9,10−ぺリレンテトラカルボン酸ビス−ベンズイミダゾール(PTCBI)が挙げら
れる。C
60およびPTCBIの双方とも、4.0eVのLUMOエネルギーおよび6.2
eVのHOMOエネルギーを有する。
【0084】
本開示にしたがったC
60またはPTCBI電池において、正孔阻止EBLに適切な物質
としては、限定されるものではないが、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−l,1
0−フェナントロリン(バトクプロインまたはBCP)、ナフタレン−テトラカルボン酸
無水物(NTCDA)、p−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH2)、3,4
,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、および7,7,8,8
,−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)が挙げられる(
図4(b))。例えば、カソ
ード析出(deposition)が電子輸送に対して欠陥レベルをもたらすと、正孔阻
止EBLのLUMOエネルギー準位は高くなる場合がある。本開示による正孔阻止EBL
はまたアクセプター領域およびカソード間の励起子阻止層として機能する。
【0085】
本開示のある実施形態において、正孔阻止EBLの厚さは、約10Å〜約1000Å、
例えば、約20Å〜約500Åまたは約30Å〜約100Åの範囲である。ある実施形態
においては、正孔阻止EBLの厚さは、10Å〜約150Åにまで、10Åから増大する
範囲となる。
【0086】
本開示のデバイスは、顕著な電力変換効率向上をもたらしうる。例えば、ITO/スズ
(II)フタロシアニン(SnPc)/C
60/バトクプロイン(BCP)/Al電池は、
広いスペクトル領域において吸収係数が高いため、J
scは高いが、開路電圧が低いため電
力変換効率は低い。SnPC/C
60電池で電子阻止EBLを用いると、V
ocが増加する。
本開示のある実施形態において、電池の暗電流は低く、Vocが高くなる。ある実施形態
においては、電子阻止EBLを用いることによって、Vocは約2倍大きくなる。他の実
施形態において、電子阻止EBLを用いることによって、Vocは2倍より大きくなる。
【0087】
積層型有機感光性光電子デバイスがさらに本明細書で考慮される。本開示による積層型
デバイスは、複数の感光性光電子サブセルを含み、この際、少なくとも一のサブセルが、
積層関係にあるアノードおよびカソードを含む2つの電極;2つの電極間のドナー領域、
第一の光伝導性有機半導体物質から形成される該ドナー領域;2つの電極間でドナー領域
に隣接するアクセプター領域、第二の光伝導性有機半導体物質から形成される該アクセプ
ター領域;ならびに2つの電極間でドナー領域およびアクセプター領域の少なくとも一に
隣接している電子阻止層および正孔阻止層の少なくとも一:を有する2つの電極を含む。
かような積層型デバイスは高い内部および外部量子効率を達成するために本開示にしたが
って構築されうる。
【0088】
本明細書においてサブセルという用語を使う場合、本開示による電子阻止EBLおよび
正孔阻止EBLの少なくとも一を含む有機感光性光電子構造を指す。感光性光電子デバイ
スとしてサブセルが個々に用いられる場合、それは典型的には、電極の完全な一セット、
すなわち、陽極および陰極を含む。本明細書で開示されているように、積層型形態におい
ては、隣接したサブセルは共通の、例えば、共通電極、電荷移動領域または電荷再結合ゾ
ーンを利用することができる。他の場合、隣接したサブセルは共通の電極または電荷移動
領域を共有しない。サブセルという用語は、各サブユニットが各自の明確な電極を有する
か、または他の隣接するサブユニットと電極または電荷移動領域を共有するかどうかにか
かわらず、サブユニット構造を包含するものである。本明細書で、「電池」、「サブセル
」、「ユニット」、「サブユニット」「セクション」および「サブセクション」という用
語は、光伝導性領域または領域のセット、および隣接する電極または電荷移動領域を指す
ために相互に用いられる。本明細書で用いられる場合、「積層」、「積層された」、「マ
ルチセクション(multisection)」および「マルチセル」は、一以上の電極
または電荷移動領域によって分離される光伝導性物質の複数の領域を有する光電子デバイ
スを指す。
【0089】
太陽電池の積層サブセルは、サブセルを分離する電極に対して外部電気接続ができるよ
うになる真空蒸着技術を用いて組み立てることができるので、デバイス中の各サブセルは
、PV電池が生み出す電力および/または電位が最大化されるべきかどうかによって、並
列または直列で電気的に接続することができる。サブセルを直列で接続した場合よりも並
列に電気的に構成すると実質的により高い曲線因子が得られるので、本開示の積層型PV
電池実施形態に対して達成される向上した外部量子効率は、積層PV電池のサブセルが並
列で電気的に接続することができるという事実にも寄与しうる。
【0090】
より高い電圧デバイスが製造されるようにPV電池が電気的に直列に接続したサブセル
から構成される場合、非効率性を避けるために各サブセルがおおよそ同じ電流となるよう
に積層型PV電池を組み立てることができる。例えば、入射放射線がただ一つの方向に通
過する場合、積層型サブセルは、入射放射線に最も直に曝される最外層サブセルが最も薄
くなるように厚さが増加していく。あるいは、サブセルが反射面上に配置される場合、元
の、および反射した方向から各サブセルに許容される全複合放射を明らかにするために各
サブセルの厚さは調整されうる。
【0091】
さらに、多数の異なる電圧を生み出すことができる直流電力供給を有することが望まし
い。この適用において、介在する電極に外部接続すると非常に有用性がある。したがって
、サブセル全体のセットにわたって発生する最大電圧を与えることができるのに加えて、
選択されたサブセルのサブセットからの選択された電圧を選択することによって単一の電
力源から複数の電圧を提供するために本開示の積層型PV電池の例示的実施形態を用いる
こともできる。
【0092】
本開示の代表的実施形態は、透明電荷移動領域をも含む。本明細書で述べられるように
、電荷移動領域はしばしば、必ずしもではないが、無機的であり、光伝導的に活性ではな
いので通常選択されるという事実によって、電荷移動層はアクセプターおよびドナー領域
/物質から区別される。
【0093】
本明細書で開示される有機感光性光電子デバイスは、多数の光起電性用途において有用
である。少なくとも一の実施形態において、デバイスは有機光検出器である。少なくとも
一の実施形態において、デバイスは有機太陽電池である。
【0094】
実施例
本開示は、例示的実施形態および実施例の下記詳細な説明を参照することによってより
容易に理解されるであろう。本明細書において開示される記述および例を考慮して他の実
施形態が当業者に明白であろうことが理解される。
【0095】
実施例1
ガラス基板上にプレコートされた厚さ1500ÅのITO層(シート抵抗15Ω/cm
2)上にデバイスを準備した。溶媒除去されたITO表面を高真空チャンバー(基準圧<
4×10
7トール)中で積む(loading)直前に紫外線/O
3-層で5分間処理し、
続いて有機層および厚さ100ÅのAlカソードを熱蒸発により蒸着させた。精製された
有機層の蒸着速度は、〜1Å/sである(Laudise et al.,J Crys
t.Growth,187,449(1998))。デバイスの活性領域を定めるため、
1mm直径の穴を有するシャドーマスクを用いてAlカソードを蒸着させた。電流密度対
電圧(J−V)特性は、暗闇で、およびAM1.5G太陽照明下で測定した。照明強度お
よび量子効率の測定はSi検出器で調整されたNRELを用いて、標準的方法により行っ
た(ASTM Standards E 1021,E948,およびE973,199
8)。
【0096】
図1は、ITO/SnPc(100Å)/C
60(400Å)/バトクプロイン(BCP
、100Å)/Al PV電池、ITO/CuPc(200Å)/C
60(400Å)/B
CP(100Å)/Al PVコントロールの電流密度−電圧(J−V)特性および暗J
−Vフィッティング結果を示す。CuPc電池と比較して、SnPc系デバイスはより高
い暗電流を有するが、これは、2つの構造間のエネルギー準位の相違の観点から理解する
ことができる。SnPcおよびCuPc双方の最高占有分子軌道(HOMO)エネルギー
は真空準位下の5.2eVである(Kahn et al.,J.Polymer Sc
L B,41,2529−2548(2003);Rand et al.,Appl.
Phys.Lett,87,233508(2005))。逆光電子分光法(IPES)
により測定されたCuPcの最低占有分子軌道(LUMO)エネルギーは3.2eVであ
る。SnPcの場合、LUMOエネルギーは光学バンドギャップから3.8eVであると
推定される。C
60のLUMOエネルギーは4.0eVである(Shirley et a
l.,Phys.Rev.Lett.,71(1),133(1993)ので、C
60アク
セプターからCuPc/C
60セルのアノードへの電子移送に対しては0.8eVの障壁と
なるのに対し、SnPc/C60デバイスでは0.2eVに過ぎない。結果として、Cu
Pc/C
60セルでの暗電流は主にCuPc/C
60ヘテロ接合での生成および再結合に起因
するが、SnPc/C
60セルでは、カソードからアノードへの電子漏れ電流が支配的とな
る。
【0097】
方程式(1)から、
図1の暗J−V特性への適合は、SnPc−系セルでは、n=1.
5およびJ
s=5.1×10
-2mA/cm
2となり、ドナーとしてCuPcを用いたセルで
は、n=2.0およびJ
s=6.3×10
-4mA/cm
2となる。一定のJ
Ph(V)=Js
c(短絡電流)とすると、Vocは方程式(2)を用いて計算することができる。1サン
照明下で、小さな並列抵抗条件を無視すると、SnPcに対してVoc=0.19Vであ
り、CuPcセルでは0.46Vである。パラメータおよびJ
scを適合させた暗電流から
計算されたVocはそれぞれ0.16±0.01Vおよび0.46±0.01Vの計算さ
れた値と一致する。
【0098】
実施例2
SnPc/C
60セルにおいて、Jsを減らし、それ故Vocを増加させるために、実施
例1に記載したアノードおよびSnPcドナーの間に電子阻止EBLを挿入した。
図2の
挿入中のエネルギー準位図によると、電子阻止EBLは、(i)ドナーLUMOよりも高
いLUMOエネルギーを有し、(ii)比較的高い正孔移動度を有し、(iii)小さい
電子阻止EBL(HOMO)からドナー(LUMO)への「界面ギャップ」エネルギーに
起因するドナーとの界面での生成および再結合による暗電流を限定する必要がある。これ
らの考えにしたがって、無機物質MoO
3ならびにホウ素サブフタロシアニンクロライド
(SubPc)およびCuPcが電子阻止EBLとして用いられてきた(Mutolo
et al.,J.Am.Chem.Soc,128,8108(2006))。それぞ
れのエネルギー準位によると(
図2)、それらはドナーからアクセプター接触への電子電
流をすべて効果的に阻害する。ITOおよびポリマーPV活性層間の反応を阻害するため
にMoO
3がこれまでポリマーPV電池において用いられてきた(Shrotriya
et al.,Appl.Phys.Lett.88,073508(2006))。
【0099】
実験はITO/SnPc(100Å)/C
60(400Å)/BCP(100Å)/Al
PV電池における電子阻止EBLを用いて行った。
図5は、100Å厚さのMoO
3電
子阻止EBL、40Å厚さのSubPc EBL、および40Å厚さのCuPc電子阻止
EBLを用いた電池のJ−V特性を示す。ブロッカーのないSnPC/C
60の特性も比較
のため示す。電子阻止EBLは顕著に暗電流を抑制することがわかった。1サン照明下で
測定されたV
ocは電子阻止EBLを含む全てのデバイスにおいて>0.40Vまで増加し
た。
【0100】
すべてのデバイスの性能を表1にまとめた。Voc、Jsc、曲線因子(FF)、およ
び電力変換効率(η
p)の値は、1サン標準AM1.5G太陽証明で測定した。電子阻止
EBLがないSnPcデバイス(0.45±0.1)%から電子阻止EBLあり(2.1
±0.1)%まで、高いVocにより付随して電力変換効率の増加につながった。なお、
SubPc電子阻止EBLは電子に加えて正孔に対してエネルギー障壁をもたらす。した
がって、おそらく正孔伝導に対する小さい障壁(0.4eV;
図5挿入参照)、およびそ
れによる電力変換効率のわずかな減少によって、その厚さが20Åから40Åにまで増加
させることによって、曲線因子の減少につながる。
【0102】
得られた適合パラメータ(fitting parameter)に全てのデバイスの
暗電流を適合させるために方程式(1)を用いた。MoO
3層の厚さが100Åを超える
、またはSubPc層厚さが>20Åであると、Jsは阻止層がないデバイスのわずか1
%だった。電子阻止EBL厚さがさらに増加すると、Jsのさらなる減少はごくわずかと
なり、これは、これらの薄層が電子漏れを効果的に抑制したことを示す。表1に示すよう
に、計算されたVoc値は全てのデバイスに対する値と一致した。
【0103】
図6は、ITO/CuPc(200Å)/C
60(400Å)/BCP(1OOÅ)/A
l(1OOOÅ) 光起電(PV)電池、電子阻止EBLなし、MoO
3電子阻止EBL
あり、SubPc電子阻止EBLあり、およびCuPc電子阻止EBLありのITO/S
nPc(1OOÅ)/C
60(400Å)/BCP(1OOÅ)/Al PV電池の外部量
子効率(EQE)スペクトルを示す。CuPc電池のEQEはλ>730nmで<10%
まで減少し、一方、すべてのSnPc電池のEQE値はλ<900nmで>10%であっ
た。MoO
3電子阻止EBLを用いたデバイスの効率は、電子阻止EBLなしのものと同
じであり、これは、増加した電力変換効率は、減少した漏れ電流に依存したことを示す。
また、緑スペクトル領域における吸収が増加し、SnPcからの引き続いての励起子が生
成することによって、SubPc電子阻止EBLを有するデバイスは、MoO
3を有する
ものよりより高い効率を有する。
【0104】
本明細書および実施例は、以下の特許請求の範囲によって示される発明の真の範囲およ
び思想と共に、例示としてのみ考慮すべきである。
【0105】
実施例の他、特に指摘しない限り、本明細書および特許請求の範囲で用いる配合量、反
応条件、分析的測定等を表わす全ての数は、「約」の語によって全ての具体例において変
更し得るものと解釈される。したがって、特に反対のことを指摘しない限り、明細書およ
び添付の特許請求の範囲で規定される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所
望の特性に応じて変化させ得る概略値である。少なくとも、そして特許請求の範囲の等価
物の原則の適用を限定しようとする試みとしてではなく、それぞれの数パラメータは、有
効数字の数および通常の四捨五入法を考慮し、解釈されるべきである。
【0106】
それでも、特定の実施例中で記載された数値が可能な限り正確であると報告されていな
い限り、開示の広い範囲で記載された数値範囲およびパラメータは近似値である。しかし
ながら、いかなる数値も、内在的に個々の試験方法で見出される標準偏差に必然的に起因
するある種のエラーを含む。