(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ブロックコポリマーの1つ以上のエラストマーブロックが、エチレンエラストマー、ジエンエラストマー及びこれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ。
ブロックコポリマーの1つ以上の熱可塑性ブロックが、ガラス転移温度が80℃よりも高く、半結晶性熱可塑性ブロックの場合、融点が80℃よりも高いポリマーより選ばれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタイヤ。
ブロックコポリマーの1つ以上のブロックが、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化化合物、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルイミド、熱可塑性コポリマー及びこれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のタイヤ。
1つ以上の熱可塑性エラストマーが、スチレン/ブタジエン(SB)、スチレン/イソプレン(SI)、スチレン/ブタジエン/イソプレン(SBI)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)及びスチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)熱可塑性エラストマー及びこれらのコポリマーの混合物からなる群より選ばれる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本説明において、特に明確に断らない限り、示されるパーセント(%)は全て質量パーセントである。
本発明を意味の範囲内で、アンダーレイヤーは、タイヤのクラウンの内側に、一方では、タイヤトレッドの半径方向外側部分、いわゆる走行中道路と接触することを意図した部分と、もう一方では、クラウン補強部の間に、円周方向に位置決めされている。従って、アンダーレイヤーは、空気又は膨張ガスと接触していない、言い換えれば、トレッドの実際の内部に又はトレッドとタイヤのベルト(又はクラウン補強部)の間に位置している、タイヤの外側に開放していないタイヤのクラウン補強部の半径方向に外側にあるゴムでできた任意の部分を意味すると理解される。
従って、このアンダーレイヤーが下記のいずれかに位置決めされ得ると理解すべきである:
- トレッド自体の中に、しかしこの場合、タイヤの寿命全体にわたって、タイヤの走行中に道路と接触することを意図するトレッドパターン形成部分の半径方向下に(すなわち、この部分に対して半径方向内側に);
- あるいはトレッドとベルト(又はクラウン補強部)の間のトレッドの下に(すなわち、このトレッドに対して半径方向内側に)。
好ましくは、このアンダーレイヤーは、トレッドとクラウン補強部の間に位置しているか、あるいはトレッドの内側に位置している唯一の層である。
添付の
図1及び
図2は、本発明である半径方向カーカス補強部を有する自動車用のタイヤの2つの好ましい例を非常に概略的に(特に特定の縮尺にせずに)示す半径方向断面図である。
【0009】
図1は、本発明の第1の可能な実施態様を示すものであり、トレッドのアンダーレイヤーと呼ぶことが通例であるものを形成するために、アンダーレイヤー(8)はトレッド(3)自体に組み入れられているが、走行中道路と接触することを意図するトレッドの部分(3a)の下に位置決めされている。そのような場合、トレッドが当業者によってキャップ-ベース構造を有するトレッドと一般に呼ばれていることも思い出すことになり、用語「キャップ」が道路と接触することを意図するトレッドのパターン形成部分を示し、用語「ベース」がその部分に対しては道路と接触することを意図しない異なる配合物を有するトレッドのパターン形成されていない部分を示す。
この
図1において、概略図で示されるタイヤ(1)は、トレッド(3)(簡略化のために、極めて単純なトレッドパターンを含んでいる)、道路と接触することを意図するそのトレッドの半径方向外側部分(3a)、カーカス補強部(6)が固定されている2つの非伸長性ビード(4)を備えるクラウン(2)を備えている。前記ビード(4)に2つのサイドウォール(5)によって結合したクラウン(2)は、それ自体知られているように、少なくとも部分的に金属であり且つカーカス補強部(6)に対して半径方向に外側であるクラウン補強部又は「ベルト」(7)によって補強されている。
より詳しくは、タイヤベルトは、一般的には、時には「ワーキング」プライ又は「交差」プライと呼ばれる、少なくとも2つの重ね合されたベルトプライから構成され、それの補強要素又は「補強剤」がプライ内部で相互に実質的に平行に位置決めされているが、一方のプライからもう一方のプライまで交差されている。すなわち、問題のタイヤのタイプによれば、一般に10°と45°の間にある角度だけ、円周正中面に対して対称的に又は非対称的に傾けられている。これらの2つの交差プライの各々は、補強剤を被覆しているゴムマトリックス又は「カレンダー加工ゴム」から構成されている。ベルトにおいては、補強剤を含むか又は含まない、場合によっては変動し得る幅を有する種々の他の補助ゴムプライ又は層によって交差プライが補充され得る; 一例として、簡単なゴムクッション、ベルトの残りを外部攻撃又は穿孔から保護する役割を有する「保護」プライ、又は交差プライに対して半径方向に外側にしても内側にしても、実質的に円周方向(「ゼロ度」プライ)に沿って方向付けられた補強剤を含む「フーピング」プライも挙げられる。
【0010】
上記のベルト、特に交差プライ、保護プライ又はフーピングプライを補強するために、一般的には、一緒に編んでブレードにするか又はねじることによって一緒に集めた細いワイヤ又は糸から構成されるスチールコード又はテキスタイルコードの形で補強剤が使われる。
カーカス補強部(6)は、ここでは、2つのビードスレッド(4a、4b)に巻き付けることによって各ビード(4)に固定され、この補強部(6)の折り返し部(6a、6b)は、例えば、タイヤ(1)の外側の方へ位置決めされ、ここでは、そのホイールリム(9)装着されている。カーカス補強部(6)は、半径方向のテキスタイルコードによって補強された少なくとも1つのプライから構成されている。すなわち、これらのコードは相互に実質的に平行に位置決めされ、円周正中面(2つのビード4の間の中間に位置し且つクラウン補強部7の中央を通るタイヤの回転軸に垂直の面)と80°と90°の間の角度を形成するように一方のビードからもう一方のビードまで伸びている。もちろん、このタイヤ(1)は、更に、知られているように、タイヤの半径方向内側面を画成し且つカーカスプライをタイヤ内部の空間に由来する空気の拡散から保護することを意図する内部ゴム又はエラストマー(一般にインナライナとして知られている)の層(10)を備えている。
【0011】
図1の本発明のタイヤ(1)のこの例は、そのトレッド(3)のベース部分(8)が、後に詳述されるアンダーレイヤーから構成されることを特徴とする。
図2は、本発明の他の可能な実施態様を示す図であり、アンダーレイヤー(8)が、上記トレッドの外側にあり(すなわち、トレッドと離れている)、この場合、トレッドの下(すなわち、トレッドに対して半径方向内側)でベルトの上(すなわち、ベルトに対して半径方向外側)のまだクラウン(2)内に、言い換えれば、トレッド(3)とベルト(7)の間に位置決めされている。
上で解説した図面によって概略的に表したすべての場合において、アンダーレイヤーは、そのコーナリング剛性の改善によって、そのようなタイヤを装着した車両のより良好な操縦に寄与することができる。
このアンダーレイヤーは、好ましくは0.2と3mmの間、より好ましくは0.5と2.5mmの間、更により好ましくは1と2.5mmの間の厚さを有する。
更にまた、用語「phr」は、本特許出願の意味の範囲内で、熱可塑性も非熱可塑性も共に混合したエラストマーの百部当たりの質量部を意味する。本発明の意味の範囲内で、熱可塑性エラストマー(TPE)は、エラストマーの中に含まれる。
更にまた、表現「aとbの間」が示す値の間隔はaよりも大きい値からbよりも小さい値までの範囲を表す(すなわち、aとbの限度を除く)が、表現「aからbまで」はa値からb値までの範囲を意味する(即ち、厳密な限度aとbが含まれる)。
【0012】
1. アンダーレイヤーの組成物
本発明のタイヤは、トレッドのパターン形成外側部分と異なる配合物を有する、「アンダーレイヤー」と呼ばれるエラストマー層を備えている本質的特徴を有し、前記アンダーレイヤーが少なくとも1つの熱可塑性エラストマーを含み、前記熱可塑性エラストマーが少なくとも1つのエラストマーブロック及び少なくとも1つの熱可塑性ブロックを含むブロックコポリマーであり、熱可塑性エラストマーの全含量が65から100phr(エラストマー百部当たりの質量部)までの範囲内にある。
【0013】
1.1. 熱可塑性エラストマー(TPE)
熱可塑性エラストマー(「TPE」と略記される)は、熱可塑性ポリマーとエラストマーの間の構造中間体を有する。これらは、可撓性エラストマーブロックを介して結合される硬質熱可塑性樹脂ブロックから構成されるブロックコポリマーである。
本発明の実施のために用いられる熱可塑性エラストマーは、ブロックコポリマーであり、熱可塑性ブロックとエラストマーブロックの化学的性質が異なってもよい。
【0014】
1.1.1. TPEの構造
TPEの数平均分子量(Mnと表示する)は、好ましくは30 000と500 000 g/モルの間、より好ましくは40 000と400 000 g/モルの間にある。指示された最低値よりも低いと、TPEのエラストマーの鎖間の凝集力が、特に可能なその希釈(伸展油の存在下)のために、影響を受けるリスクがあり; 更にまた、使用温度の上昇が、「熱」性能低下の結果による機械的性質、特に、破断点特性に影響を与えるリスクがある。更にまた、質量Mnが高過ぎると、使用に有害であり得る。従って、50 000から300 000 g/モルまでの範囲の値が、特にタイヤアンダーレイヤー組成物におけるTPEの使用に、特によく適したことがわかった。
立体排除クロマトグラフィー(SEC)によって、既知の方法で、TPEエラストマーの数平均分子量(Mn)が定量される。例えば、スチレン熱可塑性エラストマーの場合、試料を約1 g/lの濃度でテトラヒドロフランに前もって溶解し、次にその溶液を0.45μmの多孔性を有するフィルタによってろ過した後に注入する。用いられる装置は、Waters Allianceクロマトグラフィラインである。溶出溶媒はテトラヒドロフランであり、流量は0.7ml/分であり、システムの温度は35℃であり、分析時間は90分である。連続した一組の4つのWatersカラム、Styragel商品名(HMW7、HMW6E及び2つのHT6E)が用いられる。ポリマー試料の溶液の注入容積は、100μlである。検出器はWaters 2410示差屈折計であり、クロマトグラフィデータを使うためのその関連ソフトウェアはWaters Millenniumシステムである。計算された平均モル質量は、ポリスチレン標準によって得られた較正曲線と関連している。条件は、当業者によって調整され得る。
TPEの多分散指数PI (注: PI = Mw/Mn、ここで、Mw質量平均分子量及びMn数平均分子量)の値は、好ましくは3未満で、より好ましくは2未満及び更により好ましくは1.5未満である。
【0015】
本特許出願において、TPEのガラス転移温度について述べられる場合、エラストマーブロックと関連したTgに関する。TPEは、好ましくは、ガラス転移温度(「Tg」)が好ましくは25℃以下、より好ましくは10℃以下である。これらの最低値より高いTg値は、極低温で用いられる場合にアンダーレイヤーの性能を低下させることになり; そのような使用のために、TPEのTgは、更により好ましくは-10℃以下である。好ましくはまた、TPEのTgは-100℃よりも高い。
知られているように、TPEは、2つのガラス転移温度ピーク(Tg、ASTM D3418に従って測定した)を示し、最低温度はTPEのエラストマー部分と関連し、最高温度はTPEの熱可塑性部分と関連する。従って、TPEの可撓性ブロックは、周囲温度(25℃)未満であるTgによって定義され、剛性ブロックのTgは80℃よりも高い。
実質的にエラストマーと熱可塑性の双方であるために、TPEは、エラストマーブロック又は熱可塑性ブロックのそれら自体の特性を保持するのに充分に不適合な(すなわち、それぞれの質量、それぞれの極性又はそれぞれのTg値の結果として異なる)ブロックを備えていなければならない。
TPEは少数のブロック(5未満、典型的に2又は3)を有するコポリマーであってもよく、その場合には、これらのブロックは好ましくは15 000 g/モルよりも大きい高質量を有する。このTPEは、例えば、熱可塑性ブロックとエラストマーブロックを含むジブロックコポリマーであり得る。このTPEは、また、しばしば、可撓性セグメントによって結合された2つの剛性セグメントを有するトリブロックエラストマーである。剛性セグメントと可撓性セグメントは、線状に、又は星状又は枝分れ配置に位置決めされ得る。典型的には、これらのセグメント又はブロックの各々は、しばしば、最小限の5よりも多いベース単位、一般的には10よりも多いベース単位(例えば、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマーのスチレン単位とブタジエン単位)を含む。
【0016】
TPEは、また、多数のより小さいブロック(30よりも多い、典型的には50から500まで)を含んでもよく、その場合には、これらのブロックは、好ましくは、相対的に低質量、例えば500から5000 g/モルまでを有し; このTPEは、引き続き、マルチブロックTPEと呼ばれ、エラストマーブロック/熱可塑性ブロック系列である。
第1の変形によれば、TPEは、線状形態で供給される。例えば、TPEは、ジブロックコポリマー: 熱可塑性ブロック/エラストマーブロックである。TPEは、また、トリブロックコポリマー: 熱可塑性ブロック/エラストマーブロック/熱可塑性ブロック、すなわち、中央のエラストマーブロック及びエラストマーブロックの2つの端部の各々の2つの末端熱可塑性ブロックであり得る。同様に、マルチブロックTPEは、線状エラストマーブロック/熱可塑性ブロック系列であり得る。
本発明の他の変形によれば、本発明に必要とされる有用なTPEは、少なくとも3つの枝分れを含む星状枝分れ形態で供給される。例えば、その場合、TPEは、少なくとも3つの枝分れを含む星状枝分れエラストマーブロック及びエラストマーブロックの枝分れの各々の端部に位置する熱可塑性ブロックから構成され得る。中央エラストマーの枝分れの数は、例えば、3から12まで、好ましくは3から6まで異なってもよい。
本発明の他の変形によれば、TPEは、枝分かれ又はデンドリマー形態で供給される。その場合、TPEは、枝分かれ又はデンドリマーエラストマーブロック及びデンドリマーエラストマーブロックの枝分れの端部に位置する熱可塑性ブロックから構成され得る。
【0017】
1.1.2. エラストマーブロックの性質
本発明に必要とされるTPEのエラストマーブロックは、当業者に既知の任意のエラストマーでもあり得る。TPEのエラストマーブロックは、一般的にはTgが25℃未満、好ましくは10℃未満、より好ましくは0℃未満、非常に好ましくは-10℃未満である。好ましくはまた、TPEのエラストマーブロックのTgは、-100℃よりも高い。
炭素系鎖を含むエラストマーブロックに対して、TPEのエラストマー部分がエチレン系不飽和を含まない場合には、飽和エラストマーブロックと呼ばれる。TPEのエラストマーブロックがエチレン系不飽和(すなわち、炭素-炭素二重結合)を含む場合には、不飽和又はジエンエラストマーブロックと呼ばれる。
飽和エラストマーブロックは、少なくとも1つの(すなわち、1つ以上の)エチレンモノマー、すなわち、炭素-炭素二重結合を含むモノマーの重合によって得られるポリマー配列から構成される。これらのエチレンモノマーから得られるブロックの中で、ポリアルキレンブロック、例えばエチレン/プロピレン又はエチレン/ブチレンランダムコポリマーが挙げられ得る。これらの飽和エラストマーブロックは、また、不飽和エラストマーブロックの水素添加によって得ることができる。これらの飽和エラストマーブロックは、ポリエーテル、ポリエステル又はポリカーボネートのファミリーから得られる脂肪族ブロックであり得る。
飽和エラストマーブロックの場合、TPEのこのエラストマーブロックは、好ましくは主に、エチレン単位から構成される。主には、エラストマーブロックの全質量に対して、質量による最大含量のエチレンモノマー、好ましくは50%よりも多い、より好ましくは75%よりも多い、更により好ましくは85%よりも多い質量による含量を意味すると理解される。
【0018】
C
4-C
14共役ジエンは、エチレンモノマーと共重合され得る。C
4-C
14共役ジエンは、この場合、ランダムコポリマーである。好ましくは、これらの共役ジエンは、イソプレン、ブタジエン、1-メチルブタジエン、2-メチルブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,4-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2-メチル-1,3-ヘキサジエン、3-メチル-1,3-ヘキサジエン、4-メチル-1,3-ヘキサジエン、5-メチル-1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、2,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、2-ネオペンチルブタジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1-ビニル-1,3-シクロヘキサジエン又はこれらの混合物より選ばれる。より好ましくは、共役ジエンは、イソプレン又はイソプレンを含む混合物である。
不飽和エラストマーブロックの場合、TPEのこのエラストマーブロックは、好ましくは主に、ジエンエラストマー部分から構成される。主には、エラストマーブロックの全質量に対して、質量による最大含量のエチレンモノマー、好ましくは50%よりも多い、より好ましくは75%よりも多い、更により好ましくは85%よりも多い質量による含量を意味すると理解される。あるいは、不飽和エラストマーブロックの不飽和は、二重結合及び環状タイプの不飽和を含むモノマーに由来してもよく、これは、例えば、ポリノルボルネンの場合である。
【0019】
好ましくは、C
4-C
14共役ジエンは、ジエンエラストマーブロックを形成するために重合又は共重合され得る。好ましくは、これらの共役ジエンは、イソプレン、ブタジエン、ピペリレン、1-メチルブタジエン、2-メチルブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,4-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2,5-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2-メチル-1,3-ヘキサジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、3-メチル-1,3-ヘキサジエン、4-メチル-1,3-ヘキサジエン、5-メチル-1,3-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、2-ネオペンチル-1,3-ブタジエン、1,3-シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、2-メチル-1,6-ヘプタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1-ビニル-1,3-シクロヘキサジエン又はこれらの混合物より選ばれる。より好ましくは、共役ジエンは、イソプレン又はブタジエン又はイソプレン及び/又はブタジエンを含む混合物である。
変形によれば、TPEのエラストマー部分を形成するために重合されたモノマーは、エラストマーブロックを形成するように、少なくとも1つの他のモノマーとランダムに共重合され得る。この変形によれば、エラストマーブロックの単位の総数に対する、エチレンモノマー以外の重合したモノマーのモル分率は、このブロックがそのエラストマー特性を保持するようでなければならない。有利には、この他のコモノマーのモル分率は、0%から50%まで、より好ましくは0%から45%まで、更により好ましくは0%から40%までの範囲にあり得る。
【0020】
説明として、第1のモノマーと共重合することのできるこれの他のモノマーは、上で定義したエチレンモノマー(例えばエチレン)、ジエンモノマー、より詳しくは上で定義したように炭素原子4から14個までを有する共役ジエンモノマー(例えばブタジエン)、上で定義したように炭素原子8から20個までを有するビニル芳香族タイプのモノマー、又は酢酸ビニルが含まれ得るようなモノマーより選ばれ得る。
コモノマーがビニル芳香族タイプの場合には、有利には、熱可塑性ブロックの単位の総数に対して、単位部分が0%から50%まで、好ましくは0%から45%までの範囲にある、より好ましくは0%から40%までの範囲にあることを表す。上述のスチレンモノマー、すなわちメチルスチレン、パラ(tert-ブチル)スチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、フルオロスチレン又はパラヒドロキシスチレンが、ビニル芳香族化合物として特に適切である。好ましくは、ビニル芳香族タイプのコモノマーはスチレンである。
本発明の好ましい実施態様によれば、TPEについて、タイヤアンダーレイヤーとしての使用に関して充分であり且つ適合する良好なエラストマー特性及び機械的強度を与えるように、TPEのエラストマーブロックは、全体で、数平均分子量(Mn)が25 000 g/モルから350 000 g/モルまで、好ましくは35 000 g/モルから250 000 g/モルまでの範囲にある。
エラストマーブロックは、また、上で定義したようにいくつかのタイプのエチレン、ジエン又はスチレンモノマーを含むブロックであり得る。
エラストマーブロックは、また、上で定義したようにいくつかのエラストマーブロックから構成され得る。
本発明の要求に対して、前記アンダーレイヤーが加硫されるか又は隣接層、典型的にはトレッド及び/又はクラウン補強部と共加硫されなければならない場合には、TPEのエラストマーブロックは、好ましくは炭素-炭素二重結合を含んでいる。TPEのエラストマーブロックは、好ましくは不飽和エラストマーブロックに関係するので、不飽和TPEと呼ばれるTPEを形成する。
【0021】
1.1.3. 熱可塑性ブロックの性質
熱可塑性ブロックの定義としては、硬質熱可塑性樹脂ブロックのガラス転移温度(Tg)の特性が使われる。この特性は、当業者に周知である。これは、特に工業用処理(変換)温度を選択することを可能にする。アモルファスポリマー(又はポリマーブロック)の場合、処理温度は、Tgよりも実質的に高いように選ばれる。半結晶質ポリマー(又はポリマーブロック)の個々の場合においては、ガラス転移温度より高い融点が観測され得る。この場合には、代わりとして、問題のポリマー(又はポリマーブロック)の処理温度を選択することを可能にする融点(M.p.)である。従って、引き続き、「Tg(又は適切である場合にはM.p.)」について述べられる場合、これが処理温度を選択するために用いられる温度であると考えることが必要である。
本発明に必要とされるTPEエラストマーは、好ましくはTg(又は適切である場合には、M.p.)が80℃以上であり且つ重合されたモノマーから形成される1つ以上の熱可塑性のブロックを含んでいる。好ましくは、この熱可塑性ブロックのTg(又は適切である場合には、M.p.)は、80℃から250℃までの範囲内にある。好ましくは、この熱可塑性ブロックのTg(又は適切である場合には、M.p.)は、好ましくは80℃から200℃まで、より好ましくは80℃から180℃までである。
本発明の実施のために定義されたTPEに関して、熱可塑性ブロックの割合は、一方では、前記コポリマーが示さなければならない熱可塑性特性によって定量される。Tg(又は適切である場合には、M.p.)が80℃以上である熱可塑性ブロックは、好ましくは本発明のエラストマーの熱可塑性の性質を保持するのに充分な割合で存在する。TPEにおけるTg(又は適切である場合には、M.p.)が80℃以上である熱可塑性ブロックの最低含量は、コポリマーの使用条件の関数として異なってもよい。一方では、タイヤの調製中に変形するTPEの能力は、Tg(又は適切である場合には、M.p.)が80℃以上である熱可塑性ブロックの割合を決定することにも関与し得る。
【0022】
Tg(又は適切である場合には、M.p.)が80℃以上である熱可塑性ブロックは、種々の性質の重合されたモノマーから形成され得る; 特に、その熱可塑性ブロックは、下記のブロック又はこれらの混合物を構成し得る:
- ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン);
- ポリウレタン;
- ポリアミド;
- ポリエステル;
- ポリアセタール;
- ポリエーテル(ポリエチレンオキシド、ポリフェニレンエーテル);
- ポリフェニレンスルフィド;
- ポリフッ化化合物(FEP、PFA、ETFE);
- ポリスチレン(以下に詳細に記載される);
- ポリカーボネート;
- ポリスルホン;
- ポリメチルメタクリレート;
- ポリエーテルイミド;
- 熱可塑性コポリマー、例えばアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)コポリマー。
【0023】
Tg(又は適切である場合には、M.p.)が80℃以上である熱可塑性ブロックは、また、下記の化合物及びこれらの混合物より選ばれるモノマーから得ることができる:
- アセナフチレン: 当業者は、例えば、論文 Z. Fodor and J.P. Kennedy, Polymer Bulletin, 1992, 29(6), 697-705を参照してもよい;
- インデン及びその誘導体、例えば、2-メチルインデン、3-メチルインデン、4-メチルインデン、ジメチルインデン、2-フェニルインデン、3-フェニルインデン、4-フェニルインデン; 当業者は、例えば、特許文献米国特許第4 946 899号明細書、発明者Kennedy, Puskas, Kaszas & Hager、文献 J. E. Puskas, G. Kaszas, J.P. Kennedy and W.G Hager, Journal of Polymer Science, Part A, Polymer Chemistry (1992), 30, 41, and J.P. Kennedy, N. Meguriya and B. Keszler, Macromolecules (1991), 24(25), 6572-6577を参照してもよい;
- イソプレン、その場合には、特定の数のトランス-1,4-ポリイソプレン単位及び分子内プロセスに従って環化された単位を形成する結果となる; 当業者は、例えば、文献 G. Kaszas, J.E. Puskas and P. Kennedy, Applied Polymer Science (1990), 39(1), 119-144, and J.E. Puskas, G. Kaszas and J.P. Kennedy, Macromolecular Science, Chemistry A28 (1991), 65-80を参照してもよい。
【0024】
ポリスチレンは、スチレンモノマーから得られる。スチレンモノマーは、本説明において、置換されていない又は置換されたスチレンを含む任意のモノマーを意味すると理解されなければならない; 置換されたスチレンの中で、例えば、メチルスチレン(例えば、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン又はp-メチルスチレン、α-メチルスチレン、α,2-ジメチルスチレン、α,4-ジメチルスチレン又はジフェニルエチレン)、パラ(tert-ブチル)スチレン、クロロスチレン(例えば、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、2,4-ジクロロスチレン、2,6-ジクロロスチレン又は2,4,6-トリクロロスチレン)、ブロモスチレン(例えば、o-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、p-ブロモスチレン、2,4-ジブロモスチレン、2,6-ジブロモスチレン又は2,4,6-トリブロモスチレン)、フルオロスチレン(例えば、o-フルオロスチレン、m-フルオロスチレン、p-フルオロスチレン、2,4-ジフルオロスチレン、2,6-ジフルオロスチレン又は2,4,6-トリフルオロスチレン)又はパラヒドロキシスチレンが挙げられ得る。
本発明の好ましい実施態様によれば、TPEエラストマーにおけるスチレンの質量による含量は、5%と50%の間にある。指示された最低値よりも低いと、エラストマーの熱可塑性の性質が実質的に低下するリスクがあり、推奨された最高値より高いと、アンダーレイヤーの弾性が影響され得る。これらの理由により、スチレン含量は、より好ましくは10%と40%の間にある。
本発明の変形によれば、Tg(又は適切である場合には、M.p.)が上で定義した通りの熱可塑性ブロックを形成するように、上で定義した通りの重合されたモノマーは、少なくとも1つの他のモノマーと共重合され得る。
説明として、重合されたモノマーと共重合することのできるこの他のモノマーは、ジエンモノマー、より詳しくは炭素原子4から14個までを有する共役ジエンモノマー、及び炭素原子8から20個までを有するビニル芳香族タイプのモノマー、例えばエラストマーブロックに関する部分において定義されたものより選ばれ得る。
本発明によれば、TPEについて、タイヤアンダーレイヤーとしての使用に関して充分であり且つ適合する良好なエラストマー特性及び機械的強度を与えるように、TPEのエラストマーブロックは、全体で、数平均分子量(Mn)が5 000 g/モルから150 000 g/モルの範囲にある。
熱可塑性ブロックは、また、上で定義したようにいくつかの熱可塑性ブロックから構成され得る。
【0025】
1.1.4. TPEの例
例えば、TPEは、コポリマーであり、そのエラストマー部分は飽和されており、スチレンブロック及びアルキレンブロックを含んでいる。アルキレンブロックは、好ましくはエチレン、プロピレン又はブチレンである。より好ましくは、このTPEエラストマーは、線状又は星状枝分れであるジブロックコポリマー又はトリブロックコポリマーからなる下記の群より選ばれる: スチレン/エチレン/ブチレン(SEB)、スチレン/エチレン/プロピレン(SEP)、スチレン/エチレン/エチレン/プロピレン(SEEP)、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン(SEBS)、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン(SEPS)、スチレン/エチレン/エチレン/プロピレン/スチレン(SEEPS)、スチレン/イソブチレン(SIB)、スチレン/イソブチレン/スチレン(SIBS)及びこれらのコポリマーの混合物。
他の例によれば、TPEはコポリマーであり、そのエラストマー部分は不飽和であり、スチレンブロック及びジエンブロックを含み、これらのジエンブロックは特にイソプレンブロック又はブタジエンブロックである。より好ましくは、このTPEエラストマーは、線状又は星状枝分れであるジブロックコポリマー又はトリブロックコポリマーからなる下記の群より選ばれる: スチレン/ブタジエン(SB)、スチレン/イソプレン(SI)、スチレン/ブタジエン/イソプレン(SBI)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)及びこれらのコポリマーの混合物。
例えば更にまた、TPEは、線状又は星状枝分かれコポリマーであり、そのエラストマー部分は飽和部分及び不飽和部分を含み、例えば、スチレン/ブタジエン/ブチレン(SBB)、スチレン/ブタジエン/ブチレン/スチレン(SBBS)又はこれらのコポリマーの混合物である。
【0026】
マルチブロックTPEの中で、エチレン及びプロピレン/ポリプロピレンのランダムコポリマーブロック、ポリブタジエン/ポリウレタン(TPU)、ポリエーテル/ポリエステル(COPE)又はポリエーテル/ポリアミド(PEBA)を含むコポリマーが挙げられ得る。
本発明のアンダーレイヤーの範囲内で相互に混合される例として上記で示されたTPEもまた可能である。
市販のTPEエラストマーの例として、KratonG製品名(例えば、G1650、G1651、G1654及びG1730製品)でKraton又はSepton製品名(例えば、Septon 2007、Septon 4033又はSepton 8004)でKurarayから販売されているSEPS、SEEPS又はSEBSタイプのエラストマー、又は製品名Hybrar 5125でKurarayから販売されているか又は製品名D1161でKratonから販売されているSISタイプのエラストマー、又は製品名Europrene SOLT 166でPolimeri Europaから販売されている線状SBSタイプ又は製品名D1184でKratonから販売されている星状枝分れSBSタイプのエラストマーが挙げられ得る。Vector製品名(例えば、Vector 4114又はVector 8508)でDexco Polymersから販売されているエラストマーも挙げられ得る。マルチブロックTPEの中で、Exxonから販売されているVistamaxx TPE; Arnitel名でDSMから又はHytrel名でDuPontから又はRiteflex名でTiconaから販売されているCOPE TPE; PEBAX名でArkemaから販売されているPEBA TPE; 又は製品名TPU 7840でSartomerから又はElastogran名でBASFから販売されているTPU TPEが挙げられ得る。
【0027】
1.1.5. TPE量
必要により他の(非熱可塑性)エラストマーが組成物に用いられる場合には、1つ以上の熱可塑性エラストマー(TPE)が主な質量分率を構成し; その場合には、エラストマー組成物中に存在する合わせたエラストマーの少なくとも65質量%、好ましくは少なくとも70質量%、より好ましくは少なくとも75質量%を表す。好ましくは更にまた、1つ以上のTPEエラストマーは、エラストマー組成物中に存在する合わせたエラストマーの少なくとも95質量%(特に100%)を表す。
従って、TPEエラストマーの全量は、65から100phrまで、好ましくは70から100phrまで、特に75から100phrまで変動する範囲内にある。好ましくは更にまた、組成物は、95から100phrまでのTPEエラストマーを含んでいる。1つ以上のTPEエラストマーは、好ましくはアンダーレイヤーの唯一の1つ以上のエラストマーである。
【0028】
1.2 非熱可塑性エラストマー
上記の1つ以上の熱可塑性エラストマーは、使用可能である本発明のアンダーレイヤーに対してそれ自体単独で充分である。
本発明のアンダーレイヤーの組成物は、非熱可塑性エラストマーとして少なくとも1つの(すなわち、1つ以上の)ジエン系ゴムを含んでもよく、このジエン系ゴムが単独で又は少なくとも1つ(すなわち、1つ以上)の他の非熱可塑性ゴム又はエラストマーとのブレンドとして用いられることが可能である。
必要により非熱可塑性エラストマーの全含量は、0から35phrまで、好ましくは0から30phrまで、より好ましくは0から25phrまで、更により好ましくは0から5phrまでの範囲内にある。好ましくは更にまた、本発明のタイヤのアンダーレイヤーは、非熱可塑性エラストマーを含まない。
「ジエン」エラストマー又はゴムは、知られているように、ジエンモノマー(共役されていてもよく共役されていなくてもよい2つの炭素-炭素二重結合をもったモノマー)から少なくとも部分的に得られる1つの(1つ以上が理解されている)エラストマー(すなわち、ホモポリマー又はコポリマー)を意味すると理解されなければならない。
これらのジエンエラストマーは、2つの種類:「本質的に不飽和の」か「本質的に飽和された」に分類され得る。
「本質的に不飽和の」は、一般的には、ジエン由来(共役ジエン)の単位の含量が15%(モル%)よりも多い共役ジエンモノマーから少なくとも部分的に得られるジエンエラストマーを意味すると理解される。「本質的に不飽和の」ジエンエラストマーの種類において、「高度に不飽和の」ジエンエラストマーは、特にジエン由来(共役ジエン)の単位の含量が50%よりも多いジエンエラストマーを意味すると理解される。
【0029】
このようにして、ジエンエラストマー、例えば若干のブチルゴム又はEPDMタイプのジエンとα-オレフィンのコポリマーが「本質的に飽和された」ジエンエラストマーとして記載され得るのである(低含量又は非常に低含量のジエン由来の単位、常に15%未満)。
これらの定義を考えれば、上記の種類が何であっても、本発明の組成物に用いられることのできるジエンエラストマーは、より詳しくは、以下を意味すると理解される:
(a) - 炭素原子4から12個までを有する共役ジエンモノマーの重合によって得られる任意のホモポリマー;
(b) - 1つ以上の共役ジエンと相互との又は炭素原子8から20個までを有する1つ以上のビニル芳香族化合物との共重合によって得られた任意のコポリマー;
(c) - エチレン及び炭素原子3から6個までを有するα-オレフィンと炭素原子6から12個までを有する非共役ジエンモノマーとの共重合によって得られる三元共重合体、例えば、エチレン及びプロピレンと上述のタイプの非共役ジエンモノマー、例えば、特に1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン又はジシクロペンタジエンから得られるエラストマー;
(d) - イソブテンとイソプレンのコポリマー(ジエンブチルゴム)、更にはハロゲン化変形例、特に塩素化又は臭素化変形例のこのタイプのコポリマー。
任意のタイプのジエンエラストマーが、本発明において使用し得る。組成物が加硫系を含む場合、本発明のタイヤのアンダーレイヤーの製造においては、好ましくは、特に上記(a)及び(b)タイプの本質的に不飽和のエラストマーが使われる。
共役ジエンとして特に以下が適している: 1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジ(C
1-C
5アルキル)-1,3-ブタジエン、例えば、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン又は2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、アリール-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン又は2,4-ヘキサジエン。ビニル芳香族化合物として、例えば、以下が適している: スチレン、オルト-、メタ-又はパラ-メチルスチレン、市販の「ビニルトルエン」混合物、パラ(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン又はビニルナフタレン。
【0030】
コポリマーは、99%と20質量%の間のジエン単位及び1%と80質量%の間のビニル芳香族単位を含んでいてもよい。エラストマーは任意のミクロ構造を有してもよく、用いられる重合条件、特に変性剤及び/又はランダム化剤の有無及び使われる変性剤及び/又はランダム化剤の量に左右される。エラストマーは、例えば、分散状態で又は溶解状態で調製され得る; エラストマーは、カップリング剤及び/又は星状枝分れ剤又は官能基化剤でカップリング及び/又は星状枝分れあるいは官能基化され得る。例えば、カーボンブラックへのカップリングに対しては、C-Sn結合又はアミノ化官能基、例えばベンゾフェノンを含む官能基が挙げられ得る; 例えば、無機補強充填剤、例えばシリカへのカップリングに対しては、シラノール官能基又はシラノール端を有するポリシロキサン官能基(例えば、仏国特許発明第2 740 778号明細書又は米国特許第6 013 718号明細書に記載されている)、アルコキシシラン基(例えば、仏国特許発明第2 765 882号明細書又は米国特許第5 977 238号明細書に記載されている)、カルボキシル基(例えば、国際公開第01/92402号パンフレット又は米国特許第6 815 473号明細書、国際公開第2004/096865号パンフレット又は米国特許第2006/0089445号明細書に記載されている)あるいはポリエーテル基(例えば、欧州特許第1 127 909号明細書又は米国特許第6 503 973号明細書に記載されている)が挙げられ得る。官能基化エラストマーの他の例として、エポキシ化タイプのエラストマー(例えばSBR、BR、NR又はIR)も挙げられ得る。
【0031】
1.3. ナノメートル充填剤又は補強充填剤
上記の1つ以上の熱可塑性エラストマーは、使用可能である本発明のアンダーレイヤーに対してそれ自体単独で充分である。
補強充填剤が用いられる場合、タイヤの製造に一般に用いられる任意のタイプの充填剤、例えば、有機充填剤、カーボンブラック等、無機充填剤、シリカ等、又はこれらの2つのタイプの充填剤、特にカーボンブラックとシリカのブレンドが使われ得る。
従来タイヤに用いられてきたすべてのカーボンブラック(「タイヤ-グレード」ブラック)が特にカーボンブラックとして適している。より詳しくは、例えば、100、200又は300シリーズ(ASTMグレード)の補強性カーボンブラック、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347又はN375ブラック、あるいは目標とする用途によっては、高級シリーズのブラック(例えばN660、N683又はN772)、実際にN990さえも挙げられる。
「無機補強充填剤」は、本特許出願において、定義上、カーボンブラックとは対照的に、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強することができ、言い換えれば、その補強役割において従来のタイヤグレードカーボンブラックを置き換えることができる「白色充填剤」、「透明充填剤」又は「非黒色充填剤」としてさえも知られている、その色合及びその由来(天然か合成か)の如何にかかわらない任意の無機又は鉱質充填剤を意味するものと理解すべきであり; そのような充填剤は、一般的には、知られているように、その表面でのヒドロキシル(-OH)基の存在に特徴を有する。
【0032】
無機補強充填剤が供給される物理的状態は、無機補強充填剤が粉末、ミクロビーズ、顆粒、ビーズの形態又は他の任意の適切な高密度化形態にあるかは重要でない。もちろん、無機補強充填剤もまた、異なる無機補強充填剤の混合物、特に、下記のように高分散性シリカ質及び/又はアルミニウム充填剤の混合物を意味すると理解される。
シリカ質タイプの鉱質充填剤、特にシリカ(SiO
2)、又はアルミニウムタイプ、特にアルミナ(Al
2O
3)が、特に無機補強充填剤として適している。用いられるシリカは、当業者に知られている任意の補強性シリカ、特にBET比表面積とCTAB比表面積が共に450m
2/g未満、好ましくは30から400m
2/gまでの任意の沈降又は焼成シリカであり得る。高分散性沈降シリカ(「HDS」)として、例えば、Degussa製のUltrasil 7000及びUltrasil 7005シリカ、Rhodia製のZeosil 1165MP、1135MP及び1115MPシリカ、PPG製のHi-Sil EZ150Gシリカ、Huber製のZeopol 8715、8745及び8755シリカ又は出願の国際出願第03/16837号パンフレットに記載されているような高比表面積を有するシリカが挙げられる。
無機補強充填剤をエラストマーにカップリングするために、例えば、知られているように、無機充填剤(その粒子の表面)とエラストマーの間に、化学的及び/又は物理的な性質の満足な結合を得ることを意図した少なくとも二官能性カップリング剤(又は結合剤)、特に二官能性オルガノシラン又はポリオルガノシロキサンを用いることが可能である。
必要により、組成物中の補強充填剤の容積含量(カーボンブラック及び/又は無機補強充填剤、例えばシリカ)は、0%から20%までの範囲内にあり、これは可塑剤を含まない組成物に対しては0から50phrの含量に対応する。組成物は、好ましくは30phr未満、より好ましくは10phr未満の補強充填剤を含んでいる。本発明の好ましい変形によれば、アンダーレイヤーの組成物は補強充填剤を含まない。
【0033】
1.4. 各種添加剤
上記のアンダーレイヤーは、更に、通常は当業者に知られているトレッド中に存在する種々の添加剤を含んでもよい。例えば、保護剤(酸化防止剤又はオゾン劣化防止剤等)、UV吸収剤、種々の加工助剤又は他の安定剤、又はタイヤの構造の残りへの接着を促進させることのできるプロモーターより選ばれる1つ以上の添加剤が選ばれる。好ましくは、アンダーレイヤーはこれらの添加剤すべてを同時に含まず、より好ましくは、アンダーレイヤーはこれらの薬剤のいずれも含まない。
同様に及び必要により、本発明のアンダーレイヤーの組成物は、当業者に知られている架橋系を含んでもよい。好ましくは、組成物は架橋系を含まない。同じように、本発明のアンダーレイヤーの組成物は、当業者に知られている1つ以上の不活性マイクロメートル充填剤、例えばラメラ充填剤を含んでもよい。好ましくは、組成物はマイクロメートル充填剤を含まない。
【0034】
必要により更にまた、本発明のアンダーレイヤーの組成物は、可塑剤、例えば伸展油(又は可塑化用オイル)又は可塑化樹脂を含んでもよく、その役割は弾性率の低下及び粘着力の増大によってアンダーレイヤーの加工、特にタイヤに組み入れることを容易にすることである。エラストマー、特に熱可塑性エラストマーを伸展させるか又は可塑化させることのできる、特に極性の弱い任意の伸展油が使われてもよい。周囲温度(23℃)で、多少粘稠であるこれらの油は、本来固体である、特に樹脂又はゴムと対照的に、液体(すなわち、確認として、容器の形状を最終的にとる能力を有する物質)である。当業者に知られている任意のタイプの可塑化樹脂が使われてもよい。例えば、伸展油は、パラフィン系オイル、例えば低粘度パラフィン系オイル(LVPO)からなる群より選ばれる。当業者は、以下の説明及び実施例に照らして、用いられるTPEエラストマー(上で指定したように)及びアンダーレイヤーを備えたタイヤの個々の使用条件の関数として、特に、用いられることを意図するタイヤの関数として可塑剤の量をどのように調整するかを知るであろう。組成物が可塑剤を含む場合には、可塑剤の含量が、アンダーレイヤーに対して目標とされるTg及び弾性率に従って、0から80phrまで、より好ましくは0から50phrまで、更に好ましくは0から30phrまで、特に10phrに異なることが好ましい。本発明の好ましい変形によれば、アンダーレイヤーの組成物は、可塑剤を含まない。
上記のエラストマーに加えて、アンダーレイヤーの組成物は、常にブロックエラストマーに対して質量による少量部分に従って、エラストマー以外のポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーを含んでもよい。その熱可塑性ポリマーが組成物中に存在する場合、非エラストマー熱可塑性ポリマーの全含量が40phr未満、好ましくは5と30phrの間、より好ましくは10と25phrの間にあることが好ましい。この熱可塑性ポリマーは、特にポリ(パラ-フェニレンエーテル)ポリマー(略号「PPE」で示される)であり得る。このPPE熱可塑性ポリマーは、当業者に周知であり; このPPE熱可塑性ポリマーは樹脂であり、樹脂は周囲温度(20℃)の固体であり且つスチレンポリマーと適合し、スチレンポリマーは特にTPEエラストマーのTgを上げるために用いられ、それの熱可塑性ブロックがスチレンブロックである(例えば、「Thermal, Mechanical and Morphological Analyses of Poly(2,6-dimethyl-1,4-phenylene oxide)/Styrene-Butadiene-Styrene Blends」, Tucker, Barlow and Paul, Macromolecules, 1988, 21, 1678-1685を参照のこと)。
【0035】
2. 調製
TPEエラストマーは、例えば、ビーズ又は顆粒の形で利用可能な出発材料を用いて、押出し又は成形によって、TPEの通常の方法で処理され得る。
本発明のタイヤ用のアンダーレイヤーは、マトリックスの融解及びすべての成分の組み入れを行うように、例えば二軸スクリュー押出機において各種成分を組み入れ、続いて断面形状要素を得ることを可能にするダイを用いることにより通常の方法で調製される。
このアンダーレイヤーは、通常の方法でタイヤに装着することができ、前記タイヤは、本発明の要求に必要とされるアンダーレイヤーに加えて、トレッド、クラウン補強部、好ましくは2つのサイドウォール及び2つのビード、及び2つのビードに固定され且つ一方のサイドウォールからもう一方のサイドウォールに伸びているカーカス補強部を備えている。
【0036】
本発明の実施例
本発明のタイヤ用のアンダーレイヤー組成物を上記で示したように調製した。
引き続き、タイヤを通常の方法に従って、当業者に知られている構成要素: トレッド、アンダーレイヤー、クラウン、2つのサイドウォール及び2つのビード、2つのビードに固定されたカーカス補強部、及びクラウン補強部により調製し、アンダーレイヤーは本発明の要求に対して記載されたものである。
本発明のタイヤの特性は、以下に示されるタイヤについて実施される試験によって又はアンダーレイヤー組成物試料についての試験から評価され得る。
コーナリング剛性試験
これらのタイヤのドリフトスラストを測定するためにこれらの試験を実施した; 高ドリフトスラスト(又はコーナリング)が自動車に関してタイヤに非常に良好なレベルのロードハンドリングを与えることが記憶されているにちがいない。
これらの試験の要求に対して、試験される各タイヤを適切なサイズのホイールに装着し、その基準圧に膨らませる。タイヤを適切な自動マシン(MTSから販売された「Flat-Trac」タイプマシン)により80km/hの一定速度で走行させる。「Z」と示される負荷を1度のドリフト角で変化させ、「D」と示されるコーナリング剛性又はドリフトスラスト(ゼロドリフトのスラストを修正)を、既知の方法で、センサの援助により、この負荷Zの関数としてホイール上の横方向力を記録することによって測定する; ドリフトスラストは、D(Z)曲線の原点の勾配である。対照のコーナリング剛性に対応するベース100で結果を示す; 従って100よりも大きい結果がコーナリング剛性の増加を示している。
【0037】
実施例
第一工程において、本発明のタイヤを上記で示されたように調製し、当業者に知られている通常法に従って調製された通常のアンダーレイヤーを備えた対照タイヤと比較した。グリップ層の組成物を下記の表1に示す。
【0038】
表1
(1) 解膠された天然ゴム;
(2) BR、4.3%の1,2-; 2.7%のトランス-; 93%のシス-1,4-; (Tg = -106℃);
(3) 線状SBS熱可塑性エラストマー、Europrene SOLT 166、Polimeri Europa製;
(4) Kraton製の星状枝分れSBS熱可塑性エラストマーD1184;
(5) ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、SABIC Noryl SA120;
(6) カーボンブラックN683;
(7) N-(1,3-ジメチルブチル)-N-フェニル-パラフェニレンジアミン(Flexsys製のSantoflex 6-PPD);
(8) 酸化亜鉛(工業用グレード - Umicore);
(9) ステアリン(Uniqema製のPristerene);
(10) N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(Flexsys製のSantocure CBS)。
【0039】
ここでは対照を構成する、A-1組成物は通常のアンダーレイヤー組成物であり、組成物A-2、A-3及びA-4は本発明に必要とされるアンダーレイヤー組成物に対応する。これらの組成物において、アンダーレイヤー組成物におけるTPEエラストマーの使用に関連して、手段のかなりの節約が認められる。これは、本発明に従って使用可能なこのアンダーレイヤーに対して、アンダーレイヤーの組成物の唯一の成分として、TPEエラストマーがそれ自体単独で充分であることがわかるという理由からである。
引き続き、本発明の性能についてタイヤ(205/55 R16)を評価した。これを目的として、本発明の組成物A-2、A-3及びA-4を有するアンダーレイヤーを備えたそれぞれタイヤB-2、B-3及びB-4を、A-1組成物を有する通常のアンダーレイヤーを備えた対照B-1と比較した。すべてのアンダーレイヤーが2mmの同じ厚さを有する。これらのタイヤをコーナリング剛性試験において評価した。結果を表2に示す。
【0041】
表2に示される結果は、本発明の組成物A-2を有するアンダーレイヤーが予想外に上で定義した特定のアンダーレイヤーの使用によって本発明のタイヤのコーナリング剛性の著しい改善を可能にすることを証明している。更に、TPEが単独で又は熱可塑性ポリマーの添加によって、タイヤにおいて使用可能なアンダーレイヤー用の組成物において充分であり、コーナリング剛性が更に改善されることは驚くべきことである。