(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286350
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】固定式ガスタービンを運転する方法、および、ガスタービンで取り込んだ空気のための吸気ダクト
(51)【国際特許分類】
F02C 7/057 20060101AFI20180215BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20180215BHJP
F02C 7/042 20060101ALI20180215BHJP
F02C 7/055 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
F02C7/057
F01D25/00 R
F02C7/042
F02C7/055
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-520617(P2014-520617)
(86)(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公表番号】特表2014-521015(P2014-521015A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】EP2012063777
(87)【国際公開番号】WO2013010935
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2014年7月11日
【審判番号】不服2016-18841(P2016-18841/J1)
【審判請求日】2016年12月15日
(31)【優先権主張番号】11174857.0
(32)【優先日】2011年7月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508008865
【氏名又は名称】シーメンス アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・シュナイダー
【合議体】
【審判長】
佐々木 芳枝
【審判官】
冨岡 和人
【審判官】
松下 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−324708(JP,A)
【文献】
特開2004−218588(JP,A)
【文献】
実開昭57−84333(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64B 1/00 - 1/70
B64C 1/00 - 99/00
B64D 1/00 - 47/08
B64F 1/00 - 5/00
B64G 1/00 - 99/00
F01D13/00 - 15/12
F01D23/00 - 25/36
F02C 1/00 - 9/58
F23R 3/00 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気された空気(A)を浄化するための少なくとも1つのフィルター(32、34)を備える固定式ガスタービン(10)を運転するための方法(39)であって、
前記フィルターでの圧力損失をなくすために、断続的に、部分的にあるいは完全にフィルターに通されていない外気(A)が前記固定式ガスタービン(10)に流入するステップを有し、
前記ステップは前記ガスタービンの動力出力を増大して周波数維持を行うために実行され、
さらに、フィルターに通されていない外気(A)の吸気が終了すると、圧縮機(12)が洗浄されるステップを有する、ことを特徴とする方法(39)。
【請求項2】
フィルターに通されていない外気(A)は、予め定められた時間以下の期間にわたって流入する、請求項1に記載の方法(39)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り込んだ空気を浄化するためにフィルターが装備された固定式ガスタービン(static gas turbine)の運転方法に関する。本発明はまた、固定式ガスタービンで取り込んだ空気のための吸気ダクトであって、吸気ダクトに流すことができる取り込まれた空気を浄化するために吸気ダクトに配置された少なくとも1つのフィルターを有する吸気ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
固定式ガスタービンは、通常、フィルターが装備されている。このフィルターは、吸気ダクトまたは吸気ハウジングの中に配置され、圧縮機が引き込んだ外気の浄化を目的としている。このような事情から、多くの場合、複数のフィルターが前後に連結されていて、引き込んだ外気から、これは吸気ともいうが、最初に比較的粗いほこり粒子を取り除き、次に比較的小さいほこり粒子を取り除く。吸気を浄化することが必要であるのは、1つには、圧縮機のブレードへの付着物、および、付随する圧縮機の経年変化過程を回避するためである。経年変化は、圧縮機の効率の低下につながり、ひいては、ガスタービンの効率の低下につながりうる。さらに必要なことは、特にきれいな冷却空気を、ガスタービンで利用されている高温ガス構成要素に供給することである。これは、このようにしなければ、付着物のために構成要素を確実に冷却することが危うくなる可能性があるからである。
【0003】
これも知られていることであるが、当面の発電に必要なエネルギーの他に、固定式ガスタービンは、多くの場合、予備の動力をいつでも出せるよう用意し、電気分配送電網(electrical distribution grid)に、送電網周波数の変化という形で現れる変動を制限できるようにしなければならない。この点で、以下のことが知られている。すなわち、いわゆる周波数維持のために、予備の動力を投入して、迅速に利用可能にすることが、圧縮機入口の上流で流体を導入し、それによって迅速に、短い期間、質量流量を増大させ、ひいては、ガスタービンの動力出力を増大させることによってできる。この方法は、湿り圧縮による周波数維持として知られている。
【0004】
ガスタービンの定格運転の間、ガスタービンを短時間オーバーファイアーさせ、それによってガスタービンの動力出力を定格負荷の100%よりも上げることを、必要な送電網維持(grid support)を果たすために行うことがさらに知られている。この目的のために開始されたこのような周波数維持手段は、通常、15分より長くは続かない。これは、この間に、他の送電網維持手段が導入、使用され、この結果、稼働している設備での迅速な対応、すなわち湿り圧縮またはオーバーファイアーを取りやめることができるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ガスタービンの動力出力を迅速に、例えば周波数維持のために増大させることができる代替方法を提供することである。本発明の他の目的は、このような方法を実行できる、ガスタービンのための吸気ダクトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
方法に対して定められた目的は、請求項1の特徴による方法によって達成される。装置に対して定められた目的は、請求項3の特徴による吸気ダクトによって達成される。本発明の有益な構成は、従属項に示されている。
【0007】
本発明は、ガスタービンの運転時に、吸気ダクト内で空気をフィルターに通すために圧力損失が生じる、という知見に基づいたものである。この圧力損失によりガスタービンが生成する動力が低下し、ガスタービンの効率が下がる。本発明によれば、この圧力損失を迅速に、短時間で、ガスタービンに連結された発電機で利用できるガスタービンの動力を増大させる、ということがここで行われる。これを達成するために、フィルターもしくは複数のフィルターを迂回するためのバイパス、および/または、フィルターまたは複数のフィルターの下流に配置された、少なくとも1つの、閉じることができる開口部が、好ましくはフラップという形態で、吸気ダクトの壁部に外気を入れるために設けられる。バイパスまたは閉じることができるそれぞれの開口部を加えることで、少なくとも一部がフィルターに通されていない、好ましくは全てがフィルターに通されていない外気をガスタービンに属する圧縮機に流入させることが可能になる。フラップをそれぞれまたはバイパスを開くことにより、動力を低下させるフィルターでの圧力損失を無くすことができる。次にガスタービンの動力出力を割り増しの燃料を加えることによって増大させるが、これがオーバーファイアーとなることはない。高温ガスを案内する構成要素の寿命を短くするオーバーファイアーをこのように回避しながら、それでも動力出力を増大させることができる。
【0008】
この方法は、周波数を維持した状況で使用することが好ましい。しかしながら、外気に浮遊する粒子がこの場合ガスタービンに流入するため、ガスタービンをこのように運転する段階の時間を制限するとよい。このような事情から、本発明による運転が行われるのが予め定められた最大時間、例えば15分であることが好ましい。この運転段階の後、つまり、直後または1時間以内といった短い時間の後に、圧縮機を洗浄することが好ましい。これに関しては、比較的大量の洗浄液を液滴という形態で圧縮機の上流にある吸気ダクトに導入することが知られている。この流体は、この場合、圧縮機に流入でき、圧縮機のブレードから、フィルターに通されていない空気で運転している間にブレードに付着した粒子を洗い落とすことができる。このように、圧縮機内でしばらくの間現れる経年変化現象を取り消すことができる。
【0009】
本発明の他の利点および特徴は、図面に示した例示的な実施形態を参照すれば明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】フラップをダクト壁に配置した吸気ダクトの側面図である。
【
図2】フラップをダクト壁に配置した吸気ダクトの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、固定式ガスタービン10の概略図であり、この固定式ガスタービン10は、圧縮機12と、燃焼器14と、タービンユニット16とを有する。ガスタービン10のローター18は、発電機20に連結されている。発電機20は生成した電気エネルギーを電気分配送電網22に供給する。
【0012】
吸気ダクト30は、圧縮機12の上流に連結された吸気ハウジング24に設けられていて、吸気ハウジング24の開口部28を圧縮機12の入口26に接続している。示されている例示的な実施形態によれば、前後に連結された2つのフィルター32、34が吸気ダクト30内に設けられている。より多くの、または、より少ないフィルターを設けることもできる。フィルター32、34は、吸い込まれた外気Aから浮遊粒子および外気Aに入っている粒子を取り除く役目を果たす。
【0013】
吸気ダクト30を周囲に直接接続したり、周囲から隔離したりすることができる複数の大きなフラップ36がフィルター32、34の下流において吸気ダクト30のダクト壁に、閉じることができる開口部として設けられている(
図2も参照のこと)。このために、フラップ36は、長手方向軸38に回転可能に取りつけられている。フラップ36を軸回転させるための付随する駆動ユニット、つまり、フラップ36を開閉するための付随する駆動ユニットは図示していない。
【0014】
さらに、目の粗い保護格子(不図示)を、フラップ36の前に、または、それぞれの開口部28に、圧力損失を生じさせることなく設けることができる。保護格子は、比較的大きな物体、または、鳥が吸気ダクト30に入ることを防止する。全体として、フラップ36は、依然として存在している、フィルター32、34を通過する流れを乱さないように配置されている。
【0015】
図1および
図2に示されている例示的な実施形態の異なる点は、1つには、吸気ハウジング24をガスタービン10と一列になるように配置できるか(
図1)、横に位置させるか(
図2)というものである。
【0016】
ガスタービンが従来通り運転している間、フラップ36は閉じられ、圧縮機12が外気Aを開口部28を介して吸気ダクト30に引き込む。この空気は、フィルター32、34を通過し、通過するときに、最初に比較的大きな浮遊粒子が取り除かれ、次に、比較的小さな粒子が取り除かれる。フィルターに通された吸気は、次に、吸気ダクト30の中を圧縮機12の入口26までさらに流れ、そして、知られている方法で圧縮されてから燃焼器14内で燃料Fと共に燃焼される。
【0017】
動力を増大させるための方法39が
図3に示されている。第1のステップ40では、発電機20に送る動力を前よりも増やすことを求める要求をガスタービン制御器が生成する。これは、例えば、電気分配送電網22の送電網周波数が落ちたために、周波数を維持しなければならない状況になっている、という場合がありえる。この場合、第2のステップ42で、制御器が駆動ユニットにフラップ36を開くように命令する。少なくとも一部がフィルターに通されていない外気A、または、全くフィルターに通されていない外気Aが、これにより、ガスタービン10の圧縮機入口26に流入することができる。フラップ36が開いた結果、外気はフィルター32、34を迂回する。これは、バイパスとしても知られている過程である。ガスタービン10は、これにより、オーバーファイアーまたは湿り圧縮を行うことなく、より多くの動力を出力することができる。方法の第3のステップ44では、フラップ36が再び閉じられる。これにより、圧縮機12が引き込んでいた外気Aがフィルター32、34を通って流れなければならなくなる。方法の第3のステップ44におけるそれぞれのフラップ36の閉鎖は、一方で、周波数を維持しなければならない状況の終了、または、周波数維持要求の終了をもって行うことができる。他方、フラップ36は、フィルターに通していない外気を引き込む最大運転時間が経過した後に閉じることもできる。第4の、オプションとしてのステップ46によれば、フラップ36を閉じた直後または閉じた後まもなく、圧縮機を洗浄する。圧縮機の洗浄は、オンライン洗浄として実行してもよいし、オフライン洗浄として実行してもよい。
【0018】
原則として、本発明の本質は、バイパスを使用して固定式ガスタービン10の吸気損失を最小にすること、そして、これにより送電網維持運転のような緊急性の運転状態のときにガスタービンの動力を上げることにある。本発明による手段は簡単であるので、フラップ36を設置、維持するための追加の費用が少ない一方、本発明を装備したガスタービン10の産業上の有用性は著しく大きくなる。
【0019】
もちろん、他の要素、例えばスライドする窓または同様のものなどもフラップ36の代わりに設けることができる。
【0020】
したがって、全体として、本発明は、固定式ガスタービン10の外気を引き込むための吸気ダクト30に関する。吸気ダクト30は少なくとも1つのフィルター32、34を有する。このフィルターは、吸気ダクト30の中に配置され、吸気ダクト30の中に流すことができる吸気Aを浄化する。本発明はさらに、吸気Aをきれいにするためのフィルター32、34を装備した固定式ガスタービン10を運転する方法に関する。迅速に、より大きなガスタービン動力を発電機20で利用できるように、バイパスによって、または、フィルター32、34の下流に配置したフラップ36によって、随時、一部または全てがフィルターに通されていない外気Aが圧縮機入口26に流入できるようにする。結果として、フィルター32、34によって引き起こされる圧力損失が迅速になくなる。
【符号の説明】
【0021】
10 ガスタービン
12 圧縮機
30 吸気ダクト
32、34 フィルター
36 フラップ